弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1被告Y1は,別紙認容額一覧表(1)の原告氏名欄記載の各
原告に対し,各原告氏名欄に対応する金額欄記載の各金員及
びこれに対する平成16年5月28日から各支払済みまで年
5分の割合による金員を支払え。
2被告Y2は,別紙認容額一覧表(2)の原告氏名欄記載の各
原告に対し,各原告氏名欄に対応する金額欄記載の各金員及
びこれに対する平成16年5月28日から各支払済みまで年
5分の割合による金員を支払え。
3被告Y3は,別紙認容額一覧表(3)の原告氏名欄記載の各
原告に対し,各原告氏名欄に対応する金額欄記載の各金員及
びこれに対する平成16年5月28日から各支払済みまで年
5分の割合による金員を支払え。
4原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用の負担は,別紙訴訟費用負担一覧表記載のとおり
とする。
6この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行するこ
とができる。
事実及び理由
第1請求
被告らは,連帯して,各原告に対し,別紙損害目録の各原告氏名欄に対応す
る請求額欄記載の各金員及びこれに対する平成16年5月28日から支払済み
まで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,平成16年4月21日に破産宣告を受けた株式会社フォレックスジ
ャパン(以下「フォレックス社」という。)の勧誘により台湾所在のU社の為
替証拠金取引の顧客として金員を支出した原告らが,フォレックス社の取締役
であった被告らに対し,実際には原告らから預託された金員をもって為替証拠
金取引が行われた事実はなく,フォレックス社とU社が共謀して原告らの預託
金を詐取したものであり,フォレックス社の取締役であった被告らはこれを認
識あるいは放置することにより原告らに損害を与えたなどとして,不法行為又
は商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)266条
ノ3第1項の責任に基づく損害賠償及び訴状送達の日の翌日である平成16年
5月28日からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求めた
事案である。
1前提事実(証拠掲記のないものは,当事者間に争いがない。)
(1)フォレックス社は,平成12年9月1日に設立された,国際金融情報通信
提供サービス業務,外国為替情報通信コンサルタント業務等を目的とする株
式会社である。フォレックス社の資本金は2000万円(設立時は1000
万円。)で,株主及びその持株比率は,被告Y1が50パーセント,被告Y
2が10パーセント,Fが40パーセントであった(甲全3,7)。
フォレックス社は,平成16年4月21日,那覇地方裁判所において,破
産宣告を受けた。
(2)被告Y1は,フォレックス社の設立発起人として,フォレックス社の設立
に関与し,フォレックス社が設立され,破産宣告を受けるまで,フォレック
ス社の代表取締役であった(甲全3,7)。
被告Y2は,平成13年7月31日,フォレックス社の取締役に就任し,
フォレックス社が破産宣告を受けるまでフォレックス社の取締役であった
(甲全3,7)。
被告Y3は,フォレックス社の設立時にフォレックス社の取締役に就任し,
平成13年7月31日に取締役を辞任した(なお,取締役辞任登記は同年8
月3日にされている。)(甲全4,丙全1,被告Y3本人)。
2争点及び争点に対する当事者の主張
(1)フォレックス社の違法行為の有無
(原告らの主張)
アフォレックス社が,いわゆる「のみ行為」(相場性を有する取引の仲介
業者が,取引の仲介を行わず,自らが取引の当事者となること。)を行い,
あるいは適切な取引の仲介をしなかったこと
(ア)フォレックス社は,U社の仲介業者として,顧客を勧誘し,その仲介
により,U社と顧客との間に,為替証拠金取引のための預託金を振り込
み管理するための管理口座開設契約を締結させ,その後は,U社が顧客
の代理ディーラーとして,取引管理口座の管理を行うとともに,顧客の
指示に基づき為替市場で為替取引売買を行うこととされていた。
しかし,U社は実際には外国為替取引を行っていたとは認められず,
フォレックス社は,いわゆる「のみ行為」を行っていたものである。
この点,被告らは,U社がG銀行やH銀行などとの間で外国為替取引
をしている内容の明細書を提出して,取引が存した旨主張する。しかし,
これらの明細書は,U社が各金融機関との間である特定の時期に一定額
の限度で外国為替取引をしたことがあることの証拠でしかない。これら
の取引が原告らの投資を始めとしたフォレックス社を経由した投資の運
用であったことを裏付ける証拠はなく,ましてやこれらの投資の全額が
運用されていたことの証拠も存しないのである。
(イ)また,そもそも,外国為替取引を実際に行っているのであれば,いつ,
どのレートでいくらの数量の取引をしたのかということが個別に明らか
にされるはずである。ところが,U社が各顧客に送付した明細書は,各
月の最終的な収支の口座残高報告書のみであり,またフォレックス社そ
のものもU社から同様の収支報告しか受けてなく,個別取引の存否及び
内容については全く把握していない。このような最終的な収支報告のみ
であれば,全く取引をしていなくとも数字を適当に書き込めば短時間で
できるのであり,取引の事実の裏付けには何らなり得ない。
(ウ)さらに,顧客との契約上,外国為替証拠金取引そのものはU社が行う
こととされていたが,フォレックス社の破産管財人の報告書によれば,
Fが代表者であるI社,F,U社及びフォレックス社の合意により,U
社が顧客から集めた資金の運用は,3割をI社,3割をF,U社及びフ
ォレックス社が行うこととされ,実際にフォレックス社も全体の1パー
セントないし5パーセントを運用していたとされている。しかし,上記
報告書によっても,実際の各自の運用額は全く不明であり,フォレック
ス社も直接運用していたというのにもかかわらず,その運用実績さえど
こにも明らかになっていない。
(エ)U社は,香港では,現在では無許可の海外業者,詐欺まがいの業者,
ペテン業者の1つとしてリストアップされている業者であり,Fは,台
湾で以前に投資家から金員を詐取する詐欺行為を行った人物でもある。
フォレックス社が,U社との業務提携前の平成12年4月にU社の信
用調査を行ったとされるが,同調査の報告書中にはU社の営業登記項目
として投資顧問業の記載があるのに対して,実際にU社が投資顧問業を
事業目的に追加したのは平成13年4月16日であり,同調査の時期に
は疑問も指摘されている。
このような実態から,U社が実際に取引をしていたかどうかは,さら
に疑念が大きくなるといえる。
(オ)U社が実際に取引を行っていなかったことは,同社が毎月利益を上げ
ている旨報告していたにもかかわらず,突然破たんし,68.2パーセ
ントもの預り金を返還できなくなったこと,そしてその原因も未だ不明
であることからも裏付けられる。本当に外国為替証拠金取引を継続して
きて破たんしたのであれば,いつのどのような投資が失敗して破たんし
たのかは容易に説明がつくはずであるにもかかわらず,明らかでない。
(カ)以上のような事実からすれば,フォレックス社は「のみ行為」を行っ
ていたといえるところ,「のみ行為」が取引市場における公正価格の形
成を阻害するのみならず,顧客の正当な利益を害することは明らかであ
る。
フォレックス社は,U社との外国為替証拠金取引を仲介するとして,
顧客を勧誘し,顧客から手数料収入を取得する立場にあったのであるか
ら,少なくとも,U社に取引事実を適切に確認するなどして,顧客の委
任の趣旨に基づいて適切に外国為替証拠金取引を仲介する義務があった
というべきであるが,前記の事実に照らせばこれらの義務を怠ったとい
える。
イ不適切な信託的な運用であったこと
(ア)フォレックス社は,顧客に対して配布している「為替マージン取引説
明書」において,顧客がフォレックス社を介して直接U社に個別の売買
注文をするシステムであると説明している。
他方,顧客のU社に対する「外国為替マージン売買取引代理人委任同
意書」においては,U社に売買を一任する内容であるかのような契約内
容となっている。
このように,顧客に対しては,極めて不明確な説明内容になっている
が,現実には全く一任売買で,顧客からの売買取引指示は全くなかった。
(イ)一任売買や無断売買は,商品先物取引においては,平成16年法律第
43号による改正前の商品取引所法136条の18第3号(現214条
3号)で禁止行為とされている。一任売買や無断売買は,顧客の自己責
任が及ばないところで取引業者によって取引がされることによって,顧
客に不測の損害を生じさせかねないのみならず,取引業者が個々の取引
の手数料収入により収益を得ているために,顧客の損失によって取引業
者の利益のみを得る手数料稼ぎに利用されるおそれが極めて高いからで
ある。
この理は,取引業者が売買成立ごとに一定の手数料収入を得て一般投
資家の取引を仲介する外国為替証拠金取引においても当てはまるもので
ある。
(ウ)したがって,フォレックス社の勧誘した取引が,システム上一任売買,
無断売買とされていること自体,違法性を有するものというべきである。
ウ勧誘手段の違法性について
(ア)断定的判断の提供
外国為替証拠金取引は,日々相場が変動する外国為替市場における投
機であって,その動向の予測は極めて困難であり,確実性に乏しいもの
である。ところが,フォレックス社においては,顧客勧誘時に,会社ぐ
るみで,そのことを隠ぺいし,U社が行う為替証拠金取引では,多額の
金員をかけて独自に開発したコンピュータプログラムに基づいて取引を
行うものであって,確実にもうけることができるとの断定的判断,すな
わち虚偽の説明を繰り返してきた。
すなわち,フォレックス社は,その会社紹介のパンフレットにおいて,
Fの挨拶として,「FOREXSOFTWAREは研究開発に十数年
をかけて数百万米ドルを投じ完成したもので,運用実績として理想的な
利益回収率実績がシミュレーション上計上されております。」とし,ま
た,フォレックスソフトウェアメカニズムとして,「指標的中率90%
前後を誇るプログラム」と紹介している。さらに,フォレックス社が発
行する「JPF2001」紹介のパンフレットでは,平成13年9月か
ら平成15年7月までの運用実績として「運用率94.6%」とほとん
ど利益が出ているような説明をし,「運用シミュレーション」として,
毎月の利回りが1.6パーセントある前提でシミュレーションをするな
どしている。また,同パンフレットの「Q&A」では,「法律上『元本
保証』という文書表現は出来ません。」としつつ,「損切りが発生した
場合極めて少額にコントロールする事が出来るノウハウがあります。」,
「損切りの場合においても,次回の運用の利益で穴埋め出来る資金運用
をしています。」と断定的な記載がされている。
このほか,フォレックス社金沢支店が作成した「Q&A」にも,同様
の記載がされているほか,「世界で初めて,90%以上の勝率を実現し
ている為替売買プログラムシステムです。」と説明されている。
フォレックス社社員による顧客に対する説明会でも,同種の説明がさ
れており,JPF2001というコンピュータソフトは,勝率が9割を
超えている,10回取引したときに1回はマイナスが出ても,9回はプ
ラスになる,顧客の資金を運用しはじめて29か月間一度もマイナスを
出したことがないなどといった説明がされている。
しかしながら,JPF2001というコンピュータソフトが90パー
セント以上の確率で当たるということを示す客観的証拠は何ら存在せず,
市場の実態からしても,そもそもコンピュータソフトによってそれだけ
の確率で予測が可能なシステムなど存在し得ないのは自明のことである。
現実にU社は破たんし,未曾有の消費者被害を出している事実からして
も,JPF2001というコンピュータソフトに信用性がないことは明
らかである。
断定的判断の提供についても,商品先物取引では,平成16年法律第
43号による改正前の商品取引所法136条の18第1号(現214条
1号)により禁止されている。それは,市場原則にも反する虚偽の説明
とならざるを得ないからであるが,またかかる収益の確実性を勧誘文言
とすることによって,消費者の冷静な判断を大きく誤らせるからである。
かかる言動による取引勧誘は詐欺的といってもよい。外国為替取引の勧
誘においても,断定的判断の提供の違法性の本質からすれば,違法な勧
誘行為となることは論を待たない。
(イ)取引内容の説明義務違反
フォレックス社は,顧客勧誘の過程においても,フォレックス社が仲
介業者(イントロデューシングブローカー)であって,実際の取引はU
社が行うということなどについて,顧客らに十分な説明をしていない。
売買取引の注文はU社宛に出すということをパンフレットなどで説明し
ているのに,具体的にどのような方法で注文すべきかという説明もない。
ましてやこれがすべて顧客にリスクを転嫁させながらの一任売買であ
ること,U社以外にもI社やF個人,更にはフォレックス社そのものも
分担して運用することも全く知らされていなかった。
また,一部の顧客との間では,「外国為替マージン売買取引代理人委
任同意書」締結の際の当事者としてU社ではなく,フォレックス社自体
が記載されているものもある。
以上のように,フォレックス社は,顧客を勧誘するに当たって,一般
的にその取引の内容の実態や危険性などについて全く説明をしておらず,
説明義務違反というべきである。
(ウ)普及員による勧誘の違法性
フォレックス社では,顧客の勧誘に当たっては,一般顧客から普及員
を選任し,これらの者が新たな顧客を勧誘すれば手数料を支払うという
取引形態を作り出している。そして,この手数料は,普及員が更に普及
員を勧誘することによって下部の普及員に手数料が入るとともに,上部
の普及員にも手数料が入る仕組みが作られていることによって高額化し,
マルチ商法に近い形態となっている。
商品先物取引においては,その専門性と投機性の高さから,外務員に
ついては登録制とされ,主務大臣による監督に服する。これは違法な勧
誘の抑止と,複雑な取引を顧客自身が判断する必要性から求められるも
のである。これらと極めて類似した取引である外国為替証拠金取引のた
めの外務員についても,誰でもよいということにならないのは当たり前
であって,しかも手数料をインセンティブとしたマルチ商法的な勧誘方
法で普及員を採用するのは最もふさわしくないといえる。
フォレックス社は,普及員に対して,異常に高い手数料を支払ってお
り,このような異常に高い手数料の存在が,普及員に顧客の取引経験や
資力などの適格性を無視した無謀な勧誘をさせるに至った一因というこ
とができる。
このように,専門性を持たない顧客である普及員に高額な手数料とい
うインセンティブを与えることによって顧客を勧誘するフォレックス社
のシステムそのものが,説明義務違反を惹起させるとともに高度な専門
性を要する外国為替証拠金取引への参入の不適格者を大量に契約に引き
込むことになったのであり,かかる勧誘方法そのものも違法性を帯びて
いるというべきである。
エ以上のとおり,違法な取引の仕組みがフォレックス社の唯一かつ核心た
る業務であり,代表取締役から末端の社員まで当然にこれらの仕組みを前
提とした業務を遂行していたのである。まさに会社ぐるみの違法行為とい
うことができる。
したがって,フォレックス社自体が原告ら顧客に対して,不法行為責任
を負う。
(被告らの主張)
ア(ア)原告らは,まず,U社が外国為替証拠金取引を行っていないことを前
提として,フォレックス社には,U社と共謀するか,U社が真実は外国
為替証拠金取引を行っていないことを知りながら,これを行っていると
称して,原告ら投資家をだまして,預託金名目で多額の出金をさせた不
法行為があるなどと主張する。
しかし,U社は,投資家との管理口座開設契約書に基づき,G銀行や
H銀行に外国為替直物マージン取引を行うため管理口座を開設し,数々
の外国為替証拠金取引を行っていた。
したがって,U社が外国為替証拠金取引を行っていないことを前提と
する原告らの主張は,理由がない。
(イ)フォレックス社は,その株主及び取締役構成がU社とは別であり,両
会社は別個独立の会社である。フォレックス社が直接外国為替証拠金取
引をするのではなく,取引はU社が行い,フォレックス社はU社への投
資を仲介する仲介業務を目的としている会社であり,しかも,フォレッ
クス社はU社の日本における唯一の仲介代理業者である。そして,フォ
レックス社はその仲介業務を行った手数料を収入として会社を運営して
いるのであるから,会社を維持し,発展させるためには,仲介業務を熱
心に行い拡大させる必要がある。フォレックス社は,U社の代理人とし
て原告ら投資家との間で,U社を代理して管理口座開設契約を締結し,
外国為替マージン売買取引代理人委任同意書を投資家から取得すべき権
限と義務を有している。
したがって,フォレックス社が,U社の代わりに原告ら投資家と契約
書を締結したり,原告らのために資料を送付したり,解約の手続を受け
付けたりしたのは,U社の仲介業者としての性質とU社の日本国内にお
ける唯一の代理人という性格から来るものであり,決して,U社とフォ
レックス社とが一体となっていたのではない。
イ(ア)フォレックス社の普及員は,原告ら顧客に対し,外国為替証拠金取引
について,必ずもうかると称して勧誘行為を行っておらず,被告らは,
そのような勧誘について普及員に対し指導したこともない。逆に,違法
な勧誘行為をしないよう厳しく指導していた。フォレックス社の普及員
は,外国為替証拠金取引が投機性の強い,高度な知識を要する経済活動
でリスクを伴う危険性の高い行為であることを原告ら顧客に説明した上
で,U社に対する預託金の出金に応じてもらっていた。
そして,原告らは,すべて外国為替証拠金取引説明書を精読した旨の
確認書に署名捺印している。
フォレックス社では,80歳以上及び20歳未満の顧客には契約を断
るなどしてリスクの説明を理解できない可能性のある人との取引を行わ
ないようにしていた。
フォレックス社の普及員が,JPF2001というコンピュータソフ
トの勝率について説明しているところはあるが,投資そのものについて
90パーセント以上の確率でもうかるという説明はしていない。
(イ)フォレックス社は,前記(ア)のとおり,外国為替証拠金取引説明書を
示し,外国為替証拠金取引の仕組みや危険性を十分説明した上で,仲介
行為を行った。また,フォレックス社の本社及び各支店において,本社
ではほぼ土日を除く毎日,支店では必要に応じて,外国為替証拠金取引
の仕組みや危険性に関する説明会(セミナー)を行っていた。さらには,
外国為替証拠金取引を行っていた香港及びマカオにあるU社の見学会と
現地における説明会を原告ら投資家に行っていたのであり,投資家に十
分な情報を提供してこなかったという原告らの主張は全く的はずれであ
る。
(2)被告らの個人責任の有無
ア被告Y1について
(原告らの主張)
(ア)不法行為責任
a会社の業務行為そのものが違法であり,これにより他人に損害を与
えた場合,会社ぐるみで違法行為を行っているのであるから,会社の
機関として業務遂行を行う取締役は,故意又は過失により,他人に損
害を与えたものとして,個々には民法709条により,そして会社ぐ
るみであるから民法719条の共同不法行為により各取締役は連帯し
て損害賠償責任を負う。
本件では,前記(1)のとおり,フォレックス社が唯一かつ核心たる
業務として行った業務が違法な取引であり,代表取締役から末端の社
員まで当然に違法な仕組みを前提とした業務を遂行し,会社ぐるみで
違法行為を行っていたのであるから,各取締役は民法709条,71
9条により,原告らに生じた損害を賠償する義務がある。
b被告Y1は,U社の行う為替証拠金取引の仲介業を行うことを目的
とすると称して,フォレックス社を設立したが,U社が為替証拠金取
引を行い得る立場にはないことを知りながら,原告らを勧誘して金員
を詐取する目的でフォレックス社の設立を行ったものである。
仮に,被告Y1がU社の取引実態を知らなかったとしても,フォレ
ックス社設立当初にU社の信用を十分に調査すべきであったし,また,
フォレックス社の行う業務内容からすると,U社の取引実態を容易に
把握できたのであるから,勧誘行為を直ちに停止する等すべきである
のに,原告らに対する勧誘行為を繰り返し行ったものである。
また,フォレックス社の勧誘行為は,前記(1)(原告らの主張)の
とおり,違法であり,被告Y1は,その代表取締役として,違法な勧
誘行為を助長する取引形態を会社組織として立案実施したものとして
不法行為責任を負う。
(イ)商法266条ノ3第1項に基づく責任
本件において,前述のとおり,フォレックス社は違法な行為を行って
いたものであるが,各取締役は,かかる違法行為を直ちに中止し,原告
らの被害を防止すべきであったのに,これを怠ったものであり,取締役
の善管注意義務に違反する任務懈怠行為があったものである。
しかも,被告Y1は,フォレックス社が違法行為をすることを知り,
又は知り得べき立場にあったこと,積極的に設立に関与してフォレック
ス社の代表者になったこと,U社への調査は行っていないか,ずさんな
ものしかしていないこと,フォレックス社の業務の把握,社員の監督は
不十分であること,そもそもJPF2001というあり得ないプログラ
ムを軽信していること等からして,被告Y1には,取締役としての任務
を懈怠したことにつき悪意又は重過失がある。
したがって,取締役である被告Y1は,商法266条ノ3第1項に基
づく損害賠償責任は免れない。
(被告Y1の主張)
(ア)フォレックス社が違法行為を行っていなかったことについては,前記
(1)(被告らの主張)のとおりであり,原告らの主張はその前提を欠く
というべきである。
(イ)また,原告らが損害であると主張する金員は,原告らがU社に送金し
たのであって,フォレックス社自身は受領していない。
仮に,被告らが,原告らから金員を詐取する意図を有していたのであ
れば,実際に原告らは多額の金員を振り込んでいるのであるから,それ
相応の利益が被告らに還元する結果となっているはずである。しかしな
がら,フォレックス社が平成12年10月から平成15年11月までに
募集した投資金の総額は2億3305万4324米ドル(1ドル110
円で換算すると,256億3597万5640円となる。なお,以下単
に「ドル」と表示する場合は「米ドル」を指す。)であるのに対し,被
告Y1が受領した報酬額は3年間で2920万円,被告Y2が受領した
報酬額は1910万円であるにすぎない。被告Y1及び被告Y2が欺罔
行為を主体的に行ったものとすれば,もっと多額の報酬を得るのが自然
である。
また,フォレックス社の各普及員の受領した手数料は,被告ら取締役
の報酬をはるかに超えている。被告らが主体的に欺罔行為を行おうとす
る意図があったのであれば,当然これら普及員が受領した金員以上の報
酬が被告らに支払われているはずであって被告らに欺罔の意図があった
とすれば余りにも不自然である。
こうした状況を考えても,被告らに原告らから金員を詐取する意図が
なかったことは明らかである。
(ウ)以上の問題を抜きにしても,会社を設立した行為自体が原告らに対す
る欺罔行為であるとする原告らの主張には無理があるといわざるを得な
い。
会社設立自体に何ら違法はないことはもとより,そもそも会社設立段
階,遅くとも会社が設立された段階において,フォレックス社と原告ら
の間には契約関係はもとよりそもそも相互に面識すらなかったものであ
り,原告らに対する故意責任を問題にする余地はないものである。
また,原告らの主張する不法行為責任(過失責任)については,過失
の内容として勧誘行為を中止すべき義務を挙げているが,上記のとおり,
設立段階においては,契約当事者として認識されていない原告らに対す
る過失を構成することは困難である。
(エ)勧誘行為の違法については,フォレックス社は,原告らに対し,外国
為替取引のリスクを説明し,原告らもそのリスクを十分認識の上投資を
決断しているものであり,このことは原告らが外国為替マージン売買取
引代理人委任同意書及び為替マージン取引説明書を精読した旨の確認書
に署名,押印していることからも明らかである。
また,前記(1)(被告らの主張)イ(ア)のとおり,フォレックス社の普
及員は,原告ら顧客に対し,外国為替証拠金取引について,必ずもうか
ると称して勧誘行為を行っておらず,被告らは,そのような勧誘につい
て普及員に対し指導したこともない。逆に,違法な勧誘行為をしないよ
う厳しく指導していた。フォレックス社の社員は,外国為替証拠金取引
が投機性の強い,高度な知識を要する経済活動でリスクを伴う危険性の
高い行為であることを原告ら顧客に説明した上で,U社に対する預託金
の出金に応じてもらっている。
以上のとおり,原告らの,フォレックス社の普及員が必ずもうかると
いう勧誘をしていたので被告らに責任があるという主張は事実に反し,
理由がない。
(オ)商法266条ノ3第1項の責任について
会社の設立自体が被告Y1の原告らに対する責任を基礎付けるもので
ないことは,前記(ウ)のとおりである。
また,U社が外国為替証拠金取引を行い得る立場になかった点を調査
すべきとする点についても,そもそもその前提に誤りがあることは,前
記(ア)のとおりである。
そして,被告らは,U社がどのような会社か,台湾のリサーチ会社に
調査を依頼し,最低限度手形不渡り等による銀行取引停止処分を受けた
ことがないことや業績が不振でないことを調査し,現地の会社の状況を
見分して取引を開始した。また,U社の取引がされているのか否か疑問
が生じた際には,通常では,外国為替証拠金取引についてその取引履歴
を公表しないとされている銀行に交渉して,同社が銀行において外国為
替証拠金取引を行っている取引履歴の明細書を取得し,同社が外国為替
取引を行っていることを確認しているのである。
さらに,フォレックス社の普及員は,原告ら顧客に対し,外国為替証
拠金取引について,必ずもうかると称して勧誘行為を行っておらず,被
告らは,そのような勧誘について普及員に対し指導したこともない。逆
に,違法な勧誘行為をしないよう厳しく指導していた。フォレックス社
の普及員は,外国為替証拠金取引が投機性の強い,高度な知識を要する
経済活動でリスクを伴う危険性の高い行為であることを原告ら顧客に説
明した上で,U社に対する預託金の出金に応じてもらっていた。
以上のとおり,被告Y1について,業務執行上の任務懈怠はないし,
悪意,重過失もない。
イ被告Y2について
(原告らの主張)
(ア)不法行為責任
被告Y2は,取締役に就任するにあたり,フォレックス社が,U社の
行う為替証拠金取引を行い得る立場にはなく,原告らを勧誘して金員を
詐取する目的で設立されたことを知っていたものであり,フォレックス
社が組織的に業務を継続することを共同したものであって,不法行為責
任を負う。
仮に,被告Y2がU社の取引実態を知らなかったとしても,同被告は
フォレックス社の取引実態を容易に把握できたのであるから,勧誘行為
を直ちに停止する等すべきであるのに,原告らに対する勧誘行為を繰り
返し行ったものであり,不法行為責任は免れない。
(イ)商法266条ノ3第1項の責任
フォレックス社は,前記(1)(原告らの主張)のとおり違法行為を行
っていたところ,被告Y2は,フォレックス社の違法行為を率先助長し,
預託金名下に原告らから多額の金員を支出させ,損害を生じさせたので
あって,取締役である被告Y2には損害に関して悪意,重過失があった
ものとして,商法266条ノ3第1項に基づく責任は免れない。
(被告Y2の主張)
前記ア(被告Y1の主張)のとおりであり,被告Y2も,不法行為責任
及び商法266条ノ3第1項の責任は負わない。
ウ被告Y3について
(原告らの主張)
a被告Y3は,フォレックス社の設立発起人としてフォレックス社の設
立に関与し,設立時から平成13年7月31日までフォレックス社の取
締役の地位にあり,フォレックス社の行為に主導的に関わったものであ
って,フォレックス社の違法行為を率先助長し,預託金名下に原告らか
ら多額の金員を支出させ,損害を生じさせたものであり,不法行為責任
を免れない。
bまた,上記行為は,本件損害に関して,悪意,重過失があったものと
して,商法266条ノ3第1項に基づく責任を免れない。
cなお,被告Y3は,同被告が取締役を辞任した後に契約した原告らに
ついては責任を負わず,また,取締役在任中に契約した原告らについて
も,辞任後に行った取引については責任を負わない旨主張する。
原告X2,原告X4,原告X17,原告X23の4名については,被
告Y3がフォレックス社の取締役在任中に契約に至ったものであって,
被告Y3は,前記a,bの責任は免れない。原告らの契約は,実質的に
はフォレックス社に対する信託財産的契約であり,基本契約に基づいて
取引が行われ,支払額が増加しても基本契約に変更はないのであって,
被告Y3の責任をみるについては,基本契約締結時を基準とすれば足り
るというべきである。したがって,これら原告4名については,前記a,
bの責任を負う。
また,上記4名以外の原告らについては,被告Y3がフォレックス社
の取締役を辞任した後に取引を行っているが,これらは,被告Y3らが
取締役として設立した会社の目的に従い,これを踏襲したフォレックス
社の普及員らが勧誘行為を繰り返したことによるのであって,違法な取
引制度を作り,これによって多額の顧客を巻き込んで損害を与える組織
体制を設立し,その活動によって上記原告らに損害を与えたのであるか
ら,被告Y3は,フォレックス社設立者として,前記a,bの責任を負
う。
さらに,被告Y3は,自らフォレックス社の事務所において,原告ら
の預託金の一部を運用していたものであり,必ず利益を上げるとして顧
客を勧誘したコンピュータソフトも人間の判断が関与するものであって,
当然にコンピュータソフトのみの判断によって取引が行われるものでな
いことを知っており,顧客に対する宣伝文言が事実に反することは容易
に知り得たものである。
よって,被告Y3は,フォレックス社の中心かつ主要な業務を行い,
フォレックス社の業務の主要な任務を果たしていたものであって,フォ
レックス社が組織的に行っていた集客業務及び多額の損害の発生に関与
してきたものである。したがって,その責任は,被告Y1と変わるとこ
ろがなく,取締役辞任後の取引に関しても,少なくとも不法行為責任を
免れない。
(被告Y3の主張)
(ア)不法行為責任について
フォレックス社においては,「絶対もうかる」等の勧誘行為は禁止す
るように社員に指示していたが,万が一そのような勧誘の指示があった
としても,会社としての意思決定に基づくものではないし,フォレック
ス社が取締役会においてそのような意思決定をした事実はない。
フォレックス社の勧誘方針については,フォレックス社が作成してい
る説明書等にも明確に記載されており,十分なリスクを説明し,かつ顧
客からそのリスクについて書面にて同意を得た上で契約を締結している。
なお,フォレックス社においては,その事業について法的に問題がな
いか調査事務所により調査を行い,また契約書面等についても弁護士に
その違法性の有無の調査を依頼するなど十分な確認をした上で業務を開
始しており,業務開始に当たり十分調査義務を果たしている。
上記のとおり,被告Y3において,原告らに損失を与えたことに対応
する義務違反は存在しない。
また,本件における契約の主体は,原告らとフォレックス社である。
原告らを直接勧誘したのは普及員であり,被告Y3が原告らを直接勧誘
した事実はないし,また被告Y3は取締役として会社の意思決定に参加
できる立場にあったにすぎず,直接普及員を指揮する立場にもなかった。
このような状況においてされた取引について,直接契約に関与してい
ない被告Y3の行為と,原告らが被った損失との間には因果関係も認め
られない。
よって,被告Y3が原告らに対して不法行為責任を負うという原告ら
の主張は理由がない。
(イ)商法266条ノ3第1項の責任について
a被告Y3ら取締役は,フォレックス社設立に際し,業務の適法性に
ついて専門家に相談するなどして十分な注意義務を果たし,かつ顧客
との契約に当たっては,書面によりそのリスクを十分に説明した上で,
契約締結をする方針で業務を遂行していたものであり,その職務を行
うに際し,善良なる管理者としての義務を十分に果たしている。
原告らは,あたかも被告らがフォレックス社を設立し,顧客らをだ
まして金員を巻き上げるシステムを作り上げたように主張しているが,
そのようなシステムを作り上げたのであれば当然ながらそれ相応の報
酬を取得しているはずである。
この点,被告らが取締役就任期間中に得た報酬は,代表取締役であ
る被告Y1において2年数か月間において2920万円であり,被告
Y3においては11か月間の間に200万円にも満たない。このよう
な過少な報酬のために多額の金員を騙取したと考えるのは不合理であ
り,原告らの主張は動機の面から考えても理由が欠けていると考える
べきである。
b取締役辞任後に取引に入った者との関係について
原告らのうち,原告X2,原告X4,原告X17及び原告X23を
除く34名の原告については,被告Y3がフォレックス社の取締役を
辞任した後(なお,原告X2については被告Y3辞任後その登記完了
前に契約を締結している。)に取引に入っている。
これら,被告Y3がフォレックス社の取締役を辞任した後に取引に
入った原告らについては,そもそも被告Y3の職務の義務違反との因
果関係を観念し得ず,若しくは観念するのは相当でなく,請求は失当
である。
c取締役辞任前に取引に入った者について
被告Y3がフォレックス社の取締役辞任前に取引に入った原告らに
ついても,あくまで最初の契約日が取締役辞任前であったに過ぎず,
実際の投資は辞任後に行われているものもある。これらについては,
前記bと同様に因果関係を観念し得ない若しくは因果関係を認めるの
は相当ではないというべきである。
また,被告Y3は,フォレックス社設立後最初の決算期である平成
13年8月31日以前の同年7月31日に取締役を辞任しており,決
算に備えて会社の帳簿類や業務内容を精査する以前にその職務を終え
ているのであるから,そもそもU社の業務内容についても不審を抱く
ことは困難であったのであり,被告Y3には原告らの損害について責
任はない。
そもそも,原告らの損害は,基本取引契約を締結したことによるも
のではない。基本取引契約を締結したこと自体が損害であれば,原告
全員の損害額は同一額になるはずである。このように考えれば,仮に
フォレックス社の取締役に何らかの責任が認められるとした場合でも,
その責任の対象は基本取引契約を締結させられたことではなく,その
後実際に投資行為を行わせたことに向けられると考えるのが相当であ
る。
(a)原告X2について
原告X2については,同原告が入金した金額のうち,平成13年
8月3日以前に入金されたのは,同月1日の3万ドルのみであり,
その余については被告Y3の辞任後のものである。
(b)原告X4について
原告X4については,平成13年8月3日以前に入金されたのは,
同年1月18日の2万ドルと,同年6月4日の3万ドルのみである。
(c)原告X17について
原告X17については,同原告は最初に入金した日として,平成
13年2月8日を記載し,かつ入金総額を16万ドルとする一方で,
最初の取引金額を2万ドルとしている。この点,平成13年8月3
日以前にいくら入金されているか明らかにされておらず,立証は不
十分というべきである。
(d)原告X23について
原告X23については,平成13年8月3日以前に入金されたの
は,同年2月9日の118万3224円と同年7月27日の107
万7223円の合計226万0447円であり,その余の金額は被
告Y3の辞任後の入金である。
(3)損害
(原告らの主張)
原告らが被った損害は,別紙損害目録中損害金欄記載のとおりである。
各原告は,原告ら訴訟代理人に対し,損害額の1割を報酬として支払う旨
約した。弁護料は,別紙損害目録中弁護料欄記載のとおりである。
よって,原告らの請求額は,別紙損害目録中請求額欄記載のとおりである。
(被告らの主張)
原告らの主張は争う。
なお,原告らは,フォレックス社の破産手続において,破産管財人に対し,
破産債権の届出をしたが,届出債権額の一部については破産管財人から異議
が出され,破産管財人が認めた限度で破産債権が確定し,確定債権額に基づ
いて一部配当を受けている。
したがって,破産手続における確定債権額をもって原告らの損害とすべき
であるし,また,フォレックス社の破産手続において配当を受けた金額につ
いては,損害額から控除すべきである。
原告らは,別紙「フォレックス破産事件配当額及び配当額を差し引いた
損害額表」記載のとおり,フォレックス社の破産手続において,破産債権額
が確定し,破産管財人から中間配当及び最後配当を受けている。したがって,
仮に被告らが何らかの責任を負うとしても,原告らの損害は,同表中差引損
害額欄記載のとおりである。
また,原告X5及び原告X32については,フォレックス社の破産手続に
おいて,破産債権者として届け出ていない。そして,原告X6は,同破産手
続において,確定債権額はなしと確定している。
これら原告3名は,破産債権の届出をしないか,確定債権額はないと確定
している。したがって,これら原告3名は,フォレックス社から損害を受け
ておらず,被告らに対する請求権も発生していないというべきである。
(被告Y3の主張)
被告Y3がフォレックス社取締役在任中にフォレックス社と取引を開始し
た4名の原告らについては,在任中の投資額が明らかにされておらず,被告
Y3との関係では損害の立証がされていないというべきである。
また,上記4名の原告らについては,フォレックス社の破産手続において,
届出債権中,届出額の半額以上の債権について破産管財人から異議が出され
ており(特に原告X4については,実に9割8分に及ぶ債権について異議が
出されている。),同原告らもこの破産管財人からの異議に対して債権確定
のための訴訟を提起していない。このことからすると,これら4名の原告ら
については,相当額の配当金を受領していたと考えるのが相当であり,少な
くとも被告Y3の取締役在任中に投資された金額については,配当により既
に回収されているものと推定され,被告Y3の関係では損害自体ないと考え
るのが合理的である。
第3当裁判所の判断
1証拠(各項掲記のものの外,被告Y1本人,被告Y3本人,甲全7,乙全1
6,18,丙全1)及び弁論の全趣旨によれば以下の各事実が認められる。
(1)フォレックス社設立の経緯
ア被告Y1の叔父であるJは,平成12年ころ,Fが代表者であるI社と
提携して,外国為替売買仲介業等を行う会社を設立しようとしたが,Jは,
既に外国為替取引を行う株式会社Kという会社を経営していたため,新し
い会社を設立することができないとのことで,同年7月ころ,被告Y1に
Fを紹介し,被告Y1に外国為替取引を行う会社を設立するよう勧めた。
Jの紹介では,Fは,外国為替取引を行って20年になるが,その20年
のデータを蓄積,分析し,売り買い指数を出すというコンピュータソフト
を開発した技術者であるということであった。
イ被告Y1は,フォレックス社設立以前には外国為替証拠金取引の経験が
なく,フォレックス社を設立しても,外国為替証拠金取引を行うためには
銀行に多額の保証金を積み立てる必要が生じることから,Fから,台湾等
で外国為替証拠金取引の実績がある会社としてU社を紹介してもらった。
その際,被告Y1は,Jから,新会社設立のための準備として,同人が調
査会社に依頼して行ったU社の信用調査に係る海外企業調査報告書(乙全
14)も受け取った。その報告書には,U社について,現在まで手形取引
停止の処分記録がないが,詳細な会社の運営状況及び経営効率は分からな
い,U社と取引する際には慎重にする方がよい等の記載がなされていた。
被告Y1は,Jの話や海外企業調査報告書等を参考にし,平成12年9
月1日に,Fとフォレックス社を設立することとなった。もっとも,被告
Y1は,Jから紹介を受けたFについては,Jからの説明以上には特に調
査等をしていない。被告Y1らがフォレックス社を設立した際の資本金1
000万円については,被告Y1が出資したが,設立発起人には,被告Y
1の他に,Fと,被告Y3の3名が就任し,設立後は,被告Y1が代表取
締役に,Fと被告Y3が取締役に就任した。当初は,被告Y2が取締役に
なるはずであったが,設立当時,被告Y2は別会社を経営していたため,
フォレックス社の取締役になることができず,当時,株式会社Kで稼働し
ており,英語が堪能で,Jの通訳兼運転手をしていた被告Y3がJの指示
により,フォレックス社の取締役に就任した。
上記のとおり,被告Y1は,1000万円を出資したが,その後,F及
び被告Y2から株式の割合に応じた額を受け取っている。
ウフォレックス社は,平成12年9月10日,I社との間で,共同で外国
為替売買操作コンピュータシステム(JPF2001)に関する開発業務
を行うことを合意し,技術共同開発契約を締結し,さらに,同月18日,
I社との間で,JPF2001の日本総代理店となること等を内容とする
契約を締結した。
フォレックス社は,前記イのとおり,被告Y1が外国為替証拠金取引を
行ったことがなかったことから,Fから,香港,マカオ,台湾において外
国為替証拠金取引の実績があるというU社を紹介され,同年11月10日,
U社との間で,外国為替証拠金取引に関する仲介代理業務契約を締結した
(甲全5,乙全12の1及び2,13)。
その契約内容は,要旨,フォレックス社が,顧客である個人投資家に対
し,他の外国為替証拠金取引業者であるU社を紹介し(いわゆるイントロ
デューシング・ブローカー(取次媒介型)),顧客は,フォレックス社を
通じてU社と口座開設契約を締結してU社に直接投資資金を送金し,U社
は集めた資金を為替取引で運用し,フォレックス社及びU社は手数料収入
を得るというものであった。手数料収入は,1回の取引(売り,買いの一
往復。以下同様。)につき出資口数1口(1枚)1万ドル当たり160ド
ルで,配分割合は,フォレックス社が100ドル,U社が60ドルとなっ
ていた(その後,手数料収入額及び配分割合は数回変更されている。)。
そして,顧客から集めた資金は,I社が3,FとU社及びフォレックス社
が3の割合で運用し,残りの3を保証金として残し,1を顧客が契約を解
除した場合の返戻金に充てるための資金として管理されることになってい
た。
(2)フォレックス社の業務内容
アフォレックス社は,セミナーや説明会等で顧客を集め,取引をすること
を決めた顧客は,G銀行,H銀行のU社の口座に証拠金を送金し,その証
拠金をもとに,U社が外国為替証拠金取引を行うものとされていた。この
際,運用成績の如何に関わらず,U社とフォレックス社は,1回の取引ご
とに所定の手数料を取得し,U社はフォレックス社が受領する分のみフォ
レックス社に送金するというシステムとなっていた。
イフォレックス社は,受領した手数料を,さらに,実績に応じた所定の計
算方法により,普及員に対して支払っていた。
フォレックス社における普及員のシステムとして,①普及員であるAを
頂点として,その下に普及員であるB,Bの下に普及員であるC,Cの下
に普及員であるD,Dの下に顧客であるEが付くシステム(A,B,Cに
ついては各顧客との個別の結びつきはない。)や,②それぞれ普及員であ
るA,B,Cは,Aを頂点としてその下にB,Cという階級を持つが,各
自顧客であるEを持つことができるというシステムなどがあった。
①のシステムにおいては,Dに対する手数料は,顧客Eの出資口数につ
き,為替取引1回当たり1500円,Cに対する手数料は,総顧客の出資
口数につき,為替取引1回当たり1500円,Bに対する手数料は,総顧
客の出資口数につき,為替取引1回当たり1250円,Aに対する手数料
は,総顧客の出資口数につき,為替取引1回当たり750円が支払われる
仕組みとなっていた。
また,②のシステムにおいては,A,B,Cがそれぞれ直接持っている
顧客との関係では,各々自分の顧客Eの出資口数につき,為替取引1回当
たり2000円の手数料が支払われ,Bは,B配下のCが持つ顧客の出資
口数につき,為替取引1回当たり1000円の手数料が,Aは,A配下の
B,Cが持つ顧客の出資口数につき,為替取引1回当たり1000円の手
数料が支払われる仕組みとなっていた。
この普及員システムにより,フォレックス社は,設立当初から,顧客数
をほぼ毎月10パーセント以上増加させ,平成13年12月の契約顧客数
が1411名であったのが,平成14年12月時点で3587名,平成1
5年9月時点では5916名となっていた。
ウフォレックス社は,前記イのとおり,普及員というシステムにより,顧
客数を増大させていったが,具体的な顧客の勧誘方法は以下のとおりであ
った。
普及員は,自己の知り合い等を誘い,フォレックス社の本社や支店等で
行われる説明会やセミナーに連れて行き,そこで,フォレックス社の社員
らが取引についての説明をしていた。
そこでは,フォレックス社の社員により,投資商品であるから元本保証
はなく,損が出ることもあるなどの説明はあるものの,4年間の売り買い
のシミュレーションの結果,為替相場の波を当てた勝率が90パーセント
を超えている,10回取引すれば1回はマイナスが出ても,残り9回はプ
ラスになる,例えば1回の損失を100ドルだったと仮定して,900ド
ルの利益が出たとして,結果,100ドルの損失を補って更に利益として
800ドル残すことができる,1口1万ドル投資した顧客が過去1年間で
受け取った利益は,月平均2.02パーセント,年率で24.3パーセン
トくらいになる,29か月間,一度もマイナスを出したことがないなどと
JPF2001がいかに優秀であるか,また,顧客がいかに利益を得てい
るかについての説明がされ,顧客の勧誘がされていた(原告X4本人,原
告X1本人,甲全1,13ないし15)。
また,フォレックス社が顧客に対して配布しているパンフレット(甲全
11)や事業説明書(甲全12)においてもフォレックス社とI社の開発
した外国為替売買コンピュータプログラムが指標的中率90パーセント前
後を誇るなどとその優位性や運用実績を強く表示したり,法律上元本保証
という表現はできないものの,損切りの場合においても,次回の運用の利
益で穴埋めできる資金運用をしていますなどと,あたかも顧客に損失が発
生しないかのような説明内容となっていた。
エ顧客らは,前記ウの説明会等でフォレックス社から勧誘を受け,投資を
することにした場合,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書(乙全
6)に署名,押印をし,フォレックス社に対して提出した。
外国為替マージン売買取引代理人委任同意書は,顧客が,U社を代理デ
ィーラーとして外国為替マージン売買取引管理口座を開設し,U社に外国
為替マージン取引売買実行権限を委任し,U社に開設口座の外国為替マー
ジン売買取引の代理人として,為替マージンスポットマーケットの取引を
行う権限を委任する,顧客は,U社が行うすべての為替取引売買指令の実
行に同意し,U社は顧客が被るいかなる損失,損害,費用,課金及び経費
についても責任を負わない,顧客は代理人U社が決定した買入れ又は売出
しのリスクを負担する等の内容となっている(乙全6)。
もっとも,平成13年3月ころまでは,外国為替マージン売買取引代理
人委任同意書は,U社を代理ディーラーとして外国為替マージン売買取引
管理口座を開設し,フォレックス社に為替マージン取引売買の実行権限を
委任し,フォレックス社に開設口座の外国為替マージン売買取引の代理人
として,為替マージンスポットマーケットの取引を行う権限を委任すると
いう内容となっていた(乙2,4,17,23の各1の1)が,フォレッ
クス社は,実際に取引を行うU社に対する委任になっていないとの顧問弁
護士の指摘を受け,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書の内容を
変更した(被告Y1本人)。
また,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書と同時に渡される
「為替マージン取引」のリスクについての開示書面には,元本及び利益が
保証されているものではない,為替マージン取引は,総取引金額に対して
少額の委託証拠金で取引を行うことができ,多額の利益を得ることもある
が,逆に,為替相場の状況によっては損失を被る可能性もある,その損失
額は,預託した委託証拠金全額の損失となる場合もあるなどと記載されて
おり,顧客はこれを精読した旨の確認書にも署名,押印をしてフォレック
ス社に対して提出することとなっていた(乙1ないし28の各1の1,各
1の2,30ないし38の各1の1,各1の2)。
オフォレックス社は,前記のような形態で顧客を集め,顧客は,U社名義
の口座に証拠金を送金し,U社から,フォレックス社に対し,アカウント
ディーテールという日々の報告書(甲全10)や,G銀行やH銀行の運用
資料(乙全3の1ないし12,4の1ないし15)が送られていた。
また,被告Y3は,平成13年1月から,Jの指示で,U社の代理人と
して,ディーラーとしての活動をするようにもなり,顧客がU社の口座に
送金した証拠金の一部について,外国為替証拠金取引を行っていた(丙全
2の1ないし8,丙全5,6,7の1ないし8,丙全8)。
(3)破たんに至る経緯
アフォレックス社は,顧客を毎月増加させ,また,顧客に対しては,フォ
レックス社設立当初から,U社から顧客への配当がされるなどしていた。
しかし,Fは,平成15年9月30日,沖縄タイムス紙に「謹告
(株)フォレックスジャパンの顧客・取引先の皆様へ」と題する,Fが同
月1日付けでフォレックス社の取締役を辞任した,I社がフォレックス社
との間で締結していたJPF2001の使用許諾契約を含むすべての契約
関係を解除した,今後,Fはフォレックス社の営業行為には一切関係ない
旨を記載した広告を掲載した。
その後,Fは,フォレックス社の顧客1000名余に対して,①U社が
Fの承諾なしに勝手にJPF2001を使用している,②U社が外国為替
取引の免許を有しない非合法会社であるのに,フォレックス社はこのよう
な非合法会社と業務提携をしている,③投資金が増加しているにもかかわ
らず,取引が減少しているのは,顧客の投資金を海外に逃避させているの
ではないかとの疑いがある,④投資金が凍結された場合,Jや被告Y1に
投資金の返還や賠償能力があるか疑問である等という内容の同年10月1
0日付け「株式会社フォレックス・ジャパンへの投資家の皆様へ」と題す
る文書を発出した(甲全2)。
これらの結果,顧客は,U社に対して投資金の回収を求め,約20億円
の解約,出金の要求があった。
U社は,Fの上記広告,文書等により,多額の出金を余儀なくされ,平
成15年11月5日付けの文書で,顧客に対し,同年10月中に予期せぬ
為替相場の変動の連続により,多大な損失金が発生した,したがって,同
月末日をもって,運用を停止し,残金については弁護士に法的管理を依頼
して同年11月6日付けで凍結し,準備ができ次第速やかに返金する旨連
絡をした(甲全10)。
イフォレックス社は,平成15年11月7日,L弁護士らに対し,U社破
たん後の処理を委任した。
L弁護士らは,U社との交渉の結果,同年12月5日に,①U社は3割
相当の資産を無条件で返金する,②返金額は3割ではなく,最大限可能な
31.8パーセントとする,③顧客の同意書等の送付作業,返金口座の確
認作業等の事務作業はフォレックス社が協力して行う,④返金作業はU社
の代理人弁護士が行うことなどを合意した。
ウその後,顧客の一部から札幌地方裁判所に対し,フォレックス社を被告
とする損害賠償請求訴訟が提起されたが,フォレックス社は対応できず,
欠席判決が言い渡され,同判決を債務名義としてフォレックス社の預金が
差し押さえられるなどしたため,フォレックス社は,平成16年3月25
日,那覇地方裁判所に対し,破産手続開始の申立てをした。
2争点(1)(フォレックス社の違法行為の有無)について
(1)原告らは,U社が実際には外国為替証拠金取引を行っていたとは認められ
ないとして,フォレックス社が「のみ行為」を行っていたと主張する。
この点,確かに,フォレックス社が仲介した顧客からの投資について,U
社が,具体的にいつ,いくらの外国為替証拠金取引をしていたのかを明らか
にする詳細な報告書はなく,また,前記1(1)ウのとおり,顧客から集めた
資金はI社が3,F,U社及びフォレックス社が3の割合で各運用し,残り
の3を保証金とするなどとしているものの,本件全証拠によっても,実際に
どのような割合で運用されていたのかについては明らかとなっていない。
また,フォレックス社の破産管財人の調査によれば,Fが2度にわたり投
資家から金員を詐取する詐欺事件を犯したと報道されていることや,香港に
おいてU社が不適切又は違法な活動に従事している疑いがあると思料するに
足る情報に基づき,平成16年5月より,香港の証券先物取引監察委員会の
ホームページにおいて,警告リストにリストアップされるなどしていること
がうかがわれ(甲全7),さらに,前記1(3)アのようなFやU社の言動に
も不自然な点が認められる。
しかしながら,前記1(2)オのとおり,フォレックス社に対しては,U社
から日々の報告書(アカウントディーテール)や,G銀行やH銀行の運用資
料が送付されており,また,被告Y3もU社の代理人として,外国為替証拠
金取引のディーラーの仕事を現に行っていたものである。そして,F及びU
社が,具体的にどのような違法行為等を行ったのかについて認めるに足る証
拠もない。
これらからすると,U社が顧客からの投資資金を具体的にどのように運用
していたかは,必ずしも明らかではないものの,U社が外国為替証拠金取引
を行っていなかったとは認められず,したがって,フォレックス社がいわゆ
る「のみ行為」を行っていたとも認められない。
(2)また,前記1(2)エのとおり,顧客は,U社に対して外国為替証拠金取引
売買を一任する内容となっているところ,原告らは,このような一任売買は
違法性を有する旨主張する。
しかしながら,フォレックス社が破たんするまで,外国為替証拠金取引に
ついては,明確な法的規制はされていなかったのであり,本件のような信託
的な運用について原告らの指摘のような問題点が存するとしても,これをも
って,同売買を一任するという内容それ自体が違法となるとまでは認められ
ない。
(3)ア他方,フォレックス社は,顧客を勧誘するに当たり,前記1(2)ウのと
おり,セミナーやパンフレット等において,JPF2001の優秀性を強
調し,為替相場の波を当てた勝率が9割を超えており,10回の取引のう
ち,1回は負けたとしても,残りの9回で勝てる,年率で24.3パーセ
ントくらいになるなどと説明している。そして,被告Y1や被告Y3は,
その各本人尋問において,JPF2001が上記のように高い勝率で為替
相場の波を当てる優れたコンピュータソフトであることを実際に確認した
ものであり,現在も信用している,U社の破たんの原因もJPF2001
が使用できなくなったからである旨供述する。さらに,フォレックス社の
パンフレット(甲全11)には,JPF2001(同パンフレットでは,
フォレックスソフトウェアとして紹介されているが,同一のものと認めら
れる。)について,大要以下のような説明がされている。すなわち,JP
F2001は,10年以上の開発期間を経て,数百万ドルの資金を台湾,
香港及びカナダの研究開発センターに費やし,ほかのコンピュータ売買プ
ログラムとは一線を画する外国為替売買取引コンピュータシステムの開発
に成功したものである。同プログラムが使用するインターバンク市場の気
配値(建値のすべて)はフォレックス社のデータベースに暗号化が施され
た特殊なファイル形式で記録保存されており,ドル円に至っては10年間
のデータ量を誇っている。これら各データは,24時間リアルタイムに蓄
積され,同時にその監視,分析が行われている。同プログラムのメインペ
ージに表示される最終的な売買指標が発信される過程では,複雑な変動分
析システムがその役割を担っている。通貨データをプログラム内部では1
2の分析グループに振り分け分析を実行する。各グループは4つのグルー
プを内包しており,内部では更に12の領域に振り分けられ,プログラミ
ングされた各自の命令を実行しながら分析を行う。このように最小領域の
単位でいうと合計576の分析ユニットを持ち,各自がインターバンクの
建値をリアルタイムで取り込みプログラム上位へその最新の分析結果を伝
達する仕組みになっている。さらに,上記分析過程に加え,為替相場の瞬
間値における上昇,下落の勢いを示すとともにその予想を表示する機能を
有し,この分析結果は,上記の分析結果とも統合され,メインページの売
買指標に反映される仕組みになっている。この機能は非常に的中率が高く,
本プログラムの性能の中でも最も特徴的なものといえる。
しかしながら,外国為替相場は,単に経済的な要因のみならず,政治的
要因をはじめ,世界中の事象,事変等の多種多様な要因によって変動する
ものと解されるところ,前記パンフレット記載のJPF2001の紹介を
みても,JPF2001が,このような相場の変動をいかに把握,分析す
るのかは不明というほかなく,どのようにして90パーセントを超える高
確率で相場の変動を的確に予測するのか,その仕組みは何ら明らかになっ
ていない。また,被告Y1や被告Y3の各本人尋問における供述内容をみ
ても,JPF2001がいかにしてその主張のような高い確率で為替相場
の波を当てるのかについて十分な説明はされていない。
これらからすれば,JPF2001が,フォレックス社がいうような高
度の性能を有するソフトであるとは到底認められず,また,これを信用し
ているとする被告Y1や被告Y3の供述も採用できない。
したがって,フォレックス社がいうような高度の性能を有するものとは
認められないJPF2001について,前記1(2)ウのように,ことさら
その優秀性を強調して顧客を勧誘するフォレックス社の行為は詐欺的な勧
誘方法であるというべきである。
なお,原告らの一部には,JPF2001について直接説明を受けてい
たとは認めるに足りない者も存在する(甲5,13,19,14,27,
28,30の各1)が,前記のようにフォレックス社のパンフレット等に
はJPF2001の優秀性についての記載がされているのであり,上記直
接説明を受けていない原告らについても,フォレックス社の勧誘方法が詐
欺的であったとの上記認定を左右するものではない。
イ加えて,フォレックス社の説明会等で配布されたパンフレットでは,損
切りの場合においても,次回の運用の利益で穴埋めできる資金運用をして
いると説明するなど,顧客にとっては,損失が発生しないのではないかと
誤解するような内容となっている。また,顧客に対する説明についても,
前記1(2)エのとおり,平成13年3月ころまでの外国為替マージン売買
取引代理人委任同意書は,実際は,フォレックス社自身が取引を行ってい
たものではなく,U社へ仲介を行っていたにもかかわらず,これと異なる,
フォレックス社が取引権限の委任を受ける内容となっていた。しかも,フ
ォレックス社の説明会では,具体的にどのような業者に委託するのかにつ
いての説明はされておらず,専門家に任せるという趣旨にとどまっている
(甲全1)。
これらからすると,フォレックス社が顧客を勧誘する際に,具体的に取
引の内容やその危険性について説明を行っていたものとは認められない。
この点,被告らは,元本保証でないことは明示していた,為替マージン
取引説明書を精読した旨の確認書にも署名押印をしている,普及員に対し
ても禁止行為を定め,必ず利益が得られると誤解されるような断定的判断
を提供して勧誘すること等は禁止していたなどと主張する。
確かに,フォレックス社の説明会での説明の際にも元本保証はないこと
は何度も述べられており(甲全1),その他の書面にも元本保証がないこ
と等は記載されてはいる。
しかしながら,前記1(2)ウで認定したようなフォレックス社の説明
(甲全1)や,前記パンフレット等の記載内容に照らし,フォレックス社
が危険性について十分な説明をしていたとは到底認められない。
ウ以上によれば,具体的に取引の内容やその危険性について説明を行うこ
となく,フォレックス社がいうような高度の性能を有するコンピュータソ
フトとは認められないJPF2001について,ことさらその優秀性を強
調して,あたかもフォレックス社が仲介して行う外国為替証拠金取引が危
険ではないかのように装って行った勧誘方法は,詐欺的な勧誘方法であっ
て,違法であるというべきである。
3争点(2)(取締役個人の責任の有無)について
(1)被告Y1について
前記2(3)のとおり,フォレックス社には,顧客を勧誘する行為について
違法性が認められるところ,被告Y1は設立時から,フォレックス社の代表
取締役であった者である。
そして,フォレックス社の勧誘行為は,多数の普及員による勧誘と,説明
会やセミナーあるいはパンフレット等による説明によるところが大きいとこ
ろ,被告Y1には,フォレックス社の代表取締役として,フォレックス社が
違法な勧誘行為をしないようにする業務上の注意義務が認められる。
にもかかわらず,被告Y1は,普及員やフォレックス社の社員が違法な勧
誘をしていることを止めなかったばかりではなく,前記のとおりフォレック
ス社がいうような高度の性能を有するものとは認められないソフトウェアで
あるJPF2001の性能を強調するパンフレットに,フォレックス社の代
表取締役として名を連ねる(甲全11)など,積極的に違法な勧誘行為に加
担したものと認められる。
したがって,フォレックス社の代表取締役である被告Y1には,上記注意
義務の懈怠について悪意又は重大な過失が認められ,商法266条ノ3第1
項に基づき,フォレックス社の勧誘によってU社に投資をした原告らに対し
て損害賠償義務を負うというべきである。
(2)被告Y2について
前記2(3)のとおり,フォレックス社には,顧客を勧誘する行為について
違法性が認められるところ,被告Y2は,平成13年7月31日からフォレ
ックス社の取締役であった者である。
そうすると,被告Y2には,フォレックス社の取締役としてフォレックス
社が違法な勧誘行為をしないようにする業務上の注意義務が認められる。
にもかかわらず,被告Y2は,普及員やフォレックス社の社員が違法な勧
誘をしていることを止めなかったばかりでなく,前記のとおりフォレックス
社がいうような高度の性能を有するものとは認められないソフトウェアであ
るJPF2001の性能を強調するパンフレットに,フォレックス社の常務
取締役として名を連ねる(甲全11)など,積極的に違法な勧誘行為に加担
したものと認められる。
したがって,フォレックス社の取締役である被告Y2には,取締役として
在任中にフォレックス社の勧誘によってU社に投資をした原告らに対する関
係で,上記注意義務の懈怠について悪意又は重大な過失が認められ,商法2
66条ノ3第1項に基づき,同原告らに対して損害賠償義務を負うというべ
きである。
他方,被告Y2がフォレックス社の取締役に就任する以前に取引を開始し
た原告X2(同原告については,実際の投資の開始は被告Y2が取締役に就
任した直後の平成13年8月1日である(甲2の1)が,外国為替マージン
売買取引代理人委任同意書(乙2の1の1)や為替マージン取引説明書を精
読した旨の確認書(乙2の1の2)の作成日付は同年3月5日であり,被告
Y2の取締役就任前に勧誘を受け,取引関係に入るに至ったものと認められ
る。),原告X4,原告X17及び原告X23(甲全14,甲2,4,17,
23の各1,乙2,4,17,23の各1の1,各1の2)については,被
告Y2が取締役に就任している期間に,フォレックス社の社員や普及員等か
ら違法な勧誘を受けて更に投資を行い,損害が拡大したかどうかについてま
では具体的に明らかではないから,被告Y2にこれら原告らに対する勧誘行
為の責任を認めることはできない。
(3)被告Y3について
前記2(3)のとおり,フォレックス社には顧客を勧誘する行為について違
法性が認められるところ,被告Y3は,フォレックス社設立時から,平成1
3年7月31日までフォレックス社の取締役であった者である。
そうすると,被告Y3には,フォレックス社の取締役としてフォレックス
社が違法な勧誘行為をしないようにする業務上の注意義務が認められる。
にもかかわらず,被告Y3は,普及員やフォレックス社の社員が違法な勧
誘をしていることを止めなかったなど,この義務を果たしていない。
したがって,フォレックス社の取締役である被告Y3には,取締役として
在任中にフォレックス社の勧誘によってU社に投資をした原告ら,すなわち
原告X2(同原告について,被告Y3がフォレックス社の取締役在任中であ
った平成13年3月5日にはフォレックス社からの勧誘を受け,取引関係に
入るに至っていたと認められることは,前述のとおりである。),原告X4,
原告X17及び原告X23に対する関係で,上記注意義務の懈怠について悪
意又は重大な過失が認められ,商法266条ノ3第1項に基づき,同原告ら
に対して損害賠償義務を負うというべきである。
他方,被告Y3がフォレックス社の取締役退任後に取引関係に入るに至っ
た原告らに対しては,被告Y3はフォレックス社の取締役としての責任は負
わないと認めるのが相当である。
この点,原告らは,フォレックス社は違法な目的で設立され,また,これ
を踏襲して,勧誘行為を繰り返したのであり,被告Y3は,違法な取引制度
を作り,これによって多額の顧客を巻き込んで損害を与える組織体制を設立
したものであって,原告らはその活動によって損害を被ったのであるから,
被告Y3はフォレックス社設立者として,フォレックス社の取締役退任後に
取引関係に入るに至った原告らに対しても,取締役としての責任を負う旨主
張する。
しかしながら,前記2(3)のとおり,顧客らの勧誘行為についてフォレッ
クス社の違法行為が認められるところ,被告Y3が違法な勧誘方法を作り出
したとまでは認められず,また,フォレックス社が違法な目的で設立された
ものと認めるに足る的確な証拠も存しないから,取締役辞任後に取引関係に
入った原告らについても被告Y3が責任を負うとする原告らの上記主張は採
用できない。
他方,被告Y3は,同被告が取締役在任中に取引関係に入った原告らのう
ち,被告Y3が取締役を辞任した後の取引については責任を負わない旨主張
する。
しかしながら,被告Y3が取締役在任中に取引関係に入った原告らについ
ては,被告Y3の任務懈怠がなければ,そもそも取引関係には入らなかった
と認められるのであり,被告Y3がフォレックス社の取締役を辞任した後に,
被告Y3の取締役在任中にされた勧誘行為とは全く別個の事情で上記原告ら
が取引を拡大させたとの主張,立証も認められないのであるから,被告Y3
の取締役辞任後の取引に係る損害についても,被告Y3の任務懈怠と因果関
係のある損害というべきである。
3争点(3)(損害等)について
(1)以上のとおり,フォレックス社の取締役であった被告Y1,被告Y2及び
被告Y3は,それぞれ商法266条ノ3第1項の責任を負うところ,それぞ
れの任務懈怠と因果関係のある損害は,原告らが投資をした金額の元本から
利得を受けた金額を控除(損益相殺)した,元本欠損額であると解すべきで
ある。すなわち,原告らの多くは,本件の為替証拠金取引の中で利益配当を
受け,また,U社破たん後,約3割の返金を受けるなどしている(甲全7,
9,10,甲1ないし19の各1,21ないし38の各1)ところ,これら
を控除した残額をもって,原告らが賠償を受けるべき損害額とみるのが相当
である。
(2)原告らの大多数は,フォレックス社の破産手続において破産債権の届出を
しているところ,破産管財人は,①全債権者につき元本を基準として,損失
の有無を調査して,利得がある債権者については,その利得額相当額につき
異議を出す,②債権者であり,かつ普及員であった人物の届出債権について
は,各人が受領した手数料額について異議を出す,③上記の作業段階で同一
人物であるか否かについて疑問があっても,管財人の調査手法によれば,同
一である可能性が高いと判断された債権者については,原則,すべて利得額
について異議を出す,④普及員の未払手数料については,本件事案の特殊性
にかんがみ,全額異議を出すという方針で,破産債権の確定手続が行われた
(甲全7)。
そして,破産債権について,破産管財人から異議が出されたのに対し,い
ずれも破産債権確定訴訟等は提起されず,確定していることが認められる
(甲全16,乙全19,弁論の全趣旨)。
以上の事実によれば,本件における原告らの損害について,フォレックス
社の破産手続において債権届出をした原告らは,破産手続において破産管財
人から異議を出された金額については,前記(1)のような利益配当を受ける
などしているものと推認され,破産手続で確定した金額の限度で賠償を受け
るべき損害額を認めるのが相当である。さらに,これら原告らが破産手続に
おいて配当を受けた金額についても,これを控除する必要がある。
原告X5及び原告X32以外の原告らについては,フォレックス社の破産
手続において債権届出をしている(甲全16,乙全19)ところ,証拠(甲
全16,乙全19)及び弁論の全趣旨によれば,フォレックス社の破産手続
において確定した同原告らの損害額は,別紙損害額一覧表の確定損害額欄の
とおりであり,また,同原告らが同破産手続において配当を受けた額は同表
の配当額欄記載のとおりであると認められる。そして,同原告らのこれらフ
ォレックス社の破産手続における上記破産債権の確定額に加え,証拠(甲全
14,15,甲1ないし4の各1,6ないし19の各1,21ないし31の
各1,33及び34の各1,35の1及び2,36ないし38の各1,原告
X1本人,原告X4本人)によれば,上記各原告らは,フォレックス社の勧
誘によりU社を介して外国為替証拠金取引を行うとのことで,U社に投資を
し,これにより,上記のとおり別紙損害額一覧表の確定損害額欄記載の各損
害を被ったものと認められる。なお,原告X6について,被告らは,フォレ
ックス社の破産手続において,確定債権額はなしと確定している旨主張する。
しかしながら,証拠(甲全16,乙全19)及び弁論の全趣旨によれば,原
告X6(フォレックス社の破産手続における届出番号227番)については,
別紙損害額一覧表の同原告の確定損害額欄記載のとおり,同破産手続におい
て,債権額(損害額)が64万1485円と確定していることが認められる。
この点被告ら主張の別紙「フォレックス破産事件配当額及び配当額を差し
引いた損害額表」をみても,原告X6は,同破産手続において配当を受けて
いるとされているのであり,このような同原告の確定債権額が0円であると
は認められない。なお,上記証拠によれば,同破産手続における届出番号1
088番の「X6」については,届出債権額全額について異議が出され,異
議のない債権額は0円とされていることが認められ,被告らの主張は両者を
混同したものと思われる。
(3)ア他方,原告X5及び原告X32は,フォレックス社の破産手続におい
て,破産債権の届出をしていない(甲全16,乙全19)。
被告らは,上記事実をとらえて,同原告らはフォレックス社から損害を
受けておらず,したがって被告らに対する請求権も発生しない旨主張する
が,破産手続において破産債権の届出をしていないことをもって,直ちに
破産会社に対する債権を有しないものとみることはできない。
そこで,これら各原告について,以下検討する。
イまず,原告X5について,同原告は,息子のM名義で取引を行っている,
同一住所でN,O,Pの各氏名で取引が行われていることが確認されてい
る旨主張する。
この点,原告X5に係る被害状況報告書(甲5の1)には,フォレック
ス社社員のQの勧誘により,平成14年11月1日に618万5865円,
同月14日に1212万5848円の合計1831万1713円を同原告
の口座から引き落として送金した旨記載されているところ,同報告書記載
のフォレックス社社員による説明内容も具体的であり,原告X5が同報告
書(甲5の1)に虚偽の記載をしているような事情もうかがわれないから,
同報告書の記載内容は信用できるものといえる。また,外国為替マージン
売買取引代理人委任同意書(乙5の1の1)や為替マージン取引説明書を
精読した旨の確認書(乙5の1の2)の署名は,P名ではあるが,原告X
5と上記各書面に記載されたPの住所は同じである。
これからすると,原告X5は,フォレックス社の勧誘によりU社を介し
て外国為替証拠金取引を行うとのことで,U社に前記報告書記載の金額の
投資をしたものと認めるのが相当である。
そして,原告X5は,上記報告書(甲5の1)において,利益配当は据
置だったので受け取っていない旨記載するところ,同原告は,平成14年
11月1日に最初の送金をした後,その約2週間後の同月14日に2回目
の送金を行っているのであり,その間に1回目の送金に係る取引について
利益配当がされ,それを2回目の送金に充てたとは認められないし,その
他,原告X5が利益配当等利得を受け取っていたと認めるに足りる証拠は
ない。
他方,原告X5は,U社破たん後,595万3978円の返金を受けて
いる(甲5の1)から,原告X5は,1235万7735円の損害を被っ
たものと認められる。
ウ次に,原告X32について,同原告も破産債権の届出をしていない。し
かしながら,原告X32に係る被害状況報告書(甲32の1)には,フォ
レックス社社員のRの勧誘により,平成13年10月から,合計35万5
000ドルをU社に送金した旨記載されているところ,同報告書記載のフ
ォレックス社社員による説明内容も具体的であり,原告X32が同報告書
(甲32の1)に虚偽の記載をしているような事情もうかがわれないから,
同報告書の記載内容は信用できるものといえる。また,原告X32は,平
成13年10月30日付けの外国為替マージン売買取引代理人委任同意書
(乙32の1の1)や為替マージン取引説明書を精読した旨の確認書(乙
32の1の2)に署名,押印している。
これらからすると,原告X32は,フォレックス社の勧誘によりU社を
介して外国為替証拠金取引を行うとのことで,U社に前記報告書記載の金
額の投資をしたものと認めるのが相当である。
もっとも,原告X32は,U社破たん後,1200万4300円の返金
を受けている(甲32の1)ほか,上記報告書(甲32の1)において,
利益配当を更に取引に投入したことを自認しているところ,同原告が返金
あるいは利益配当を受け取った金額については控除(損益相殺)する必要
がある。
この点,原告X32が受け取った利益配当の正確な額は明らかではない
ところ,前記2(2)のように顧客はU社に外国為替証拠金取引売買を一任
する内容となっていたことに照らせば,同原告が利益配当として受け取っ
た金額は,同時期(平成13年10月ころ)に取引を開始した原告X18
(平成13年11月28日開始。甲18の1,乙18の1の1及び2)及
び原告X19(平成13年10月24日開始。甲19の1,乙19の1の
1及び2)とほぼ同程度の割合であると推認できる。
そして,前記(2)のとおり,他の原告らが破産手続において届出をした
債権額に対して破産管財人が異議を出した金額については利益配当を受け
るなどしているものと推認されることからすれば,原告X18及び原告X
19が破産手続において届け出た債権額と同原告らが破産管財人から異議
を出された割合の平均値により算出される額をもって原告X32が受けた
利益配当の額とみて,原告X32が投資したと認められる金額に上記割合
を控除した残りの割合(上記2名の原告らに係る届出債権額に対する確定
債権額の割合)を乗じて,原告X32が被った損害額を算出するのが相当
である。
証拠(甲全16)によれば,原告X18及び原告X19に係るフォレッ
クス社の破産手続における届出債権額と確定債権額は,原告X18が届出
債権額1350万1384円に対し確定債権額1109万0093円,原
告X19が届出債権額437万7871円に対し確定債権額369万19
10円とそれぞれ認められるから,これら原告ら2名についての届出債権
額に対する確定債権額の割合の平均は,約0.83となる。したがって,
原告X32が被った損害額についても,上記認定の同原告の投資金額37
27万5000円(35万5000ドル。原告ら主張の損害目録記載の換
算額に従った。)からU社からの返金額1200万4300円を控除した
2527万0700円に0.83を乗じて,2097万4681円と認め
るのが相当である。
(4)以上から,原告らの認定損害額は,別紙損害額一覧表の認定損害額欄記載
のとおりとなる。なお,原告X8,原告X9,原告X10,原告X11,原
告X12,原告X13,原告X22,原告X27,原告X33,原告X37
及び原告X38については,確定損害額から配当額を控除した金額が,同原
告らの請求する損害金の額(同原告らに係る別紙損害目録の各損害金欄記載
のとおり。)を超える(ドルでの投資額について原告らが採る換算率に起因
するものと推測される。)ため,同原告らの認定損害額は,別紙損害目録の
損害金欄記載の金額の限度で認めるべきこととなる。また,各認定損害額の
1割(ただし,1000円未満切り捨て)の弁護士費用を認めるのが相当で
ある。
したがって,原告らの認容額は,別紙損害額一覧表の認容額欄記載のとお
りとなる。
(5)したがって,各被告が各原告に賠償すべき損害額は,被告Y1については
別紙認容額一覧表(1)記載のとおり,被告Y2については別紙認容額一覧表
(2)記載のとおり,被告Y3については別紙認容額一覧表(3)記載のとおりと
なり,被告Y1と被告Y2又は被告Y3の原告らに対する各債務は連帯債務
の関係に立つ。
4結論
よって,原告らの本訴請求は,上記認定の限度で理由があり,その余はいず
れも理由がないから,主文のとおり判決する。
那覇地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官田中健治
裁判官加藤靖
裁判官北村治樹
別紙原告目録(省略)
別紙認容額一覧表(1),(2),(3)
別紙訴訟費用負担一覧表
1被告Y1関係
(1)原告X5,原告X8,原告X9,原告X10,原告X11,原告X12,原
告X13,原告X22,原告X27,原告X33,原告X37及び原告X38
(以下「原告X5ら12名」という。)に生じた費用の2分の1と被告許田明
炎に生じた費用の4分の1
被告Y1の負担
(2)原告X5ら12名以外の原告らに生じた費用の2分の1と被告Y1に生じた
費用の4分の3
3分の1は原告X5ら12名以外の原告らの負担
3分の2は被告Y1の負担
2被告Y2関係
(1)原告X5ら12名に生じた費用の4分の1と被告Y2に生じた費用の2分の

被告Y2の負担
(2)原告X2,原告X4,原告X17及び原告X23(以下「原告X2ら4名」
という。)に生じた費用の4分の1と被告Y2に生じた費用の4分の1
原告X2ら4名の負担
(3)前記(1),(2)以外の原告らに生じた費用の4分の1と被告Y2に生じた費用
の4分の1
5分の1は同原告らの負担
5分の4は被告Y2の負担
3被告Y3関係
(1)原告X5ら12名に生じた費用の4分の1と被告Y3に生じた費用の4分の

原告X5ら12名の負担
(2)原告X2ら4名に生じた費用の4分の1と被告Y3に生じた費用の4分の1
4分の3は原告X2ら4名の負担
4分の1は被告Y3の負担
(3)前記(1),(2)以外の原告らに生じた費用の4分の1と被告Y3に生じた費用
の2分の1
同原告らの負担
別紙損害目録
別紙被告Y1,Y2準備書面5添付の損害額表(省略)
別紙損害額一覧表

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