弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1被控訴人a1,同a6,同a9,同a10,同a13,同a1
4,同a15及び同a19に対する関係において,原判決を次の
とおり変更する。
(1)上記被控訴人らは連帯して控訴人らに対しそれぞれ6,,,
57万1000円及びこれに対する平成11年6月6日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)控訴人らの上記被控訴人らに対するその余の請求をいずれも
棄却する。
2控訴人らのその余の被控訴人らに対する控訴をいずれも棄却す
る。
3訴訟費用は,
(1)控訴人らと上記1の被控訴人らとの間においてはこれを3,
0分し,その1を上記被控訴人らの負担とし,その余を控訴人
らの負担とする。
(2)その余の被控訴人らとの間において控訴費用は控訴人らの,
負担とする。
4この判決は,第1項の(1)に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人らは,控訴人らに対し,連帯して,それぞれ7400万円及びこれ
に対する平成11年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
3被控訴人a1は,控訴人らに対し,それぞれ100万円及びこれに対する平
成11年6月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1本件は,平成11年6月当時,e大学医学部1年生であり,同学部学友会漕
艇部(以下「漕艇部」という)に所属していたc(以下「c」という)が,。。
同月5日に開催された漕艇部の新入生歓迎コンパ(以下「本件歓迎会」ともい
。),,,うの翌日に死亡したことにつきcの両親である控訴人らがcの死因は
本件歓迎会の際の大量飲酒による急性アルコール中毒であるとした上で,その
責任原因は,被控訴人ら共同による不法行為や安全配慮義務違反にあると主張
して,被控訴人らに対し,連帯してそれぞれ2億5081万9991円の損害
賠償金の支払を求めるとともに,同大学大学院教授であり,漕艇部の部長であ
った被控訴人a1以下被控訴人a1というがcの死因等について学生(「」。)
らに虚偽の説明をしたことなどによって精神的苦痛を被ったとして,同被控訴
人に対し,上記賠償金の支払に加えて,それぞれ慰謝料500万円の支払を求
めた事案である。
原審が控訴人らの請求を全部棄却したところ,控訴人らが控訴したが,上記
第1の2及び3のとおり請求を減縮した。
2本件の前提事実は,以下の諸点を改めるほかは,原判決の「第2事案の概
要」欄の第1項記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決4頁19行目の「開催された」の次に「一次会の出席者は59名。
であり,うち新入生は,c,b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,
,(,,。)b8b9これら新入生については以下姓のみで表示することがある
の10名であった」を加える。。
(「」「」(2)同4頁25行目から5頁16行目まで(3)のイ二次会について
の項)を次のとおり改める。
「イ二次会の概要
(ア)二次会はくつろいだ自由な雰囲気の中で新入生と上級生・OBらと,
の親睦を深める機会であり,そのような雰囲気の中で,上級生やOB
らから新入生に対して飲酒を勧めることが多く,さらには,新入生同士
或いは新入生と上級生との間でビールや焼酎等の早飲み競争が行われる
こともあった。しかも,新入生は飲酒経験が浅いため,自己の酒量の限
界をわきまえていない者が多く,勧められるまま多量に飲酒して酔いつ
ぶれる者が多かった。
そこで,こうした事態を想定して,新入生から荷物等を預かって保管
したり,車や運転手役を用意しておいて,前もって確保してある宿泊場
所(多くは,一人住いの新入生のアパートの居室)に新入生を送り届け
る等の準備をしておくのが慣例となっていた。なお,こうした新入生の
世話役は主として2年生が担当するが,他の上級生も適宜サポートする
こととされていた。
(,,,,,,,,,,甲3乙6718∼20232834485152
原審における被控訴人a8,同a2,同a7,同a13)
(イ)二次会は一次会が行われたfから徒歩で5分程度の距離にある,「」
居酒屋「g」3階の座敷部屋で開かれた。新入生全員を含む二次会の参
加者は,一次会の終了後,二次会場に徒歩で参集したが,会場の後片付
,。けや準備の都合で廊下等でおよそ20ないし30分間程度待たされた
そのため,午後9時30分から開始される予定が,およそ10分遅れの
午後9時40分ころ,被控訴人a10の乾杯の音頭により開始された。
(乙3,15,20∼22,原審における証人d1)
(ウ)ところで上記のとおり待たされている間に被控訴人a18は他,,,
の2年生と協力して,店の前などにいた新入生らに対し,酔って間違え
て履いたり,無くしてはいけないからと言って,全員から荷物や靴(又
は靴箱の木札)などを預かった上,同被控訴人が予め用意していたビニ
ール袋に入れ,マジックペンで持主の名前を書いて,部屋の入口付近に
置いた。また,二次会開始後しばらくして,同被控訴人らは,新入生か
ら背広を預かり,名前を書いた付箋を貼って,上記新入生の保管荷物の
上に置いた。
(甲15,乙10,23,原審における証人b1,被控訴人a10,同
a18)
(エ)二次会開始後10分ないし20分してから再び新入生の自己紹介,,
が行われた。これは,新入生が1名ずつ前に出て,名前や出身高校,
漕艇部における抱負等を述べてビール等を1杯飲んだ後,次に自己紹介
をする者を指名するという方法で行われた。その際,当該新入生同士で
ビールの早飲み競争がおこなわれた。また,新入生の自己紹介後,新入
生とその他の出席者との間で焼酎等の早飲み競争が行われる等した。
(乙15,18∼22,31,43,44)
(オ)酔いつぶれた新入生を宿泊場所等に送り届けたことが被控訴人a10
に,さらに,同被控訴人から被控訴人a1に順次報告されると,同被控
訴人は「ご苦労さん,そろそろお開きにしたら」と指示した。こうし,。
て,二次会は午後11時45分ころ終了した。
(乙15,19,20,23,44,77)
ウ二次会におけるcの飲酒状況等
(ア)cは新入生の中では12番目に自己紹介を行いその際ビール,,,,
1杯を飲んだほか,cと相前後して自己紹介をしたb1との間で,ビー
ルの早飲み競争をしてビール1杯を飲んだ。この早飲み競争は,cが早
く飲み終えたため,b1はビールを更に1杯飲むこととなった。一方,
cは,自己紹介を終えた後も,しばらく同じ場所に待機していて,b3
が自己紹介をした際にも,同人を誘って早飲み競争をし,この時にもビ
ール1杯を飲んだなお自己紹介の順番についてはcが最初であっ。(,,
たと思うとする供述等も少なくなく,原判決もその旨認定しているが,
b1自身は,自分が最初で,次がcであったと証言している。結局,い
ずれとも断じ難いので,上記のとおりの認定にとどめるのが相当であ
る)。
(乙15,20∼22,31,37,43,44,47,51,54,
原審における証人d1,同b3,同b1,同b2,被控訴人a9,同a
14,同a7,同a12)
(イ)新入生の自己紹介が終了して間もなく新入生と上級生の間でビール,
や焼酎の早飲み競争が行われた。cは,被控訴人a17との間で,机を
挟んで向かい合った状態で早飲み競争をし,その際,160ccないし
180ccのグラスに,2,3センチメートル程度注がれた焼酎を一気
に飲み干した。cは,焼酎を飲み終えた後,ガッツポーズを取ったりす
るなど高揚した様子を見せており,周囲から促されるなどして,更に焼
酎1杯を飲んだ。他方,被控訴人a17は,当時2年生で,新入生の世
話役という立場にあったことや,上級生の被控訴人a16から,二次会
では飲酒しないようにと注意されていたため,二次会を通じてほとんど
飲酒することなく,cとの間で上記早飲み競争をした際にも,周囲の者
に注がれた水を飲んだ。
(乙9,19,22,37,44,62,原審における証人d1,同b
1,被控訴人a17)
(ウ)その後cは被控訴人a17と早飲み競争をした同じ場所で被控,,,
訴人a18としばらく話をした後,同被控訴人と早飲み競争をした。こ
の時,cは,グラスに氷が入った焼酎(なお,水で薄めたものかは不明
であるを1杯飲み被控訴人a18は焼酎の水割り水の割合を多。),,(
くしたもの)を飲んだ。その結果,cが先に飲み終えたため,cは,同
被控訴人に対し「先輩,遅いですね。もう1杯飲んでください」など,。
と言って飲酒を勧めたが,同被控訴人は「もう飲めない」と言ってこ,。
れを断り,別の場所に移動した。
cは,多少は酔っている様子であったが,意識ははっきりしており,
その後,近くにいた被控訴人a7との間で,再度早飲み競争をして,焼
酎1杯を飲んだ(なお,被控訴人a7は,この時,原液に近い焼酎を飲
んだ。。)
(乙10,38,44,51,原審における証人d1,被控訴人a7,
同a10,同a18)
(エ)早飲み競争は周囲の者が手拍子をしたりかけ声を掛けたりする中,,
で行われ,その際,OBの被控訴人a3,同a4及び同a2の3名も,
その場を盛り上げようとして,新入生同士の早飲み競争に加わって一緒
にビールや焼酎を一気に飲んだこともあった。早飲み競争で負けた者の
中には,周囲の声に押されるなどして,さらにビール等を飲んだ者もい
たが,競争に負けて延々と飲み続ける者はおらず,最も多く飲んだ者で
も,その飲酒量は,コップ3,4杯程度であった。
(乙16,19,40,51,原審における証人d1,被控訴人a4,
同a2,同a3)
エcの酩酊状況等
(ア)その後被控訴人a8はcが1人で座っていたのを見て手招きを,,,
して呼び寄せ,2人で腕相撲をしたが,cは陽気に酔っぱらっている様
子であった。cは,腕相撲をした後は飲酒することなく,元の席に戻っ
た。
,,,(イ)その後cは被控訴人a9と同a11が座っていた席の方に移動し
,「,。」,被控訴人a9の隣の席に座りa9さん飲みましょうよと言って
手にしていたグラスを同被控訴人に差し出したところ,同被控訴人は,
おお飲んでいるよと答えグラスを合わせたこの時のcは会「,。」,。,
話はやや不明瞭で,上体はふらついていた状態であり,被控訴人a6は
cの隣に座り「何か飲むか」と尋ねたが,cはこれを断わった。,。
(ウ)その後近くにいた被控訴人a19がcに焼酎の水割りが入ったグ,,
ラスを手渡したところ,cは「僕は,もう結構飲んでますよ。俺ばっか
り飲んでさーb8さんももっと飲めよと言って被控訴人a9の正面。。」
に座っていたb8に対し,被控訴人a19から渡されたグラスを差し出
した。ところが,cは,手元が滑ってテーブルや床の上にグラスの中の
焼酎をこぼした上,前のめりになって机に右肘を付いた。被控訴人a1
9はおい大丈夫かと言って肩に手を回してcの体を支え被控「,。」,,
訴人a6はcに水を飲ませようとした(ただし,cがこの時に水を飲ん
だか否かは不明である。。)
(以上につき,乙6,14,18,19,23,31,37,47,原審
における被控訴人a9,同a6,同a11,同a19)
オ上記酩酊後のcの状況
(ア)cが上記のとおりグラスの中の焼酎をこぼして前のめりになった,,
後,被控訴人a18は,上級生から頼まれて,酩酊したcをトイレに連
れて行くことになった。同被控訴人はcに肩を貸していたが,cは自ら
歩行することが可能で「大丈夫か」との問いに対しても「大丈夫で,。,
すと答えるなど意識もはっきりしていた同被控訴人はトイレの。」,。,
,,中の個室のある場所までcを誘導しその中で吐くように言ったところ
cは個室の中に入り鍵を掛けた。
同被控訴人は,その後,個室の外で少しの間待っていたが,声を掛け
てもcからの返事はなく,ドアも開かなかったため,被控訴人a12を
呼びに行き,同被控訴人と共にドアを叩いたり呼び掛けたりした。する
と,cは漸く鍵を開けたが,その際,洋式便器にもたれ掛かるような格
好で床に座り込んでいた。
(乙10,原審における被控訴人a18)
,,,(イ)その後被控訴人a7はトイレを出て部屋に戻って来たcに対し
「。」,,。また飲むかと尋ねたがcはこれを断わり何か食べたいと言った
そこで,同被控訴人がテーブルの上にあった鶏の唐揚げを差し出すと,
cは,それを1口食べたが,それ以上は食べなかった。同被控訴人は,
その後再び酒を勧めたが,これも断られたため,それ以上は勧めなかっ
た(cに飲酒を勧めたのは,同被控訴人が最後である。。)
そのころ,cは,酔ってきつそうな様子ではあったが,一応受け答え
をしていた。
(乙51,原審における被控訴人a7)
(ウ)それからしばらくしてcは被控訴人a9に上体を支えられた状態,,
で,部屋の中で眠り始めた。cは,やや口を空け,ぐったりした様子で
あった。
そのころ,cの様子を見た被控訴人a4は,cの閉じた目を開いて見
,「。。」。てこれはもう飲めないだろう連れて行った方が良いよと話した
cの側には,被控訴人a6も付き添っていて,被控訴人a9と共に「お
いc帰るぞ立てるかなどと呼び掛けたりしたがcから明確な,。,。」,
返事はなかった。なお,これと前後して,被控訴人a6が,同a4に対
して「こいつ(c,大丈夫ですかね」と訊ねたが,研修医になったば)。
,「,。」。かりである被控訴人a4は俺じゃまだ分からんよなどと答えた
(,,,,,)乙141819原審における被控訴人a9同a8同a11
(エ)その後被控訴人a9と同a6は吐くことで楽になることもあると,,
考え,2人掛かりでcの身体を支えて,廊下を通りトイレの前まで連
れて行った。ところが,トイレが使用中であったため,被控訴人a9ら
は,トイレ前の廊下で,cを,上半身を障子に持たせ掛けるようにして
寝かせた。その後,同被控訴人らはcに呼び掛け,被控訴人a13もこ
れに加わって2,3回声をかけたが,cから明確な返事はなかった。な
おそれと前後して店内の客が同所を通りかかりcを見て返事が,,,,「
なかったら急性アルコール中毒ですよと声を掛けてcの頬を叩い,。」,
たりして「大丈夫ですかね」と言った。これに対し,被控訴人a9ら,。
は「多分寝ているだけなので,大丈夫です」と答えた。,。
(乙6,23,原審における被控訴人a9,同a13,同a19)
(オ)被控訴人a9と同a6はその後もトイレが使用中の状態が続いたた,
め,cをトイレに連れて行くのを諦め,予定していた宿泊場所まで送り
届けることにした。そこで,被控訴人a9らは,cを抱えて店内の階段
で2階に降りた上,さらに,そこからエレベーターを使用して1階まで
降りたそして1階ではd2当時3年生以下d2というが。,(,「」。)
cの両足を支えd3当時6年生以下d3というや被控訴人,(。「」。)
a19も途中から手伝って,数人掛かりでcを店外に連れ出して,近く
にある立体駐車場の前まで運んで,路上に寝かせた。なお,cは,その
ころ嘔吐したため,この時点で口元や衣服には少量の吐物が付着してい
た。
この間,cは,全く自力では歩行しておらず,その他の自発的な動き
を見せることもなかったし,周囲からの呼び掛けにも反応を示さなかっ
た。終始いびきをかいていたが,いびきに加えて唸り声のような声を上
げることもあった。
(甲15,乙10,18,23,52,原審における被控訴人a19,
同a6,同a13,同a9,同a18)
(カ)被控訴人a9同a13同a19d3及びd2は新入生を送る,,,,
ために用意していた被控訴人a15の車以下a15車というが(「」。)
到着するまでの間,cに対し,吐物で汚れないようにワイシャツを脱が
せ,口元に付着していた吐物をおしぼりでふき取ったり,背中をさすっ
たりし,さらに,吐物で喉を詰まらせることのないように,cを道路上
に横向きにして寝かせた。
その後被控訴人a9はcの頬を軽く何回か叩いておーいcc,,,「,(
の愛称。聞こえるか」などと呼び掛けたりしたが,cは,依然として)。
いびきや,唸り声のような声を出していて,何の反応も示さなかった。
また,この前後ころ,cは,再び嘔吐したが,それは口の中に残ってい
た液状の吐物が口から流れ出たような様子であった。
一方,d2は,被控訴人a13に頼まれて自動販売機でスポーツ飲料
を買ってcに飲ませようとしたが,cは,少し飲んだものの,残りは口
から流れ出るような状態で,飲むことができなかった。
(,,,,,,,乙71018315281原審における被控訴人a19
同a13,同a9)
(キ)a15車が付近の道路に到着したため被控訴人a9らはcを同車,,
の駐車場所まで連れて行き,数人掛かりでcの体を抱えて,同車の後部
座席に乗せた。その際,被控訴人a9らは,ズボンに吐物が付着してい
るのを見て,cのズボンを脱がせた。
ところで,被控訴人a9は,前年(平成10年)度の新入生歓迎コン
,,パの際に怪我をしたd4に付き添って救急車でh医療センターに行き
翌朝まで付き添った経験があったことから,同センターの場所を知って
いる被控訴人a13を車に同乗するよう指示するとともにもしあれだ,「
ったら,h医療センターに連れて行くように」と伝えた。。
そこで,被控訴人a13は,会場に靴等を取りに戻った後にa15車
の助手席に同乗した。また,同車の後部座席には,被控訴人a19も同
乗した。
(乙6∼8,18,23,31,52,原審における被控訴人a19,
同a15,同a6,同a18,原審及び当審における被控訴人a9,同
a13)
(ク)しかしa15車はh医療センターではなく事前に予定されてい,,,
,。,,たとおりb2のアパートに向かったこれを見て被控訴人a13は
同a15にその点を問い質したところ,同被控訴人は,cをb2のアパ
ートに連れて行った上で,しばらく様子を見ようと提案した。被控訴人
a13は,二次会の会場に靴等を取りに戻っている間に,そのように方
針が定まったものと理解して,この提案に特に異議を唱えることなく,
そのままb2のアパートに向かうこととなった。
なお,被控訴人a19は,b2のアパートに向かう途中,cの体を軽
く揺すったり,呼び掛けたりしていたが,cの様子に変化はみられなか
った。
(乙7,8,10,18,原審における被控訴人a15,同a13)
(ケ)被控訴人a6はcらを乗せたa15車が出発した後被控訴人a1,,
に対し今新入生を1人a15の車で送っていきました病院へ行,「,,。
ったかもしれません誰やという問いに対してcです具。」「(「」)。」「(「
合が悪いのかという問いに対して相当酔っぱらってはいますと報」)。」
告した(乙23,原審における被控訴人a6」。)
(3)同5頁17行目から6頁16行目までを,次のとおり改める。
「(4)b2方におけるcの状態等
アa15車は,午後10時30分ころ,e市i町j丁目所在のb2のアパ
ートに到着し,被控訴人a15と同a19が,cを2階のb2の居室まで
。,,運び入れたそしてcを入口から向かって一番奥の畳部屋まで運んだ上
cが嘔吐して畳を汚すのを防止するため,たまたま部屋にあった段ボール
を畳の上に敷いて,その上にTシャツとトランクス姿のcを寝かせた。そ
の際,うつぶせに寝かせた上で,吐物で喉を詰まらせないように,伸ばし
(),。た左腕に頭を載せて顔を横向き右向きにし右膝を曲げた体位にした
cは,依然として大きくて規則正しいいびきをかいて,目を覚まさなかっ
たが,呼吸や顔色に異状は認められず,また,発熱や体温低下といった体
温の異常もみられず,痛みを訴えたりすることもなかった。
(乙6∼8,80の4,原審における被控訴人a13,同a19,同a1
5)
イ被控訴人a15と同a19は,再度新入生をb2のアパートに搬送して
くるため,二次会の会場に引き返すことになったが,被控訴人a13はc
の様子を見るために部屋に残った。同被控訴人は20分ないし30分間c
の様子を見ていたが,顔色や体温等に変わりはなく,いびきをかきながら
。,,,寝ているような状態であったその間同被控訴人はcの顔を拭いたり
口の中に吐物と思われる食べ物が溶けかかったようで,ほとんど液体状の
ものが溜まっているのを認めて,おしぼりでこれをふき取ったりした。ま
た,cを起こそうとしてみたが,cは目を覚まさなかった。
(乙7,8,原審における被控訴人a13)
ウその後,a15車で,b2とb3がb2の居室に運ばれてきた。同車に
は,b2,b3及び被控訴人a19のほか,新たに被控訴人a17も同乗
していた。
b3は,玄関の近くのキッチンですぐに寝たが,b2は,しばらく大声
で被控訴人a15らと話をして騒いでいた。この時も,cは,従前と同じ
態勢で,依然としていびきをかいており,目を覚ますことはなかった。そ
の後,b2も畳部屋の入口近くで入眠したため,被控訴人a13らは,6
日午前零時前ころ上記新入生3名をb2の居室に残してa15車で二次会
の会場付近に戻り,6日午前零時過ぎころ同所で別れた。
(乙6,8,80の4,原審における証人b3,被控訴人a13,同a1
5,同a17,同a19)
エ被控訴人a13らの見回り等
(ア)被控訴人a13は上記のとおり二次会の会場付近まで戻った後母,,
親に車で迎えに来てもらい帰宅したが,その途中,母親にcの様子を話
したところ,看護師であった母親から「大丈夫なの。一緒に見に行こう
かと言われもし体位を変えれば吐物を誤嚥することがあるかも知。」,,
れないと考えたため,cの様子を見るために,b2の居室に見回りに行
くことにした。
,,,そこで同被控訴人はいったん帰宅した後の6日午前1時過ぎころ
被控訴人a14に電話を架けて,新入生の様子を見るのに同行してほし
いと依頼したところ,同被控訴人もこれを承諾した。なお,同被控訴人
は,cがb2の居室に運び込まれた経過や,到着後のcの様子について
は,何も知らなかった。
(イ)上記被控訴人両名は6日午前1時30分ころb2の居室に到着し,,
たが1回目の見回りその際cら3名は被控訴人a13が退去し(),,,
た時と変わりがない状態で眠っていた。やがて,b3がトイレに起きて
喉の渇きを訴えたため,被控訴人a14は,b3に冷蔵庫のウーロン茶
を渡した。cは,上記アと同じ体位で,いびきをかいて熟睡している様
子であった。被控訴人a13は,cの口元や襟元を濡らした布巾で拭い
たり,口の中に溜まっていた涎のような液体を拭い取ったりし,更にc
の頬を叩くなどしたが,反応はなかった。また,同被控訴人は,被控訴
人a14と共に,うつぶせの状態のcの腰の辺りを持ち上げた上で,背
中をさすったり,軽く叩くなどして嘔吐させようと試みたが,cは,嘔
吐しなかった。
被控訴人a13らは,この時点でも,cに発熱はなく,顔色も良かっ
たため,何らかの異状があるとは感じず,熟睡しているものと思ってい
た。そこで,同被控訴人らは,吐物で喉を詰まらせないように,上記ア
のような体位でcを寝かせた上,30分後に再び様子を見に来ることに
して,b2のアパートを出た。なお,同被控訴人らは,b2のアパート
「」,の道路の向かい側にk内科医院という医院があることに気付いたが
何かあればここに来れば大丈夫と考えたものの,その時点ではその必要
性を感じなかったため,そのまま同所を後にした。
(ウ)上記被控訴人両名は同日午前2時過ぎから2時30分ころまでの間,
に再びb2の居室に赴いた2回目の見回りcは1回目の見回り,()。,
の時と同様に,上記アと同じ体位で寝ていたが,前回に比較して小さい
いびきをかいており,吐物は認められなかった。同被控訴人らは,cが
熟睡しているように感じたため,異状がないと考え,5分程度でb2の
居室を出た。
(エ)上記被控訴人両名は同日午前3時前後ころ再びb2の居室に赴い,,
た3回目の見回りcの近くまで行って様子を見るとcは2回()。,,
目の見回りをした際と同じ小さいいびきをかいていて,口元や周囲に吐
物はなかった。同被控訴人らは,cの顔色や呼吸に異状がなく,b2や
b3と同様に熟睡していると感じたため,cがこれ以上嘔吐したり,容
態が変化することはないと考えて,b2のアパートを出て,それぞれ帰
途についた。なお,その際,同被控訴人らは,b2の居室の机上に「鍵
はポストに入れておくやばくなったら部員2年生に電話しろと。()。」
書いた紙片を残した。
(以上につき,甲16,乙7,21,80の1,原審及び当審における被
控訴人a13,同a14)
(オ)b3は6日午前6時から午前6時30分ころまでの間に目を覚ま,,
してコンビニエンスストアに買い物に行ったが,b2もそのころ目を覚
ましており,これに気づいていた。この時,cは,多少横向きで大きな
いびきをかいて寝ており,痛みや苦しみを訴えることもなかったため,
b3やb2は,cに異状があるとは感じなかった。
,,,,一方被控訴人a13は午前7時ころ起床してb2に電話を架け
cの様子を聞いたところいびきをかいて寝ていますいびきがうるさ,「。
くて寝られませんとの返事であったその後b2とb3は再び入。」。,,
眠した。
(乙7,原審における証人b2,同b3,被控訴人a13」)
3本件の主要な争点及びこれに関する当事者の主張は,原判決11頁22行目
「」「」,「」「」の使用されの次にてを同15頁22行目の溶血していの次にる
,「」「」,「」を24頁20行目のことの次にをを同29頁14行目の行われ
の次にてをそれぞれ加え同39頁4行目の冒頭のも飲まないをて「」,,「」「
も飲めないと改め同43頁8行目に送るかはのはを削り争点(2)」,「」「」,
について,当審における追加主張として以下のとおり付加するほかは,原判決
「第2事案の概要」欄の第2項記載のとおりであるから,これを引用する。
(当審における追加主張)
(1)控訴人ら
ア本件歓迎会の一次会は中華料理店「f」で午後7時から9時まで行われ
たが,これは食事が主体であり,アルコールはビールのみであったから,
さほど高度に酩酊する者もいなかった。cの意識状態,身体状態について
も特に問題はない。
イ引き続いて午後9時40分ころからf近くの居酒屋gで二次,,「」「」
会が催され,午後12時ころ閉会したが,ここでは,新入生の自己紹介時
などに焼酎等の早飲み競争が行われるなどしたため,cの意識状態,身体
状態は急激に悪化し,ついには意識をなくして,二次会の途中の午後10
時30分ころには,会場から運び出され,酩酊者の搬入先用に確保されて
いたb2のアパートに運ばれたのである。
二次会での飲酒が実際に始まったのは,被控訴人a10により乾杯の音
頭がとられた午後9時45分であり,上記早飲み競争が始まったのは午後
10時ころであるから,cの意識状態,身体状態がいかに急激に悪化した
かが分かる。
ウところで,被控訴人a1及び同a10が,cの意識状態等の急激な悪化
(上記イ)を直接確認したという証拠はないが,いずれも他の者から(被
),。控訴人a1は同a6からの報告でそのことを認識していたものである
また,被控訴人a9,同a6,同a13,同a19,同a15,同a1
8らは,cを二次会場から運び出し,a15車に乗せる際,cをh医療セ
ンターに連れて行くという話が出た時に,いずれもその場に居合わせた者
達であり,しかも,cは実際には同センターには連れて行かれずに,b2
のアパートに運ばれたということを知っていたものである。すなわち,被
控訴人a15,同a13及び同a19は,実際にcをb2のアパートに連
れて行った者達であり,その余の被控訴人らにおいても遅くともその直後
にはそのことを知らされていたものである。
エ上記被控訴人らは,cの上記意識状態を認識していたものであり,しか
も,同被控訴人らは医師ないしは医学生であるから,急性アルコール中毒
の危険性や,或いはアルコール中毒ではないとしても意識を喪失するとい
う状態が生命の危険性をはらんでいることを一般人よりも認識していた筈
である。したがって,上記状態にあるcが死に至る危険性があることを予
見し,そのような結果を防止するために,同人を救急病院など適切な医療
機関に搬入すべき義務(保護義務)を負っていたものというべきである。
然るに,同被控訴人らは,上記のような状態にあるcを,酔っぱらった
新入生の搬入先として予定していたb2のアパートに連れて行ってしまっ
たか,或いはそのことを知りながら放置してしまったものであるから,上
記保護義務違反の責を免れない(特に,上記ウの被控訴人a1及び同a1
0,並びにh医療センターに連れて行く話が出た場に居合わせた被控訴人
a9ら6名の他,漕艇部副キャプテンの被控訴人a14,同部幹部で本件
歓迎会の幹事である被控訴人a12,同部の幹部である被控訴人a11,
同a8,当日の介抱役であった被控訴人a17の責任は重い。。)
(2)被控訴人ら
アcは,前提事実(3)オ(ウ)のとおり,二次会で,被控訴人a9に上体を支
えられるようにして眠り始めた。やや口を開け,ぐったりした様子ではあ
ったが,顔色は良く,呼吸状態も普通であったため,同被控訴人及び被控
訴人a6らには異常は感じられず,酔っぱらって眠っているものと思われ
た。
その後同(エ)のような経緯があったがcの顔色体温呼吸状態に異,,,,
常は見られなかったので,被控訴人a9,同a6らは危険な徴候を感じな
かった。
イcは,その後,二次会場から外に運び出され,a15車で予定された宿
泊場所であるb2のアパートに搬送され,同所で寝かされたこと,被控訴
人a13及び同a14が3度にわたって見回りに行き,cの様子を観察し
ていることなどは,前提事実(3)オ(オ)ないし(ク)及び(4)のとおりであると
ころ,cは全く自力歩行はしておらず,その他自発的な動きを見せること
はなかったものの,終始いびきをかいて眠っていたため,被控訴人a9,
同a6,同a13,同a19,同a15,同a14らにおいては,cが酔
っぱらって熟睡していると思い,生命の危険があるなどとは思ってもみな
かったものである。
ウh医療センターの件について
(ア)被控訴人a9はcが前年のd4のように暴れ出したり顔色が蒼,,,
白になったり,呼吸が乱れたりするなど明らかな異常が現れたりした場
合には,同センターに連れて行く必要があると考え,前提事実(3)オ(キ)
のとおり「これ以上具合が悪くなるようだったら,h医療センターに連
れて行った方が良い」旨伝えただけである。仮に,同被控訴人が,cの
生命身体に危険を感じていたならば,自らa15車に同乗してh医療セ
ンターに連れて行った筈であるし,その後の経過につき被控訴人a13
らに確認している筈である。しかし,被控訴人a9はそのような危険を
感じなかったから,その点の確認をしていない。
(イ)また被控訴人a13にしても同a9から上記のように言われたも,,
のの,cはただ酔っぱらっているだけにしか見えず,前年,d4に付き
添ってh医療センターに同行した際の経験(d4は口から泡を吹いてい
たに照らしてもcの場合には同センターに連れて行かなくても大丈。),
夫だと認識していたものである。
(ウ)被控訴人a15の認識も上記(イ)の同a13のそれと同様である。な
お,控訴人らは,被控訴人a15から事情聴取した際の記録であるとい
う甲20の2に依拠して,同被控訴人が「病院に行くのは面倒くさい」
「病院沙汰にしたくない」などと考えて,cをh医療センターに連れて
行かず,b2のアパートに搬送したものである旨主張するが,同被控訴
人はこれを明確に否定し,上記録取結果は控訴人らから「言わされたも
の」であると供述しているところである(原審における同被控訴人。)
エ被控訴人a13及び同a14の見回りについて
(ア)被控訴人a13の認識は上記ウ(イ)のとおりであったが前提事実(4),
エ(ア)のとおりたまたま母親からの指摘で漠然とした不安を抱きc,,「
がもしも体位をかえたりして,吐いた物を誤嚥したりしたら心配だ」と
考えて,念のためcの様子を見に行くことにしたものである。
(イ)そこで同被控訴人は被控訴人a14を誘って2人でcの様子を,,,
3回にわたって見に行ったのであるが,cは,その都度,前と同じ体位
で,いびきをかいて眠っており,顔色もよく,特に異常は感じられなか
った。
(ウ)なおk内科は1回目の見回りに行った際たまたまその所在を知っ,,
た医院である。被控訴人a13は「呼び鈴を押してみようかとも考え,
た旨陳述している乙7がこれはここに病院があるな何かあ」(),,「。
ったらここがあるな」という程度の趣旨で述べたものであり,呼び鈴を
押そうとした訳でもなく,特にその必要性を感じていたわけでもない。
この点は,被控訴人a14についても同様である。もっとも,同被控
訴人は控訴人らに追及されてベルを押そうと思った旨述べたこと,,「」
があるが,これが偽りであることは原審における同被控訴人の尋問で明
らかにされている。
第3当裁判所の判断
1争点(1)について
(1)控訴人らは①cは急性アルコール中毒に陥り呼吸中枢麻痺を来して死,
亡したか,或いは,②過度の飲酒酩酊による吐物の誤嚥により窒息死した
と主張するのに対し,被控訴人らは,③cの死因は重症急性膵炎であり,
かつ,それはアルコール性のものではないと主張して,真っ向から対立して
いる。
そして,原審においては,この点が最大の争点であるかのように取り扱わ
れ,双方の攻防が尽くされているが,原審は,①を否定し,②を認めるには
至らないとし,③については,cが急性膵炎に罹患していた可能性を否定す
ることはできないが,それとは矛盾する事情もあり,解剖による詳細な調査
が行われていない以上,この点は不明というほかないと判断した。
(2)ア当裁判所もcの遺体が病理解剖に付されていない以上上記主張はい,,
ずれも推測の域を出ないのであって,cの死因についていずれとも断定す
ることはできないものと判断する。
イしかしながら,cが,本件歓迎会の一次会及び二次会を通して,相当量
の飲酒をしたことは確実である。一次会ではビールしか飲んでいないが,
それでもそれなりの量を飲んだものと認められるし,二次会におけるcの
飲酒状況は前提事実(3)ウのとおりであって比較的短時間のうちに相当,,
量のビールや焼酎を飲んだことが認められる。
しかも,二次会は,一次会とは違って猥雑な雰囲気であり,やはり相当
多数の出席者がいた上,出席者達の多くは自らも相当量の飲酒をして酔い
が回ってきたりしていたのであるから,そのような中で,cがどのように
してどの程度の飲酒をしたかを正確に再現することはおよそ不可能なこと
といわざるを得ないそうであれば前提事実(3)ウで認定したのは確実。,,
に認定できるところを押さえたものと見るべきである。加えて,前提事実
(3)エ及びオのとおりcは二次会が始まった午後9時40分からそれ程,,
経たないうちに顕著に酩酊し(したがって,それ以後は殆ど飲酒していな
い,宴もたけなわというころに早くも眠り込んでしまい,ついには会場。)
から運び出され,午後10時30分には宿泊予定場所であるb2のアパー
トに搬送されているのである。
上記のような諸事情を総合して考察すれば,cはかなり短時間のうちに
相当多量のアルコールを摂取したものと考えるのが相当である。
ウそうすると,解剖がなされていないが故に,厳密な意味でcの死因を特
定することは断念せざるを得ないにしても,いずれにせよ,上記のように
して摂取されたアルコールがcの死亡という結果に相応の影響を及ぼした
であろうと考えるのが自然かつ合理的であって,このことを否定するのは
著しく経験則に反することといわなければならない(仮に,被控訴人らが
主張するとおり,cの直接の死因が重症急性膵炎であったとしても,その
発症ないし悪化にアルコールの影響がなかったとは断じ切れないし,飲酒
の影響がなければ,自ら症状を訴えるなどして,死亡には至らなかったと
考えられる。。)
2争点(2)について
(1)被控訴人らの不法行為ないし安全配慮義務違反原審からの控訴人らの主(
張)について
ア漕艇部の新入生歓迎会,特に,二次会においては,上級生やOBらから
新入生に対して飲酒を勧めることが多く,さらには,新入生同士或いは新
入生と上級生との間でビールや焼酎等の早飲み競争が行われることもあっ
たこと,しかも,新入生は飲酒経験が浅いため,自己の酒量の限界をわき
まえていない者が多く,勧められるまま多量に飲酒して酔いつぶれる者が
多かったことは,前提事実(3)イ(ア)のとおりである。
イそして同(エ)のとおり本件歓迎会の二次会においても早飲み競争が,,,
行われた。
上記早飲み競争は,周囲の者が手拍子をしたり,かけ声を掛けたりする
中で行われ,その際,OBである被控訴人a3,同a4及び同a2の3名
も,その場を盛り上げようとして,新入生同士の早飲み競争に加わって,
一緒にビールや焼酎を一気に飲んだこともあったし,早飲み競争で負けた
者の中には,周囲の声などに押されるなどして,更に1杯のビール等を飲
んだ者もいた。しかし,競争に負け続けて延々と飲み続ける者はおらず,
最も多く飲んだ者でも,その際の飲酒量はコップ3,4杯程度であった。
(以上につき,前提事実(3)ウ(エ))
また,c以外の新入生の中にも,二次会の席で,上級生と早飲み競争を
した者は多くいたが,かかる行為が強要されたことはなかった。この点に
つき当の新入生らはもう飲めないと思った後は酒を注がれてもその,,「,
ままにしていて飲まなかったが,そのことで上級生から非難されることは
なかった乙26b4飲むのを嫌がっているのに酒を注がれたと」(,),「,
いうことはなかった乙35b2自分がもう飲めないと感じた」(,),「「」
ために,早飲み競争をするのを断ったところ,一度は聞き入れられなかっ
たが再度断ったら上級生も認めてくれた乙40b1先輩らは,,」(,),「
ひっきりなしに酒を勧めてきたので,断りつつも少しづつ飲んでいた。し
かし,それも限界になったので,10時半ころからは一切酒を口にしない
ようにしそれからはずっと断り続けていた先輩らは自分に飲む気が,」「,
なくても酒を勧めてきた点で無理強いと言えるかもしれないが,ちゃんと
断ればそれ以上に勧めたりしなかったので,故意や悪意はなかったように
思う乙43b7飲めないというのに無理に酒を飲まされたことは」(,),「
ない(乙54,b3)と,それぞれ陳述しているところである。」
なお,乙44及び原審における証人d1の証言中には「新入生の中に,
は,早飲み競争に加わらず,自己紹介の際に飲んだビールを直ぐにビニー
ル袋の中にはき出すなどしていた者(b4)もいた「b7は「僕は未成」,
年だから飲みません」といって,飲まなかった」とする部分もあるが,b
4やb7の上記各陳述書の内容と照らしても,これらはある特定の一場面
だけを捉えたものであって,同人らがほとんど酒を飲まなかったとは認め
られない。
ウそればかりか,以下のような事実も認められる。
,,(),(ア)被控訴人a10は以前から同a9やd5当時4年生との間で
「平成10年のd4の件のようなこともあったので,新入生に余り飲み
過ぎないように注意しておいた方が良いなどと話し合っていたことか。」
ら,本件歓迎会当日の6月5日,午前9時から午後零時ころまで,e市
内のl湖において,漕艇部の練習が行われた際の練習終了後の全体ミー
ティング時に新入生の男子部員全員を集めた上で先輩に酒を勧めら,,「
れても,自分が無理だと思ったら,きっぱり断るように」と注意した。
これには,cも参加していた。
(乙18,22,50,原審及び当審における被控訴人a10,原審に
おける同a9)
(イ)被控訴人a1も,一次会終了時に「例年,新入生歓迎コンパの二次,
会では酩酊者が出やすい。新入生は,自分の酒量や限界を自覚していな
いことが多いので,これ以上飲みたくないと思ったら,たとえ上級生や
先輩達から酒を勧められても断わるように。新入生には酒を断わる権利
があるなどと話し前年度のd4の件なども例に挙げた上注意を促。」,,
した(原審及び当審における被控訴人a1)。
エまた前提事実(3)イ(ア)及び(ウ)の準備は所持品の紛失等の無用のトラ,,
ブルの発生を防止し,或いは,酩酊した新入生を安全かつ確実に送り届け
るための方策として考案されたものであり,いわば新入生に対する上級生
側のサービスの一環と受け止めるべきものであって,これらの措置により
新入生が二次会から自由に退出する機会を奪う目的があったなどと解する
ことはできない。
もちろん,これらは,新入生に酩酊者が出ることを予定したものである
ことは明らかであるが,それだからといって,被控訴人らが新入生に早飲
み競争を仕掛けるなどして,新入生を酩酊させることを意図していたとい
うことにはならない。
オ以上見たところによれば,控訴人らが主張するような被控訴人らの不法
な意図を認めることはできない。
そうであれば,本件歓迎会(特に,二次会)が控訴人ら主張のような意
図のもとに開催されたものであることを前提にした上で,cの死亡の結果
について予見可能性があったとして,被控訴人a10,同a14,同a1
1同a12同a8ら漕艇部幹部の企画責任被控訴人a1部長同,,,(),
a10(キャプテン)及び同a12(幹事役)の運営責任者としての不法
行為責任を主張する点は,その前提を欠くものといわざるを得ず,採用す
ることができない。
また,被控訴人らの救急救命義務違反(不作為としての不法行為責任)
ないしは安全配慮義務違反を主張する点についても,控訴人らの上記主張
を前提とするものである限りでは,やはりその前提自体を欠くことになる
から,採用することができない。ただし,この関係においては,二次会の
位置付けに関する控訴人らの上記主張を必ずしも前提にしない上での主張
ということも考えられないではない。そして,その点は当審における追加
主張において,明確にされたものということができる。そこで,この場合
の判断は後記(2)において当審における追加主張に対する判断と一括し,,
て示すこととする。
(2)被控訴人らの救急救命義務違反(当審における控訴人らの追加主張を含
む)について
ア控訴人らは,①被控訴人らは,本件歓迎会を主催した上級生(漕艇部
の幹部)及び部長,或いはその趣旨・目的に賛同して参加した上級生やO
Bであるから,新入生が介護を要するような高度酩酊状態に陥った場合,
適切な介護をし,救急救命措置を講ずべき条理上の義務がある,②部長
及び幹部(被控訴人a10,同a14,同a11,同a12,同a8)は
,,,,危険な本件歓迎会を開催したという点で被控訴人a2同a3同a7
同a17,同a18,同a19は,cに早飲み競争を仕掛ける等して,同
被控訴人a5は,その際にcのグラスに焼酎を注いで早飲み競争の幇助を
し,cに危険を生じさせたという点で,これら先行行為に基づいて上記義
務を負う,③被控訴人a6,同a9,同a18,同a19は,重度酩酊
したcを二次会場から運び出した者,同a13,同a15,同a19は,
cをb2方に搬送した者,同a14は同a13とともにb2方に見回りに
行った者として,いずれも事務管理に基づき上記義務を負う旨主張し,当
審において,上記第2の3のとおり主張している。
イしかしながら,本件歓迎会(特に,二次会)においても,例年のそれの
とおり,早飲み競争等が行われ,新入生らの中に高度に酩酊する者が出る
であろうことが予想されていたとはいえ,新入生をそのような酩酊状態に
陥らせることが意図されていたというわけではないことは上記(1)で見た,
,,,ところでありそうである以上二次会の出席者である被控訴人ら全員に
cの生命が危険にさらされていることを予見し,同人に対する介護及び救
急救命措置をとるべき条理上の義務があるとまではいえない。
上記①は採用することができない。
ウ(ア)同様に漕艇部の部長である被控訴人a1同部の幹部である被控訴,,
人a10,同a14,同a11,同a12,同a8が,本件歓迎会を
開催したということの故をもって,直ちにcの生命の危険を予見し,同
人に対する介護及び救急救命義務を負うものとすることもできない。
(イ)また被控訴人a17同a18及び同a7がcと早飲み競争をし,,,
たことは前提事実(3)ウのとおりであるが被控訴人a2同a3及び同,,
a19がcと直接早飲み競争をしたことを認めるに足りる証拠はない。
もっとも,被控訴人a2及び同a3が,新入生同士或いは新入生と上級
生との早飲み競争の際に,自らも一気飲みをしてこれに加わったりして
いたことは認められる(上記(1)イ。)
しかしながら,単にcと早飲み競争をし,或いはこのような早飲み競
争に加わったことがあるということをもって,それらの被控訴人らにお
いてcの生命の危険性を予見し,上記義務を負うものとすることはでき
ない。
さらに被控訴人a5に至っては,本件歓迎会の当日,友人から医学部
軽音楽部の引退ライブの誘いを受け,チケットを購入していたため,一
,,,次会の終了後同級生のd6とd7と共にライブが行われる店に行き
ライブが終わった午後10時ころ,二次会場に向かい,午後10時20
分ないしは午後10時30分ころに同会場に到着したものであり,その
時点ではcは既に店外に運び出されていたことが認められる(乙17,
28,34,原審における被控訴人a5)のであるから,同被控訴人が
上記義務を負ういわれはない。
そうすると,上記②の主張も採用の限りではない。
エ問題は,上記③の主張及び当審における追加主張である。
(ア)二次会におけるcの飲酒状況及び酩酊状況は前提事実(3)ウ及びエの
とおりであり,その後,会場から運び出され,a15車に乗せられる
までの状況は同オのとおりである。
(イ)これによればcは二次会開始早々からかなり早いペースでビー,,,
ルや焼酎を飲み続けたため,間もなく顕著に酩酊したものということが
できる。そこで,被控訴人a18が肩を貸してトイレに連れて行き,中
で吐くようにと言ったのに,cはトイレに閉じこもってしまって,なか
なか出てこなかったこと,漸くトイレから出て来ても,状態は一向に改
善されなかったこと,その後は殆ど飲酒していないにもかかわらず,二
次会の宴もたけなわというころには被控訴人a9にもたれるようにして
早くも眠り込んでしまい,呼び掛けても返事もしなかったこと,吐いて
楽にさせようと,同被控訴人や被控訴人a6が再びトイレに連れて行こ
うとしても,cは自力で歩行することはなく(この認定に反する乙23
号証中の記載及び原審における被控訴人a6の供述部分は採用できな
い,トイレが空くのを待つ間も廊下で眠り続けたこと,この間,被控。)
訴人a4がcの目を開けて見てこれはもう飲めないだろう連れて行,「。
。」,,,「(),った方が良いよと話しさらに被控訴人a6からこいつc
。」,「,。」大丈夫ですかねと訊ねられたのに対し俺じゃまだ分からんよ
などと答えたという経緯もあったことが認められる。
被控訴人a6及び同a9らは,このような状況及び経緯を踏まえて,
cを宿泊予定場所のb2のアパートに送り届けるべく,cを会場から運
び出したこと,その間も,また,a15車の到着を待つために路上に寝
かされている間も,cは終始いびきをかいて眠ったままであり,自力歩
行はもとより自発的な動きを見せることは皆無であったこと,スポーツ
飲料を飲ませようとしても,殆ど口から流れ出る状態で,飲ませること
ができなかったことも認められる。
そうであれば,cは,かなり短時間のうちに相当多量のアルコールを
摂取したものであり,その酩酊の程度も高度なものであったと認めるの
が相当である。
(ウ)上記のとおり被控訴人a6及び同a9らはcをb2のアパートに,,
送り届けるに如かずと考えたのであるが,cの酩酊状態がかなり短時間
のうちに相当多量のアルコールを摂取したことによりもたらされたもの
であることに照らせば,cの状態は時間の経過とともにさらに悪化ない
し深刻化することが考えられるものというべきであり,そうであれば,
被控訴人a6らの上記判断は適切でなかったものといわざるを得ない。
すなわち,このような場合には,可及的速やかに然るべき医療機関に
搬送して医師の診療を受けるか,さもなくば,最大限の責任を持ってc
の観察を続け,有事の際には直ちに医師の診療を受けられる態勢を整え
ることが肝要である。後者の場合の最適の候補者がcの両親である控訴
人らであることは明白であるから,控訴人らのもとに送り届けるか,連
絡をして迎えに来てもらうことが考えられる(もっとも,控訴人らの住
所はm町という郊外であり,二次会場のgとは相当距離がある。とこ。)
ろが,b2のアパートは,酩酊した新入生のほかは誰もいないのである
から,そのような場所に早々に運び込むということは,上記のあるべき
態勢からかけ離れること甚だしく,かえってcを危険な状態におくもの
といわなければならない。
なお,本件歓迎会の出席者らの多くは医学生であり,特に,上級生ら
は急性アルコール中毒についても既に講義を受けるなど,一般人に比較
すればその関係の専門知識を有していたものということができるけれど
も,何分にも学生にすぎないから,専門家としての判断を期待するのは
。,,,,無理というべきであるまた被控訴人a1をはじめ同a2同a3
同a4ら医師ただし被控訴人a3及び同a4は研修医であるであ(,。)
るOBも出席してはいたが,同被控訴人らも相当飲酒し,かなり酩酊し
ていたことが窺えるのであるから,医師としての適切な診断を期待する
ことはできなかったものと思われる。しかし,それにしても,早々にc
をb2のアパートに搬送するよりは,二次会の閉会時まで医師である被
控訴人a1らのいる会場で寝かせておいた方がまだしも良かったものと
いわなければならない。
(エ)ところでこの点に関しては上記の被控訴人a4の言動及び同被控,,
訴人と同a6とのやりとりについて,その意味するところを見ておかな
ければならない(もっとも,当の被控訴人a4及び同a6がともにこの
関係については「記憶がない」としているため,検討にも自ずから限界
があることは承知しておかなければならない。。)
まず被控訴人a4が連れて行った方が良いよと言った際の連,「。」,
れて行く先はどこなのかということが問題となる。具体的には,医療機
関なのか,それとも宿泊予定場所なのかということになろうが,仮に前
者であるとすればその後の被控訴人a6のこいつc大丈夫です,「(),
かねという問いは極めて緊迫感を帯びたものになってくる医療機。」,。
関に運ばれることを前提にしても,そのような心配があるということに
なり,それ程までにcの状態は深刻であったということになるからであ
るしかしながら被控訴人a4の上記発言にはこれはもう飲めない。,,「
だろう」という前置きがあるのであって,これは上記のような緊迫感と
はいささかそぐわないし,何よりも,同被控訴人は,この時,自身もか
なり酩酊していた上,医師免許を取得して間もない時期であったため,
意識的にcの目を見て酩酊度や意識レベル等を確認したわけではないこ
とが窺えるのであるから,上記発言にそれ程重い意味を持たせるのは相
当でない。また,被控訴人a6らが,cを宿泊予定場所に送り届けるこ
ととして,会場から運び出していることとも符合しない。
そうであれば,被控訴人a4の上記発言もそのような趣旨のものであ
ったと解するのが相当であり,したがって,被控訴人a6の上記発問も
必ずしも緊迫感のあるものとは受け取れないものというべきである。
(オ)もっとも被控訴人a9はcをa15車に乗せてからh医療セン,,,
ターに向かわせることを考慮し,同センターの場所を知っている被控訴
人a13をも同乗させもしあれだったらh医療センターに連れて行,「,
くように」と伝えたのであり(前提事実(3)オ(キ),これはそれなりに。)
思いを巡らせた指示であったものと評価できるただその際にもし。,,「
あれだったら」との条件を付したため,同センターに連れて行くか否か
について被控訴人a13らの判断に委ねる余地を残したという意味にお
いて,不徹底さないし曖昧さを残すものであったことが惜しまれる。
そのため,現に,a15車は同センターに向かうことなく,当初の予
定どおり,cをb2のアパートに連れて行ってしまったものである。こ
の点については,被控訴人a13が,同a9の上記指示を受けた後,靴
に履き替えるなどするために二次会場に取って返したという時間的間隔
があり,それが同被控訴人と被控訴人a15との意思疎通を妨げたとい
うことが窺える前提事実(3)オ(ク)のであってこの点はまことに不幸(),
,,な成行であったといわざるを得ないのであるがそれももとはといえば
被控訴人a9の折角の指示が上記のような不徹底さを含んでいたからに
ほかならない。
(カ)また被控訴人a13は同a15及び同a19がさらに新入生を搬,,
送するため二次会場に引き返した後も,cの様子を見守るためにb2方
に居残ったものであり,その後,b2及びb3を送り届けてきた上記被
控訴人両名及び被控訴人a17とともに,6日午前零時前ころまで同所
にとどまったことが認められる(前提事実(4)イ及びウ。さらに,被控)
訴人a13は,迎えに来てくれた母親(看護師)の発言を機に,cが体
位を変えたりしたならば,吐物を誤嚥するということもあるのではない
かとの一抹の不安を覚え,一旦自宅に帰った後,被控訴人a14を誘っ
て,2人でb2方を訪れ,cの様子を観察し,その後もさらに2回にわ
たって同様の観察をしているのである上記(ウ)のような観点からすると。
き,被控訴人a13が進んでb2方に居残ってcの様子を観察し,さら
には,その後3回にわたって被控訴人a14とともに見回りをしている
ということは大いに評価されて然るべきである。
ただ,惜しむらくは,同被控訴人の関心が,専ら,眠っているcが体
位を変えることにより,吐物を誤嚥するということがあり得るのではな
いかという点に向けられていたということである。むしろ,いくら酔っ
ぱらって熟睡しているように見えるとはいえ,呼び掛け等にも一切反応
せず,長時間にわたっていびきをかいて眠り続け,その間全く体位を変
えることもないという方が余程不自然で,不気味なことといわなければ
ならない。現に,cの左上腕部と左頬部には,長時間にわたって左上腕
部に顔左顔面を乗せていたためにうっ血が生じていた程である甲(),(
2の2・3,乙80の2。)
,(,しかもcは失禁までしていたことが認められるのであるもっとも
それがいつのことであるのは定かでないが,そのような事態があるとす
れば,被控訴人a13らが見回りをした際に気が付いて然るべきである
から,同被控訴人らの3回目の見回りの後に生じたと見るのが相当であ
るからもしも継続してcを観察していたならば死の転帰を迎え。),,,
る前に,同人が只ならない状態にあることを察知することができたもの
と考えられる。
(キ)以上によれば二次会のかなり早い段階で高度に酩酊してしまい上,,
記(イ)のような状態にあるcについて被控訴人a6及び同a9らがc,,
を宿泊場所に搬送するべく二次会場から運び出して以後の関係者の判断
及び措置については,cの生命身体に対する安全の確保という観点から
するときは,問題があったものといわざるを得ない。もっとも,これら
の者は,被控訴人a6,同a9のように,たまたまcの近くに居合わせ
た上級生(被控訴人a6は最上級生であり,かつ,新入生部員の指導に
当たっていた者(乙23,同a9は前年のキャプテン(乙18)であ))
ったり,同a13は同a9からa15車への同乗を指示された者,同a
14は同a13からb2方の見回りへの同行を依頼された者,同a19
は2年生で新入生の世話係の役目を担っており,cを宿泊場所に搬送す
るのを手伝った者,同a15は3年生であるにもかかわらず,自動車を
保有していたために,酩酊した新入生の搬送役を割り当てられた者であ
,。,っていずれも偶然に酩酊したcとの関わりを持ったにすぎない特に
被控訴人a6及び同a9においては,上級生としての責任感ないしは酩
酊してしまったcに対する配慮の故に関わりを持ったものであるし,同
a13及び同a14の見回りについても同様のことがいえるのである。
しかし,いやしくも一旦そのような関係が形成された以上,cに対する
安全配慮義務(保護義務)を負うものであり,同義務を全うしなければ
ならない立場にあるものというべきである。
なお,cを二次会場から運び出し,b2方に搬送する際に被控訴人a
18がこれに関与したことを認めるに足りる証拠はない。また,被控訴
人a17は,a15車がb2らを同人方に搬送した際に同車に同乗して
来てそのままb2方にしばらくとどまっていたことは前提事実(4)ウ,,
のとおりであるが,それだけでcに対する保護義務が発生することには
ならない。
(ク)ところで被控訴人a1は漕艇部の部長として本件歓迎会につい,,,
ても最高かつ最終の責任を負うべき立場にあるものであり,被控訴人a
10は,同部のキャプテンとして,学生側の最高責任者としての責任を
負うものである。
そして,同被控訴人らにおいて,早飲み競争をさせるなどして新入生
を酩酊させるというような意図があったとは認められないことは,既に
見たとおりであるが,二次会において現に早飲み競争が行われるなど,
いささか羽目を外した飲酒の仕方がまかり通っていたことも事実であ
る。それ故に,被控訴人a10及び同a9らのように,そのような二次
会における飲酒の在り方に危惧を抱いていた上級生もいたし,被控訴人
a1においても同様の危惧を抱いていたものである。そこで,被控訴人
a10は,本件歓迎会当日に行われた練習後ミーティングの際に,新入
生に対して注意を喚起し,同様に,被控訴人a1は一次会の終了時にわ
ざわざ二次会における飲酒の在り方について注意を与えたのである(上
記(1)ウ。しかしながら,被控訴人a10の注意は専ら新入生に向けら)
れたものであるし,被控訴人a1のそれも主としては新入生に対するも
のであって,その意味において,これらの注意は不徹底なものであった
といわなければならない。真に上記のような危惧を払拭したいというこ
とであれば,むしろ新入生に酒を勧める側の上級生らにこそ注意を促す
べきであるし,より根本的には早飲み競争とそれに伴う一気飲みそのも
のを禁止すべきだったのである。然るに,被控訴人a10及び同a1の
折角の注意も上記のような不徹底なものにとどまったため,二次会にお
いては,従前どおり,早飲み競争が当然の如くに行われ,それについて
制止や格別の注意が与えられることもなかったのである。もちろん,新
,,,入生らはこのような場を通じて自己の酒量の限界を身をもって知り
節度ある飲酒の仕方などを身に付けて行くという側面もあることが考え
られるから,羽目を外した飲み方をすべからく否定したり,禁止すべき
であるとも言い難いのであるが,そのような乱暴な態様の飲酒を伴う場
を提供した者としては,それによってもたらされる新入生らに生じるこ
とのあるべき危険性に十二分に思いを巡らせ,およそ飲酒による事件事
故が発生することのないよう万全の注意をもって臨まなければならない
ものというべきである。上記のとおり,本件歓迎会に最終的かつ最高の
責任を負うべき被控訴人a1及び同a10には上記のような意味におけ
る注意義務があるものといわなければならない。それ故にこそ,同被控
訴人らは,二次会の終了時まで同会場に残り,cの件を含めて,二次会
の顛末についておおよその報告を受けていることが認められるのである
(前提事実(3)イ(オ),同オ(ケ)。)
また,前年,d4が救急車でh医療センターに搬送された際に,被控
訴人a1及びキャプテンであった被控訴人a9らがd4に付き添って同
センターに赴き,被控訴人a9に至っては朝までd4に付き添ったとい
う事実と対比しても,被控訴人a1及び同a10は,cの死について責
任の一半を免れないものといわなければならない。
,,,,,,(ケ)以上の次第で被控訴人a1同a10同a6同a9同a13
同a15,同a19,同a14については,cの死という結果に対し安
全配慮義務違反があったものとして,責任を負うべきこととなる。
3争点(3)について
この点に関する事実認定及び判断については,原判決140頁14行目から
143頁15行目までのとおりであるから,これを引用する。
4争点(4)について
(1)cの損害について
ア逸失利益については,cが当時20歳でe大学医学部1年に在学し,将
来医師免許を取得するであろうことから,その基礎年収としては,控訴人
らの主張の男性医師の平均賃金である年収1207万5700円(平成1
0年度賃金センサス,企業規模計,年齢計)を採用し,その稼働開始時期
を卒業する6年後からとし,67歳までの約41年間(77歳までの稼働
を前提とする控訴人らの主張は採用できないの年5分による中間利息の。)
(..),控除をライプニッツ係数179810−50756を用いて行い
生活費控除を50パーセントすると,7792万円(千円未満切り捨て)
となる。
イ葬儀費用については,cの年齢,社会的地位などを考慮し,150万円
の範囲で認めるのが相当である。
ウ慰謝料については,諸般の事情を考慮し,2000万円とするのが相当
である。
エ以上の合計は,9942万円となる。
(2)既に見たとおりcの死亡という結果は本件歓迎会における無謀な飲酒,,
が招いたという側面があることは否めないし,本件歓迎会(特に,二次会)
の雰囲気に問題があったことも確かであるが,それにしても,cは,本件歓
迎会当時,20歳になったばかりの新入生であったとはいえ,いやしくも成
人であって,それなりの分別が期待できたことからすると,飲酒についても
相応の自己責任ないしは自己管理責任を負って然るべきである。ところが,
cの飲酒の仕方は,積極的に早飲み競争を仕掛けるなど,自ら度を超した飲
,。酒をしているのであってc自身にも重大な過失があることは明らかである
しかも,保護義務違反を問われる被控訴人らが,いずれも上記2(2)エ(キ)
及び(ク)の理由で有責であるとされた者であることと対比するならば,この
際,過失相殺としてcの損害の9割を減じるのが相当である。
そうであれば,cの損害額は,994万2000円となる。
(3)控訴人らはcの上記損害を2分の1ずつ相続したのであるから各自の,,
取得額は497万1000円となる。
また,控訴人らの固有の慰謝料としては各100万円が相当である。
控訴人らが,これらの請求をするのに要した弁護士費用としては,各60
万円の限度で認めるのが相当である。
5結論
以上の次第であるから,控訴人らの本訴請求は,被控訴人a1,同a6,同
a9,同a10,同a13,同a14,同a15,同a19に対し,連帯して
各657万1000円及びこれに対するcの死亡した平成11年6月6日から
支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度
で理由があるが,その余は失当として棄却を免れない。
,,そうするとこれと結論を異にする原判決は上記のとおり変更すべきであり
本件控訴はその限りで理由がある。
よって,主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官西理
裁判官有吉一郎
裁判官吉岡茂之

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛