弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件各上告を棄却する。
理由
1検察官の事件受理申立て理由について
検察官の所論は,事件受理申立理由書記載のとおりであるが,要するに,原判決
が第1審判決判示第3の事実に代えて認定した罪となるべき事実(以下「本件」と
いう。)について,覚せい剤取締法41条の輸入罪及び平成17年法律第22号に
よる改正前の関税法109条1項,3項の禁制品輸入罪(以下「本件各輸入罪」と
いう。)の各実行の着手を認めず,被告人らの行為がいずれの犯罪についても予備
にとどまると判断した原判決は,本件各輸入罪の実行の着手に関する法令の解釈適
用を誤ったものであるから,原判決を破棄して相当の裁判を求める,というのであ
る。
そこで検討する。
(1)原判決の認定及び記録によれば,本件の事実関係は,以下のとおりであ
る。
ア被告人らは,北朝鮮において覚せい剤を密輸船に積み込んだ上,本邦近海ま
で航行させ,同船から海上に投下した覚せい剤を小型船舶で回収して本邦に陸揚げ
するという方法で覚せい剤を輸入することを計画し,平成14年6月及び同年10
月の2回にわたり,原判示美保関灯台から北北東約25kmの日本海海上において覚
せい剤を投下してこれを回収,陸揚げし,覚せい剤を輸入していた。
イ被告人らは,再び上記方法で覚せい剤を輸入することを企て,同年11月2
5日,覚せい剤を積み込んだ密輸船を北朝鮮から出港させ,一方で,日本側の回収
担当者において,同月26日から同月28日までの間に陸揚げを実行するよう準備
した。
ウ上記密輸船は,同月27日,島根県沖に到達したが,同日は荒天で風波が激
しかったことから,被告人らは,日本側の回収担当者と密輸船側の関係者との間で
連絡を取り,覚せい剤の投下地点を,当初予定していた前同様の日本海海上から,
より陸地に近い内海の美保関灯台から南西約2.7kmの美保湾内海上に変更し,遅
くとも同日午前7時ころ,1個約30kgの覚せい剤の包み8個を,ロープでつな
ぎ,目印のブイを付けた上,簡単に流されないよう重しを付けるなどして,密輸船
から海上に投下した。
エ回収担当者は,投下地点等の連絡を受けたものの,悪天候のため,GPS
(衛星航法装置)を備えた回収のための小型船舶を原判示境港中野岸壁から出港さ
せることができず,同日午後3時過ぎころ,いったんは出港したものの,同岸壁と
投下地点との中間辺りまでしかたどり着けず,覚せい剤を発見できないまま,同岸
壁に引き返し,結局,同日,再度出港することはできなかった。
オ密輸船から投下された覚せい剤8個のうちの4個は,遅くとも翌28日午前
5時30分ころまでに,上記投下地点から20km程度東方に位置する美保湾東岸に
漂着し,さらに,その余のうち3個が,同日午前11時ころまでに,同海岸に漂着
し,これらすべてが,そのころ,通行人に発見されて警察に押収された。
カ一方,回収担当者は,そのことを知らないまま,同日午後,覚せい剤を回収
するため,再度,上記境港中野岸壁から小型船舶で出港したが,海上保安庁の船舶
がしょう戒するなどしていたことから,覚せい剤の発見,回収を断念して港に戻っ
た。その後,被告人らは,同日中に,本件覚せい剤の一部が上記のとおり海岸に漂
着して警察に発見されたことを知って,最終的に犯行を断念した。
キ同年12月27日,前記覚せい剤の包みのうちの最後の1個が,美保湾東岸
に漂着しているのが通行人によって発見され,警察に押収された。
(2)以上の事実関係に照らせば,本件においては,回収担当者が覚せい剤をそ
の実力的支配の下に置いていないばかりか,その可能性にも乏しく,覚せい剤が陸
揚げされる客観的な危険性が発生したとはいえないから,本件各輸入罪の実行の着
手があったものとは解されない。これと同旨の原判断は相当であり,所論は理由が
ない。
2被告人の上告趣意について
(省略)
3よって,刑訴法408条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の
意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官那須弘平裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男裁判官
田原睦夫裁判官近藤崇晴)

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