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平成16年12月22日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成16年(ハ)第8380号測量費返還等本訴請求事件
平成16年(ハ)第13580号測量費支払反訴請求事件
口頭弁論終結日 平成16年11月24日
 判      決
東京都○○区△△×-×-××
原告(反訴被告。以下,単に「原告」という。) 
            
訴訟代理人弁護士
東京都○○区△△×-×-×
被告(反訴原告。以下,単に「被告」という。)  
                    
代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士
主      文
1 被告は,原告に対し,36万3000円及びこれに対する平成16年6月20日から支
払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の本訴請求を棄却する。
3 被告の反訴請求は,これを棄却する。
4 訴訟費用は,本訴反訴を通じて被告の負担とする。
5 この判決主文第1項は,仮に執行することができる。  
事実及び理由
第1 請求
1 本訴請求
被告は,原告に対し,37万3480円及び内金36万3000円に対する平成16年
6月20日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年6分の,内金1万0480
円に対する平成16年6月20日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年
5分の各割合による金員を支払え。
2 反訴請求
原告は,被告に対し,33万円及びこれに対する平成16年9月16日 (本件反
訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本訴請求原因の要旨
原告と,土地測量の営業等を業とする会社である被告との間の,平成15年12
月6日付け,原告の所有する○○県○○○郡○○○町大字○○字○○○×××
×番の土地(以下「本件土地」という。)の測量工事等を代金69万3000円(消費
税込み),着手時期同年12月10日,完成時期平成16年1月中旬(ただし,大雪が
生じた場合4月初旬)で実施する内容の契約(以下「本件契約」という。)が,下記事
由によって解除,無効等とされたことにより,前同日,原告が被告に対して支払った
着手金36万3000円及びこれに対する遅延損害金並びに平成15年12月19日
被告の要請で原告の息子が境界立会いのため本件土地の所在地まで出向いた交
通費の損害1万0480円及びこれに対する遅延損害金の各支払請求
記
(1) 契約解除(クーリング・オフ)
被告の行為は,特定商取引に関する法律の訪問販売に該当するところ,被告
から原告に対し,クーリング・オフ制度を記した書面の交付がなされていない。よ
って,原告は,本件訴状をもって本件契約を解除する。
(2) 錯誤
原告は,本件土地の隣地所有者が被告に測量と境界立会いを委任している
ような被告の言動を信じ,本件土地の境界標を入れるには同時に測量すること
が得策であると判断して本件契約を締結したが,後になって,隣地所有者は被
告に何らの委任もしていないことが判明した。原告の本件契約締結の意思表示
は,その重要な部分に錯誤が有り無効である。
(3) 詐欺
被告は,本件契約の締結に際し,本件土地の隣地所有者が,被告に測量,境
界立会いを委任していないにもかかわらず,委任しているように原告を申し欺き
その旨原告を誤信せしめて本件契約を成立せしめたものであり,原告は,被告
に対し,本件訴状をもって本件契約の意思表示を取り消す。
(4) 解除
本件契約締結の動機となった本件土地の隣地所有者が被告に測量,境界立
会いの委任をしているという被告の言動が事実に反していたこと及び原告と本
件土地の隣地所有者の立会いがないにもかかわらず,測量業務を行おうとして
いる等,被告の行為はあるべきプロとしての行動にそぐわないものであり,原告
としてはこれ以上被告との信頼関係を維持することは困難であると判断し,平成
16年3月1日付け内容証明郵便をもって本件契約を解除する旨の意思表示をし
た。
2 反訴請求原因の要旨
本件契約に基づいて,被告が,平成15年12月19日,本件土地の所在地にお
いて,原告関係者立会いの上,測量を実施し,工期内に測量図を完成させたことに
よる残代金33万円の支払請求。
3 争点
原告の前記1,(1)から(4)の各主張の成否
第3 当裁判所の判断
1 契約解除(クーリング・オフ)について
(1) 本件契約締結に至る経緯は次のとおりであることに争いがない。
平成15年11月中旬,被告から原告に宛てた封書(甲1の1,2)を見た原告
が被告に電話をし,平成15年11月26日,被告の代表者である△△△△こと△
△△△(以下「△△」という。)が,原告の経営する有限会社○○不動産の事務
所を訪問した。そこで,被告が本件契約の見積書を送ることとなり,その翌27
日,被告は見積書(乙3)を郵送し,これを見た原告は,被告に対し,電話で本件
土地の測量を依頼したい旨の返事(申込)をした。
その後,平成15年12月6日,原告の前記事務所において,本件契約の「測
量工事発注書」(甲2)が作成された。
(2) 本件契約は,特定商取引に関する法律(以下,単に「法」という。)に
よって規定されている「訪問販売」にあたる(法2条1項1号)ことについては当事
者間に争いがない。
なお,法2条4項は,「指定役務」につき,政令で定めることとし,特定商取引
に関する法律施行令3条,別表第三,十五は,「土地の測量」をその対象として
いる。これは,特定商取引に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成15
年6月4日政令第245号)によって追加され,平成15年7月1日から施行されて
いる。
(3) 契約解除(クーリング・オフ)の成否(消極)
訪問販売における契約の解除等(クーリング・オフ)に関しては,法9条がその
要件を規定しているところであるが,次の4種の類型があり,事業者が,①営業
所等以外の場所で契約の申込みを受けた場合,②営業所等において特定顧客
から契約の申込みを受けた場合,③営業所等以外の場所で契約を締結した場
合,④営業所等において特定顧客と契約を締結した場合,である。
本件は,前記(1)のとおり,役務提供事業者である被告が,被告の営業所等
以外の場所である原告の事務所において,指定役務である土地の測量につき
役務提供契約を締結した場合であるから,前記③に該当するものと解される。こ
の場合には,法9条1項本文括弧書において,「営業所等において申込みを受
け,営業所等以外の場所において売買契約又は役務提供契約を締結した場合
を除く。」と規定している。これは,「特定顧客」以外であれば,役務の提供を受け
る者の意思形成において不安定性があるとはいえないので除外されているもの
と解され,法5条1項1号及び割賦販売法4条の3,第1項の除外措置と同様の
趣旨によるものと考えられる。
本件の原告は,「特定顧客」の定義である,被告が「営業所等以外の場所に
おいて呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘
引した者」(法2条1項2号,特定商取引に関する法律施行令1 条)に該当しな
いものというべきであるから前記②の要件も満たさないことが明らかである。
したがって,法5条の書面の交付の有無,期間経過の有無を問わず,本件契
約はクーリング・オフの適用の対象とはならないものというべきである。
 2 錯誤及び詐欺等の主張について
(1) 本件契約締結に至る経緯は,第3,1,(1)に述べたとおりであるが,原告
は,被告からの郵便物(甲1の1,2)により,本件土地の隣地の所有者が被告に
測量を依頼し,その結果,被告から原告に立会い依頼があったものと思い,平
成15年11月26日の△△の説明を聞いた上,原告は本件土地の正式な測量
図を持っていなかったこと,また,本件土地の境界標が一部欠けていたことか
ら,隣地が測量,境界標設置をするのならば同時に本件土地についても測量等
した方が得策であると考えて本件契約を締結したことが認められる(甲4,乙
9)。△△は,たまたま本件土地付近を通りかかった際,本件土地上に青色シー
トで屋根を作り自動車1台分の駐車場として使用されているところを目撃し,境
界標が一部見あたらなかったことから測量の注文をとれるかもしれないと考えて
本件土地の所有者が原告であることを調べ,前記郵便物を送付した。△△は,
まず原告に会って欲しかったことから,真実は隣地所有者である×××外1名
の測量依頼を受けていなかったにもかかわらず,近隣の測量で立会いをお願い
する可能性があるので会って欲しい旨記載し,真実を原告に告げないまま,本
件土地の測量,境界標設置の必要性が差し迫っているものと誤信させ,原告の
前記誤信を利用して本件契約の申込及び締結をさせたものであることが認めら
れる(甲4,乙9)。
(2) 原告のなした本件契約の申込及び締結の各意思表示は,その内容自体では
なく動機において錯誤があるものというべきであるから,その動機が表示されて
法律行為の内容となっていることが必要であると解される。
原告の前記錯誤は,まさに△△の言動によって惹起されたものにほかならな
いから,原告が錯誤に陥っていることを被告が知っていたことは明らかである。
また,真実を知っていたならば,通常人ならこのような契約は締結しないであろう
といいうる関係が認められるので,本件契約締結における原告の意思表示に
は,法律行為の要素に錯誤があるものというべく,本件契約は無効であると解さ
れる(民法95条)。
(3) 原告が錯誤に陥ったことは,△△の前記各言動に起因することから,本件契
約は被告の瑕疵ある意思表示によってなされたものであるとして詐欺による取
消の主張(民法96条1項)もありうるところ,前述のとおり,本件契約は,その成
立の当初において既に無効であるというべきであるから,一旦有効に成立したこ
とを前提とする詐欺による意思表示の取消の主張は理由がない。
また,原告の第2,1,(4)の解除の主張もその前提を欠き,理由がないことに
帰する。
(4) 原告の長男○○○○が,平成15年12月19日被告の要請で境界立会いの
ため本件土地まで出向いた交通費の損害1万0480円は,被告の手許に保有さ
れた利得ではないのであるから,本件契約が錯誤により無効であるからといっ
て,直ちに原告に別途損害賠償請求権が発生するとはいえないので請求の根
拠を欠く。
3 反訴請求について
本件契約が有効に成立したことを前提とする反訴請求は,その前提を欠くもので
あり理由がない。
4 結論
以上のところから,原告の本訴請求は,36万3000円及びこれに対する平成1
6年6月20日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限
度で理由があるのでこれを認容することとし,その余は理由がないのでこれを棄却
することとし,被告の反訴請求は,理由がないのでこれを棄却することとし,主文の
とおり判決する。
東京簡易裁判所民事第○室
裁 判 官安 田 弘 光             

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