弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人刀禰大治郎の上告趣意第一点について。
 論旨は原判決が被告人等の強盗殺人末遂の点について中止未遂であるか障碍未遂
であるかを確定判示していないから理由不備であるというのである。しかし原判決
は被告人等が共謀の上A及びBを殺害して金品を強取する意図をもつて刺身庖丁を
もつてBを突き刺し鉄丸棒をもつてAの頭部を数回乱打し、これによつてBを死亡
せしめ、Aに対しては治療約二月を要する頭蓋底骨折、頭部挫傷等を負わせたに止
り、その殺害の目的を遂げなかつたと云うのであるから、被告人等が自己の意思に
よつて殺害行為を中止した為めに殺害の結果を発生せしめなかつたことを判示して
いるものでないことは明瞭である。それ故原判決には所論のような違法なく論旨は
理由がない。
 同第二点について。
 しかし被告人C及び同Dが中途でにわかに恐怖にかられCがEに対して取引の中
止を申入れたことに対して被告人Fが痛く憤慨した為め桐油の買受を熱望して被告
人C方に来訪したEとの間に再び取引の実行を約して茲に愈々被告人三名は予定の
計画を決行することの協議を重ね原判示の如き諸般の準備を整えた上、本件犯行を
決行するに至つたことは原判決の認定するところである。そして右被告人Fの憤慨
が被告人C及びDをして本件犯行に同意せしめるに至つた一の原因になつたとして
も右両名はその為めに当時意思の自由を喪失し又は所論の如き抗拒不能の心理状態
に在つたものでないことは原判文上自ら明かであるから、原判決には何等所論の如
き審理不尽の違法なく、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 しかし被告人の近親者に精神病者があつても被告人本人に精神異常の疑のないと
きには精神鑑定をしなくても違法ではない。原審は被告人Fに精神異常の疑がなか
つたので精神鑑定をしなかつたものと認められるから、論旨は理由がない。
 同第四点について。
 しかし原判決の証拠に掲げる医師G作成のAに対する診断書中には右Aの傷害の
部位程度について原判示のように数個の傷害がある旨の記載があり又原審における
証人Aに対する訊問調書中同人の供述として、その男が鉄棒で私の頭を殴つたので
私はその第二撃目を憶えている程度でその場に倒れた旨の記載によれば、被告人D
がAの頭を数回撲つたことは明白である。論旨は理由がない。
 被告人Fの上告趣意について。
 論旨は結局原判決の事実の認定は誤つていると云うに帰するのであるが、事実の
認定は原審の専権に属するのであるからその事実認定を非難する主張は上告適法の
理由とすることはできない。また被告人がH連盟で拷問を受け予め作成した書類を
承認させられた旨の主張は、そのような書類が原判決の証拠となつていない本件で
は上告適法の理由とならない。
 被告人Dの上告趣意について。
 しかし原判決の事実認定が誤つている旨の主張は上告適法の理由とならない。ま
た多数の証拠のうち原審がどれを採用するかは原審の裁量によつて決まるのである
から原審の証拠の採否を非難する論旨は上告適法の理由とならない。被告人の上告
趣意のうち一、及び三は原判決認定の事実は真相でないというのであり、五、は被
告人の予審及び第一審における供述を証拠にしたのは不当であると云うに帰するか
ら、いずれも上告適法の理由にならない。上告趣意二は原審か証人Aを公判廷に喚
問しなかつた点を非難しているけれども原審公判調書によれば被告人又は弁護人か
ら裁判所に対して同証人を公判廷に喚問ありたき旨の申請をした形跡は認められな
いから、原審か同証人の予審及び原審公判廷外における供述を録取した訊問調書の
記載を証拠に採用した点に何等の違法はない。上告趣意四の被告人がI連盟保安隊
で拷問を受け被告人名義の書類が作成された旨の主張は、その書類が原判決の証拠
となつていない本件では上告適法の理由とならないまた上告趣旨六は被告人に悔悟
の念あることを述へ寛大な処置を願うと云うのであるが、かかる主張も亦上告適法
の理由とならない。それ故論旨はすべて採用できない。
 被告人Cの上告趣意について。
 論旨は被告人に対する司法警察官の聴取書は被告人がH連盟保安隊で拷問を受け
已むなく承認した自供書の写し換えただけのものであるから証拠とすることができ
ないと主張するけれども、原判決は被告人に対する犯罪事実認定の証拠として所論
の聴取書を採用していないから、この点の論旨は上告適法の理由とならない。次に
論旨は相被告人F及び同Dの第一審迄の供述は全部虚偽であつて同人等の原審公判
廷の供述及び被告人自身の予審以来の供述が真実であるに拘わらず原判決が前者を
証拠に採用した点を非難するけれとも、多数の証拠のある場合にそのいずれを措信
し採用するかは原審の裁量によつて決定できるのであつてその措置を非難する主張
は適法な上告理由とならない、更に論旨は被告人とEとの商談の経過、被告人が本
件強奪金の分配にあずからなかつた事実及び事件後被告人が相被告人等の逮捕に尽
力した事実等から被告人が本件強盗殺人の共犯者である旨の原判決の如き認定はで
きないと主張するがそれは結局原判決の事実認定は誤りであると云う主張に帰する
から上告適法の理由とならない。
 よつて刑訴施行法第二条旧刑訴第四四六条により主文の如く判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二四年七月二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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