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裁判例


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主文
1被告が原告に対して平成15年7月8日付けでした,平成12年7月分
ないし平成14年12月分までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税
告知処分(但し,いずれも平成15年11月26日付け異議決定により一
部取消された後のもの)及び不納付加算税の各賦課決定処分のうち,別表
2の「源泉徴収すべき税額」及び同「不納付加算税額」欄に各記載の金額
を超える部分をいずれも取り消す。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用はこれを20分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の
負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告が原告に対して平成15年7月8日付けでした,平成12年7月分ない
し平成14年12月分までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分
(但し,いずれも平成15年11月26日付け異議決定により一部取消された
後のもの)及び不納付加算税の各賦課決定処分を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,使用していたホステスに対して,半月ごとに報酬を支払っ
ていたところ,所得税法(以下「法」という。)204条1項6号,205条
2号所定の源泉徴収に係る所得税額を納付するに際し,当該報酬の額から,ホ
ステスが欠勤や遅刻した場合に差し引くこととしていたペナルティの額のほか,
法205条2号,所得税法施行令(以下「施行令」という。)322条所定の
控除額として,5000円に上記半月の日数を乗じた額を差し引いた残額に1
00分の10を乗じて計算した金額を納付したところ,被告が,法205条2
号,施行令322条所定の控除額は,5000円にホステスの実際の出勤日数
を乗じた額であるとして,これを前提として算出した納付額と原告の納付額と
の差額分に相当する金額について納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処
分をしたため,原告がそれらの取消しを求めた事案である。
1法令の定め
(1)法204条1項は,居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料
金,契約金又は賞金の支払をする者は,その支払の際,その報酬若しくは料
金,契約金又は賞金についての所得税を徴収し,これを国に納付しなければ
ならない旨規定し,同項6号は,当該報酬若しくは料金,契約金又は賞金の
ひとつとして,キャバレー,ナイトクラブ,バーその他これに類する施設で
フロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさ
せるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその
他の者のその業務に関する報酬又は料金(以下「ホステス報酬等」とい
う。)を規定している。
(2)法205条第2号は,ホステス報酬等については,その金額から政令で定
める金額を控除した残額に100分の10を乗じて計算した金額が上記(1)の
規定により徴収すべき所得税の額である旨規定している。
(3)施行令322条は,ホステス報酬等について法205条2号に規定する政
令で定める金額を,同一人に対し1回に支払われる金額につき,5000円
に当該支払金額の計算期間を乗じて計算した金額(当該ホステス報酬等の支
払者が当該ホステス報酬等の支払を受ける者に対し法28条1項に規定する
給与等の支払をする場合には,当該金額から当該期間に係る当該給与等の額
を控除した金額)とする旨規定している。
2争いのない事実等
(1)原告は,屋号を「A」(東京都立川市α××番33号所在)とするパブク
ラブを経営している。
(2)原告の主たる業務は,自社の経営する店舗において顧客に対し,接待をし
て遊興又は飲食をさせるものであり,原告は,当該店舗において接待をする
ことを業務とするホステス(以下「本件各ホステス」という。)を使用して
いる。
(3)原告は,毎月1日から15日まで(ただし,毎年1月は3日から15日ま
で)及び毎月16日から月末まで(ただし,毎年12月は16日から30日
まで)をそれぞれ1期間と定め(以下当該各々の期間を「本件各期間」とい
う。),本件各期間ごとに本件各ホステスの報酬(以下「本件各ホステス報
酬」という。)の支給額を計算し,毎月1日から15日までの報酬をその月
の25日(土曜日,日曜日及び祝日に当たるときはこれらの日の翌日)に,
16日から月末までの報酬を翌月の10日(土曜日,日曜日及び祝日に当た
るときはこれらの日の翌日)に本件各ホステスに対してそれぞれ支払ってい
る。
(4)本件各ホステス報酬の額の計算方法は,1時間当たりの報酬額に勤務した
時間数を乗じて計算した金額に手当を加えるというものである。
(5)原告は,本件各ホステス報酬の額から「ペナルティ」(本件各ホステスが
欠勤・遅刻等をした場合に,罰金として本件各ホステス報酬の額から差し引
かれるもの。以下「本件各ペナルティ」という。)に係る金額を控除した後
の金額から,5000円に本件各期間の日数を乗じた金額を控除した金額に
100分の10を乗じて算出された源泉所得税の額を,法定納期限までに被
告に納付している。
(6)被告は,原告に対し,本件各ホステス報酬の額から「ペナルティ」に係る
金額を控除した後の金額から,5000円に本件各ホステスの本件各期間に
おける出勤日数(以下「本件出勤日数」という。)を乗じた金額を控除した
後の金額に,100分の10を乗じて計算した金額が本件各ホステス報酬に
係る源泉所得税の額であるとして,平成15年7月8日付けで,平成12年
7月から平成14年12月までの各月分の源泉徴収に係る所得税について,
別表1の各「原処分の額」欄記載のとおりの各納税告知処分及び不納付加算
税の各賦課決定処分を行った。
(7)原告は,これらの処分を不服として,平成15年8月27日,被告に対し,
異議申立てをしたところ,被告は,同年11月26日付けで,別表1の各
「異議決定」欄のとおり,平成12年10月分及び平成14年1月から同年
10月までの各月分の各納税告知処分については,いずれもその一部を取り
消す異議決定を,また,その他の各月分の各納税告知処分並びに平成12年
7月から平成14年12月までの各月分の不納付加算税の各賦課決定処分に
ついては,異議申立てをいずれも棄却する異議決定をした(以下,異議決定
を経た後の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分をそれぞれ
「本件各納税告知処分」「本件各賦課決定処分」という。)。
(8)これに対し,原告は,平成15年12月26日,国税不服審判所長に対し
て審査請求をしたところ,同所長は平成16年10月15日付けで審査請求
をいずれも棄却する裁決をし,裁決書謄本は同年10月19日に原告に到達
した(原告への到達日につき,弁論の全趣旨)。
(9)原告は,平成17年1月14日,本件訴えを提起した(弁論の全趣旨)。
3争点
(1)施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」の意義
(2)本件各ペナルティの控除の可否
4争点に関する当事者の主張の要旨
(1)争点(1)(施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」の意義)に
ついて
(被告の主張)
アホステス報酬等の源泉徴収制度の立法(改正)過程をみると,同制度に
おいては,納税者の職務の性質上,少額の所得のみ存在したり,報酬等に
比して多額の経費を要するものが存在することが考慮され,一方で所得税
の還付手続を省きつつ,他方では納税者の最終的に納付すべき所得税額と
源泉徴収税額とをなるべく近似させて両者の差が大きくならないようにし,
確定申告時に納付する税額をできるだけ減少させるようにして,確実な租
税の徴収を図ることができるよう立法されたものと解される。
イ施行令322条の表においては,報酬等から控除される一定の基礎控除
の金額について,司法書士等の報酬,診療報酬等,職業拳闘家等の報酬,
ホステス等の報酬等といった法205条2号所定の種別毎に異なる算定方
法が規定されているが,これらは,それらの報酬等の種別に応じた経費の
発生状況,発生態様の違いを念頭に置いて設定されたものと解されるから,
当該基礎控除の額には,その報酬等の種別に応じた経費的性格があると解
される。したがって,ホステス等の報酬等に対する源泉徴収税額の算定方
法に関する施行令322条の解釈についても,単に同条の表中の字句のみ
に拘泥することは適切ではなく,報酬等の種別に応じた基礎控除額の経費
的性格を考慮した上で,最終的に納付すべき税額と源泉徴収税額をなるべ
く近似させ,確定申告時に納付する税額をできるだけ減少させようとする
同条及び法205条2号の立法趣旨,目的に整合するよう解釈されなけれ
ばならない。
一方,源泉徴収されるホステス等の報酬等には,ホステス等が給与所得
として受ける報酬等が含まれないのであるから(法204条2項1号),
法204条1項6号及び205条2号並びに施行令322条によって源泉
徴収されるホステス等の報酬等とは,個人事業者であるホステス等が事業
所得として受け取る報酬等であり,ホステス等の1日1日の業務に対応す
る報酬等が積み重なったものにほかならない。
それゆえ,このような報酬等を得るための必要経費もまた,ホステス等
の1日1日の業務に対応する経費が積み重なったものというべきである。
ホステス等の報酬等に係る経費の発生状況がこのような形態のものである
以上,経費的性格を有する基礎控除額についても,このような経費の発生
状況ないし発生態様と整合的に解釈すべきであり,これとかけ離れた解釈
をすべきではない。
ウ施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」の解釈については,
このような基礎控除額の経費的性格を考慮しつつ,確定申告時に納付する
税額をできるだけ減少させようとした同条及び法205条2号の立法趣旨
に整合的に解すべきである。しかるに,ホステス等の報酬等が発生する余
地のない日を基礎控除額の金額の計算の対象日とすることは,勤務しない
日も基礎控除額の計算対象に盛り込むことを意味するから,ホステス等の
経費の発生状況ないし態様とは合致しないばかりか,租税収入の確保の見
地からも,課税の公平の観点からも極めて不合理であり,施行令322条
の解釈適用を誤るものといわねばならない。換言すれば,施行令322条
の「当該支払金額の計算期間の日数」は,当該報酬等の支払金額の計算の
対象となった日の合計日数であると解さなければ,基礎控除方式による源
泉徴収制度を採用した施行令322条及び法205条2号の立法趣旨に整
合しないというべきである。
エ本件各ホステスは,各営業日の開店前までに,原告との間で各当日の出
勤について合意した営業日についてのみ業務上の拘束を受けるものである
から,本件各ホステスの「支払金額の計算期間の日数」とは,当該支払金
額の計算の対象となった日の合計日数,すなわち,本件各ホステスが実際
に出勤した日数をいうことになる。
確定申告によってはホステス等の報酬等について税収を確保するのは困
難であるとの立法事実を背景に,ホステス報酬等の源泉徴収制度が設けら
れたのであるから,源泉徴収税額間の公平を図るためには,同種,同額の
報酬に対しては,同額の源泉徴収額が予定されているというべきである。
オ基礎控除方式の制度趣旨が,確定申告時の還付又は不足分の納付という
事務手続をする必要性が発生しないよう,源泉徴収の段階で確定的な税額
に近い額を源泉徴収税額として徴収するため,同一人に対して1回に支払
われる金額から必要経費に相当する額を控除することにあることに照らせ
ば,本件各ホステスのように,実際の出勤日においてのみ業務上の拘束を
受け,報酬額についても各自の実際の出勤日を計算要素として算出されて
いる場合,本件各集計期間の日数ではなく,実際の出勤日の日数が施行令
322条の「当該支払期間の計算期間の日数」に該当するというべきであ
る。
(原告の主張)
ア一般に,「期間」とは,ある時点からある時点までの継続した時の区分
であり一時点を示すものではなく,所得税法施行令322条の「当該支払
金額の計算期間の日数」も,当該支払金額の計算の対象となる起算点から
満了点までの継続した日数と解するのが相当である。
イ本件の場合,本件各ホステスに対して1回に支払う報酬の計算期間は,
本件各期間,すなわち毎月1日から15日まで,及び毎月16日から月末
までをそれぞれ1期間と定めているのであるから,本件各期間の日数が所
得税法施行令322条に規定する「計算期間の日数」に相当する。
ウ文理解釈
(ア)租税法の解釈
租税法の解釈は,原則として文理解釈により行うべきであり,文理解
釈によって規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合,又は文理
解釈では妥当な結果が得られないときに,はじめて規定の趣旨目的に照
らして論理解釈を行うことになる。
租税法の文理解釈に当たっては,忠実にその字句に則し,文法に従っ
て,その規定の意味を汲み取るようにし,法令上用いられている用語に
ついて,法令中に定義規定が存在しなければ,世間一般で理解されてい
る意味に解して読むことになるのである。
(イ)「期間」の意義
a国税通則法
国税通則法10条1項は,国税に関する法律のみならず,これに基
づく政令及び省令に定める期間にも実質的に適用があるものと解され
ており,同条は施行令322条にも適用される。「平成16年改訂
国税通則法精解」(甲第8号証)191頁には,同条項について「こ
の条第1項における期間とは,ある時点からある時点まで継続した時
の区分である。」との記載がある。以上のように税法における「期
間」とは,「ある時点からある時点まで継続した時の区分」なのであ
り,このことは,施行令322条の「当該支払金額の計算期間」の解
釈においても当然当てはまるものである。
b民法
民法においては,138条ないし143条に「期間」についての規
定がある。数多くの民法総則の基本書,概説書のいずれも「期間」を
もって,ある時点からある時点までの時間の継続性を重要な要素とし
ている。
c労働基準法,労働基準法施行規則
労働基準法108条では,賃金台帳に「賃金計算の基礎となる事
項」を記入すべきものとされ,それを受けて労働基準法施行規則54
条1項が,「賃金計算期間」を賃金台帳の必要的記載事項として規定
するとともに,同条項は「労働日数」を別個の概念とし別個に記載す
ることを定めている。
ホステス等に対する報酬等も労働基準法11条の定める「労働の対
償として使用者が労働者に支払うもの」であり「賃金」に該当するこ
とからしても,労働基準法施行規則54条1項の「賃金計算期間」は,
施行令322条の「当該支払金額の計算期間」と同義であると解され
る。仮に,本件ホステス報酬等が労働基準法11条の「賃金」に該当
しないとしても,同報酬等と「賃金」は,役務提供の対価という点で
共通する類似の概念であり,賃金台帳の記載事項についての定めは,
本件各ホステス報酬についても十分考慮されるべきである。
d法律用語辞典,国語辞典
法律用語辞典や国語辞典においても,「期間」の意義について「あ
る時点から他の時点までの一定の時間隔たりの間の長さ」(法律用語
事典第2版)(甲第15号証),「一定の時期から他の一定の時期ま
での間」(広辞苑第5版)(甲第16号証)などと定義されている。
(ウ)施行令322条のかっこ書きの文言
施行令322条は,ホステス報酬等につき控除されるべき金額を「5
000円に当該支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額(当該
報酬又は料金の支払者が当該報酬又は料金の支払を受ける者に対し法第
28条第1項に規定する給与等の支払をする場合には,当該金額から当
該期間に係る当該給与等の額を控除した金額)」であると規定している。
同条かっこ書き内の「当該期間」は同条本文の「当該支払金額の計算
期間」と同義であるところ,法令の解釈に当たっては,同一の条項にお
いて用いられている文言については,同一の意味に解するのが法律解釈
の常道である。そして,上記の「当該期間」はその文言から,法28条
1項(給与所得)に規定する給与等の支払金額の計算期間であり,これ
がある時点からある時点までの継続した時の区分を意味することは明ら
かである。
したがって,かかるかっこ書き内の「当該期間」との関係からも,
「当該支払金額の計算期間」は,ある時点からある時点までの継続した
時の区分,本件でいえば本件各期間,すなわち,毎月1日から15日ま
で,及び毎月16日から月末までの継続した日数を意味することは明ら
かである。
(エ)施行令308条2項に定める「給与等の計算の基礎となった日数」の
意義
法185条は,賞与以外の給与等に係る徴収税額について規定してい
るが,同条2項は,同条1項1号及び2号に規定する給与等の「日割
額」の意義等について必要な事項は法令で定めると規定し,これを受け
て,施行令308条2項は,法185条1項1号又は2号に規定する給
与等の日割額は,給与等の支給すべき額をその「給与等の計算の基礎と
なった日数」で除して計算した金額とすると規定する。
この施行令308条2項の「給与等の計算の基礎となった日数」とい
う文言は,施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」という
文言に比して,「基礎となった」という文言が入っている分だけ,その
意義について,当該集計期間中の出勤日数(稼働日数)とする解釈によ
り馴染む表現である。しかし,所得税基本通達185−4(一)は,施
行令308条2項に規定する「給与等の計算の基礎となった日数」の意
義について,「あらかじめ定められた支給期が到来するごとに支払う給
与等については,その給与等に係る計算期間の日数(当該計算期間中に
おける実際のか働日数のいかんを問わない。)」と規定し,当該給与等
の集計期間の日数の合計であり,稼働(出勤)日数ではないことを明ら
かにしている。
(オ)以上のとおり,文理解釈によれば,施行令322条の「当該支払金額
の計算期間の日数」の意義は原告の主張するとおりに解釈されるべきも
のであり,これを「出勤日数」とする被告の主張は誤っている。
エ源泉徴収税額の計算方法(基礎控除方式)の趣旨目的に照らしても,原
告の行った計算が正当であること
(ア)基礎控除方式が採用されている趣旨目的
ホステス等の源泉徴収税額の計算においては,「その支払金額が一定
限度以下である場合には源泉徴収を要しないこととするいわゆる免税点
方式」ではなく,「一定金額を控除した残額に対し税率を適用して課税
するいわゆる基礎控除方式」が採用されている。
ホステス等の源泉徴収税額の計算に基礎控除方式が採用された趣旨目
的は,「できる限り源泉徴収税額の還付の手数を省くこと」にある。そ
して,その趣旨目的を徹底するために,その後の税制改正により,さら
に源泉徴収に係る控除額の引き上げを行って現在に至っている。
また,現在の基礎控除制度は,かつての所得控除に代わるものではな
く,(1)少額所得の不追求,ないし(2)徴収義務者の便宜を考慮して,源
泉徴収される報酬,料金等の範囲で制限する趣旨であるとされている。
以上のとおり,基礎控除方式が採用された趣旨目的としては,「でき
る限り源泉徴収税額の還付の手数を省くこと」と「少額所得の不追求及
び源泉徴収義務者の負担を緩和するものであること」が妥当なものと考
えられる。
(イ)原告の計算方法は,被告の計算方法に比較して,必ず源泉徴収税額が
少なくなる。そうすると,「できる限り源泉徴収税額の還付の手数を省
くこと」という趣旨目的を達成できる可能性があるのは,原告の計算方
法である。「少額所得の不追求及び源泉徴収義務者の負担を緩和するも
のであること」という趣旨目的に合致するのも,原告の計算方法である。
オ所得税の源泉徴収制度は租税の徴収手続であること
租税の確定の方式としては,申告納税方式と賦課納税方式とがあるが,
それ以外に,納税義務が成立すると同時に特別の手続を必要とせずに法規
の定めに従って当然に確定する租税(自動確定の租税)がある。そして,
源泉所得税はこの自動確定の租税に該当し,租税の確定手続を要せず,源
泉徴収の要件の充足と同時に自動的に確定するが(国税通則法15条3項
2号),これは源泉所得税の課税標準が明白であり,しかも税額の計算が
極めて容易なためである。すなわち,所得税の源泉徴収方式は,確定した
租税の徴収方式に関する方式にすぎず,源泉徴収義務者は課税標準を確認
する特別の行為をすることなく特定の税額を納付する義務のみを負うもの
とされている。税法の意味内容が不明確で,源泉徴収義務者が徴収すべき
税額を画一的に計算できず,解釈により徴収すべき税額を認定し判断しな
ければならないということは,そもそも法が予定していないのであるから,
この観点からしても,「当該支払金額の計算期間の日数」は,その文理に
忠実に解釈されなければならない。
(2)争点(2)(本件各ペナルティの控除の可否)について
(被告の主張)
源泉徴収の対象となる所得とは,給与,報酬等であるところ,本件各ペナ
ルティは,原告と本件各ホステスとの間で定められた違約金にすぎないから,
本件各ホステス報酬算定の際の考慮要素とならないことは明らかであり,そ
の性質からみて本件各ホステスの所得の計算上,必要経費となるべきもので
ある。
したがって,本件各ホステス報酬に係る源泉所得税の額を計算するに当た
っては,当該ペナルティの額は本件各ホステス報酬の額から控除すべきもの
ではない。
(原告の主張)
アホステス等の業務に関する報酬もしくは料金(法204条1項6号)の
源泉徴収においては,政令で定める同一人に対して1回に支払われる金額
より基礎控除の金額を控除した残額に10%の税率を乗じた金額を徴収す
る(法205条2号)ものとされている。「同一人に対して1回に支払わ
れる金額」とは,同一人に対し1回に支払われるべき金額をいうと解され
(国税庁長官通達「所得税基本通達205−1」),同通達により「支払
われる金額」とは支払確定ベースによるべきであることが明らかにされて
いる。
イ本件ペナルティは,本件各ホステス報酬の算定に際してのみ考慮される
べきもので,報酬が生じない計算期間において別個に発生するものではな
い。したがって,本件ペナルティは,各種手当と同様に,本件各ホステス
報酬を構成する要素の1つ,すなわち本件各ホステス報酬の算定要素であ
る。
第3当裁判所の判断
1前記第2の2の事実,証拠(甲4,17∼21,23,40,乙1∼5,7,
16,20の1∼3)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(末
尾に認定に供した主要な証拠等を挙げた。)。
(1)報酬,料金等に係る源泉徴収制度
ア概要
ホステス報酬等のほか,居住者に対し国内において次に掲げる報酬若し
くは料金,契約金又は賞金の支払をする者は,その支払の際,それぞれ所
得税を徴収しなければならないとされている(法204条,同205条,
施行令322条参照)。
(ア)支払金額に100分の10(同一人に対し1回に支払われる金額が1
00万円を超える場合,その超える部分の金額については100分の2
0)の税率(以下「二段階税率」という。)を乗じて計算した金額を徴
収すべきもの
a原稿,さし絵,作曲,レコードの吹き込み又はデザインの報酬,放
送謝金,著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び
講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金
b弁護士(外国法事務弁護士を含む),公認会計士,税理士,社会保
険労務士,弁理士,測量士,建築士,不動産鑑定士,技術士その他こ
れに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
c職業野球の選手,競馬の騎手,モデルその他これに類する者で政令
で定めるものの業務に関する報酬又は料金
d映画,演劇その他政令で定める芸能又はラジオ放送若しくはテレビ
ジョン放送に係る出演若しくは演出(指揮,監督その他政令で定める
ものを含む。)又は企画の報酬又は料金その他政令で定める芸能人の
役務の提供を内容とする事業に係る当該役務の提供に関する報酬又は
料金(これらのうち不特定多数の者から受けるものを除く。)
e役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定め
るもの
(イ)支払金額から政令で定める金額を控除した残額に100分の10の税
率を乗じた金額を徴収すべきもの
a司法書士,土地家屋調査士又は海事代理士の業務に関する報酬又は
料金
同一人に対し1回に支払われる金額から1万円を控除する。
b診療報酬
同一人に対しその月分として支払われる金額から20万円を控除す
る。
c職業拳闘家の業務に関する報酬
同一人に対し1回に支払われる金額から5万円を控除する。
d外交員,集金人又は電力量計の検針人の業務に関する報酬又は料金
同一人に対しその月中に支払われる金額から,12万円(当該報酬
又は料金の支払者が当該報酬又は料金の支払を受ける者に対し,法2
8条1項に規定する給与等の支払をする場合には,12万円からその
月中に支払われる当該給与等の額を控除した金額)を控除する。
e広告宣伝のための賞金で政令で定めるもの
同一人に対し1回に支払われる金額から50万円を控除する。
f馬主が受ける競馬の賞金で政令で定めるもの
同一人に対し1回に支払われる金額から施行令298条1項に規定
する金額を控除する。
イ源泉徴収制度の趣旨
源泉徴収制度は,税収の確保,徴税手続の簡便さ,徴税費の節約等の便
宜上の理由から採用されたものといわれている。具体的には,①支払われ
る金額を課税対象とするから,課税標準等の把握が正確であること,②徴
税が確実であること,③徴税費が少なくてすむことの徴税側の便宜のほか,
④支払われる段階で徴税されるので,納税に対する苦痛が比較的少なくて
すむこと,⑤確定申告時に多額の納税資金を手当てする必要がないことな
ど,納税者にとっても便利な点がないわけではない。反面,徴収義務者に
負担を強いる結果となること,申告納税制度と比較して所得税の前取りで
あり,納税面に不公平感を抱かせる等の短所があるとされている(甲23,
乙7)。
ウ基礎控除制度の趣旨
外交員や集金人の報酬,料金等については,昭和29年度の税制改正に
より源泉徴収を要しない限度額(免税点)が設けられ,昭和42年度の税
制改正時に基礎控除制度に改められたが,基礎控除制度については,①少
額所得の不追求,ないし②徴収義務者の便宜を考慮して,源泉徴収される
報酬,料金等の範囲で制限する趣旨であり,報酬,料金等の範囲を拡大し
たことに伴う源泉徴収義務者の負担を緩和するものであろう,とする見解
がある(甲19)。
(2)ホステス報酬等への課税制度等
ア概要
ホステス報酬等は,所得税法上,給与所得に該当するものを除けば,事
業所得ないし雑所得として,その年中の総収入金額から必要経費を控除し
た金額を所得の額とし(法27条2項,35条2項2号),それらの合計
である総所得金額に各種控除等を行った上で(法72条以下参照),所定
の税率を適用する等して最終的な所得税額が算出されるが,具体的に納付
すべき額は確定申告手続(法120条以下)において確定される。源泉徴
収された又はされるべき所得税の額がある場合には,確定申告手続におい
て,所得税額から控除されるが,控除しきれなかった額がある場合には,
還付を受けることができる。
イ改正経緯
(ア)昭和42年度の税制改正では,バー等のいわゆるホステス等の業務に
関する報酬について,職業拳闘家・プロゴルファー・プロレスラーの業
務に関する報酬又は料金,馬主が受ける競馬の賞金とともに,所得税の
源泉徴収を行うことになった。立法担当者の解説によれば,これらの報
酬等について源泉徴収を行うことにしたのは,この種の報酬等に類似す
る報酬について既に源泉徴収の対象としていることとのバランスや,こ
れらの報酬等については収入が固定的に発生するものではないので確定
申告の際に一時に納税するよりは,収入があった都度一定の所得税を天
引して納めておく方が納税しやすくなるという事情等を考慮したことに
よるとされている。もっとも,これらの報酬等のうちには,少額なもの
があったり,異常な経費がかさむものもあるので,一定の控除額を設け,
その納税の実情に即するように配慮するとして,ホステス等の業務に関
する報酬については,同一人に対し1回に支払われる金額から2000
円にその支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額(別に給与等
の支払をする場合には,その計算した金額からその期間に係る給与等の
額を控除した金額)を控除した残額の10パーセント相当額を徴収税額
とした(乙1)。
上記税制改正では,外交員,集金人等の特定の報酬等に関する所得税
の源泉徴収については,従来はその支払金額が一定限度以下である場合
には源泉徴収を要しないこととするいわゆる免税点方式が採用されてい
たが,この免税点方式では,その金額を若干でも超えると全体の金額に
ついて10パーセントの税率による源泉徴収が行われることになるので,
還付の手数を省略しようとする本来の趣旨の徹底を欠くきらいがあった
ことから,その趣旨をさらに徹底させる見地から,一定の金額を控除し
た残額に対して税率を適用して課税するいわゆる基礎控除方式に改め,
できる限り源泉徴収税額の還付の手数を省くことになった(乙1)。
(イ)昭和47年度の税制改正では,外交員,集金人の報酬又は料金及びホ
ステスの報酬について源泉徴収に際し控除すべき金額が引き上げられた。
ホステスの報酬については,控除すべき1日当たりの金額が2000円
から3000円に引き上げられた。基礎控除の引き上げは,昭和42年
度の税制改正後における累次の所得税減税によって,特に外交員,集金
人及びホステスについては,確定申告における還付が増加しつつある現
状にあることから,昭和42年後における課税最低限の引き上げ状況等
をも勘案してなされたものとされている(甲17)。
(ウ)昭和50年度税制改正では,外交員,集金人の報酬又は料金とともに,
ホステス等の報酬について源泉徴収に係る控除額が引き上げられ,ホス
テス等では,同一人に対し1回に支払われる金額から控除する額を30
00円から現行の5000円に引き上げた。これは,昭和47年度改正
後の累次の所得税減税によって,外交員,集金人及びホステス等につい
ての還付の事例が増加していることからなされたものであるとされてい
る(甲18)。
ウホステス等の報酬等を源泉徴収の対象とした理由
ホステス等の報酬等を源泉徴収の対象とした理由については,納税者か
らの自主的な申告納税を全く期待し得ないわけではないが,源泉徴収をし
ておいた方が納税者にとっても税務当局にとっても能率的で煩わしくない
ような所得に該当するとの見解や,ホステス等の報酬の捕捉が困難である
ことを配慮したものと思われるとする見解がある(甲23)。
(3)本件各ホステスの出勤状況
原告は,本件各ホステスの採用に際して応募申込書を徴しており,当該申
込書には,本件各ホステスの出勤可能な曜日及び出勤時間等の勤務方法並び
に入店時の保証報酬として1時間当たりの金額が記載される。
本件各ホステスから徴収した応募申込書に記載された出勤可能な曜日及び
時間はあくまでも目安にすぎず,必ずそのとおりにホステスが出勤するわけ
ではない。原告においては,毎日,営業終了時に,当日出勤しているホステ
スに翌日出勤することが可能かどうかを尋ね,翌日の不足人員を補充してい
る。また,予め応募申込書で出勤可能なホステスに対しても,電話で翌日の
出勤の可否を確認している。翌日出勤するホステスが不足する場合は,応募
申込書によると出勤可能でないホステスに対しても,電話等をして出勤を促
し,要請することもある。
さらに,事前には出勤の予定がないホステスであっても,当日,顧客と約
束して同伴出勤してくるホステスもいる。
原告は,本件各ホステスの出勤日における同伴の有無及び指名個数等につ
いて「リスト表」(乙第4号証)などを作成し,日々管理している(以上に
つき,甲40,乙3,4,弁論の全趣旨)。
(4)本件各ホステス報酬の支払
原告は,本件各ホステスの報酬の額について,1時間当たりの報酬額に,
勤務した時間数を乗じて算出した額に,手当の額を加算して算出している。
そして,原告は,上記額から,主に次のエないしクとして算出される金額
を控除して支給額を算出し,当該差引支給額を本件各ホステスに支払ってい
る(甲4,40,乙5,弁論の全趣旨)。
ア1時間当たりの報酬額
原則として,本件各期間における本件各ホステスの指名個数等の合計を
本件出勤日数で除して算出された平均指名個数等に応じて決定される金額
に精勤手当等を加えて原告が算定する金額である。なお,入店して間もな
いホステスについては,一定金額が1時間当たりの報酬額として保証され
ている。また,本件各期間の間に出勤予定日を2日以上休むと時給が30
0円減額され,本件各期間に5回以上の同伴出勤を行った場合は,その回
数に応じて,時給が100円,200円または300円増額される。
イ勤務した時間数
原告が日々管理している,本件各期間のうち本件各ホステスが出勤した
日におけるそれぞれの勤務時間の合計である。
さらに,「同伴指名手当」として,ホステスが同伴出勤をした場合には,
実際の入店時間を遡って勤務時間が加算される。また,平均指名個数が0.
5単位の時給設定額は,ホステスが1期間に10日以上出勤した場合に適
用され,1期間の出勤日数が10日未満の場合は,1単位未満を切り捨て
た平均指名個数に対する時給設定額が適用される。
ウ手当
本件各ホステスが,本件各期間において客との同伴出勤をした回数に応
じて支給される同伴手当が主なものである。
エ「税,厚生費」の額
本件各期間における本件各ホステス報酬の額に12パーセントを乗じた
もので,本件各ホステス報酬に係る源泉所得税の額と厚生費の額とを合わ
せた概算額である。
オ「ペナルティ」の額
本件各ホステスが欠勤,遅刻等をした場合の罰金である。
カ「日払い」の額
本件各ホステスからの要望に応じて勤務当日に1万円を限度として仮払
された金額である。
キ「寮費」,「水道光熱費」,「スーツ代」,「送り代」等の額
各項目ごとに本件各ホステスが各人で負担すべき金額を原告が支払った
ものであり,本件各ホステス報酬の額から差し引かれる金額である。
クその他
原告が本件各ホステスに貸付金を有している場合,毎月約定の返済額も
控除される。この場合は,報酬支払明細の「その他」欄に記入される。
(5)本件各ホステスが負担する経費
本件各ホステスは,オリジナル様式の名刺,衣装,化粧,靴,バッグ,携帯
電話,寮費,店舗からの自動車による送迎代の各費用を経費として負担してい
る(甲40)。
2争点(1)(施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」の意義)につ
いて
(1)一般に,租税法は侵害規範であり,法的安定性の要請が強く働くものであ
るから,租税法の解釈は,まず成文法の文理解釈によるのが原則であり,そ
れが租税法律主義にもかなうものというべきである。もっとも,文理解釈に
よって規定の意味内容を明らかにすることが困難である場合には,当該規定
の趣旨目的や立法経過等に照らして論理解釈を行う必要があるし,文理解釈
によれば規定の意味内容が一見明らかであると見られるような場合であって
も,その解釈による帰結が明らかに不合理であり,そのような帰結を導く立
法がされたとは考えられないというような場合には,やはり,当該規定の趣
旨目的や立法経過等に照らし,通常人が納得するような常識的な帰結を導き
出す論理解釈が可能かどうかを検討する必要がある場合もあり得るものと考
えられる。
そこで,以下,このような観点から検討する。
(2)「当該支払金額の計算期間の日数」の文理解釈について
アまず,施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」のうち,
「当該支払金額」とは,同条の規定の仕方からみて,「同一人に対し1回
に支払われる金額」を指すと考えられる。したがって,「当該支払金額の
計算期間の日数」とは,「同一人に対し1回に支払われる金額の計算期間
の日数」を意味することになる。
次に,「計算期間」は,社会生活において日常的に用いられる用語では
なく,税法上も特段の定義はなされていないところ,「期間」は,一時点
から一時点までの時間的隔たりといった,時的連続性を持った概念である
から(甲8∼16参照),「(当該支払金額の)計算期間」も,例えば
「(当該支払金額の)計算の基礎となった期間の初日から終日まで」とい
うように,時的連続性を持った概念と解するのが自然である。そして,
「期間の日数」といった場合,具体的に限定がなされない限り,かかる時
間的隔たりに含まれる日数の全てを含むと解するのが通常である。以上を
前提として考えると,定期的に報酬が支払われることが合意されている場
合における「当該支払金額の計算期間の日数」とは,契約において支払の
対象とされた期間(本件においては,毎月1日から15日までと,16日
から月末まで)の全日数を意味すると考えるのが文言上素直な解釈である
というべきである。
これに対し,被告は,「当該支払金額の計算期間の日数」とは,出勤し,
報酬支払の対象となる稼働が行われた日の日数(したがって,当該期間中
の全稼働日数)を意味するという趣旨の主張をするのであるが,このよう
な解釈は,「計算期間の日数」を,点としての稼働日を集計したものとい
う意味に解することとならざるを得ず,時間的連続性を前提としているも
のと解すべき「期間の日数」という概念とは明らかに矛盾する,文言上は
無理のある解釈であるといわざるを得ない。また,被告主張のような意味
を表すのであれば,「当該支払金額の計算期間中の全稼働日数」とか「当
該支払金額の対象となった全稼働日数」などといった用語を用いればよい
わけであるし,そのような用語を用いることに支障があるとも考えられな
い。それにもかかわらず,実際の施行令においては,「計算期間の日数」
という用語が用いられている以上,その解釈に当たっては,その文言に即
した解釈を行わざるを得ないのであって,概念の異なる別の用語と読み替
えるような解釈は行うことはできないものというべきである(なお,施行
令308条2項の「給与等の計算の基礎となった日数」の意義については,
所得税基本通達185−4において,あらかじめ定められた支給期が到来
するごとに支払う給与等については,その給与等に係る計算期間の日数
(当該計算期間中における実際のか働日数のいかんを問わない。)であっ
て,計算期間中の全日数を意味するとされている。このことは課税庁自身
も,「計算期間の日数」とは,計算期間中の稼働日数ではなく,その期間
の全日数とみるのが常識的な理解であると認識していることをうかがわせ
るものである。)。
イこれに対し,被告は,ホステス等の報酬・料金の性質,必要経費の算定
方法,他の報酬等の基礎控除額の規定との整合性,本件各ホステスの勤務
状況等に基づき,「当該支払金額の計算期間の日数」とは,当該支払金額
の計算の対象となった日の合計日数をいい,ホステス等の報酬についてい
えば,ホステスが実際に稼働した日数をいうことになると主張している。
ところで,「当該支払金額の計算期間」とは,「同一人に対し1回に支
払われる金額の計算期間」を意味するものと考えられることは前説示のと
おりであるが,ここでいう「1回に支払われる金額」とは,ホステスの客
観的な稼働状況に照らして判断されるべきものであるから,ホステスの各
日における稼働状況がそれぞれ完全に独立しており,報酬の支払をする者
との間の継続的契約に基づいて稼働しているというよりは,日々新たに契
約を締結し,新たな契約に基づいて稼働しているという実態にあるとみら
れる場合には,各日に支払われるべき金額が,それぞれ「1回に支払われ
る金額」になるものと解され,したがって,このような場合における「当
該支払金額の計算期間」とは,各日すなわち1日を意味することとなる。
そうすると,このような実態がある場合に,報酬そのものは,定期的に数
日分がまとめて支払われていたとしても,それは,「1回に支払われる金
額」が数回分まとめて支払われていたものと考えるべきであるから,この
ような場合における「当該支払金額の計算期間」とは,まとめて支払われ
た金額に対応する日数,すなわち,ホステスが実際に稼働した日数を意味
することになる。被告の主張が,このような趣旨であるとするならば,そ
れは,文理的にも十分に成り立ち得る主張であるということができるが,
これはあくまでも「1回に支払われる金額」という文言の解釈によって導
き出された帰結であり,また,本件に対してこのような解釈を適用するこ
とが可能かどうかは,本件におけるホステスの勤務実態に照らして判断さ
れるべき事柄である(この点については,後に改めて検討する。)。これ
に対し,被告の主張が,「法は,ホステスの勤務実態が,上記のような
(あるいは,それに近い)形態である場合が多い(あるいは少なくない)
という事実認識を前提として,『計算期間』という用語を『実際に稼働し
た日数』という意味で用いている。」と主張するものであるとすれば,そ
れは,文言解釈の限界を超えるものであって,採用することはできないこ
とは,既に指摘したとおりである。
また,被告は,ホステス等の報酬・料金の性質,必要経費の算定方法,
他の報酬等の基礎控除額の規定との整合性について,司法書士・土地家屋
調査士の報酬・料金,馬主が受ける競馬の賞金,職業拳闘家の報酬,広告
宣伝の賞金のいずれの基礎控除額も,その報酬,料金を支払うべき契約の
個数を単位として定められているところ,ホステス等の報酬も,ホステス
等の1日1日の業務の報酬等の積み重ねなのであり,必要経費もまた1日
1日の業務に対応する経費の積み重ねであって,その報酬等を支払うべき
契約も,ホステス等の報酬等の計算期間の要素となった日数ごとに成立し
ていると認められるから,「当該支払金額の計算期間の日数」を当該支払
金額の計算期間の要素となった日数を意味すると解することが整合的であ
るとする。しかしながら,被告の議論は,ホステスの稼働実態が,日々新
たに締結する契約に基づいて行われていると認められるような場合には通
用するとはいえても(この場合における,「当該支払金額の計算期間の日
数」は,「当該支払金額の計算期間中の稼働日数」の意味であると解され
ることは既に指摘したとおりである。),ホステスの稼働実態が,継続的
契約に基づくものであると認められ,日々新たに締結する契約に基づいて
行われているとは認められないような場合にまで通用するものとはいい難
いことは既に指摘したとおりである。被告が指摘する,司法書士・土地家
屋調査士の報酬・料金等との比較という点も,1個の契約に基づく支払は
1個であるということを根拠付けているのにすぎないのであるから,1個
の契約に基づいて支払われる金額の「計算期間の日数」という用語を解釈
する際の参考になるものであるとはいいがたい。
ウしたがって,「当該支払金額の計算期間の日数」の文理解釈としては,
同一人に対し1回に支払われる金額の計算の基礎となった,一時点から一
時点までの時間的隔たりに含まれる日数の全てをいうと解するのが相当で
ある。
(3)「当該支払金額の計算期間の日数」の論理解釈について
ア前記のとおり,租税法の解釈にあたっては,文理解釈によって規定の意
味内容を明らかにすることが困難な場合には,論理解釈により規定の意味
内容を明らかにすべきであるところ,被告は,「当該支払金額の計算期間
の日数」という文言の字句の意味のみからは,「当該支払金額の計算期間
の全日数」を指しているのか,「当該支払金額の計算期間の出勤日数」を
指しているのか明らかではないとも主張する。しかしながら,既に検討し
たとおり,「期間の日数」とは,特に限定がない場合,一時点から一時点
までの時間的隔たりに含まれる日数の全てを意味するのが通常であると考
えられ,文言の字句の意味のみから,計算期間の全日数を指すのか出勤日
数を指すのかが不明であるとはいいがたい。
イ次に,上記解釈による帰結が明らかに不合理であるといえるかどうかを
検討する。
(ア)前示のとおり,一般に,申告納税制度を原則とする現行所得税法にお
いて源泉徴収制度が採用されたのは,税収の確保,徴税手続の簡便さ,
徴税費の節約といった徴税側の便宜に加え,納税に対する苦痛が比較的
少なくてすむ,確定申告時に多額の納税資金を手当てする必要がなくな
るといった納税者にとって便利な点がないわけではないとの便宜上の理
由と解されている。また,源泉徴収の対象となる収入のうち,基礎控除
制度が設けられているものについては,少額所得の不追求,源泉徴収制
度の導入により負担が課せられる徴収義務者の負担の緩和などがその趣
旨として挙げられている。さらに,ホステス報酬等に対する源泉徴収制
度の導入及び改正を内容とする各税制改正では,主として源泉徴収税額
の還付の手数を省くことがその理由として挙げられている。
以上の事実に照らすと,ホステス報酬等に対する源泉徴収制度も,こ
れら徴税側の便宜(税収の確保,徴税手続の簡便さ,徴税費の節約,還
付に応じる手数の省略),納税者にとっての不都合(納税に対する苦痛,
確定申告時の資金手当,還付請求の手間,少額所得に対する追求)の回
避,徴収義務者の負担の緩和という,源泉徴収制度に関わる各関係者の
利益を総合考慮して定められたものと考えられる。
(イ)この点について,原告は,基礎控除制度の理由としての還付の手数の
省略,少額所得の不追求及び源泉徴収義務者の負担の緩和にのみ着目し
た主張をするが,かかる主張はホステス報酬等に対する源泉徴収制度の
趣旨目的の一部のみを強調するものであり,適切とはいいがたい。
(ウ)他方,被告は,ホステス報酬等の源泉徴収制度の目的を,所得税の還
付手続を省きつつ,納税者の最終的に納付すべき所得税額と源泉徴収税
額をなるべく近似させて,確定申告時に納付する税額をできるだけ減少
させ確実な租税の徴収を図ることと理解した上で,源泉徴収の基礎控除
額には経費的性格があることを強調しているが,この主張もまたホステ
ス報酬等の源泉徴収制度の目的の一面のみを強調したものといわざるを
えない。
a被告は,まず,昭和42年度税制改正時の立法担当者の解説(乙
1)を引用して,基礎控除額に経費的性格があるとするが,上記解説
では,前示のとおり,基礎控除額を設けた理由として,これらの報酬
等のうちには少額のものがあることも挙げており,少額所得に対する
不追求としての面があることも明記している。
被告はまた,昭和42年度税制改正の立法担当課長の講演録(乙1
6)を引いて,馬主が受ける競馬の償金の基礎控除額に経費的性格が
あるとする。しかしながら,同講演録によれば,「競争馬を1頭持っ
ておれば,いまのところ150万∼160万円経費がかかる。それか
ら一方の入着のチャンス,プロバビリティも見て,50∼60万円程
度引いておれば還付をすることもなかろうということで,20%プラ
ス60万円を基礎控除額にしたわけである。」とあって,基礎控除額
が経費そのものでないことは同講演録からも明らかである。他方,同
講演録によれば,ホステス報酬等については,「ホステスにもぴんか
らきりまである。いわゆる課税最低限的なものを設定して,そうして
基礎控除制を作ったわけである。これは1日あたり2千円というのが
基礎控除の考え方である。日給的に払っておれば2千円,7日分とし
て払っておれば1万4千円,こういうものを控除するわけである。」
と説明されているものの,1日分の経費が現実に2000円程度であ
ることを窺わせる説明はない(なお,被告は,上記説明を根拠に,立
法担当者も「当該支払金額の計算期間の日数」とはホステス等の実際
の出勤日数を意味すると考えていたことは明白であるとも主張するが,
上記説明中の「7日分」を,計算期間の全日数が7日である場合に1
回に支払われる金額を指していると解することも格別不合理なものと
はいえないから,上記説明を根拠に,「当該支払金額の計算期間の日
数」の解釈を決することは相当ではない。)。さらに,職業拳闘家に
ついては「5万円という基礎控除で相当多額の報酬をもらう人から源
泉徴収をしておくということである。これもすべて簡素化の見地から,
できるだけ還付を少なくしようという考えた方である。」として,専
ら還付請求の手間の回避及び少額所得に対する不追求を趣旨とするか
のような説明となっている。
そもそも,源泉徴収の対象となる報酬等のうち,例えば弁護士報酬
であれば,事務所維持費や事務員の人件費等,定型的に相当額の経費
を要することが想起されるにもかかわらず,基礎控除方式ではなく二
段階税率方式がとられている。また,基礎控除方式がとられているも
のであっても,その多くは固定された控除額が定められているが,前
述の立法担当者の説明等をみても,これらの固定された控除額が各種
報酬等に対応する経費額を具体的に把握した上で決定された金額であ
ることを裏付ける事情は認められない。
これらの点に鑑みると,経費の存在は基礎控除額を設けた理由の1
つであるとはいえても,それは考慮要素の1つにすぎず,基礎控除額
が金額的に経費と厳密な対応関係にあることが予定されているとは考
え難い。
b次に,源泉徴収制度においては,確定申告時に納付する税額ができ
るだけ減少するように制度が設計されているとする点についてみると,
被告は,その根拠として,二段階税率方式は,作家の印税や映画俳優
の出演料や職業野球選手の報酬等のように高額な報酬を受けている者
については,確定申告によってかなりの税額を納付している実情にあ
ることから導入されたこと(乙1),基礎控除方式の対象とされた報
酬等も,確実な租税の徴収と納税者の便宜を図る源泉徴収制度を構成
する仕組みの一環なのであるから,二段階税率方式の場合と同様に考
えるべきこと,施行令322条は報酬等の種別に応じて基礎控除や算
定方法を個別に定めていることを挙げている。
しかしながら,報酬,料金等による所得は,もともと確定申告時に
正確な税額を算定することが予定されており,実際上も,納税者は独
立の事業主体として複数の支払者から支払を受けることが通例であろ
うから,1人の支払者が支払をする時点で,納税者が確定申告時に納
付すべき税額を予想してそれと過不足のないようにすることはもとも
と困難であって,制度上もそのようなことは期待されていないものと
考えられる。
また,施行令322条においては,報酬の種類に応じて基礎控除や
算定方法を個別に定めているとはいっても,全く控除額がないものも
あるし,あっても定額なものにすぎない以上,源泉徴収は,概算徴収
であることを免れないのであって,源泉徴収税額の算定にあたって個
々の納税者が確定申告時に負担すべきであった税額に近づけるまでの
正確性を追求したものでないことは明らかである。むしろ,報酬,料
金等の源泉徴収制度の多くは,二段階税率方式,基礎控除方式をとわ
ず,源泉徴収義務者において,支払金額さえ確定すれば,他の計算要
素によらずに,源泉徴収税額を自動的に算定できる仕組みとなってい
るとみることができる。これは,源泉徴収義務者の負担の軽減への考
慮がなされているものと考えられるし,徴税側にとっても,確定申告
を受ける段階で正確な税額を確認する必要があることに加えて,源泉
徴収する段階でも,支払金額以外の計算要素を確認する作業の負担を
負うことを避けることができるとみることもできる。
したがって,源泉徴収制度を導入し,基礎控除や算定方法を定める
については,立法論として,確定申告時に納付する税額ができるだけ
減少するような配慮がなされるべきであるとしても,現行制度として
は,徴税者,納税者及び源泉徴収義務者それぞれの便宜にも配慮した
結果,確定申告時に納付する税額が相当額残存することも制度上容認
されているものといわざるをえない。
(エ)そこで,以上のような源泉徴収制度・基礎控除制度の理解を前提に,
(2)で示したような文理解釈が明らかに不合理な結果を帰結するかどうか
を検討するに,被告は,基礎控除制度には,必要経費の控除という側面
や徴税の確保という側面があることを前提として,ホステスの必要経費
額はその実際の稼働日数に応じてその多寡が決まる傾向があるものとい
える上,徴税の確保や納税者間の公平といった観点からしても,同種,
同額の報酬に対しては,同額の源泉徴収がされるべきであるにもかかわ
らず,「計算期間の日数」を本件各期間の全日数であると解すると,①
実際の稼働日数が1日のホステスも,15日のホステスも基礎控除額が
同額となってしまい,また,②出勤日毎に報酬等を支払う場合と,定期
的に報酬等を支払う場合とでは,実際の稼働日数が同じであっても基礎
控除額が異なることとなるのであって,これらの結論は,余りにも不合
理というべきであり,法(その委任を受けた施行令322条)が,その
ような帰結を導く解釈を予定していたものとは到底解することはできな
いと主張する。しかしながら,これらの主張を採用することはできない。
まず,①の点についてみると,基礎控除額に経費的性格があることは
事実であるとしても,それは厳密な計算に基づいて算出されたものでは
なく,むしろ,概算徴収のための計算要素という程度にとどまることは
前説示のとおりなのであるから,基礎控除額が稼働日数に対応して変動
しなければならないという被告の主張の前提そのものに疑問がある。し
かも,ここで問題としているのは,継続的契約に基づいて稼働している
ホステスなのであるから,1支払期のみを捉えれば,稼働日数に1日と
15日といった違いが生ずることはあっても,長期的にはそのような違
いが平準化されることも考えられるのであるから,特定の支払期におけ
る稼働日数の違いを強調することにも疑問が残るところである。また,
少額所得を追求しないという観点からすれば,各支払期の収入が,その
稼働日数にかかわらず一定額に達しないホステスについては源泉徴収を
しないという制度も十分にあり得るのであって,この観点からすれば,
稼働日数1日のホステスと,15日のホステスとで基礎控除額が同じで
あっても,何ら異とするには足りないということになる。更に,源泉徴
収手続の便宜という観点からすると,源泉徴収を行う側にとっても,ま
た,その適否を確認する課税庁の側にとっても,実際の稼働日数を確認
することなく源泉徴収税額を算定できるという意味では,「計算期間の
日数」を本件各期間の全日数と考える方が簡便であることは明らかであ
る。このように,基礎控除制度の趣旨・目的として考えられる様々な要
素を踏まえて検討していくと,文理解釈に基づき,「計算期間の日数」
を本件各期間の全日数と解することにも十分な合理性が認められるもの
というべきである。被告の主張は,極端な事例を挙げて,不合理な結果
が生ずると主張しているものにすぎず,採用することはできない(なお,
被告の挙げる例を,そもそも,不合理な結果とみるべきであるかどうか
も疑問であるし,仮に不合理との評価があり得るとしても,その帰結は,
源泉徴収が行われないというレベルにとどまるのであって,課税そのも
のが否定されるわけではないのであるから,文理解釈の結果を否定しな
ければならないほど重大な問題であるとはいいがたいと考えられること
を付言しておく。)。
また,②の点についても,①と同様の点を指摘できる上,そもそも,
継続的契約に基づいて継続的な稼働形態にあるホステスと,いわば日々
雇用的な稼働形態にあるホステスの取扱いを同一にしなければならない
という前提そのものにも疑問があるのであって,いずれにせよ被告の主
張を採用することはできない。
ウ以上の次第で,施行令322条所定の「当該支払金額の計算期間の日
数」とは,本件でいえば,本件各期間の全日数を指すのが原則であるとい
うべきであるが,前に説示したとおり,ホステスの稼働状況の実態が,継
続的契約に基づいて稼働をしているのではなく,日々新たに締結される契
約に基づいて稼働していると認められる場合には,実際の稼働日数がこれ
に当たるものと解され,被告の主張には,このような趣旨も含まれている
と考えられる。そこで,本件が,上記のような場合に当たるかどうかを検
討してみると,前認定の事実(第3,1,(3)・(4))に証拠(甲40,乙
3,4,乙18の1ないし4)を併せると,①本件各ホステスは,報酬支
払者である原告に応募申込書を提出して採用され,少なくとも形式上は,
いったん採用された後は,原告所属のホステスとして取り扱われ,稼働日
ごとに契約を締結し直すといったことは行われていないこと,②ホステス
は,毎日,原告から出勤の可否を確認され,出勤可能と回答した者のみが
出勤して稼働しており,この意味において,各ホステスには出勤するかど
うかの選択権が与えられているものの,原告側に出勤を求めるホステスを
拒否する自由があることをうかがわせる証拠はなく,ホステスとしては,
当初締結した契約に基づいて,その希望する日に出勤し,稼働することが
できる地位が与えられているものと解されること,③ホステスの報酬額を
算定するに当たっては,報酬支払期間中の同伴出勤の数等が実績として評
価され,加算される仕組みになっており,各期において支払われる報酬は,
単なる日給の積み重ねではなく,支払期間中の実績を全体的に評価するこ
とが予定されているものと解されること,④本件各ホステスの出勤状況を
みると(乙18の1ないし4),出勤日数1日という者がいる一方で,出
勤日数11日,12日というほぼ常勤に近い者も少なからず存在し,各ホ
ステスの各期ごとの出勤状況にも変動があることがうかがわれることなど
の事実が認められ,これらによれば,本件各ホステスは,あくまでも原告
との継続的な契約に基づいて出勤し,稼働しているものであって,原告と
の間で,出勤日毎に新たな契約を締結し直しているような実態にあるとは
認め難い。
したがって,本件各ホステスの勤務実態という観点から被告の主張を採
用することも困難であるというほかはない。
(4)以上の検討結果によると,争点(1)に関して被告の主張を採用することはで
きず,原告の主張が正当であるというべきである。
3争点(2)(本件各ペナルティの控除の可否)について
前示のとおり,本件各ペナルティは,本件各ホステスが原告との間で前日ま
でに出勤する旨を合意したにもかかわらず,欠勤,遅刻等をした場合に課され
るものであり,その法的性質は,上記合意違反を理由とする,債務不履行に基
づく損害賠償と解することができ,そうであれば,本件各ホステス報酬とはも
ともと異なる性質のものである。
また,本件各ホステス報酬の支払に際して「税,厚生費」として控除される
額は,本件各期間における本件各ホステス報酬の額に12パーセントを乗じた
もの,すなわち,(時給×勤務時間数+手当)×0.12の式により算定され
おり,ペナルティの額は考慮されないこと,報酬支払明細書上においても,
「総支給額」としてペナルティ控除前の金額を表示していること(乙13の1
∼4)からみて,原告自身,ペナルティが本件各ホステス報酬の算定要素に当
たらないものとして扱ってきたものと考えられる。
加えて,乙14・15の各1・2によれば,当該計算期間の報酬から控除し
きれなかったペナルティの残額が,次の計算期間の報酬から控除されているこ
とが認められ,残額部分は報酬の発生の有無にかかわらず別個に発生している
ものといえる。したがって,本件各ペナルティは,単なる報酬の算定要素の1
つではなく,債務不履行に基づく損害賠償債務としての実体を有しているもの
といえる。
これらの事実によれば,本件各ペナルティは本件各ホステス報酬の計算要素
には当たらず,「同一人に対し1回に支払われる金額」は,本件各ペナルティ
控除前の金額であると解するのが相当である。
4まとめ
前記第2の2(5),(6),(7)のとおり,本件各納税告知処分及び本件各賦課決
定処分の内容は,①本件各ホステス報酬の額からペナルティに係る金額を控除
した後の金額から,5000円に出勤日数を乗じた金額を控除した後の金額に,
100分の10を乗じた額と,②原告の納付済税額(本件各ホステス報酬の額
からペナルティに係る金額を控除した後の金額から,5000円に本件各期間
の日数を乗じた金額を控除した後の金額に,100分の10を乗じた額)との
差額に当たるところ,原告が納付すべきであった額は,本件各ホステス報酬の
額(ペナルティに係る金額の控除前のもの)から,5000円に本件各期間の
日数を乗じた金額に,100分の10を乗じた額であるから,結局,原告の納
付済税額は,ペナルティに係る金額として控除された額に対する源泉徴収税額
(10パーセント)相当額が不足していたことになる。
そして,甲3によれば,法定納期限ごとのペナルティに係る金額として控除
された額は,別表2の「ペナルティ」に係る金額欄記載のとおりと認められる。
したがって,本件各納税告知処分及び本件各賦課決定処分のうち,別表2記
載の源泉徴収すべき税額及び不納付加算税額を超える部分は,違法である。
5以上によれば,原告の請求について,本件各納税告知処分及び本件各賦課決
定処分のうち別表2記載の源泉徴収すべき税額及び不納付加算税額部分の取消
しを求める部分は理由がないから棄却し,本件各納税告知処分及び本件各賦課
決定処分のうち上記各金額を超える部分は違法であるから取り消すこととし,
訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本
文を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
鶴岡稔彦裁判長裁判官
中山雅之裁判官
進藤壮一郎裁判官

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