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平成20年5月28日宣告
平成20年(わ)第251号詐欺被告事件
主文
被告人Aを懲役2年に,被告人Bを懲役1年6月に処する。
被告人Aに対し,未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
この裁判確定の日から,被告人Aに対し4年間,被告人Bに対し3年間,そ
れぞれその刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人Aは暴力団C組組員,被告人Bは被告人Aと親交を有する不動産仲介業者で
あるが,被告人両名は,上記C組組員であるDと共謀の上,さいたま市a区bc丁目
d番e号所在のE所有に係る木造3階建居宅の賃借権を不正に取得しようと企て,平
成18年3月下旬ころ,同市f区gh丁目i番j−k号株式会社FG店において,真
実は,被告人Aらは暴力団組員であり,かつ,そのころ上記C組傘下の暴力団組織を
結成する予定で,賃借した居宅を同組織の活動拠点として使用する意図であるのに,
それらの情を秘し,同店従業員Hに対して虚偽の事実を申し向け,あたかも正業を営
む株式会社Iが同居宅を賃借し,同社社員である上記Dが単身居住するかのように偽
り,上記H及び上記Eをして暴力団関係者が上記居宅を使用することはないものなど
と誤信させ,よって,同月29日,上記FG店において,上記Eらをして上記居宅を
家賃月額12万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結させた上,そのころ,同居宅の引
渡しを受けて賃借権を不正に取得し,もって人を欺いて財産上不法の利益を得たもの
である。
(証拠の標目)
省略
(補足説明)
1両弁護人は,詐欺罪の成立自体は争わないものの,被告人Aらは本件居宅を住居
として使用する目的で賃借したのであり,これを暴力団組織の活動拠点として使用す
る意図はなかった旨主張する。
2そこで検討すると,関係証拠によれば,次の事実が認められる(なお,被告人A
の弁護人は,関係証拠中,Jの検察官調書の信用性を争っているが,被告人Aの舎弟
分であるJが被告人Aに不利な虚偽供述をすることは考えにくく,その供述内容に不
自然,不合理な点も見当たらないから,Jの供述は十分信用できる。。)
()暴力団C組組員である被告人Aは,かねてより不動産仲介業者の被告人Bと1
親交があり,平成16年2月ころさいたま市内のマンションを賃借した際,被告人B
に連帯保証人になってもらったこともあった。なお,同マンションには,被告人Aの
ほか,その舎弟分であるC組組員のJやDらが居住しており,被告人Bもそこを訪れ
たことがあった。
()平成18年2月ころ,被告人Aは,C組組長から組名乗りを許され,Kを立2
ち上げた。
()その後,被告人Aは,前記マンションを退去して新たに物件を賃借しようと3
考えたが,暴力団組員であることを秘匿しなければ,いわゆる暴力団排除条項により
新たな物件の賃借が不可能であると思い,同年3月20日ころ,暴力団に属していな
い被告人Bに対して物件探しを依頼し,併せてDに対しても被告人Bとともに物件を
探しに行くよう指示した。
()被告人Bは,被告人Aの依頼を受け,同月下旬ころ,Dとともに,株式会社4
FG店を訪れ,同店従業員らに対し,被告人Aらが暴力団組員であることを秘したま
ま,あたかも正業を営む株式会社Iが本件居宅を賃借し,同社社員であるDが単身居
住するかのように偽って本件居宅の賃借方を申し込み,同店従業員らをしてその旨誤
信させ,契約締結を経て,被告人Aらを入居させるに至った。
()同年4月当時,本件居宅には被告人A及びDが居住しており,その後,Jや5
K構成員のLらも居住するようになった。
()本件居宅は,木造3階建ての一軒家であり,平成20年2月当時,玄関横の6
郵便ポストには「DA」の表示がされ,1階応接室にはC組組長及びM会会長の写
真,N組の代紋が飾られ,2階台所には応接セットが置かれていた。被告人Aは,3
階の洋間を自室として使用していた。
()本件居宅では,D及びK構成員のOの2名が交替で1階応接室の掃除や電話7
番を担当していた。
3以上のような本件居宅内の様子,被告人Aらの居住実態等に照らすと,本件居宅
は,被告人Aらの住居として使用されていただけでなく,Kの活動拠点としての実質
を備えていたものと認められる。そして,被告人Aらにおいて本件居宅を賃借した時
期がC組組長から組名乗りを許され,Kを立ち上げた直後であることや,その後の本
件居宅の使用状況等からすると,被告人Aは,本件居宅を賃借するに当たり,これを
住居として使用するにとどまらず,Kの活動拠点として使用する意図をも併有してい
たものとみるのが合理的である。
また,被告人Bは,被告人Aと親交が深く,被告人Aらが前住居を賃借する際に連
帯保証人として名を連ね,同所を訪れたこともあったから,前記2()のような被告1
人Aらの居住実態をある程度把握していたものと解されるところ,本件において,被
告人Aからの依頼を受け,本件居宅に暴力団組員である被告人A及びその配下の者で
あるDが居住することになることを認識しつつ,その賃貸借契約締結に向けて尽力し
ている。そして,前住居における被告人Aらの居住実態や本件居宅の構造・間取り等
からすると,被告人Aらの下に暴力団関係者が出入りするなどの状況は十分想定され
るところであり,上記諸事情の下では,被告人Bにおいてもこの点を認識し得なかっ
たとは考え難い。こうした事情を総合すると,被告人Bは,少なくとも未必的には上
記認定のような被告人Aの意図を認識していたものと推認される。
以上のとおり,被告人Aは,本件居宅を自分たちの暴力団組織の活動拠点として使
用する意図を有しており,被告人Bにおいても,その意図を未必的にせよ認識してい
,。,たものと認められるからこれを否定する被告人両名の供述は信用できないそして
被告人両名が共謀の上,そのような情を秘し,虚偽の事実を申し向けて本件居宅の賃
借方を申し込んだ点が欺罔行為に当たることは明らかである。
両弁護人の主張は採用できない。
(量刑の理由)
本件は,暴力団組員である被告人A及び不動産仲介業者である被告人Bが,ほか1
名と共謀の上,不動産賃貸借契約の申込みに当たり,虚偽の事実を申し向けるなどし
て賃借権を詐取したという事案である。
被告人Aは,前住居を退去して新たに物件を賃借するに当たり,暴力団組員である
ことや組織の活動拠点として使用することなどを秘匿しなければ,いわゆる暴力団排
除条項により賃借することが不可能であると考え,かねてより親交の深かった被告人
Bに対して物件探しを依頼し,被告人Bにおいて,被告人Aの舎弟分である共犯者と
ともに,不動産会社を訪れ,被告人Aらが暴力団組員であることなどを秘したまま,
あたかも正業を営む会社が本件居宅を賃借して同社社員である共犯者が単身居住する
かのように偽り,本件居宅の賃借方を申し込んだもので,計画的かつ巧妙・悪質な犯
行であり,厳しい非難に値する。これにより,家賃月額12万円の賃借権を詐取し,
以後,約2年間にわたり,本件居宅を暴力団組織の活動拠点として使用していた結果
も大きい。本件居宅の所有者や付近住民らに与えた不安等も軽視できない。被告人A
は,本件の主犯として犯行全体を差配している上,多数の前科を有し,暴力団への帰
属意識も強く,反社会的態度が顕著である。被告人Bは,長年にわたって被告人Aと
親交があり,本件において,被告人Aの依頼を安易に引き受け,実行行為そのものを
担当するなど,欠くことのできない重要な役割を果たしている。
このような事情に照らすと,被告人両名の刑責はいずれも重い。
しかし,他方,被告人両名が犯罪の成立自体は認めて反省の弁を述べていること,
本件居宅の賃料の滞納はなく,今後速やかに退去する予定であること,被告人Bにつ
いては,古い罰金前科以外に前科がないことなど,被告人両名にとって酌むべき事情
もある。
そこで,これら諸般の情状を総合考慮し,被告人両名に対しては,いずれもその刑
の執行を猶予するのが相当と判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑・被告人Aにつき懲役2年,被告人Bにつき懲役1年6月)
平成20年5月28日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判官辛島靖崇

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