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主文
1原判決を次のとおり変更する。
2被控訴人が,控訴人に対し,大阪地方裁判所平成17年(モ)第
7498号強制執行停止決定を原因として,146万6154円の
債権を有することを確認する。
3被控訴人のその余の請求を棄却する。
4訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを3分し,その2を控訴人
の,その余を被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人の請求を棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1主張の概要及び訴訟の経緯
本件は,控訴人に対する仮執行宣言付勝訴判決を債務名義とする債権差押転
付命令を得た被控訴人が,控訴人の申立てによる強制執行の停止によって損害
を被ったとして,控訴人が強制執行停止決定の発令に当たって立てた担保の還
付を受けるために,控訴人に対して,221万6648円の損害賠償債権を有
することの確認を求めたところ,原判決が同額の損害賠償請求債権があること
を認めたので,控訴人が不服を申し立てた事案である。
2前提事実
証拠(甲1,5,7,8,18,20,乙1,11)及び弁論の全趣旨によ
り認められる事実並びに当事者間に争いがない事実は,以下のとおりである。
(1)被控訴人は,控訴人の経営するAゴルフ倶楽部(以下「本件ゴルフクラ
ブ」という)の会員であった者であり,本件ゴルフクラブ入会時に,本件。
ゴルフクラブの会則に基づき,控訴人に対して,395万円の預かり保証金
を支払った。
被控訴人は,会則所定の据置期間満了後に本件ゴルフクラブを退会したこ
とに伴い,前記預かり保証金395万円の返還を求めるとともに,退会後に
徴収された会費1万5750円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,
大阪地方裁判所に控訴人を被告として,預託金返還請求訴訟(平成16年
(ワ)6323号,以下「別件訴訟」という)を提起した。。
同裁判所は,平成17年9月27日,別件訴訟について,
ア控訴人は,被控訴人に対し,396万5750円及び内金395万円に
対する平成15年12月1日から支払済みまで年6分の割合による金員,
内1万5750円に対する平成16年6月29日から支払済みまで年5分
の割合による金員を支払え,
イ訴訟費用は,控訴人の負担とする,
ウこの判決は仮に執行することができる
との被控訴人の請求を全部認容する仮執行宣言を付した判決をした(甲1。
以下「別件判決」という。。)
(2)被控訴人は,平成17年11月1日,控訴人を債務者として,執行力あ
る判決正本に基づいて,原判決別紙差押債権目録記載の債権を150万円に
満つるまで差し押さえ,その差し押さえられた債権を債権者に転付する旨の
債権差押及び転付命令(平成17年(ル)第204号債権差押命令事件・同
年(ヲ)第69号債権転付命令事件(以下「本件差押転付命令」とい)
う)を得,同命令は,第三債務者であるB株式会社に同月4日,控訴人に。
同月8日に,それぞれ送達された。
(3)控訴人は,平成17年11月4日当時,B株式会社に対し,原判決別紙
差押債権目録記載の債権199万3128円を有していた。
控訴人は,本件差押転付命令がB株式会社に送達された後,同社に対し,
平成17年11月16日に9万1130円,同月17日に1万0270円,
同月18日に1万0490円,同月21日に1万3000円,同月23日に
9万8630円,同月26日に1万3680円,同月27日に6万1510
円の債権(いずれの債権も,原判決別紙差押債権目録記載の種類の債権であ
る)をそれぞれ取得した。。
(4)ア別件判決言渡当時,控訴人に対しては,被控訴人以外の多数の会員か
ら,預託金返還訴訟が提起され,第1審では,控訴人はこれらの訴訟のす
べてに敗訴し,控訴審における敗訴判決も出ている状況であった。
イ控訴人は,別件判決に対して控訴を申し立てるとともに,大阪地方裁判
所に対し,強制執行停止の申立てをした(大阪地方裁判所平成17年
(モ)第7498号事件。以下「本件執行停止の申立て」という。。)
大阪地方裁判所は,平成17年11月9日,控訴人に300万円の担保
(以下「本件担保」という)を金銭で供託する方法で立てさせた上で,。
別件判決の執行力ある正本に基づく強制執行は控訴事件の判決があるまで
停止する旨の決定(以下「本件執行停止決定」という)をした(甲5。。)
ウ控訴人は,平成17年11月10日,東京高等裁判所に対し,前記(2)
の新潟地方裁判所長岡支部平成17年(ヲ)第69号転付命令申立事件に
ついて,執行抗告を申し立てた上(乙11,同月12日,新潟地方裁判)
),所長岡支部に対し,本件執行停止決定の正本を提出した(甲18(以下
イ,ウによる強制執行手続の停止を「本件執行の停止」という。。)
(5)控訴人に対しては,被控訴人以外からも預託金返還請求訴訟が提起され
ていたところ,平成17年12月16日,控訴人における預託金の償還期限
を10年間延長する旨の理事会決議の効力を否定する旨の最高裁判所の判決
があった(甲7。)
,(6)ア控訴人は,遅くとも平成17年7月上旬には,債務超過状態にあって
経営再建の努力を続けつつ,法的整理も検討しており,同年8月下旬には,
同年末ころに再生手続開始の申立てをする方針をほぼ固めていたところ,
前記(5)の最高裁判決を受けて,控訴人は,平成18年1月13日,新潟
地方裁判所長岡支部に対し,再生手続開始の申立てをし,同裁判所は,同
月20日,控訴人について,再生手続開始決定をした(甲7,8,10,
乙1。以下「本件再生手続」という。。)
イ被控訴人は,本件再生手続において,別件判決で認容された債権(元本
額396万5750円)及びこれらに対する遅延損害金(合計447万2
657円)の債権を届け出た(乙10。)
ウ控訴人は,同年5月12日,本件再生手続において,債務免除率95%
(継続会員)ないし98%(退会会員)とする再生計画案を提出し,同計
画案は,同年9月4日,債権者集会において可決,同日付で認可決定がな
され,同月29日,同決定は確定した。
(7)控訴人は,平成19年2月15日,前記(4)ウの執行抗告を取り下げ,新
潟地方裁判所長岡支部は,同年9月19日,本件差押命令を取り消す旨の決
定をした(甲20。)
3争点及び争点についての当事者の主張
(1)再生債権である本件損害賠償請求権について,債権確定請求を行うこと
は不適法か(本案前の抗弁。)
ア控訴人の主張
再生手続においては,再生債権の内容をめぐる事後的な紛争の発生を回
避する等の趣旨で,再生債権の調査及び確定のための特別な手続が設けら
れているのであるから,再生手続外での債権確定請求訴訟は許されない。
イ被控訴人の主張
強制執行をした債権者は,強制執行の停止の担保として供託された金銭
について,他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有するものであるか
ら,控訴人の主張は失当である。
(2)控訴人が執行停止の申立てをしたことが不法行為となるか。
ア被控訴人の主張
(ア)強制執行の停止によって債権者が損害を被った場合は,以下のとおり,
債務者は当然にこれを賠償すべきであって,債務者に故意又は過失のあ
ることは必要でないと解すべきである。
控訴に伴う執行停止決定による損害は,強制執行の停止によって,債
務名義による給付内容の実現が妨げられたことにより発生する損害であ
ることからすれば,債務者の不服申立てに理由のないことが確定すれば,
強制執行停止の理由もなかったことも明らかになるのであるから,理由
のない強制執行の停止によって生じた損害を賠償すべき責任を認めるに
ついて,強制執行停止の申立てについて債務者の故意又は過失があった
ことを要しないというべきである。
また,仮執行後に本案判決が変更された場合,仮執行をした当事者は,
仮執行を受けた他方当事者が受けた損害を賠償しなければならず(民訴
法260条2,3項,この責任は無過失責任であるとされていること)
との権衡からも,前記のとおり解すべきである。
(イ)仮に故意又は過失が必要だとしても,仮処分の場合において,本案判
決で敗れた仮処分申立人には過失があるものと推定されるとするのが判
例であるから,強制執行停止の場合においても,債務者たる控訴人の過
失が推定され,控訴人において過失がなかったことを主張立証すべきこ
とになるが,本件では,控訴人には少なくとも被控訴人の損害発生につ
いて過失があるといえる事情がある。
すなわち,控訴人に対しては,被控訴人が提起した別件訴訟以外にも
多数の預託金返還訴訟が提起され,控訴人が勝訴した事例はなかった。
控訴人は,平成17年末から平成18年の初頭にかけて再生手続開始の
申立てをすることを予定していたところ,平成17年12月26日,他
の訴訟について,控訴人の上告を棄却する最高裁判決が出たこともあり,
再生の申立てに至ったようである。そうすると,別件訴訟も,当初から
控訴人が勝訴する見込みはほとんどなかったものであり,控訴人は,別
件判決に対して控訴しても,勝訴する見込みがないことを知っていたが,
判決の確定を避けるために控訴したにすぎなかったというべきである。
(ウ)よって,控訴人は,強制執行の停止によって被控訴人が被った損害を
賠償する義務を負っているというべきである。
イ控訴人の主張
(ア)強制執行停止による損害賠償請求権は,不法行為に基づく損害賠償請
求権であるから,債務者が損害賠償責任を負うのは,強制執行停止の申
立てが不法行為になる場合である。
(イ)控訴人は,被控訴人が強制執行をした場合には,控訴人に(ひいては
控訴人の債権者に)回復し難い損害が生じるという切迫した状況にあっ
たため,強制執行停止の申立てを行ったものであるから,控訴人には故
意又は過失はなく,何ら違法なところはない。
よって,控訴人は損害賠償義務を負わない。
(3)控訴人の申立てに基づく強制執行の停止によって被控訴人は損害を被っ
たか,また,被ったとした場合の損害額
ア被控訴人の主張
(ア)本件執行の停止がなければ,平成17年11月15日の経過により,
本件差押転付命令の効力が生じることによって,被控訴人は,差押債権
額である150万円について確実に弁済を受けることができた。
(イ)被控訴人は,本件差押転付命令によって控訴人がB株式会社に対して,
差押債権額である150万円を超える金額の債権を有していることを知
った。
したがって,被控訴人は,本件差押転付命令に引き続き,B株式会社
を第三債務者とする新たな債権差押転付命令を得ることによって,本件
再生手続開始決定がされた平成18年1月20日までに,更なる債権の
回収が可能であった。そして,被控訴人が新たな差押転付命令の申立て
をするために10日の準備期間を要し,さらに執行裁判所において同命
令が発令され,第三債務者であるB株式会社に送達されるまで5日間を
要したとすると,本件差押転付命令の対象外で平成17年12月25日
ころまでに発生した債権71万6648円が,新たな債権差押転付命令
によって被控訴人が弁済を受け得た金額であるということになる(なお,
新たな債権差押転付命令も,本件再生手続開始決定がなされるまでに効
力が生じていることは明らかである。。)
(ウ)よって,被控訴人は,本件執行の停止がなければ,本件再生手続開始
決定がなされるまでの間に,強制執行により221万6648円を回収
することができたというべきであるから,本件執行の停止によって被控
訴人が被った損害の金額は,221万6648円である。
イ控訴人の主張
被控訴人が本件再生手続開始決定までに強制執行をすることは困難であ
るから,仮に被控訴人の主張する損害が存在したとしても,本件執行の停
止と損害との間に因果関係はない。
(4)本件執行の停止を原因とする被控訴人の控訴人に対する損害賠償請求権
(以下「本件損害賠償請求権」という)は,再生計画の定めに従って権利。
変更され,一部免責されるか。
ア控訴人の主張
本件損害賠償請求権は,一般再生債権であるから,本件再生手続におけ
る再生計画の認可,確定により,同再生計画の定めに従って権利変更され,
一部免責された。
イ被控訴人の主張
最高裁平成14年4月26日決定によれば,債権者は,強制執行の停止
を原因とする損害の賠償請求権に関し,強制執行の停止の担保として供託
された金銭について,他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有すること
は,債務者が破産宣告を受けたことによって変わるところはなく,債務者
が破産宣告を受けても,差押債権者は民訴法77条に基づく権利,すなわ
ち,他の債権者に先立って供託金から弁済を受ける権利を失わない。この
考え方は,債務者について再生手続が開始した場合も変わるところはない
から,被控訴人は,本件損害賠償請求権に関し,本件担保について他の債
権者に先立って弁済を受ける権利を有する。
(5)本件損害賠償請求権は,再生計画認可決定確定により,失権したか。
ア控訴人の主張
被控訴人は,本件再生手続において本件損害賠償請求権について再生債
権として債権届出を行ったが,控訴人は債権認否においてこれを認めなか
ったにもかかわらず,民事再生法所定の期間内に査定の申立てをしなかっ
たものであるから,本件損害賠償請求権は,再生計画認可決定確定時に免
責され,被控訴人は失権した。
イ被控訴人の主張
被控訴人は,本件損害賠償請求権を再生手続において権利行使するもの
ではないから,控訴人の主張は失当である。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本案前の抗弁)について
控訴人は,再生手続においては,再生債権の内容をめぐる事後的な紛争の発
生を回避する等の趣旨で,再生債権の調査及び確定のための特別な手続が設け
られているのであるから,再生手続外での債権確定請求訴訟は許されない旨主
張するが,強制執行をした債権者は,強制執行の停止の担保として供託された
金銭について,他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有するものであり,
その損害賠償債権確定のために本訴を提起できることは明らかなことであるか
ら,控訴人の主張は採用できない。
2争点(2)(控訴人が執行停止の申立てをしたことが不法行為となるか。)について
(1)被控訴人は,強制執行の停止によって債権者が損害を被った場合は,債
務者は当然にこれを賠償すべきであって,債務者に故意又は過失のあること
は必要でないと解すべきである旨主張する。
しかしながら,仮執行宣言を付した判決に対して控訴の提起があった場合,
民訴法403条1項3号(旧398条1項3号)所定の事由につき疎明があ
ったとして裁判所が立てさせた担保によって担保されている損害賠償請求権
は,執行停止によって債権者に生ずべき損害の賠償を求めるものであり,債
権者が損害賠償を請求できるのは,債務者がした執行停止の申立てが不法行
為となる場合であると解すべきである。
そして,仮執行宣言を付した判決に対する控訴の提起に伴う執行停止の場
合には,控訴して執行停止を申し立てた当事者が控訴審でも敗訴して,その
控訴審判決が確定したときにも,その当事者において過失があったものと推
定することはできない。なぜなら,民訴法403条1項3号によれば,原判
決の取消し若しくは変更の原因となるべき事情がないとはいえないこと又は
執行により著しい損害を生ずるおそれがあることの疎明があれば,強制執行
の一時停止を命じることができるところ,控訴の提起は当事者の権利であり,
控訴に対する執行停止の制度は,控訴審の審理中に執行が完了して控訴が無
意味になることを防止するものであることを考慮すると,控訴人に過失があ
ったものと推定することは控訴人に過度の負担を負わせることになるという
べきだからである。
(2)そこで,具体的に,本件執行停止の申立てが不法行為に該当するか否か
について検討する。
前記第2の前提事実によれば,別件判決の言渡当時,控訴人は明らかに債
務超過の状態にあり,本件執行停止の申立てよりも3か月前である平成17
年8月下旬には,再生手続開始の申立てをする方針をほぼ固めつつ経営再建
の方策を探っており,平成18年1月13日の本件再生手続開始の申立ての
約2か月前である平成17年11月の本件執行停止の申立てないし同月9日
の本件執行停止決定当時には,再生手続開始の申立てについてかなり具体的
に準備をしていたことを推認することができる。
ところで,本件執行停止の申立ての約2か月後に本件再生手続開始の申立
てがされており,その間,控訴人の資力状態が格段に変化したことを認める
に足りる証拠はないから,被控訴人が別件判決の債権を回収しようとした場
合,通常の強制執行によるときと本件再生手続きによるときとでは,ほぼ同
様の状態と考えられるのであって,本件強制執行停止の申立て・同決定によ
り,被控訴人の権利がことさら妨げられたとまではいえない。
しかしながら,前記前提事実(2),(3)のとおり,被控訴人は,平成17年
11月1日,控訴人を債務者として,執行力ある判決正本に基づいて,原判
決別紙差押債権目録記載の債権を150万円に満つるまで差し押さえ,その
差し押さえられた債権を債権者に転付する旨の本件差押転付命令を得,同命
令は,第三債務者であるB株式会社に同月4日,控訴人に同月8日に,それ
ぞれ送達されており,控訴人は,平成17年11月4日当時,B株式会社に
対し,原判決別紙差押債権目録記載の債権199万3128円を有していた
から,本件執行停止決定がなければ,被控訴人は,本件差押転付命令により,
優先的に150万円の債権の回収ができたはずである。
そして,これらの点については,控訴人も,本件強制執行停止の申立て当
時,十分に理解していたはずであるから,控訴人は,本件強制執行停止の申
立てにより,被控訴人が優先的に回収できるはずの本件差押転付命令分の1
50万円を回収できず,本件再生手続きによる回収しかできないことの認識
をしていたというべきであるから,この点について被控訴人が受ける損害に
ついては,控訴人に少なくとも未必的な故意があるといわざるをえない。
なお,控訴人は,被控訴人が強制執行に及んだ場合には,控訴人に(ひい
ては控訴人の債権者に)回復し難い損害が生じるという切迫した状況にあっ
たため,執行停止の申立てを行わざるを得なかったのであるから,不法行為
にはならないと主張する。上記の判断のとおり,控訴人の執行停止の申立て
自体は,一般的には相当な権利行使として許されるが,本件のように転付命
令が発せられて被控訴人が優先的に取得することができるはずであった債権
(本件差押転付命令による150万円の債権)であることを未必的にせよ認
識しつつ,その回収を妨げることはできないというべきである。したがって,
控訴人の上記主張は採用できない。
3争点(3)(本件執行の停止によって被控訴人は損害を被ったか,また,被っ
たとした場合の損害額)について
前記の前提事実(2),(3)によれば,被控訴人は,本件執行停止決定がなけれ
ば,本件差押転付命令の効力が発生し,優先的に150万円の弁済を受けるこ
とができたことが認められる。
ところで,控訴人の本件執行停止申立てにより被控訴人が受けた損害の範囲
は,本件債権差押転付命令により優先的に弁済を受けることができたはずの1
50万円から本件民事再生手続により受けた配当の差額であると解される。
証拠(甲11ないし13,15,16,乙9の1及び2)によれば,被控訴
人は,本件民事再生手続により,退会会員ということで,再生債権届出額(別
件判決で認容された額。但し,遅延損害金は再生開始決定の前日である平成1
8年1月19日までの金額)である447万2657円の2%である8万94
53円の配当を受けることになり,その後,その支払を受けたことが認められ
る。
そうすると,被控訴人は,本件差押転付命令分150万円についての損害賠
償を認められたことに対しての公平上,その分について本件民事再生手続によ
り被控訴人が受けた配当額分3万3846円を控除すべきであるから,その控
除後の損害金は146万6154円となる。
(計算式)
(小数点以下切捨て){150万+150万×(2+)×0.06}×0.02=3万3846
なお,被控訴人は,さらに,本件差押転付命令に引き続いてB株式会社を第
三債務者とする新たな債権差押転付命令を得ることによって,さらに71万6
648円を回収することができたから,同額の損害を被ったと主張するが,執
行停止の申立ては当然の権利行使として認められるうえ,被控訴人が実際に債
権差押転付命令の申立てをし,その命令が第三債務者に送達されたときに,控
訴人がその第三債務者に対して債権を確実に有していることを認めるに足りる
証拠はないから,本件差押転付命令後も被控訴人が債権差押転付命令による弁
済を受けることができたとまではいえない。したがって,被控訴人の上記主張
は採用できない。
4争点(4)(本件損害賠償請求権は,再生計画の定めに従って権利変更され,
一部免責されるか)及び争点(5)(本件損害賠償請求権は,再生計画認可決。
定確定により,失権しているか)について。
被控訴人は,本件担保について,民訴法405条2項,77条により,他の
債権者に先立ち弁済を受ける権利を有しているところ,この優先弁済権は,控
訴人が,再生手続開始決定を受けたことによって何らの影響を受けるものでは
ないと解される。
控訴人が主張するとおり,本件執行の停止原因とする被控訴人の控訴人に対
する損害賠償請求権は,再生手続においては,一般再生債権として取り扱われ
ることになり,計画に基づきその権利の内容は変更されることになる。しかし,
それは,あくまでも被控訴人が再生手続によって弁済を受ける場合のことであ
って,被控訴人が本件担保に対する上記優先弁済権を行使する場合には,控訴
人が再生手続開始決定を受けたこと及び再生計画認可決定が確定したことは,
何らの影響を及ぼすものではないから,控訴人の上記(4),(5)の各主張は採用
できない。
5以上の次第で,被控訴人の請求は,146万6154円の債権の確認を求め
る限度で理由があり,その余は理由がないので棄却すべきである。
したがって,控訴人の本件控訴は一部理由があるので,これと異なる原判決
を変更することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官横田勝年裁判官小林秀和裁判官高橋文清)

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