弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1甲事件
()東京都港都税事務所長が原告に対して平成18年1月12日付け1
でした,原告の平成14年1月1日から同年12月31日までの事業
年度(以下「平成14事業年度」という)の事業所税に係る更正処。
分のうち,資産割事業所税について,課税標準15871.13㎡,
税額952万2600円を超える部分を取り消す。
()東京都港都税事務所長が原告に対して平成18年1月12日付け2
でした,原告の平成15年1月1日から同年12月31日までの事業
年度(以下「平成15事業年度」という)の事業所税に係る更正処。
分のうち,資産割事業所税について,課税標準14612.25㎡,
税額876万7300円を超える部分を取り消す。
()東京都港都税事務所長が原告に対して平成19年1月17日付け3
でした,原告の平成16年1月1日から同年12月31日までの事業
年度(以下「平成16事業年度」という)の事業所税に係る再更正。
,,.,処分のうち資産割事業所税について課税標準1551386㎡
税額930万8300円を超える部分を取り消す。
2乙事件
東京都港都税事務所長が原告に対して平成18年11月14日付けで
した,原告の平成17年1月1日から同年12月31日までの事業年度
(以下「平成17事業年度」という)の事業所税に係る更正処分のう。
ち,資産割事業所税について,課税標準14121.23㎡,税額84
7万2700円を超える部分及び減免税額427万4300円を下回る
部分を取り消す。
第2事案の概要
港湾運送事業を主たる業として営む株式会社である原告は,東京都区
(,「」内に所有し又は借り受けている複数の施設以下併せて原告事業所
。),,というを自己使用し又は賃貸するなどして事業の用に供しており
原告事業所が事業所税の資産割課税標準となるべき事業所床面積を構成
しているところ,原告事業所のうち原告の所有しているAセンター及び
原告の借り受けているBセンター(以下,併せて「本件各事業所」とい
う)の各上屋棟の2階から5階までのうち,第三者に賃貸している部。
分を除くその余の原告が専用している各部分(以下「本件各専用部分」
という)並びに原告と賃借人とが共用するエレベーター,階段及び通。
路等の附帯施設に係る按分面積相当の各部分(以下「本件各共用部分」
という)について,東京都港都税事務所長から,一般港湾運送事業又。
は港湾荷役事業として輸送途上の貨物の荷さばき及びそれに伴う一時的
な貨物の保管が行われていると認めることができないから,東京都都税
条例(以下「都税条例」という)188条の13第3項及び平成18。
年法律第7号による改正前の地方税法(以下「地方税法」という)7。
01条の41第1項の表の12号に定める施設である港湾法2条5項6
号にいう「上屋」に該当しないとして,地方税法701条の41第1項
(,「」の表の12号に定める課税標準の特例以下この特例を12号特例
という)を適用することによる事業所床面積の控除を否認されて,平。
成14事業年度から平成17事業年度まで(以下「本件各事業年度」と
いう)の事業所税に係る各更正決定をされた(なお,平成16事業年。
度の事業所税に係る更正決定については,その後増額再更正決定がされ
たものであるので,以下,平成14事業年度,平成15事業年度及び平
成17事業年度の事業所税に係る各更正決定並びに平成16事業年度の
事業所税に係る再更正決定を併せて「本件各更正決定」といい,各事業
年度の事業所税に係る更正決定を「平成14事業年度更正決定」等とい
う。。)
本件は,原告が,被告に対し,原告は,本件各専用部分においても,
本件各事業所の各1階部分と同様に,運輸大臣の認可を受けた港湾運送
約款(以下「本件運送約款」という。甲3)に基づき一般港湾運送事業
又は港湾荷役事業として,顧客から受託を受けた輸送途上の貨物の荷さ
ばき及びそれに伴う一時的な貨物の保管を行っているものであるから,
本件各専用部分は,都税条例188条の13第3項及び地方税法701
条の41第1項の表の12号に定める施設である港湾法2条5項6号に
いう「上屋」に該当するとして,本件各専用部分及び本件各共用部分に
も12号特例の適用が認められるべきである旨主張して,本件各更正決
定のうち本件各専用部分及び本件各共用部分に12号特例の適用を否認
した部分の各取消しを求める事案である。なお,甲事件は,平成14事
業年度更正決定,平成15事業年度更正決定及び平成16事業年度再更
正決定のうち当該部分の各取消しを求めるものであり,乙事件は,平成
17事業年度更正決定のうち当該部分の取消しを求めるものである。
1関係法令の定め
()地方税法1
ア(市町村が課することができる税目)
5条5項指定都市等(第701条の31第1項第1号の指定都市
等をいう)は,目的税として,事業所税を課するものとする。。
イ(事業所税)
701条の30指定都市等は,都市環境の整備及び改善に関する
,。事業に要する費用に充てるため事業所税を課するものとする
ウ(用語の定義)
701条の31第1項事業所税について,次の各号に掲げる用語
の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
2号資産割事業所床面積を課税標準として課する事業所税
をいう。
4号事業所床面積事業所用家屋の床面積として政令で定め
る床面積をいう。
6号事業所用家屋家屋(第341条第3号の家屋をいう。
以下本節において同じ)の全部又は一部で現に事業所等。
の用に供するものをいう。
7号事業年度第72条の13に規定する事業年度をいう。
エ(事業所税の納税義務者等)
701条の32第1項事業所税は,事業所等において法人又は個
,,人の行う事業に対し当該事業所等所在の指定都市等において
当該事業を行う者に資産割額及び従業者割額の合算額によつて
課する。
オ(事業所税の課税標準)
,,701条の40第1項事業所税の課税標準は資産割にあつては
課税標準の算定期間の末日現在における事業所床面積(当該課
税標準の算定期間の月数が12月に満たない場合には,当該事
業所床面積を12で除して得た面積に当該課税標準の算定期間
。。)()。の月数を乗じて得た面積次項において同じとし以下略
カ(事業所税の課税標準の特例)
701条の41第1項次の表の各号の上欄に掲げる施設に係る事
業所等において行う事業に対して課する資産割…(中略)…の
課税標準となるべき事業所床面積…(中略)…の算定について
は,当該資産割…(中略)…につき,それぞれ当該各号の中欄
…(中略)…に割合が定められている場合には,当該施設に係
る事業所等に係る事業所床面積…(中略)…(第701条の3
。。)4の規定の適用を受けるものを除く以下この項において同じ
から当該施設に係る事業所床面積…(中略)…にそれぞれ当該
各号の中欄…(中略)…に掲げる割合を乗じて得た面積又は金
額を控除するものとする。
(12号以外は省略)
施設資産割に係る割合
12港湾法第2条第5項に規定する港湾施設4分の3
のうち同項第6号又は第8号に掲げる施設で政
令で定めるもの
(下欄「従業者割に係る割合」省略)
キ(都における目的税の特例)
735条1項都は,その特別区の存する区域において,目的税と
して,道府県が課することができる目的税を課することがで
きるほか,第1条第2項の規定にかかわらず,第5条第5項
…(中略)…に掲げる目的税を課することができる。この場
合においては,都を市(同条第5項に掲げる目的税について
は,指定都市等)とみなして第4章中市町村の目的税に関す
る部分の規定を準用する。
ク(特別区及び指定都市の区に関する特例)
737条3項事業所税に関する規定の都に対する準用について
は,特別区の存する区域は,指定都市等の区域とみなす。
ケ(地方団体の長の権限の委任)
3条の2地方団体の長は,この法律で定めるその権限の一部を,
当該地方団体の条例の定めるところによつて,地方自治法(昭
和22年法律第67号)第155条第1項の規定によつて設
ける支庁若しくは地方事務所,同法第252条の20第1項
の規定によつて設ける市の区の事務所又は同法第156条第
1項の規定によつて条例で設ける税務に関する事務所の長に
委任することができる。
(2)平成18年政令第121号による改正前の地方税法施行令(昭和
25年政令第245号。以下「地方税法施行令」という)なお,法。
とは,地方税法を指す。
ア(法第701条の31第1項第4号の床面積)
56条の16法第701条の31第1項第4号に規定する政令
で定める床面積は,事業所用家屋の延べ面積とする。ただし,
事業所用家屋である家屋(法第341条第3号に規定する家
屋をいう。以下本章において同じ)に専ら事業所等(法第7。
01条の31第1項第5号に規定する事業所等をいう。以下
本章において同じの用に供する部分以下本条において事。)(「
業所部分」という)に係る共同の用に供する部分がある場合。
には,次の各号に掲げる面積の合計面積とする。
1号当該事業所部分の延べ面積
2号当該各共同の用に供する部分の延べ面積に,当該事業
所部分の延べ面積の当該家屋の共同の用に供する部分以
外の部分で当該各共同の用に供する部分に係るものの延
べ面積に対する割合を乗じて得た面積
イ(法第701条の41第1項の表の第12号の施設)
56条の62法第701条の41第1項の表の第12号に規定
する政令で定める施設は,上屋及び倉庫(倉庫業法第7条第
1項に規定する倉庫業者がその本来の事業の用に供する倉庫
に限る)とする。。
ウ(固定資産税,特別土地保有税及び事業所税に関する規定の都への
準用)
57条の3法第734条第1項及び第735条第1項の規定に
より都がその特別区の存する区域内において課する…(中略)
…事業所税については,第1条の規定にかかわらず,…(中
略)…第3章の5の規定を準用する。
第3章の5事業所税
(3)東京都都税条例(昭和25年東京都条例第56号)
ア(都税事務所長等,自動車税総合事務所長及び自動車税事務所長に
対する知事の権限の委任)
4条の3第1項知事は,徴収金の賦課徴収に関する事項及び都
税に係る過料の徴収に関する事項を都税の納税地所管の都税
事務所長…(中略)…に委任する(以下略)。
イ(事業所税の納税義務者等)
188条の12第1項事業所税は,都市環境の整備及び改善に
関する事業に要する費用に充てるため,事務所又は事業所(以
下この節において「事業所等」という。)において法人又は個
人の行う事業に対し,当該事業を行う者に資産割額及び従業
者割額の合計額によつて課する。
ウ(事業所税の課税標準)
188条の13第1項事業所税の課税標準は,資産割にあつて
は,課税標準の算定期間(法人に係るものにあつては,事業
年度とし・・・略・・・の末日現在における事業所床面積(当,())
該課税標準の算定期間の月数が12月に満たない場合には,
当該事業所床面積を12で除して得た面積に当該課税標準の
。。,算定期間の月数を乗じて得た面積次項において同じ)とし
(以下略。)
3項前2項の規定による事業所税の課税標準となるべき事業
所床面積・・・(略)・・・について,法第701条の41第1
項・・・(略)・・・の規定の適用がある場合においては,これ
らの規定の定めるところによりこれを算定する。
(4)東京都都税事務所設置条例(昭和25年東京都条例第49号)
2条1項都税事務所の名称,位置及び所管区域は別表第一の,都税
支所の名称及び位置は別表第一の二のとおりとする。
3項別表第一の所管区域の定めにかかわらず,事業所税に関す
る事務についての都税事務所の所管区域は,別表第三のとお
りとする。
別表第三(第2条関係)
称所管区域名
東京都港都税事務所港区及び品川区の区域
(5)港湾法(昭和25年法律第218号)
(定義)
2条5項この法律で「港湾施設」とは,港湾区域及び臨港地区内に
おける第1号から第11号までに掲げる施設並びに港湾の利
用又は管理に必要な第12号から第14号までに掲げる施設
をいう。
6号荷さばき施設固定式荷役機械,軌道走行式荷役機械,
荷さばき地及び上屋
8号保管施設倉庫,野積場,貯木場,貯炭場,危険物置
場及び貯油施設
(6号及び8号以外は省略)
()倉庫業法6
ア3条倉庫業を営もうとする者は,国土交通大臣の行う登録を受
けなければならない。
イ7条1項3条の登録を受けた者(以下「倉庫業者」という)。
は,4条1項各号に掲げる事項を変更しようとするときは,
国土交通大臣の行う変更登録を受けなければならない(た。
だし書は省略)
()港湾運送事業法7
ア2条1項この法律で「港湾運送」とは,他人の需要に応じて行
う行為であって次に掲げるものをいう。
(3号及び5号以下は省略)
1号荷主又は船舶運航事業者の委託を受け,船舶により運
送された貨物の港湾における船舶からの受取若しくは荷
主への引渡又は船舶により運送されるべき貨物の港湾に
おける船舶への引渡若しくは荷主からの受取にあわせて
これらの行為に先行し又は継続する次号から5号までに
掲げる行為を一貫して行う行為
2号港湾においてする船舶への貨物の積込又は船舶からの
貨物の取卸(4号に掲げる行為を除く)。
4号港湾においてする,船舶若しくははしけにより運送さ
れた貨物の上屋その他の荷さばき場への搬入,船舶若し
くははしけにより運送されるべき貨物の荷さばき場から
の搬出,これらの貨物の荷さばき場における荷さばき若
しくは保管又は貨物の船舶若しくははしけからの取卸し
若しくは船舶若しくははしけへの積込み(かっこ内は省
略)
イ2条2項この法律で「港湾運送事業」とは,営利を目的とする
としないとを問わず港湾運送を行う事業をいう。
2前提事実
本件の前提となる事実は,以下のとおりである。括弧内に証拠を掲記
した事実を除き,いずれの事実も当事者間に争いがない。
()原告及び本件各事業所について1
ア原告は,昭和38年8月26日付けで運輸大臣(当時)から京浜
港における港湾運送事業法4条に規定する一般港湾運送事業の免許
を受けたものである(港湾につき,甲2)。
イ原告は,平成14年4月30日付けで関東運輸局長に対し,港湾
運送事業の種類を一般港湾運送事業及び港湾荷役事業(沿岸荷役限
定)とし,変更の内容を上屋の建替え及び改築による上屋の増減及
び野積場の増減等とする港湾運送事業計画変更認可申請書以下本(「
件認可申請書」という)を提出し,同年5月14日付けで関東運。
輸局長の認可を受けた。
本件認可申請書には,Aセンターについて「上屋・野積場又は,
水面貯木場の別」欄には「上屋」と記載され「使用面積㎡」欄に,
は「21,180.985」と記載され「所有借受の別」欄には,
「所有」と記載されている。また,Bセンターについて「上屋・,
野積場又は水面貯木場の別」欄には「上屋」と記載され「使用面,
積㎡」欄には「8570.18」と記載され「所有借受の別」欄,
には「借受」と記載されている。
(甲5,6)
ウ本件各事業所は,港湾地区内に存在し,その事業所床面積の詳細
は,別紙1「事業所床面積等の明細」のとおりである。
本件各事業所の各上屋棟のうち各1階部分は,いずれも原告の専
用に係る部分であり,本件各更正決定において,12号特例の適用
を否認されなかった部分である。
()本件各更正決定等に至る経緯について2
ア平成14事業年度更正決定,平成15事業年度更正決定及び平成
16年事業年度更正決定に至る経緯について
(ア)原告は,平成17年2月25日,東京都港都税事務所長に対
し,原告事業所のうちBセンターの自己使用の事業所床面積の変
更に伴う平成15年事業年度に係る事業所税更正請求書(乙4)
を提出した(以下,この請求を「本件更正請求」という。。)
(「」。)(イ)東京都港都税事務所の担当官以下本件担当官という
は,本件更正請求を契機として,平成17年5月17日,同月1
8日,同年9月27日及び同年12月7日の4回にわたり,本件
各事業所を含む原告事業所全体について現地調査(以下「本件現
地調査」という)を行った。このうち,本件担当官は,同年5。
月17日には,Aセンターを訪問してその上屋棟の現地調査を実
施し,同年9月27日には,Bセンターの上屋棟の現地調査を実
施した。Bセンターにおける調査の際,本件担当官は,事業所税
の資産割の課税標準の算定に必要な資料の提出を求めたところ,
原告のBセンター所長は,本件担当官に対し,本件各専用部分の
うちBセンターにおける契約内容を明らかにする契約書であると
して「御見積書」と題する書面2通の写し(以下,併せて「本,
件各契約書」という。乙2,3)を示してこれらを提出した。
(甲10,22,乙2,3及び弁論の全趣旨)
本件現地調査及びこれと併行して行われた書類調査の結果を踏
まえ,本件担当官は,平成17年11月末ころ及び同年12月7
日,原告に対し,口頭で調査概要を説明した。この際,本件担当
官は,原告に対し,原告事業所には第三者と賃貸借契約を締結し
て賃貸している部分があることや非課税床面積の変更等を要する
ことが判明したとして,賃貸借契約書の提出を求め,平成14事
業年度から平成16事業年度までの各事業所用家屋貸付等申告書
の提出をしょうようするとともに,本件各事業所のうち原告の専
用に係る部分の事業所床面積について,課税標準の特例である1
2号特例の適用を各1階部分についてのみ認め,本件各専用部分
及び本件各共用部分については否認するとの意向を示した。
(甲10)
,,,(ウ)原告は平成17年12月9日東京都港都税事務所に対し
平成14事業年度から平成16事業年度までの各事業所用家屋貸
付等申告書(乙9の1から3まで,乙10)を提出した。
,(「」。)また原告の倉庫事業部長C以下C倉庫事業部長という
ほか2名は,平成17年12月14日,東京都港都税事務所を訪
,,れ本件各事業所における原告の業務運営について口頭で説明し
本件各専用部分及び本件各共用部分を含む本件各事業所の上屋棟
床面積全体について12号特例が適用されるべきである旨を申し
入れた。
(甲10,22)
(エ)東京都港都税事務所長は,平成18年1月12日,原告に対
し,別紙2「更正通知書の計算」の表1のとおり納付すべき資産
割税額を算出して,平成14事業年度から平成16事業年度まで
の3事業年度の事業所税に係る各更正決定(以下,併せて「前3
事業年度に係る各更正決定」という)を行った。東京都港都税。
事務所長は,本件現地調査や原告から提出を受けた賃貸借契約書
の内容等を検討した結果,本件各事業所のうち第三者に賃貸して
いる部分については,地方税法701条の32及び都税条例18
8条の12第1項に基づき,賃借人が納税義務者であるとして減
額更正をし,また,原告が使用する本件各専用部分及び本件各共
用部分については,当該部分において原告が運送契約に基づき一
般港湾運送事業又は港湾荷役事業として輸送途上の貨物の荷さば
き及びそれに伴う一時的な貨物の保管を行っていると確認するこ
とができなかったとして,12号特例の適用を否認して増額更正
をしたものであった。
(オ)原告は,平成18年3月7日,東京都知事に対し,前3事業
年度に係る各更正決定のうちそれぞれ本件各専用部分及び本件各
共用部分について12号特例の適用を否認した部分の取消しを求
める審査請求をした(甲1)。
(カ)東京都知事は,平成18年6月30日,前記(オ)の審査請求
を棄却する旨の裁決をした(甲1)。
(キ)東京都港都税事務所長は,平成19年1月17日,原告に対
し,別紙2「更正通知書の計算」の表3のとおり納付すべき資産
割税額を算出して,平成16事業年度の資産割事業所税について
(「」。)増額再更正決定以下平成16事業年度再更正決定という
を行った。これは,本件における争点とは関係のない単純な計算
の誤りに起因するものであり,この増額再更正による増額部分に
関し,当事者間に争いはない(乙16)。
イ平成17事業年度更正決定に至る経緯について
(ア)原告は,平成18年2月27日,東京都港都税事務所長に対
し,平成17事業年度に係る事業所税納付申告書及び事業所税減
免申請書を提出したが,いずれの書面も前3事業年度に係る各更
正決定の内容は反映されていなかった。
(イ)原告は,平成18年8月23日,東京都港都税事務所長に対
し,平成17事業年度に係る事業所税修正申告書を提出したが,
これも,前記(ア)同様,前3事業年度に係る各更正決定の内容が
反映されたものではなく,本件の争点とは関係のない計算の誤り
を訂正したものであった。
,,,,(ウ)本件担当官は平成18年9月6日原告に対し電話をし
平成17事業年度の上記(イ)の申告に関し,前記ア(イ)の本件現
地調査等により把握した本件各事業所の使用状況と平成17事業
年度の末日現在の使用状況との差異についての確認を行ったとこ
,。,,ろ使用状況に差異はないとの回答を得たまた本件担当官は
原告に対し,併せて,減免申請に係る調査に必要な資料の提出を
求めた(弁論の全趣旨)。
(エ)本件担当官は,平成18年10月24日,原告に対し,調査
結果について説明を行い,修正申告のしょうようを行ったが,同
年11月6日,原告から修正申告に応じない旨の連絡を受けた。
(弁論の全趣旨)
(オ)東京都港都税事務所長は,平成18年11月14日,原告に
対し,別紙2「更正通知書の計算」の表2及び別紙3「減免措置
の計算」の「更正処分」欄記載のとおりの計算により納付すべき
資産割税額を算出して,平成17事業年度更正決定をした(乙。
17)
(カ)原告は,平成19年1月11日,東京都知事に対し,平成1
7事業年度更正決定のうち本件各専用部分及び本件各共用部分に
ついて12号特例の適用を否認した部分の取消しを求める審査請
求をした(甲12)。
(キ)東京都知事は,平成19年5月16日,前記(カ)の審査請求
を棄却する旨の裁決をした(甲12)。
()本件各訴えの提起等について3
ア原告は,平成18年10月31日,前3事業年度に係る各更正決
定のうち本件各専用部分及び本件各共用部分につき12号特例の適
用を否認した部分を不服として,当該部分の取消しを求める甲事件
に係る訴えを提起した(平成18年(行ウ)第593号事件(当)。
裁判所に顕著な事実)
イ原告は,平成19年5月25日,平成17事業年度更正決定のう
ち本件各専用部分及び本件各共用部分につき12号特例の適用を否
認した部分を不服として,当該部分の取消しを求める乙事件に係る
訴えを提起した(平成19年(行ウ)第329号事件(当裁判)。
所に顕著な事実)
ウ当裁判所は,平成19年6月12日の甲事件第4回口頭弁論期日
,。において乙事件の弁論を甲事件の弁論に併合する旨の決定をした
また,原告は,同期日において,甲事件の訴えのうち,平成16事
業年度更正決定の一部取消しを求める訴えを,平成16年事業年度
再更正決定の一部取消しを求める訴えに変更した(当裁判所に顕。
著な事実)
3被告が主張する原告の税額等
被告が本件各訴訟において主張する原告の本件各事業年度の資産割事
業所税についての各事業所床面積,各非課税床面積,各控除床面積,各
課税標準,各税額,各減免税額及び各納付すべき資産割税額は,別紙2
「更正通知書の計算」の表1(ただし平成16年度を除く,表2及び)
表3のとおりであり,このうち,平成17事業年度更正決定において減
,「」「」免税額を算出した計算根拠は別紙3減免措置の計算の更正処分
欄記載のとおりである。
他方,原告の主張する本件各事業年度の資産割事業所税についての各
事業所床面積,各非課税床面積,各控除床面積,各課税標準及び各税額
は,別紙4「原告主張に基づく計算」のとおりであり,また,平成17
事業年度の減免税額の計算根拠は,別紙3「減免措置の計算」の「原告
申告」欄記載のとおりである。すなわち,原告は,被告が主張する上記
の課税根拠のうち本件各事業年度の各控除床面積,各課税標準及び各税
額,すなわち,本件各事業所の本件各専用部分及び本件各共用部分につ
いて12号特例の適用を否認した部分を争うものであり,その余の部分
及び計算関係については,いずれも当事者間に争いがない。
4争点ー本件各専用部分及び本件各共用部分の「上屋」該当性
本件の争点は,本件各事業年度における各課税標準の算定期間の末日
である平成14年12月31日,同15年12月31日,同16年12
月31日及び同17年12月31日において,原告が本件各専用部分及
び本件各共用部分を都税条例188条の13第3項に定める資産割の課
税標準である地方税法701条の41第1項の表の12号に定める施設
である港湾法2条5項6号に規定する「上屋」として使用していないと
いうことができるかである。
5争点に関する当事者の主張の要旨
(原告の主張)
()事業所税の資産割に係る軽減特例である12号特例の適用を受け1
ることができる「上屋」に該当するか否かは,その建物全体が港湾法
2条5項6号に規定する「上屋」に該当するか否かにより判定される
べきである。
()本件各事業所全体が港湾法2条5項6号にいう「上屋」に該当す2
ることは,以下のとおり明らかである。
ア原告は,昭和38年8月26日付けで運輸大臣(当時)から一般
港湾運送事業の免許を受け,港湾運送業を主たる事業として営んで
おり,本件各事業所全部を港湾荷役事業の用に供する上屋として使
,,用し業として顧客から受託した貨物のバンニング・デバンニング
搬入,保管,荷さばき及び搬出等の業務を行っている。
原告は,国土交通大臣から港湾運送事業法17条に定める事業計
画の変更認可を受ける際,資料として提出した事業計画書の中に,
原告が港湾運送業又は港湾荷役事業の用に供する上屋の所在,種類
及び面積の明細を記載してこれらを明らかにしている。原告は,直
近では,平成14年4月30日付けで関東運輸局長に対し港湾運送
事業計画変更認可申請書を提出し,同年5月14日付けで関東運輸
局長の承認を受けているが,本件各事業所は,この承認を受けた港
湾運送事業計画書に港湾荷役事業の用に供される上屋として記載さ
れている。なお,原告は,本件各事業所の一部を顧客に倉庫として
賃貸しているが,本件各事業所において,倉庫として賃貸している
部分とそうでない部分とは,区分して使用されており,賃貸してい
る部分については,各賃借業者が事業所税を負担しており,本件で
問題となっている本件各専用部分は,倉庫として顧客に賃貸してい
ない部分である。
,,イ原告が本件各事業所において取扱う貨物はすべて原告が作成し
平成12年10月31日付けで運輸大臣(当時)より変更の認可を
得た本件運送約款(甲3)に基づいて受託している貨物であり,ま
た,本件各事業所における原告による貨物の保管は,本件運送約款
に基づき運送途上の貨物の荷さばきのために一時的に仮蔵置してい
るものにすぎない。
ウ貨物の荷さばき及びこれに伴う一時的な仮蔵置をする建物部分で
ある「上屋」は,港湾運送業を行うには不可欠なものである。
輸入の場合は,コンテナ運送で陸揚げされ,本件各事業所に搬入
された貨物を,通関手続のために数日を必要とするほかは,配送先
別に仕分け(荷さばき)して陸上運送業者に引き渡すという役務の
提供を行っている。輸出の場合は,配船の都合で荷さばきのために
数日間保管を要するが,これはあくまでも配送先が決まるまでしば
らくの不可避の保管であり,運送途上の仮蔵置であって,その後,
陸上運送で運び込まれた貨物を仕分けしてコンテナに積み込みコン
テナ運送業者に引き渡す役務の提供を行っている。原告の行う業務
は,輸送手段の変更や荷さばきのための貨物の積卸し,搬入及び搬
出並びに積卸し等のために必要な保管を行うものであり,これは正
に港湾荷役業務であって,原告の行う保管は,貨物の積卸し等のた
めに必要な運送途上で発生する保管であり,荷主との間の運送契約
に基づくものである。原告は,本件各専用部分及び本件各共用部分
を無許可の倉庫業法上の倉庫として使用しているものでは決してな
い。
搬出及び搬入する配船又は配車や荷主の都合で,貨物により仮蔵
置の期日の長短にばらつきがあり一定しないが,仮蔵置の期間が荷
主の都合で長くなる場合でも,運送契約に基づく運送途上の仮蔵置
であることに異同はなく,本件各事業所は,その全部が上屋として
機能し,使用されている。もっとも,輸出貨物については,配船の
都合で運送を委託されて上屋に搬入された貨物をすぐに搬出するこ
とができず,配船の都合がつくまでしばらく保管することも不可避
なことであり,また,輸入貨物についても,配送先が決まるまでし
ばらく保管することは不可避であるが,いずれの保管もあくまでも
運送途上の仮蔵置にすぎない。
本件各事業所のうち1階部分と2階以上の本件各専用部分とは,
その使用実態等において全く差異がないのである。
エ原告は,本件各事業所に搬入された貨物を大型のエレベータとフ
ォークリフトを使い,本件各事業所内の1階から4階まで及びBセ
ンターの5階の冷蔵室の空いている場所(空スペース)に一時的に
荷さばきのために保管し,また,大型エレベータとフォークリフト
を使ってトラックに積み込んで搬出しているのであり,1階部分と
2階以上の本件各専用部分との間には使用実態に違いはない。この
ことは,各課税標準の算定期間の各末日現在において,全く同様で
ある。原告は,港湾運送事業法施行規則11条に従い所管の関東運
輸局の認可を受けて,下請け業者であるD株式会社(以下「D」と
いう)等に原告事務所における貨物の搬送作業を専属で行わせて。
いる。本件各事業所においてフォークリフトを操作しているのはD
である。このことからしても,本件各事業所において,原告が貨物
の荷さばき及びこれに伴う一時的な貨物の仮蔵置をしていることは
明らかである。
(「」オ原告がBセンターにおいて取り扱っている株式会社E以下E
という)の貨物は,通常の場合,入荷当日中にトラックに積み込。
,,んでFセンターに向けて搬出しているものでありその他の場合は
貨物の販売先の都合で仮蔵置期間が長引くことがあるが,運送契約
に基づく運送途上の仮蔵置であり,倉庫として保管しているもので
はない「御見積書」と題する契約書(乙3)に暦月3期制で保管。
料を記載していることは,保管が長期間になると割高の保管料を請
求することを説明しているものにすぎず,この記載は,本件各事業
所が各課税標準の算定期間の各末日において港湾法2条5項6号に
いう「上屋」であることを否定する根拠とはならないというべきで
ある。
また,日常の業務において,原告が見積りに保管料を通知してい
ても,実際に保管料を請求しているのは,顧客側に特別の事情があ
った場合に限られているのであり,原告が荷主に対し保管料を通知
していることは,港湾法2条5項6号にいう「上屋」としての使用
を否定するものではない。
()以上のとおり,原告は,各1階部分だけでなく本件各専用部分を3
含めた本件各事業所全部を,本件運送約款に基づき港湾法2条5項6
号にいう「上屋」として使用しており,その実態は,本件各事業所と
いう建物の構造及び外観から明らかであるがこれに加えて前記(),,2
のウ及びエのとおりの使用実態からも明らかである。
したがって,本件各事業所のうち1階部分だけに12号特例の適用
を認め,2階以上の部分である本件各専用部分及び本件各共用部分に
ついてこれを適用しないという合理的根拠は全く存しない。
本件各事業所の各上屋棟は,すべて港湾荷役事業の用に供する港湾
法2条5項6号にいう「上屋」であるから,本件各専用部分及び本件
各共用部分を含む本件各事業所の上屋棟のうち庫内事務所等の床面積
を除くその余の床面積すべてについて12号特例が適用されるべきで
ある。
(被告の主張)
()本件各事業所の各上屋棟のうち本件各専用部分及び本件各共用部1
分に港湾法2条5項6号にいう「上屋」としての使用実態があること
及びそこで行われている貨物の受託に係る契約が運輸大臣より変更許
可を得た本件運送約款に定められたとおりのものであることは,いず
れも否認する。
()ア本件各専用部分及び本件各共用部分において,一般港湾運送事2
業又は港湾荷役事業として海上輸送貨物の荷さばき及びそれに伴う
一時的な貨物の保管が行われていたということができず,本件各専
用部分及び本件各共用部分が港湾法2条5項6号にいう「上屋」に
当たらないことは,以下に述べるとおりである。
(ア)地方税法701条の41第1項の課税標準の特例の適用を受
ける事業であるかどうかの判定は課税標準の算定期間の末日の現
況によるものとするとされていることから(地方税法701条の
41第3項,前3事業年度に係る各更正決定に先立ち,本件担)
当官は,原告に対し,地方税法701条の40第1項に定める本
件各事業年度の事業所税の課税標準の算定を行う事業年度末日で
ある平成14年12月31日,同15年12月31日及び同16
年12月31日において,本件各専用部分で一般港湾運送事業又
は港湾荷役事業として海上運送貨物の荷さばき及びそれに伴う一
時的な貨物の保管が行われていた事実を確認することができる契
約書等の書類の提出を求めてきたが,原告は,単に,本件各事業
所全体が同号にいう「上屋」である旨主張するだけで,本件各専
用部分及び本件各共用部分において行っている個別具体的な運送
契約の存在すら立証せず,後記(イ)のとおり,E及び株式会社G
(以下「G」という)との本件各契約書(乙2,3)を提出し。
ただけで,課税標準の算定を行う事業年度末日前後に扱った貨物
の運送に係る顧客との間の運送契約書等上記各課税標準の算定を
行う本件各事業年度の各末日において,本件各専用部分で一般港
湾運送事業又は港湾荷役事業として海上運送貨物の荷さばき及び
それに伴う一時的な貨物の保管(運送途上の一時的な仮蔵置)が
行われていたことを確認することができる書類,すなわち本件各
専用部分に係る顧客との運送契約書等を提出しなかった。
(イ)原告は,本件担当官に対し,Bセンターにおける原告とG又
はEとの各契約書として本件各契約書(乙2,3)を提出した。
しかし,本件各契約書によると,Bセンターにおいて,原告がG
及びEの貨物の保管,デバンニング(コンテナから貨物を取り出
す作業,入出庫作業及びこれらに付随する作業を行っていたこ)
とは認められるものの,デバンニングや入出庫作業は倉庫であっ
ても行われる作業であるから,このことからBセンターが港湾法
2条5項6号にいう「上屋」として使用されていたと認定するこ
とはできないというべきである。むしろ,本件各契約書の記載内
容からすると,原告は,本件各専用部分を倉庫として活用して倉
庫保管料を徴しており,倉庫保管を業として行っているものと推
認される。同号にいう「上屋」は,運送契約上の貨物の荷さばき
,,及び一時保管を目的とするため料金体系が倉庫と異なっており
同号にいう「上屋」における貨物保管料は,荷さばき場における
滞荷料,すなわち貨物が長期間滞留すると上屋の本来の機能が阻
害されることから,長期間の蔵置に対して逓増する額の割増料を
ペナルティとして課するものであり,通常は,貨物搬入日から貨
物搬出日までの間,1日単位で計算されるものである,実際,。
原告が運輸大臣から認可を受けた港湾運送料金表(以下「本件運
送料金表」という。乙14)においても,上屋保管料金はそのよ
うに定められている。それにもかかわらず,本件各契約書には,
本件運送料金表の定めによる上屋保管料は採用されず「倉庫保,
管料」として通常倉庫の保管料で採用される暦月3期制が採用さ
れていたことからすると,本件各専用部分のうちBセンターに係
る部分の使用実態は,同号にいう「上屋」ではなく,むしろ倉庫
であったと考えざるを得ない。
また,原告は,本件現地調査の際、本件担当官に対し,平成1
6年10月から同年12月までの3箇月分のサンプルとして株式
会社H(以下「H」という)輸入チームに係る請求台帳及びそ。
の明細(乙18から20までの各1及び2)を提出した(なお,
乙第18号証の2の明細は同号証の1の請求台帳記載の一部I,(
分のみ)にすぎず,また,乙第19号証の1の請求台帳と同号証
の2の明細は,内容が一致していないが,いずれも,本件現地調
査の際,原告から平成16年10月から同年12月の3箇月分の
資料であるとして受領したものである。このH輸入チームに。)
係る請求台帳及びその明細(乙18から20までの各1及び2)
においても,いずれも保管料が請求されており,しかも2期又は
3期の保管料が毎月請求されていた。特に乙第19号証の2の明
細の記載内容は,3期目の保管料を請求しているものがその請求
の半数を占め,2期目の保管料を含めると4分の3に達するもの
であり,しかも,月ごとに精算を行うため,請求されるのは最大
で3期(=30日)であるが,5箇月以上保管している貨物に係
る請求も記載されていた。
そうすると,原告は,本件各専用部分において,顧客の貨物の
倉庫保管を請け負い,保管の対価として倉庫保管料を徴していた
ものであり,当該保管が運送契約上の貨物の荷さばきに伴う一時
的な貨物の仮蔵置とはいえないというべきである。
しかも,原告が本件各契約書(乙2,3)に基づいて行ってい
たE及びGからの受託業務は,いずれもBセンターにおけるもの
であるが,原告は,本件現地調査の際やその後においても,Aセ
ンターにおける業務実態については何ら具体的に説明をしなかっ
た。このことは,C倉庫事業部長の陳述書(甲10,22)にお
いても同様である。Aセンターは,平成17事業年度の算定期間
の末日において,Bセンターの7倍以上の11,775.99㎡
,,に及ぶ原告自己使用床面積がありながらその使用状況について
具体的な主張がなく,平成19年10月23日の第6回口頭弁論
期日に至るまで契約書類等証拠の提出が全くなかった。
(ウ)原告は,ようやく第6回口頭弁論期日になって,Aセンター
において,原告がJ株式会社(以下「J」という)から受託す。
る貨物に係る契約に関する書証として,見積書(甲19の1)及
び請求書(甲19の2)を提出した。しかし,これのみでは,A
センターの2階以上の原告の専用に係る部分である自己使用の事
業所床面積すべてについてその使用実態が具体的に主張立証され
たということはできない。また,原告は,Aセンターの5階部分
の冷蔵室(定温(保冷)倉庫)をJから受託した保冷貨物の保管
に使用していること(甲19の1及び2)から,冷蔵室の存在を
もって5階部分を港湾法2条5項6号にいう「上屋」であると主
張するようであるが,冷蔵室は一般の倉庫においても備え付けら
れているものであるから,同号にいう「上屋」であることの立証
とはならない。
(エ)原告は,本件各訴訟に至り裁判所からの釈明を受けて種々の
書証を提出したが,そのうち,請求台帳と題する各書証は,甲第
25号証の2を除きいずれも,2期目以降の保管料を請求してい
ないものであった。本件各訴訟が4事業年度に係る各更正決定の
取消し等が争われ,各事業年度末日における本件各事業所の使用
実態がどうであったかが争点となっている以上,少なくとも各事
業年度末日に係る請求台帳,すなわち平成14年から同17年ま
,,での各12月分の請求台帳が提出されてしかるべきところ殊更
各事業年度の12月分の請求書が提出されていないことを考え併
せると,原告は,本件各事業年度の請求台帳のうち2期目以降の
保管料を請求していない都合の良いものを抜き出して証拠化した
のではないかとの疑念が生じる。また,原告が提出した上記の各
請求台帳と題する各書証は,暦月3期制の保管料を徴収する見積
書に対応する各月ごとの請求台帳であり,2期目以降の保管料の
請求がないのは,単に2期目以降の保管料が当月発生しなかった
からにすぎないことが認められるから,上記の各書証をもって,
本件各専用部分が港湾法2条5項6号にいう「上屋」としての使
用実態を証する証拠ということはできないというべきである。
(オ)また,原告は,平成17年5月1日現在の情報として,本件
各専用部分及び本件各共用部分のうちの,Aセンターの4階45
8坪並びにBセンターの1階850坪,3階900坪及び4階9
00坪を近隣相場の使用料で「空き倉庫」として提供するとして
顧客を募集し,ホームページである×××××においhttp://www.
て,平成20年1月9日現在の情報として「事業案内・倉庫を,
借りたい「倉庫施設案内・Aセンター・Bセンター「KA」,」,
センターご案内」における「倉庫2階∼4階フロアー」及び「K
Bセンターのご案内」における「倉庫2階∼5階フロアー」の各
,「」表示を掲示し近隣相場の使用料で本件各専用部分を空き倉庫
として提供するとして顧客を募集していた。
イ以上のとおりであり,本件各専用部分においては,一般港湾運送
事業又は港湾荷役事業として海上運送貨物の荷さばき及びそれに伴
,,う一時的な貨物の保管が行われていたということはできずむしろ
倉庫としての保管実態が認められ,原告は本件各専用部分を倉庫と
して使用して,顧客から倉庫保管料を徴収し,また,倉庫としてテ
ナントを募集して倉庫として貸出しを行っていたものと認められる
のであるから,港湾法2条5項6号にいう「上屋」には当たらない
というべきである。
そして,課税標準の算定を行う本件各事業年度の各末日において
本件各専用部分が12号特例の適用の対象となる港湾法2条5項6
号にいう「上屋」として使用されていたと認めることができない以
上,これに付随する本件各共用部分についても同号にいう「上屋」
として使用されていたと認めることができないというべきであり,
したがって,本件各専用部分及び本件各共用部分に12号特例を適
用することはできないというべきである。
()本件担当官は,前3事業年度に係る各更正決定に先立ち,本件現3
地調査をした際,原告に対し,事業所税の資産割の課税標準の算定に
必要な資料を求めたものであるところ,当初,原告は,平成19年2
月21日の第2回口頭弁論期日において陳述した同日付け原告準備書
面()においてこの事実を認めていた。しかし,原告は,同年7月21
4日の第5回口頭弁論期日において陳述した同日付け原告準備書面
()において,この事実を否認し,証拠として,これに沿うC倉庫事3
業部長の陳述書(甲22)を提出した。この点に関し,原告の明確な
主張がないため,原告がどのような意図をもって,これまで認めてい
た上記の事実を否認するに至ったのかは,当該準備書面及び甲第22
号証の立証趣旨を見ても不明であるが,本件現地調査の際,本件担当
官が原告に対し事業所税の資産割の課税標準の算定に必要な資料を求
めた事実を否認する旨の原告の主張及びその立証活動は,時機に後れ
た攻撃防御方法として排斥されるべきである。
もっとも,本件担当官が,本件更正請求に係る原告の申告内容の調
査に当たり,原告に対してそのことに関連する資料の提出を求めない
ということはおよそあり得ないのであって,この点に関する原告の主
張は失当というほかはない。被告が当初から主張しているとおり,本
件担当官は,原告に対し,原告が本件各専用部分及び本件各共用部分
を港湾法2条5項6号にいう「上屋」として使用していることを証す
る資料の提出を求めたにもかかわらず,何も提出されなかったため,
東京都港都税事務所長は本件各更正決定を行ったものである。
第3当裁判所の判断
1争点について
()東京都は,特別区の存する区域において,都税として課する目的1
税としての事業所税の課税標準について,地方税法701条の40,
701条の41を準則として,都税条例188条の13によって規定
している。また,都税条例1条は,東京都税及びその賦課徴収につい
ては,法令その他に別途定めがあるもののほか,この条例の定めると
ころによることと規定しており,地方税法に別途定めがあれば,地方
税法が適用されることとなる。
都税条例188条の13第1項は,事業所税の資産割の課税標準を
課税標準の算定期間の末日現在における事業所床面積と定めており,
また,同条第3項は,前2項の規定による事業所税の課税標準となる
べき事業所床面積又は従業員給与総額について,地方税法701条の
41第1項の規定の適用がある場合においてはこれらの規定の定める
ところにより,事業所税の課税標準となるべき事業所床面積を算出す
ると定めている。
他方地方税法701条の41第1項は同項の表の各号の上欄施,,(「
設」欄)に掲げる施設に係る事業所等において行う事業に対して課す
る資産割の課税標準となるべき事業所床面積の算定については,当該
資産割につき,それぞれ当該各号の中欄(資産割に係る割合」欄)「
に割合が定められている場合には,当該施設に係る事業所等に係る事
業所床面積から当該施設に係る事業所床面積に当該各号の中欄(資「
産割に係る割合」欄)に掲げる割合を乗じて得た面積を控除するもの
とすると定め,同項の表の12号は,上欄(施設」欄「港湾法第「)
2条第5項に規定する港湾施設のうち同項第6号又は第8号に掲げる
施設で政令で定めるもの,中欄(資産割に係る割合」欄「4分の」「)
3」と定めている。また,港湾法2条5項は,同法の「港湾施設」と
は,港湾区域及び臨港地区内における同項1号から11号までに掲げ
る施設と定めているところ,同項6号は「荷さばき施設固定式荷,
役機械,軌道走行式荷役機械,荷さばき地及び上屋,同項8号は,」
「保管施設倉庫,野積場,貯木場,貯炭場,危険物置場及び貯油施
設」と定め,また,地方税法施行令56条の62は「法第701条の
41第1項の表の第12号に規定する政令で定める施設は,上屋及び
倉庫(倉庫業法第7条第1項に規定する倉庫業者がその本来の事業の
用に供する倉庫に限る)とする」と定めている。。。
したがって,地方税法701条の41第1項の表の12号の上欄
(施設」欄)に定める施設とは,港湾区域及び臨港地区内における「
荷さばき施設である上屋及び保管施設である倉庫(倉庫業法第7条第
。)1項に規定する倉庫業者がその本来の事業の用に供する倉庫に限る
ということになり,免許を受けた一般港湾事業者が,港湾区域又は臨
港地区内で,港湾法2条5項6号に規定する「上屋」として使用して
いる事業所の当該部分については,資産割の課税標準の特例(12号
特例)の適用を受けることができることになる。
ところで,事業所税の課税客体は,事業所等において法人又は個人
が行う事業であり,事業所床面積は,課税標準を算定するための根拠
として位置付けられ,当該施設がどのような事業の用途に供されてい
るかの判定は,課税標準の算定期間の末日の現況によって認定される
ことになる(地方税法701条の41第3項。)
したがって,本件においては,本件各事業年度における課税標準の
算定期間の末日である平成14年12月31日,同15年12月31
日,同16年12月31日及び同17年12月31日において,原告
が,本件各専用部分を港湾法2条5項6号にいう「上屋」として使用
していないということができるか否かが問題となる。
()アまず,この点に関し,原告は,運輸大臣(当時)から一般港湾2
運送事業者として免許を受け,平成14年4月30日付けで関東運
輸局長あてに提出した港湾運送事業計画変更認可申請書において,
本件各事業所を全体として港湾荷役事業の用に供する上屋として記
載し,関東運輸局長の認可を受けているので,本件各事業所全部が
港湾荷役事業の用に供する港湾法2条5項6号にいう「上屋」に該
当するというべきであり,本件各事業所の事業所床面積すべてにつ
いて12号特例が適用されるべきである旨主張する。
イしかしながら,事業所税は,当該税の対象となる施設で行う事業
に着目して課するものであるから,上屋という名称の建物の存在で
はなく,当該上屋と称する建物で具体的にどのような事業を行って
いるかにより,事業所税の課税や課税標準の特定の適用が判断され
るものである。そして,課税標準の特例は,例外措置として定めら
れたものであるから,特例適用に係る認定は,租税負担の公平の観
点から厳格に行われるべきである上,これを認めるか否かは,事業
計画上いかなる施設として認可されたかなどという形式的判断によ
るのではなく,むしろ課税標準の特例に該当する施設としての使用
実態が認められるか否かという実質的判断によるべきである。具体
的には,本件各専用部分において,原告が一般港湾運送事業又は港
湾荷役事業として,顧客との間の運送契約に基づき受託した貨物の
運送途上の荷さばき及び一時的保管等を行っているという使用実態
があるかどうかという判断によるべきである。そして,原告は,港
湾運送事業に係る事業計画上,当該施設が上屋,野積場又は水面貯
木場のいずれに該当するかの区別において,本件各事業所を上屋と
して認可を受けているにすぎないのであるから,これが直ちに,港
湾法2条5項6号にいう「上屋」としての使用実態を伴うものであ
ることを意味するものとはいえず,また,原告は,前記前提事実の
とおり,事業計画に上屋と記載されている本件各事業所の2階以上
の各部分のうちの一部を倉庫として第三者に対し賃貸しており(乙
9の1から乙10までこの用法が港湾法2条5項6号にいう上),「
屋」としての用法に該当しないことは明らかであるから,この点か
らしても,原告が関東運輸局長から認可を受けた事業計画に本件各
事業所が上屋と記載されていることは,実際に港湾法2条5項6号
にいう「上屋」として用いられていることを意味しないというべき
である。
ウしたがって,原告が一般港湾運送事業の免許を受け,本件各事業
所が上屋であると記載された事業計画が認可されていることをもっ
て,本件各事業所全体が12号特例の適用の対象となる「上屋」に
該当するという原告の上記アの主張は,失当というべきである。
()そこで,本件各専用部分において,原告が一般港湾運送事業又は3
港湾荷役事業として,顧客との間の運送契約に基づき受託した運送途
上の貨物の荷さばき及びそれに伴う一時的な貨物の保管を行っていな
いということができるかという具体的使用実態いかんについて,さら
に検討を進める。
ところで,港湾法2条5項6号の「上屋」とは,貨物の積卸し,荷
さばき又は保管の用に供される施設である建物をいい,貨物の荷さば
き及びそれに伴う一時的な保管が行われる施設であると解されている
ところ(乙8,上屋における貨物の保管が貨物の荷さばきに伴う一)
時的な保管であって,運送途上の一時的な仮蔵置であり,契約から見
れば運送契約(運送約款)に含まれるものであるのに対し,貨物の保
管という点で上屋と類似施設である倉庫における貨物の保管は寄託契
約に基づく保管であることから,両者は貨物に対する取扱い上の違い
により区別されており,倉庫業法施行令も,運送,運送取扱い又は運
送代弁のために物品を仮置する施設として使用される施設は,倉庫業
法にいういわゆる倉庫ではないとして,明瞭にこれを区別している。
しかしながら,港湾運送事業と倉庫業のいずれにおいても,荷役作業
として看貫,仕訳,はい替え等の作業が行われており(甲10,乙1
2,特定のある一時点における現場写真や現地調査において当該建)
物で行われている作業内容を見てみても,そこで行われている事業が
港湾運送事業であるのか,それとも倉庫業であるのかを区別すること
は困難であるというべきであり,両者の差異は,運送途上の貨物の荷
さばきに伴う一時的な貨物の保管にすぎないのか,それとも長期間の
保管を念頭においたものなのかという点に現れるものと解される。
()前記前提事実,証拠(甲1,3から6まで10,12,15,14
6,17から19までの各1及び2,20から23まで,24及び2
5の各1及び2,26,27の1及び2,28,29の1及び2,3
0,31から33までの各1及び2,乙1から4まで,9の1から3
まで,10,12,14,15,18から20までの各1及び2,2
1,22の1から17まで)及び弁論の全趣旨によると,本件各事業
所の使用実態等に関し,以下の事実を認めることができる。
ア原告は,一般港湾運送事業の免許を受けて,主として一般港湾運
送事業及び港湾荷役事業を行うとともに,倉庫業並びに倉庫,土地
及び建物の賃貸業等を行うものである。
原告は,一般港湾運送事業及び港湾荷役事業を行うに当たり,本
件運送約款及び本件運送料金表を定めているが,本件運送約款24
条は「当社は,委託を受けた港湾運送に対して運輸大臣に届け出,
,。」た運賃及び料金を収受し収受した運賃及び料金の割戻はしない
と定め,本件運送料金表は,上屋保管料を貨物搬入日から貨物搬出
日までの間,1日単位で設定している。
イ原告が本件更正請求をした後,東京都港都税事務所長が前3事業
,,年度の事業所税に係る各更正決定をするまでの間に本件担当官は
平成17年5月17日,同月18日,同年9月27日及び同年12
月7日の4回にわたり原告事務所の本件現地調査を行い,特に,同
年5月17日にはAセンターを,同年9月27日にはBセンターを
それぞれ現地調査し,その都度,原告の担当者から本件各事業所の
使用実態について口頭で説明を受けた。
本件現地調査の結果,本件各事業所は,臨港地区にある港湾施設
であるが,本件各事業所の各2階以上の部分は,その多くを貸し倉
庫として賃貸していることが判明した。また,本件各事業所の各2
階以上の部分のうち,第三者に賃貸している部分を除いた部分のう
ち原告の専用に係る部分である本件各専用部分においては,G及び
。,E等の倉庫業者や他の港湾運送業者の貨物が保管されていた他方
本件各事業所の各1階部分には,トラックが横付けされるプラット
フォームがあり,それに続くフロア部分は貨物の蔵置がほとんどな
いオープンスペースとなっていて,荷さばきスペースとして使用さ
れており,搬入された貨物は,当該荷さばきスペースにおいて荷さ
ばきが行われ,その後,他のフロアの保管施設への移動が行われ,
逆に,搬出時は,他のフロアから当該荷さばきスペースに貨物が下
ろされ,トラックへの積込みに当たっての荷さばきが行われるよう
になっていた。
ウ本件担当官による平成17年9月27日のBセンターの現地調査
の際には,原告のBセンター所長が原告の業務について口頭で説明
した。
本件担当官は,本件各事業所の各1階部分を荷さばきに使用する
ことは,物流センター又は流通センターである倉庫であっても見受
けられるものではあるが,本件各事業所については,臨港地区にあ
る港湾施設であり,保管等を主とする2階以上とは異なり,1階は
主として荷さばきに使われていることから,契約関係に基づく使用
状況についての資料の提出がなくとも,これを12号特例による事
業所床面積の控除の対象となる「上屋」として使われているとの原
告の申告を否認しないこととしたが,1階を「上屋,2階以上を」
倉庫として使用しているものが数多く存在することから,本件各専
用部分について12号特例の適用を認めるには契約関係に基づく使
用状況についての資料の提出が必要であると判断し,原告に対しそ
の資料の提出を求めた。
原告のBセンター所長は,本件担当官に対し,原告の本件各専用
部分における業務実態を明らかにする資料として本件各契約書乙,(
2,3)を提供し,また,平成16年10月から同年12月までの
3箇月分のサンプルとしてHに係る各請求台帳及びその明細(乙1
8から20までの各1及び2)を提供した。
(ア)本件各契約書は,いずれも平成16年10月29日付け見積
書であるが,本件各専用部分のうちBセンターにおける原告とE
との契約又は原告とGとの契約に関するものであり,原告がE又
はGの貨物の保管と当該貨物のデバンニング及び入出庫作業並び
にそれに付随する作業をBセンターにおいて提供することを内容
としいずれも10日ごとを1期とする暦月3期制に基づく倉,,「
庫保管料」を徴収するとともに,入出庫作業料等を徴収するとす
る内容のものであった。
(イ)乙第18号証の1及び2は,原告のHの輸入チームに対する
平成16年10月29日付けの同月分の請求台帳及びその明細の
各写しであり,Bセンターにおける貨物の入出庫作業及び保管料
を請求するとする内容であった。これらは,いずれも平成16事
業年度のものであり,乙第18号証の2の明細には,乙第18号
証の1に記載されている入出庫作業料の明細は記載されておら
ず,乙第18号証の1に記載されている保管料に関する明細のみ
が記載されていたが,保管料を請求した7件は,いずれも2期目
の保管料を請求するものであった。
(ウ)乙第19号証の1は,原告のHの輸出チームに対する平成1
6年11月30日付けの同月分の請求台帳の写しであり,Bセン
ターにおける貨物の入出庫作業のみ請求するとする内容であった
が,この明細の写しとして添付されていた乙第19号証の2は,
原告のHの輸入チームに対する平成16年11同月分の請求台帳
の明細の写しであり,入出庫料及び保管料を請求するとする内容
であった。これらは,いずれも平成16事業年度のものであり,
乙第19号証の2の明細には,保管料を請求した8件のうち,2
件が2期目の保管料を,4件が3期目の保管料を,その余が1期
目の保管料をそれぞれ請求するものであり,しかも,これは,同
年5月27日から継続して保管している貨物や同年8月27日か
ら継続して保管している貨物に関する保管料の請求を含むもので
あった。
(エ)乙第20号証の1及び2は,原告のHの食品チームに対する
平成16年12月29日付けの同月分の請求台帳及びその明細の
各写しであり,Bセンターにおける貨物の入出庫作業及び保管料
を請求するとする内容であった。これは,平成16事業年度のも
のであり,乙第20号証の2の明細には,保管料を請求した2件
のうち,1件が2期目の保管料を,その余が1期目の保管料をそ
れぞれ請求するものであった。
エ原告のC倉庫事業部長ほか2名は,平成17年12月14日に東
京都港都税事務所に赴き,口頭で本件各事業所全体について12号
特例の適用が認められるべきである旨主張した。
その際,C倉庫事業部長は,原告が本件各事業所床面積を顧客の
貨物の入庫及び出庫並びに保管の3つの作業分野で使用していると
しつつ,ある事業所で行われている貨物を取扱う作業のみを見て,
その事業所で行われている事業が港湾荷役事業であるか,倉庫事業
であるか,あるいは製造業の一部なのかを区別することは不可能で
あるが,ある事業者が特定の事業所で顧客の貨物に係る入出庫作業
や保管作業を行う場合において,その事業者が港湾運送事業者とし
て認可を受け,当該事業所を港湾運送事業を行う上屋として届けて
いる場合には,その事業所での事業は港湾運送事業であることにな
り,他方,その事業者が倉庫業者として認可を受け,当該事業所を
倉庫業を行う倉庫として届け出ている場合には,その事業所での事
業は倉庫業であることになるとの見解の下に,原告が港湾運送事業
者として認可を受けていること及び原告が関東運輸局長あてに提出
した港湾運送事業計画変更認可申請書には本件各事業所を上屋とし
て建て替え及び改築の申請をし,関東運輸局長の承認を得ているこ
とを根拠として,本件各事業所における顧客の貨物に係る入出庫作
業や保管作業は港湾運送事業としてされているものであり,したが
って,本件各事業所全体が港湾荷役業務における荷さばき及びそれ
に伴う一時保管を行う「上屋」というべきであると主張したもので
あり,その際,原告の本件各専用部分における具体的業務実態を明
らかにする特段の資料を提出することはしなかった。
オ本件担当官は,原告が平成18年8月23日に平成17事業年度
の事業所税に係る修正申告書を提出したことに伴い,原告事業所に
ついて調査を実施した。
本件担当官が平成18年9月6日に原告に対して電話をしたとこ
ろ,原告は,平成17年事業年度の末日現在の本件各事業所の使用
状況は本件現地調査により本件担当官が把握した本件各事業所の使
用状況と差異はないと回答した。
カ原告は,その後も,本件各更正決定がされても,東京都港都税事
務所長の判断を覆すべく本件各専用部分における原告と顧客との個
別的な運送契約に関する資料を提出することはなかった。
キ原告は,平成19年7月24日の第5回口頭弁論期日において,
甲第15号証,第16号証並びに第17号証及び第18号証の各1
及び2を提出した。これらは,いずれも,原告がDに対し,本件各
事業所において原告が行う港湾荷役作業及びこれに附帯する業務を
下請けさせる旨の作業請負契約に関する書証であった。
,,ク原告は平成19年10月23日の第6回口頭弁論期日において
初めて,Aセンターにおける顧客との契約関係を示す書証として甲
第19号証の1及び2を提出し,また,本件各契約書(乙2,3)
に対応する請求書の一部として甲第20号証及び甲第21号証を提
出した。
(ア)甲第19号証の1は,原告のJに対する平成16年3月10
日付けの見積書の写しであり,Aセンターにおいて,原告がJの
貨物を保管するとともに,バンニング及び入出庫作業その他これ
に付随する作業を行い,その対価として,入出庫及びバンニング
の作業料金を請求するとともに,貨物を定温倉庫保管することに
伴う「保管料」について,搬入日より起算して10日間を1期と
して請求し,それ以降は1日当たりの単価で保管料を請求すると
する内容であった。これは,平成16事業年度のものであった。
(イ)甲第19号証の2は,原告のJに対する平成19年10月1
日付けの上記見積書の3年以上後の同年9月分の請求書の写しで
あり「保管料」について,1期目の保管料のみ請求し,2期目,
以降の保管料は該当する貨物がなかったために請求しないとする
内容であった。これは,本件各事業年度に対応するものではなか
った。
(ウ)甲第20号証は,原告のEに対する平成18年10月31日
付けの同月分の請求台帳の写しであり,Bセンターにおいて原告
が行ったEの貨物に係る入出庫作業料のみを請求するとする内容
。,。であったこれは本件各事業年度に対応するものではなかった
(エ)甲第21号証は,原告のGに対する平成17年4月30日付
けの同月分の請求台帳の写しであり,Bセンターにおいて原告が
行ったGの貨物に係る入出庫作業料のみを請求するとする内容で
あった。これは,平成17事業年度のものであり,原告のGに対
する同16年10月29日付けの見積書(乙2)に対応するもの
であったが,同見積書は,前記のとおり,Bセンターにおいて,
原告がGの貨物を保管するとともに,デバンニング及び入出庫作
業その他これに付随する作業を行い,その対価として,入出庫及
びデバンニングの作業料金等を請求するとともに,同センターと
いう「倉庫」における保管料金として,暦月3期制で「倉庫保管
料」を請求するとする内容であった。
,,ケ原告は平成19年12月18日の第7回口頭弁論期日において
本件各事業年度内の請求台帳として,甲第23号証,甲第24号証
並びに甲第25号証の1及び2を提出し,同20年2月13日の第
8回口頭弁論期日において,甲第24号証の2を提出した。
(ア)甲第23号証は,原告のEに対する平成16年11月30日
付けの同月分の請求台帳の写しであり,入出庫作業料のみを請求
するとする内容であった。これは,平成16事業年度のものであ
り,原告のEに対する同年10月29日付けの見積書(乙3)に
対応するものであったが,同見積書は,前記のとおり,Bセンタ
,,,ーにおいて原告がEの貨物を保管するとともにデバンニング
入出庫作業及びトラック積み替え作業を行い,その対価として,
入出庫及びデバンニングの作業料金等を請求するとともに,同セ
ンターという倉庫における保管料金として暦月3期制で倉「」,「
庫保管料」を請求するとする内容であった。
(イ)甲第24号証の1及び2は,原告のGに対する平成16年1
1月30日付けの同月分の請求台帳の写しであり,入出庫作業料
のみを請求するとする内容であった。これは,平成16事業年度
のものであり,原告のGに対する同年10月29日付けの見積書
(乙2)に対応するものであった。
(ウ)甲第25号証の1は,原告のJに対する平成16年5月1日
,,付けの同年4月分の請求台帳の写しであり入出庫作業料のほか
1期目の保管料及び2期目以降の保管料を請求するとする内容で
あった。2期目以降の保管料は,同月1日に入庫し同月28日に
出庫した1件について,18日の超過分として「1件/17個,
×@150」の計算式により1610円を請求するとするもので
あった。これは,平成16事業年度のものであり,原告のJに対
する同年3月10日付けの見積書の写し(甲19の1)に対応す
るものであった。
(エ)甲第25号証の2は,原告のJに対する同17年4月30日
付けの同月分の請求台帳の写しであり,入出庫作業料のほか,1
期目の保管料及び2期目以降の保管料を請求する内容のものであ
った。2期目以降の保管料は「1件/1個×@150」の計算,
式により150円を請求するとするものであったが,その明細の
。,,記載はなく不明であるこれは平成17事業年度のものであり
原告のJに対する同16年3月10日付けの見積書の写し(甲1
9の1)に対応するものであった。
コ原告は,平成20年2月13日の第8回口頭弁論期日において,
甲第26号証から甲第33号証の2までを提出した。
(ア)甲第26号証は,原告のEに対する平成17年11月30日
付けの同月分の請求台帳の写しであり,入出庫作業料のみを請求
するとする内容であった。これは,平成17事業年度のものであ
,()り原告のEに対する同16年10月29日付けの見積書乙3
に対応するものであった。
(イ)甲第27号証の1は,原告のGに対する平成17年7月29
日付けの同月分の請求台帳の写しであり,入出庫作業料のみを請
求するとする内容であった。
また,甲第27号証の2は,原告のGに対する平成17年7月
29日付けの同月分の請求台帳の写しであり,1期目の保管料の
みを請求するとする内容であった。
これらは,いずれも平成17事業年度のものであり,原告のG
に対する同16年10月29日付けの見積書(乙2)に対応する
ものであった。
(ウ)甲第28号証は,原告のHの輸出チームに対する平成16年
10月29日付けの同月分の請求台帳の写しであり,Bセンター
における貨物の入出庫作業のみを請求するとする内容であった。
甲第29号証の1及び2は,原告のHの輸入チームに対する同
日付けの同月分の請求台帳の写しであり,Bセンターにおける貨
物の入出庫作業及び保管料を請求するとする内容であった。
これらは,いずれも平成16事業年度のものであり,甲第29
号証の1及び2の請求台帳で保管料を請求した6件のうち,2件
は2期目の保管料を,2件は3期目の保管料を,その余は1期目
の保管料をぞれぞれ請求するものであった。
(エ)甲第30号証は,原告のHの輸出チームに対する平成16年
11月30日付けの同月分の請求台帳の写しであり,Bセンター
における貨物の入出庫作業のみを請求するとする内容であった。
甲第31号証の1及び2は,原告のHの輸入チームに対する同
日付けの同月分の請求台帳の写しであり,Bセンターにおける貨
物の入出庫作業及び保管料を請求するとする内容であった。
これらは,いずれも平成16事業年度のものであり,甲第31
号証の1及び2の請求台帳で保管料を請求した8件のうち,2件
は2期目の保管料を,4件は3期目の保管料を,その余は1期目
の保管料をぞれぞれ請求するものであった。
(オ)甲第32号証の1及び2は,原告のHの輸入チームに対する
平成16年12月29日付けの同月分の請求台帳の写しであり,
Bセンターにおける貨物の保管料のみを請求するとする内容であ
った(なお,甲第32号証の1には「2004年11月分」と,
,(,),の記載があるが証拠甲31の1及び2甲32の2により
同年12月分の誤記と認める。)
これは,平成16事業年度のものであり,甲第32号証の1及
び2の請求台帳で保管料を請求した6件のうち,4件は3期目の
保管料を,その余は1期目の保管料をぞれぞれ請求するものであ
った。
特に,甲第32号証の1及び2は,平成16事業年度の末日に
もっとも近い同年12月の使用実態を表すものであったが,入出
庫作業料の請求はなく,同年10月(甲29の2)及び同年11
月(甲31の2)より継続して保管している貨物に関する保管料
の請求が多く存在し,また,6箇月以上にわたり保管している貨
物に関する保管料の請求も含まれていた。
(カ)甲第33号証の1及び2は,原告のHの食品チームに対する
平成17年11月30日付けの同月分の請求台帳の写しであり,
Bセンターにおける貨物の入出庫料及び保管料を請求するとする
内容であった。これは,平成17事業年度のものであり,保管料
を請求した3件とも1期目の保管料を請求するものであった。
サ原告は,平成17年5月1日現在の情報として,本件各専用部分
及び本件各共用部分のうちの,Aセンターの4階458坪,Bセン
ターの1階850坪,3階900坪,4階900坪を近隣相場の使
用料で「空き倉庫」として提供するとして顧客を募集していた。
シ原告は,ホームページである×××××において,平http://www.
,「」,成20年1月9日現在の情報として事業案内・倉庫を借りたい
「倉庫施設案内・Aセンター・Bセンター「KAセンターのご」,
案内」における「倉庫1階フロアー(常温倉庫「倉庫2階∼4)」,
階フロアー(常温倉庫」及び「KBセンターのご案内」における)
「倉庫1階フロアー「倉庫2階∼5階フロアー」の各表示を掲」,
示し,近隣相場の使用料で本件各専用部分を「空き倉庫」として提
供するとして顧客を募集していた。
()以上の認定事実によれば,①本件現地調査の際,本件各事業所に5
おいて,各1階部分は荷さばきのためのオープンスペースが確保され
ていたが,各2階以上の本件各専用部分には,原告が顧客から受託し
た貨物が保管された状態であったこと,②原告は,委託を受けた港湾
運送に対して,運輸大臣に届け出た運賃及び料金を収受する旨を本件
運送約款24条に定めているところ,原告が平成7年8月4日作成し
運輸大臣の認可を受けた本件運送料金表には,上屋保管料金として,
貨物搬入の日から貨物搬出の日までの間,1日単位で計算される旨定
めていること,③それにもかかわらず,原告が本件現地調査及び本件
各訴訟において,本件各専用部分における顧客との契約内容を示す資
料であるとして提出した見積書の各写し(甲19の1,乙2,3)や
請求書又は請求台帳の各写し(甲25の1及び2,27の2,29の
1及び2,31の1及び2,32の1及び2,33の1及び2,乙1
8の1及び2,19の2,20の1及び2)は,いずれも,平成16
事業年度又は平成17事業年度に関するものであるが,本件運送料金
表に定められた上記の上屋保管料の料金体系を採用しておらず,通常
倉庫保管料の定めとして採用されている暦月3期制又は搬入日より起
算して10日間を1期とし,それ以降は1日単位で計算するという料
金体系に基づく「倉庫保管料」又は「保管料」を請求する旨定めてい
たこと,また,④実際に,原告から顧客に対し2期又は3期の保管料
が請求されたことが多々あり,原告が2期目以降の保管料を請求しな
かった月は,それに該当する貨物がなかったため,保管料が発生しな
かったことから請求しなかったにすぎないこと,⑤原告は,平成17
年5月1日の時点において,本件各専用部分を倉庫として提供するこ
とを前提として顧客を募集していたこと,⑥原告は,平成18年9月
6日に,本件担当官に対し,同17年12月31日現在の本件各事業
所における使用状況は,本件現地調査の時点から使用床面積に係る変
動はあるものの,本件現地調査の際に把握された従前の使用状況と異
ならないと回答したこと,⑦本件各事業所の使用状況としては,本件
各事業年度を通じ,荷扱いの状況に一切変更はなかったことを認める
ことができる。以上の認定事実に加え,⑧港湾地区内に存在する上屋
と称する建物全体が常に港湾法2条5項6号にいう「上屋」として使
用されているとは限らず,実際には数階建ての建物の2階以上の部分
が倉庫として利用されているものが数多く存在すること,⑨通常,運
送契約に基づく港湾運送に伴う上屋保管料は,貨物搬入日から貨物搬
出日までの間につき1日単位で設定し,保管が長期化するほど,上屋
本来の機能が阻害されることから,長期間の蔵置に対して逓増する割
増料をペナルティとして割高になるように設定されている料金体系で
あり,これに対して,寄託契約に基づく倉庫保管料に採用される料金
体系である暦月3期制の保管料は,単純に「期数×容積又は重量×単
価」によって計算されることから,保管が長期化しても期間(期数)
に応じて高くなるだけであって,割高にはならないものであり,両者
の料金体系は全く異なるものであること(乙1,13,⑩港湾運送)
事業法と倉庫業法は,それぞれ,港湾運送事業者には港湾運送約款,
倉庫業者には倉庫寄託約款を作成することを義務付けており,原告が
港湾運送事業を行う上での顧客との契約関係は,本件運送約款がこれ
を律するものであることは原告自身が認めるものであるところ(甲1
0,本件各専用部分に係る原告と顧客との契約関係を示す書証とし)
て提出されたものは,いずれも前記認定のとおり本件運送約款及び本
件運送料金表に従ったものということができないことを考え併せる
と,原告は,本件各専用部分において,本件各事業年度を通じ,顧客
,,から貨物の倉庫保管を請け負い保管の対価として倉庫保管料を徴し
また,倉庫として活用すべく顧客を募集していたと認めることができ
るのであって,運送契約に基づき受託した貨物の荷さばきに伴う一時
的な貨物の仮蔵置をしていたものではないと認めることができるか
ら,本件各専用部分は,本件各事業年度の各末日時点において,港湾
法2条5項6号にいう「上屋」には当たらないというべきである。そ
,,,して本件各共用部分は本件各専用部分に付随するものであるから
結局のところ,本件各専用部分及び本件各共用部分について,12号
特例を適用することはできないというべきである。
()ア(ア)暦月3期制の保管料の定めに関し,原告は,見積書におい6
て「倉庫保管料」又は「保管料」を請求することを予告していて
も,実際に請求するのは顧客に特別の事情がある場合に限られ,
ほとんどの場合には,入出庫作業料しか請求していないのである
から本件各事業所において取扱う貨物はすべて本件運送約款甲,(
3)に基づいて受託しているものであり,また,本件各事業所に
おける原告による貨物の保管は,本件運送約款に基づき運送途上
の荷さばきのために一時的に仮蔵置しているものである旨主張す
る。
,,,,(イ)しかし前記認定のとおり原告は本件運送約款において
運輸大臣に届け出た本件運送料金表所定の上屋保管料を徴収する
ことを規定しているにもにもかかわらず,本件各契約書等原告と
顧客との間の契約において,当該料金を徴収せず,別途通常倉庫
保管料として採用されている暦月3期制に基づく保管料を請求す
る旨の契約を締結するなどした上で,それに基づき保管料を請求
していたのであるから,原告と顧客との間の契約が本件運送約款
及び本件運送料金表によって律せられる港湾運送事業ということ
ができないのは明らかである。また,原告が証拠として提出した
各請求書又は各請求台帳において,入出庫作業料しか請求されて
いない理由については前記認定のとおりである。
(ウ)したがって,原告の上記(ア)の主張は失当というべきである。
イ(ア)また,顧客から受託した貨物の保管期間に関し,原告は,貨物
の荷さばき及びこれに伴う一時的な仮蔵置をする建物部分である
「上屋」は,港湾運送業を行うには不可欠なものであり,搬出及び
搬入する配船又は配車や荷主の都合で,貨物により仮蔵置の期間の
長短にばらつきがあり一定しないが,仮蔵置の期間が荷主の都合で
長くなる場合でも,運送契約に基づく運送途上の仮蔵置であること
に変わりはない旨主張する。
(イ)しかし,原告は,同時に,輸入の場合であっても,輸出の場合
であっても,港湾運送事業においては,本件各事業所に搬入された
運送途上の仮蔵置を要する期間は数日間であると主張しており,証
拠(甲22)によっても,原告の一般港湾運送事業又は港湾荷役事
業としての運送途上の貨物の一時保管は,長くても大部分が数日で
あることを認めることができるにもかかわらず,本件各専用部分に
おいて数箇月間保管されている貨物が多数存在することが認められ
るのは,前記認定事実のとおりである。仮に,受託した貨物である
輸出品の配船の都合や輸入品の市場動向に合わせた出庫調整等を含
む荷主の都合により長期の保管が常態化し,荷主との間でこのよう
な保管を念頭においた暦月3期制による保管料による契約形態によ
る保管をするというのであれば,このような保管は,もはや港湾運
送契約における運送途上における一時保管ということはできず,倉
庫保管というほかないというべきである。
(ウ)したがって,前記認定事実のとおり本件各専用部分において取
り扱われている貨物の保管期間を考慮しても,これが運送途上の一
時保管(仮蔵置)であるとする原告の上記(ア)の主張は失当という
べきである。
ウ(ア)原告は,本件各事業所に搬入された貨物を大型のエレベータと
フォークリフトを使い,本件各事業所内の1階から5階までの空い
,,,ている場所に必要に応じ一時的に荷さばきのために保管しまた
大型エレベータとフォークリフトを使ってトラックに積み込んで搬
出しているものであり,1階部分の使用実態と2階以上の本件各専
用部分の使用実態は全く同じであることや,本件各事業所において
貨物を搬送するフォークリフトを実際に操作しているのは,原告の
下請業者であるDであって,原告は,Dに本件各事業所における原
告の搬送作業を下請けさせることについて,港湾運送事業法施行規
則11条に従い所管の関東運輸局の認可を受けていることなどを挙
げて,原告は,本件各事業所全体において,港湾運送事業として本
件運送約款に基づき顧客の貨物を荷さばきし,また,これに伴う一
時的な貨物の仮蔵置をしているということができる旨主張する。
(イ)しかしながら,前記のとおり,搬入,搬出及び保管等の作業内
容から,本件各専用部分の使用実態を一般港湾運送事業又は港湾荷
役事業としてのものか,それとも倉庫事業としてのものかを判別す
ることは困難であるから(甲10,弁論の全趣旨,本件各事業所)
において,原告が下請業者に搬出,搬入等の作業をさせていること
だけでは,原告と顧客との間の契約関係が本件運送約款に基づくも
のであるという証拠にはならないというべきである。原告と顧客と
が契約を締結するに当たり個別に運送契約書又は倉庫寄託契約書を
取り交わすことがないというのであれば(甲10,取引開始時点)
において取り交わす見積書に定められている保管料の定め方や毎月
の請求書に現れる貨物の具体的保管期間等から当該契約の法的性質
を推認するほかなく,その結果,本件各専用部分における原告の業
務は倉庫寄託契約に基づくものであると認められ,原告が本件運送
約款に基づき顧客の貨物の荷さばき及び一時保管等を行っていると
いうことができないことについては既にみたとおりである。
(ウ)以上のとおりであり,原告の下請業者が本件各事業所におい
,,,て貨物の搬入搬出等の作業に従事していることはそれだけでは
本件各専用部分の「上屋」該当性を否定した前記判断を覆すに足り
ないから,原告の上記(ア)の主張は失当というべきである。
()以上のとおりであり,本件各専用部分は,本件各事業年度末日に7
おいて,港湾法2条5項6号にいう「上屋」に該当しないというべき
であるから,本件各専用部分及びこれに付随する本件各共用部分につ
いては,いずれも12号特例を適用することができないというべきで
ある。
2なお,被告は,原告の主張立証活動の一部につき,時機に後れた攻撃
防御方法であり却下すべきである旨の主張をするので,この点について
判断しておく。
被告は,本件現地調査の際,本件担当官が原告に対して事業所税の資
産割の課税標準の算定に必要な資料を求めた事実につき,当初,原告が
平成19年2月21日の第2回口頭弁論期日において陳述した同日付け
原告準備書面()においてこれを認めていたが,同年7月24日の第51
回口頭弁論期日において陳述した同日付け原告準備書面()において,3
これを否認し証拠としてこの主張に沿うC倉庫事業部長の陳述書甲,,(
22)を提出したとして,この否認の主張及び証拠の提出は時機に後れ
た攻撃防御方法として排斥されるべきである旨主張する。
確かに,原告の上記の否認の主張は,平成18年(行ウ)第593号事
件の答弁書において被告が主張した事実の経緯の認否をするに当たり具
,,体的かつ詳細に検討していれば当初よりすることができたものであり
一見すると,原告の上記のような主張の変更は,自白の撤回のように見
受けられ,また,時機に後れた主張である感を否めない。しかし,原告
は,原告準備書面()において,被告が平成18年(行ウ)第593号事1
件の答弁書において主張した事実の経緯を単に「概ね認める」としてい
たにすぎず,明確に,本件担当官が事業所税の資産割の課税標準の算定
に必要な資料を求めた事実を認めたものとまでは言い難いので,この点
に自白が成立するとまでは言い難く,後にこの点について改めて具体的
に事実確認したところ,原告準備書面()において,これを否認したと3
いうものにすぎないと認められるので,これについても自白の撤回とい
うほどのものでもないというべきである。また,これにより訴訟の完結
を遅延させることとなったとも認め難い。そうすると,原告の上記の否
認の主張及び甲第22号証を民訴法157条1項の規定により却下する
ことは相当ではないというべきである。
もっとも,上記の原告の否認に係る事実について,本件担当官は,原
告の本件更正請求の内容等の調査のため本件現地調査をした際やC倉庫
事業部長ほか2名が東京都港都税事務所に赴き,本件各専用部分及び本
件各共用部分について12号特例の適用を主張した際に,原告に対して
その根拠となる資料の提出を求めたと認めることができるのは,前記1
()に認定したとおりである。4
3本件各更正決定の適法性について
前記1のとおりであるから,原告の本件各事業年度に係る資産割事業
所税についての,各控除床面積,各課税標準,各税額,各減免税額,及
び各納付すべき資産割税額は,別紙2「更正通知書の計算」の表1(た
だし,平成16事業年度を除く)から表3までの各「控除床面積」欄,
各「課税標準」欄,各「税額」欄,各「減免税額」欄及び各「納付すべ
き資産割税額」欄記載のとおりであると認めることができる。
そうすると,本件各更正決定における各控除床面積,各課税標準,各
税額,各減免税額及び各納付すべき資産割税額は,いずれもこれらと同
額であるから,本件各更正処分は,いずれも適法である。
第4結論
よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴
訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
杉原則彦裁判長裁判官
小田靖子裁判官
島村典男裁判官

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