弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和四六年一二月二五日付でした控訴人
の昭和四四年四月一日から昭和四五年三月三一日までの事業年度の法人税及び無申
告加算税を賦課する処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とす
る。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上、法律上の主張、証拠の提出、援用、その認否は、次のとおり
附加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
(控訴人の主張)
本件建物は、昭和二六年三月頃居関稔が建築したもので、昭和四四年一〇月四日控
訴人が所有権を取得するまでに建築後一八年七ヶ月を経過した中古資産であるとこ
ろ、減価償却についての税法の規定によれば、本件建物の耐用年数は一五年と定め
られているのであるから、本件建物については税法上減価償却を認められないこと
になる。したがつて、本件建物の取得に要した総費用のうち家屋課税台帳に記載さ
れた本件建物の価額八八万一〇〇円を控除した六三六万三八七〇円は控訴人の本件
事業年度の損金として取扱うベきである。
(被控訴人の主張)
本件建物のような中古資産についても減価償却が認められることは、法人税法二条
二四号及び同法施行令一三条の規定に照らし明らかである。したがつて、本件建物
について減価償却が認められないことを前提とする控訴人の主張は理由がない。
○ 理由
一、被控訴人が控訴人の本件事業年度分の法人税につき控訴人主張の各課税処分を
したこと、控訴人が右課税処分につきその主張のとおり異議申立をし、被控訴人が
これを棄却する決定をしたこと、及び控訴人がその主張のとおり審査請求をした
が、三ヶ月以上経過してもこれに対する裁決がなかつたことは、当事者間に争いが
ない。
二、そこで、本件各処分につき控訴人主張の違法が認められるか否かについて判断
する。
(一) 建物の取得価額について
被控訴人が、本件処分に際し控訴人主張の六三六万三八七〇円について、控訴人の
本件事業年度の損金として認めなかつたことは、当事者間に争いがない。
しかしながら、控訴人が食品の製造販売を業とする株式会社であること、本件建物
は控訴人がその営業のために賃借して使用中、売買によつて取得し、引続きこれを
営業の用に供しているものであることは、弁論の全趣旨により明らかであるから、
本件建物は、法人税法二条二四号及び同法施行令一三条にいう減価償却資産に該当
するものということができる。控訴人は、本件建物はその取得時においてすでに法
定耐用年数を経過した中古資産であるから、減価償却が認められないと主張するけ
れども、前記各法条には中古資産を減価償却資産から除外する旨の定めはなく、更
に、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四〇年三月三一日大蔵省令第一
五号)三条一項には中古資産の減価償却についてはその耐用年数につき特別の定め
をしているのであるから、法人税法は、法定耐用年数を経過した中古資産を取得し
た場合であつても減価償却を認めているものと解される。そして減価償却資産につ
いては、その取得価額を基礎として同法施行令四八条ないし五〇条の規定にしたが
つて、逐次償却すべきものと定められているのであるから、減価償却資産の取得価
額について右の規定にしたがわず、一括してその取得した事業年度の損金として扱
うことは許されないものといわねばならない。そして、減価償却資産の取得価額に
ついては、同法施行令五四条一項一号は、(イ)当該資産の購入代価(引取運賃、
荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、その他当該資産の購入のために要した費
用額がある場合にはその費用を加算した額)、(ロ)当該資産を事業の用に供する
ために直接要した費用の合計額をもつてその取得価額とする旨を定めているが、こ
れは当該資産の取得のために現実に要した費用は全て当該資産の取得価額を構成す
るものとする趣旨である。したがつて、控訴人が本件建物を取得するために、その
主張のとおりの金員を要したとすれば、その費用額は全て本件建物の取得価額とな
るものと解される。このことは、控訴人が本件建物をその取得以前に賃借して使用
中であつたとしても、何ら異なるべきものとは解されず、本件建物の取得価額を固
定資産税課税のための評価額に限定し、その余の取得に要した金額は本件事業年度
の損金として処理すべきであるとの控訴人の主張は採用できない。
したがつて、被控訴人が本件処分において控訴人の主張する六三六万三八七〇円に
つき控訴人の本件事業年度における損金と認めなかつた点に違法はない。
(二) 設備機械等の減価償却費について
被控訴人が本件処分に当たり控訴人主張の金額の減価償却費を本件事業年度の損金
として認めなかつたことは、当事者間に争いがない。しかしながら、本件事業年度
に控訴人主張の減価償却がなされたことを認めるに足りる証拠はないのみならず、
法人税法三一条一項によれば、減価償却費として税務計算上損金として認められる
のは、当該法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のう
ち、その法人が選定した償却の方法に基き政令で定めるところにより計算した金額
に達するまでの金額とすると定められているのであるから、税務当局は法人が損金
経理を行つた減価償却費について課税所得の計算上損金に算入すべき減価償却費の
額を判定すれば足り、法人が損金経理しないのに税務当局が進んで損金の額に算入
することは認められないというべきである。そして、損金経理とは、法人がその確
定した決算において費用または損失として経理することをいう(法人税法二条二六
号)とされている。ところが弁論の全趣旨によれば、控訴人は本件事業年度の法人
税額等につき確定申告書及びその添付書類である減価償却に関する明細書を提出し
ていなかつたことはもとより、本件事業年度における確定した決算書さえ作成せず
前記減価償却費について損金経理をしていなかつたことが認められ、この認定を左
右するに足りる証拠はない。
したがつて、被控訴人が控訴人主張の減価償却費を考慮せずに本件事業年度の控訴
人の所得金額を算出した点に違法はない。
三、以上のとおりであつて、本件各処分に違法があるとは認められないから、控訴
人の本訴請求はその理由がなく、これを棄却した原判決は相当であつて、本件控訴
は理由がない。
よつて、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担について民訴法九五条、八
九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 外山四郎 篠原幾馬 小田原満知子)

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