弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A及び同Bの弁護人所竜璽の上告趣意について。
 原審公判調書を調べてみると、証拠調の部分に本件記録及別件記録中の意見書、
各盗難届領置書、各始末書、各被害始末書、各聴取書、各訊問調書、原審各公判調
書及判決書の各要旨を告げ」と記載されていること所論のとおりである。公判廷に
おいて証拠調をした書類を公判調書に記載するには、如何なる書類につき証拠調が
なされたかを明確にすれば足り、必ずしもその書類の一々につき個別具体的に掲記
する必要のないことは、しばしば当裁判所の判例(例えば昭和二二年(れ)第二七
七号、同年四月八日第一小法廷判決)に示されている通りであるとしても、「別件
記録」なるものが何を指すか明確でないことは、遺憾を禁じ得ない。しかし右のよ
うな記載によつても、少くとも本件記録中に存する各聴取書、各訊問調書等々につ
いては適法な証拠調がなされたことを知ることができる。そして原判決が証拠とし
て挙示している聴取書や訊問調書等は凡て本件記録中に見出し得る(尤も原判示第
一六(イ)の事実の証拠として挙示されている「司法警察官の被告人Aに対する第
二回被疑者聴取書」というのは、その内容から見て、司法警察官の被疑者Aに対す
る訊問調書」の誤記と認められる)のであるから、これ等の証拠書類については凡
て適法な証拠調のなされたことが明かである。さすれば原審公判調書の記載が上記
のように明確を欠く憾みはあるにしても、これを違法として原判決を破毀する程の
理由とはならない。論旨は採用することができない。
 被告人Aの弁護人楠朝男及び同信部高雄の上告趣意第一点について。
 論旨の採用し難いことは、所弁護人の上告趣意について示した説明によつて明か
であろう。
 同第二点について。
 しかし、原審公判調書に指摘されている記録三六五丁(裏)以下には、被告人の
経歴、資産収入、家族関係等が明かに記載されているから、論旨は全くその理由が
ない。
 被告人Aの弁護人楠朝男の上告趣意第一点について。
 論旨は、原判決摘示の第一六(イ)の犯罪事実について、被告人Aの第二審公判
廷における供述を援用し、同人は単に窃盗の意思を有していたに過ぎず、強盗の意
思を以つてその共謀を為したのではないと主張している。しかし被告人が公判廷に
おいて、自己の従前の供述や共犯者たる相被告人の供述と異なる供述をした場合に、
そのいずれを措信して証拠として採用するかは、事実審たる原審の裁判官の自由心
証に委ねられているところであるから、原審が被告人の第二審公判廷における供述
を証拠として採用しなかつたからとて何等の違法もない。そうして原判決挙示の証
拠によれば、所論強盗共謀の事実は十分に立証せられるのであるから、原審に所論
のような審理不尽の違法があつたとは認められない。
 又公判廷において裁判長が如何なる範囲限度に被告人の訊問を行い事実の取調を
なすかということも、事実審たる裁判所の自由裁量に委ねられていることである。
原審公判調書を調べてみると、被告人Aの弁護人藤井稔は終始公判に立会つていた
のであるから、若し裁判長の被告人訊問が不充分であると思料したときには、裁判
長に告げて補充訊問を為すなり、又は裁判長の処分に対して異議の申立を為す等の
手段によつて、被告人のためにその権利保護に努めることができた筈である。しか
し弁護人がそのような手段を執つた形跡のないことから見ても、原審公判における
取調は不当でなかつたことが推知できる。
 右のような次第であるから、論旨が原審の審理不尽や証拠の取捨の不当を非難し、
原判決の認定と異なる事実を前提として、原判決の法令の適用に誤りがあることを
主張しても、これを上告適法の理由あるものとして採用することはできない。
 同上第二点について。
 しかし憲法第三七条第一項に「公平な裁判所の裁判」というのは、構成その他に
おいて偏頗の惧れなき裁判所の裁判という意味であること(昭和二二年(れ)第一
七一号、同二三年五月五日大法廷判決)、従つて共同被告人間の刑の比較問題の如
きは、右の条項に関わりなきこと(昭和二三年(れ)第三六八号、同年七月一〇日
第二小法廷判決)は当裁判所の判例とするところであつて、今なおこれを改める必
要を認めないから、論旨は採用することができない。のみならず刑の量定は相被告
人の刑との権衝のみによつて決せられるものではなく、各個の被告人につき諸般の
情状を考慮して個別的に定められるのであるから、被告人の側から見て、相被告人
の刑と権衝を失すると思われたからとて、その刑が公平でないと即断することはで
きない。よつて論旨は理由がない。
 同上第三点について。
 しかし、論旨のような事情を参酌してもなお、その他の諸般の事情を綜合して考
慮すれば、原判決が被告人の刑を酌量減軽しなかつたことを以て、条理に反するも
のとは認められない。論旨はこれを法令違反と主張するけれども、それは結局原審
の量刑不当を非難することに帰着するから、上告適法の理由となり得ない。
 被告人Cの弁護人森永繁雄の上告趣意について。
 論旨は原判決が被告人Cと「懲役三年」(原判決は「懲役一年六月及び罰金千円」
を言渡している。論旨はこれを誤解したものと思われる)に処したことを不当に重
い刑として非難し、その理由を縷々述べている。しかし所論は凡て量刑不当の主張
に帰着するから、適法な上告理由となり得ない。
 以上の理由により最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項、旧刑事訴訟法第四
四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二四年七月五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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