弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決を取り消す。
2控訴人の請求を棄却する。
3訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2本件を大阪地方裁判所に差し戻す。
3訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1事案の骨子,訴訟経緯
(1)法務大臣は,平成17年2月16日付けで,出入国管理及び難民認定法第
7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号。平成1
7年法務省令第16号による改正前のもの。以下「基準省令」という。)の
留学及び就学の在留資格に係る基準の規定に基づき,日本語教育機関等を定
める件(平成2年法務省告示第145号。以下「日本語教育機関告示」とい
う。)の一部を改正する告示(平成17年法務省告示第103号)のうち,
日本語教育機関告示別表第2から控訴人の項を削り,同別表第5に控訴人を
加える旨の告示(以下「本件告示」という。)をした。
(2)控訴人は,平成17年4月4日,大阪地方裁判所に対し,本件告示は違法
な処分であると主張し,その取り消しを求めて,本件訴訟(抗告訴訟)を提
起した。
これに対し,被控訴人は,本件告示は,行訴法3条2項にいう「行政庁の
処分その他公権力の行使にあたる行為」に該当しないので,その取り消しを
求める本件訴えは不適法であるから却下されるべきであると主張するととも
に,本件告示は内容においても何ら違法性はないから,仮に本案審理をする
としても,控訴人の請求は棄却されるべきであると主張した。
(3)原審裁判所は,本件告示に処分性はなく,その取り消しを求める本件訴え
は不適法であるとの理由で,本件訴えを却下するとの判決を言い渡した。
(4)控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。
2前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められ
る事実)
(1)当事者
ア控訴人は,日本語学校の経営等を業とする特例有限会社であり,日本語
学校であるA学院を経営している。
イBは,控訴人の唯一の取締役であり,同学院の学院長である(甲1,乙
5)。
(2)日本語教育機関告示の制度等
ア本邦に上陸しようとする外国人は,その者が上陸しようとする出入国港
において,入国審査官に対し上陸の申請をして,上陸のための審査を受け
なければならない(出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号
による改正前のもの。以下「入管法」という。)6条2項)。
入国審査官は,上記申請があったときは,当該外国人が,申請に係る本
邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく,入管法別表第1の下欄
に掲げる活動のいずれかに該当し,かつ,同法別表第1の2の表及び4の
表の下欄に掲げる活動を行おうとする者については,我が国の産業及び国
民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令(基準省令)で定め
る基準(以下「上陸許可基準」という。)に適合することなどの上陸のた
めの条件に適合しているかどうかを審査しなければならない(入管法7条
1項柱書き,2号)。
上記規定を受けて,基準省令は,外国人が本邦において行おうとする活
動に応じ,上陸許可基準を規定している。
イそして,基準省令は,在留資格「留学」,同「就学」の活動に関し,次
のような基準を定めている。
(ア)「留学」の活動
a留学の項の下欄の4項イ
申請人が専修学校の専門課程において教育を受けようとする場合
(専ら日本語教育を受けようとする場合を除く。)には,申請人が外
国人に対する日本語教育を行う機関(以下「日本語教育機関」とい
う。)で法務大臣が告示をもって定めるもの(日本語教育機関告示)
において6か月以上の日本語の教育を受けた者であることが要件の一
つとして挙げられている(同下欄4項イ)。
この規定による日本語教育機関は,日本語教育機関告示別表第1,
第2,第3及び第5のとおりとされている(日本語教育機関告示1
号)。
b留学の項の下欄の5項
申請人が専修学校の専門課程において専ら日本語教育を受けようと
する場合は,当該教育機関が法務大臣が告示をもって定める日本語教
育機関であることとされている(同下欄5項)。
この規定による日本語教育機関は,日本語教育機関告示別表第1の
とおりとされている(日本語教育機関告示2号)。
c留学の項の下欄の6項
申請人が外国において12年の学校教育を終了した者に対して本邦
に入学するための教育を行う機関において教育を受けようとする場合
は,当該機関が法務大臣が告示をもって定めるものであることとされ
ている(同下欄5項)。
この規定による教育機関は,日本語教育機関告示別表第3,第4の
とおりとされている(日本語教育機関告示3号)。
(イ)「就学」の活動
a就学の項の下欄の4項イ
申請人が専修学校の高等課程に若しくは一般過程又は各種学校にお
いて教育を受けようとする場合(専ら日本語教育を受けようとする場
合を除く。)には,申請人が法務大臣が告示をもって定める日本語教
育機関において6か月以上の日本語の教育を受けた者であることが要
件の一つとして挙げられている(同下欄4項イ)。
この規定による日本語教育機関は,日本語教育機関告示別表第1,
第2,第3及び第5のとおりとされている(日本語教育機関告示1
号)。
b就学の項の下欄の6項
申請人が専修学校の高等課程若しくは一般過程又は各種学校又は設
備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関において専ら日本語教
育を受けようとする場合は,当該教育機関が法務大臣が告示をもって
定める日本語教育機関であることとされている(同下欄6項)。
この規定による日本語教育機関は,日本語教育機関告示別表第2の
とおりとされている(日本語教育機関告示4号)。
ウ日本語教育機関告示は,別表第1から第5までに分類して日本語教育機
関等を定めているが,その概要は次のとおりである。
(ア)別表第1
別表第1の学校は,学校教育法82条の2所定の専修学校の専門課程
に当たる日本語教育機関であり,この学校で教育を受ける外国人の在留
資格は「留学」に当たる(基準省令の留学の項の下欄5項)。また,こ
の学校で6か月以上の日本語の教育を受けた者は,基準省令における
「留学」の基準4項のイ及び「就学」の基準4項のイの要件を満たすこ
とになる。
(イ)別表第2
別表第2の学校は,学校教育法82条の2所定の専修学校の高等課程
若しくは一般過程,同法83条所定の各種学校のほか,学校教育法上の
規定がなく,監督官庁がないものの,その設備及び編制に照らして各種
学校に準ずるものと法務大臣において判断された教育機関をいう。法務
大臣は,後記のとおり財団法人C(以下「C」という。)による証明を
参考にしてその判断を行っており,控訴人も,当初は,各種学校に準ず
るものと法務大臣に判断されて,別表第2の学校とされていた。
この学校で教育を受ける外国人の在留資格は「就学」に当たる(基準
省令の就学の項の下欄6項)。また,この学校で6か月以上の日本語の
教育を受けた者は,基準省令における「留学」の基準4項のイ及び「就
学」の基準4項のイの要件を満たすことになる。
(ウ)別表第3,第4
別表第3,第4の学校は,外国において学校教育における12年の過
程を終了した者に準ずる者を定める件(昭和56年文部省告示第153
号)の定めに基づき,我が国の大学に入学するための準備教育を行う過
程としての文部省の告示(平成11年11月15日文部省告示第195
号)の指定を受けたものである。
この学校で教育を受ける外国人の在留資格は「留学」に当たる(基準
省令の就学の項の下欄6項)。また,別表第3の学校で6か月以上の日
本語の教育を受けた者は,基準省令における「留学」の基準4項のイ及
び「就学」の基準4項のイの要件を満たすことになる。
(エ)別表第5
別表第5の学校は,廃校等の事情により,上記別表の各学校に当たら
なくなったものをいい,各種学校に準ずるものと法務大臣において判断
されて別表第1ないし第4の学校とされていたものの,日本語教育機関
としての適性を欠くとして,その対象外とされていたものも含まれる。
別表第1ないし第4の学校に当たらなくなったとしても,この学校で6
か月以上の日本語の教育を受けた者は,基準省令における「留学」の基
準4項のイ及び「就学」の基準4項のイの要件を満たすことになるため,
別表第5に掲げることとされている。
エ法務大臣は,日本語教育機関を定める場合には,日本語教育機関の設備
及び編制についての審査及び証明をする事業を実施する者による証明を参
考にすることができるとされており,これに基づいて,Cを日本語教育機
関の審査・証明事業を行うものと認定して,同事業を行わせている。
詳細は,以下のとおりである。
(ア)法務大臣は,日本語教育機関の設備及び編制についての審査及び証
明を行う事業を実施する者(以下「認定法人」という。)を認定して,
同事業を行わせることができる(入管法施行規則63条,日本語教育機
関の設備及び編制についての審査・証明事業の認定に関する規程(平成
13年法務省告示第169号,以下「本件規程」という。))。
上記事業を実施する者としての認定を受けようとする公益法人は,法
務大臣に対し,日本語教育機関の設備及び編制についての審査基準並び
に審査及び証明の実施要領(①審査等の実施の時期及び方法に関する
事項,②審査等に関する事務を担当する者の選任に関する事項,③
日本語教育機関の設備及び編制の適否の判定に関する事項,④証明の
有効期限その他証明に関する事項⑤審査等の手数料その他審査等を
受けようとする者から徴収する費用に関する事項などについて,必要な
事項を記載したもの)などを申請書とともに法務大臣に提出しなければ
ならず,認定を受けた後に認定事業の審査基準や実施要領を変更しよう
とするときは,その変更内容等を法務大臣に提出してその承認を受けな
ければならない(本件規程2条,6条)。
また,認定法人は,日本語教育機関の設備及び編制についての審査及
び証明を実施したときは,速やかに,その実施結果を法務大臣に報告し
なければならず(本件規程8条),その実施に関し,法務大臣から必要
な資料の提出を求められたときは,当該資料を提出しなければならない
(同9条)。
(イ)Cは,法務大臣から,日本語教育機関の設備及び編制についての審
査及び証明を行うものとしての認定を受けた唯一の財団法人であり,本
件規程2条に基づき,日本語教育機関審査実施要領を定めている(入管
法施行規則63条1項,日本語教育機関の設備及び編制についての審査
及び証明を行うものとしての認定を受けた事業等を定める省令(平成1
3年法務省令第56号),乙21,26,27)。
Cは,日本語の学習を主な目的として来日する外国人を対象に日本語
教育を行う教育機関からの申請に基づき,当該教育機関が日本語教育機
関としての基準に適合しているか否かの審査を行い,その基準に適合し
ている場合には,その旨の認定を行い,法務大臣に報告する(乙26)。
法務大臣は,Cによる認定を参考とした上で,日本語教育機関を選定・
告示する(入管法施行規則63条)。
オ入国管理局長は,適正な外国人の出入国管理を図る観点から,実際に審
査に当たる入国審査官の審査が適正に行われるよう,入国・審査の方法,
心構え等を各地方入国管理局長宛通達(「入国・在留審査要領」,乙29
はその抜粋)により具体的に定めている。
そして,入国・在留審査要領は,不法残留等の問題を正確にとらえるた
め,留学生や就学生の在留審査における審査や調査の対象,手順,調査事
項,調査上の留意点・着眼点等について定めるとともに,同審査と関連す
る日本語教育機関告示の別表第2に掲げる日本語教育機関に対する指導等
についても,以下のとおり,その具体的方法等を定めている(乙29)。
(ア)在籍管理状況の把握・確認
4月及び10月末現在の在籍者について,それぞれ5月末及び11月
末までに留学生・就学生名簿により報告を求め,また月1回,不入学者,
退学者,除籍者,所在不明者について,退学者等名簿より報告を求める。
(イ)日本語教育機関の選定等
日本語教育機関において,前年在籍者数に占める不法残留者の割合が
基準を超えていること,上記(ア)の報告を適正に行っていないこと,そ
の他資格外活動等の在籍管理上不適切であると認められる事情がある場
合には,当該教育機関は,外国人の在籍管理を適切に行っていない非適
正校として取り扱われる。
非適正校に対しては,問題点等を指摘して速やかに改善することを指
導し,非適正校のうち不法残留率が高い教育機関については,適宜実態
調査を行うなどして実態の把握に努め,適正・不適正について定期的に
本省に報告する。
(ウ)日本語教育機関告示削除のりん請
また,就学生の在籍管理状況を的確に把握し,適切な在留審査を行う
ため,日本語教育機関が入国・在留審査要領の定める一定の事由に該当
する場合,実態調査を行った上,告示削除のりん請を行う。
なお,日本語教育機関告示の別表第1,第3及び第4に掲げる日本語教
育機関等に係る告示削除のりん請については,入国・在留審査要領におい
て,「在留申請において虚偽の各種証明書を作成したことは判明したと
き」や「その他適正な出入国管理の観点から,外国人の受入教育機関とし
て不適格であると認められる事実が判明したとき」等が,告示削除の事由
とされている。
カ基準省令に係る告示については,同告示のうち一般的なものについて,
法務大臣はその決裁権限を法務大臣訓令により部局長(法務省入国管理局
長)に委任しており(乙28,法務省文書決裁規定4−16別表14番号
6),日本語教育機関告示の改正については,基本的に上記一般的なもの
として入国管理局長の決裁により行われている。
キ入国管理局における入国・在留の諸申請の審査に当たっては,在留資格
に応じ,規則により申請時に提出すべき資料を定め,この提出資料に基づ
いて審査を行っている。そして,就学生・留学生に係る在留期間の更新の
申請に当たっては,教育を受けている機関からの在学証明書及び出席状況
を記載した成績証明書等を提出書類の一つとして規定しており(入管法施
行規則21条2項別表第3の2),上記機関から提出されるこれらの資料
に基づいて上記審査が行われる。
(3)控訴人に対する日本語教育機関の認定経緯等
ア「A学院」と称する日本語学校は,当初,有限会社D(平成13年2月
1日設立,代表取締役E,本店所在地は大阪府東大阪市α××番13号,
資本金300万円,控訴人とは別法人,以下「旧会社」という。)が上記
本店所在地に設立した日本語教育施設であった(以下「旧A学院」とい
う。)。
旧A学院は,平成14年3月2日付けで,Cに対し,日本語教育施設審
査申請(新規申請)を行い,Cから,同年11月15日付けで,外国人に
対する日本語教育を行う設備及び編制についての認定を受け,平成15年
2月12日法務省告示第84号で告示され(別表第2),同年10月から
就学生の受入れを開始した。
イ旧会社は,上記Cに対する日本語教育施設審査申請を行った後の平成1
4年5月1日付けで本店所在地を「大阪府東大阪市α−××−13」に移
転する旨の登記手続をした(乙6)。B(控訴人代表者)は,平成15年
5月1日,旧会社の取締役に就任している。
ウ控訴人は,昭和57年5月19日,Bの夫であるFが設立した法人であ
り,平成7年12月28日から平成16年1月5日までは,商号を「有限
会社G」,本店所在地を「大阪市β××番6−1013号」,目的を「動
力機械,建設機械,運搬機械の製造及び販売」等として登記されていたも
のであるが,それまで休眠状態であったところ(乙7,8),平成16年
1月5日,現在の商号である「有限会社H」に変更し,本店所在地を「大
阪市γ××番20号」に移転するとともに,Fが取締役及び代表取締役を
辞任,退任し,以後,平成7年12月に取締役に就任していたBが唯一の
取締役になった(甲1)。
エ控訴人は,平成16年4月,旧会社に600万円を支払い,旧会社から
経営権を譲り受けて,大阪市γにおいて「A学院」の経営を開始した(乙
7の8枚目,以下,経営権譲渡後のA学院を「現A学院」という。)。そ
して,同年8月28日付けで,旧会社が控訴人に対して,旧A学院に係る
固定資産に関する権利を除く経営権を譲渡する旨の経営権譲渡書が作成さ
れた(乙9)。
オ控訴人は,上記経営権譲渡書が作成される直前の平成16年8月10日
付けで,Cに対して,設置者,施設所在地の位置及び収容定員に関する変
更申請を行い(現A学院に相当する。),平成17年1月12日付けでC
から承認を受けた(甲3の1・2)。
3争点及び争点に関する当事者の主張
原判決「事実及び理由」中の「第2事案の概要」3欄に記載のとおりであ
るから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1認定事実
上記前提事実に証拠(甲2,3の1・2,16,乙7ないし31,控訴人代
表者本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件告示に至る経緯等について,
次の事実が認められる。
(1)控訴人は,平成16年6月25日,大阪入国管理局(以下「大阪入管」と
いう。)において,被控訴人に対し,現A学院での日本語就学を目的として,
外国人18名に係る在留資格証明書(日本に入国しようとする外国人につい
て,その外国人の入国(在留)目的が入管法に定める在留資格のいずれかに
該当していることを法務大臣においてあらかじめ認定したことを証明する文
書)交付申請を行ったが,その際,上記前提事実(3)オの設置者,施設所在地
の位置及び収容定員に関する変更の事実が判明し,また,それらの変更につ
いてCの承認を得ていなかったことから,同申請に係る処分について入管法
69条の2,入管法施行規則61条の2に基づき権限の委任を受けた大阪入
管局長は,同年8月31日付けで不交付処分を行った(乙10)。
(2)控訴人あるいは旧会社の職員であったI及びJは,平成16年9月15日,
大阪入管を訪れ,本件学院において学生の出席率の水増しが行われていると
して,同年4月から6月までの出席状況が記載された文書の写し(以下「元
職員作成出席簿」という。)を提出した。その際,Iらは,控訴人を相手方
として給料遅配の裁判をしているが,そのことで上記のような資料を持ち込
んだのではなく,金儲け主義の学校(控訴人)に何らかの鉄槌を与えたいの
である旨述べた(乙11,12)。
(3)大阪入管入国審査官は,同年9月29日,中国人Kからの在留期間更新許
可申請の審査に伴い,上記(1),(2)の点等で不審点がみられることから,学
生の出席状況の確認及び出席簿等の確認を行うため,現A学院に対して実態
調査(以下「本件実態調査」という。)を実施した(乙13)。
この際,同学院において,控訴人代表者であるBの判断で,出席率不良の
学生に対して名目上の出席率の向上を目的とした補習授業が有料で実施され
ているとの職員の供述を得た。また,学生の中には,出席不良であっても金
銭を支払えば名目上の出席率が向上する旨公言する者もいること,さらには
長期間欠席している複数の学生について大阪入管に何ら報告されていないこ
とが判明した。
また,控訴人職員から学籍簿の提出があったが,学生の顔写真が貼付され
ていないばかりか,本邦における居住地や連絡先が記載されておらず,履修
状況(成績)や指導事項を記載する欄もなかった。
さらに,控訴人職員から在学生に係る出席簿の写し(以下「実態調査時出
席簿」という。)の任意提出があったが,これと元職員作成出席簿とを照合
したところ,元職員作成出席簿における出席率よりも,実態調査時出席簿に
おける出席率が著しく高い者があるほか,元職員作成出席簿では授業がない
とされている平成16年4月30日について,実態調査時出席簿には出欠が
記載されているなどの相違がみられた。
(4)そこで,大阪入管入国審査官は,平成16年10月22日及び同年11月
1日,大阪入管において,Bに対し,事情聴取をした。
Bは,当初,現A学院に在学しているLの在学状況証明書(以下,在学状
況証明書を単に「証明書」という。)記載の出席率(92パーセント)が実
態調査時出席簿での出席率(42パーセント,乙8の添付資料)と相違する
理由について,実態調査時出席簿の出席率に,その後実施した補習授業への
参加を加算した出席率を証明書に記載した旨供述した。しかし,Bは,その
後すぐに,Lの出席状況を把握しながらBの責任で証明書に虚偽の記載をし
たこと,Bが現A学院の職員に対し学生の出席率を常に90パーセント以上
になるよう指示していた旨供述した(乙7,8)。
(5)大阪入管入国審査官は,平成16年10月25日,大阪入管において,L
に対し,事情聴取をしたところ,現A学院が発行した同人の証明書(同年2
月25日現在)における平成15年12月及び平成16年1月を含む約4か
月の出席率は92パーセントであるにもかかわらず(乙7の添付資料),同
人は,平成15年12月及び平成16年1月には,登校日の半分以下しか出
席しなかった旨供述した(乙15)。
(6)大阪入管入国審査官は,平成16年10月25日及び同年11月9日,大
阪入管において,現A学院に在学しているMに対し,事情聴取をしたところ,
同学院が発行した同人の証明書(同年9月15日現在)における過去半期の
出席率は93パーセントであるにもかかわらず(乙7の添付資料),同人は,
上記証明書に記載された出席率は虚偽のものであり,体調不良のため,平成
16年4月又は5月ころ,登校日の半分程度しか登校していない旨供述した
(乙17)。なお,実態調査時出席簿では,同人は同年4月及び5月にはほ
ぼ出席している状況にあるが(乙14),これは元職員作成出席簿のそれと
大きく異なっており,他方,Mの上記供述は,元職員作成出席簿における同
人の同年4月及び5月の出席状況と一致している(乙12)。
(7)大阪入管入国審査官は,平成16年11月22日,大阪入管において,現
A学院に在学しているNに対し,事情聴取をしたところ,元職員作成出席簿
の内容が同人の出席状況に相違ない旨供述するとともに,同年10月6日付
けで同学院が発行した同人の証明書に出席率85パーセントと記載されてい
ることは嘘である旨供述した(乙18)。
(8)大阪入管入国審査官は,平成16年11月25日,大阪入管において,現
A学院に在学しているOに対し,事情聴取をしたところ,同人は,同年6月
は体調が悪く,半分位の出席状況であった旨供述した(乙19)。この点,
実態調査時出席簿における同人の出席率は100パーセントではないものの
良好な出席状況にあるが(乙14),元職員作成出席簿における同年4月か
ら6月までの出席率は約59パーセントである(乙12)。
(9)なお,現A学院の他の在学生についても,実態調査時出席簿に基づく出席
状況と大阪入管に提出された証明書に記載された出席率とを比較したところ,
証明書に記載された出席率の方が高い者が少なくとも2名おり,出席率につ
いて,13パーセントないし26パーセントの相違がみられた(乙20)。
(10)Bは,大阪入管入国審査官に対する事情聴取の際に,学生の出身地によ
り,進学準備金の名目で,実質的には失踪防止担保金として,一人当たり2
0万円から50万円の金銭を,仲介機関を介してBの個人口座に入金させて
いた旨供述した。
(11)大阪入管局長は,平成16年11月8日,入国管理局長に対し,実態調
査等の結果,現A学院が,虚偽の出席率を記載した虚偽在学状況証明書を提
出して在留期間更新許可を得させていたことが判明したもので,極めて悪質
且つ日本語教育機関として不適切で,出入国管理行政上看過できないとして,
「在学生の在留期間更新申請において,虚偽の在学状況証明書を作成し当局
に提出していた。」ことを削除事由として,告示削除のりん請を書面でした
(乙30)。
(12)入国管理局入国在留課留学審査係の担当官は,上記りん請を受けて,同
りん請書に添付された大阪入管の各調査資料のほか大阪入管に補充調査させ
て収集した資料に基づき,現A学院が日本語教育機関として適正を欠いてい
ると判断して,これを決裁にあげ(起案日は平成16年12月22日),定
められた決裁順序に従い,平成17年1月12日,入国管理局長の決裁を得
た(乙31)。
(13)一方,入国管理局は,上記りん請を受けて,平成16年11月18日付
けで,Cに対し,現A学院における虚偽の在学証明書作成等の問題点につい
てどのように対応するかについて,意見照会を行った。
Cは,同年12月10日付けで,入国管理局に対し,Bに対して事情聴取
等をした結果,Cとして,今後Bに対する再発防止及び改善のための厳重な
指導を行うと回答した。また,Cは,平成17年1月5日及び6日,入国管
理局に対し,控訴人から平成16年8月に出されていた設置者・位置等変更
申請について同年11月に審査委員会(乙26,日本語教育機関審査実施要
項3項)が合格認定の判断をしており,今後の在校生の処理の問題もあるこ
とから,変更申請に対するCの審査は承認として,認定期間の更新について
は引き続き審査を行い,現行の認定期間である平成18年3月31日までと
して控訴人に通知する方針であると連絡し,後日,控訴人に対し,その旨の
通知をした(甲3の1・2)。
(14)入国管理局入国在留課留学審査係の担当官は,上記(11)の入国管理局長
の決裁を得た後,平成17年2月2日,官報に掲載する本件告示の案を起案
し,その後,法務省省令等に定められた決裁規程に従い法務大臣の決裁を得
て,本件告示は,同月16日付け官報に掲載された(甲4)。
なお,控訴人代表者本人尋問の結果中,同認定に反する部分は,乙7,8,
11ないし20に照らし,にわかに採用することはできず,他に同認定を覆
すに足りる証拠はない。甲7の1ないし14も,同認定を左右するものでは
ない(これらの書証の中には,本件実態調査当日に存在していたものかどう
かについて不明なものがある上,同じ学生についての(在学状況)証明書で
あると思われるのに出席率及び成績が異なっているものが2通ある(甲7の
25,27)など,全体として信ぴょう性に乏しい。)。
2争点(1)(本件告示の処分性)について
(1)上記前提事実(2)(日本語教育機関告示の制度等)の認定によると,同告
示別表第2の学校は,学校教育法82条の2所定の専修学校の高等課程若し
くは一般過程,同法83条所定の各種学校のほか,学校教育法上の規定がな
く,監督官庁がないものの,その設備及び編制に照らして各種学校に準ずる
ものと法務大臣において判断された教育機関をいい,別表第5の学校は,本
来,廃校等の事情により,別表第1ないし4の各学校に当たらなくなったも
のをいうが,各種学校に準ずるものと法務大臣において判断されて別表第1
ないし第4の学校とされていたものの,日本語教育機関としての適性を欠く
として,その対象外とされていたものについても,この学校で6か月以上の
日本語の教育を受けた者は,基準省令における「留学」の基準4項のイ及び
「就学」の基準4項のイの要件を満たすことになるため,別表第5に掲げる
こととされているものであるから,本件告示のように,別表第2から当該教
育機関を削除し,別表第5にこれを加える告示は,行政機関が決定した事項
を一般に公示する行為で,法令の内容を補充するものといえるものである。
また,日本語教育機関告示の別表第2から当該教育機関が削除された場合,
外国人が同機関において教育を受ける活動をすることを前提に「就学」の在
留資格の認定申請,上陸許可申請を行っても,「就学」の活動に係る上陸許
可基準を満たすことにならないため,そのような在留資格を得て本邦におい
て活動しようとする外国人が当該教育機関の入学を希望しなくなり,また,
同機関において既に「就学」在留資格で在籍している外国人は,上記削除に
より直ちに在留資格を失うことになるわけではないものの,そのまま当該機
関に在籍していたのでは就学の活動に係る上陸許可基準を満たさなくなり,
その後の在留期間更新許可を受けられなくなるおそれが出てくるもので,そ
うすると,上記削除を受けた機関は,相当程度の確実さをもって,上記のよ
うな外国人を受け入れ,教育し続けることが困難となり,実際上,Cから,
Cが法務大臣に提出して定めた審査基準を満たした結果外国人に対する日本
語教育を行う設備及び編成についての認定を受けた,日本語教育機関として
の経営自体を断念せざるを得ないことになる。
加えて,日本語教育機関告示の別表第2から当該教育機関を削除し,別表
第5にこれを加える告示をする権限を法務大臣から委任を受けている法務省
入局管理局長は,各地方入国管理局長宛通達(入国・在留審査要領)により,
外国人の在留審査に関連して,日本語教育機関に対する指導等についての具
体的方法等を定め,日本語教育機関告示の別表第2に掲げる日本語教育機関
についても,年2回,日本語教育機関に対し学生の在籍管理状況について報
告を求めて同状況を把握・確認し,報告により明らかとなった退学者等につ
いて不法残留状態になっているか等を調査することを定め,その調査結果を
もとに,在籍管理が適切に行われていないと認められた日本語教育機関に対
し不法残留者の発生状況等問題点を指摘して速やかに改善することを指導し,
適宜実地調査を行うなどして実態の把握に務め,適正・不適正について定期
的に本省に報告することなどを定めるほか,就学生・留学生の在籍管理状況
を的確に把握し,適切な在留審査を行うため,日本語教育機関が入国・在留
審査要領の定める一定の事由に該当する場合には,実態調査を行った上,日
本語教育機関告示別表第2削除のりん請を行い,所定の手続を経,最終的に
法務大臣の決裁を経,告示により,別表第2削除,別表第5追加を行ってい
るのであって,このように,法務大臣から委任を受けている入局管理局長は,
各地方入国管理局長宛通達(入国・在留審査要領)により,日本語教育機関
が適切に学生の在籍管理を行っているか否かの実態の把握に務め,その指導
等を行うとともに,日本語教育機関告示を削除,追加等をするための要件を
定め,各地方入局管理局長は,その要件の充足の有無を判断すべく,実態調
査をした上で,同告示削除等のりん請を行い,法務大臣の決裁を経,告示が
なされているのである。
そして,本件告示においても,上記1の認定事実(11)ないし(14)のとおり,
大阪入管局長は,控訴人の実態調査のうえ,平成16年11月8日,入国管
理局長に対し,現A学院が,虚偽の出席率を記載した虚偽在学状況証明書を
提出して在留期間更新許可を得させたもので,極めて悪質且つ日本語教育機
関として不適切で,出入国管理行政上看過できないとして,「在学生の在留
期間更新申請において,虚偽の在学状況証明書を作成し当局に提出してい
た。」ことを削除事由として,告示削除のりん請を書面でし,その後の必要
な手続を経,平成17年2月,現A学院が日本語教育機関として適正を欠い
ているとの判断のもとに,本件告示についての法務大臣の決済がなされ,同
月16日付け官報に掲載されたものである。
これらによれば,日本語教育機関告示の別表第2から当該教育機関を削除
し,別表第5にこれを加える告示は,国民の権利,義務に具体的な変動・影
響を及ぼすものであり,行訴法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力
の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。
(2)そうすると,原審裁判所は適法な訴えを不適法なものと誤認して,本件訴
えを却下する判決をしたものであるから,民訴法307条により,原判決は
取り消しを免れない。
ただし,本件においては,原審で,本案についても審理が尽くされており,
当審において,判断するに支障はなく,更に弁論をする必要はないと認めら
れるから,事件を原審に差し戻すまでの必要はないものと認める。
そこで,以下,本案について判断する。
3争点(2)(手続違反の有無)について
控訴人は,本件告示は,控訴人に対する不利益な行政処分であるから,控訴
人に対し,聴聞又は弁明の機会を付与すべきであるところ(行政手続法13条
1項),本件告示に当たっては,聴聞又は弁明の機会は付与されず,控訴人は,
平成17年2月22日,処分行政庁に呼び出されて初めて本件告示がされたこ
とを知ったから,本件告示には明確な手続違反の違法がある旨主張する。
この点,被控訴人は,本件告示はそもそも処分性を有しないから,行政手続
法2条2号に規定する「処分」に該当しないと反論するが,本件告示に処分性
が認められることは上記2で説示したとおりであるから,本件告示は行政手続
法2条2号に規定する「処分」に該当するものというべきである。
また,被控訴人は,外国人の出入国,難民の認定又は帰化に関する処分及び
行政指導は,行政手続法の適用除外とされているから(行政手続法3条1項1
0号),本件告示が行政手続法に規定する聴聞をしていないからといって,違
法になるものではないと反論するが,同条項にいう「外国人の出入国,難民の
認定又は帰化に関する処分及び行政指導」とは,日本国籍を有しない者が日本
に入国し,滞在し,又は日本から出国することに関して行われる処分及び行政
指導をいい,日本の法人である控訴人が本件告示の適法性を争う本件のような
場合には適用されないというべきである。
そこで,進んで,本件告示に上記手続違反の違法があるか否かについて検討
する。
上記1の認定事実に証拠(甲16,乙7,8,控訴人代表者本人)及び弁論
の全趣旨を総合すると,大阪入管入国審査官は,平成16年9月29日,本件
実態調査を行い,その際,控訴人代表者であるBから,出席率不良の学生に名
目上の出席率の向上を目的とした補習授業を有料で実施していること,当局に
報告してなかった長期欠席者が存在していることなどの供述を得るとともに,
学生のアルバイト斡旋状況,補習授業状況等についても確認をしたこと,大阪
入管入国審査官は,同年10月22日,任意の出頭要請に応じたBに対し,大
阪入管において,事情聴取を行い,その際,Bは,現A学院の経営の経緯,職
員,学期等の一般的事項に加え,補習授業,出席簿の記載といった問題点を含
む事項等について,B自身が理解する事情を述べ,その後更なる疑問点につい
て,問答の形式で,個別に詳細な回答をし,これらの供述内容は,B自身が誤
りがない旨確認した上で自ら署名捺印した,大阪入管入国審査官作成の同日付
け「聴取書」(乙7)に記載されていること,また,大阪入管入国審査官は,
同年11月1日,Bに対し,大阪入管において,事情聴取を行い,その際,B
は,Lの出席状況について,証明書の記載と実際の出席率とが相違すること,
Bの個人口座に学生からの金銭を振り込ませていること,Mに対する補習授業
の存否等について供述し,これらの供述内容は,B自身が誤りがない旨確認し
た上で末尾に自ら署名捺印した,大阪入管入国審査官作成の同日付け「聴取書
2回目」(乙8)に記載されていること,以上の事実が認められる。
これによれば,本件においては,本件告示に先だって,現A学院に赴いての
現地調査や控訴人代表者であるB本人に対する2回にわたる事情聴取において,
控訴人の意見やその主張する根拠等について,回答ないし弁明する機会が十分
与えられたということができ(Bに対する上記2回にわたる事情聴取の内容に
ついては,B自身が誤りがない旨確認した上で末尾に自ら署名捺印した聴取書
2通が作成されている。),このように,本件においては,控訴人にとって有
利な情報が提供され,あるいは控訴人に不利益な情報を弾劾する機会を付与す
る事情聴取が3度も行われており,仮にあらためて控訴人に対する行政手続上
の聴聞ないし弁明の機会がされたとしても,控訴人が日本語教育機関としてふ
さわしくないとしてされた本件告示の結果に影響を及ぼさないことは明らかで
ある。
したがって,行政手続法13条1項違反を理由に本件告示を取り消すことは
できないというべきである。
4争点(3)(日本語教育機関としての適格性)について
法務大臣が日本語教育機関告示を定めるに当たっては,Cによる設備及び編
制についての証明を参考にすることができるとされているのみであり,特段の
基準や要件は何ら法定されていない。また,日本語教育機関告示によって同各
表に搭載される日本語教育機関は,主に外国人を対象とする教育機関であると
ころ,上記前提事実によると,日本語教育機関の実情は,そこに所属すべき外
国人の上陸基準への適合性や本邦における活動内容といった実体上の問題や,
在留期間の更新等の手続上の問題に重大な影響を与えるものといえる。これら
のことに照らすと,日本語教育機関告示を定めたり削除したりすることの判断
は,「本邦に入国し,又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理
を図る」(入管法1条)ことを目的として,出入国管理行政全般について国民
や社会に対して責任を負い,かつその権限を有するとともに,国内及び国外の
情勢について通暁し,常に出入国管理の衝に当たる法務大臣の裁量に任せるこ
とで,適切な結果を招来することができるということができる。そして,以上
からすると,上記の判断については,法務大臣の裁量に委ねられ,同判断が違
法とされるのは,同判断に裁量権の逸脱・濫用と認められるような事情が存す
る場合に限られるものというべきである。
これを本件についてみるに,上記1の認定事実によれば,現A学院に在学し
ているLに係る同学院発行の証明書の出席率(92パーセント)と実態調査時
出席簿の出席率(42パーセント)とが大幅に異なるうえ,L自身,後者にそ
うような出席状況についての供述をしていること,現A学院に在学しているM
に係る同学院発行の証明書の出席率(93パーセント)と元職員作成出席簿の
出席率とが大幅に異なるうえ,M自身,後者と符合する出席状況についての供
述をしていること,現A学院に在学しているNは,同学院発行の証明書の出席
率(85パーセント)は虚偽のものであり,元職員作成出席簿の内容が同人の
出席状況に相違ない旨の供述をしていること,現A学院に在学しているOは,
元職員作成出席簿の出席率にそうような出席状況の供述をしていること,現A
学院のその他の2名の学生についても,証明書の出席率と実態調査時出席簿の
出席率との相違(前者の方が後者より高い。)がみられたこと,控訴人代表者
であるB自身,大阪入管入国審査官に対する事情聴取の際に,Lその他現A学
院に在学する学生の証明書について,職員に対し学生の出席率を常に90パー
セント以上になるよう指示するなどして,虚偽の記載をしていたことを自認す
る旨の供述をしていること,以上の諸事情が認められ,これらを総合すると,
控訴人は,控訴人代表者が自ら指示するなどして,就学生の在留期間更新申請
において,故意に虚偽の出席率を記載した(在学状況)証明書を発行していた
ことを認めるに十分である。
しかして,就学生・留学生に係る在留審査に当たっては,教育を受けている
機関からの在学証明書及び出席状況を記載した成績証明書等が提出書類の一つ
として定められており,同機関が提出するこれらの資料に基づいて審査が行わ
れるところ(上記前提事実(2)のキ),これらの提出資料に虚偽の内容が記載さ
れているような場合には,正常な審査判断を誤らせることになり,ひいては,
外国人の適正な在留管理を行うことが困難になってしまうおそれがあることに
照らすと,上記のような控訴人の行為は,就学の在留資格の審査において適正
かつ円滑な在留管理を行うための重要な資料についての極めて悪質かつ重大な
不正行為であると評価せざるを得ず,これに,就学生に対する在籍管理状況の
ずさんさをうかがわせるような学籍簿の不整備の事実やB自身進学準備金とい
う名目で就学生からBの個人口座に不明瞭,不自然ともいえる金銭を振り込ま
せていた事実などを併せ考慮すると,法務大臣が,これらの現A学院の実態を
ふまえ,同学院は日本語教育機関としてふさわしくないとして本件告示を行っ
たことは,入管法の趣旨,目的に照らして,適正であったというべきであり,
法務大臣の上記判断に裁量権の逸脱・濫用があったと認められるような事情は
存しない。
第4結論
以上によれば,本件告示に処分性は認められるが,本件告示に違法な点は存
しないから,本件告示の違法をいう控訴人の本訴請求は理由がなく棄却される
べきである。
よって,原判決を取り消し,控訴人の請求を棄却することとして,主文のと
おり判決する。
大阪高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官横田勝年
裁判官小林秀和
裁判官植屋伸一

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