弁護士法人ITJ法律事務所

最高裁判例


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平成20年5月9日決定
平成20年(む)第757号
主文
検察官に対し,Aの平成19年7月31日付け検察官調書(6丁のもの)を平成20年5月12日午
後5時までに開示することを命じる。
本件のその余の請求を棄却する。
理由
第1請求の趣旨及び理由
本件請求の趣旨及び理由は,主任弁護人落合洋司作成の「証拠開示命令申立書」(以
下「本件申立書」という。)記載のとおりであるからこれを引用する。
第2当裁判所の判断
1本件申立書第2の2記載の証拠のうち,B及びCの供述録取書等について
弁護人は,Dが不動産詐欺事件の対象となった土地・建物(以下「本件不動産」とい
う。)の取引成立に向けて精力的に活動していた旨主張し,その関連証拠として,上記
証拠は開示されるべきであるという。
しかし,検察官も,Dが,Eの依頼に基づき,BとCを含む複数の人物に対し,本件
不動産の購入資金の提供を打診していた事実を前提として主張を展開していることなど
にかんがみると,弁護人の主張を踏まえても,被告人の防御の準備のために上記証拠を
開示する必要性があるとは認められない。
2本件申立書第2の3記載の証拠のうち,Aの平成19年7月21日付け検察官調書について
これについては,本件申立て後,検察官から証拠調べ請求がなされ(甲319),弁護人
に開示されたので,現時点では,開示命令を求める利益がない。
3本件申立書第2の3記載の証拠のうち,上記2の証拠以外のAの供述録取書等及びその言
動を記録した捜査報告書(電話聴取書を含む。)について
弁護人は,平成▲年▲月▲日に被告人名義の銀行口座に振り込まれた7000万円の趣旨
について,Fへの返済資金であったと主張し,その関連証拠として,上記証拠の開示を
求めている(なお,検察官の意見を参酌しても,主張関連証拠の開示を求める前提とし
て,弁護人が刑訴法所定の主張明示義務を果たしていないとはいえない。)。
そこで,検察官から上記証拠の提示を受けて検討したところ,このうち,Aの同年7月
31日付け検察官調書(6丁のもの)については,弁護人の主張との関連性を肯定できる。
そして,上記金員の趣旨は,現金詐欺事件の共謀の有無に関する主要な争点と位置付け
られるものであることにかんがみると,被告人の防御の準備のためにこれを開示する必
要も高いと認められる。さらに,上記証拠を開示した場合の弊害について,検察官は特
段主張をしておらず,開示の相当性も肯定できる。
他方,その余の証拠(この中には上記2の証拠も含まれているが,これについては開示
命令を求める利益がないことは上述のとおり)については,弁護人の主張とはおよそ関
連しないものであり,いずれも開示の必要性は認められない。
4本件申立書第2の4記載の証拠のうち,「外国為替の取引等の報告に関する省令に基づ
く財務大臣(又は日本銀行)あて別紙様式第五十四に基づく報告書」について
弁護人は,Gが本件不動産に対する出資又は投資家探しを断り,これを被告人も認識
していたとする検察官の主張を争い,その証拠とされるD及びGの供述の信用性を否定
し,これを弾劾するために,同人らが,平成16年ころ,資産家から資金運用名目で言葉
巧みに多額の金員を拠出させ,その後一切返金に応じていないという事情等を主張する
予定であるとし,その関連証拠として,上記証拠は開示されるべきであるという。
しかし,弁護人が主張する平成16年ころのG及びDの行動は,同人らの人物像等を推
し量る一つの資料となり得るに過ぎず,同人らの供述の信用性を弾劾するためという弁
護人の主張を踏まえても,本件との関連性は乏しいというほかはない。上記証拠の開示
の必要性は認められない。
5本件申立書第2の5記載の証拠のうち,Hの供述録取書等について
弁護人は,本件申立書において,上記証拠は,被告人が,Gによる資金調達が成就し
ないと判明した後,被告人自らが資金提供を依頼したHに関する証拠であり,被告人に
は詐欺の犯意がなかったことの証明に資するものであるという。
しかし,この点に関し,弁護人は,証明予定事実として,Hの方から被告人に電話が
あり,資金提供の申出があった旨を主張するにとどまっているのであり,被告人自らが
資金提供を依頼したとの事実を明確には主張していない。また,検察官から上記証拠の
提示を受けて検討したところ,被告人自らがHに資金提供を依頼したとの主張に関わる
ものはないと認められた。
したがって,被告人の防御の準備のために上記証拠を開示する必要性はないというべ
きである。
6本件申立書第2の8記載の証拠について
上記証拠については,弁護人の主張をよく検討しても,本件両事件について詐欺の犯
意及び共謀を否定する弁護人の主張とどのように関連するのかが明らかではなく,開示
の必要性は認められない。
7その余の証拠について
1ないし6で検討した以外の証拠については,検察官が手持ち証拠中に存在しないと回
答しており,その存在を確認できない。
8以上の次第で,本件証拠開示請求は,検察官に対し,Aの平成19年7月31日付け検察官
調書(6丁のもの)を開示することを命じることを求める限度で理由があり,その余につ
いては理由がない。
よって,刑訴法316条の26により,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・林正彦,裁判官・中島経太,裁判官・浅川啓)

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