弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 本件上告理由は末尾添付の上告理由書記載のとおりであつて、これに対する当裁
判所の判断は次のとおりである。
 第一乃至第三点について
 <要旨第一>借家法第一條の二にいわゆる正当な事由は、各場合について、諸般の
事情を斟酌して決すべき事項であつて、同條の例示する自己使用の必要
も、ただそれだけで当然解約の事由となるのではなくしてやはりさまざまの事情、
特にその時その場所における住宅難の程度によつて制約せられることは同條の立法
趣旨によつて明かである。そうしてみると上告人が被上告人に対し解約の申入をす
るに至るまでの経緯や、その動機目的特に上告人が本件家屋の棟続きであつて、同
じく上告人の所有である六戸の貸家中一戸が空家となつたのでこれを従兄のAに貸
與した事情が所論のようであつて、当時上告人はまだ疏開先の家主から立退を求め
られておらずかたがた被上告人に対しても本件家屋の明渡を交渉する運びになつて
いなかつたとしても、原審の確定した上告人の自己使用の必要と、被上告人の住居
の安全とを双方の地位境遇その他の事情に照して、比べ合わせると全く前例のない
生活難住宅難の今日、もし被上告人において本件家屋を失うにおいては、直ちに住
居生存の危機に際会するおそれがあるのに上告人は本件家屋がなくても別に住居生
存の手段を欠かないことを看取できるから、上告人の自己使用の必要さではたやす
く本件賃貸借を解除するに足る事由とはなし難い。従つて原判決には法律判断を誤
つた違法もなくその他これを破棄したければならない違法もない。
 論旨は失当でおる。
 第四点について
 被上告人が昭和二十一年十二月頃本件家屋の近くにバラツク四戸の建築を始めた
が後これを他に売却したりとの所論の事実は上告人が原審において主張しなかつた
ところである。だから所論事実のあることを前提として原判決が所論事情を考慮に
入れなかつたことを以て判断を遺脱した違法があるとする論旨は採用できない。
 第五点について
 <要旨第二>賃借人が賃貸人の承諾を得ないで賃借物を他人に転貸したときは賃貸
人は契約を解除することができることは民法第六一二條の定めるところ
であるが、その解除権の行使も同法第一條によつて信義誠実の原則に従わなければ
ならないから、戦後の特殊な社会状態においては解除権の行使が制限される場合も
ある。
 原判決の確定したところによると、被上告人は終戦後日もまだ浅い昭和二十年頃
本件家屋の内三室をそれぞれB外三名に間貸をし、Bを除く三名から毎月各十五円
の賃料を受け取つているが、被上告人が同人等に間貸をするに至つたのは営利の目
的に出たものでなく、当時極度の住宅不足に基く社会不安打開の一助として戦災者
を非戦災家屋に収容することの必要が特に強調されていたところから、被上告人は
その家族数と間数との振合から若干名の戦災者をその住居に収容することを非戦災
家屋の居住者である自己の義務と考え、かねて知合である右四名の戦災者の懇請に
基き間貸をするに至つたものであり、同人等は單に部屋の使用を許されているに止
まり、これを造作模様替等を行つて家主である上告人に損害を被らせたような形跡
はないというのである。神戸市内では多数の家屋が戦災にあつたため終戦後極端な
住宅不足を來し現在家屋の極度の利用を計らなければならない情勢にあることは顯
著な事実であり、住宅緊急措置令第一三條ノ三、第一三條ノ四において都道府縣知
事は余裕住宅の所有者又は占有者に対しその住宅の一部をその指定する戦災者等に
貸し付けることを勧奨し更に貸付を命令することができることを規定したことをも
考えると、前記のような事情の下においては、たとえ被上告人が本件家屋の一部を
他に転貸することについて上告人の承諾を得ていなくても、民法第六一二條によつ
て上告人が解除権を行使することは、信義誠実の原則にそむくものとして同法第一
條によつて許されないものといわなければならない。前記のような事情の下におい
てなされた転貸については、その直後であつても賃貸人はその承諾を得なかつたこ
とを理由として賃貸借を解除することはできないものと解すべきであつて、原判決
において転貸後一年有半を経過した後に提起された本訴においてこれを理由として
本件賃貸借契約の解除をするのは解除権の濫用であると説明しているのは当を得て
いないけれども、結局解除権の行使を認めない点において相当に帰する。賃貸人の
承諾を得ないで今日まで転貸を継続しているのは民法第六一二條の義務違反である
という所論は、住宅不足の状態は今なお解消されていないから、採用できない。そ
の他の所論が失当であることも前記説明に照して明らかである。)論旨援用の大審
院判例(但し大正十一年十二月二十四日とあるのは大正八年十一月二十四日の誤記
と認める。)は通常の場合における民法第六一二條の解釈についてなされたもので
あつて、本件のように戦後の特殊な社会状態において前に説明したような特別の事
情のある場合に解除権の行使が信義誠実の原則によつて制限されるとする事案には
適切ではない。論旨は理由がない。
 第六点について
 解約の申入について正当な事由がないと認められた場合、その限度において所有
権の行使の制限せられるのけやむを得ない。
 その他の所論については既に説明したところで明白である。論旨は採用しない。
 そこで民事訴訟法第三九六條第三八西條第九五條第八九條を適用し、主文のとお
り判決する。
 (裁判長判事 石神武藏 判事 大島京一郎 判事 熊野啓五郎)

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