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裁判例


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主文
1 第1事件原告らの第1事件の請求をいずれも棄却する。
2 原告A,原告B及び原告Cの第2事件の訴えのうち,①平成11年4月1日か
ら平成14年3月31日までの別紙物件目録3記載の土地の賃料等に関するFと三
重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の
被告三重県に対する不当利得返還請求にかかる訴え,②津市の被告三重県に対する
別紙物件目録2記載の土地の使用料相当の不当利得返還請求にかかる訴え,③被告
津市長が平成11年4月1日から平成14年3月31日までの別紙物件目録3記載
の土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に
対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求を怠っている
ことの違法確認の訴え,④被告津市長が被告三重県に対し別紙物件目録2記載の土
地の使用料相当の不当利得返還請求を怠っていることの違法確認の訴え,⑤別紙物
件目録2記載の土地に関する行政財産の目的外使用許可の無効確認の訴えを却下す
る。
3 原告Dの第2事件の訴えのうち,①平成12年4月1日から平成14年3月3
1日までの別紙物件目録3記載の土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法
行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する
不当利得返還請求にかかる訴え,②被告津市長が平成12年4月1日から平成14
年3月31日までの別紙物件目録3記載の土地の賃料等に関するFと三重県知事の
共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県
に対する不当利得返還請求を怠っていることの違法確認の訴え,③別紙物件目録2
記載の土地に関する行政財産の目的外使用許可の無効確認の訴えを却下する。
4 第2事件原告らの第2事件のその余の請求をいずれも棄却する。
5 原告Dの第3事件の訴えのうち,①別紙物件目録2記載の土地の使用料相当の
不当利得返還請求,②別紙物件目録3記載の土地の賃料等に関するFと三重県知事
の共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重
県に対する不当利得返還請求にかかる訴えを却下する。
6 原告Dの第3事件のその余の請求及び原告Eの第3事件の請求をいずれも棄却
する。
7 訴訟費用及び参加費用は,第1ないし第3事件を通じて,原告らの負担とす
る。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 第1事件
(1) 請求の趣旨
ア 原告ら平成15年2月24日付け準備書面による訴えの変更前
(ア) 被告三重県は,津市に対し,8903万9055円を支払え。
(イ) 被告津市長は,別紙物件目録1記載の各土地について,賃貸人に対し平成11
年4月1日以降の賃料を支払ってはならない。
(ウ) 訴訟費用は被告らの負担とする。
イ 原告ら平成15年2月24日付け準備書面による訴えの変更後
(ア) 被告三重県は,津市に対し,8908万0663円を支払え。
(イ) 被告津市長が,被告三重県に対し1930万0655円の請求を怠っているこ
とは,違法であることを確認する。
(ウ) 上記ア(ウ)に同じ。
(2) 本案前の被告津市長の答弁
ア 第1事件原告らの上記(1)イ(イ)の訴えを却下する。
イ 訴訟費用は第1事件原告らの負担とする。
(3) 請求の趣旨に対する被告らの答弁
ア 第1事件原告らの請求をいずれも棄却する。
イ 上記(2)イに同じ。
2 第2事件
(1) 請求の趣旨
ア 原告ら平成15年2月24日付け準備書面による訴えの変更前
(ア)a 被告三重県は,津市に対し,平成9年10月1日から別紙物件目録2記載の
土地の明渡済みまで1日当たり1万7562円の割合による金員を支払え。
b 被告三重県は,津市に対し,平成9年10月1日から別紙物件目録3記載の土
地の明渡済みまで1日当たり1万0483円の割合による金員を支払え。
(イ)a 被告津市長が,被告三重県に対し平成9年10月1日から別紙物件目録2記
載の土地の明渡済みまで1日当たり1万7562円の割合による金員の請求を怠っ
ていることは,違法であることを確認する。
b 被告津市長が,被告三重県に対し平成9年10月1日から別紙物件目録3記載
の土地の明渡済みまで1日当たり9565円の割合による金員の請求を怠っている
ことは,違法であることを確認する。
c 被告津市長が,被告三重県に対して,平成10年3月25日付け及び同年7月
23日付けでなした別紙物件目録2記載の各土地に関する行政財産の目的外使用許
可処分は,無効であることを確認する。
(ウ) 訴訟費用は被告らの負担とする。
イ 原告ら平成15年2月24日付け準備書面による訴えの変更後
(ア)a 被告三重県は,津市に対し,4269万3222円を支払え。
b 被告三重県は,津市に対し,1974万6669円を支払え。
(イ)a 被告津市長が,被告三重県に対し4269万3222円の請求を怠っている
ことは,違法であることを確認する。
b 被告津市長が,被告三重県に対し1974万6669円の請求を怠っているこ
とは,違法であることを確認する。
c 上記ア(イ)cに同じ。
(ウ) 上記ア(ウ)に同じ。
(2) 本案前の被告津市長の答弁
ア 被告津市長に対する訴えを却下する。
イ 訴訟費用は第2事件原告らの負担とする。
(3) 請求の趣旨に対する被告らの答弁
ア 第2事件原告らの請求をいずれも棄却する。
イ 上記(2)イに同じ。
3 第3事件
(1) 請求の趣旨
ア 原告ら平成15年2月24日付け準備書面による訴えの変更前
(ア) 被告三重県は,津市に対し,1647万0814円を支払え。
(イ) 訴訟費用は,被告三重県の負担とする。
イ 原告ら平成15年2月24日付け準備書面による訴えの変更後
(ア) 被告三重県は,津市に対し,1675万6457円を支払え。
(イ) 上記ア(イ)に同じ。
(2) 請求の趣旨に対する被告三重県の答弁
ア 第3事件原告らの請求を棄却する。
イ 訴訟費用は第3事件原告らの負担とする。
第2 当事者の主張
(第1事件について)
1 請求原因
(1) 第1事件原告らは津市の住民である。
(2) 第4駐車場に関して
ア(ア) 津市は,平成9年9月19日,G興業株式会社との間で,請負代金を735
0万円とする別紙物件目録1記載の各土地(以下「本件1土地」という。)の駐車
場造成工事の請負契約を締結した。
(イ) 津市は,平成10年2月16日,G興業との間で,上記(ア)の請負契約の工事
につき,軟弱地盤対策として透水管工を増工することにし,請負代金を566万3
283円増額する旨の契約を締結した(以下,上記(ア)の契約と併せて「本件請負契
約」といい,この代金を「本件請負代金」という。)。
(ウ) 津市は,本件請負代金として,平成9年9月29日に2200万円,平成10
年2月27日に5716万3283円(合計7916万3283円)を支出した。
イ(ア) 津市は,平成9年10月1日,本件1土地につき,各所有者との間で,上津
部田城址その他文化施設にかかる駐車場用地(第4駐車場)として,津市が賃料を
支払うとともに,固定資産税を負担するとの内容の賃貸借契約を締結した。
この契約は,現在まで更新されている。
(イ) 津市は,上記賃貸借契約に基づき,本件1土地の賃貸人らに対して,別紙賃料
等一覧表記載のとおり,平成10年3月19日から平成14年3月28日まで,平
成9年度分から平成14年度分までの賃料及び固定資産税相当額(以下「賃料等」
という。)を支払った。
(3) 上記の本件1土地の賃貸借契約や本件請負契約の締結は,当初から,津市の具
体的な行政目的のためになされたものではなく,被告三重県に三重県総合文化セン
ター(以下「文化センター」という。)の駐車場用地として使用させるためのもの
で,津市が被告三重県の負担すべき金員を肩代わりしたものである。
(4)ア 地方財政法(以下「地財法」という。)は,4条の5,9条,28条の2の
規定の趣旨からして,都道府県の行う事業に対する市町村の負担について,一般的
に禁止していると解される。地財法27条は,この一般的禁止を「土木その他の建
設事業等」に限って負担の限度を定めつつ解除しているが,これには都道府県の施
設の維持に要する経常経費等は含まれない。
そして,平成11年法律第87号による改正前の地方自治法(以下「旧地自法」と
いう。)2条6項は,都道府県が市町村を包括する広域の普通地方公共団体である
ことにかんがみ,その処理する事務を広域的にわたるもの,一般の市町村が処理す
ることが不適当であると認められる程度の規模のものとしている。そして,文化セ
ンターの設置・管理の事務は,旧地自法2条6項2号,4号に該当し,被告三重県
の固有事務である。文化センターは,被告三重県の設けた公の施設であり,地方自
治法(以下「地自法」という。)244条1項,244条の2第1項に基づくもの
である。このことは,地自法244条の2第1項によれば,公の施設の設置及び管
理に関する事項は条例で定めなければならないとされているところ,文化センター
の設置及び管理については三重県総合文化センター条例が制定されていることから
も明らかである。
しかるに,被告津市長によってなされた本件1土地の賃貸借契約や本件請負契約の
締結は,当初から,津市の具体的な行政目的のためになされたものではなく,被告
三重県に文化センターの駐車場用地として使用させるためのものであるから,津市
が賃料等や本件請負代金を支払うことは,地方公共団体の経費の負担区分を乱す行
為を禁じた地財法28条の2に違反するものというべきである(最高裁平成8年4
月26日第2小法廷判決・判例時報1566号33頁)。
イ また,上記支出は,他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を禁じる
地財法2条,割当的寄附金の強制的徴収等を禁止する地財法4条の5に違反してお
り,国の事務に対する経費負担を禁止する地方財政再建促進特別措置法24条2項
の趣旨にも反している(東京地裁昭和55年6月10日判決参照)。
(5)ア 津市が上記の違法な肩代わり支出をしたことは被告津市長と三重県知事との
共謀によりなされたものであるから,被告三重県は津市に対し民法719条の共同
不法行為に基づく責任を負う。
イ そうでないとしても,津市が上記の違法な肩代わり支出をしたことにより,被
告三重県は,上記賃料等及び本件請負代金に相当する不法な利益を受けたから,被
告三重県は津市に対し上記賃料等及び本件請負代金に相当する金員の不当利得返還
債務を負う。
ウ また,被告津市長が,本件1土地について,賃貸人に対し平成11年4月1日
以降の賃料を支払うことは違法である。
(6) しかるに,被告津市長は,被告三重県に対し,上記の共同不法行為による損害
賠償又は不当利得に基づく返還請求を怠っているばかりか,平成11年4月1日以
降の賃料を支払おうとしている。
(7)ア 第1事件原告らは,平成10年7月7日,津市監査委員に対し,上記請負代
金の支出及び上記賃料の支出のうち平成9年10月1日から平成11年3月31日
までの分につき,駐車場の設置は不要不急のものであるし,本来被告三重県が負担
すべき金員であり地財法28条の2に違反するとして,上記公金支出の違法確認,
F及び被告三重県に対して同額の請求及び賃料の支出の差止めを求める監査請求を
行った。
イ 津市監査委員は,平成10年9月3日,上記監査請求を棄却した。
(8)ア 訴えの変更前の結論
よって,第1事件原告らは,被告三重県に対し,平成14年法律第4号による改正
前の地方自治法(以下「前地自法」という。)242条の2第1項4号に基づき,
津市に代位して8903万9055円(本件1土地に関する平成9年度分と平成1
0年度分の賃料及び本件請負代金の合計)の支払を,被告津市長に対し,地自法2
42条の2第1項1号に基づき,平成11年4月1日以降の賃料の支払の差止めを
求める。
イ 訴えの変更後の結論
よって,第1事件原告らは,被告三重県に対し,前地自法242条の2第1項4号
に基づき,津市に代位して8908万0663円(本件1土地に関する平成9年度
分と平成10年度分の賃料等及び本件請負代金の合計)の支払を,被告津市長に対
し,地自法242条の2第1項3号に基づき,被告三重県に対して1930万06
55円(本件1土地に関する平成11年度分から平成13年度分までの賃料等の合
計)を請求しないことが違法であることの確認を求める。
2 被告津市長の本案前の主張
(1)ア 前地自法242条の2第6項は行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)
43条の適用を規定しており,行訴法43条3項は,当事者訴訟に関する同法41
条を準用している。
そして,行訴法41条は,当事者訴訟とその目的たる請求とが関連請求の関係にあ
る訴えの併合には同法19条を準用しており,同条2項は民訴法143条の規定の
例によることを妨げないと規定している。
しかし,請求の趣旨イ(イ)にかかる訴えの変更は,追加的併合ではなく,旧訴を取り
下げて新訴を提起するものであるから,行訴法19条を準用できる場合に該当せ
ず,民事訴訟法(以下「民訴法」という。)143条の規定の例によることができ
ないから,このような訴えの変更は許されない。
イ 仮に,上記アにおいて訴えの変更が認められたとしても,変更にかかる請求は
新訴の提起であるから,既に出訴期間を経過しており,不適法である。
(2) 第4駐車場に関する住民監査請求は,平成9年度及び平成10年度の借上料の
支出自体の違法確認と今後の借上料の支払そのものの差止めを求めるものである
が,第4駐車場に関する第1事件の請求は,平成11年度から平成13年度分の借
上料を被告三重県に請求しないことの違法確認である。
したがって,まず第1に,対象年度が異なるから住民監査請求を経ていないことは
明らかであるし,第2に,今後の借上料の支払そのものの差止めを求める住民監査
請求と,実際に借上料の支払がなされてしまった場合の当該支出自体の違法確認請
求との間に同一性があることに異論はないが,今後の借上料の支払そのものの差止
めを求める住民監査請求と,実際に借上料の支払がなされてしまった場合の借上料
を被告三重県に請求しないことの違法確認との間には,同一性はない。
よって,請求の趣旨イ(イ)にかかる訴えは,監査請求が前置されておらず,不適法で
ある。
3 請求原因に対する被告三重県の認否
(1) 請求原因(1),(2)の事実は認める。
(2) 同(3)の事実は否認する。
(3) 同(4),(5)ア,イは争う。
(4) 同(6)のうち被告津市長が平成15年4月1日以降の賃料を支払おうとしてい
ることは認め,その余は争う。平成14年度分までの賃料はすべて支払済みであ
る。
(5) 同(7)の事実は認める。
4 請求原因に対する被告津市長の認否
(1) 請求原因(1),(2)の事実は認める。
(2) 同(3)の事実は否認する。
(3) 同(4),(5)ウは争う。
(4) 同(6)のうち被告津市長が平成15年4月1日以降の賃料を支払おうとしてい
ることは認め,その余は争う。平成14年度分までの賃料は支払済みである。
(5) 同(7)の事実は認める。
5 被告三重県の主張
(1) 駐車場の設置義務は,被告三重県のみにあるものではなく,津市は被告三重県
に代わり本件1土地の賃料等及び本件請負代金を肩代わりしたものではない。その
理由は以下のとおりである。
(2)ア 地財法28条の2は,地方公共団体間における経費の負担関係を規定してお
り,そこでは,地方公共団体の行うすべての事務について,その経費の負担区分が
法令上定められているものについては,法令の予定している経費の負担区分を乱す
ようなことをしてはならないと規定されている。
被告三重県は,都道府県の施設のすべての駐車場の整備を,たとえ任意に基づくも
のであっても市町村が負担できるとは考えておらず,法令で明確に都道府県の事務
とされているものについて市町村がこれを負担することができないことについて
は,異論がないところである。
イ ところで,法令で明確に都道府県の事務であるかどうかが示されていない事務
については,旧地自法2条6項では,都道府県が処理する事務として,「概ね次の
ような広域にわたるもの,統一的な処理を必要とするもの,市町村に関する連絡調
整に関するもの及び一般の市町村が処理することが不適当であると認められる程度
の規模のものを処理するもの」と規定しているが,「広域にわたるもの」及び「一
般の市町村が処理することが不適当と認められる程度の規模」については,相対的
な概念であり,明確な基準はないとされている。
ウ 旧地自法2条6項4号は,「補完行政事務」について規定している。「補完行
政事務」とは,一般の市町村が処理することが不適当であると認められる程度の規
模の事務に限って,都道府県の事務とされる事務で,その規模によっては,一般の
市町村の事務とされるのであって,「本来市町村の事務として処理することを妨げ
ないが,この種の事務は一般的に一市町村の行政上の需要を充足するために個々の
市町村が実施するにしては非能率不経済であって,処理に堪えないものが多いた
め,都道府県が処理するものとするにすぎない」とされる事務である。
エ 文化センターは,地自法,地財法及びその他の個別の法令上,都道府県の固有
事務及び都道府県が固有に負担すべき経費区分にかかる事務とされているものでは
なく,広域にわたるものであっても,規模によっては一般の市町村の事務とされ,
本来市町村の事務として処理することを妨げない「補完行政事務」であると考えら
れるのであり,このような場合における都道府県と市町村の役割分担については,
地方公共団体相互間の政策的な裁量において任意に決定できるものである。
津市は,第3次津市総合計画で,「県立美術館や博物館をはじめとする文化施設の
立地した津駅西地区において県等関係機関との連携のもとに,中心部における調和
のある施設配置を図りながら,総合的かつ高次的な機能を有する文化施設の整備を
進めるなど総合文化ゾーンの形成に努める。」としている。
このような行政計画の実現は,到底津市が単独でできるものではなく,国や被告三
重県の施策と連携しつつ互いが協力して実現されているものである。文化センター
は,総合文化ゾーンの拠点施設であり,被告三重県と津市が協力して総合文化ゾー
ン形成を実現すべく,その駐車場整備の一部については,津市の任意により津市の
事務としたものであり,地自法及び地財法に何ら抵触するものではない。
オ 平成9年度に実施した「三重県総合文化センター来館者アンケート結果報告
書」によれば,アンケートに回答した来館者727人のうち,津市民の利用者は3
51人と最も多く,全体の48.3%に上っている。
最も利用者が多い施設は図書館であるが,「平成13年度三重県立図書館利用者ア
ンケート」によると,アンケートに回答した来館者1274人のうち,津市民の利
用者は827人で全体の64.9%に上っている。また,平成13年度末の図書貸
出登録者数累計も,津市民が4万8779人で全体の56%に上っている。
さらに,貸館の地域別利用者も中勢地域の利用者が多くを占めている。
このように,本件1土地の駐車場は,津市が総合文化ゾーン形成の目的の下,最も
多い利用者である津市民のために整備したものである。また,駐車場整備は補完行
政事務であるから,法令に明確に規定されていない場合における都道府県と市町村
の役割分担については,一般的に地方公共団体相互間の政策的な裁量において任意
に決定できるものであり,本件においては,建物の設置者である被告三重県のみに
駐車場設置の義務があるとする原告らの主張は正当なものではない。
6 被告津市長の主張
(1) 津市による駐車場整備の経緯
ア 津市は,昭和61年3月,「活力ある文化の香り豊かな県都」を目指して,第
3次津市総合計画を策定した。
同計画では,「津駅西地区において,県等関係機関との連携をもとに,中心部にお
ける調和ある施設配置を図りながら,総合的,かつ,高次な機能を有する文化施設
の整備を進めるなど文化ゾーンの形成に努める」とされていた。
イ 被告三重県は,昭和63年10月,旧三重県文化会館の著しい老朽化に伴い,
新たな文化会館の整備を計画した。
そこで,津市は,上記第3次津市総合計画に基づき,また,市内の各種文化団体か
らの要望を受け,被告三重県に対して,他市ではなく津市に,しかも津市の市域の
うち総合文化ゾーンの形成に努めることとしていた津駅西地区に,新文化会館を設
置するよう要望した。
これを受けて,被告三重県は,平成元年2月,津駅西地区である津市一身田上津部
田地内を新文化会館の建設予定地とすることを決定した。
ウ 被告三重県は,平成2年12月,第3次三重県長期総合計画において,「津地
区では,県都である津市を中心として,行政機関,学術,文化施設やコンベンショ
ン施設などを整備し,県域を先導しうる高次な都市機能の充実に努め,中枢性を強
化」すること,「県立新文化会館を津市に建設するのをはじめ,県立博物館,県産
材を活用した文化ホール等の整備を進め,県域全体の中枢的な文化圏としてふさわ
しい機能を形成」することとした。
エ 津市教育委員会委員長,津市土地開発公社理事長及び三重県教育委員会委員長
は,平成3年2月26日,確認書を取り交わした。
しかし,ここで確認された津市が整備すべき駐車場用地は,文化センターへの来場
者の利便を図るためであるばかりでなく,同時に,津市においても「津駅西地区に
おいて…文化施設の整備を進めるなど総合文化ゾーンの形成」(第3次津市総合計
画)を図るために必要なものと位置付けられていた。
オ 現在においても,まだ文化センターにとって500台分の駐車場が不足してい
る状態にある。
(2) 本件1土地の賃料等及び本件請負代金の支出の目的
ア 賃貸借契約の目的は,本件1土地を「上津部田城址その他文化施設にかかる」
駐車場として使用するためであり,第3次津市総合計画の中において,「津駅西地
区において,県等関係機関との連携をもとに,中心部における調和ある施設配置を
図りながら,総合的,かつ,高次な機能を有する文化施設の整備を進めるなど文化
ゾーンの形成に努める」としていたことによるものである。
なぜなら,総合文化ゾーンの形成には,現今のモータリゼーション社会では,駐車
場の整備が不可欠であり,駐車場が整備されていることは,総合文化ゾーンを形成
する各種文化施設に比較優位性を持たせることになるからである。
「上津部田城址」は,15世紀後半に築造された城址で,平成5年2月5日,津市
教育委員会によって,津市文化財保護条例に基づき津市の史跡に指定されたもので
ある。また,「その他文化施設」とは,当面は文化センターを指すが,これにとど
まらず,平成8年3月策定された第4次津市総合計画において,「三重県総合文化
センターの隣接地において…(仮称)三重県センター博物館の建設を促進します」
とされているように,被告三重県等が設置するであろうその他の文化施設も意味し
ている。
イ 本件請負契約の目的は,現状が田であった本件1土地を駐車場用地に整備する
ためである。
本件請負代金を増額する変更契約を締結したのは,工事施工過程において表土を掘
削したところ,地盤が粘土質で地下水位が予想以上に高いことが判明し,軟弱地盤
対策として,透水管の設置と通行頻度の高い部分のアスファルト舗装の必要が出て
きたためである。
(3) 本件1土地の賃料等及び本件請負代金の支出が,地方公共団体の事務処理の原
則に反していないこと
ア 文化センターの機能
文化センターは,県民の技術文化及び生涯学習の振興並びに男女共同参加の促進を
図るために設置されたもので,三重県文化会館,三重県生涯学習センター,三重県
女性センター,三重県立図書館の各施設をもって構成されている。
このような機能を有する公の施設は,住民福祉の原則から,津市において独自に設
置することは必要かつ可能なものであった。
事実,全国的に見ても,平成10年5月時点で,津市と同規模の人口10万人以上
20万人未満の市114市のうち,収容席数1000名以上の大ホールを有する文
化施設を市独自で設置しているのは80市に上っている。
イ 第3次津市総合計画との関係
津市は,第3次津市総合計画において,「津駅西地区において,県等関係機関との
連携をもとに,中心部における調和ある施設配置を図りながら,総合的,かつ,高
次な機能を有する文化施設の整備を進めるなど文化ゾーンの形成に努める」として
いた。
そのように位置付けられていた津駅西地区に被告三重県が文化センターを設置した
のであるから,総合性・計画性の原則と相互競合回避の原則に従い,同一機能の文
化施設を津市が独自に設置する必要がなくなり,津市住民の利用の便益,アクセス
の容易さをも考慮して,津市が文化施設等駐車場を整備して,文化センターへの来
場者等に対する駐車場に利用させることは,新たに文化施設を建設する費用と比較
衡量すれば,最も能率性の原則に適合することになる。
(4) 本件1土地の賃料等及び本件請負代金の支出が津市の事務に関する費用である
こと
ア 以上のように,津市が,津市の区域において,総合文化ゾーンの形成を目指し
て,被告三重県等関係機関と連携して文化施設の整備を進めることは津市の公共事
務である。
イ 津市の市域において,第3次津市総合計画で整備促進が位置付けられていた文
化施設である文化センターが設置されたことにより,一番恩恵を受けるのは,地理
的理由から津市住民であることは明らかである。
そして,津市にとっても,同一機能の文化施設の建設が不要となるという受益があ
った。
そうである以上,総合性・計画性の原則により,津市が1500台分の文化施設等
駐車場を整備することは,津市の事務(旧地自法2条3項5号)であり,賃料や造
成工事費用は,地財法9条の「地方公共団体の事務…を行うために要する経費」で
ある。
いうまでもなく,かかる費用を負担しても地財法27条の2の受益者負担金の制限
に反するものではなく,法令適合の原則にも違反していない。
ウ この点,原告らは,地財法28条の2,9条等に違反すると主張する。
しかし,地財法28条の2は「法令の規定に基づき経費の負担区分が定められてい
る事務」にかかる負担の転嫁が禁止されているのであり,地財法では9条から10
条の4までに経費の負担区分の原則が示されて,これに基づき,個々の法律又は政
令において国の負担割合が示されるとともに,いかなる地方公共団体がどの事務に
要する経費を負担するかが明示されている。なお,地財法9条は,国と地方公共団
体との間の経費の負担区分に関する規定であって,本件の津市と被告三重県間の経
費の負担区分を定めるものとはなり得ない。
しかるところ,被告三重県の公の施設である文化センターの利用者(その少なくな
い部分が津市住民)や津市の史跡に指定された上津部田城址の見学者等の利便を図
るために,津市が文化施設等駐車場を整備する費用について,被告三重県が負担す
べきとの法令は存在しない。
エ 仮に,本件1土地の駐車場が,文化センターの来場者のためだけのものであっ
たとしても,やはり津市の公共事務であることは,次のとおりである。
確かに,文化センターは,広く県民のための施設である。
しかし,このような施設を持った被告三重県の公の施設が津市の区域に設置されれ
ば,津市民が他の市町村の住民にもましてその便益をより享受できるのであって,
現に圧倒的に便益を享受しているのである。
そして,津市は,津市男女共同参画プランを策定するなどして女性の地位向上等の
女性行政を推進し,津市生涯学習推進基本構想を策定して生涯学習の推進を進めて
いるが,かかる津市の事業を展開するに当たり,津市民が文化センター内の三重県
女性センターや三重県生涯学習センターを利用して,個性や能力を伸ばし,ひいて
は住民の福祉を増進する目的で,津市が本件駐車場を設置し管理する事業を行って
も,何ら旧地自法2条2項及び3項の趣旨に反するものではない。
そうである以上,文化センターへの津市民のアクセスを容易にするために,本件1
土地の駐車場を設置することが津市の公共事務であることは,何らの疑問の余地も
ない。
(5) 原告らが引用する最高裁平成8年4月26日第2小法廷判決は,経費の負担区
分が法令によって明確に規定されている事案に関するものであって,本件に適用す
ることはできない。
さらに,法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について,その
定めと異なる結果になるような行為であっても,一律に経費の負担区分を乱すとの
評価をするのではなく,地方財政の健全性を害するものかどうかに照らしてその該
当性を判断すべきと解するのが妥当である。
原告らは,本件で経費の負担区分を明確に定めた法令が何であるのかを明らかにし
ていないが,例えば,駐車場法は,特別用途地区(都市計画法8条1項2号)では
都市計画に駐車場整備地区を定めることができ(駐車場法3条,同施行令1条),
その場合,必要な路外駐車場に関する都市計画を定め,市町村はその整備に努めな
ければならない(駐車場法10条)としている。
津市の場合,駐車場整備地区を定めてはいないが,津駅西地区に総合文化ゾーンの
形成を図って,文化施設の集合を目指しており,かかる文化施設は必然的に多数の
自動車の駐車場需要を生じさせるため,これら需要に応じる駐車場を整備すること
は津市の事務であることは明らかである。
また,文化センターの利用者は津市民が圧倒的に多く,駐車場の利用者も同様であ
ること,駐車場がなかったら路上駐車が増加し,これによる危険や不便を周辺の津
市民が受けること,津市は文化センターとその他文化施設の建設を免れて,その分
の経済的利益は津市に帰属していること,駐車場を整備することで他の文化施設の
誘致に有利となることからすれば,地方財政の健全性を実質的に害するものとはい
えない。
(6) 津市は,本件1土地について,被告三重県に対して文化施設等の来場者に対す
る駐車場として供用し,維持管理をすることを委託しているが,①被告三重県は津
市の指示に従い駐車場の管理にかかる業務を実施すること,②被告三重県は津市の
書面の承諾がない限り駐車場の現状を変更してはならないこと,③駐車場に関し滅
失,損傷等の事故があったときは,被告三重県は直ちにその旨を津市に報告するこ
と等の約定があり,津市は,事務の実施権限そのものを被告三重県に委譲している
わけではない。
津市は,駐車の用に供するという事実行為,維持・修繕・改良といった事実行為を
被告三重県に委託しているものであり,被告三重県はその管理行為を津市の指示に
基づいて行っている。
このように委託という手法をとったのは,被告三重県の責任と負担で維持管理を行
うためであって,地方財政の健全性を実質的に害するものではない。
7 被告三重県の主張に対する第1事件原告らの反論
被告三重県は,文化センターの駐車場用地整備は,旧地自法2条6項4号の補完行
政事務であると主張する。
しかし,被告三重県も認めているように,文化センターは,「県民の芸術文化及び
生涯学習並びに男女共同参画の促進を図るという目的で,文化会館,生涯学習セン
ター,男女共同参画センター,県立図書館によって構成される複合型文化施設であ
る」という点に特色がある。
そうとすると,旧地自法2条6項は,都道府県の公共事務について例示しており,
同項2号の「義務教育その他の教育の水準の維持,文化財の保護及び管理の基準の
維持」等で統一的な処理を必要とする事務は,都道府県の公共事務(固有事務)で
あると規定されているところ,「その他の教育」には,芸術文化教育や社会教育と
しての生涯学習教育や男女共同参画教育なども含まれるし,「文化財の保護及び管
理の基準の維持」には,県民の芸術文化の振興も含まれるものであるから,これら
の事務は,被告三重県の固有事務であることは明らかである。
また,文化センターには,県立図書館が設置・管理されているが,県立図書館の設
置は旧地自法2条6項4号に規定する「図書館」施設の設置事務で,しかも,一般
の市町村が処理することが不適当であると認められる程度の規模の事務であるか
ら,図書館に限っては,旧地自法2条6項4号該当性を認めることができる。
したがって,文化センターの設置・管理にかかる事務は,補完行政事務ではなく,
被告三重県の固有事務である。そして,文化センターの名前を付した駐車場の整備
に関する事務は,文化センターの効用を全うするために不可欠なものであり,これ
に付属する施設として,駐車場法の規定の趣旨や条理上からも当然に,文化センタ
ーの設置・管理事務を担っている被告三重県の固有事務と解されるのである。
8 被告津市長の主張に対する第1事件原告らの反論
(1) 被告津市長は,本件1土地につき,「上津部田城址その他文化施設」への来場
者のための駐車場であると主張する。
しかし,津市の史跡(文化財保護法による史跡として指定されたもの)は12か所
あるが,上津部田城址以外の史跡で駐車場設備を有しているものは皆無である。ま
た,上津部田城址は,文化センターの建設に伴うインフラ整備のための道路建設工
事により,その多くを削り取られてしまい,現在残っているのは城址の半分ほどに
すぎない。また,見学者としても,小学校児童が遠足に来る程度であり,バスや自
動車で見学に来る者は皆無である。仮に自動車で見学に来る者があるとしても,文
化センターの駐車場が近接して存在するのだから,これを利用すれば足りる。
したがって,ほとんどありもしない来場者のために358台分の駐車場を確保し
て,工事代金を支払い,賃料を支払い続けていくことは,到底地方公共団体の事務
処理のための経費と解することはできない。
また,文化センターのための駐車場としては,被告三重県が既に設置する南駐車
場,東駐車場,北駐車場及び臨時駐車場があり,現実の駐車場の利用状況からして
も,これ以外に358台分もの大規模駐車場は不要であるから,最少の経費で最大
の効果を上げるようにしなければならない能率の原則,経費はその達成するために
必要かつ最少の限度を超えて支出してはならないとの地財法4条1項の趣旨に反し
ているというべきである。
(2) また,被告津市長は,駐車場法の規定を根拠に駐車場の設置が津市の事務であ
るとも主張する。
しかし,津市が駐車場法の規定を受けて定めた津市建築物における駐車施設の附置
及び管理に関する条例(平成5年3月30日条例第1号)や同条例施行規則(平成
5年3月30日規則第6号)は,商業地域や近隣商業地域に適用されるものである
ものの,考え方としては,大規模な建築物を設置しようとする者は,当該施設の来
場者のために建物に附属した専用の駐車場を設置すべきというものであり,当該大
規模建築物のための利便施設としての専用駐車場の整備や管理は,当該施設の設置
主体の義務であることを法律や条例が認めているものであると解釈できる。
(第2事件について)
1 請求原因
(1) 第2事件原告らは津市の住民である。
(2) 第1ないし第3駐車場に関して
ア(ア) 津市は,平成7年10月16日,津市土地開発公社から,別紙物件目録2記
載の各土地(以下「本件2土地」という。)を17億6397万3517円で購入
した。ただし,各土地の所有権は,売買代金の一部又は全部を支払ったときに,そ
れに相当する分について移転するものとされた。
津市及び津市土地開発公社は,平成11年7月16日,代金を16億8566万2
966円に変更するとの合意をした。
(イ) 津市は,平成7年10月31日,上記(ア)の売買代金として3億6672万8
879円を支払い,本件2(3)ないし(12)土地及び本件2(13)土地の一部107.1
1㎡(合計2600.77㎡)の所有権を取得した。
(ウ) 津市は,平成8年7月5日,上記(ア)の売買代金として3億6672万931
5円を支払い,本件2(1)土地の一部2373.64㎡及び本件2(13)土地の一部1
97.05㎡(合計2570.69㎡)の所有権を取得した。
(エ) 津市は,平成9年7月15日,上記(ア)の売買代金として3億6672万86
67円を支払い,本件2(1)土地の一部1731.60㎡及び本件2(2)土地の一部
798.55㎡(合計2530.15㎡)の所有権を取得した。
(オ) 被告津市長は,平成10年7月23日,上記(ア)の売買代金として3億667
2万9409円を支払い,本件2(2)土地の一部2490.44㎡の所有権を取得し
た。
イ 被告三重県は,本件2土地を平成9年10月1日以降,文化センターの第1な
いし第3駐車場として占有している。
ウ 本件2土地の平成9年10月1日以降の使用料相当額は次のとおりである(1
日当たり1万7562円として算出)。
平成9年10月1日から平成10年3月31日まで 319万6284円
平成10年4月1日から平成11年3月31日まで 641万0130円
平成11年4月1日から平成12年3月31日まで 642万7692円
平成12年4月1日から平成13年3月31日まで 641万0130円
平成13年4月1日から平成14年3月31日まで 641万0130円
平成14年4月1日から平成16年5月27日まで 1383万8856円(合計
 4269万3222円)
エ 被告三重県は本件2土地を権原なく占有しているから,津市に対して,これを
明け渡すとともに,不当利得に基づき使用料相当額を支払う義務があるところ,被
告津市長は,被告三重県に対し,同土地の明渡請求及び上記の使用料相当額の金員
請求を怠っている。
(3) 第1ないし第3駐車場にかかる目的外使用許可処分について
ア 被告津市長は,平成10年3月25日,三重県に対して,同年4月1日から平
成11年3月31日まで,本件2(1)・(3)ないし(13)土地及び本件2(2)土地の一部
798.55㎡(合計7701.61㎡)を文化センターへの来場者等に対する駐
車場として使用することを許可し,使用料は免除した。
イ 被告津市長は,平成10年7月23日,被告三重県に対して,同日から平成1
1年3月31日まで,本件2(2)土地の一部2490.44㎡を文化センターへの来
場者等に対する駐車場として使用することを許可し,使用料は免除した(以下,上
記アの使用許可と併せて「本件使用許可」という。)。
ウ しかし,これらの目的外使用許可処分は,被告津市長が被告三重県に対し文化
センターのための駐車場として使用させるために,本件2土地を購入し,上記のと
おり被告三重県に無償で使用させたもので,次のとおり無効である。
(ア) 第1事件1項(4)ア,イに同じ(ただし,本件1土地の賃貸借及び請負に関す
る記載は本件2土地の売買と読み替える。)。
したがって,本件使用許可は,地財法違反により無効である。
(イ) 本件2土地は,津市が被告三重県のために文化センターの第1ないし第3駐車
場として無償で使用させる目的をもって購入した土地であり,津市に具体的な行政
目的は存在しないから,津市の普通財産である。なお,公有財産が,行政財産であ
るか普通財産であるかは専らその用途によって決せられるものであり,地方公共団
体が内部処理としていかなる分類をしているかは無関係である(大分地裁昭和61
年7月14日判決・行裁集37巻7・8号915頁,広島地裁昭和54年6月19
日判決・行裁集31巻68号1388頁)。
そうすると,被告津市長がなした本件2土地に関する本件使用許可は,普通財産に
ついてなされたものであり,無効である。
(4) 西駐車場に関して
ア 津市は,平成6年6月27日,別紙物件目録3記載の各土地(以下「本件3土
地」という。)につき,各所有者との間で,上津部田城址その他文化施設にかかる
駐車場用地として,津市が賃料を支払うとともに,固定資産税を負担するとの内容
の賃貸借契約を締結した。
本件3(2)・(3)土地については,平成8年12月20日,面積をそれぞれ118
1.57㎡,1527.34㎡に変更し,賃料を減額する合意が成立した。本件
3(4)土地についても,同月24日,その一部109.19㎡が同年11月28日付
けで津市に売却されたため,1493.17㎡に変更し,賃料を減額する合意が成
立した。
これらの点を除いては,本件3土地に関する上記賃貸借契約は平成11年4月1日
以降1年ごとに更新されている。
イ 津市は,上記賃貸借契約に基づき,本件3土地の賃貸人らに対して,平成10
年3月19日から平成14年3月29日までの間に,別紙賃料等一覧表記載のとお
り,平成9年度分から平成14年度分の賃料等を支払った。
ウ 上記の本件3土地の賃貸借契約の締結は,当初から,津市の具体的な行政目的
のためになされたものではなく,被告三重県に文化センターの駐車場用地として使
用させるためのもので,津市が被告三重県の負担すべき金員を肩代わりしたもので
ある。
エ 第1事件1項(4)ア,イに同じ(ただし,「本件1土地」を「本件3土地」と読
み替え,また,請負契約に関する記載は除く。)。
オ(ア) 津市が上記の違法な肩代わり支出をしたことは津市と被告三重県の共謀によ
りなされたものであるから,被告三重県は津市に対し民法719条の共同不法行為
に基づく責任を負う。
(イ) そうでないとしても,津市が上記の違法な肩代わり支出をしたことにより,被
告三重県は,上記賃料等の支出額に相当する不法な利益を受けたから,被告三重県
は津市に対し上記賃料等の支出額に相当する金員の不当利得返還債務を負う。
カ しかるに,被告津市長は,被告三重県に対し,本件3土地の明渡請求及び上記
の共同不法行為による損害賠償又は不当利得に基づく返還請求を怠っている。
(5)ア 第2事件原告らは,平成10年9月3日,津市監査委員に対し,上記の賃料
等の支出のうち平成8年4月1日から平成11年3月31日までの分及び上記土地
売買代金の支出等につき,本来被告三重県が負担すべき金員であり地財法28条の
2に違反するとして,上記公金支出の違法確認及び被告三重県に対して同額の請求
を求める監査請求を行った。
イ 第2事件原告らは,平成10年9月24日,津市監査委員に対し,上記土地売
買代金の支出等につき,本来被告三重県が負担すべき金員であり地財法28条の2
に違反するとして,上記公金支出の差止め等を求める監査請求を行った。
ウ 津市監査委員は,平成10年10月29日,上記各監査請求につき却下又は棄
却した。
(6)ア 訴えの変更前の結論
よって,第2事件原告らは,①被告三重県に対し,前地自法242条の2第1項4
号に基づき,津市に代位して,平成9年10月1日から明渡済みまで,本件2土地
については1日当たり1万7562円の,本件3土地については1日当たり1万0
483円の割合による金員の支払を,②被告津市長に対し,地自法242条の2第
1項3号に基づき,被告三重県に対して,平成9年10月1日から明渡済みまで,
本件2土地について1日当たり1万7562円の,本件3土地について1日当たり
9565円(1万0483円の一部)の割合による金員を請求しないことが違法で
あることの確認を,③被告津市長に対し,地自法242条の2第1項2号に基づ
き,本件使用許可の無効確認を求める。
イ 訴えの変更後の結論
よって,第2事件原告らは,①被告三重県に対し,前地自法242条の2第1項4
号に基づき,津市に代位して4269万3222円(平成9年10月1日から平成
16年5月27日(本件口頭弁論終結日)までの本件2土地の使用料相当額の合
計)の支払を,②被告三重県に対し,前地自法242条の2第1項4号に基づき,
津市に代位して1974万6669円(本件3土地に関する平成9年度分から平成
13年度分までの賃料等の支出額)の支払を,③被告津市長に対し,地自法242
条の2第1項3号に基づき,被告三重県に対して,4269万3222円を請求し
ないことが違法であることの確認を,④被告津市長に対し,地自法242条の2第
1項3号に基づき,被告三重県に対して1974万6669円を請求しないことが
違法であることの確認を,⑤被告津市長に対し,地自法242条の2第1項2号に
基づき本件使用許可が無効であることの確認を求める。
2 被告津市長の本案前の主張
(1)ア 本件2土地は,津市の行政財産である。被告津市長は,被告三重県に対し,
地自法238条の4第4項に基づき本件2土地の使用許可をしているが,本件使用
許可は,その駐車場としての機能をよりよく発揮させるという行政目的の実現のた
めになしたものである。
つまり,本件使用許可は,津市の設置にかかる文化施設等駐車場の供用を適正かつ
効率的に行うとの目的の下で,駐車場の利用の増進及び管理の改善に必要な機能を
果たすものであるかどうかとの観点からなされたものであって,その性質上,駐車
場整備という行政目的の実現のためになされた行為である。
イ 住民訴訟の対象は,地自法242条の2第1項に列記されている財務会計行為
上の行為又は事実に限定されており,これに当たらないものについては,住民訴訟
においてその違法性を争うことができない。
ところで,住民訴訟は,地方公共団体の住民によって地方自治の公正を確保するた
めに設けられた住民参政の一環をなすものであるが,それは,住民による事務監査
請求の制度(地自法12条2項,75条参照)のように,地方公共団体の事務一般
の非違を是正するための制度とは異なり,地方公共団体の財産が住民の租税その他
の公課等の収入によって形成されていることにかんがみ,地方公共団体の役職員に
よる違法な公金の支出,財産の管理・処分等を予防し,あるいは事後的に是正を図
り,もって住民全体の利益を擁護するために,個々の住民の個人的な利益とは関係
がなく,法律上の争訟とはいえない事項を訴えの対象とする制度を特に立法によっ
て創設したものである。
そうすると,ある事項が住民訴訟の対象となるか否かの判断も,その趣旨・目的に
沿ってすべきであり,ここにいう「財産の管理」とは,専ら財産の財産的価値に着
目して,その維持・保全・管理等を図る行為又はそれを怠る事実をいい,一定の行
政目的実現のためにする行為が一面財産の管理という性質を有し,それらの行為等
がなされることによって,結果として地方公共団体に財産的影響が及ぶような場合
は,そこで主として考慮すべきであるのが,行政目的の実現如何であり,財務会計
の適正な実現ではない以上,これに当たらないと解すべきである。
目的外使用の許可は,行政財産の効率的利用の見地から,行政財産の本来の用途又
は目的を妨げないものについて使用を許可するものであり,必ずしも専ら財産の運
用としてなされるものともいえず,少なくとも,目的外使用の許可であれば直ちに
財務会計上の行為に該当するということにはならないというべきであり,この場合
でも,当該行為が財務会計行為であるか否かは,目的外使用の許可としてなされた
行為が,その性質上,専ら財産の財産的価値に着目して当該財産の維持・保全・管
理等を行うものであるか否かによって決すべきであるから,本件使用許可は,住民
訴訟の対象たる財務会計行為には該当しないというべきである(東京地裁平成元年
10月26日判決・判例時報1333号87頁,東京地裁平成5年3月22日判
決・判例タイムズ823号143頁)。
ウ したがって,請求の趣旨ア(イ),イ(イ)にかかる訴えは,住民訴訟の対象とはな
り得ず,不適法である。
(2)ア 第1ないし第3駐車場に関する2回の住民監査請求は,いずれも第1ないし
第3駐車場の土地の購入代金の支出に関するもの(購入費の支出の違法確認と購入
費の被告三重県に対する請求)であるのに対して,第2事件請求は使用料相当額の
請求及び使用許可処分の無効確認であり,津市が購入した第1ないし第3駐車場の
土地の利用に関するものであり,住民監査請求と第2事件の請求との間には同一性
があるとはいえず,結局,第1ないし第3駐車場についての第2事件の請求は住民
監査請求を経ていないことになるのである。
このことは,原告らが第2事件を提起して1年半経過後に,以下の内容の平成12
年3月27日付け住民監査請求をしたことからも明らかである。
①ⅰ平成11年度にかかる第1ないし第3駐車場用地の購入費とⅱ平成11年度に
かかる第4駐車場の賃料とⅲ平成11年度にかかる西駐車場用地の賃料にかかる金
員相当額の損害賠償請求
②第1ないし第3駐車場用地に関する行政財産の使用許可処分の是正
③第1ないし第3駐車場用地,第4駐車場用地及び西駐車場用地の事実上の無償使
用の是正
この住民監査請求は,まさに第2事件の第1ないし第3駐車場に関する請求の前提
になるべきものであったのである。
イ さらに,西駐車場に関しては,住民監査請求では平成6年度の賃料の支出の違
法確認,平成8年度から平成10年度までの賃料の支出の違法確認及び今後の賃料
の支払そのものの差止めを求めるものであるが,西駐車場に関する第2事件の請求
は,平成9年度分から平成13年度分までの賃料相当の共同不法行為による損害賠
償又は不当利得返還請求にかかるものであり,第1に,平成11年度から平成13
年度に関する部分については住民監査請求を経ていないことは明らかであるし,第
2に,今後の賃料の支払そのものの差止めを求める住民監査請求と実際に支払がな
されてしまった場合の賃料相当額の共同不法行為による損害賠償又は不当利得返還
を被告三重県に請求しないことの違法確認との間には,到底同一性はない。
3 請求原因に対する被告三重県の認否
(1) 請求原因(1)の事実は認める。
(2) 同(2)のうち,アの事実は知らず,イの事実は認め,ウ,エは争う。
(3) 同(4)のうち,ア,イの事実は認め,ウないしオは争う。
(4) 同(5)の事実は認める。
4 請求原因に対する被告津市長の認否
(1) 請求原因(1)の事実は認める。
(2) 同(2)のうち,ア,イの事実は認め,ウ,エは争う。
(3) 同(3)のうち,ア,イの事実は認め,ウは争う。
(4) 同(4)のうち,ア,イの事実は認め,ウないしカは争う。
(5) 同(5)の事実は認める。
5 被告三重県の主張
(1) 請求原因(2)に関する抗弁(第1ないし第3駐車場の占有権原)
ア 被告津市長は,平成9年4月1日,三重県に対して,同日から平成10年3月
31日まで,本件2(1)土地の一部2373.64㎡及び本件2(3)ないし(13)土地
(合計5171.46㎡)を文化センターへの来場者等に対する駐車場として使用
することを許可し,使用料は免除した。
イ 被告津市長は,平成9年8月18日,被告三重県に対して,同年7月15日か
ら平成10年3月31日まで,本件2(1)土地の一部1731.60㎡及び本件
2(2)土地の一部798.55㎡(合計2530.15㎡)を文化センターへの来場
者等に対する駐車場として使用することを許可し,使用料は免除した。
ウ 請求原因(3)ア,イに同じ。
(2) 請求原因(4)に関する反論
津市が被告三重県に代わり本件3土地の賃料等を肩代わりしたものではないこと
は,第1事件5項に同じである(ただし,「本件1土地」を「本件3土地」と読み
替え,本件請負契約に関する部分を除く。)。
6 被告津市長の主張
(1) 請求原因(2)に関する抗弁(第1ないし第3駐車場の占有権原)
上記5項(1)に同じ。
(2) 請求原因(3)に関する反論(本件使用許可が無効でないこと)
本件2土地は,津市が直接一般公共に供する駐車場として整備したものであって,
行政財産である。
かかる目的で設置した駐車場を,それ自体の効用を高め,本来の用途を発揮させる
ことを目的として,被告三重県に対し使用許可を行っているのである。
このように行政財産の使用許可という手法をとったのは,被告三重県の責任と負担
で維持管理を行うためであって,地方財政の健全性を実質的に害するものではな
い。
(3) 請求原因(4)に関する反論
津市が被告三重県に代わり本件3土地の賃料等を肩代わりしたものではないこと
は,第1事件6項に同じである(ただし,「本件1土地」を「本件3土地」と読み
替え,請負契約に関する部分を除く。)。
7 被告三重県の主張に対する第2事件原告らの認否
(1) 被告三重県の主張(1)の事実は認める。
(2) 同(2)は争う。
8 被告津市長の主張に対する第2事件原告らの認否
(1) 被告津市長の主張(1)の事実は認める。
(2) 同(2),(3)は争う。
9 被告三重県の主張(1)及び被告津市長の主張(1)に関する第2事件原告らの再抗

被告津市長は,被告三重県に対し文化センターのための駐車場として使用させるた
めに,本件2土地を購入し,被告三重県に無償で使用させているが,これは請求原
因(3)ウ(ア),(イ)のとおり違法なもので,無効である。
10 第2事件原告らの再抗弁に対する被告三重県及び被告津市長の認否
第2事件原告らの再抗弁は争う。
(第3事件について)
1 請求原因
(1) 第3事件原告らは津市の住民である。
(2) 第1ないし第3駐車場に関して
ア 第2事件1項(2)アに同じ。
イ 被告三重県は,本件2土地を平成11年4月1日から平成12年3月31日ま
で,文化センターの第1ないし第3駐車場として占有している。
ウ 本件2土地の平成11年4月1日から平成12年3月31日までの使用料相当
額は642万7692円である。
エ 被告三重県は本件2土地を権原なく占有しているから,被告三重県は,津市に
対して,不当利得に基づき,使用料相当額を支払う義務がある。
(3) 西駐車場及び第4駐車場に関して
ア 第2事件1項(4)アに同じ。
イ 津市は,上記賃貸借契約に基づき,本件3土地の賃貸人らに対して,平成11
年度分の賃料等として,別紙賃料等一覧表に記載のとおり,平成12年3月23日
に合計393万1656円を支払った。
ウ 第1事件1項(2)イ(ア)に同じ。
エ 津市は,上記賃貸借契約に基づき,本件1土地の賃貸人らに対して,平成11
年度分の賃料等として,別紙賃料等一覧表に記載のとおり,平成12年3月23日
に合計639万7109円の賃料等を支払った。
オ 上記の本件1,3土地の賃貸借契約の締結は,当初から,津市の具体的な行政
目的のためになされたものではなく,被告三重県に文化センターの駐車場用地とし
て使用させるためのもので,津市が被告三重県の負担すべき金員を肩代わりしたも
のである。
カ 第1事件1項(4)ア,イに同じ(ただし,「本件1土地」を「本件1,3土地」
と読み替え,本件請負契約に関する部分を除く。)。
キ(ア) 津市が上記の違法な肩代わり支出をしたことは津市と被告三重県の共謀によ
りなされたものであるから,被告三重県は津市に対し民法719条の共同不法行為
に基づく責任を負う。
(イ) そうでないとしても,津市が上記の違法な肩代わり支出をしたことにより,被
告三重県は,上記賃料等の支出額に相当する不法な利益を受けたから,被告三重県
は津市に対し上記賃料等に相当する金員の不当利得返還債務を負う。
(4)ア 第3事件原告らは,平成12年3月27日,津市監査委員に対し,上記賃料
等の支出のうち平成11年4月1日から平成12年3月31日までの分の支出につ
き,本来被告三重県が負担すべき金員であり地財法28条の2等に違反するとし
て,津市長及び被告三重県に対して同額の請求を求める旨の監査請求を行った。
イ 津市監査委員は,平成12年5月23日,上記監査請求を棄却した。
(5)ア 訴えの変更前の結論
第3事件原告らは,被告三重県に対し,前地自法242条の2第1項4号に基づ
き,津市に代位して1647万0814円(本件2土地に関する平成11年4月1
日から平成12年3月31日までの使用料相当額の一部614万2049円及び本
件1,3土地の平成11年度分の賃料等の支出額の合計)の支払を求める。
イ 訴えの変更後の結論
第3事件原告らは,被告三重県に対し,前地自法242条の2第1項4号に基づ
き,津市に代位して1675万6457円(本件2土地に関する平成11年4月1
日から平成12年3月31日までの使用料相当額及び本件1,3土地の平成11年
度分の賃料等の支出額の合計)の支払を求める。
2 請求原因に対する被告三重県の認否
(1) 請求原因(1)の事実は認める。
(2) 同(2)のうち,ア,イの事実は認め,その余は否認ないし争う。
(3) 同(3)のうち,アないしエの事実は知らず,その余は否認ないし争う。
(4) 同(4)の事実は認める。
3 被告三重県の主張
第1事件5項(ただし,「本件1土地」を「本件1,3土地」と読み替え,本件請
負契約に関する部分を除く。),第2事件5項に同じ。
4 被告三重県の主張に対する第3事件原告らの反論
第1事件7項(ただし,「本件1土地」を「本件1,3土地」と読み替え,本件請
負契約に関する部分を除く。),第2事件7項に同じ。
理由
第1 第1事件について
1 訴えの変更について
(1) 請求の趣旨ア(ア)と請求の趣旨イ(ア)とでは,本件1土地に関する損害額又は不
当利得の額を賃料額から賃料及び固定資産税(賃料等)額に拡張したのみであっ
て,訴えの変更には当たらない。
したがって,請求拡張後の請求の趣旨イ(ア)について判断する。
(2) 請求の趣旨ア(イ)と請求の趣旨イ(イ)とでは,当初,被告津市長に対し本件1土
地の平成11年4月1日以降の賃料支出の差止めを求めていたところ,本件訴訟係
属中に平成11年4月1日以降の賃料が支払われたことから,被告津市長が平成1
1年4月1日から平成14年3月31日までの賃料額(津市が被告三重県に対し違
法な肩代わりしたもの)に関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告
三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求を怠
っているとの地自法242条の2第1項3号の怠る事実の違法確認請求に変更した
ものであって,訴えの変更に当たる。
これについて,被告津市長は訴えの変更に同意していないが,請求の基礎は同一で
あるから,訴えの変更は許されるべきである。
したがって,変更後の請求の趣旨イ(イ)について判断する。
2 監査請求の前置について
(1) 証拠(第1事件及び併合後に提出された甲号証を「甲」と,併合前の第2事件
において提出された甲号証を「甲A」と表記する。甲1,2)及び弁論の全趣旨に
よれば,以下の事実が認められる。
ア 第1事件原告らは,平成10年7月7日,津市監査委員に対し,以下の支出に
つき,駐車場の設置は不要不急のものであるし,本来被告三重県が負担すべき金員
を津市が肩代わりしたものであり地財法28条の2に違反するとして,①この公金
支出の違法確認,②F及び被告三重県に対して工事代金及び賃料額を請求するこ
と,③本件1土地の賃貸人に対する賃料の支出の差止めを求めて監査請求を行った
(甲1)。
(ア) 本件請負契約に基づく本件1土地の工事代金の支出
(イ) 本件1土地の賃料の支出のうち,平成9年10月1日から平成11年3月13
日までの分
イ 津市監査委員は,平成10年9月3日,上記監査請求を棄却した(甲2)。
ウ 第1事件原告らは,平成10年9月22日,第1事件訴訟を当裁判所に提起し
た。
(2) 上記(1)ア②の監査請求の趣旨は必ずしも明確ではないが,「津市が被告三重
県の負担すべき金員を肩代わりした。」と主張し,F及び被告三重県に対し工事代
金及び賃料額を請求するよう求めているところから,工事代金及び賃料等の支出に
関するFと三重県知事の共同不法行為による損害賠償請求権又は被告三重県に対す
る不当利得返還請求権の行使を怠る事実を監査請求の対象とする趣旨を含むもので
あると理解し得ないでもない。そうとすると,請求の趣旨イ(ア)は上記(1)ア②によ
り,監査請求を前置しているというべきである。
上記(1)ア③は賃貸人に対する賃料の支出差止めを求めるものであるが,監査請求で
支出差止めを求めた賃料が支払われていること,第1事件原告らが「津市が被告三
重県の負担すべき金員を肩代わりした。」と主張していることからすると,請求の
趣旨イ(イ)は,上記(1)ア③により監査請求を前置しているというべきである。
(3) この点,被告津市長は,「請求の趣旨イ(イ)は,新訴の提起にほかならず,出
訴期間を経過しているから不適法である。」と主張する。
訴えの交換的変更は,住民訴訟においても,変更後の新請求に関する限り新たな訴
えの提起にほかならないから,変更後の新請求に関する出訴期間が遵守されている
かどうかは,変更後の新請求と変更前の旧請求との間に訴訟物の同一性が認められ
るとき,又は両者の間に存する関係から,変更後の新請求にかかる訴えを当初の訴
えの提起の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守において欠けるところが
ないと解すべき特段の事情がある場合を除き,当該訴えの変更時を基準として決す
るべきである。
本件の場合,差止請求と怠る事実の違法確認請求とは,その中心的な争点を共通と
するものであるのみならず,公金の支出差止め,公金の支出,損害賠償又は不当利
得返還の請求はいわば一連の流れであるにもかかわらず,訴訟上差止めを求められ
ている公金の支出がなされれば,差止請求は不適法な訴えとなり,住民としては支
出に関する損害賠償又は不当利得返還請求若しくはそれらの請求を怠る事実の違法
確認の訴えに変更せざるを得なくなる関係にあるが,訴えが不適法となったことに
ついて原告ら住民側に何らの責任はない。このような場合においては,後者の怠る
事実の違法確認を求める訴えは,出訴期間の遵守の関係では,前者の公金の支出差
止めを求める訴えが提起された時に提起されたものと同視すべき特段の事情がある
というべきである。
以上からすれば,請求の趣旨イ(イ)は,出訴期間の遵守において欠けることはない。
3 請求原因(1),(2),(7)の事実は当事者間に争いがない。
4 そこで,まず,被告三重県が津市に対し,民法719条の共同不法行為責任を
有するか否かにつき検討する。
仮に,第1事件原告ら主張のとおり,本件1土地の賃貸借契約や本件請負契約の締
結が当初から,津市の具体的な行政目的のためになされたものではなく,文化セン
ターの駐車場用地として使用させるためのもので,津市が被告三重県の負担すべき
金員を肩代わりしたものであって,地方公共団体の経費の負担区分を乱す行為を禁
じた地財法28条の2,他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を禁じる
地財法2条に違反しているとしても,肩代わりして支出された金員も津市民の便益
に資するところが大きく,公益のために用いられたということができ,その財務会
計法上の法規違反行為が当然に民法上の不法行為に該当するということはできない
から,被告津市長と三重県知事がなした本件1土地の賃貸借契約や本件請負契約の
締結が津市に対する民法上の不法行為に該当するとは到底解し得ない。
そうとすれば,被告三重県が津市に対し,民法719条の共同不法行為責任を負う
とは認められない。
なお,第1事件原告らは,割当的寄附金の強制的徴収等を禁止する地財法4条の
5,肩代わり支出が国の事務に対する経費負担を禁止する地方財政再建促進特別措
置法24条2項の趣旨にも反しているとも主張するが,同規定は,地方自治体から
国への寄付を禁止するものであるから,同主張は失当である。
5 次に,被告三重県が津市に対し,賃料等及び本件請負代金に相当する金員の不
当利得返還債務を負うか否かにつき,検討する。
第1事件原告らは,津市が違法な肩代わり支出をしたことにより,被告三重県は,
賃料等及び本件請負代金の支出額に相当する不法な利益を受けたから,被告三重県
は津市に対し賃料等及び本件請負代金の支出額に相当する金員の不当利得返還債務
を負う旨主張する。
しかし,第1事件原告らの同主張は,何をもって,不当な「利益」があると主張す
るのか必ずしも明らかではなく,賃料等及び本件請負代金が不当な「利益」である
というのであれば,賃料等及び本件請負代金は,本件1土地の賃貸借契約や本件請
負契約に基づき支出されたものであるから,法律上の原因がないとはいえない。そ
して,仮に,第1事件原告ら主張のとおり,本件1土地の賃貸借契約や本件請負契
約の締結が当初から,津市の具体的な行政目的のためになされたものではなく,文
化センターの駐車場用地として使用させるためのもので,津市が被告三重県の負担
すべき金員を肩代わりしたものであって,地方公共団体の経費の負担区分を乱す行
為を禁じた地財法28条の2,他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を
禁じる地財法2条に違反しているとしても,津市民の便益に資するところが大き
く,公益のためになされたものであるから直ちに本件1土地の賃貸借契約や本件請
負契約が無効となるものではない。本件1土地の賃貸借契約や本件請負契約が無効
となるとしても,その不当利得返還請求の相手方は本件1土地の賃貸人や本件請負
契約の請負人とならなければならない。
また,仮に,第1事件原告らの同主張が津市が被告三重県が法律上負担すべき金員
を肩代わりしたという趣旨で「利益」があるというのであれば,被告三重県には賃
料等及び本件請負代金の支出をすべき法律上の義務はないから,第1事件原告らの
同主張は失当である。
したがって,被告三重県が津市に対し,賃料等及び本件請負代金に相当する金員の
不当利得返還請求権を有するとは認められない。
6 以上によれば,第1事件原告らの請求(原告ら平成15年2月24日付け準備
書面による訴えの変更後のもの)はいずれも理由がないから,これを棄却すべきで
ある。
第2 第2事件について
1 訴えの変更について
(1) 第2事件原告らは,請求の趣旨ア(ア)a,bを,同イ(ア)a,bに変更している
が,被告三重県はこれに異議を述べていないから,同意したものとみなす。
(2) 第2事件原告らは,請求の趣旨ア(イ)aを,同イ(イ)aに変更しているが,請求
の趣旨イ(イ)aは,怠る事実である本件2土地の使用料相当の不当利得返還請求を本
件口頭弁論終結日に限定したもので,訴えの一部取下げである。被告津市長はこれ
に同意している。
(3) 第2事件原告らは,請求の趣旨ア(イ)bを,同イ(イ)bに変更しているが,請求
の趣旨イ(イ)bは,一部請求であったものを拡張した上,怠る事実である本件3土地
の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に対する
損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求を本件口頭弁論終結
日に限定するものである。一部請求であったものの拡張は訴えの変更ではない。怠
る事実である損害賠償請求又は不当利得返還請求を上記のとおり限定するのは,訴
えの一部取下げであって,被告津市長はこれに同意している。この拡張及び一部取
り下げは有効であると解される。
(4) 請求の趣旨ア(イ)cと同イ(イ)cは全く同一であり,訴えの変更はない。
(5) よって,請求の趣旨イについて,判断する。
2 本件使用許可の無効確認の訴えの適法性について
地自法242条の2第1項2号の訴えの対象となる行為は行政処分である当該行為
でなければならないが,ここにいう行政処分とは,行訴法3条2項にいう行政庁の
処分その他公権力の行使に当たる行為と同義のものと解される。
しかるところ,本件使用許可は,地自法238条の4第4項に基づくものであり
(甲49),行政財産の使用許可については津市財産に関する条例は存する(甲3
2)が,本件2土地を使用しようとする者にその使用についての申請権を付与する
ような規定は一切ない。
そうとすると,被告津市長による本件使用許可は,行政処分であるとは認められ
ず,本件使用許可の無効確認の訴えは不適法というべきである。
3 監査請求の前置について
(1) 証拠(甲69,70,甲A1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事
実が認められる。
ア 第2事件原告らは,平成10年9月3日,津市監査委員に対し,以下の支出に
つき,本来被告三重県が負担すべき金員を津市が肩代わりしたものであり地財法2
8条の2に違反するとして,①この公金支出の違法確認,②被告三重県に対して同
額を請求すること,③本件1,3土地の賃貸人に対する賃料等の支出の差止めを求
めて監査請求を行った(甲A1)。
(ア) 本件2土地の売買代金の平成8年度から平成10年度までの支出
(イ) 本件3土地の賃料等の平成8年度から平成10年度までの支出
(ウ) 本件1土地の賃料等の平成9年度及び平成10年度の支出
(エ) 文化施設等駐車場造成工事の測量・設計委託料の平成8年度の支出
(オ) 本件請負契約に基づく本件1土地の工事代金の支出
イ 第2事件原告らは,平成10年9月24日,津市監査委員に対し,以下の支出
につき,本来被告三重県が負担すべき金員であり地財法28条の2に違反するとし
て,①この公金支出の違法確認,②被告三重県に対して同額を請求すること,③本
件3土地の賃貸人に対する賃料の支出の差止めを求めて監査請求を行った(甲A
2)。
(ア) 文化センター駐車場造成工事費の平成6年度の支出
(イ) 本件3土地等の賃料等の平成6年度の支出
(ウ) 本件2土地の売買代金の平成7年度の支出
(エ) 本件3土地の賃料等の平成8年度の支出
ウ 津市監査委員は,平成10年10月29日,上記アの監査請求につき,上記ア
(オ)は上記第1,2(1)ア(ア)と重複しているとして監査請求の対象から外し,上記ア
(ア)のうち平成8年度及び平成9年度分,上記ア(イ)のうち平成8年度分並びに上記
ア(エ)については支出から1年を経過しているとして却下し,上記ア(ア)のうち平成
10年度分並びに上記ア(イ)のうち平成9年度及び平成10年度分については理由が
ないとして棄却した。
エ 津市監査委員は,平成10年10月29日,上記イの監査請求につき,上記イ
(エ)は上記ア(イ)と重複しているとして監査請求の対象から外し,上記イ(ア)ないし
(ウ)については支出から1年を経過しているとして却下した(甲A4)。
オ 第2事件原告らは,平成10年11月24日,第2事件訴訟を当裁判所に提起
した。
カ 原告D及び原告Eは,平成12年3月27日,津市監査委員に対し,以下の
(ア),(ウ)の支出は本来被告三重県が負担すべき金員であり,これを津市が負担する
のは地財法28条の2に違反するとして,①被告三重県及びFに対して下記支出金
額の損害賠償を請求すること,②下記(イ)の目的外使用許可の是正,③被告三重県に
対して本件1ないし3土地の賃料を請求することを求めて監査請求を行った(甲6
9)。
(ア) 本件2(2)土地の一部1462.97㎡にかかる売買代金の平成11年度の支

(イ) 本件2土地にかかる平成11年8月ころの被告三重県に対する行政財産の目的
外使用許可
(ウ) 本件1,3土地の賃料等の平成11年度の支出
キ 津市監査委員は,平成12年5月23日,上記監査請求を棄却した(甲7
0)。
(2) 以上によれば,第2事件原告らによる平成10年9月3日及び同月24日の監
査請求の対象とされたのは,本件2土地の売買代金の平成7年度から平成10年度
までの支出及び本件3土地の賃料等の平成6年度,平成8年度から平成10年度ま
での支出(賃料等の支出に関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告
三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求を怠
る事実を含む。)であって,本件2土地にかかる本件使用許可,本件3土地の賃料
等の平成11年4月1日から平成14年3月31日までの支出(賃料等の支出に関
するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求
又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求を怠る事実を含む。),被告津市
長が被告三重県に対し本件2土地の使用料相当の不当利得返還請求を怠る事実につ
いては監査請求の対象とされていない。
また,原告Dの平成12年3月27日の監査請求では,本件2(2)土地の売買代金の
支出,本件2土地にかかる平成11年8月ころの被告三重県に対する行政財産の目
的外使用許可,本件1,3土地の賃料等の平成11年度の支出(賃料等の支出に関
するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求
又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求を怠る事実を含む。),被告津市
長が被告三重県に対し本件1ないし3土地の使用料相当の不当利得返還請求を怠っ
ている事実が,その対象とされているが,被告津市長が平成12年4月1日から平
成14年3月31日までの本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法
行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する
不当利得返還請求を怠る事実,本件2土地にかかる本件使用許可(目的外使用許可
の日付が異なる。)は監査請求の対象とされていない。
したがって,原告A,原告B及び原告Cの第2事件の被告三重県に対する訴えのう
ち,①平成11年4月1日から平成14年3月31日までの本件3土地の賃料等に
関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請
求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求にかかる訴え,②津市の被告三
重県に対する本件2土地の使用料相当の不当利得返還請求にかかる訴えについて
は,監査請求が前置されておらず,不適法である。
原告A,原告B及び原告Cの第2事件の被告津市長に対する訴えのうち,①被告津
市長が平成11年4月1日から平成14年3月31日までの本件3土地の賃料等に
関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請
求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求を怠っていることの違法確認の
訴え,②本件使用許可の無効確認の訴え,③被告津市長が被告三重県に対し本件2
土地の使用料相当の不当利得返還請求を怠っていることの違法確認の訴えについて
は,監査請求が前置されておらず,不適法である。
原告Dの第2事件の被告三重県に対する訴えのうち,平成12年4月1日から平成
14年3月31日までの本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行
為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不
当利得返還請求にかかる訴えについては,監査請求が前置されておらず,不適法で
ある。
原告Dの第2事件の被告津市長に対する訴えのうち,被告津市長が平成12年4月
1日から平成14年3月31日までの本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事
の共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重
県に対する不当利得返還請求を怠っていることの違法確認の訴え,本件使用許可の
無効確認の訴えについては,監査請求が前置されておらず,不適法である。
原告A,原告B及び原告Cの第2事件の訴えのうち,①平成9年4月1日から平成
11年3月31日までの本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行
為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不
当利得返還請求にかかる訴え,②被告津市長が平成9年4月1日から平成11年3
月31日までの本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為による
津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返
還請求を怠っていることの違法確認の訴えについては,監査請求は前置されてい
る。
原告Dの第2事件の訴えのうち,①平成9年4月1日から平成11年3月31日ま
での本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告
三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求にか
かる訴え,②被告津市長が平成9年4月1日から平成11年3月31日までの本件
3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に
対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求を怠っている
ことの違法確認の訴えについては,監査請求は前置され,③平成11年4月1日か
ら平成12年3月31日までの本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同
不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対
する不当利得返還請求にかかる訴え,④被告津市長が平成11年4月1日から平成
12年3月31日までの本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行
為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不
当利得返還請求を怠っていることの違法確認の訴え,⑤津市の被告三重県に対する
本件2土地の使用料相当の不当利得返還請求を求める訴え,⑥被告津市長が本件2
土地の使用料相当の不当利得返還請求を怠っていることの違法確認の訴えについて
は監査請求が第2事件の訴訟提起後に追完されたといえる。
4 請求原因(1),(2)イ,(3)ア,イ,(4)ア,イの事実は当事者間で争いがな
く,(2)アの事実は,第2事件原告らと被告津市長との間で争いがなく,被告三重県
との間では弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
5 そこで,被告津市長の本件3土地に関する平成9年4月1日から平成12年3
月31日までの賃料等の支出につき,被告三重県が津市に対し,民法719条の共
同不法行為責任を有するか否かにつき検討する。
仮に,第2事件原告らの主張のとおり,本件3土地の賃貸借契約の締結が当初か
ら,津市の具体的な行政目的のためになされたものではなく,文化センターの駐車
場用地として使用させるためのもので,津市が被告三重県の負担すべき金員を肩代
わりしたものであって,地方公共団体の経費の負担区分を乱す行為を禁じた地財法
28条の2,他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を禁じる地財法2条
に違反しているとしても,肩代わりして支出された金員も津市民の便益に資すると
ころが大きく,公益のために用いられたということができ,その財務会計法上の法
規違反行為が当然に民法上の不法行為に該当するということはできないから,被告
津市長と三重県知事がなした本件3土地の賃貸借契約の締結が津市に対する民法上
の不法行為に該当するとは到底解し得ない。
そうとすれば,被告三重県が津市に対し,民法719条の共同不法行為責任を負う
とは認められない。
なお,第2事件原告らは,割当的寄附金の強制的徴収等を禁止する地財法4条の
5,肩代わり支出が国の事務に対する経費負担を禁止する地方財政再建促進特別措
置法24条2項の趣旨にも反しているとも主張するが,同規定は,地方自治体から
国への寄付を禁止するものであるから,同主張は失当である。
6 次に,被告三重県が津市に対し,被告津市長の本件3土地に関する平成9年4
月1日から平成12年3月31日までの賃料等に相当する金員の不当利得返還債務
を有するか否かにつき,検討する。
津市が違法な肩代わり支出をしたことにより,被告三重県は,賃料等の支出額に相
当する不法な利益を受けたから,三重県は津市に対し賃料等の支出額に相当する金
員の不当利得返還債務を有する旨主張する。
しかし,第2事件原告らの同主張は,何をもって,不当な「利益」があると主張す
るのか必ずしも明らかではなく,賃料等及び本件請負代金が不当な「利益」である
というのであれば,賃料等及び本件請負代金は,本件3土地の賃貸借契約や本件請
負契約に基づき支出されたものであるから,法律上の原因がないとはいえない。そ
して,仮に,第2事件原告ら主張のとおり,本件3土地の賃貸借契約の締結が当初
から,津市の具体的な行政目的のためになされたものではなく,文化センターの駐
車場用地として使用させるためのもので,津市が被告三重県の負担すべき金員を肩
代わりしたものであって,地方公共団体の経費の負担区分を乱す行為を禁じた地財
法28条の2,他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を禁じる地財法2
条に違反しているとしても,津市民の便益に資するところが大きく,公益のために
なされたものであるから直ちに本件3土地の賃貸借契約が無効となるものではな
い。本件3土地の賃貸借契約が無効となるとしても,その不当利得返還請求の相手
方は本件3土地の賃貸人とならなければならない。
また,仮に,第2事件原告らの同主張が津市が被告三重県が法律上負担すべき金員
を肩代わりしたという趣旨で「利益」があるというのであれば,被告三重県には賃
料等及び本件請負代金の支出をすべき法律上の義務はないから,第2事件原告らの
同主張は失当である。
したがって,被告三重県が津市に対し,本件3土地に関する平成9年4月1日から
平成12年3月31日までの賃料等に相当する金員の不当利得返還請求権を有する
とは認められない。
7 津市が被告三重県に対し,平成9年10月1日から平成16年5月27日まで
の本件2土地の不法占有による使用料相当の不当利得返還請求権を有するか否かに
つき検討する。
(1) 証拠(甲17ないし20,23,25ないし28,81,87,166,16
7,173ないし175,177,甲A5ないし39,乙イ2ないし8,11ない
し14,乙ハ1,証人H,証人I,証人J)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事
実が認められる。
ア 被告三重県は,昭和37年に津市丸之内に建設した旧文化会館が著しく老朽化
してきたため,昭和63年10月,三重県における文化振興を始め生涯学習の拠点
となる新たな施設の整備を計画した(甲87)。
被告三重県は,平成元年2月,津市の要望も受け(乙イ4),津市一身田上津部田
地内に新文化会館を建設することを決定した。
イ 津市教育委員会委員長,津市土地開発公社理事長及び三重県教育委員会委員長
は,平成3年2月26日,「新文化会館等の駐車場用地(約4ha)は,津市が購入
し整備して,県に無償譲渡するものとする。ただし,新文化会館等建設用地周辺の
土地取得の困難性から,新文化会館等の開館までに津市が周辺に約4haの用地を購
入できない場合には,津市は新文化会館等の開館までに,借地等を含め,約150
0台分の駐車場用地を整備し,県に無償で使用させるものとする。」,「新文化会
館等建設用地外に係る全ての工事は津市が行い,その経費は津市が負担する。」と
の内容の確認書(以下「本件確認書」という。)を取り交わした(乙イ6)。
ウ 被告三重県は,平成3年12月,文化センターの建設に着手し,平成5年度末
に工事を完成した。
文化センターは,県民の芸術文化及び生涯学習の振興並びに男女共同参画の促進を
図るために設置されたもので,三重県文化会館,三重県生涯学習センター,三重県
女性センター,三重県立図書館の各施設をもって構成されており,被告三重県から
委託を受けた財団法人三重県文化振興事業団によって管理されている(甲20,1
73)。
エ(ア) 津市と被告三重県は,平成6年10月17日,津市が津市土地開発公社から
使用借した本件2土地,津市が賃借した本件3土地及び及び津市a字bc番地の土
地につき,被告三重県が津市の指示に従って,駐車場の管理にかかる業務を被告三
重県の費用で実施するとの覚書(以下,後に変更されたものも含めて「本件覚書」
という。)を締結した(甲A32)。
(イ) 津市と被告三重県は,平成7年4月1日,本件覚書の対象を本件2・3土地に
変更するとの合意をした(甲A33)。
オ(ア) 津市は,平成7年10月16日,津市土地開発公社から,本件2土地を17
億6397万3517円で購入した(甲A5)。ただし,各土地の所有権は,売買
代金の一部又は全部を支払ったときに,それに相当する分について移転するものと
された。
津市及び土地開発公社は,平成11年7月16日,代金を16億8566万296
6円に変更するとの合意をした(乙イ14)。
(イ) 津市は,平成7年10月31日,上記(ア)の売買代金として3億6672万8
879円を支払い(甲A6ないし8),本件2(3)ないし(12)土地及び本件2(13)土
地の一部107.11㎡(合計2600.77㎡)の所有権を取得した。
そこで,津市は,平成7年11月1日,同土地につき,被告三重県との間で本件覚
書の対象から外すとの合意をした(甲A34)。
そして,被告津市長は,同日,被告三重県に対して,同日から平成8年3月31日
まで,同土地を文化センターへの来場者等に対する駐車場として使用することを許
可し,使用料は免除した(甲A18,19)。
なお,津市財産に関する条例(津市昭和36年10月5日条例第20号)による
と,行政財産の使用許可を受けた者は,土地については1月につき当該使用にかか
る土地の適正な評価額に1000分の4を乗じて算出した額を下らない額を納付し
なければならないが(13条),津市長は,公共団体又は公共的団体において公用
若しくは公共用又は公益事業の用に供するとき,あるいは津市の事務を円滑に行う
ために必要な用に供するときは,使用料を減免することができる(14条の2)と
規定されている(甲23,乙イ13)。
(ウ) 被告津市長は,平成8年3月22日,被告三重県に対して,同年4月1日から
平成9年3月31日まで,上記(イ)の土地を文化センターへの来場者等に対する駐車
場として使用することを許可し,使用料は免除した(甲A20,21)。
(エ) 津市は,平成8年7月5日,上記(ア)の売買代金として3億6672万931
5円を支払い(甲A9ないし11),本件2(1)土地の一部2373.64㎡及び本
件2(13)土地の一部197.05㎡(合計2570.69㎡)の所有権を取得し
た。
そこで,津市は,平成8年7月6日,同土地につき,被告三重県との間で本件覚書
の対象から外すとの合意をした(甲A35)。
そして,被告津市長は,平成8年8月19日,被告三重県に対して,同年7月6日
から平成9年3月31日まで,同土地を文化センターへの来場者等に対する駐車場
として使用することを許可し,使用料は免除した(甲A22,23)。
(オ) 津市は,平成8年12月20日,本件3(2)土地の一部1088.57㎡,本
件3(3)土地の一部412.55㎡及び本件3(4)土地の一部109.10㎡につ
き,被告三重県との間で本件覚書の対象から外すとの合意をした(甲A36)。
(カ) 被告津市長は,平成9年4月1日,三重県に対して,同日から平成10年3月
31日まで,本件2(1)土地の一部2373.64㎡及び本件2(3)ないし(13)土地
(合計5171.46㎡)を文化センターへの来場者等に対する駐車場として使用
することを許可し,使用料は免除した(甲A24,25)。
(キ) 津市は,平成9年7月15日,上記アの売買代金として3億6672万866
7円を支払い(甲A12ないし14),本件2(1)土地の一部1731.60㎡及び
本件2(2)土地の一部798.55㎡(合計2530.15㎡)の所有権を取得し
た。
そこで,津市は,同日,同土地につき,被告三重県との間で本件覚書の対象から外
すとの合意をした(甲A37)。
そして,被告津市長は,平成9年8月18日,被告三重県に対して,同年7月15
日から平成10年3月31日まで,同土地を文化センターへの来場者等に対する駐
車場として使用することを許可し,使用料は免除した(甲A26,27)。
(ク) 被告津市長は,平成10年3月25日,三重県に対して,同年4月1日から平
成11年3月31日まで,本件2(1)・(3)ないし(13)土地及び本件2(2)土地の一部
798.55㎡(合計7701.61㎡)を文化センターへの来場者等に対する駐
車場として使用することを許可し,使用料は免除した(甲A28,29)。
カ(ア) 津市は,平成10年4月1日,本件1土地につき,被告三重県との間で本件
覚書の対象に加えるとの合意をした(甲A38)。
(イ) 津市は,平成10年7月23日,上記オ(ア)の売買代金として3億6672万
9409円を支払い(甲A15ないし17),本件2(2)土地の一部2490.44
㎡の所有権を取得した。
そこで,津市は,同日,同土地につき,被告三重県との間で本件覚書の対象から外
すとの合意をした(甲A39)。
そして,被告津市長は,同日,被告三重県に対して,同日から平成11年3月31
日まで,同土地を文化センターの来場者等に対する駐車場として使用することを許
可し,使用料は免除した(甲A30,31)。
(ウ) 被告津市長は,平成11年4月1日,三重県に対して,同日から平成12年3
月31日まで,本件2(1)・(3)ないし(13)土地及び本件2(2)土地の一部3288.
99㎡(合計1万0192.05㎡)を文化センターへの来場者等に対する駐車場
として使用することを許可し,使用料は免除した(甲28)。
(エ) 津市は,平成11年7月30日,上記オ(ア)の売買代金として2億1874万
6696円を支払い(甲48),本件2(2)土地の一部1462.97㎡の所有権を
取得した。
そこで,津市は,同日,同土地につき,被告三重県との間で本件覚書の対象から外
すとの合意をした(弁論の全趣旨)。
そして,被告津市長は,平成11年7月30日,被告三重県に対して,同月31日
から平成12年3月31日まで,同土地を文化センターへの来場者等に対する駐車
場として使用することを許可し,使用料は免除した(甲49)。
(オ) 被告津市長は,平成12年3月30日,被告三重県に対して,同年4月1日か
ら平成13年3月31日まで,本件2土地(合計1万1655.02㎡)を文化セ
ンターへの来場者等に対する駐車場として使用することを許可し,使用料は免除し
た(甲50)。
(カ) 被告津市長は,平成13年3月30日,被告三重県に対して,同年4月1日か
ら平成14年3月31日まで,本件2土地(合計1万1655.02㎡)を文化セ
ンターへの来場者等に対する駐車場として使用することを許可し,使用料は免除し
た(甲166)。
(キ) 被告津市長は,平成14年3月29日,被告三重県に対して,同年4月1日か
ら平成15年3月31日まで,本件2土地(合計1万1655.02㎡)を文化セ
ンターへの来場者等に対する駐車場として使用することを許可し,使用料は免除し
た(甲167)。
(ク) 被告津市長は,平成15年3月末ころ,被告三重県に対して,同年4月1日か
ら平成16年3月31日まで,本件2土地(合計1万1655.02㎡)を文化セ
ンターへの来場者等に対する駐車場として使用することを許可し,使用料は免除し
た(弁論の全趣旨)。
(ケ) 被告津市長は,平成16年3月末ころ,被告三重県に対して,同年4月1日か
ら平成17年3月31日まで,本件2土地(合計1万1655.02㎡)を文化セ
ンターへの来場者等に対する駐車場として使用することを許可し,使用料は免除し
た(弁論の全趣旨)。
キ 被告三重県は,文化センターへの来場者のために,以下の駐車場を管理してい
る(甲18,26,27,乙ハ1)。その配置は,別紙駐車場配置図に記載のとお
りである。
(ア) 北駐車場 196台分(被告三重県所有地)
(イ) 東駐車場  53台分(被告三重県所有地)
(ウ) 南駐車場 134台分(被告三重県所有地)
(エ) 西駐車場(口池駐車場)  174台分(本件3土地)
(オ) 第1駐車場(正面駐車場) 108台分(本件2土地)
(カ) 第2駐車場(正面駐車場) 141台分(本件2土地)
(キ) 第3駐車場(正面駐車場)  64台分(本件2土地)
(ク) 第4駐車場(上津部田駐車場,北西駐車場) 358台分(本件1土地)
(ケ) 臨時駐車場 285台分(被告三重県がK不動産株式会社から賃借)
ク 文化センターと第4駐車場の間には,別紙駐車場配置図記載のとおり,津市の
所有する上津部田城址公園がある。上津部田城址は室町時代に築造されたもので,
津市は,平成5年2月5日,津市文化財保護条例(津市昭和31年条例第5号)に
基づき史跡として指定した(甲17ないし19,25ないし27,乙イ7)。
(2) 上記認定事実によれば,津市は被告三重県に対し,平成6年10月17日の本
件覚書をもって,文化センターへの来場者のための駐車場として本件2土地を無償
で貸し渡す旨約し,その後,本件覚書の変更や行政財産の使用許可をもってこの使
用貸借契約が更新されてきたと認められる。
そして,津市は,津市教育委員会委員長,津市土地開発公社理事長及び三重県教育
委員会委員長の間で取り交わされた本件確認書に従い,被告三重県に文化センター
への来場者のための駐車場用地を無償で貸与若しくは無償で譲渡する目的で本件2
土地を借り受けたり,取得したりして,上記使用貸借契約を締結したものと認めら
れる。
ところで,地財法9条は,地方自治体の事務を行うために要する経費については,
同法10条以下に定める例外を除き,当該地方公共団体が全額これを負担するもの
としているが,文化センターの設置,管理は,「図書館・・・公会堂,文化・・・
に関する施設を設置し若しくは管理」する事務であり(旧地自法2条3項5号),
「一般の市町村が処理することが不適当であると認められる程度の規模のもの」で
あって(旧地自法2条6項),被告三重県の事務であるといえる上に,地財法10
条以下に定める例外の事由はないから,文化センターの設置,管理の費用は三重県
の全額負担となるべきものである。文化センターの駐車場の設置,管理の費用につ
いても,文化センターの設置,管理の一部であるといえるから,同様である。
したがって,津市が文化センターの駐車場の設置,管理に要する費用を負担するこ
とは,法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について地方公共
団体相互間における経費の負担区分を乱すことに当たり,地方財政法28条の2に
違反するものであって,そのためにされた本件2土地の使用貸借契約の締結は違法
なものといわざるを得ない。
しかし,そうであるとしても,上記使用貸借契約は文化センターの駐車場のためと
いう公益目的でなされたものであって,津市民の便益に資するところが大きいか
ら,そのことによって,本件2土地の使用貸借契約が公序良俗に反し,無効となる
とまで断定することはできない。
そうとすれば,被告三重県は,上記使用貸借契約に基づき本件2土地を無償で使用
する権原を有するから,津市に対して本件2土地の使用料相当の不当利得返還債務
を負わないということができる。
なお,第2事件原告Dは,上記使用貸借契約が他の地方公共団体の財政に累を及ぼ
すような施策を禁じる地財法2条,割当的寄附金の強制的徴収等を禁止する地財法
4条の5に違反しており,国の事務に対する経費負担を禁止する地方財政再建促進
特別措置法24条2項の趣旨にも反していると主張する。しかし,上記使用貸借契
約が津市の財政に累を及ぼすことを認めるに足りる証拠はないから,地財法2条に
違反するとは認められない。また,地財法4条の5,地方財政再建促進特別措置法
24条2項は地方自治体から国への寄付を禁止するものであるから,同規定に違反
するとはいえない。
被告三重県は,「文化センターは,地自法,地財法及びその他の個別の法令上,都
道府県の固有事務及び都道府県が固有に負担すべき経費区分にかかる事務とされて
いるものではなく,広域にわたるものであっても,規模によっては一般の市町村の
事務とされ,本来市町村の事務として処理することを妨げない「補完行政事務」で
あると考えられるのであり,このような場合における都道府県と市町村の役割分担
については,地方公共団体相互間の政策的な裁量において任意に決定できるもので
ある。」と主張するが,被告三重県のいう補完行政事務であっても,県の事務とさ
れた以上,地財法10条以下に定める例外の事由がない場合には県がその費用を全
額負担すべきものであるから,被告三重県の同主張は採用できない。
被告津市長は,本件2土地の駐車場の事務は津市の事務である旨主張するが,本件
確認書に従い,被告三重県に文化センターへの来場者のための駐車場用地を無償で
貸与若しくは無償で譲渡する目的で本件2土地を借り受けたり,取得したりして,
上記使用貸借契約を締結したという経緯や文化センター,上津部田城址公園と本件
2土地の位置関係に照らせば,少なくとも本件2土地の駐車場はもっぱら文化セン
ターのための駐車場であるといわざるを得ないから,被告津市長の同主張は採用で
きない。
8 以上によれば,原告A,原告B及び原告Cの第2事件の訴えのうち,①平成1
1年4月1日から平成14年3月31日までの本件3土地の賃料等に関するFと三
重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の
被告三重県に対する不当利得返還請求にかかる訴え,②津市の被告三重県に対する
本件2土地の使用料相当の不当利得返還請求にかかる訴え,③平成11年4月1日
から平成14年3月31日までの本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共
同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に
対する不当利得返還請求を怠っていることの違法確認の訴え,④被告津市長が被告
三重県に対し本件2土地の使用料相当の不当利得返還請求を怠っていることの違法
確認の訴え,⑤本件使用許可の無効確認の訴えは不適法であるから,これを却下す
べきである。
原告Dの第2事件の訴えのうち,①平成12年4月1日から平成14年3月31日
までの本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被
告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求に
かかる訴え,②被告津市長が平成12年4月1日から平成14年3月31日までの
本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告三重
県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求を怠って
いることの違法確認の訴え,③本件使用許可の無効確認の訴えは不適法であるか
ら,これを却下すべきである。
第2事件原告らの第2事件のその余の請求はいずれも理由がないから,これを棄却
すべきである。
第3 第3事件について
1 訴えの変更について
本件1,3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為による津市の被告
三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返還請求にか
かる訴えの変更はない。
津市の被告三重県に対する本件2土地に関する使用料相当の不当利得返還請求にか
かる訴えについては,平成11年度の使用料相当の不当利得返還請求が拡張された
ものであり,請求の基礎は本件2土地の不法占有にかかわるものであって同一であ
ると認められるから,訴えの変更には当たらない。
したがって,被告津市長は訴えの変更に異議がある旨述べるが,請求拡張後の請求
の趣旨イについて判断する。
2 監査請求の前置について
(1) 証拠(甲69,70)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 原告D及び原告Eは,平成12年3月27日,津市監査委員に対し,以下の
(ア),(ウ)の支出は本来被告三重県が負担すべき金員であり,これを津市が負担する
のは地財法28条の2に違反するとして,①下記支出金額の被告三重県及びFに対
する損害賠償請求,②下記(イ)の目的外使用許可の是正,③被告三重県に対して本件
1ないし3土地の賃料を請求することを求めて監査請求を行った(甲69)。
(ア) 本件2(2)土地の一部1462.97㎡にかかる売買代金の平成11年度の支

(イ) 本件2土地にかかる平成11年8月ころの被告三重県に対する行政財産の目的
外使用許可
(ウ) 本件1,3土地の賃料等の平成11年度の支出
イ 津市監査委員は,平成12年5月23日,上記監査請求を棄却した(甲7
0)。
ウ 原告D及び原告Eは,平成12年6月15日,第3事件訴訟を当裁判所に提起
した。
(2) 以上によれば,第3事件の訴えのうち津市の被告三重県に対する本件2土地の
不法占有に関する平成11年度分の使用料相当の不当利得返還請求にかかる部分
(642万7692円)については,上記(1)ア③の監査請求で,第3事件の訴えの
うち本件1,3土地に関する平成11年度分の賃料等に関する共同不法行為による
Fと三重県知事の共同不法行為による津市の被告三重県に対する損害賠償又は津市
の被告三重県に対する不当利得返還請求にかかる部分(合計1032万8765
円)については,上記(1)ア(ウ)の監査請求で,それぞれ監査請求が前置されたとい
える。
3 二重起訴について
第2事件の請求の趣旨イ(ア)aは,津市の被告三重県に対する本件2土地の不法占有
に関する平成9年10月1日から平成16年5月27日(本件口頭弁論終結日)ま
での使用料相当の不当利得返還請求にかかるものであるところ,このうち,平成1
1年度分642万7692円については,第3事件の請求の趣旨イ(ア)と重複する。
また,第2事件の請求の趣旨イ(ア)bは,本件3土地に関する平成9年4月1日から
平成14年3月31日までの賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為による
津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当利得返
還請求にかかるものであるところ,このうち,平成11年度分393万1656円
については,第3事件の請求の趣旨イ(ア)と重複する。
したがって,原告Dの第3事件の訴えのうち,本件2,3土地にかかる部分は二重
起訴に当たり不適法である。
4(1) 請求原因(1),(2)ア,イ,(4)の事実は当事者間に争いがなく,同(3)アない
しエの事実は弁論の全趣旨により認められる。
(2) その余の第3事件の請求についての認定,判断は,上記第2の5ないし7につ
いての説示と同様である(ただし,「本件3土地」を「本件1,3土地」と読み替
える。)から,これを引用する。
5 以上によれば,原告Dの第3事件の訴えのうち,①本件2土地の使用料相当の
不当利得返還請求,②本件3土地の賃料等に関するFと三重県知事の共同不法行為
による津市の被告三重県に対する損害賠償請求又は津市の被告三重県に対する不当
利得返還請求にかかる部分は不適法であるから,これを却下すべきである。
原告Dの第3事件のその余の請求及び原告Eの第3事件の請求はいずれも理由がな
いから,これを棄却すべきである。
第4 結論
よって,主文のとおり判決する。
津地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官    内田計一
裁判官    上野泰史
裁判官    後藤 誠
(別 紙)
物件目録1
第4駐車場(地積合計1万0327.65㎡)
(1) 所在津市一身田上津部田字ヌノ坪
地番2090番
地目田
地積3637.28㎡
(2) 所在津市一身田上津部田字ヌノ坪
地番2099番
地目田
地積1748.28㎡
(3) 所在津市一身田上津部田字ヌノ坪
地番2104番
地目田
地積685.21㎡
(4) 所在津市一身田上津部田字ヌノ坪
地番2105番
地目田
地積3146.11㎡
(5) 所在津市一身田上津部田字ヌノ坪
地番2107番
地目田
地積1111.01㎡
物件目録2
第1ないし第3駐車場(地積合計1万1655.02㎡)
(1) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3058番
地目宅地
地積4105.24㎡
(2) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3059番
地目宅地
地積4751.96㎡
(3) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3063番
地目宅地
地積238.36㎡
(4) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3064番
地目宅地
地積220.55㎡
(5) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3065番
地目宅地
地積227.38㎡
(6) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3066番
地目宅地
地積233.41㎡
(7) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3067番
地目宅地
地積270.42㎡
(8) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3068番
地目宅地
地積263.76㎡
(9) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3069番
地目宅地
地積241.91㎡
(10) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3070番
地目宅地
地積248.04㎡
(11) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3071番
地目宅地
地積265.32㎡
(12) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3073番
地目宅地
地積284.51㎡
(13) 所在津市一身田上津部田字ヲノ坪
地番3074番
地目宅地
地積304.16㎡
物件目録3
西駐車場(地積合計7958.34㎡,平成8年12月20日以降は6348.0
3㎡)
(1) 所在津市一身田上津部田字タノ坪
地番2123番
地目田
地積1530.26㎡
(2) 所在津市一身田上津部田字タノ坪
地番2129番
地目田
地積2270.14㎡
(平成8年12月20日以降は1181.57㎡)
(3) 所在津市一身田上津部田字タノ坪
地番2133番
地目田
地積1939.89㎡
(平成8年12月20日以降は1527.34㎡)
(4) 所在津市一身田上津部田字タノ坪
地番2137番
地目田
地積1602.36㎡
(平成8年12月20日以降は1493.17㎡)
(5) 所在津市一身田上津部田字タノ坪
地番2140番
地目田
地積615.69㎡

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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