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裁判例


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平成13年(ワ)第199号 損害賠償請求事件
(口頭弁論終結日 平成14年4月17日)
判          決
  主          文
 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請 求
被告らは,連帯して,各原告らに対して,それぞれ5万円およびこれに対する平成1
3年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
  本件は,原告らが,福井県監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づき,福
井空港拡張整備関連事業平成13年度福井県予算の支出差止めの措置請求の申
立てをしたが,同監査委員は,原告らが口頭意見陳述の機会を求める旨申立書に
明記したのに,その機会を与えないまま,財務会計上の違法性・不当性を摘示す
るものとは認められない旨の却下理由で上記申立てを却下したものであって,同監
査委員の行為は地方自治法に違反し,原告らの住民監査請求権を侵害する不法
行為を構成し,原告らは上記不法行為によって精神的打撃を被ったとして,国家賠
償法1条に基づき,被告ら各自に対してそれぞれ慰謝料として5万円の損害賠償を
求めたという事案である。
 1 前提事実(争いのない事実以外は認定証拠を掲記した。)
  (一)原告らはいずれも福井県民である。被告福井県(以下,「被告県」という。)は地
方公共団体であり,その余の被告らはいずれも被告県監査委員(以下,「被告監
査委員」という。)である。
  (二)原告らは,平成13年6月15日,被告監査委員に対し,地方自治法(以下単に
「法」という。)242条1項に基づき,被告県の代表者知事に対する予算支出差
止めの措置請求の申立てをした(以下,「本件監査請求」という。)。
  (三)本件監査請求において支出差止めの対象とされたのは,平成13年度予算に
おいて議決された被告県の福井空港拡張整備関連事業予算(総額2億0213
万1000円)で,具体的には,大針区移転調査事業4210万円,緩衝緑地公園
整備基本計画調査事業2350万円,拡張整備調査事業3880万円及び整備推
進事業9773万1000円に関するものであった(以下,これらを総称して「福井
空港関連事業予算」という。)。
    本件監査請求の理由は,要旨,「福井空港拡張計画は,昨年運輸省が計画中止
を決め,昨11月末には与党預かりとなったため,被告県は予算要求の手続さえ
できない現状にある。当計画は先行き不明で計画中止となる可能性も大きい。こ
のような不確定の計画に巨額の県費を支出するのはそのまま無駄になるおそれ
も大きいので,計画の帰趨が決着するまでの間,これらの予算の執行を行わな
いよう,法242条1項に基づき,必要な措置を請求する。」というものであり,監
査請求書には,口頭意見陳述の機会を求める旨が付記されていた。
    事実を証する書面は,①平成13年度空港拡張関係予算資料として,被告県作成
にかかる,(ア)「大針区移転調査事業(県単)」(目的,調査内容,予算要求額が
記載されたもの),(イ)「福井空港緩衝緑地公園整備基本計画調査事業(県単)」
(趣旨,経過,事業内容,体制,予算要求額が記載されたもの),(ウ)「福井空港
拡張整備調査事業(県単)」(目的,理由,予算要求額が記載されたもの),(エ)
「福井空港整備推進事業」(事業内訳,事業内容,予算額が記載されたもの),と
題する書面各1通,②福井新聞記事1枚,③原告A作成の報告書1通が添付さ
れていた。
    ②の新聞記事には,被告県の福井空港拡張整備関連事業に関し,国が計画中
止を言明し,被告県は同事業に関する予算要求を行えない状態であること,国
の計画が進展しない限り被告県の事業着手も不可能になる旨の記載があり,③
の報告書には,大針区移転調査事業はその前提となる大針区住民の同意がな
く,また,緩衝緑地公園整備基本計画調査事業については,計画通りに公園整
備がなされれば,水田の45%を潰すことになる旨の記載があった。
   (甲1の1ないし4)
  (四) 被告監査委員は,平成13年7月27日,本件監査請求を却下したが,その理由
は,「本件措置請求は,空港拡張計画関連予算の執行差止を求めていますが,
その理由について請求人は,空港拡張計画は中止の可能性があり,不確定の
計画に県費を支出することは無駄となるおそれがある,と主張していますが,こ
のことは,財務会計上の違法性・不当性を摘示するものとは認められません。よ
って,本件請求は住民監査請求としての要件を欠くものと判断します。」というも
のであった。
    被告監査委員は,本件監査請求を却下するにあたり,請求人に補正を求めること
はなく,請求人が求めた口頭意見陳述の機会も与えなかった。
 2 争点
   本件の争点は以下のとおりである。
  (一) 本件監査請求却下処分は違法か。
  【原告らの主張】
    住民監査請求に対し監査委員が行う適法要件審査の範囲は,(ア)監査請求書が
要旨1000字以内であるか,(イ)所定の様式に基づいているか,(ウ)事実証明書
が添付されているか,(エ)監査請求期間内になされているか,(オ)請求の対象が
特定されているか,という法令(及び判例)上の形式的事項に限られ,それ以上
に,監査請求書の内容の当否や,具体的に財務会計上の違法性・不当性が摘
示されているかどうかは,まさに「監査」(法242条3項)において審査されるべき
事項である。
    本件監査請求はこうした適法要件をすべて満たしている。
のみならず,計画中止となる可能性の大きい不確定の計画に巨額の県費を支出
することは,目的達成のために必要最小限度の経費の支出を定めた地方財政
法4条1項に違反するのであって,本件監査請求において,原告らが財務会計
上の違法を主張していることも明らかである。
    また,財務会計上の違法・不当の主張がされているか否かは,監査請求書のみ
でなく添付書類や意見陳述をも総合的に勘案して判断すべきところ,本件監査
請求における添付書類をみれば,例えば,大針区移転事業については大針区
の総論同意もなく個々の世帯の同意もない架空の事業で何の実現性もなく,空
港緩衝緑地公園整備計画も水田の半分近くがつぶれる机上の空論であるか
ら,いずれも予算の執行をすべきでない旨の事実報告をしているのであって,予
算執行が違法である理由を具体的に主張していることが明らかである。
したがって,被告監査委員は,本件監査請求について「監査」を行う義務があ
り,原告らに証拠の提出と意見陳述の機会を付与する義務があった。
しかるに,被告監査委員は,本件監査請求を不適法と判断して原告らの証拠
の提出と意見陳述の機会を奪ったもので,その行為が違法であることは明らか
である。
    仮に本件監査請求が適法要件を欠いていたとしても,被告監査委員は,容易に
補正が可能な場合は期間を定めて補正を求めるべきであり,補正の機会も与え
ないまま本件監査請求を却下した処分は違法である。
  【被告らの主張】
    住民監査請求の審査を行う監査委員の本来の職務権限は,普通地方公共団体
の財務に関する事務及びいわゆる一般行政事務の執行の監査に限られていて
(法199条1項・2項),政策的当否,政策判断については監査権限は及ばず,
地方公共団体の長その他の財務会計職員の一定の具体的な違法もしくは不当
な財務会計上の行為または怠る事実に限って監査権限を有するものである。
    原告らの本件監査請求は,空港拡張計画が中止となる可能性が大きく県費の支
出が無駄になる恐れが大きいことを理由とするのみで,財務会計上の行為自体
の違法もしくは不当については何ら具体的に主張しておらず,適法な請求要件
を欠いていた。
    空港拡張計画関連予算が国の平成14年度予算に計上されるか否かについては
監査委員の監査の及ぶところではなく,仮に国において同年度予算に計上され
なかった場合においても,国の決定を受けてどのように判断するかは政策的な
判断によるところであり,監査委員の権限の及ぶところではない。
    また,本件監査請求において補正を求めなかったのは,その不備が上記のとおり
本質的な部分にあり,容易に補正できるような形式的な不備とは異なり本来補
正になじむ事項ではなかったからである。そもそも,地方自治法には,住民監査
請求に関し補正手続を定めた条項は存在せず,監査委員は不適法な住民監査
請求について補正を促す義務を負うものではない。したがって,補正を求めず本
件監査請求を却下したことは違法ではない。
    さらに,住民監査請求が不適法として却下になれば法242条3項の監査は行わ
れず,この場合には,請求人に対し同条5項の陳述の機会を与える必要はな
い。したがって,本件監査請求において原告らに口頭陳述の機会を与えなかっ
たことも違法ではない。
(二) 本件監査請求を違法に却下し,意見陳述の機会等を与えなかった場合に,
原告らは国家賠償法による損害賠償を請求できるか
  【原告らの主張】
    国家賠償法1条は,「違法に他人に損害を加えた」ことのみを要件とし,権利侵害
を要件としていないから,住民監査手請求手続において,監査委員による違法
な行為があり,それにより請求人に損害が生じれば,国家賠償法1条の責任が
認められるべきである。それ以上に請求人の個人的な権利ないし法的利益の侵
害がなければ国家賠償法上の責任が発生しないものではない。
 仮に主観的な権利利益の侵害が必要であるとしても,住民監査請求権は国家
賠償法上の責任を基礎付けるに足りる。すなわち,
 住民監査請求権は,地方公共団体における住民の権利として,選挙権・直接
請求等と並ぶ住民の能動的権利の一つであり,最高裁判例によっても地方自治
の本旨に基づく住民参政の一環と位置づけられている。同様に公法上の権利で
ある選挙権の侵害については国家賠償請求が認められれている。監査委員が
住民監査請求権を侵害しても,住民の法的な利益になんらの影響もないという
のでは住民監査請求制度は形骸に等しい。
 住民監査請求手続において証拠の提出と意見陳述をする権利は,単に住民
訴訟の提起が認められれば回復されるものではない。
  【被告らの主張】
    住民監査請求制度の目的は,当該普通地方公共団体の自律的な内部処理によ
って,簡易迅速に,違法もしくは不当な財務会計上の行為又は怠る事実を是正
し,もって地方財政行政の適法な運営を確保し,住民全体の利益を保障すること
にあるから,監査委員は,申立人個人のために監査および必要な措置を講ずべ
き作為義務を負うわけではなく,また,住民監査請求の申立人は,自己の法律
上の利益に直接関わりのない事項について,もっぱら申立人自身を含む住民全
体の利益のために,公益の代表者としての立場において住民監査請求をするの
であって,監査委員の監査および必要な措置等を請求する手続上の地位は個
人の私的な権利として付与されているものではないから,監査の有無および内
容によって,当該申立人個人の私的な権利又は法的利益が影響を受けるもの
ではない。
    よって,本件監査請求の却下により,国家賠償法によって保護されるべき私人と
しての個人的な権利ないし法的利益の侵害があったということはできない。
(三) 公務員個人は損害賠償責任を負うか。
  【原告らの主張】
    公務員の責任を民法上の機関個人又は被用者自身の直接責任と別個に扱うべ
き合理的理由はない。国家賠償法1条2項の規定は,公務員が軽過失の場合に
は直接責任を負わないが,故意又は重過失の場合には原則どおり直接責任を
負うことを示す。加害公務員に対する直接責任の追及は,公務員に対する国民
の監督的作用として極めて有効な手段であり,また,国民全体の奉仕者である
公務員が故意又は重大な過失により国民の権利を侵害した場合には公務員自
身に対し直接責任を追及できるとするのが憲法の基本的人権尊重の原理に合
致する。公務員の故意又は重大な過失による国民の被害を税金によって償うの
は不合理である。加害公務員は本来重大な責任を負うものであるから,責任負
担の面で国家や地方公共団体の庇護のもとに退き,加害公務員に対する直接
責任の追及を認められないとすれば,国民の正義感情,権利感情を害する。
  【被告らの主張】
    公権力の行使に当たる国又は公共団体の職員がその職務を行うについて故意
又は過失により違法に他人に損害を与えた場合には,当該公務員の所属する
国又は公共団体がその賠償の責めに任ずるのであって,公務員個人は損害賠
償責任を負わないことは確定した判例である。
第3 当裁判所の判断
 1 本件監査請求却下処分の違法性
(一) 住民監査請求(法242条)の制度は,住民が普通地方公共団体の機関又は
職員に違法・不当な財務会計上の行為等があると認めるときに,その行為等の
是正等を求めて監査請求をすることを認め,これに応じて,監査委員に対し,監
査を行い,監査の結果を住民に通知し,かつ,公表することを義務づけたもので
ある。その趣旨は,地方公共団体における地方自治の本旨及び住民自治の原
理に則りつつ,財務会計上の行為等の専門的・技術的性格に照らして,まず行
政内部の自主的解決を優先して簡易迅速に是正等を行うこととしたものと解され
る。
住民監査請求を行うには,法242条1項所定の違法・不当な財務会計上の行
為等を特定した上,その事実を証する書面を添付してしなければならないが,そ
こにいう違法とは,具体的な法令に違反する場合のみでなく,広く裁量権の濫用
をも含み,また,不当とは,違法には至らないまでも権限の行使が適切を欠き制
度目的に照らして相当性を欠く場合をいうものと解するのが相当である。そし
て,財務会計上の行為等は行政内部で行われ住民には必ずしも明らかにされる
とは限らないことからすれば,住民監査請求における違法・不当の主張は,根拠
法令を具体的に摘示することを要しないのはもとより,監査の対象となるべき事
務に濫用や不適切な点があることを窺わせる事項が指摘されていれば足りるも
のと解すべきである。
  (なお,行政手続法7条は,行政庁に対する申請が形式上の要件に適合しない
ときには,相当な期間を定めて申請の補正を求めるか,申請を拒否すべき旨を
定めているが,いずれをとるかを行政庁の自由な裁量に委ねたものと解するの
は相当でなく,申請者の利益を考慮すれば,補正が可能な事項についてはまず
補正を求め,これに応じない場合に初めて申請を拒否することができるものと解
すべきである。)
(二) 本件についてこれをみると,本件監査請求の請求書に記載された違法・不当
な財務会計上の行為及びそれを証する書面として添付されたものは上記前提
事実(三)のとおりである。
  要するに,本件監査請求の理由は,国が福井空港拡張計画の中止を言明し,
与党預かりとなったので,そのまま計画中止となる可能性が大きく,計画遂行が
不確定なものになった以上,これに対する予算の支出は無駄となるおそれが大
きく,計画の帰趨が明らかとなるまでの間,同計画に関する予算の執行を差し止
めるよう必要な措置を求めるというものである。
  このような本件監査請求の理由からすれば,その趣旨は,「被告県の福井空港
関連事業は,国が計画中止を言明している現時点では事業の進展が望める状
況になく,同事業に対する国の予算の割り当てがなければ,今後同事業の見通
しが立たないのであるから,同事業のために公金を支出することは違法又は不
当である。」との主張と解する余地は十分にあり,それが原告らの主張するよう
な地方財政法4条1項違反の指摘といえるか否かはともかくとしても,少なくとも
不当の主張が含まれていることは明らかである。
  従って,被告監査委員が本件監査請求につき財務会計上の行為の違法・不当
を摘示したものではないと判断したのは誤りというほかない。
 (なお,被告監査委員としては,本件監査請求の理由が財務会計上の違法・不当
を摘示するものとは認められないと判断したのであれば,行政手続法7条に照ら
して,少なくとも原告らにその補正を求めるべきであり,補正を求めることは容易
であったと考えられる。)
(三) 被告らは,国の平成14年度予算に福井空港拡張計画関連予算が計上され
なかった場合においても,国の決定を受けてどのように判断するかは政策的な
判断によるところであり,監査委員の権限の及ぶところではないと主張するが,
本件監査請求は国の予算を前提とした県の政策判断の当否を直接対象とする
ものではなく,具体的な公金の支出等の適否につき監査を求めていることは上
記のとおりである。
  また,被告らは,本件監査請求は本質的な部分に不備があり補正になじむ事項
ではなかったから,補正を求めなかったことも違法ではないと主張するが,すで
にみたように,被告監査委員が本件監査請求には違法・不当の具体的な摘示
がないと判断したとしても,それは容易に補正を求めることのできる事項である。
  被告らの主張はいずれも採用できない。
(四) 以上によれば,本件監査請求につき,形式的要件の欠如を理由に却下して
監査を行わず,原告らに証拠の提出や意見陳述の機会を与えなかった被告監
査委員の処分は違法であったというべきである。
 2 国家賠償責任の存否
(一) 普通地方公共団体の監査委員が故意又は過失によって住民監査請求を違
法に却下した場合,住民は,当該監査請求が違法な行為又は怠る事実を理由と
するときは,直ちに住民訴訟を提起する(法242条の2)か,あるいは同一理由
に基づく再度の住民監査を請求することができる(最高裁平成10年12月18日
第3小法廷判決・民集52巻9号2039頁参照)。同様に,当該監査請求が不当
な行為のみを理由とするときは,住民訴訟を提起することはできないものの,同
一理由に基づき再度の住民監査を請求することができるものと解される。それ
が違法な住民監査請求の却下に対する本来的な是正措置と考えられる。
  また,住民監査請求権は,住民に対し,自己の個人的な権利利益に直接関わ
りのない事項について,専ら住民全体の利益のために公益の代表者としての資
格において認められたものであるから,その違法な却下が直ちに住民の個人的
な権利利益を直接侵害するものでもない。
  他方,国家賠償請求権は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員
が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を加え
たときに発生するものであるから,あくまで個人的な権利であって公益的な性格
は有しない。
  さらに,監査委員の決定は一種の争訟裁断的な一面をも有するから,その判断
結果自体を逐一新たな法益侵害とみて,損害賠償をもって填補するのは必ずし
もその性格に馴染まないとも考えられる。
  従って,住民監査請求が違法に却下されたからといって,それが直ちに国家賠
償請求権を発生させるものということはできない。
(二) しかしながら,住民監査請求が住民訴訟の前置手続であり,住民監査請求
の違法な却下に対しては住民訴訟の途が開かれているとはいえ,住民監査請
求制度は,本来,住民訴訟の手続を利用するまでもなく,行政内部の自主的な
措置によって違法・不当な財務会計上の行為を是正することを目的とするもので
ある。住民に住民監査請求権が付与されているのも,行政に対する民主的統制
の一手段とするために住民に公権的地位を認めたものに他ならない。
  このような住民監査請求制度の目的,住民監査請求権の性格に照らせば,監
査委員がその本来の権限を著しく濫用して住民監査請求を却下したような場合
にまで,住民が住民訴訟の提起や再度の住民監査請求を余儀なくされ,それ以
外に損害回復の途がないとされるのは余りに不合理である。
  とくに,不当な財務会計上の行為を理由として住民監査請求をしたときに,監査
委員が本来の権限を著しく濫用して請求を却下するような事態を想定すれば,
住民監査請求を幾度繰り返しても同様な結果しかもたらされず,住民監査請求
権自体を剥奪するに等しいことになるからである。
  従って,住民監査請求に対し,監査委員がその請求を実質的に妨害する意図
であえて不当な判断をするなど,その本来の権限を著しく濫用して違法に却下し
たような場合には,その処分は国家賠償法上も違法と評価するのが相当であ
る。
(三) そこで,本件監査請求についてこれをみると,上記前提事実及び上記1で判
断したとおり,被告監査委員が本件監査請求を却下したことは,福井空港拡張
計画の政策的当否自体に拘泥した結果判断を誤ったもので,違法というべきで
あるが,本件全証拠を検討しても,それにつき被告監査委員が実質的に妨害す
る意図であえて不当な判断をするなど,本来の権限を著しく濫用して却下したと
までは認めるに足りない。
  従って,被告監査委員の本件監査請求却下を国家賠償法上違法と認めること
はできない。
(四) そうであれば,被告監査委員の行為が国家賠償法上違法であることを前提と
する被告県の国家賠償責任も,これを認めることはできない。
 3 結論
   以上の次第で,原告らの本件請求は,その余の点につき判断するまでもなく,理由
がないので棄却すべきである。
   よって,主文のとおり判決する。
  福井地方裁判所民事第2部
          裁判長裁判官   小  原  卓  雄
  裁判官   酒  井  康  夫
 裁判官   髙  松  晃  司

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