弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成14年6月14日判決言渡 平成14年(ハ)第2471号 更新料等請求事

         主     文
1 被告は,原告に対し,金89万円を支払え。
2 訴訟費用は,被告の負担とする。
         事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文1項と同旨
第2 事案の概要
1 請求原因の要旨
(1)原告は,平成元年2月1日,被告に対し,東京都台東区a丁目b番c号1階所
在の店舗(以下「本件店舗」という。)を,賃料1か月27万円,賃貸期間同日か
ら3年間,更新料250万円,共益費1か月3000円の約定で賃貸(以下「当初
の賃貸借契約」という。)した。
 また,被告は,同年2月上旬ころ,原告との間で,被告が本件店舗入口の上部に
設置した看板(以下「本件看板」という。)の料金として1か月4500円を原告
に支払う旨合意した。
  (2)当初の賃貸借契約は,その後3年ごとに更新され,平成7年1月11日付
け更新契約(以下「本件賃貸借契約」という。)において,賃料は1か月31万円
となった。
(3)そこで,原告は,被告に対し,平成10年2月分の更新料として,賃料の
2か月分に相当する62万円,看板料同月1日から3年分16万2000円,共益
費同月1日から3年分10万8000円の合計金89万円の支払を求める。
 2 争点
  (1)更新料支払の特約があったか否か。
  (被告の主張)
    賃借人が更新料の支払義務を負うのはその旨特約した場合であるが,本件
賃貸借契約においては,「更新契約は社会通念に基づいて行う。」旨特約されてい
るに過ぎず,賃借人が更新料を支払う旨の特約がされたと解することはできない。
  (2)更新料支払の特約があった場合,法定更新の場合にも適用されるか否か。
  (3)看板料支払の特約があったか否か。
  (被告の主張)
本件看板は,当初の賃貸借契約が締結された平成元年に,被告が原告の了
解を得て,美容院「A」開店当初から今日まで設置してきたものであり,原告が今
になって本件看板の費用を請求するのは,賃料の一方的な増額要求であり理由がな
い。
  (4)共益費支払の特約があったか否か。
   (被告の主張)
    本件賃貸借契約には,共益費の定めはなく,むしろ,「管理費 賃料に含
む」とされており,共益費を別途請求しない趣旨であることは明白である。原告の
共益費の請求もまた,賃料の一方的な増額要求であり理由がない。
第3 争点に対する判断
1更新料支払の特約があったか否かについて
原告代表者は,被告が当初本件店舗を賃借するに際し,更新料として250万
円を提示したので,被告と賃貸借契約を締結することにした旨主張し,その旨供述
するが,もし,そのとおりであるとすれば,当初の賃貸借契約の際に作成された賃
貸借契約書(乙第2号証)には,その旨の合意が記載されて然るべきと思われると
ころ,当初の賃貸借契約書(乙第2号証)には,特約条項として「更新契約は社会
通念に基いて行う。」としか記載されていないことからすれば,原告代表者の上記
主張及び供述を採用することはできない。
  なお,平成7年1月11日付けの本件賃貸借契約に関する契約書(甲第1号
証)にも,特約条項として,上記と同様の記載のあることが認められる。
ところで,証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件店舗の賃貸借契約は,平成元
年2月に締結後,平成4年,平成7年と合意更新されており,平成4年の更新の際
には,金額は明らかでないものの一定額の更新料が支払われたこと,平成7年の更
新の際には,本件賃貸借契約に関する契約書(甲第1号証)が作成された後である
同年11月15日に約250万円の更新料が支払われたことを認めることができ
る。
  そうすると,当初の賃貸借契約及び本件賃貸借契約において,契約書には特約
条項として「更新契約は社会通念に基いて行う。」としか記載されなかったもの
の,その後の更新の際に,上記のとおりの更新料が授受されていたことからすれ
ば,当事者間においては,上記特約条項には,更新料支払の合意を含む趣旨であっ
たと解するのが相当である。
2 更新料支払の特約があった場合,法定更新の場合にも適用されるか否かについ

  証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件賃貸借契約について,当事者間で契約更
新に関する交渉が行われたものの,合意に至らないまま,賃貸期間の満了日である
平成10年1月31日が経過し,その後においても,原告と被告間に更新契約が締
結されていないことが認められるので,本件賃貸借契約は,法定更新され,期間の
定めのない賃貸借契約となったといえる。
そこで,賃貸借契約が法定更新された場合,賃借人に更新料の支払義務がある
か否かであるが,賃貸期間が経過した後でも本件店舗の使用が継続されるという点
では法定更新も合意更新も異なることはないこと,更新料の性質については諸説が
あるが,賃料の補充ないし異議権放棄の対価の性質を有すると解するのが相当であ
り,本件においては,原告は,更新拒絶の通知をせず,被告の使用継続に対して異
議も述べていないこと,当事者間において,賃貸借契約の更新を前提としながら,
更新に関する協議が整わない間に法定更新となった場合に,賃借人が更新料の支払
義務を免れるとすれば,賃貸人との公平を害するおそれがあることなどを総合考慮
すると,本件賃貸借契約においては,法定更新の場合にも,更新料支払の特約が適
用され,被告はその
支払義務を免れないというべきである。
ところで,原告は,更新料として,本件賃貸借契約における賃料額の2か月分
である62万円を請求しているが,本件賃貸借契約における賃貸期間が3年である
こと,使用目的が店舗であることからすれば,相当な請求であると解される。
3看板料支払の特約があったか否かについて
証拠及び弁論の全趣旨によれば,当初の賃貸借契約が平成4年に合意更新され
た際に,被告は,原告に対し,看板料として,月額4500円の3年分を支払った
ことが推認されること,次の平成7年の合意更新の際には,被告は,原告から更新
料として250万円,看板料月額4500円の3年分16万2000円,共益費月
額3000円の3年分10万8000円の合計金277万円並びに被告が原告から
賃借している同じビル内の201号室,202号室及び302号室の共益費の合計
金28万8000円の合計金305万8000円を請求され,交渉の結果300万
円を支払うことで合意が成立し,被告は,原告に対し,平成7年11月15日にそ
の支払をしたことが認められるし,その後,当事者間に看板料の支払義務を免除し
たり,異なる合意を
した事実を認めることができないことからすれば,従前の看板料支払の合意が維持
されたと認めるのが相当である。
  したがって,被告は,原告に対し,請求原因の要旨3項に記載の看板料の支払
義務があるというべきである。
4共益費支払の特約があったか否かについて
当初の賃貸借契約において作成された賃貸借契約書(乙第2号証)には,共益
費は賃料に含む旨記載されていること及び本件賃貸借契約において作成された賃貸
借契約書(甲第1号証)には,単に,管理費は賃料に含む旨記載されているだけ
で,共益費に関する記載はされていないことが認められる。しかし,証拠及び弁論
の全趣旨によれば,当初の賃貸借契約が平成4年に合意更新された際に,被告は,
共益費として,月額3000円の3年分を支払ったことが推認されること,次の平
成7年の合意更新の際には,原告の共益費月額3000円の3年分を含めた請求に
対し,前項で認定のとおりの経過により,被告がその支払をしていること,その
後,当事者間に共益費の支払義務を免除したり,異なる合意をした事実を認めるこ
とができないことからす
れば,従前の共益費支払の合意が維持されたと認めるのが相当である。
  したがって,被告は,原告に対し,請求原因の要旨3項に記載の共益費の支払
義務があるというべきである。
5以上によれば,原告の請求は理由があるので,主文のとおり判決する。
    東京簡易裁判所民事第1室
        裁 判 官   若  生  朋  美

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛