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平成15年(ネ)第1208号 不正競争行為差止等請求控訴事件
平成15年7月10日判決言渡,平成15年5月13日口頭弁論終結
原審・静岡地方裁判所沼津支部平成12年(ワ)第371号
     判    決
 控訴人(被告)  株式会社メーソン
 訴訟代理人弁護士  堀越靖司,田中恒朗
 被控訴人(原告)  タカムラ総業株式会社
 訴訟代理人弁護士  松岡宏,森本耕太郎
     主    文
 1 本件控訴に基づき,原判決主文第2項を次のとおり変更する。
 「2 被告は,別紙(本控訴審判決別紙広告)記載のとおりの謝罪広告を全国の
建通新聞及び日本経済新聞の全国版に12ポイントの活字で1回掲載せよ。」
 2 その余の本件控訴を棄却する。
 3 訴訟費用は,第1,2審とも,4分の1を被控訴人の負担とし,その余を控
訴人の負担とする。
     事実及び理由
第1 控訴人の求めた裁判
 控訴人は、「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却す
る。」との判決を求めた。
第2 事案の概要
 1 控訴人は,平成11年9月ころから,日本道路公団やゼネコンなどに,原判
決4頁以下の(5)に記載の本件文書を送付した。本件文書には,擁壁工事に関するP
α工法技術に不備があり,放置すると重大な事態を招くことが予想されることなど
が記載されているが,ここにおける「Pα工法」とは原告製品の商品名である「プ
ロテロックアルファー」の略称である。被控訴人は,本件文書には事実に反する部
分があり,本件文書を工事関係者に配布した行為は不正競争防止法2条1項14号
所定の行為に該当するとして,同法所定の差止め等を請求したのに対し,原判決
は,謝罪広告の内容を一部修正し,かつ,損害賠償請求の一部を棄却したほかは被
控訴人の請求を認容した。
 2 事案の概要は、原判決事実及び理由欄の「第2 事案の概要」に示されてい
るとおりである。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,控訴人がした本件文書の摘示に係る事実(①原告製品の工法が
張り石工事(JASS.9)の規準違反とする点,②カチオン電着塗装性能に関し
て性能の詐称行為とする点,及び③将来において重大な事態やPL法及び瑕疵担保
責任の訴追の可能性を示唆する点)が虚偽であり,その事実が原告製品及び工法を
対象とするものであって,その事実に関する告知又は流布を差し止める必要があ
り,また,控訴人は被控訴人に対し,この事実を道路公団等に配布して被控訴人の
信用を毀損したことによる損害賠償として,500万円を支払うべきものであり,
信用回復措置として謝罪広告の掲載を命ずるべきものと判断する。
 その前提となる事実認定及び判断は,原判決16頁以下の「第3 争点に対する
判断」に示されているとおりである。なお,掲載を命ずべき謝罪広告は,引用に係
る事実認定及び判断によれば,その表現について本判決別紙のとおりに一部変更す
るのが相当である(ただし,縦書きの場合は,算用数字は漢数字に改められ
る。)。
 2 控訴人が当審において主張するところにかんがみ,以下のとおり補足して判
断する。
 (1) 控訴人は,原告製品あるいは日本ハーモス株式会社の製品(被控訴人がその
技術を承継した製品)による工法結果には,結合金具の腐蝕による落下例があるな
どと主張するが,この事実を認めるべき証拠はない。
 乙32の1,2は日本建築学会編著「建築工事標準仕様書・同解説9 張り石工
事」(第3版,1996年)であり,甲6の1~4はその抜粋であるが,そこに
は,原判決20頁のキの前段の事実,すなわち同仕様書における石先付けプレキャ
ストコンクリート工法の意義,同工法におけるシアコネクター及びかすがいの材質
をステンレスとすることの規準が記載されている。控訴人がその主張において前提
とするところは,「石先付け工法」製品の結合金具の品質をステンレスと定めたJ
ASS.9の基準を遵守することが,その業者において自然的義務であるというも
のである。しかしながら,原告製品の工法が石先付け工法と異なるものであること
は,原判決25頁1~16行において認定されているとおりである(控訴人もこの
認定自体を当審において争う理由を明確に述べているものではない。)。
 (2) 控訴人は,本件文書においては,原告製品及び原告工法にはJASS.9の
直接適用があるとの指摘はないなどとも主張する。しかしながら,本件文書には
「プロテロック工法の工事仕様書(JASS.9)違反と製品性能の詐称行為」と
題して,擬石結合用の金具材質などがJASS.9の規準に違反することなどの記
載があるから,控訴人のこの主張は理由がない。
 (3) 控訴人は,JASS.9の規準が原告製品及び原告工法の施工者として遵守
すべき原則原理であると信じて,本件文書による警告に及んだと主張する。しかし
ながら,原告製品及び原告工法にJASS.9の規準が適用されるものでないこと
は前記のとおりである。そして,原判決31頁の4(1)の項で認定されているよう
に,擁壁工事に係る製品を製造販売している控訴人としては,原告製品及び原告工
法にJASS.9の規準が適用されないことを知りつつ,本件文書の配布をしたも
のであるものと認めることができる。控訴人の上記主張は,前提を欠くものとして
理由がない。
 (4) 控訴人は,原告製品の金網及び形鋼がステンレスでないと,長期間の強度確
保がなく,擬石パネルの剥離・落下の危険性があるなどと主張するが,本件文書の
摘示内容に,原告製品及び原告工法にJASS.9の規準が適用され,あるいは工
事規準以前の技術的常識を逸脱していることを前提として,これに違反することに
より製造物責任や瑕疵担保責任が発生する可能性があるというものであるから,そ
こに不正競争防止法2条1項14号所定の虚偽の事実があったか否かの認定判断に
際しては,控訴人主張に係るこれらの点によってその有無が左右されるものではな
い。また,控訴人主張の点に係るこれらの事実を認めるべき証拠もない。
第4 結論
 以上のとおりであって、原判決主文第1項のとおり差止請求を認容し,第3項の
とおり損害賠償請求を認容した原判決は相当であって,この部分についての本件控
訴は理由がない。主文第2項の謝罪広告掲載を命じた原判決部分を,本判決主文第
2項のとおり一部変更することとする。
   東京高等裁判所第18民事部
       裁判長裁判官塚  原  朋  一
          裁判官塩  月  秀  平
裁判官古  城  春  実
(平成15年(ネ)第1208号判決 別紙) 
      広 告
 当社は、平成11年9月ころから、多数の土木業者に対し、貴社の製造販売する
残存型枠(商品名:プロテロックメーク)及びその工法が日本建築学会制定の建築
工事標準仕様書にある張り石工事工法の規準違反であるとか、工事規準以前の技術
的常識を逸脱しているとし、このため製造物責任や瑕疵担保責任に問われる可能性
があるなどと記述した書面を配布又は送付しましたが、これは当社の誤った認識に
よるものでした。
 当社は、ここに前記書面による記述を撤回するとともに、貴社の信用を害したこ
とを謝罪します。
          平成  年  月  日
             東京都千代田区
               株式会社メーソン
                 代表取締役 A
静岡県御殿場市 
  タカムラ総業株式会社 殿

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