弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決及び第一審判決を破毀する。
     本件仮処分申請を却下する。
     訴訟費用のうち申請人株式会社Dと被申請人等との間に生じた分は申請
人株式会社Dの負担とし、申請人E及び同Fと被申請人等との間に生じた分はこれ
を三分しその二を同申請人等の負擔とし、その余を被申請人等の負擔とする。
         理    由
 本件上告理由は末尾添付の別紙記載のとおりである。
 日本国憲法および裁判所法の施行に伴い、裁判所は憲法に特別の定めのある場合
を除いて一切の法律上の争訟を裁判する権限を有することゝなつたので、いわゆる
行政事件は裁判所の所管するところとなり、民事訴訟法の定める規定により審判さ
れるに至つた。したがつて、民事訴訟法に定める仮処分に関する規定もまた原則と
して行政事件に関する訴訟において適用されることゝなつたのである。
 しかしながら、行政事件は、行政処分に基ずいて生ずる権利関係に関する争を内
容とするものであり、その裁判は直接公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが多い
から、行政事件訴訟特例法(以下特例法と略稱する)は、行政事件の訴訟手続に関
する特則を定め、行政庁の処分については、仮処分に関する民事訴訟法の規定はこ
れを適用しないこととし、たゞ本訴の提起があつた場合に一定の条件の下に行政処
分の執行を停止することができることを規定するに止めたのである。(特例法第一
〇条)。そして、特例法は昭和二三年七月一五日から施行されたのであるが(同法
附則第一項)この法律は、この法律施行前に生じた事項にも適用され、ただ民事訴
訟法および昭和二二年法律第七五号によつて生じた効力を妨げないものと規定して
いるのである。(同法附則第二項)さて、本件行政行為禁止仮処分申請事件につい
ては、原審たる東京高等裁判所は昭和二三年六月三〇日に言渡した控訴判決におい
て、申請人Eおよび同Fの申請につき「被控訴人等(被申請人等)は別紙第二目録
及び第四目録の土地の内八反歩の範囲についてはさきに右土地につきなした農地買
収手続を再度続行し又は該農地の売渡手続をしてはならない」との仮処分をして、
同人等の申請の一部を認容した。この判決に対し当事者双方は、これを不服として
当裁判所に上告をして仮処分認容の当否を争つているのである。すなわち本件に於
ては、民事訴訟法が行政事件について仮処分を許容していた時期に仮処分の申請な
らびに仮処分を命じた判決がなされ、更らに該判決に対して上告があり、右申請事
件の繋属中仮処分を許容しない前記特例法が施行されるに至つたのである。そこで、
本件については、前記特例法附則第二項本文が適用されるのか、または同項但書が
適用されるのかが問題となるのである。そもそも、訴訟手続に関する法規が改正施
行された場合においては、国家は裁判所をして新手続にしたがつて訴訟を遂行せし
むる趣旨において法規を改正したのであるから、経過法規に特別の定めのない限り、
その施行当時において裁判所に現に繋属する訴訟事件の手続についても、爾後すべ
て新法の規定するところに従うのが原則であると云わなければならない。前記特例
法附則第二項本文は、特例法がその施行前に生じた事項にも適用されることを明ら
かにした趣旨と解すべきである。ただ、この原則を無制限に適用して新法施行前に
完結終了した訴訟行為について、すでに生じた舊法による効力までも否定すること
は、訴訟経済上適当ではないので、前記特例法附則第二項但書は前記のように民事
訴訟法および昭和二二年法律第七五号によつて生じた効力を妨げない旨を規定した
にすぎないのである。本件は、前記のように、仮処分に関する控訴判決に対して上
告の申立があり、事件がなお裁判所に繋属する間に前記特例法が施行されたのであ
つて、本件について仮処分が許容されるか否かは未解決の問題として上告審におい
て争はれているのであるから、前記特例法附則第二項但書の適用を受ける場合では
なく、同項本文の適用ある場合に当り、もつぱら前記特例法の規定するところに従
わなければならないのである。そして、特例法は前記のように行政庁の処分につい
ては仮処分に関する民事訴訟法の規定を適用しない旨を明かにしているのであるか
ら、本件について仮処分を許容することは法律の禁止するところと云わねばならな
い。されば、原審が本件につき申請人Eおよび同Fの申請の一部を容れて前記のよ
うな仮処分を為し、又第一審が本件申請を理由なしとしてこれを却下したのは、共
に行政事件につき仮処分を禁止する前記特例法の規定に違背することに歸着するの
で当審においては民事訴訟法第四〇八条第二号に従い、原判決及び第一審判決を破
毀して本件仮処分の申請を不適法として却下すべきものとし、訴訟費用の負担につ
いては同法第九六条第八九条第九〇条を適用して主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見によるものである。
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    眞   野       毅
            裁判官    島           保
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛