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平成13年(行ケ)第457号 審決取消請求事件(平成14年6月24日口頭弁
論終結)
          判         決
   原      告   株式会社松永製作所
訴訟代理人弁理士   廣   江   武   典
   被      告   A
訴訟代理人弁護士   乾       て い 子
同弁理士宇 佐 見   忠   男
同          早   川       康
          主         文
 特許庁が平成10年審判第35595号事件について平成13年9月
5日にした審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   主文と同旨
 2 被告
   原告の請求を棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
  (1) 被告は、名称を「車椅子」とする登録第1998386号考案(平成2年
6月28日登録出願、平成5年12月22日設定登録、以下「本件考案」とい
う。)の実用新案権者である。被告は、平成10年7月8日、本件実用新案登録出
願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の
範囲等を訂正する訂正審判を請求し、特許庁は、平成10年審判第39051号事
件として審理した結果、同年12月9日、その訂正を認める審決(以下「第1次訂
正審決」という。)をし、第1次訂正審決は確定した。
  (2) 原告は、第1次訂正審決に先立つ平成10年11月27日、本件実用新案
登録の無効審判(以下「本件審判」という。)を請求し、同請求は、平成10年審
判第35595号事件として特許庁に係属したが、その無効理由として、第1に、
第1次訂正審決に係る訂正が本件明細書の実用新案登録請求の範囲の減縮又は明り
ょうでない記載の釈明をしたものとは認められないこと(以下「無効理由1」とい
う。)、第2に、本件考案が米国特許第4840390号明細書(審判甲第3号
証、以下「引用例3」という。)記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に発
明をすることができたこと(以下「無効理由2」という。)、第3に、本件考案が
実公昭52-43544号公報(審判甲第1号証、以下「引用例1」という。)、
実公平3-47617号公報(審判甲第2号証、以下「引用例2」という。)及び
引用例3記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に発明をすることができたこ
と(以下「無効理由3」という。)を主張した。 特許庁は、上記事件について審
理した上、平成11年12月7日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審
決(以下「前審決」という。)をし、その謄本は、同月27日、原告に送達された
が、原告が提起した当庁平成12年(行ケ)第33号審決取消請求事件(以下「前
訴」という。)において、平成12年11月9日、前審決を取り消す判決(以下
「前判決」という。)が言い渡された。
  (3) 被告は、前判決に対し上告受理の申立てをし、同申立事件の係属中である
平成12年12月12日、本件明細書の実用新案登録請求の範囲等の訂正審判を請
求し、同請求は、訂正2000-39155事件として特許庁に係属した。前判決
は、平成13年3月23日、上告不受理決定により確定し、他方、特許庁は、上記
事件について審理した上、同年7月23日、その訂正を認める審決(以下「第2次
訂正審決」という。)をし、第2次訂正審決は確定した。
  (4) 特許庁は、本件審判請求事件について、第2次訂正審決確定後、原告に対
し主張立証の機会を与えないまま、平成13年9月5日、「本件審判の請求は、成
り立たない。」との審決をし、その謄本は、同月17日、原告に送達された。
 2 本件考案の要旨(第2次訂正審決後のもの)
   座部の両側にアームレストを水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構
成であって、該アームレストは遮板が張設されているコの字形のフレームからな
り、該フレームの後下端部が車椅子本体に枢着されており、水平使用状態では該フ
レームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔が車椅子本体に突設され
ている係合ボルトに係合することによって、該フレームが車椅子本体にロック可能
に支持されていることを特徴とする車椅子。
 3 審決の理由
   審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件考案は、引用例1ないし3記
載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に発明をすることができた(無効理由
3)と認めることはできないから、本件実用新案登録を無効とすることはできない
とした。
   審決は、無効理由1及び2については、判断を示していない。
第3 原告主張の審決取消事由
   審決は、本件審判において原告の主張した無効理由1及び2の判断を遺脱し
たものであり(取消事由1)、また、第2次訂正審決により本件考案の要旨が変更
されたにもかかわらず原告に主張立証の機会を与えなかった手続上の瑕疵がある
(取消事由2)から、違法として取り消されるべきである。
 1 取消事由1(判断遺脱)
   原告は、本件審判において、無効理由1ないし3を主張した。審決は、無効
理由3について理由がないと判断したが、無効理由1及び2について判断せずに原
告の本件審判請求が成り立たないとしたものであって、無効理由1及び2について
の判断を遺脱した違法がある。
 2 取消事由2(第2次訂正審決後に原告に主張立証の機会を与えなかった違
法)
   特許庁は、第2次訂正審決により無効審判の対象である本件考案の要旨が訂
正されたのであるから、訂正後の考案について、原告に弁論の機会を与えるべきで
あった。審決には、これを怠った手続上の瑕疵がある。
第4 被告の反論
 1 取消事由1(判断遺脱)について
   審決が無効理由1及び2について判断を遺脱したことは認める。
   審決は、「(2)第2回訂正請求についての経緯」(審決謄本2頁21行目~4
頁6行目)において、第2次訂正審決に係る訂正2000-39155審決を参照
する形で、第1次訂正審決による訂正が適法であることを述べているから、無効理
由1及び2について、実質的な判断をしていると解釈することができる。
 2 取消事由2(第2次訂正審決後に原告に主張立証の機会を与えなかった違
法)について
   前判決が審決取消事由であると判断した点は、第2次訂正審決によって解消
されたことが明らかであり、原告に改めて主張立証の機会を与えても、無効理由の
存否に関する原告の攻撃防御に何ら変更を要しないから、特許庁がその機会を与え
なかったことは、審決の結論に影響を及ぼさない。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由1(判断遺脱)について
審決が無効理由1及び2について判断を遺脱したことは、当事者間に争いが
ない。そうすると、審決は、これら無効理由について判断しないまま、原告の本件
審判請求が成り立たないとしたのであるから、上記判断遺脱の違法が審決の結論に
影響を及ぼすことは明らかである。
   被告は、審決が「(2)第2回訂正請求についての経緯」において、第1次訂正
審決による訂正が適法に認められることを述べているから、無効理由1及び2につ
いて実質的な判断をしていると解釈することができる旨主張する。しかしながら、
被告の主張する審決の上記部分は、単に、審決に至る手続の経緯を説示したものに
すぎず、第1次訂正審決に係る訂正が適法であることを説示するものではないか
ら、審決が無効理由1について実質的な判断を示しているということはできない。
 2 取消事由2(第2次訂正審決後に原告に主張立証の機会を与えなかった違
法)について
   訂正審決により審判の対象が変更された後、改めて審判請求人に主張立証を
する機会を与えなかった手続上の瑕疵は、一般に、審決に影響を及ぼす性質を有す
る瑕疵であることは、判例(最高裁昭和51年5月6日第一小法廷判決・判例時報
819号35頁)とするところである。本件において、第2次訂正審決後に原告に
主張立証の機会を与えないまま審決がされたことは当事者間に争いがないから、こ
の手続上の瑕疵は、審決の結論に影響を及ぼすというべきである。
   被告は、原告に改めて主張立証の機会を与えても、無効理由の存否に関する
原告の攻撃防御に何ら変更を要しないと主張するが、無効審判手続において請求人
が無効理由の主張立証の機会を与えられていたとすればいかなる主張立証がされ、
それが審決の判断を動かすに足りる有効適切なものかどうかを問うまでもなく、主
張立証の機会を与えなかった手続上の瑕疵は、審決の取消事由になるといわなけれ
ばならないから(上記最高裁判決参照)、被告の主張は失当である。
 3 以上のとおり、原告主張の審決取消事由1及び2はいずれも理由があり、こ
れらの誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は取消しを
免れない。
   よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき
行政事件訴訟法7条、民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官   篠   原   勝   美
            裁判官   岡   本       岳
            裁判官   長   沢   幸   男

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