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(本判決の構成)
本判決は,次の構成からなる。
1本文(判決)
2別紙1原告目録1
平成14年・第513号事件原告及び平成15年・第171号事件原告を記載した
もの
3別紙2原告目録2
原告目録1記載の原告らのうち,普天間飛行場における米軍機による一定の時間帯
の離着陸及び騒音の規制の請求,本件航空機騒音を測定・記録し,本件航空機騒音が
到達する地域を明確にすべきことの請求並びに口頭弁論終結の日の翌日から生ずべき
損害の賠償請求をしている原告らの氏名を記載したもの
4別紙3原告訴訟代理人目録
原告らの訴訟代理人及び原告らの訴訟復代理人の氏名,肩書を記載したもの
5別紙4被告指定代理人目録
被告の指定代理人の氏名を記載したもの
6別紙5賠償額一覧表(訴状送達前)
判決主文第2項において,前記両事件の各訴状送達日までの損害の賠償請求等を認
容した部分について,被告が支払いをすべき原告ら及びその金額等を記載したもの
7別紙6賠償額一覧表(訴状送達後)
判決主文第3項において,前記両事件の各訴状送達の日の翌日からの損害の賠償請
求等を認容した部分について,被告が支払いをすべき原告ら及びその金額等を記載し
たもの
8別紙7請求期間一覧表
9別紙8本件コンター図
10別紙9原告居住経過等一覧表
(本判決において用いる略称及び用語)
本判決において用いる略称及びその正式名称並びに用語及びその意義は,次表のとおり
である。
略称又は用語正式名称又は用語の意義
第1事件平成14年・第513号普天間米軍基地爆音差止等請求
事件
第2事件平成15年・第171号普天間米軍基地爆音差止等請求
事件
被告第1事件被告兼第2事件被告
米軍アメリカ合衆国軍隊
米軍機米軍の使用する航空機
本件航空機騒音普天間飛行場に離着陸する米軍機が普天間飛行場周辺にお
いて発する騒音(普天間飛行場に着陸している米軍機がエ
ンジン調整その他の理由により普天間飛行場において発す
る騒音を含む)。
安保条約日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条
約(昭和35年条約第6号)
地位協定日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条
約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆
国軍隊の地位に関する協定(昭和35年条約第7号)
土地使用特措法日本国とアメリカ合衆国の間の相互協力及び安全保障条約
第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国
軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関
する特別措置法(昭和27年法律第140号)
音圧音波によって空気中に生ずる圧力
周波数1秒間の振動数
dB音の強さを表す物理的音圧レベル
航空機騒音航空機による騒音
ICAO国際民間航空機構(InternationalCivilAviationOrga
nization)
WECPNL加重等価継続知覚騒音レベル(WeightedEquivalentCont
inuousPerceivedNoiseLevel)
W値WECPNLによって表される数値
PNL知覚騒音レベル(PerceivedNoiseLevel。騒音を周波数
分析してノイ(Noy)という量に変換して算出する航空機
騒音のうるささを表す単位であり,国際標準化機構(Inte
rnationalOrganizationforStandardization。ISO)が
昭和42年(1967年)に航空機騒音に用いることを勧
告したもの
()EPNL実効知覚騒音レベルEffectivePerceivedNoiseLevel
ECPNL等価継続知覚騒音レベル(EquivalentContinuousPercei
vedNoiseLevel)
昭和48年環境基準航空機騒音に係る環境基準について(昭和48年環境庁告
示第154号)
環境基準方式昭和48年環境基準に定める方法によるWECPNLの算出方式
生活環境整備法防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49
年法律第101号)
自衛隊等自衛隊法(昭和29年法律第165号)2条1項に規定す
る自衛隊又は米軍
防衛施設自衛隊の施設又は安保条約6条に基づく施設及び区域並び
に地位協定2条1項の施設及び区域
第1種区域自衛隊等の航空機の離陸,着陸等のひん繁な実施により生
ずる音響に起因する障害が著しいと認めて防衛大臣(平成
19年法律第80号による改正前は防衛施設庁長官)が指
定する防衛施設の周辺の区域
生活環境整備法施行令防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律施行令(昭
和49年政令第228号)
防衛施設庁方式自衛隊等の航空機の離陸,着陸等の頻繁な実施により生ず
る音響の影響度をその音響の強度,その音響の発生の回数
及び時刻等を考慮して防衛省令(平成19年政令第3号に
よる改正前は内閣府令,平成12年政令第303号による
改正前は総理府令)で定める算定方法
生活環境整備法施行規則防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律施行規則
(昭和49年総理府令第43号)
本件コンター普天間飛行場に係る生活環境整備法所定の第1種区域
W75区域本件コンターのうち,W値75以上80未満の区域
W80区域本件コンターのうち,W値80以上85未満の区域
昭和56年告示防衛施設庁告示第13号(昭和56年7月18日告示)
昭和58年告示防衛施設庁告示第21号(昭和58年9月10日告示)
国新城測定点被告が昭和60年3月に宜野湾市新城に設置した自動騒音
測定点
国大謝名測定点被告が昭和60年3月に宜野湾市大謝名に設置した自動騒
音測定点
国測定点国新城測定点及び国大謝名測定点
県野嵩測定局沖縄県が平成9年3月に宜野湾市野嵩(野嵩一区公民館)
に設置した自動騒音測定局
()県上大謝名測定局沖縄県が平成9年3月に宜野湾市大謝名上大謝名公民館
に設置した自動騒音測定局
県新城測定局沖縄県が平成9年9月に宜野湾市新城(普天間中学校)に
設置した自動騒音測定局
市真志喜測定局宜野湾市が平成9年9月に同市真志喜(真志喜公民館)に
設置した自動騒音測定局
県等測定局県野嵩測定局,県上大謝名測定局,県新城測定局及び市真
志喜測定局
暗騒音対象の音がないときのその場所における騒音
山本京都大学名誉教授(当時)山本剛夫
沖縄県調査委員会財団法人沖縄県公衆衛生協会が設置した航空機騒音健康影
響調査研究委員会
THI東大式自記健康調査票(TheTodaiHealthIndex)
沖縄県調査沖縄県調査委員会が平成7年度から平成10年度までに実
施した航空機騒音による嘉手納飛行場及び普天間飛行場の
周辺住民に対する健康影響に関する調査
沖縄県調査報告書沖縄県が平成11年3月に取りまとめた「航空機騒音によ
る健康への影響に関する調査報告書」
居住経過表別紙9「原告居住経過等一覧表」
原告番号別紙5「賠償額一覧表(訴状送達前,別紙6「損害賠償)」
額一覧表(訴状送達後,別紙7「請求期間一覧表」及び)」
居住経過表に各記載した原告番号
生活妨害睡眠妨害を除く生活妨害
生活妨害全部睡眠妨害を含む生活妨害
航空特例法日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条
約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆
国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の
軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航空法の特例に関す
る法律(昭和27年法律第232号)
日米合同委員会地位協定25条に規定する合同委員会
平成8年規制措置日米合同委員会において平成8年3月28日に合意された
「嘉手納飛行場及び普天間飛行場における航空機騒音規制
措置」
民事特別法日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条
約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆
国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法(昭和
27年法律第121号)
タッチアンドゴー離着陸を繰り返す訓練
民間空港空港整備法(昭和31年法律第80号)2条1項が規定す
る空港
低周波音周波数1~80Hz又は1~100Hzの範囲の音
パーセンタイル値データの値を小さい方から並べたときに,データ数の当該
パーセントの位置に相当するデータの値
Ldn昼夜等価騒音レベル(Day-nightsoundlevel。夜間(午)
後10時から翌日午前7時まで)の騒音レベルに10dBを加
えてから24時間のLeqを求めたもの
Leq等価騒音レベル(EquivalentcontinuousA-weightedsou
ndpressurelevel。LAeqとも表記され,ある時間範囲に)
ついて,変動する騒音の騒音レベルをエネルギー的な平均
値として表したもの
沖縄県調査施設庁方式近似W沖縄県調査委員会が算出した防衛施設庁方式に近似するW
値値
WHO世界保健機関(WorldHealthOrganization)
環境基準超過率環境基準を超過した日数の割合
本件低周波音普天間飛行場に離着陸等する米軍機,特にヘリコプターの
発する低周波音
可聴音人が聴くことができる音
中部地域沖縄市,うるま市,宜野湾市,浦添市,中頭郡の各行政区

住宅防音工事被告が,生活環境整備法4条に基づき,助成の措置を採っ
て実施された住宅の防音工事
計画防音量被告が,住宅防音工事における防音工事によって達成しよ
うとする防音効果の程度
基地助成交付金国有提供施設等所在市町村助成交付金
基地調整交付金施設等所在市町村調整交付金
将来の損害口頭弁論終結の日の翌日である平成20年2月1日から平
成21年1月31日までに生ずべき損害
国施設庁方式近似W値被告が国測定点から得られたデータを基に1年間の総飛行
回数の累積度数90%による標準総飛行回数を求め継続時
間補正などをして算出した防衛施設庁方式に近似するW値
オッズ比Oddsratio。疾病の発症リスクなどを比較するための尺度
として一般に用いられているものであって,対照群におけ
,,{()る比率をp0暴露群における比率をp1とすると1-p0
/p0・p1/(1-p0}となるもの}{)
周辺整備法防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和41年法律第1
35号)
住宅防音仕方書防衛施設周辺住宅防音事業工事標準仕方書
本件差止請求普天間飛行場における米軍機による一定の時間帯の離着陸
及び騒音の規制の請求
PNLT純音補正知覚騒音レベル(ToneCorrectedPerceivedNoi
seLevel)
NNINoiseandNumberIndex。PNLに飛行回数の補正を加えた
もの
常駐機普天間飛行場に常駐している米軍機
外来機常駐機以外であって,普天間飛行場に飛来する航空機
長田国立公衆衛生院生理衛生学部の長田泰公
純音単一の周波数を持つ音
定型陳述書原告らのアンケート式陳述書
生活環境調査沖縄県調査委員会が,普天間飛行場周辺住民等の生活の質
及び環境の質に対して航空機騒音の存在が与えている影響
を知る目的で実施した調査
小林厚生省(当時)国立公衆衛生院建築衛生学部小林陽太郎
白色騒音ホワイトノイズ。可聴範囲の周波数の成分を均等に含んで
いる音
児玉日本女子大学名誉教授児玉省
ピンクノイズ機械から生ずる単純な音であって,パワーが周波数に反比
例するもの
多重ロジスティック回帰分析複数の因子を説明変数として,ある事象が生ずる確率を推
測する統計解析の方法
トレンド検定量反応関係の検出を目的とした統計的な検定手法であり,
暴露量が増加するに従って,ある反応が増加し,又は減少
する傾向があるか否かを検討するもの
,()有意確率統計的仮説検定において差がないという仮説帰無仮説
が真であったときに,それに対応する標本の値が生起する
確率
好酸球白血球の一つで,酸性色素を含み,睡眠中は通常増加する
ものの,外界のストレスが強いと減少するとされるもの
好塩基球白血球の一つで,睡眠中は通常増加するものの,外界のス
トレスが強いと減少するとされるもの
ウロペプシン尿中のホルモンの一種であり,副腎の刺激が強くなると増
えるもの
カテコールアミン分子構造の一部にカテコール核を持つアミン(アドレナリ
),,ンとノルアドレナリンなどの総称であって精神的緊張
交感神経緊張などにより分泌が亢進されるもの
17-OHコルチコステロイ副腎皮質からの糖質ホルモンが尿中に現れたもの

EPAクライテリアアメリカ合衆国連邦環境保護庁(EnvironmentalProtecti
onAgency。EPA)が,昭和47年(1972年)の騒
音規制法の規定に基づき,昭和48年(1973年)7月
27日に公表した「騒音に関する公衆衛生と福祉に関する
基準」及び昭和49年(1974年)3月に公表した「公
衆衛生と福祉を,適切な安全限界によって保護するため必
要な環境騒音レベルに関する資料」に示された基準
THI調査沖縄県調査委員会が,平成7年10月から平成8年9月ま
での間に行ったTHIを用いた住民の自覚的健康度の調査
谷口寺井病院医師谷口堯男
本件精神的被害本件航空機騒音を直接の原因とするイライラ感や不快感の
精神的苦痛
毛細胞受け入れた音の情報を聴覚中枢路に送る神経インパルスに
変換する役割をするものであり「有毛細胞」ともいわれ,
るもの
気導聴力外耳道を通じて音を聞かせた場合の聴力
骨導聴力骨導を通じて内耳に振動を伝えて音を聞かせた場合の聴力
リクルートメント現象補充現象。音の強さを増していくと,音の大きさの感覚が
通常人に比べて異常に増加する現象
オージオグラムオージオメータを用いて聴力検査を行った結果を図の形で
記載したもの
c-dipオージオグラムにおいて,音階のc(物理調で4096Hz)に
ほぼ相当する4000Hz周波数のところで深い谷(dipはくぼ
みを意味する)を形成するところから名付けられている。
聴力像
TTSTemporaryThresholdshift。聴覚の一時的閾値移動又は
一時的聴力損失
PTSPermanentThresholdshift。永久的閾値移動又は永久的
聴力損失
TTS騒音暴露終了した後,2分経過した後のTTS2
NIPTS騒音暴露に起因するPTS
岡田東邦大学耳鼻咽喉科学教室岡田諄
田多井国立公衆衛生院生理衛生学部の田多井吉之介
尿中17ケトステロイド副腎皮質ホルモンのうち副腎性性腺ホルモンであって,尿
中で測定されるもの
聴覚障害難聴,耳鳴り,その他の聴覚に関する障害
,,,,,,南部地域那覇市豊見城市南城市八重町与那原町南風原町
糸満市の各行政区域
北部地域名護市,国頭郡,伊平屋村,伊是名村の各行政区域
本件騒音測定等請求本件航空機騒音を測定・記録し,本件航空機騒音が到達す
る地域を明確にすべきことの請求
主文
1別紙2原告目録2記載の原告らの訴えのうち,平成20年2月1日から
生ずべき損害の賠償請求に係る訴えをいずれも却下する。
2被告は,別紙5「賠償額一覧表(訴状送達前」の「原告氏名」欄に記)
載した各原告に対し,それぞれ次の(1)及び(2)の各金員を支払え。
(1)同各原告に対応する別紙5「賠償額一覧表(訴状送達前」の「損)
害賠償額合計」欄に記載した各金員
(2(1)の各金員に対する,第1事件原告については平成15年1月)
7日から,第2事件原告については同年5月7日から,いずれも支払
済みまで年5分の割合による各金員
3被告は,別紙6「賠償額一覧表(訴状送達後」の「原告氏名」欄に記)
載した各原告に対し,それぞれ次の(1)及び(2)の各金員を支払え。
1同各原告に対応する別紙6賠償額一覧表訴状送達後の各損()「()」「
害賠償月額合計」欄に記載した各金員
(2(1)の各金員に対する別紙6「賠償額一覧表(訴状送達後」の同))
各金員に対応する各「遅延損害金起算日」欄に記載した日からいずれ
も支払済みまで年5分の割合による各金員
4原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用は,第1事件及び第2事件を通じてこれを5分し,その5分の
4を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
6この判決第2項及び第3項は,本判決が被告に送達された日から14日
を経過したときは,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1章請求
1被告は,別紙2原告目録2記載の原告らのために
(1)アメリカ合衆国をして,普天間飛行場(FAC6051)において,毎日
午後7時から翌日午前7時までの間,一切の航空機を離着陸させてはならず,か
つ,原告ら居住地において55ホンを超える騒音となるエンジンテスト音,航空
機騒音等を発する行為をさせてはならない。
(2)アメリカ合衆国をして,普天間飛行場(FAC6051)の使用により,
毎日午前7時から同日午後7時までの間,原告ら居住地内に65ホンを超える一
切の航空機騒音を到達させてはならない。
2被告は,別紙2原告目録2記載の原告らのために,普天間飛行場(FAC605
1)から発生する騒音を,環境基本法(平成5年法律第91号)16条1項の規定
に基づく「航空機騒音に係る環境基準について(昭和48年12月27日環境庁」
告示第154号)に規定する測定方法により,同飛行場周辺において毎日測定・記
録し,毎日午後7時から翌日午前7時までの間に55ホンを超える騒音が到達する
地域,毎日午前7時から同日午後7時までの間に65ホンを超える騒音が到達する
地域をそれぞれ明確にせよ。
3被告は,別紙1原告目録1記載の原告らに対して,それぞれ115万円及びこれ
に対する第1事件原告については平成15年1月7日から,第2事件原告について
は同年5月7日から,いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告は,次の原告らに対し,それぞれ次の期間,各月末限り1か月当たり3万5
000円及びこれに対する当該各月の翌月1日からいずれも支払済みまで年5分の
割合による金員を支払え。
(1)別紙7「請求期間一覧表」の「原告氏名」欄に記載した各原告同表の当
該各原告に対応する「請求期間」欄の「始期」欄に記載した年月日から「終
期」欄に記載した年月日まで
(2(1)の原告並びに原告X34,同X79,同X80,同X116及び同)
X189並びに被承継人A90の承継分に係る原告X91を除く第1事件原
告平成15年1月7日から平成21年1月31日まで
(3(1)の原告並びに原告X203及び同X341を除く第2事件原告平成)
15年5月7日から平成21年1月31日まで
第2章事案の概要
本件は,被告が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づ
きアメリカ合衆国に対して同国軍隊の使用する施設及び区域として提供している沖縄
県宜野湾市所在の普天間飛行場の周辺に居住し,若しくは居住していた者又はその相
続人である原告ら合計392名(訴えの提起時は第1事件及び第2事件を併せて40
4名であったが,そのうち8名が訴えを取り下げ,死亡した4名が他の原告に承継さ
れている)が,普天間飛行場において離着陸する同国軍隊の航空機の発する騒音等。
により精神的被害等を含む広義の健康被害を受けていると主張して,被告に対し,①
人格権,環境権又は平和的生存権に基づく夜間の航空機の飛行差止め等,②国家賠償
法1条1項又は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条
に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に
」()伴う民事特別法1条若しくは2条に基づく昭和47年5月15日沖縄の復帰の日
から平成20年1月31日(口頭弁論終結の日)までの損害及び同年2月1日(口頭
弁論終結の日の翌日)から平成21年1月31日までの将来の損害の賠償並びに遅延
損害金の支払並びに③人格権,環境権,平和的生存権又は②の不法行為に基づく騒音
測定等を求める事案である。
第1前提事実
以下の事実(4を除く)は,括弧内に証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争。
いがない。
1普天間飛行場の現況等
(1)普天間飛行場の現況及び本件航空機騒音
普天間飛行場は,沖縄本島中部にある沖縄県宜野湾市(以下,市町村名は,都
道府県名を明記したものを除き,すべて沖縄県の区域内のものである)の中央。
部に所在するアメリカ合衆国軍隊(以下「米軍」という)の基地である。普天。
間飛行場の周囲には,これを取り巻くようにドーナツ型に商店街,住宅街,学校
等が存在する。
普天間飛行場は,平成15年1月1日現在,総面積が約480万5000平方
メートルであり,同市の面積の約24.7%を占めている。普天間飛行場には,
全長約2700m,幅約45mの滑走路とこれに付帯する誘導路,駐機場,エン
ジン調整場,格納庫,整備施設等がある。普天間飛行場の滑走路の西側部分及び
東側部分には,司令部,兵舎,通信施設等の施設が存在する。
普天間飛行場には,米軍の第1海兵航空団に所属する第18海兵航空管制群,
第36海兵航空群(配備機種は,CH-46,CH-53,AH-1,UH-1
の各ヘリコプター及び固定翼機KC-130である)及び第17海兵航空支援。
群(配備機種は,固定翼機C-12である)等が配備されている。これらの部。
隊は,米軍の使用する航空機(以下「米軍機」という)について,即応能力を。
維持するために必要な訓練を沖縄周辺及び普天間飛行場において行っている。
普天間飛行場には,これらの部隊に配備されている米軍機のほかに,艦載機や
輸送機等の米軍機が不定期に飛来し,訓練や輸送活動を行っている。
普天間飛行場に離着陸等する米軍機は,普天間飛行場周辺において騒音を発生
させている(以下,普天間飛行場に離着陸する米軍機が普天間飛行場周辺におい
て発する騒音(普天間飛行場に着陸している米軍機がエンジン調整その他の理由
。)「」。)。により普天間飛行場において発する騒音を含むを本件航空機騒音という
(2)普天間飛行場の設置・管理の経緯及び法律関係
ア米軍による占領から昭和47年5月14日まで
米軍は,昭和20年4月に沖縄本島に上陸し,宜野湾村(当時)の集落の一
部を占領,接収し,その地域に普天間飛行場を建設した。
沖縄県は,終戦後,昭和21年1月29日付け連合国最高司令官総司令部の
「若干の外郭地域を政治上行政上日本から分離することに関する覚書」によっ
て,我が国から政治上,行政上分離され,昭和27年4月28日発効の「日本
国との平和条約(昭和27年条約第5号)3条によって,アメリカ合衆国が」
施政権者とされることとなった。
そのため,普天間飛行場も,昭和20年の米軍の占領から昭和27年4月2
7日(日本国との平和条約の発効日の前日)までは,米軍の接収下にあり,ま
た,翌28日から昭和47年5月14日までは,アメリカ合衆国が施政権者と
して管理,運営していた。
イ昭和47年5月15日(沖縄の復帰の日)から現在まで
沖縄は,昭和47年5月15日,同日発効の「琉球諸島及び大東諸島に関す
」(),る日本国とアメリカ合衆国との間の協定昭和47年条約第2号によって
我が国の施政権下に復帰した。
被告はこれに先立ち沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律昭,,「」(
和46年法律第132号)を制定し,同法等に基づき,普天間飛行場の使用権
原を取得した。
被告は,沖縄の復帰に伴い,アメリカ合衆国に対し「日本国とアメリカ合,
衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和35年条約第6号。以下「安」
保条約」という)6条及び同条の規定に従い締結された「日本国とアメリカ。
合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに
日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和35年条約第7号。以」
下「地位協定」という)2条1項に基づき,米軍の使用する施設及び区域と。
して,普天間飛行場を提供した。
なお,普天間飛行場は,この際,普天間海兵隊飛行場,普天間陸軍補助施設
及び普天間海兵隊飛行場通信所の3施設を統合し,現在のもの(FAC605
1)となった。
普天間飛行場は,以後,アメリカ合衆国が地位協定3条1項に基づき管理,
運営し,米軍機の運航等に使用している。普天間飛行場は,昭和49年には,
嘉手納飛行場へのP-3C対潜哨戒機の配備に伴い,同機の補助飛行場として
使用するため,滑走路の拡張整備が行われた。
被告は,アメリカ合衆国に対し,昭和47年5月15日(沖縄の復帰の日)
から現在までの間,普天間飛行場の敷地のうち,国有地以外の土地について,
その土地の所有者である私人ら若しくは地方公共団体との間で,それぞれ賃貸
借契約を締結し,又は「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」若し
くは「日本国とアメリカ合衆国の間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づ
く施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に
伴う土地等の使用等に関する特別措置法(昭和27年法律第140号。以下」
「土地使用特措法」という)の規定に基づき使用権原を取得し,国有地と併。
せて,提供している。
2航空機騒音の評価方法
騒音とは,好ましくない音,望ましくないを総称する用語である。
物体の振動等が媒質を伝わり,聴覚を刺激すると,人は,これを音として取り扱
う。音波によって,空気中に生ずる圧力のことを「音圧」というが,人間の感覚の
大きさは,外的刺激量の強さの対数に比例するので,音の評価には対数計算が用い
られる。また,音圧が同じレベルの音であっても,人間の耳には周波数(1秒間の
振動数をいう。以下同じ)によって音の大きさが異なって聞こえるので「音の強。,
さ」を表す物理的音圧レベル(dB)を耳の感度により修正すると「音の大きさ」,
のレベル(phon,)となる。ところで,騒音計には,マイクロホンを用いフォーン
て音圧レベルを計測する際に,耳の感度の周波数特性を模擬した聴覚補正回路とい
う電気回路を通す構造となっている。そして,2000~4000Hzには敏感であ
るも低い周波数の音については相対的に感度が鈍いという人間の聴覚に近い,次の
図のとおりのA特性の聴覚補正回路を用いて,音を人間の感覚量として表現した単
位がdB(A)(単にdBと表記し,又はホン(A)若しく
はホンと表記することもある)である(なお,聴。
覚補正回路には,A特性の外,B特性,C特性及
びG特性があり,これらを使用して測定した騒音
レベルの単位は,それぞれ,dB(B),dB(C),dB(G)
である。。)
もっとも「音の大きさ」による表現は,会話や音楽の音など人間がそれを享受,
する立場で受け入れる場合に正しい値を示すものの,騒音のように不快感をもたら
す音を評価するには適当でないことが多い。
特に,航空機による騒音(以下「航空機騒音」という)には,①騒音レベルが。
他の発生源による騒音と比較してはるかに高く,広範囲に及ぶこと,②独特の特異
音成分を含むこと,③継続時間が数秒から数十秒の間欠音であることなどの特性が
ある。これらの特性からすると,航空機騒音を適切に評価するためには,瞬間的な
騒音レベル(dB(A))で評価するのではなく「音のうるささ」という心理的な側面,
を考慮するとともに,ある期間について,時間帯補正をするなどして,その総騒音
量で評価する方が,人間の感覚的な騒音評価としては適切であると考えられるよう
になった。その中で,国際連合の専門機関の一つとして昭和22年(1947年)
に発足し我が国も昭和28年1953年に加盟している国際民間航空機構I,()(
nternationalCivilAviationOrganization。以下「ICAO」という)によっ。
て昭和46年(1971年)に航空機の1日の総騒音量を評価する単位として提案
されたのが,加重等価継続知覚騒音レベル(WeightedEquivalentContinuousPer
ceivedNoiseLevel。以下「WECPNL」といい,WECPNLによって表される数値を「W
値」という)である。ICAOで提案されたWECPNLは,一機ごとの知覚騒音レベ。
ル(PerceivedNoiseLevel。騒音を周波数分析してノイ(Noy)という量に変換し
て算出する航空機騒音のうるささを表す単位であり,国際標準化機構(Internatio
nalOrganizationforStandardization。ISO)が昭和42年(1967年)に
航空機騒音に用いることを勧告したもの。以下「PNL」という)に純音補正及び継。
続時間補正を行い,一機ごとの実効知覚騒音レベル(EffectivePerceivedNoise
Level。以下「EPNL」という)を求め,これを基に,全機の効果を加算して,1日。
の総暴露量を算出し時間平均を行って,等価継続知覚騒音レベル(EquivalentCon
tinuousPerceivedNoiseLevel。以下「ECPNL」という)を求め,更に夕方(午。
後7時から午後10時まで)に5dB,夜間(午後10時から翌日午前7時まで)に
10dBを加算することによる時間帯補正をして加重平均を求めるものである。
(甲C24,D17,22,24,78の1,D86,114,E3,5,乙D9,E
4,G42の1,2,証人平松,弁論の全趣旨)
3昭和48年環境基準
(),,。公害対策基本法昭和42年法律132号は昭和42年に制定施行された
同法9条1項は「政府は,大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染及び騒音に係る,
環境上の条件について,それぞれ,人の健康を保護し,及び生活環境を保全するう
えで維持されることが望ましい基準を定めるものとする」と規定し,我が国政府。
にその基準の設定を義務付けた。これを受けて,環境庁長官(当時)は,昭和48
年12月27日,公害対策基本法9条の規定に基づく騒音に係る環境上の条件のう
ち,航空機騒音に係る基準について「航空機騒音に係る環境基準について(昭和,」
。「」。)。48年環境庁告示第154号以下昭和48年環境基準というを告示した
昭和48年環境基準は,生活環境を保全し,人の健康の保護に資する上で維持する
ことが望ましい航空機騒音に係る基準として,専ら住居の用に供される地域につき
昭和48年環境基準に定める方法によるWECPNLの算出方式(以下「環境基準方式」
という)によって算出されるWECPNL70以下とし,その他の地域であって通常の。
生活を保全する必要がある地域につき環境基準方式によって算出されるWECPNL75
以下とすることや上記地域は都道府県知事が指定することなどを内容としている。
沖縄県は,これを受けて,昭和63年2月16日,普天間飛行場周辺地域につい
て,公害対策基本法9条に基づき「航空機騒音に係る環境基準の地域類型指定」,
を行った。
環境基本法(平成5年法律第91条)は,平成5年11月19日に公布,施行さ
れ,これに伴い,公害対策基本法が廃止された。環境基本法は,環境の保全につい
て,基本理念を定め,並びに国,地方公共団体,事業者及び国民の責務を明らかに
するとともに,環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより,環
境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し,もって現在及び将来の国民の
健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的と
している(環境基本法1条。環境基本法16条1項は「政府は,大気の汚染,水),
質の汚濁,土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について,それぞれ,人の健康
を保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるも
のとする」と規定するところ,昭和48年環境基準は,環境基本法の施行に伴う。
関係法律の整備等に関する法律(平成5年法律第92号)2条により,環境基本法
16条1項の規定によって定められた基準とみなされている。
(沖縄県の地域類型指定につき,甲C13)
4防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法令の規定
防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号。以
下「生活環境整備法」という)は,自衛隊等(自衛隊法(昭和29年法律第16。
5号)2条1項に規定する自衛隊又は米軍をいう(生活環境整備法2条1項。以)
下同じ)の行為又は防衛施設(自衛隊の施設又は安保条約6条に基づく施設及び。
区域並びに地位協定2条1項の施設及び区域をいう(生活環境整備法2条2項。)
以下同じ)の設置若しくは運用により生ずる障害の防止等のため防衛施設周辺地。
域の生活環境等の整備について必要な措置を講ずるとともに,自衛隊の特定の行為
により生ずる損失を補償することにより,関係住民の生活の安定及び福祉の向上に
寄与することを目的とする(生活環境整備法1条。このような目的のため,生活)
環境整備法は,被告が,自衛隊等の航空機の離陸,着陸等のひん繁な実施により生
ずる音響に起因する障害が著しいと認めて防衛大臣(平成19年法律第80号によ
る改正前は防衛施設庁長官。以下この4及び5において同じ)が指定する防衛施。
設の周辺の区域(以下「第1種区域」という)に当該指定の際現に所在する住宅。
について,その所有者又は当該住宅に関する所有権以外の権利を有する者がその障
害を防止し,又は軽減するため必要な工事を行うときは,その工事に関し助成の措
置を採るものと規定する(生活環境整備法4条。同規定等に基づく政令である防)
衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律施行令(昭和49年政令第228号。
以下「生活環境整備法施行令」という)8条は,第1種区域の指定等は,自衛隊。
等の航空機の離陸,着陸等の頻繁な実施により生ずる音響の影響度をその音響の強
度,その音響の発生の回数及び時刻等を考慮して防衛省令(平成19年政令第3号
による改正前は内閣府令,平成12年政令第303号による改正前は総理府令。以
下この4において同じ)で定める算定方法(以下「防衛施設庁方式」という)で。。
算定した値が,その区域の種類ごとに防衛省令で定める値以上である区域を基準と
して行うものと規定する。同規定等に基づく防衛省令である防衛施設周辺の生活環
境の整備等に関する法律施行規則(昭和49年総理府令第43号。以下「生活環境
整備法施行規則」という)においては,防衛省令で定める算定方法について,。
dB(A)+10logN-27
と規定した(生活環境整備法施行規則1条1項)上「dB(A)」を1日の間の自衛隊,
等の航空機の離陸,着陸等の実施により生ずる音響のそれぞれの最大値をパワー平
均して得た値と定義し(同項1号,また「N」を1日の間の自衛隊等の航空機の),
離陸,着陸等の実施により生ずる音響のうち,午前零時直後から午前7時までの間
に発生するものの回数をN↑1,午前7時直後から午後7時までの間に発生するも
のの回数をN↑2,午後7時直後から午後10時までの間に発生するものの回数を
N↑3及び午後10時直後から午後12時までの間に発生するものの回数をN↑4
として,次に掲げる式によって算出して得た値
N↑2+3N↑3+10(N↑1+N↑4)
と定義した(同項2号。)
,,,,そして防衛大臣はこれらの値の算定に当たっては自衛隊等の航空機の離陸
着陸等がひん繁に実施されている防衛施設ごとに,当該防衛施設を使用する自衛隊
等の航空機の型式,飛行回数,飛行経路,飛行時刻等に関し,年間を通じての標準
的な条件を設定し,これに基づいて行うものと規定されている(同条3項。)
さらに,生活環境整備法施行規則2条は,生活環境整備法施行令8条の防衛省令
で定める値について,第1種区域にあっては75(生活環境整備法施行規則の制定
当初は85であったところ,昭和54年総理府令第41号による改正により80と
改められた後,昭和56年総理府令第49号による改正により75と改められてい
る)と定めている。。
5本件コンターの指定
防衛施設庁長官は,昭和52年12月,本件航空機騒音について調査をした上,
普天間飛行場周辺の防衛施設庁方式のW値を求めるに当たり,1日の標準飛行回数
のほか,各地点のdB(A)を算出し,着陸音補正及び継続時間補正を行うなどして,
普天間飛行場周辺のW値を求め,これに基づき,W値75及びW値80を線で結ん
だ騒音コンター図(等音線図)を作成し,道路,河川等現地の状況を勘案し若干の
調整をして,次の(1)及び(2)とおり,順次,普天間飛行場に係る生活環境整
備法所定の第1種区域(以下「本件コンター」という)を指定し,これを告示し。
(,,「」,た以下本件コンターのうちW値75以上80未満の区域をW75区域と
W値80以上85未満の区域を「W80区域」という。。)
(1)昭和56年告示
防衛施設庁長官は,普天間飛行場に係る生活環境整備法所定の第1種区域とし
てW値80以上85未満の区域について指定し,昭和56年7月18日,防衛施
設庁告示第13号(以下「昭和56年告示」という)をもって告示した。この。
指定により第1種区域とされたW80区域は,別紙8本件コンター図において青
実線で囲む地域である。W80区域の範囲は,宜野湾市字野嵩,字普天間,字新
城字真志喜字大謝名字嘉数字真栄原字佐真下及び字我如古の各区域同,,,,,(
区域は,同日当時における行政区画によって表示されたものによっている)の。
全部又は一部となっている。
(2)昭和58年告示
防衛施設庁長官は,第1種区域の指定に係るW値が前記4のとおり「80」か
ら「75」に改正されたことに伴い,普天間飛行場に係る生活環境整備法所定の
第1種区域としてW値75以上80未満に当たる区域について追加指定し,昭和
,(「」。)58年9月10日防衛施設庁告示第21号以下昭和58年告示という
をもって告示した。この指定により第1種区域として追加指定されたW75区域
は,別紙8本件コンター図に示す赤実線で囲まれた部分である。W75区域の範
囲は,宜野湾市字野嵩,字普天間,字喜友名,字新城,字大山,字真志喜,字宇
,,,,,,,,地泊字大謝名字嘉数字真栄原字佐真下字我如古字志真志字宜野湾
字赤道及び字上原,浦添市字牧港及び字当山,中頭郡北谷町字北前並びに同郡北
中城村字安谷屋及び字荻道の各区域(同区域は,同日当時における行政区画によ
って表示されたものによっている)の全部又は一部となっている。。
(乙G4,5,17)
6本件航空機騒音に関する調査
(1)騒音測定局点
被告は,昭和60年3月,W80区域にある宜野湾市新城及び大謝名に自動騒
音測定点を設置し(以下,同市新城に設置された測定点を「国新城測定点」と,
同市大謝名に設置された測定点を国大謝名測定点といい両者を併せて国「」,,「
測定点」という,70dB(A)以上の騒音が5秒以上継続した場合に,本件航空。)
機騒音を測定している。
,,,()他方沖縄県は平成9年3月W80区域にある同市野嵩野嵩一区公民館
及び大謝名(上大謝名公民館)に,同年9月,W75区域にある同市新城(普天
間中学校)に,それぞれ自動騒音測定局を設置し,また,同市は,同月,W75
区域にある同市真志喜(真志喜公民館)に自動騒音測定局を設置し(以下,同市
野嵩に設置された測定局を「県野嵩測定局」と,同市大謝名に設置された測定局
「」,「」,を県上大謝名測定局と同市新城に設置された測定局を県新城測定局と
同市真志喜に設置された測定局を「市真志喜測定局」といい,これらを併せて,
「県等測定局」という,暗騒音(対象の音がないときのその場所における騒音。)
をいう。以下同じ)レベルより10dB(A)以上(ただし,平成14年度までは数。
値が若干異なる。詳細は,後記第3章第2の2(3)ウ(ア)の認定事実のとお
り)の騒音が5秒以上継続し,かつ,航空機が発したトランスポンダ応答信号電
波を受信した場合に,本件航空機騒音を測定している。
(各騒音測定局点の設置の年月日につき,弁論の全趣旨)
(2)沖縄県調査
沖縄県は「嘉手納飛行場及び普天間飛行場の航空機騒音が周辺住民に与える,
精神的,身体的影響を明らかにし,県民の平穏で快適な生活環境の保全と創造に
寄与する」ため,財団法人沖縄県公衆衛生協会に対し,平成7年度から平成10
年度まで,嘉手納飛行場及び普天間飛行場の航空機騒音の周辺住民に対する健康
影響についての調査を委託した。
財団法人沖縄県公衆衛生協会は,これを受けて,京都大学名誉教授(当時)山
本剛夫(以下「山本」という)を会長とする「航空機騒音健康影響調査研究委。
員会(以下「沖縄県調査委員会」という)を設置した。沖縄県調査委員会は,」。
同期間,航空機騒音暴露実態調査部会,睡眠影響調査部会,THI(東大式自記
()。。),健康調査票TheTodaiHealthIndexをいう以下同じ等アンケート部会
被験者等健康特性調査部会,低体重児等調査部会,聴力影響調査部会の合計6の
部会を設置し,①騒音暴露の実態,②生活の質・環境の質,③幼児問題行動,④
学童の記憶力,⑤自覚的健康感,⑥住民健康診断データの分析,⑦低出生体重児
出生率,⑧聴力影響について,航空機騒音による嘉手納飛行場及び普天間飛行場
の周辺住民に対する健康影響に関する調査(以下「沖縄県調査」という)を実。
施した。
沖縄県は,沖縄県調査の結果について,平成11年3月「航空機騒音による,
健康への影響に関する調査報告書(以下「沖縄県調査報告書」という)に取り」。
まとめた。
(甲D1,E9の1,2,乙D1から3まで,40)
7原告らの居住
原告ら(後記8の被承継人を含む。以下同じ)は,別紙9「原告居住経過等一。
覧表(以下「居住経過表」という)記載のとおり,居住していた(なお,居住経」。
過表の「住所」欄に記載した各住所地のうち「W値」欄に75又は80と記載さ,
れているものは,本件コンター内のW75区域又はW80区域にある。他方,同各
住所地の記載が国名又は都道府県市区町村名に限られている各原告は,当該国又は
,,。都道府県市区町村内に空欄の各原告は本件コンター外にそれぞれ居住している
また,原告らの居住経過表の「住所」欄に記載した各住所地における居住は,開始
が居住経過表の「入居年月日」欄に記載した各入居年月日の午前零時からであり,
終了が,居住経過表の「入居年月日」欄に次の入居年月日の記載がある場合には当
該次の入居年月日の前日の終了まで,居住経過表の「死亡日」欄に記載がある場合
には当該死亡日までである。。)
別紙2原告目録2記載の各原告は,同各原告に対応する居住経過表の「入居年月
日」欄に記載した最終の各入居年月日から平成20年1月31日までの間,これに
対応する居住経過表の「住所」欄に記載した本件コンター内にある各住所地に居住
している。
(平成19年7月1日からの居住につき,弁論の全趣旨)
8損害賠償債権の相続
次の各承継人は,次の各被承継人(同承継人又は同被承継人について,原告番号
(別紙5「賠償額一覧表(訴状送達前,別紙6「賠償額一覧表(訴状送達後,)」)」
「」。。)別紙7請求期間一覧表及び居住経過表に各記載した原告番号をいう以下同じ
を付している)が死亡したことにより,次の各被承継人の本件訴訟に係る損害賠。
償債権を相続した。
承継人被承継人
X33(原告番号33)A35(原告番号35)
X72A72(原告番号72)
X91(原告番号91)A90(原告番号90)
X125A125(原告番号125)
X206A206(原告番号206)
X332A332(原告番号332)
X335(原告番号335)A333(原告番号333)
X391(原告番号391)A390(原告番号390)
(弁論の全趣旨)
第2当事者の主張
1原告らの主張
(1)差止請求
ア差止請求を基礎付ける権利
(ア)人格権
人間の生命,身体,精神及び快適な生活のような,人間の生存に基本的かつ
不可欠な利益は,人の人格に本質的に付帯する。その総体が人格権である。
人格権は,何人もみだりに侵害することは許されない。そのため,人格権の
侵害に対しては,法律上,侵害行為を排除し,又は禁止することを求めること
ができる。そして,身体被害,精神的苦痛,著しい生活上の妨害をもたらす行
為は,個人に対する人格権の侵害行為として差止めの対象となる。しかも,生
命,身体という身体的な人格権に対する侵害行為については,受忍限度を考慮
することなく,直ちに差止めを認めるべきである。また,現実の身体に侵害が
生じている場合のみならず,一般人の感覚に照らして,その具体的な危険性が
存する場合にも,差止めが認められるべきである。
原告らは,本件航空機騒音によって,睡眠妨害その他の生活妨害(以下,睡
眠妨害を除く生活妨害を「生活妨害」といい,睡眠妨害を含む生活妨害を「生
活妨害全部」という,精神的被害,子供への影響等の深刻な「広義の健康被。)
害」を被っている。これらの「広義の健康被害」は,個人の生命・身体を侵害
する深刻な危険又はその不安感を本体とするものであり,原告らの人格権を侵
害しているので,その発生を続けさせないために,差止めが必要である。
したがって,原告らは,被告に対し,人格権に基づき,普天間飛行場におけ
る夜間の航空機の離着陸及び1日を通じて一定のレベルの本件航空機騒音の発
生の差止めを請求することができるというべきである。
(イ)環境権
環境権は,環境を支配し,よき生活環境を享受する権利であり,憲法13条
及び25条,環境基本法3条並びに民法709条及び710条を実定法上の根
拠とする。みだりに環境を汚染し,快適な生活を妨げ,又は妨げようとしてい
る者に対しては,環境権に基づいて妨害の排除又は予防を請求し得ると解され
る。
環境権は,良好な環境それ自体を享受する権利として,生命・身体・健康な
生存を維持する権利としての内実を含む人格権の外延をなす権利として存在す
る。各人の生命,健康等の被害が発生していなくても,抽象的被害が生じた場
合であって,その抽象的危険性が地域的な広がりを持ち,又は生態系に悪影響
を及ぼすときには,環境権の侵害があるというべきである。
原告らには,本件航空機騒音により,抽象的危険にとどまらず「広義の健康,
被害」という既に具体的な身体的被害が生じ,又は生ずる危険にさらされてい
る。そのため,本件航空機騒音による被害は,地域的な広がりを持った被害で
あり,将来被害が発生・拡大する危険が存している。
したがって,原告らには,身体的被害が生じ,又は生ずる危険にさらされて
いるから,被告に対し,環境権に基づき,普天間飛行場における夜間の航空機
の離着陸及び1日を通じて一定のレベルの本件航空機騒音の発生の差止めを請
求することができるというべきである。
(ウ)平和的生存権
平和的生存権は,人間としての生存と尊厳を維持し,戦争行為によって生命
の危険に脅えることなく,平穏な社会生活を営むことを阻害されない権利であ
る。平和的生存権は,日本国憲法前文に「恐怖と欠乏から免れ,平和のうちに生
,()存する権利」として明記され日本国憲法の基本原理である平和主義憲法9条
と個人の尊厳,それを基礎とする幸福追求権(憲法13条)から導かれる。平
和は,人権保障の不可欠の土台であるから,戦争のない平和な状態で生存する
こと自体が人権であると考えられる。これに対する侵害に対しては,平和的生
存権に基づき,司法的救済を求めることができる。
沖縄では,平和的生存権が過去に具体的に侵害され,また,侵害され続けて
いる。
したがって,原告らには,被告に対し,平和的生存権に基づき,普天間飛行
場における夜間の航空機の離着陸及び1日を通じて一定のレベルの本件航空機
騒音の発生の差止めを請求することができるというべきである。
イ差止めの可能性と許容性
(ア)米軍に対する法的規制の根拠
a市民法の原理
日本国憲法は,平和主義を基本原理としているから,軍事行政に係わる事
項の範囲は可及的に縮小されなければならない一方,国民の基本的人権を基
礎とする市民法秩序には,原則として無条件かつ最大限の保障が与えられな
ければならない。そのため,軍事行政に係わる事柄が直ちに市民法秩序に無
条件に優先すると考えることはできない。
,,また原告らが民事訴訟という日本国内における法的救済手続を利用して
日本国内における本件航空機騒音による被害から市民法原理に従った救済を
求めることが認められても,我が国とアメリカ合衆国との外交上の信頼関係
を損なうものではない。
したがって,原告らの人格権,環境権,平和的生存権が米軍機により違法
に侵害されている場合には,被告は,条約又はこれに基づく国内法令に特段
の定めがなくても,そのような権利侵害から住民を救済すべき責務を負うべ
きであるから,被告は,米軍の活動を制限することができ,また,制限すべ
きである。
b米軍に対する国内法の適用
(a)領域主権の原則
国は,国際法上,自国領域内において,条約などによる特別の制限がな
い限り,排他的な統治権を行使することができる(領域主権。他方,国)
内に駐留する外国軍隊を受入国の国内法令の適用から除外する一般国際法
の規則は存在しない。そのため,領域主権は,領域内にある外国の軍用機
に対しても,当然に及ぶ。
したがって,我が国の国内法は,米軍機に対しても適用されるべきであ
る。
(b)地位協定3条,16条
地位協定3条1項は,1文で,日本に在る米軍基地内に関しては,米軍
の広範な管理権を認めている一方,基地外については,2文で「日本国,
政府は,…それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地,領水
及び空間において,関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする」。
と規定し,米軍が基地外の基地周辺で採り得る措置を我が国の関係法令の
範囲内に限っている。
また,基地内で米軍が採り得る措置は,その結果が基地内にとどまる限
りは我が国の法令の適用を受けないと考えられるものの,本件航空機騒音
,,,,のように結果が基地外に及ぶ場合は米軍は地位協定3条3項により
公共の安全に妥当な考慮を払わなければならない。すなわち,米軍が我が
国の規制に従う義務を負うので,地位協定3条3項は,米軍の基地使用権
に対する制約原理となっている。
さらに,地位協定16条は,米軍における我が国の国内法の遵守義務を
定めているところ,地位協定は,全体として,我が国の国内法が米軍に対
して原則として適用されることを前提とし,我が国の国内法が適用されな
い場合は,個別具体的に規定するという構造となっている。
したがって,我が国の国内法は,米軍機に対しても適用されるべきであ
る。
(c)地位協定18条5項
地位協定18条5項は,主権免除が認められる場合でも,不法行為から
生ずる周辺住民の請求を処理するために設けられた規定である。そうする
と地位協定18条5項は金銭請求に限った規定ではなく条約上の特,,,「
段の定め」に当たるといえる。
したがって,国を被告とする差止請求は,可能というべきである。
(d)航空法97条
日本の上空は,米軍専用空域を含む領空に関しても,その使用又は規制
に関する最終決定権が我が国政府に留保されている。航空機の航行など空
域利用に関わる事項については,航空法に対する除外規定又は変更規定が
置かれているものの,航空法の規定は,除外規定がない限り,米軍にも適
用される「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条。
約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位
に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の
実施に伴う航空法の特例に関する法律(昭和27年法律第232号。」
以下「航空特例法」という)は,航空法97条(航空管制権)の規定に。
ついて適用を除外していない。
したがって,被告は,航空管制権に基づいて米軍機の運航を規制するこ
とができる。
(イ)被告の差止責任
a共同妨害者としての責任
被告は,普天間飛行場の敷地につき「沖縄における公用地等の暫定使用に,
」,,,関する法律を制定し又は土地使用特措法を適用して使用権原を取得し
アメリカ合衆国に提供した上,本件航空機騒音による被害が継続,増大して
いることを認識しながら,特段の対策を講ずることなく,施設,便益を供与
し,いわゆる「思いやり予算」などの莫大な税金を投じて,普天間飛行場の
維持管理に協力,関与してきた。このように,被告は,普天間飛行場の維持
管理・航空機の離着陸などに直接・間接に関与,協力してきているから,侵
害行為への関与,態様は悪質であるというべきである。
したがって,被告は,米軍と一緒になって原告らの権利を違法に侵害する
状態を生じさせている共同妨害者であるというべきである。
b普天間飛行場の提供者としての責任
仮に被告が米軍との共同妨害者であるといえないとしても,普天間飛行場
は,違法な権利侵害を生じさせるような施設・区域であるので,欠陥施設・
区域というべきであり,被告が当該欠陥施設・区域を提供して,米軍が本件
航空機騒音による被害を発生させている以上,被告は,米軍による権利侵害
状態の誘引者である。また,被告が,前記aのとおり,本件航空機騒音によ
る被害を認識しながら,特段の対策を講ずることなく,普天間飛行場の維持
管理に協力,関与している。
したがって,被告は,普天間飛行場の提供者として,米軍による権利侵害
状態を除去すべき義務を負っているので,差止請求の相手方となるというべ
きである。
(ウ)差止め内容の合理性,実現可能性
人が,一般に,昼間の活動を終えて休息に入ろうとする時間は,午後7時こ
ろであり,夜間の休息を終えて翌日の新たな活動に入ろうとする時間は,午前
7時ころである。そこで,毎日午後7時から翌日午前7時までの普天間飛行場
における航空機の離着陸の禁止及び原告ら居住地に55ホンを超える騒音とな
るエンジンテスト音等を発する行為の制限並びに毎日午前7時から午後7時ま
での原告ら居住地における65ホンを超える騒音の制限を求めることは,原告
らが人であるに相応しい生活をする上で最小限の規制として合理的である。
また,このような制限は,飛行経路や訓練時間・内容を配慮し,エンジン調
整を行う場所等を住民のために配慮すれば,実現可能である上,日米合同委員
会(地位協定25条に規定する合同委員会をいう。以下同じ)において平。
成8年3月28日に合意された「嘉手納飛行場及び普天間飛行場における航
空機騒音規制措置(以下「平成8年規制措置」という)の性質上,当然に」。
導かれる法律効果というべきである。
(2)損害賠償請求の根拠条文
原告らは,本件損害賠償請求の根拠して,法的には,①国家賠償法1条1項及
び民法719条,②「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条
約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する
」(。「」協定の実施に伴う民事特別法昭和27年法律第121号以下民事特別法
という)1条又は③民事特別法2条を選択的に主張する。
ア国家賠償法1条1項及び民法719条
米軍は,普天間飛行場の設置から現在まで,普天間飛行場の使用方法を誤り
違法な本件航空機騒音を発生し続けており,不法行為者である。
,,,,普天間飛行場の敷地の92%はもともと民有地であったところ被告は
沖縄の復帰に伴って,米軍の接収した普天間飛行場の土地の使用権原が消滅する
はずであるのに,これに先立ち,土地所有者との間に使用契約を締結することが
できない土地について「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」を制定,
し,使用権原を取得した上で,アメリカ合衆国に提供した。その後も,被告は,
同様の土地について,同法の規定により,又は土地使用特措法に基づく強制使用
,,。の認定を受けて使用権原を取得したとしてアメリカ合衆国に提供している
また,被告は,米軍の違法行為を抑止せず,年間約3000億円に達するい
わゆる「思いやり予算」などの莫大な税金を投ずることによって,アメリカ合
衆国の違法行為を助長・促進させ,原告らの損害拡大に積極的に寄与した。
さらに,普天間飛行場の出入りについては,地位協定3条1項2文及び3文に
より,被告が管理主体であり,米軍といえども,日米合同委員会を通ずる我が国
政府及びアメリカ合衆国政府の協議会により,かつ関係国内法令の範囲内で必要
な措置を採ることができるにすぎない。また,米軍機といえども,航空法97条
1項により我が国の国土交通大臣の承認がなければ,航空交通区又は航空交通管
制圏を飛行できない。そのため,被告は,米軍機の普天間飛行場への出入り及び
飛行について直接に関わりを有し,米軍機の飛行を積極的に承認してきた。
そうすると,被告は,普天間飛行場の維持管理・航空機の離着陸などに直接・
間接に関与,協力し,原告らの被害を維持助長してきているといえるから,本件
,。航空機騒音による侵害行為について米軍と共同の不法行為者というべきである
そして,米軍が提供施設を違法に利用し,これによって原告らの人格権,環
境権及び平和的生存権を侵害しているから外務大臣及び那覇防衛施設局長平,(
成19年9月1日からは,沖縄防衛局長。以下同じ)は,かかる住民の権利。
を保護・擁護する憲法上の義務を負う施設提供者として,速やかに地位協定2
条2項及び3項,3条3項並びに16条等に基づき米軍に対して違法行為を中
止するように要求し,米軍がこの要求に応じない場合には,施設の提供を拒否
しその返還を求めるなど,その違法行為を中止させる措置を採る義務を負うと
いうべきである。
そうであるのに,被告は,自ら積極的に米軍による本件航空機騒音の発生に
寄与し,また,米軍の違法行為を中止すべき義務を尽くしていない。
,,,したがって被告は国家賠償法1条1項及び民法719条の規定に基づき
米軍とともに共同不法行為者として,本件航空機騒音等による原告らの損害を
賠償する責任を負うというべきである。
イ民事特別法1条
,(),本件航空機騒音によって原告らに損害を与える行為は後記3のとおり
原告らに対する違法な侵害行為であるから,米軍の構成員又は被用者が職務を
行うについてした不法行為である。
したがって,被告は,民事特別法1条の規定に基づき,本件航空機騒音によ
る原告らの損害を賠償する責任を負うというべきである。
ウ民事特別法2条
普天間飛行場は,民事特別法2条にいう「合衆国軍隊の占有し,所有し,又
は管理する土地の工作物その他の物件」に該当する。
同条にいう「設置又は管理の瑕疵」は,国家賠償法2条1項にいう「営造物
の設置又は管理の瑕疵」と同様の解釈がされるべきであって,営造物(土地工
作物)が通常有すべき安全性を欠いていることをいい,これは物的施設自体に
存する物理的,外形的な欠陥による危険性が存する場合のみならず,その営造
物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険
性がある場合も含み,また,その危害は,営造物の利用者に対するもののみな
らず,利用者以外の第三者に対するものも含まれる。
普天間飛行場は,人口が密集する宜野湾市の中心に位置しており「世界で,
最も危険な米軍基地」といわれる基地であり,本件航空機騒音によって不可避
。,,的に原告らに甚大な被害を与えているそうすると普天間飛行場の設置には
本質的内在的に瑕疵があり,また,米軍が昼夜を問わず米軍機を離着陸させ,
又はエンジン調整をし,有効な被害軽減措置を採らずに原告らに被害を与えて
きたことは,普天間飛行場の供用は,後記(3)のとおり,原告らに対する関
係において違法な権利侵害ないし法益侵害となるので,普天間飛行場の設置の
みならず,その管理にも瑕疵があるといえる。
したがって,原告らの損害は普天間飛行場の設置又は管理の瑕疵によって生
じているから,被告は,民事特別法2条の規定に基づき,本件航空機騒音によ
る原告らの損害を賠償する責任を負うというべきである。
(3)侵害行為又は普天間飛行場供用の違法性
ア違法性の判断方法
(ア)人の健康は,人の生命と同様,人間の最も基本的な権利であり,他のあ
らゆるものに優越するので,他の要素との比較衡量にはなじまない。また,
人の健康を上回る公共性はない。
ここでいう「健康」とは,身体的被害に限られるものではない。現代にお
いて,生活の質や環境の質が人間の本質であると理解されているので,生活
妨害全部や精神的被害が身体的被害よりも価値の低いものと理解するのは相
当でないから,生活妨害全部及び精神的被害は「広義の健康被害」の一部,
として,身体的被害と同様に保護されるべき利益と捉えるべきである。原告
らの被った生活妨害全部及び精神的被害は,身体的被害に準ずる程度の重大
かつ深刻な被害であるといえる。
したがって,生活妨害全部及び精神的被害は,身体的被害と同様,他の要
素との比較衡量にはなじまないので,被害の存在を違法性の判定の一要素と
し,侵害行為の態様や侵害行為のもつ公共性の内容と程度などと利益衡量す
る受忍限度論を採用する余地はないというべきである。
(イ)仮に受忍限度論を採用するとしても,本件航空機騒音による原告らの
被害が後記ウのように重大かつ深刻である一方で,後記エ及びオのとおり,
普天間飛行場に公共性がなく,被告の騒音対策も不十分であるから,本件航
空機騒音による侵害行為又は普天間飛行場の供用は,受忍限度を超える被害
を生じさせる違法なものと評価すべきである。
イ侵害行為
原告らは,昭和47年5月15日(沖縄の復帰の日)から現在まで,本件コ
ンター内に居住している間,本件航空機騒音に日夜暴露されてきた。
(ア)本件航空機騒音の種類と特徴
a普天間飛行場には,おおむね固定翼機15機,ヘリコプター56機,合
計71機の米軍機が配備されている。
また,普天間飛行場に所属していない米軍機も頻繁に普天間飛行場に離
着陸しており,その主なものは,ジェット戦闘機FA-18ホーネット,
AV-8ハリアー,対潜哨戒機P-3C等である。
b普天間飛行場周辺では,aの米軍機の離着陸,通過,旋回,タッチアン
ドゴー(離着陸を繰り返す訓練をいう。以下同じ,エンジン調整による。)
騒音が発生しており,本件航空機騒音には,これらが含まれている。この
タッチアンドゴーは,毎日のように繰り返されている。普天間飛行場周辺
は,タッチアンドゴーにより一定時間毎に長時間にわたってこれによる騒
音に暴露されている。また,エンジン調整による騒音は,低音で,持続時
間が長い。
普天間飛行場が他の飛行場と異なる特徴は,配備されている米軍機の多
くがヘリコプターであるため,ヘリコプターによる騒音が比較的多くを占
めていることにある。ヘリコプターは,その離着陸の飛行経路が滑走路延
長線上にとどまらず,滑走路と交差する東西のいずれの側からも離着陸し
ており,これによる騒音はあらゆる方向から発生している。ヘリコプター
による騒音は,持続時間の長さや音の低さ等の点で,固定翼機とは異質で
ある。
(イ)本件航空機騒音の実態
a本件コンターの指定当時
本件コンターは,防衛施設庁(当時)が昭和52年12月に1週間かけ
て行った調査に基づいて指定されている。この調査は,嘉手納飛行場と併
せて合計127か所という測定点の多さ,実際の飛行状況の確認による防
衛施設庁方式のW値を算出するためのデータの収集という点から,現在ま
でのところ,もっとも大規模かつ詳細で,正確なものといえる。
そして,本件コンターは,この調査時に作成された騒音コンターそのも
のではなく,住宅や道路,河川等の境界に応じて修正されて指定されてい
るもので,これにより原告らの居住地の騒音レベルをそれぞれ表示してい
るところ,これらは同騒音コンターと近似する。
しかも,防衛施設庁方式のW値は,環境基準方式の算定方式及び測定方
法が1日に10機以上の飛行のある民間空港(空港整備法(昭和31年法
律第80号)2条1項が規定する空港をいう。以下同じ)を対象として。
いるのに対し,環境基準方式を軍用飛行場の特性に即して一部修正するこ
とにより,軍用飛行場の騒音実態をより適切に表示するように工夫されて
いる。そのため,防衛施設庁方式のW値は,軍用飛行場の実態を表すW値
として,科学的意味を有するので,現段階では,低周波音(周波数1~8
0Hz又は1~100Hzの範囲の音をいう。以下同じ)の問題を除けば,。
極めて適切なものである。
したがって,本件コンターのW値は,環境基準方式で算定されたW値と
同等の価値を有するので,本件コンターを基本的なよりどころとして,そ
れに補充するものとして他の騒音測定データを用いて本件航空機騒音の暴
露状況を把握すべきである。
しかも,本件コンターについては,騒音コンターを作成する際に,7日
間の計測によって総飛行回数の90パーセンタイル値(パーセンタイルと
は,データの値を小さい方から並べたときに,データ数の当該パーセント
の位置に相当するデータの値をいう。以下同じ)を求めるに当たり,累。
積度数曲線における計測データのプロット位置を誤って0.5日ずれてプ
ロットした結果,本件コンターのW値が全体的に2.5程度低く算出され
ているので,本件コンターのW値が全体的に過小評価されていることをし
ん酌すべきである。
b本件コンター指定当時から現在まで
本件航空機騒音の暴露状況には,本件コンター指定当時から現在まで,
大きな変動がみられない。
(a)沖縄県調査報告書作成時の調査
沖縄県は,普天間飛行場周辺で,県等測定局の外,いずれもW値70
以上75未満の区域にある測定局4局合計8局をオンライン化するモニ
タリングシステムにより,本件航空機騒音を測定している。
沖縄県調査委員会は,平成9年9月から平成10年8月末までの1年
間の同モニタリングシステムの測定結果を集計し,本件コンターの指定
当時から20年後の騒音暴露状況を調査した。この調査では,同モニタ
リングシステムの測定結果から,環境基準方式のW値とLdn(昼夜等価
騒音レベル(Day-nightsoundlevel。夜間(午後10時から翌日午前)
7時まで)の騒音レベルに10dBを加えてから24時間のLeqを求めたも
のをいう。以下同じ。また,Leq(等価騒音レベル。Equivalentcontin
uousA-weightedsoundpressurelevel)とは,LAeqとも表記され,あ
る時間範囲について,変動する騒音の騒音レベルをエネルギー的な平均
値として表したものをいう。以下同じ)について年間最大値,98パ。
ーセンタイル値,90パーセンタイル値,エネルギー平均値を算出し,
更に継続時間補正,着陸音補正を行い,年間総飛行回数の90パーセン
タイル値を用いた防衛施設庁方式に近似するW値(以下「沖縄県調査施
設庁方式近似W値」という)を算出した。。
この測定結果から沖縄県調査施設庁方式近似W値をみると,W80区
域にある県野嵩測定局及び県上大謝名測定局はそれぞれ81,88であ
,,りW75区域にある県新城測定局及び市真志喜測定局はそれぞれ77
74であった。これらの数値から,本件航空機騒音の暴露状況は,年間
,,を通して本件コンターの指定当時から20年を経ても全く軽減されず
上大謝名地域においては,本件コンターのW値よりも高い騒音暴露を受
けているということができる。
また,夜間(午後10時から翌日午前7時まで)の騒音については,
Leq(昼夜別)の1日値が,最大値と年間平均でそれぞれ,県野嵩測定
局62dB,47dB,県上大謝名測定局69dB,49dB,県新城測定局6
1dB,43dB,市真志喜測定局55dB,37dBであるのに対し,夜間の
最大騒音レベル(Lmax,night)が,最大値と年間平均でそれぞれ県野嵩
測定局100dB,83dB,県上大謝名測定局109dB,88dB,県新城
測定局98dB,78dB,市真志喜測定局92dB,73dBとなっている。
世界保健機関(WorldHealthOrganization。以下「WHO」という)。
は,睡眠妨害を防ぐためのガイドライン値として,屋内でLmax45dB,
屋外でLmax60dBと定めており,本件コンター内においては,Lmax,nig
htの平均値のレベルが73~88dBとなっているので,日常的に睡眠妨
害を生じさせ得る騒音が発生している。
,(),さらに夜間午後10時から翌日午前7時までの騒音発生回数は
最大と平均がそれぞれ県野嵩測定局18回,0.5回,県上大謝名測定
局6回,0.4回,県新城測定局40回,1.3回,市真志喜測定局1
,.。,,,6回05回であるこれを平均してみると23日に1回以上は
夜間の航空機騒音に暴露されているといえる。
(b)常時測定局の測定データ
沖縄県による前記(a)のとおりの平成9年度から平成17年度まで
のモニタリングシステムにおける測定結果により本件航空機騒音の発生
状況の推移をみると,県等測定局において,次の①から⑤までのとおり
であり,本件航空機騒音による激甚な被害が継続しているといえる。
①最大騒音レベル
,..,最大騒音レベルは県野嵩測定局で1120~1190dB(A)
県上大謝名測定局で114.5~123.0dB(A),県新城測定局で
..,..1037~1107dB(A)市真志喜測定局で965~105
1dB(A)の間で推移しており,非常に激しい騒音が発生している。
②1日平均騒音発生回数及び日平均継続累積時間
1日平均騒音発生回数は,県野嵩測定局で19.5~31.2回,
県上大謝名測定局で39.7~90.5回,県新城測定局で21.6
~73.0回,市真志喜測定局で15.1~35.4回の間で推移し
。,,ている騒音発生回数は測定局や年度毎に相当のばらつきがみられ
特定の傾向はうかがえないも,普天間飛行場周辺住民は,休日を含め
て平均しても常に1日十数回から数十回まで発生する騒音に暴露され
ているといえる。しかも,1日平均騒音発生回数には相対的に騒音発
生回数が少ない土曜日,日曜日も含まれているので,平日は,これら
の数値をはるかに上回っているといえる。
また,騒音の継続時間を累積した1日平均継続時間をみても,本件
航空機騒音の発生状況の変化について一定の傾向はみられず,本件航
空機騒音が軽減されている状況にはない。
③土曜日及び日曜日の騒音発生回数
土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数は,地域や年次によってばら
つきがあるが,相対的に少ない県野嵩測定局や市真志喜測定局でも,
,,日曜日におおむね2~4回土曜日には2~15回程度に増えており
騒音発生回数の多い県上大謝名測定局では日曜日で2~20回程度,
土曜日では40回近くの年度も存する。県上大謝名測定局や県新城測
定局では平成12年度から騒音発生回数が増大している。また,どの
測定局でも日曜日より土曜日の方が騒音発生回数が多く,おおむね2
倍前後の回数で推移している。これらによれば,休日といえども相当
程度の騒音が発生しているといえる。
④夜間における騒音の月平均発生回数
夜間(午後10時から翌日午前7時まで)における騒音の月平均発
,,,生回数は測定局測定年次により相当なばらつきがみられるものの
いずれの地域においても,恒常的に2,3日に1回から1日に2,3
回までの頻度で騒音が発生している。沖縄県調査委員会が平成9年9
月から平成10年8月末までの測定結果から算出した夜間の騒音発生
回数が,前記(a)のとおり1日あたり0.4~1.3回であったこ
とに比べ,より高い頻度で騒音が発生している。
⑤環境基準超過率及び年間W値の推移
県等測定局は,いずれも昭和48年環境基準の類型Ⅰで,環境基準
がW値70以下とされている地域内にあるところ,環境基準を超過し
た日数の割合(以下「環境基準超過率」という)をみると,県野嵩。
測定局と市真志喜測定局ではやや環境基準超過率が低下している一
方,県上大謝名測定局では高水準のまま推移し,県新城測定局では激
増している。環境基準超過率は,県上大謝名測定局では,おおむね7
0~80%であり,年間の多くの日で環境基準を超過しており,県新
城測定局や市真志喜測定局でも,おおむね20~40%強となってお
り,相当程度の超過日数がある。
また,年間W値は,県野嵩測定局で72.0~79.3,県上大謝
..,..,名測定局で787~868県新城測定局で692~730
市真志喜測定局で66.2~71.1の間を推移している。沖縄県調
査委員会がこれら常時測定局の同じデータを元に騒音暴露状況を解析
した平成9年9月から平成10年8月末までの年間W値と,それ以降
のW値とは,ほぼ変化がない。すなわち,本件航空機騒音の暴露状況
は,本件コンターの指定当時,沖縄県調査委員会による調査時,それ
以後現在までの期間にわたって,減少せず,ほとんど変化していない
といえる。年間W値も,本件コンターのW値の水準で,県上大謝名測
定局にあってはそれを上回る水準で推移している。
しかも,これらのW値は,いずれも環境基準方式によるところ,防
衛施設庁方式のW値が環境基準方式のW値よりも相対的に一定程度高
くなるので,環境基準方式により計測されたW値には,少なくとも3
を加えた数値に基づいて評価をすべきである。また,そのため,環境
基準超過率も,防衛施設庁方式で算出し直すと,相当程度増加すると
みられるので,上記環境基準超過率は,控えめなものとして理解すべ
きである。
(c)検証の結果
平成19年5月17日に実施された検証の結果では,主として遠方を
飛行するヘリコプターによる騒音や,固定翼機のうちでも戦闘機や輸送
機に比較して騒音が小さめの対潜哨戒機による騒音だけが観測された。
それにもかかわらず,LAmax55.8~90.7dB,うち75dBを超え
たのが合計15回,LAeq51.7~78.7dBという騒音が発生してい
た。WHOにおいて居住地域(屋外)で昼間と夕方に「高度に不快」と
なる値がLAeq55dB,寝室(屋外)で窓を開けた状態での睡眠妨害の値
がLAeq45dB,LAmax60dBとされているところ,上記の騒音は,この
WHOの環境騒音のガイドラインの数値をほとんど超している。
(d)本件航空機騒音の実態の評価について
平成14年度から本件航空機騒音の減少がみられるところがあるとし
ても,本件航空機騒音が減少傾向にあることを示すものではない。すな
わち,アメリカ合衆国は,平成13年9月11日に同国で同時多発テロ
事件が発生したのを契機に,同年10月7日に,イギリスとともに,ア
フガニスタンへの武力攻撃を開始し,平成15年3月20日にはイラク
への武力攻撃を開始した。沖縄に在る米軍もこれらの武力攻撃に派遣さ
れており,普天間飛行場の海兵隊も同武力攻撃における戦闘行動に参加
したため,ヘリコプターを含む普天間飛行場所属の米軍機も大量に作戦
に組み込まれ,前線に派遣されている。平成14年度と平成15年度の
数値減少の背景には,このような事情が作用していると推認され,あく
まで特殊な政治的・軍事的要因に起因するものであり,一般的傾向を示
すものではない。
原告らは,本件航空機騒音の実態を評価する前提として,原告らの共
通被害を通常在宅している夜間,休日における本件航空機騒音の暴露を
共通のものと捉えているのではなく,本件コンター内に居住する原告ら
について1日24時間の生活の中で生ずる広義の健康被害と捉えてお
り,また,W値も1日24時間を通して騒音に暴露されていることを前
提に算出されたものではない。そのため,被告主張(3)イ(イ)のよ
うに「原告らの共通被害を前提として本件航空機騒音の実態を評価す,
るに当たり,1日24時間を通して騒音に暴露されていることを前提に
,,算出されたW値を用いることは不当であり一定の合理的な根拠により
多くの原告らが騒音に暴露されていないと推定される時間帯の騒音を控
除して算出されたW値を用いるべきである」とはいえない。
(ウ)本件低周波音
,。普天間飛行場は日本に在る米軍基地でも有数のヘリコプター基地である
原告らは,本件コンター内に居住している間,本件航空機騒音のみならず,
普天間飛行場に離着陸等する米軍機特にヘリコプターの発する低周波音以,(
下「本件低周波音」という)にも暴露されてきた。。
a低周波音の意義
「音」とは,空気中を伝わる波,すなわち空気振動であり,その1秒間
の振動数(周波数)をHz(ヘルツ)という単位で表す。
人の耳は,一般に20~2万Hzの間の音を聞き取ることができる。これ
を「可聴域」という。可聴域の範囲外である20Hz以下の聞こえない音を
「超低周波音」という。
人の耳の感度は,2000~4000Hz辺りが最も良好で,それより高
くなっても低くなっても聞き取りが悪くなる。特に100Hz以下では急速
に感度が低下する。100Hz以下の聞こえにくい低音は,超低周波音を含
めて一般に「低周波音」といわれる。
b騒音及び低周波音の測定方法
①A特性とF(フラット)
普通の音(騒音)は,通常,騒音計の「A特性」で測定される。この
結果として得られるdB(A)という数値は,20~8000Hzの音を合計
した数値である。A特性は,人の耳の感度に合わせて低い周波数を小さ
く評価するように補正するので,実際に強烈な低周波音が出ていても,
その音圧を正確に計ることはできない。
一方,人の聴覚による感覚補正をせず,なるべく平坦に測定するよう
にしたものがF(フラット)であり,通常,騒音計の「F」の目盛りに
合わせると測定することができるようになっている。Fは,平坦特性と
呼ばれ,10~2万Hzの音を合計した数値である。
②G特性とSPL
G特性とは,1~20Hzの超低周波音の人体感覚を評価するための周
波数補正特性であり,可聴音(人が聴くことができる音をいう。以下同
じ)における聴覚補正特性であるA特性に対応する。この結果として。
得られるdB(G)は,0.5~200Hzの音を合計した数値である。
一方,SPLは,G特性のような補正をせず,周波数特性が平坦であ
る。SPLは,1~1000Hzの音を合計した数値である。
③W値と低周波音
W値の算定の基礎となる騒音は,dB(A)のみであるところ,dB(A)は,
前記①のとおり,低い周波数を小さく評価するように補正されており,
低周波音の音圧がほとんど反映されない。
c低周波音と騒音との相違
低周波音は,周波数が低くため,波長が長いので,騒音よりも音源から
遠くまで響き,かつ防音対策の効果が小さい。
,,。現実には同じ音源から騒音と低周波音の両方が発生することが多い
d本件低周波音の発生とその程度
沖縄環境ネットワークが,平成11年3月に,普天間飛行場周辺8か所
及び嘉手納飛行場周辺1か所において,米軍機が発する低周波音について
主にSPLによる測定調査を行った結果,①米軍機の音圧は騒音より低周
波音の方が大きいこと,②家屋の防音工事は低周波音の低減対策にならな
,,,いこと③低周波音は騒音より遠くまで伝わり被害範囲は広くなること
④エンジン調整とタッチアンドゴーは,甚大な低周波音被害をもたらすこ
と,⑤米軍機が発する低周波音は,不定愁訴など身体に影響があるとされ
る周波数と重なる典型的な低周波音域に属することが判明した。
また,沖縄県が平成13年から平成17年までに普天間飛行場周辺にお
いてG特性を用いて実施した低周波音調査の結果,普天間飛行場に所属す
るヘリコプターは,CH-53が20及び25Hz,CH-46が12.5
及び16Hz,AH-1が10及び20Hzの低周波音が主に発すること,騒
音よりも低周波音の方が音圧が高いこと,低周波音は騒音と比べて室内で
も軽減されないこと等が明らかになったほか,環境省「低周波音問題対応
の手引書」で定められた心身に係る苦情に関する参照値である92dB(G)
超える数値が複数年度にわたり測定されている。
ウ原告らの被害
(ア)被害認定の在り方
a「広義の健康被害」
原告らは,本件航空機騒音により,生活妨害全部,精神的被害及び身体
的被害が一体と捉えられる「広義の健康被害」を受けている。
,,,,原告らのうち相当数の者には睡眠妨害生活妨害精神的被害のほか
難聴,耳鳴り,高血圧,胃腸障害等の身体的被害(狭義の健康被害)が生
じているほか,頭痛,肩こり,目まい,心悸亢進,不眠症,疲労感,食欲
不振等のような不定愁訴等が生じている。
,()もともと生活妨害全部及び精神的被害と身体的被害狭義の健康被害
とは,せつ然と区別することができるものではない。生体に対して外界か
ら何らかの刺激(ストレッサー)が加えられると,その生体には,健康状
態の変化を伴う何らかの徴候(ストレス反応)が現れる。このストレス反
応には,主観的認識が伴う場合とそうでない場合とがある。WHOが「健
康とは,身体的,精神的ならびに社会的に完全に良好な状態をいうのであ
って単に病気や虚弱でないことをいうのではない」と健康概念を定義して
いることからも,生活妨害全部及び精神的被害は,身体的被害と切り離さ
,「」。れた全く別個の被害ではなく広義の健康被害に包摂されるといえる
本件航空機騒音により身体に生ずる悪影響それ自体が「広義の健康被害」
の基盤を構成し,個々の原告らに生ずる生活的・精神的・身体的影響の諸
現象は「広義の健康被害」の発現形態の差異にすぎない。,
しかも,生活妨害全部及び精神的被害と身体的被害とは,日常の経験か
らそれぞれ相互に関連し合っているといえる。すなわち,身体的に不健康
があれば精神的にも苦痛であり,生活にも被害を受ける。逆に,精神的ス
トレスが,胃腸の不調,頭痛,ときには血圧亢進を起こすこともよく知ら
れている。生活上の様々な困難が,精神的のみならず身体的な不健康をも
たらす例は少なくない。
したがって,生活妨害全部,精神的被害,身体的被害という3つの側面
は,常に密接に関連しており,この3つの側面を一体として捉えて「広,
義の健康被害」として統一的に把握すべきである。
b共通被害
「広義の健康被害」は,原告らが本件コンター内に居住することにより
最低限度共通に生じている被害である。
本件航空機騒音による健康被害の発生は,地域住民全体にとって極めて
重大な関心事であるので,身体的被害(狭義の健康被害)の発生又はその
危険性の存在は,地域住民にとっての共通の精神的被害であるから,原告
らの共通被害となる。
「低出生体重児の出生「幼児問題行動」及び「学習環境の破壊」の子」,
供の被害は,単なる生活上の被害にとどまらず「広義の健康被害」であ,
る。特に,このような被害が普天間飛行場周辺の子供に発生していること
,,。,は原告らを含む地域住民全体としても重大な関心事であるそのため
普天間飛行場周辺の子供がこのような被害を受けていることは,地域住民
にとっての共通の精神的被害であるので,原告らの共通被害となるという
べきである。
c本件コンターによる共通損害の推定
,,,,航空機騒音は音響出力音量が大きく騒音の及ぶ範囲が広大であり
建物や建造物等によって遮音,回避が困難であり,また,騒音の発生が間
欠的で,1回の飛行による持続時間は長くない。特にジェット機の場合に
は,高周波成分を含む金属的な音質であり,軍用機における離着陸の騒音
は,民間機よりも音の立ち上がりが鋭く,突発的に襲来し,通常のジェッ
ト機より一層不快な金属音・衝撃音を伴う。ヘリコプターの場合,360
度低空飛行である。本件航空機騒音は,これらの特質を有する。
また,軍用飛行場においては,飛行経路,飛行時間帯及び飛行態様が一
定せず,年間又は数年を通じて,騒音レベル,飛行回数,飛行時間帯及び
飛行コースが著しく変動するので,原告らは,本件航空機騒音に突然暴露
される。そのため,原告らに対する本件航空機騒音による被害は,すさま
じい。
そして,本件コンターは,騒音暴露レベル自体が常に変動するものであ
,,,,,,ることを踏まえて住民各々の性別年齢家族構成職業身体的条件
騒音暴露時間等が相違していることを当然の前提として作成されている。
そのため,原告らは,その居住する住宅の構造,生活形態等の個々の生活
状況の相違による騒音暴露時間やその程度を捨象して,本件コンターの区
分毎にそれに相応する「広義の健康被害」を被っているといえる。
したがって,原告らの本件航空機騒音による被害は,本件コンター内に
居住していることから推定されるべきである。
(イ)生活妨害
原告らは,本件航空機騒音により,会話妨害,通話妨害,テレビ・ラジオ
の聴取妨害の生活被害を受けている。
本件航空機騒音により,家庭,職場及び学校等での会話や通話が妨害され
ている。人間は,日常生活を送る中で様々な人と会話をしており,人とのコ
ミュニケーションにおいて会話の占める位置は大きい。普天間飛行場周辺で
は,本件航空機騒音によって,かかる基本的なコミュニケーション手段であ
る会話が著しく妨害されている。また,原告らは,本件航空機騒音により,
現代社会にとって必要不可欠な情報獲得手段であるテレビやラジオの聴取も
妨害されている。沖縄県調査の結果においても,W値の区分が高くなるに従
って,反応率が上昇しているから,航空機騒音と会話妨害,通話妨害,テレ
ビ聴取妨害との間に量反応関係がみられる。
また,原告らは,本件航空機騒音により,音楽観賞,楽器演奏,無線通信
等の趣味生活や,学習や読書等の知的作業も妨害されている。
さらに,原告らには,本件航空機騒音により,積極的永住志向が低下する
など生活環境の悪化の被害も生じている。
本件航空機騒音が,人が日常生活を送る上で極めて重要な活動を日常的に
妨げているので,原告らの被害は,深刻である。
また,航空機騒音は,間欠的であるため予測することができないから,各
種の生活妨害を防止することが困難である。そのため,本件航空機騒音は,
被告主張(3)ウ(イ)のように,間欠的で一過性のものであるから「会,
話,通話,テレビ・ラジオの聴取に対する影響は,あったとしても,極めて
軽微である」とはいえない。
そして,本件航空機騒音の状況がWHOの環境騒音のガイドラインが示し
ている指針値を大きく上回っていることは,原告らが生活妨害の被害を受け
ていることを裏付けている。
(ウ)睡眠妨害
原告らは,本件航空機騒音により,睡眠妨害の被害を受けている。
本件航空機騒音は,平日のほぼ毎日,午後11時ころまで,また,午前6
時ころから,断続的かつ多数回発生しており,原告らの睡眠を妨げている。
沖縄県調査の結果においても,W値の区分が高くなるに従って,反応率が上
昇しているから,航空機騒音と睡眠妨害との間に量反応関係がみられる。騒
音による睡眠妨害は,睡眠中に入眠の困難,覚せいや睡眠深度の変化,呼吸
数の変化,体動の増加などの一次影響が生じ,騒音の暴露を受けた翌日以降
にも翌朝やその後何日間かに現れる不眠感,疲労感,憂うつ,作業能率の低
下などの二次影響が生ずる。妨害を受けない睡眠は,身体的・精神的な機能
を良好に保つために必要不可欠である。
WHOの環境騒音のガイドラインの指摘や各種調査研究の結果に照らせ
ば,騒音レベル40dB(A)の段階から睡眠妨害が発生することは科学的にも
証明されているので,被告主張(3)ウ(ウ)のように「どの程度の騒音,
,」「」。があれば人の睡眠を妨げるかなどは明らかでないなどとはいえない
(エ)精神的被害
原告らは,本件航空機騒音,特にヘリコプターによる騒音により,イライ
ラ感や集中力の欠如などの著しい不快感を受けている。沖縄県調査の結果に
おいても,W値の区分が高くなるに従って,反応率が上昇しているから,航
。,空機騒音とうるささとの間に量反応関係がみられる沖縄県調査の結果では
,「」,W75区域でもたいへんうるさいと回答する者の割合が20%を超え
「かなりうるさい」及び「少しうるさい」と回答する者を含めると,その反
応率は,90%となる。W80区域では「たいへんうるさい」と回答する,
者の割合が30%を超えている。
しかも,原告らは,イライラ感や不快感にとどまらず,本件航空機騒音に
より,普天間飛行場を離着陸する米軍機の墜落への恐怖感や不安感及び戦争
への恐怖感を受けている。すなわち,原告らの多くは,普天間飛行場に離着
,,,陸する固定翼機や旋回訓練タッチアンドゴーをしているヘリコプターが
民家から非常に近い位置を超低空で飛行していることから,墜落への恐怖感
や不安感を訴えている。原告らは,特に平成16年に沖縄国際大学にヘリコ
プターが墜落した事故が発生してからは,墜落への恐怖感を現実的なものと
。,,して感じているまた普天間飛行場を離着陸する戦闘機やヘリコプターは
聴覚的にも,原告らに直接戦争への恐怖を想起させている。
(オ)身体的被害
原告らは本件航空機騒音により難聴や耳鳴り高血圧の身体的被害狭,,,(
義の健康被害)を受けている。沖縄県調査において,嘉手納飛行場周辺に居
住する者12症例に航空機騒音に起因すると強く疑われる騒音性聴力損失が
生じていると結論付けていることなどから,普天間飛行場周辺に居住する原
告らにおいても,騒音性聴力損失の被害が発生し,又は発生する危険性が高
いといえる。そして,本件コンターのW値は,前記イ(イ)aのとおり,全
体的に過小評価されているので,本件コンターのW値が嘉手納飛行場周辺の
W値よりも低いことから,普天間飛行場周辺において聴力障害を生ずる危険
性がないとはいえない。
沖縄県調査の結果,最高血圧及び最低血圧とも,W値との間に有意な関連
がみられる。
原告らが訴える症状は,難聴や耳鳴り,高血圧だけでなく,頭痛や肩こり
に加え,動悸,めまい,不眠,疲労倦怠感など様々である。このように,普
天間飛行場周辺では,多数の原告らが様々な身体的被害を具体的に訴え,か
つ,これらの身体的被害は原告に限らず同居の家族らにも発生している。音
というものは,その場にいる者に等しく聞こえるので,本件航空機騒音は,
,,影響の度合いに個人差こそあれ原告らを含む普天間飛行場周辺住民に対し
極めて深刻な健康被害を生じさせている。
したがって,身体的被害(狭義の健康被害)の発生又はその危険性の存在
は,原告らの共通の精神的被害となっている。
(カ)子供の被害
原告らは,普天間飛行場周辺住民として,本件航空機騒音により,普天間
飛行場周辺に居住する子供に「低出生体重児の出生「幼児問題行動」及び」,
「学習環境の破壊」の被害が生じていることに伴い,精神的被害を受けてい
る。
本件航空機騒音は,普天間飛行場周辺に居住する妊婦に影響を与え,低出
生時体重児の出生率を高めている。沖縄県調査の結果では,騒音暴露量と,
嘉手納飛行場のある嘉手納町における低出生体重児の出生率のみならず,宜
野湾市における低出生体重児の出生率との間にも,量反応関係がみられる。
低体重で出生した子供は,心身の発達面における負の要因を背負って成長せ
ざるを得ない。
また,本件航空機騒音は,普天間飛行場周辺に居住する幼児に対して,
身体面では風邪を引きやすく,行動面ではぐずぐずしがちで,食欲がなく,
友達作りに手間取る傾向があるとの問題行動をもたらしている。沖縄県調査
の結果でも,騒音暴露量と,感冒症状,食事課題及び消極的傾向との間に,
有意な量反応関係がみられる。
さらに,本件航空機騒音は,普天間飛行場周辺に居住する小学生,中学
生及び高校生に対しても,健全な学習環境を破壊し,集中力や記憶力の低
下などを引き起こしている。沖縄県調査の結果でも,騒音暴露量と小学生の
長期記憶力との間に有意な量反応関係がみられる。医学的にも,騒音という
ストレッサーが免疫力の低下させ,海馬に機能的な変化をもたらした結果,
記憶力の低下を招いていると説明することができる。
このように,本件航空機騒音は,妊娠・出産から,乳幼児期,小中高生と
いう時期に至るいわば人間の成長過程全てにおいて,重大な悪影響を及ぼし
続けている。そのような不可逆的な被害が普天間飛行場周辺の地域全体にと
って重大な関心事となっている。
(キ)その他の本件航空機騒音による被害
原告らは,本件航空機騒音によって,大人の自治会活動も著しく阻害され
る被害を受けている。
(ク)本件低周波音による被害
原告らは,本件航空機騒音と相まった本件低周波音により,不定愁訴を中
心とする心身被害,建具や家具の振動等の物的被害に起因する精神的被害を
受けている。
a低周波音による被害の中心は,一般に「不定愁訴」と呼ばれる雑多でと
らえどころのない症候群である。すなわち,不定愁訴は,頭痛,不眠,イ
ライラの3つを主な症状として,頭重,肩その他のこり,動悸,胸の圧迫
感,息切れ,めまい,吐き気,食欲不振,胃痛や腹痛,耳鳴り,耳の圧迫
,,,,,,感目や耳の痛み腰痛手や足の痛みやしびれ・だるさ疲労感微熱
,。,風邪を引いたような感じ等あらゆる症状があるこのような不定愁訴は
当然に「広義の健康被害」に含まれ,それと同時に,精神的苦痛・生活被
害という側面も有している。
また,低周波音は,建具や家具を振動させる。原告らは,この振動の音
,,。によって驚かされ又はその音が耳について眠れない等の被害を受ける
不定愁訴が人間への直接被害であるのに対し,建具や家具の振動は,物質
への被害であるが,その音によって人間に二次的な被害が生ずる。
原告らの多くが,こうした不定愁訴や建具のがたつき等を訴えている。
b低周波音がもたらす一般的な被害については,厳密な意味での個別立証
は不要であるというべきである。また,騒音の影響と低周波音の影響を分
離して調査する手法は確立されていないものの,騒音に低周波音が加わっ
た場合,被害が増大するというのが,音響学専門家の共通見解であり,W
HOなど権威ある機関の考え方である。
①本件低周波音が発生し,人の心身に悪影響を及ぼし得る程度の強度で
原告らの居住地域に到達していること,②原告らが低周波音の一般的被害
と同様の症状を共通に訴えていること,③普天間飛行場周辺住民が嘉手納
飛行場周辺住民と比べ高い被害感を訴えているところ,その原因につき,
本件航空機騒音に限定すると説明が困難であるが,本件低周波音の影響を
加味して検討すれば容易に説明することができることから,本件低周波音
は,本件航空機騒音と相まって原告らの「広義の健康被害」を増悪させて
いるといえる。
エ被告主張の「普天間飛行場の公共性等」に対する反論
(ア)普天間飛行場の反公共性
アメリカ合衆国は,平成13年9月11日に同国で同時多発テロ事件が発
生したのを契機に,アフガニスタンへの武力攻撃を開始し,また,平成15
年3月20日にはイラクへの武力攻撃を開始した。そのいずれにも,普天間
飛行場に配属された米軍機が出撃している。普天間飛行場に配属された米軍
機によるこれらの軍事行動等は,安保条約6条が規定する「日本国の安全に
寄与し,並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」ことで
はないので,普天間飛行場の供用は,公共性に反する。
また,普天間飛行場は,住民や土地所有者の意思を暴力と権力によって踏
みにじって建設され,維持されてきた上,以下のとおり,戦争のための施設
であるので外部から攻撃対象となるという不安感を周辺住民に与え,住民を
多くの不幸な事件・事故に巻き込み,更に宜野湾市の健全な発展を阻害して
いるので,公共性に反する。
すなわち,まず,①我が国は,資源もなく外交力もないから,他国がわざわ
ざ攻撃することは考えられないので,現実的には他国から平和や安全を害され
ることはない。仮に我が国が他国から武力攻撃を受ける事態が起こり得るとす
,,るならばアメリカ合衆国が世界のどこかで他国と武力衝突状態となった結果
当該他国からみて,米軍基地が置かれ,かつ米軍と共に行動する自衛隊を有す
る日本がアメリカ合衆国と一体とみられる場合である。また,②普天間飛行場
に所属する米軍機による墜落事故等は,昭和47年5月15日(沖縄の復帰
の日)から現在まで,79回も発生し,そのうち,平成16年8月には,沖
縄国際大学に米軍機のヘリコプターが墜落する事故が発生している。これま
で,日米政府間において「沖縄の負担軽減」として検討対象となるのは,,
普天間飛行場であった。普天間飛行場は,宜野湾市の中心に位置し,その周
辺には,住宅,商業施設等が密集しており,極めて危険である。さらに,③
普天間飛行場は,沖縄本島の中部地域(沖縄市,うるま市,宜野湾市,浦添
市,中頭郡の各行政区域を指している。以下同じ)に広大な面積を占めて。
おり,嘉手納飛行場と並んで,沖縄本島の中部地域の全体の交通,産業の発
展,開発を阻害する存在である。しかも,普天間飛行場は,宜野湾市の中央
,。,部に所在するから地域の振興開発に対するマイナスは計り知れないまた
沖縄県は,自主財源比率が,平成16年度で26.33%で全国47都道府
県中最下位であり,財政力指数も43位と極めて低い。この自主財源比率及
び財政力指数の低さは,基地関連収入の財政に占める割合が非常に高いこと
を意味している。米軍基地の集中する沖縄本島の中部地域の各自治体におけ
る基地関連収入の歳入に占める割合は総じて高く,普天間飛行場のある宜野
湾市も,金額ベースで15~20億円という上から2番目のグループに分類
されており,財政の基地依存度は極めて高い。このような莫大な基地関連収
,,入の存在は本来対等であるはずの国と自治体の関係に上下関係を生じさせ
自治体の政策を拘束する結果をもたらしている。
(イ)被告主張の「普天間飛行場の適地性及び重要性」について
被告主張の地政学的観点からの沖縄の重要性は,昭和31年のプライス勧告
以来のアメリカ合衆国の戦略的認識をそのまま踏襲している。プライス勧告当
,,,,時は沖縄は日本国とアメリカ合衆国アメリカ合衆国とフィリピン共和国
アメリカ合衆国と大韓民国,アメリカ合衆国と台湾,アンザス(アメリカ合衆
国,オーストラリア連邦及びニュージーランド)の各安全保障条約を結び付け
る位置にあり,中華人民共和国及びソビエト連邦(当時)の封じ込めの戦略的
拠点として重視されていた。しかし,冷戦が終結した現在は,沖縄にそのよう
な軍事的価値はない。
また,軍事技術の発達も,軍事的観点からみた沖縄の地理的重要性を著しく
低下させている。沖縄は,大量輸送手段の発達やミサイルの飛距離の増大,さ
らには空中給油機の普及等によって,太平洋全域に展開する米軍にとって既に
必要不可欠な施設ではなくなっている。
現在の沖縄に何らかの軍事的価値があるとすれば,それはアメリカ合衆国本
土からインド洋,中東,そしてアフリカへの中継地点としてであって「日本国,
・極東の安全」とは無関係である。つまり,沖縄は「アメリカの世界戦略」に
とって重要であるにすぎず「日本の安全」のために重要ではない。,
(ウ)普天間飛行場の公共性の程度
仮に普天間飛行場に何らかの公共性があるとしても,公共的事業活動によ
って,一部の国民がその受ける被害を受忍しなければならないということに
はならず,公共性の高い施設によって特別の犠牲を払った者には,それだけ
の保障の必要性が大きく,その負担は国民全体に転嫁されるべきである。特
に,我が国内において沖縄に米軍基地を集中させ,沖縄に米軍専用施設の7
5%がある以上,沖縄の住民のみが,他の地域の国民のために,米軍基地に
よる被害を甘受しなければならないわけではない。
(エ)以上によれば,本件航空機騒音による侵害行為又は普天間飛行場供用
の違法性を判断するに際しては,公共性を考慮すべきではなく,仮に考慮す
るとしても,過度に重視すべきでない。
オ被告主張の「周辺対策等」に対する反論
(ア)住宅防音工事
住宅防音工事(被告が,生活環境整備法4条に基づき,助成の措置を採っ
て実施された住宅の防音工事をいう。以下同じ)は,以下のaからdまで。
のとおり,不十分であり,原告らの本件航空機騒音による被害を軽減する施
策となっていない。
したがって,住宅防音工事の実施は,本件航空機騒音による侵害行為又は
普天間飛行場供用の違法性を減ずる根拠とはならないというべきである。
a室数の制限
住宅防音工事において,防音工事を施工する室数に制限が設けられてい
る。このような室数制限を設ければ,仮にリビングルームと応接室に防音
工事を施工すれば,寝室に防音工事を施工することはできず,睡眠を妨げ
られる結果となり,2つの寝室に防音工事を施工すれば,リビングルーム
や応接室に防音工事を施工することができず,家庭の団らんや客の応接を
妨げられる結果となる。防音工事の室数に制限を設けることは,原告らの
本件航空機騒音による被害を軽減することにはならない。
b防音工事実施率
原告らの普天間飛行場周辺住民が全て住宅防音工事を実施しているわけ
ではない。約半数の住宅について住宅防音工事が実施されていないので,
住宅防音工事は,その実施率においても,不十分である。
c住宅防音工事による現実の防音量
計画防音量(被告が,住宅防音工事における防音工事によって達成しよ
。。),,うとする防音効果の程度をいう以下同じは理想的な建物において
理想的な工事を施工した場合に初めて得られるにすぎない。現実の防音量
は,防音工事を施工した建物の老朽度,施工業者の技術レベル,防音工事
施工後の経年劣化及びメンテナンスの有無などによって影響を受ける。そ
のため,現実の防音工事による防音量を確認するためには,実証的な調査
が不可欠である。しかし,住宅防音工事による物理的防音量については,
実証的な調査がされていない。
d実生活上の防音効果及び満足度
(a)周辺住民の生活実態と住宅内の防音効果
計画防音量は,防音室の中において窓やドアを完全に閉め切り,部屋
に施錠することが前提となっている。しかし,沖縄の気候は,その最高
気温は32度程度であり,また風が強いという海洋性気候のため,クー
ラーを使用せずとも過ごしやすいという特質を有している。また,普天
間飛行場周辺は,都市部と異なり,ドアや窓を開け放ったままの生活習
慣が根ざした地域でもある。他方で,部屋を一日中閉め切ってクーラー
を使用すると,電気料金が過大となり,また気密性が高く換気が不十分
。,となりがちな環境のために健康に悪影響を及ぼすこともあるそのため
普天間飛行場周辺住民の生活実態から考えれば,窓を閉め切って終日生
活することはできない。
また,窓を閉め切っていたとしても,計画防音量を得ることは,生活
実態からして,困難である。すなわち,住宅防音工事を実施していると
しても,防音工事室数の制限があることから,家屋の中には防音工事を
施工してない部屋が存在する。台所は,特に,換気扇や勝手口があり計
画防音量まで防音工事を施工することが困難であるから,防音工事を施
工しないことが多い。台所の隣にあるリビングや応接間の計画防音量を
確保するためには,これらの部屋に防音工事を施工するだけでなく,台
所など防音工事を施工していない部屋との間を遮音性のドアで遮断した
上で,日々の生活の中でこのドアをいちいち閉めて施錠しなければなら
ないが,現実にはこのような生活習慣は行われてはいない。
本件航空機騒音による被害のない地域では,家屋内の移動に伴い部屋
のドアを閉め切り施錠をするという生活様式とは無縁のはずであり,普
天間飛行場周辺住民だけがこのような生活様式を余儀なくされる理由は
ない。
(b)住宅防音工事についての効果,満足度
住宅防音工事を実施した住民においても,必ずしも防音工事の効果を
認めているわけでも,満足しているわけでもない。
(c)住宅防音工事で得られる実生活上の防音効果
人間の生活は,部屋の中だけで営まれるものではない。原告らの日常
,,,,,生活は通勤通学のみならず買物に出かけたり洗濯物を干したり
庭先を掃除したりするなど屋外での生活も多く占めており,原告らは,
本件航空機騒音を遮る屋根や壁がない状況で本件航空機騒音に暴露して
いる。また,防音工事を施工する室数が制限されており,原告らは,屋
内においても,必ず防音室の中にいるとは限らない。
(イ)被告主張の住宅防音工事以外の「周辺対策」について
被告主張の障害防止工事及び学校等公共施設防音工事の助成,民生安定施
設の助成措置,特定防衛施設周辺整備調整交付金の交付,防音事業関連維持
費の補助,空気調和機器稼働費の補助,国有提供施設等所在市町村助成交付
金以下基地助成交付金という及び施設等所在市町村調整交付金以(「」。)(
下「基地調整交付金」という)の助成は,いずれも原告らの実生活におけ。
る本件航空機騒音による被害を軽減するものではない。
したがって,これらの周辺対策は,本件航空機騒音による侵害行為又は普
天間飛行場供用の違法性を減ずる根拠とはならないというべきである。
(ウ)被告主張の「音源対策」について
被告主張のエンジンテストに伴う騒音軽減のための消音装置の設置につい
ては,かかる消音装置は設置されておらず,また,仮に設置されているとし
ても,消音装置が設置されて本件航空機騒音の発生が実際に抑えられている
とはいえない。他方,被告主張のエンジンテストとは,周辺住民らが広くエ
ンジン調整音と呼称する騒音のうちのごく一部にすぎない。普天間飛行場周
辺住民が呼称するエンジン調整は,佐真下地域や喜友名地域などの滑走路近
辺で行われるものであり,仮に消音装置の設置があるとしても,このエンジ
ン調整に消音装置が用いられることはないから,このエンジン調整音が軽減
されることにはならない。
また,被告主張の緑地整備事業は,音源対策とは関係がない。
したがって,被告主張の音源対策は,音源対策とはなっておらず,本件航
空機騒音による侵害行為又は普天間飛行場供用の違法性を減ずる根拠とはな
らないというべきである。
(エ)被告主張の「運航対策」について
平成8年規制措置の内容は,米軍機の飛行時間について「22時から翌,
朝6時」の飛行を制限したにすぎず,また,飛行コースについても「進入,
及び出発経路を含む飛行場の場周経路は,できる限り学校,病院を含む人口
稠密地域上空を避けるよう設定する」という程度にとどまり,飛行高度に。
ついても「1000フィート(305m)以上」とされ「500m以上」,,
とされる厚木飛行場や「600m以上」とされる横田飛行場と比較して,極
めて緩やかな規制とされている。
しかし,実際には,平成8年規制措置の締結後も,夜間における本件航空
機騒音の発生が続き,土曜日や日曜日の飛行も行われ,学校や病院の上空通
過,低空飛行や旋回飛行が行われており,平成8年規制措置の定める規制さ
え守られていない。また,平成8年規制措置にある「慰霊の日のような周辺
地域社会にとって特別に意義のある日については,訓練飛行を最小限にする
よう配慮する」との規制についても,米軍機は,ウークイ(沖縄の旧盆)。
や学校の入学式日でも飛行しており,配慮しているとはいえない。
このような平成8年規制措置が守られていない状況からすると,被告は何
ら運航対策を行っていないことに等しい。
したがって,被告主張の運航対策は,本件航空機騒音による侵害行為又は
普天間飛行場供用の違法性を減ずる根拠とはならないというべきである。
カ違法性を画する基準
受忍限度論を採用して本件航空機騒音による侵害行為又は普天間飛行場供用
の違法性を判断する場合には,以下の理由により,本件コンターのW値75を
もって違法性(受忍限度)を画する基準とすべきである。
(ア)昭和48年環境基準の「専ら住居の用に供する地域(類型Ⅰ」におけ)
るW値70という数値は,本来であれば航空機騒音による日常生活の妨害や
住民の苦情等がほとんど現れないという意味での「望ましい指針値」として
はW値65が妥当であるものの,航空機騒音低減の当時の技術的困難性や輸
送の国際性・安全性の制約等の諸事情を考慮した上で引き上げられた数値で
ある。W値70は,生活病害や睡眠妨害が生じ,また,一般騒音の中央値5
5デシベルに相当するので,身体への影響も顕著に出現する数値である。し
かも,昭和48年環境基準の「その他の通常の生活を保全する必要がある地
域(類型Ⅱ」におけるW値75という数値は,地域の事情を考慮してW値)
70を更に引き上げた数値であって,より生活被害,睡眠妨害,人体への影
響が大きくなる数値である。
昭和48年環境基準は,福岡空港を除く第2種空港B(ターボジェット発
動機を有する航空機が定期航空運送事業として離着陸する空港)及び新東京
国際空港の周辺地域においては10年以内に基準値を達成すべきものとし,
中間改善目標として5年以内にW値を85未満とし,W値85となる地域に
おいては屋内でW値65以下とすることを定めている。また,新東京国際空
港を除く第1種空港(東京国際空港及び大阪国際空港)及び福岡空港の周辺
地域においては10年を超える期間内に可及的速やかに基準値を達成すべき
ものとし,5年以内にW値を85未満とすべき中間目標が設定されているほ
か,10年以内にW値を75未満とし,75以上となる地域においては屋内
でW値60以下とすることを定めている。普天間飛行場のような防衛施設に
ついても「当該飛行場と類似の条件にある……飛行場の区分に準じて環境,
基準が達成され,又は維持されるように努めるものとする」としている。。
このように,昭和48年環境基準のW値75は,①身体影響,生活被害が
生じない最低の数値を定め,また,②エンジン製造上の技術的制約,輸送の
安全上の制約等種々の要素を考慮した上で,住民側にとって危険な方向へそ
の数値を引き上げたものであるので,違法性(受忍限度)を画する基準とな
るというべきである。
(イ)そして,生活環境整備法施行規則2条のW値は,昭和56年の改正に
より75以上とされたことに伴い,普天間飛行場周辺においても,W値75
以上の地域を生活環境整備法4条の規定により「音響に起因する障害が著し
い」とされる第1種区域と指定しているので,W値75以上の地域である本
件コンター内においては,被害が著しいといえる。
本件コンター内の地域には,実際,本件航空機騒音によって,著しい睡眠
妨害,生活妨害及び精神的苦痛の被害が生じている。沖縄県調査では,W値
70の騒音暴露量と睡眠妨害,生活妨害などの被害との間に量反応関係をみ
られるので,W値75は,控えめな数値である。
また,前記イ(イ)aのとおり,本件コンターの指定に際し,累積度数曲
線が0.5日ずれてプロットされた結果,W値が2.5程度低く算出されて
,.,いるので本件コンターのW値に25程度加算した数値が正確であるから
本件航空機騒音による侵害行為又は普天間飛行場供用の違法性の評価に当た
っては,本件コンターのW値75が全体的に過小評価されていることをしん
酌すべきである。
さらに,普天間飛行場においては,本件低周波音が本件航空機騒音と相ま
って被害を生じさせているところ,低周波音の影響は,W値には反映されて
いない。しかも,低周波音には,防音工事の効果がほとんどない。
(ウ)また,欧米の主要国においても,ほぼW値70~75の地域において
住宅建築を規制し,又は防音措置を義務付けているところ,建物による騒音
の遮断効果には,我が国は欧米と比べ約10dBも低いことを考慮すると,W
,,()値60~65が望ましい基準といえるのでW値75は違法性受忍限度
を画する数値として控えめであり,正当であるといえる。
WHOの環境騒音のガイドラインで示された数値は,昭和48年環境基準
の数とほぼ同じであり,又はそれを下回るといえるので,昭和48年環境基
準のW値75が違法性(受忍限度)を画する基準として正当であることは,
WHOの環境騒音のガイドラインからも裏付けられている。
(エ)以上を総合すると,W値75をもって,本件航空機騒音による侵害行
()。為又は普天間飛行場供用の違法性受忍限度を画する基準とすべきである
そして,W値75以上の騒音に暴露されている地域として第1種区域と指定
されている本件コンター内に居住する原告に対しては,本件航空機騒音によ
る侵害行為又は普天間飛行場供用の違法性を認めるべきである。
なお,昭和48年環境基準は,生活・産業と密接不可分な騒音により一定
の利便を受けている地域においては,生活・産業に利用する航空機騒音につ
いても一定程度受忍しなければならないとの趣旨から,地域類型を設けてい
るところ,生活・産業に利用する民間航空機とは異なり,米軍機が生活・産
業に利用されることはないから,本件航空機騒音による侵害行為又は普天間
飛行場供用の違法性(受忍限度)を画する数値については,昭和48年環境
基準上の地域類型に従って差異を設けるのは不当である。
(4)過去の損害の賠償請求に係る損害額
ア原告らが昭和47年5月15日沖縄の復帰の日から各訴状送達の日第,()(
1事件にあっては平成15年1月6日,第2事件にあっては同年5月6日)ま
での間のうち,本件コンター内に居住している間に被った精神的被害に対する
慰謝料の額は,原告らのうち,最も被害の少ないものについて,その被害を最
も軽く想定したとしても,その被害の甚大さや現在の経済価値の外,普天間飛
行場の歴史的,地理的経緯に照らし,100万円を下回らないから,少なくと
も原告ら1人につき100万円となる。
,(,また本件各訴状送達の日の翌日第1事件にあっては平成15年1月7日
第2事件にあっては同年5月7日)から口頭弁論終結の日(平成20年1月3
1日)までの間であって,本件コンター内に居住している間における精神的被
害に対する慰謝料の額は,原告らの被害の甚大さや現在の経済価値の外,普天
間飛行場の歴史的,地理的経緯に照らし,原告ら1人につき少なくとも1日1
250円となるべきである(1か月3万5000円の請求については,月の日
数が29日,30日又は31日である場合には,当該各月の請求は一部請求と
なる。。)
イ住宅防音工事による減額について
住宅防音工事は,前記(3)オ(ア)のとおり,不十分であるので,被害額
を減額する根拠とはならないというべきである。
ウ弁護士費用
弁護士費用相当の損害は,原告ら1人につき15万円が相当である。
(5)被告主張の「危険への接近の法理による免責又は減額」に対する反論
ア「危険への接近の法理」の適用の不当性
原告らは,自ら好んで本件航空機騒音による被害を受け続けているわけでは
ない。普天間飛行場は,米軍が占領後に囲い込み,住民の生活の場を奪って作
られたので,いわば「危険から」接近し,住民らの故郷に居座っている。被告
は,国民の健康と生活を守る義務を負っているにもかかわらず,根本的な音源
対策を講ずることなく,本件航空機騒音を長年放置した上,原告らが「危険へ
接近」してきたなどと主張することは「衡平の原則」に反している。,
したがって,危険への接近の法理は,免責の法理としても,減額の法理とし
ても適用されるべきではない。
イ免責法理としての危険への接近の法理
(ア)被告主張の「基準日後の転入者」について
a原告らは,沖縄県民として,沖縄の復帰の日である昭和47年5月15
日以降は,我が国政府が責任を持って基地問題を解決することを強く期待
していた。被告は,その期待を裏切り,沖縄県を除く都道府県の区域にあ
る米軍基地機能を沖縄県の区域に集中させて,国民から,沖縄県を除く都
道府県の区域における基地問題を遠ざけ,沖縄の米軍基地機能を強化し続
けてきた責任が問われるべきであり,原告らが責任が問われるべきではな
い。そのため,被告が昭和47年5月15日を基準日としてその後の本件
コンター内への転居(以下,本件コンター外から本件コンター内への転居
を「転入」ということがある)を問題として主張することには,合理性。
がない。
b仮に被告主張のように被告主張の基準日に本件航空機騒音がある程度社
会問題化しており,それを原告らが知っていたとしても,そのことから,
原告らにおいて,転居先が本件コンター内にあることや転居先における本
件航空機騒音の程度を認識する契機となるとはいえない。
また,普天間飛行場周辺においては,騒音の発生状況に常態性や定期性
がない上,下見にくることが多い土曜日,日曜日の飛行が少なく,実際に
一定期間以上居住してみない限り,本件航空機騒音の実態を正確に把握す
ることは著しく困難である。
さらに,被告は,本件コンター内転入予定者に対し,本件コンターや飛
行コース,騒音の実態などについて積極的に情報を提供したことがない。
以上によれば「騒音の認識」の判断については,被告の主張する基準,
日以後の転居の事実のみで「騒音の認識」を推認することはできない。
(イ)被告主張の「再転入者及び本件コンター内複数転居者」について
a普天間飛行場は,宜野湾市の面積の約32%を占め,同市の中央部に所
在し,市街地が普天間飛行場を取り囲むように形成されている。本件コン
ターの分布は,広範囲にわたっている。しかも,被告は,普天間飛行場周
辺住民に対し,前記(ア)bのとおり,本件コンターや飛行コース,騒音
の実態などについて積極的に情報を提供したことがないので,本件コンタ
ーの範囲が被告によって普天間飛行場周辺住民に知らされていたわけでは
ないから,同じ本件コンター内で転居したとしても,転居先が遠方であれ
ば転居先における騒音の程度を認識することはできるとはいえない。特に
普天間飛行場においては,同じ本件コンター内であっても,場所によって
固定翼機による騒音が激しい地域とヘリコプターによる騒音が激しい地域
があり,両者の騒音の質は根本的に異なる。
したがって,本件コンター内への再転入や本件コンター内における転居
であっても,本件コンター内に新たに転入する場合と同視して,本件航空
機騒音による被害の認識を推認することはできないと考えるべきである。
bまた,被告は,国民の生活と健康を守るべき立場にあるにもかからず,
本件航空機騒音を特段の防止措置を講ずることもなく長年にわたって放置
,,し続けている状況にかんがみれば危険への接近の法理の適用に当たって
被害について,原告らの消極的容認では足りず,原告らの積極的容認を要
すると考えるのが「衡平」の観点から妥当である。この「積極的な容認」
は,これが危険への接近の法理の適用要件である以上,被告において主張
立証を要する事実である。そして,仮に「騒音の認識」が推認される原告
らについても「積極的容認」まで推認されるものではなく,これらの原,
告について本件航空機騒音による被害を積極的に容認していた事情につい
ての主張立証を被告において行うことが必要である。
したがって,仮に本件コンター内への再転入者又は本件コンター内にお
ける転居者のうち,従前の居住地と比較的近くの所に転居した原告らにつ
き騒音の認識が推認されるとしても,転居に社会生活上相当な理由がある
場合には,本件航空機騒音による被害についての積極的容認がないといえ
るから,免責の法理としての「危険への接近の法理」の適用をすることは
できないというべきである。
(ウ)減額法理としての危険への接近の法理
被告主張の基準日以降に本件コンター内に転居した者又はこれらの者と同
視することができる原告らには,本件航空機騒音による被害の認識を欠いた
ことについて落ち度はないので,これらの原告らが本件航空機騒音による被
害の認識を欠いたとしても,そのことに過失はない。
仮に本件コンター内への再転入者・本件コンター内における転居者のう
ち,元の居住地と比較的近くの所に転居した原告らにつき本件航空機騒音の
認識が推認されるとしても,転居に社会生活上相当な理由がある場合には,
原告らが自ら危険へ接近したと評価することができないから,減額の法理と
しての「危険への接近の法理」の適用をすることはできないというべきであ
る。
ウ原告らの転居理由
原告らは,以下(ア)から(キ)までのとおり転居しており,いずれもその
転居に社会生活上相当な理由があるので,前記イ(イ)及び(ウ)のとおり,
本件航空機騒音による被害についての積極的容認がなく,又は自ら危険へ接近
したと評価することができないから,原告らに免責の法理又は減額の法理とし
ての「危険への接近の法理」の適用はない。
なお,原告ら(原告番号74,116,201,238,278のものに限
る)は,出稼ぎや子供の進学,家の新築,親族の看護等のため一時的に住民。
票を移転させたものの,生活の本拠は変わっていないので「危険への接近の,
法理」の適用はない。
(ア)実家への復帰
原告ら(原告番号74,141,164,210,238,249,25
3,257,358及び364のものに限る)は,生まれ育った実家又は。
配偶者の実家に転居した。自らが生まれ育ち,親族が暮らす実家は,生活の
基盤であり,実家に復帰した原告らは「危険」に対する後住者ではない。実
家に戻ることや,結婚によって配偶者の実家に移ることは,社会通念上,人
間としての生活上又は条理上,当然かつ一般的なことであり,社会的に期待
。,,されることである特に親族のつながりや相互扶助の強い沖縄においては
社会生活上頻繁にみられることであって,何ら非難されるべきではない。
,,。したがって同原告らの実家への転居には社会生活上相当な理由がある
(イ)実家近隣への転居
原告ら(原告番号122,139,172,175,201,228,2
49,255,257,290,345,358,359,364及び38
。),。,5のものに限るは実家近隣に転居した自らが生まれ育った地域には
近くに両親・親族が居住しているのみならず,幼いころからの友人・知人も
多く住んでいる。そのため,自分の生まれ育った地域は,自分の生活の基盤
となるから,そこに戻ることは人間としての生活上又は条理上当然のことで
ある。例えば,共働きのような場合,子供が小さいときに両親や親族の手助
けが必要であり,また,両親が老齢の場合,両親の面倒をみるために近くに
住むことも必要となる。このような,子育て,肉親の介護又は扶養のために
,。実家の近くに居住することは社会的にも条理的にもむしろ強く期待される
また,実家での同居を希望しても実家そのものが狭小で同居することができ
ない場合や,実家の近くに親族の所有地を分けてもらい家を新築する場合も
ある。近年の核家族化の傾向からは,神経を使う同居ではなく,実家近くに
別居する形で,扶養や介護,交流,子育て援助などの同居の実質を実現する
場合も多い。いずれの場合も,原告らはもともと住んでいた地域に戻ったに
すぎない。
したがって,同原告らの実家近隣への転居には,社会生活上相当な理由が
ある。
(ウ)出身地,以前の居住地又は親族居住地の近隣への転居
原告ら(原告番号41,122,149,166,174,175,20
1,223,238,255,258,290,311,323,338及
び358のものに限る)は,出身地,以前の居住地又は親族居住地の近隣。
へ転居した。自らが生まれ育った地域,実家があり,又は生活の本拠として
きた地域に回帰する傾向や意識は,特に沖縄においては強い。地元への回帰
を希望しても,沖縄本島の中部地域は,もともと狭く,その地域の多くの部
,,分を基地が占め更に狭小な部分に住民がひしめき合って暮らしているため
,,。土地を求めることが困難でありまた適当な家が見付からないこともある
また,通勤の利便や配偶者の実家にも近いことなども考慮して居住地を決め
る必要もある。特に,近時の家族意識の在り方からしても,一方配偶者のみ
の実家近くに転居することはかえって夫婦間の紛争のもとにもなりかねない
から,双方の実家のどちらにも近い場所を選択する場合もある。そのため,
住民の個別の生活条件を満たす範囲で,できる限り地元回帰を実現していく
ほかないところ,他方では,沖縄本島の中部地域において本件航空機騒音に
よる被害を受けない地域はほとんどない。原告らは,自分たちの生活の条件
と合致する範囲で出身地の近くに転入しているにすぎない。
したがって,同原告らの出身地,以前の居住地又は親族居住地の近隣への
転居には,社会生活上相当な理由がある。
(エ)子供の就学・通学,家族構成の変化等の生活上の事情
原告ら(原告番号122,139,149,164,172,201,2
23,228,242,249,253,255,349,358及び35
9のものに限る)は,子供の就学・通学,家族構成の変化等の生活上の事。
情により転居した。子供が多いために一軒家へ転居し,子供や自分たちのた
めにより良い環境が必要となったために転居し,住宅の売買価格や賃料がそ
れぞれの資力に合致したことから転居し,又は親戚の家を間借りすることが
できるために転居するなど,それぞれの固有の生活の事情によって転居して
いる。
したがって,同原告らの子供の就学・通学,家族構成の変化等の生活上の
事情による転居には,社会生活上相当な理由がある。
(オ)婚姻
原告ら(原告番号116,122,141,149,157,164,1
,,,,,,,,,90210238242253255257278290
325,364及び373のものに限る)は,婚姻によって転居した。結。
婚に際してそれまで居住していた場所から転居することは当然である。しか
も,結婚そのものは,祝福されるべきものでこそあれ,非難されるべきでは
ない。
したがって,同原告らの婚姻による転居には,社会生活上相当な理由があ
る。
(カ)相続
原告番号242の原告は,相続した土地・建物に転居した。父祖の土地を
相続し,そこに居住していくことは,社会的にも相当であって何ら非難され
るべきではない。特に,沖縄の社会は,祖先志向的な社会と指摘され,祖先
崇拝又は祖先祭祀を固有信仰の核とし,世代から次世代への承継が重んじら
れている。先祖の土地を受け継ぎ,そこに居住していくことは,沖縄におい
ては,厳粛な社会的責任であるといってもよい。
,,。したがって同原告の相続による転居には社会生活上相当な理由がある
(キ)通勤の利便
原告ら(原告番号67,122,130,149,152,164,17
2,325及び373のものに限る)は,通勤の利便のために転居した。。
憲法22条は,職業選択の自由及び居住移転の自由を定めており,就職して
賃金を得ることが原告ら及びその家族の生活の基盤となる以上,職場の周辺
に居住することは,奨励されるべきことである。特に,沖縄県における高い
失業率にかんがみると,事業所の多い宜野湾市で職を得ることが社会通念上
責められるとはいえず,また,沖縄県の交通事情にかんがみると,沖縄本島
の中部地域で職を得る以上,交通の不便な北部や与勝半島,更には人口密集
し交通渋滞する那覇市等を通過して通勤しなければならない南部に居住して
通勤することも困難である。
したがって,同原告らの通勤の利便のための転居には,社会生活上相当な
理由がある。
(6)被告による消滅時効の援用についての権利の濫用
違法行為をしてきた者が消滅時効の主張により損害賠償義務を免れることは,
信義則に反し許されない。原告らが本件航空機騒音により多大な被害を受けてい
るにもかかわらず,被告は,本件航空機騒音の実態を認識しながら,これを放置
し,何らの対応を講ずることなく,本件航空機騒音による被害の防止を怠ってき
た。被告は,このように本件航空機騒音を放置・容認した上,本件航空機騒音に
よる被害の発生・拡大に積極的に関与してきた。
,,,。したがって被告による消滅時効の援用は信義則に反し権利の濫用である
(7)将来の損害の賠償請求
ア普天間飛行場は,その閉鎖に向けた具体的な措置が採られていないので,今
後も当面は存続することが確実に予想される。
普天間飛行場においては,遅くとも昭和52年から30年にわたって本件航
空機騒音による激甚な被害が継続してきた。
そうすると,本件航空機騒音による被害は,口頭弁論終結時と同一の内容,
程度の状況が,口頭弁論終結後1年の間,継続する蓋然性が極めて高く,口頭
弁論終結後1年間であるので,その予測可能性が確実に高いから,一義的に明
確になっているといえる。
なお,厳密な一義性,明確性を要求することは,将来の給付による救済の途
を開いた法の趣旨に反する。
イ他方,被告の損害賠償債務の減額事由等となる原告がW80区域からW75
区域に転居し,又は本件コンター内から本件コンター外に転居したことや,住
宅防音工事が実施されることは,客観的に明確な事実であるので,被告に立証
の負担を負わせることは不当でない。しかも,口頭弁論終結後1年に限られる
ので,被告の負担は高くない。
ウそうであるにもかかわらず,将来の損害(口頭弁論終結の日の翌日である平
成20年2月1日から平成21年1月31日までに生ずべき損害をいう。以下
同じ)の賠償請求を否定することは,原告らが,将来の損害の賠償を求める。
ために再度の訴えの提起を余儀なくされる。これにより,原告らは,膨大な経
済的,精神的負担を負うとともに,多大な時間を要することとなるので,その
負担は余りに大きい。他方,被告は,本件航空機騒音による被害を放置・容認
してきたのみならず,その発生・拡大に積極的に関与してきている。これらの
原告らの再訴の負担と被告の責任とを比較すれば,将来の損害に係る賠償請求
を認めた上で,被告に請求異議事由を主張させることが,原告・被告間の衡平
に合致するというべきである。
エしたがって,被告は,口頭弁論終結の日の翌日から1年間の将来の損害につ
いては,民事訴訟法135条に基づき,年間42万円(原告らの損害は,少な
くとも1日1250円であるので,年間44万6250円又は45万7500
円の一部請求となる)の損害の賠償責任を負うというべきである。。
(8)騒音測定等請求
ア被告は,昭和52年の騒音コンター図作成後30年経過しても,新しい騒音
コンター図を作成していない。騒音コンター図上の騒音レベルの境界線は,騒
音環境を判断する重要な指標であるため,住宅防音工事の実施や騒音の違法性
の判断のための基準となっているところ,飛行場の運用状況に応じて変動する
ことが予想される。そのため,騒音コンター図は,騒音に暴露されている周辺
住民の権利・利益に直結するので,合理的な一定期間毎に騒音コンター図を見
直すことが不可欠である。
イ原告らは,以下のとおり,①人格権,②環境権若しくは③平和的生存権又は
④不法行為の法的効果から発生する妨害排除請求権・妨害予防請求権を有して
いる。
まず,①人の健康は,人間の尊厳を確保するために本質的で重要なものであ
り,身体的な健康のみならず,精神的な健康により維持される。そうすると,
潜在的な健康侵害又は重大な精神的侵害が存する場合には,妨害予防請求権の
発生を認めるべきである。しかも,長期間継続するW値75を超える騒音が人
の健康に被害を与えることは科学的に明らかであり,また,本件航空機騒音に
,,,よって精神的被害が長期間継続し今後も長期間継続する蓋然性があるから
健康被害が発生していると認められなくとも,潜在的な健康侵害又は重大な精
神的侵害があるので,原告らは,人格権に基づき,妨害排除請求権・妨害予防
請求を有しているというべきである。
また,②本件航空機騒音は,地域の静ひつな生活環境を破壊しているので,
原告らは,環境権に基づき,妨害排除請求権・妨害予防請求権を有していると
いうべきある。
,,,,さらに③本件航空機騒音は平和的生存権を侵害しているので原告らは
平和的生存権に基づき,妨害排除請求権・妨害予防請求権を有しているという
べきである。
④妨害排除請求権・妨害予防請求権が不法行為に基づくものであっても,侵
害される法益が人間の存在,人格に関するものである場合には,受忍限度論は
排斥されるべきである。本件航空機騒音は,人間の生命及び疾病に至らない潜
在的な健康侵害又は重大な精神的侵害を含む「広義の健康被害」を侵害し,か
つ,その侵害は,長期間で広範囲に及んでいるので,受忍限度論を排斥すべき
である。そうすると,原告らは,不法行為に基づき,妨害排除請求権・妨害予
防請求権を有しているというべきである。
ウ騒音は,その性質上,それ自体としては一過性の侵害であり,音波が伝達す
る中で時間の経過により減衰消失し,その痕跡を残さない性質のものであり,
,。また騒音の到達場所によりその侵害性を変化・減少させる性質のものである
さらに,騒音による侵害は,音源を中心にして全方向に伝達される性質を有す
る。そのため,騒音による侵害の場合には,即時に,かつ,音波の伝達される
全地域で,測定されて記録化されなければ侵害の存否及び程度が確認すること
ができず,有効な予防措置を行い得ない。
したがって,騒音という特殊な性質の侵害について,侵害行為者又は不法行
為者には,その妨害の排除,予防義務として騒音測定義務が生ずると考えるべ
きである。
エ妨害の排除とは,現存する妨害状態を排除することであり,他方,妨害の予
防とは,将来の侵害を防止することであるも,これらには,原状を回復するこ
とを包含すると解すべきである。そして,妨害排除請求又は妨害予防請求は,
権利又は法益の保全を目的としているから,妨害行為を排除し,又は予防する
ことができない場合には,違法な妨害を軽減し,侵害される権利又は法益の損
失を最小化することが求めることができるというべきである。
そうすると,原告らは,妨害排除・侵害予防が認められるにもかかわらず,
侵害行為を行う者が我が国の裁判権の及ばない米軍であることから,侵害行為
の差止めが認められない場合には,妨害排除・侵害予防請求権に基づき,被告
が行い得る範囲内で,権利侵害又は法益侵害を軽減する措置を講ずる法的義務
があるというべきである。そして,騒音測定を行い,騒音コンター図を作成す
ることは,被告が行い得る行為である。
予防請求権の内容としては,被告主張のように将来の侵害予防に直結する必
要があるのは訴訟経済上の要請に基づくものにすぎず,上記のとおり,侵害行
為の差止めが認められない場合には,次善の方法として,侵害の予防に寄与す
る相当なものも求められると解すべきである。騒音測定を行い,騒音コンター
図を作成することは,住宅防音工事等の可能な被害の軽減措置を採るために不
可欠であるので,侵害の予防に寄与する相当なものということができる。
オ以上によれば,原告らは,被告に対し,①人格権,②環境権若しくは③平和
的生存権又は④不法行為の法的効果から発生する妨害排除請求権・妨害予防請
求権に基づき,普天間飛行場における米軍機の離着陸等の差止めに代わる次善
の策として,権利侵害又は法益侵害を軽減する措置として,本件航空機騒音の
測定を行い,騒音コンター図を作成することを請求することができるというべ
きである。
2被告の主張
(1)差止請求について
ア原告ら主張の「差止請求を基礎付ける権利」について
(ア)人格権について
「人格権」は,人の生命,身体,名誉等人間にとって重要であり発生要件
の明確ないくつかの権利が個別的人格権としてその権利性を主張し得るもの
であることは承認されているものの,最高裁判所においてこれまで人格権に
基づく航空機の離着陸の差止請求が是認されたことはなく,どのような要件
の下に差止請求権が成立するかは明らかにされていない。
また,原告ら主張の「人格権」は,個人の生命,身体,精神及び生活利益
といった人間としての生存に基本的かつ不可欠な利益の総体であるとされて
いるのみであって,その内容は極めて不明確で,その権利又は構造が明らか
にされていない。
(イ)環境権について
原告ら主張の「環境権」は,実定法上の根拠を欠く上,その意味内容も曖
昧であり,その発生要件も効果も明らかではない。
原告らが実定法上の根拠として主張する憲法13条及び25条のうち,憲
法13条は,基本的人権の尊重を一般的に定めた包括的な人権宣言規定であ
,,,,って直ちに具体的な国民の権利を創設し又は確認したものでなくまた
憲法25条も,国に対して,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活
を営み得るような適切な施策を求める理念上の根拠を定めた規定であって,
立法や施策のための綱領的規定であるから,これらの規定をもって環境権の
実定法上の根拠ということはできない。
(ウ)平和的生存権について
原告ら主張の「平和的生存権」についても,前記(イ)の環境権と同様,
実定法上の根拠を欠き,その意味内容も曖昧であり,その発生要件も効果も
明らかではない。
原告らが実定法上の根拠として主張する憲法前文,9条,13条について
は,憲法13条が前記(イ)のとおり直ちに具体的な国民の権利を創設し,
又は確認したものでない上「平和的生存権」は私法上の権利として具体的,
内容を有するものとはいえないので,これらの規定が,原告ら主張の実体的
権利としての「平和的生存権」を定めているということはできない。
イ原告ら主張の「差止めの可能性と許容性」について
(ア)第三者の行為の差止めについて
普天間飛行場は,昭和47年5月15日,地位協定2条1項(a)に基づ
,,く施設及び区域としてアメリカ合衆国に提供され地位協定3条1項により
その管理運営の権限はすべて米軍に委ねられている。そのため,米軍は,提
供された普天間飛行場を所定の目的の範囲内で自由に使用することができ,
その使用権限の範囲内の行為として,米軍の判断と責任に基づき,普天間飛
行場において航空機の離着陸,航空機のエンジン作動,航空機誘導等を行う
。,,。ことができるこれに対し被告にはそのような権限が認められていない
このように,普天間飛行場に係る被告と米軍との法律関係は,条約に基づ
いている。条約とは,国家間で書面の形式により締結された国際的合意であ
り,国際法により規律され,その効力が発生すれば当事国を拘束し,誠実に
遵守されなければならない。そのため,被告は,条約又はこれに基づく国内
法令に特段の定めのない限り,普天間飛行場における米軍の活動を制限する
ことができない。普天間飛行場に係る被告と米軍との法律関係について条約
及び国内法令に特段の定めはないから,被告が普天間飛行場における米軍の
活動を制限することはできない。
したがって,原告らによる普天間飛行場における航空機の離着陸等の差止
請求は,被告に対してその支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求する
ものであるから,その請求は,主張自体失当である。
(イ)原告ら主張の「米軍に対する法的規制の根拠」について
原告らが差止請求の根拠として主張する地位協定3条3項,16条及び1
8条5項,航空法97条の規定は,いずれも被告が普天間飛行場における米
軍の活動を制限することができる根拠とはならない。
a地位協定3条3項について
地位協定3条3項は「合衆国軍隊が使用している施設及び区域におけ,
る作業は,公共の安全に妥当な考慮を払つて行なわなければならない」。
と規定する。同項は,同条1項において,アメリカ合衆国が普天間飛行場
を含む「施設及び区域」を排他的に使用することができることが定められ
ていることを受けて定めているから,その規定の構造からして,同条3項
は,いわゆる訓示規定に当たる。そのため,この規定に違反した場合に,
被告が,一方的に米軍の行動を規制することができることを意味するもの
ではない。そうすると,同条3項は,被告のアメリカ合衆国に対する何ら
かの請求権を定めたものと理解することはできない。
したがって,地位協定3条3項は,被告が普天間飛行場における米軍の
活動を制限することができる根拠とはならない。
b地位協定16条について
地位協定16条は,「日本国において,日本国の法令を尊重し,及びこ
の協定の精神に反する活動,特に政治的活動を慎むことは,合衆国軍隊の
。。,構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である」と規定する同条は
その文言上「米軍の構成員及び軍属並びにそれらの家族」を名宛人とし,
ており,米軍を規制するものでない上,これらの者が我が国の法秩序を尊
重すべき一般的義務を定めたものにすぎない。
したがって,地位協定16条は,被告が普天間飛行場における米軍の活
動を制限することができる根拠とはならない。
c地位協定18条5項について
地位協定18条5項本文は,「公務執行中の合衆国軍隊の構成員若しく
は被用者の作為若しくは不作為又は合衆国軍隊が法律上責任を有するその
他の作為,不作為若しくは事故で,日本国において日本国政府以外の第三
者に損害を与えたものから生ずる請求権(契約による請求権及び6又は7
の規定の適用を受ける請求権を除く)は,日本国が次の規定に従つて処。
理する。」と規定する。同項は,外国国家に対する民事裁判権免除に関す
る国際慣習法を前提として,外国の国家機関である米軍による不法行為か
ら生ずる請求の処理に関する制度を創設したものである。同項は,同項
(b)以下において,「支払」及び「日本円」の文言が用いられていることに
照らせば,公務執行中の米軍の構成員又は被用者が第三者に与えた損害に
ついて,被害者保護のため,我が国政府が処理すべき方法を主として金銭
賠償の観点から規定したものであり,差止請求については何ら規定してい
ないから,同項(a)の「請求」に差止請求が含まれない。
したがって,同項は,被告が普天間飛行場における米軍の活動を制限す
ることができる根拠とはならない。
d航空法97条について
航空特例法は,地位協定2条1項(a)により,米軍が専権的に普天間
飛行場の管理,運営を行えることを前提として,航空法第6章の規定のう
ち,国土交通大臣の航空交通の指示(同法96条,飛行計画及びその承)
認(同法97条,到着の通知(同法98条)を除くその余の事項など,)
米軍が使用する飛行場及び米軍機等の運航に関する規定を適用除外とする
ことにより,米軍が普天間飛行場を専権的に管理運営することとし,これ
に伴う安全保持の調和を図っている。原告ら主張の航空法97条は,日本
の領空における航空機航行の安全保持の観点から,我が国に航空管制権を
留保したものであり,航空機の航行に係る安全保持以外の観点から,我が
国が航空管制権を行使し,米軍の普天間飛行場の管理運営の権限を制限す
ることを想定していない。
したがって,同条は,被告が普天間飛行場における米軍の活動を制限す
ることができる根拠とはならない。
(ウ)原告ら主張の「被告の差止責任」について
現に妨害状態を引き起こしている者が妨害排除請求の相手方となり得るの
は,妨害状態の惹起者がその行為を止めれば侵害状態を除去し得るためであ
る。結局,妨害排除請求の相手方は,侵害状態を除去し得る立場にあること
が必要であり,差止請求においても同様に解されるべきである。ところが,
被告は,前記(ア)のとおり,そもそも米軍の普天間飛行場における活動を
,,制限し得るものではなく米軍の行為の停止を請求し得る地位にはないので
妨害状態を除去し得る立場にあるとはいえない。
したがって,被告が,原告ら主張のように,現に原告らの権利を違法に侵
害する状態を生じさせている共同妨害者と評価し得るかどうかについて問題
,,。とするまでもなく被告は原告ら主張の差止請求の相手方とはなり得ない
(2)原告ら主張の「損害賠償請求の根拠条文」について
ア国家賠償法1条1項及び民法719条
被告は,アメリカ合衆国に対し,安保条約6条及び地位協定2条1項(a)
に基づき普天間飛行場を提供しており,日米合同委員会を通じ,我が国及びア
メリカ合衆国の間で合意された施設及び区域を米軍の用に供すべき条約上の義
務を負っている。普天間飛行場の管理運営の権限は,地位協定3条1項に基づ
きすべて米軍に委ねられている。そのため,米軍は,提供目的を達するため普
天間飛行場を使用する限り,その判断と責任に基づいて普天間飛行場において
米軍機の離着陸等を行うことができる。これに対し,被告には,そのような権
限はない。しかも,被告は,安保条約の目的達成のため施設及び区域の提供を
継続する条約上の義務を負っており,施設及び区域の提供目的を達するため,
当該施設及び区域を使用する米軍に対し,当該施設及び区域の提供を拒否し,
その返還を求める権限を有していない。
そうすると,原告ら主張の地位協定2条2項及び3項,3条3項並びに16
条等は,いずれも被告の公務員が原告らに対して職務上の法的義務を負担する
法的根拠となり得ない。
したがって,被告には,施設及び区域の提供目的を達するために行われる米
軍の活動を制限する権限はないから,外務大臣及び那覇防衛施設局長には,原
告らに対して,米軍の施設及び区域の提供目的を達するために行われる諸活動
の継続を中止させる措置を採る法的義務を負うことはない。
そして,共同不法行為の成立には,各自の行為が,それぞれ独立して不法行
為の要件を備えている必要があるところ,上記のとおり,外務大臣及び那覇防
衛施設局長には原告ら主張の義務がないから,共同不法行為が成立する余地も
ない。
イ民事特別法1条
(ア)民事特別法1条による国の損害賠償責任については,民法,国家賠償法
の規定が包括的に一体として適用されるところ,民事特別法1条に基づく損
害賠償請求をする場合にも,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を請求す
る場合と同様,加害行為を行った公務員を特定し,その公務員が個別国民に
対し負っている職務上の法的義務に違背したことを主張する必要がある。し
かし,原告らは,どの米軍の構成員が原告らに対するどのような職務上の法
的義務に違反した結果,原告らの損害が発生したかについて具体的な主張を
していないので,主張自体失当である。
(イ)仮に原告らが違法行為を行った「米軍の構成員」を基地司令官である
と主張しているとしても,①平成8年規制措置にある基地司令官に周辺住民
に対する配慮義務があるかのような記載は,米軍機の運航に関し,基地司令
官が配慮すべき努力目標を設定したものにすぎず,基地司令官に対する法的
義務を創設したものではなく,また,②米軍は,安保条約6条に基づき,日
本国内の駐留・活動が認められている以上,その職務遂行のために行う航空
機の運航に必然的に発生する騒音について,受忍限度を超えることがあって
も,直ちに職務上の法的義務違反の問題が生ずるとはいえず,さらに,③基
地司令官が仮に本件航空機騒音を認識しているとしても,そのことから直ち
に違法な加害行為を防止する職務上の法的義務が発生する具体的理由がない
から,基地司令官の行為は,民事特別法1条の違法,すなわち,国家賠償法
1条1項の違法となる余地はないというべきである。
ウ民事特別法2条
民事特別法2条にいう「土地の工作物その他の物件の設置又は管理」の瑕疵
とは,本来的には,当該工作物を構成する物的施設について通常有すべき安全
,,性を欠く状態が生じている場合をいうものと解すべきところ普天間飛行場は
,,航空機の離着陸の用に供されることを本来の目的としその目的達成のために
飛行場が通常備えるべき性質及び設備を有し,本来持つべき安全性を完全に具
備しているから,かかる場合に該当しない。
また,普天間飛行場には「その営造物が供用目的に沿って利用されること,
との関連において危害を生ぜしめる危険性」も,後記(3)のとおり,普天間
飛行場の供用に違法性がないので,存しない。
したがって,普天間飛行場には,民事特別法2条にいう「土地の工作物その
他の物件の設置又は管理」の瑕疵はないので,被告は,同条の規定に基づき,
本件航空機騒音による原告らの損害を賠償する責任を負わないというべきであ
る。
(3)原告ら主張の「普天間飛行場供用の違法性」について
ア違法性の判断方法
航空機騒音による障害は,日常生活の妨害及び精神的不快感という個人の主
観的条件により異なり,その内容,性質のみでは違法な法益侵害と判断すべき
客観的基準を定めることはできない。また,飛行場が存在する以上は,その周
辺においてある程度の騒音障害が発生することは不可避である一方,飛行場の
存在が政治,経済等の多方面にわたり社会生活上多大な効用をもたらしている
から,一定の範囲の騒音障害は,周辺住民としても受忍すべきである。
したがって,普天間飛行場の供用の違法性の判断においても,侵害行為の態
様と侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,侵害行為のもつ公共性ないし公益
上の必要性,空港利用の経緯及び空港管理者の実施した騒音軽減方策の適否等
の諸事情を総合的に考慮して,普天間飛行場の供用に起因する騒音障害が空港
周辺住民全体にとっても周辺住民各個人にとっても社会的に妥当とされる範囲
を超えているか否かを慎重かつ適正に判断すべきことが必要である。
イ侵害行為
(ア)航空機騒音の特殊性
a航空機騒音は,持続時間も短く,一過性で,間欠的である。ある地点で
受ける航空機騒音は,航空機の接近に伴って小さな音から徐々に高まり,
瞬時にピークを迎え,航空機の通過とともに減衰していく。そのため,ピ
ークレベル値を示すのは,瞬時にすぎず,しかも,騒音の持続時間は,全
体としてみても10秒未満又は10数秒,20数秒程度にすぎない。仮に
ある航空機騒音により飛行場周辺住民に何らかの影響があるとしても,そ
の影響は短時間の後には消失し,生活上の平穏は直ちに回復するのが通常
である。そうすると,本件航空機騒音の程度を判断するに際し,ピークレ
ベルが長時間持続する定常騒音と同一視することはできない。
,,航空機騒音による影響は飛行場からの距離によって異なるのみならず
,。,,離着陸の別離着陸の方向によっても大きく異なるすなわち航空機は
離陸の場合は高出力で一気に高度を上げる一方,着陸の場合はエンジン出
力を落として徐々に高度を下げるから,離陸しようとする航空機の発する
騒音と着陸しようとする航空機の騒音とは開きがある。そのため,飛行場
から同一の距離にある地域であっても,離着陸の方向,飛行経路,風向き
によって騒音の程度は異なるから,航空機騒音の程度を判断するに際して
は,航空機の離着陸回数,1機当たりの騒音量,飛行場からの距離だけを
基準にすることは相当でない。
b普天間飛行場のような防衛施設としての飛行場については,民間航空機
,,が使用する民間空港とは異なり航空機の運航形態について一定性がなく
,,航空機が比較的多く飛行する日がある一方ほとんど飛行しない日もあり
その周辺の航空機騒音の状況は日々変化する。そのため,一定の値以上の
騒音が1年中発生していることはあり得ない。
cさらに,原告ら主張の被害の多くは,テレビの聴取妨害など建物内にお
いて騒音に暴露されたことによるものである。しかし,屋内においては,
建物による遮音効果により,航空機騒音の影響は相当程度緩和される。ま
た,騒音が屋外での環境基準を超えている地域であっても,防音工事の施
工されている屋内では環境基準が達成されたと同様の環境が保持される。
dしたがって,本件航空機騒音による侵害行為の程度を評価するに当たっ
ては,aのように航空機騒音が一過性で間欠的であること,bのように日
々変化すること,cのように建物による遮音効果があることを考慮すべき
である。
(イ)侵害行為の評価の在り方
原告ら主張の共通被害を前提として侵害行為を評価するに当たり,1日2
4時間を通して騒音に暴露されていることを前提に算出されたW値を用いる
ことは不当であり,一定の合理的な根拠により,多くの原告らが騒音に暴露
されていないと推定される時間帯の騒音を控除して算出されたW値を用いる
べきである。
原告らのうち本件コンター外の事業所で就労している有業者の多くは,午
前9時から午後5時までは少なくとも本件コンター外に所在し,本件航空機
騒音による被害を受けていないものと考えられる。そうすると,本件コンタ
ー外の事業所に勤務する有業者も含めた原告らに共通する被害としては,少
なくとも平日の午前9時から午後5時までの騒音を除いたものと解すべきで
あるから,その時間帯に発生した騒音を除外して,共通する被害の評価を行
うことが妥当である。
平成12年度から平成15年度までの平日(土曜日,日曜日,祭日及び年
末年始を除いた日)の午前9時から午後5時までの8時間(以下この(イ)
において「昼間」という)を除いたW値と昼間の騒音を控除しない全時間。
帯のW値とを比較すると,被告が国測定点から得られたデータを基に1年間
の総飛行回数の累積度数90%による標準総飛行回数を求め継続時間補正な
どをして算出した防衛施設庁方式に近似するW値(以下「国施設庁方式近似
W値」という)で2~7(算術平均4.25,環境基準方式のW値では2。)
~4(算術平均で2.875,昼間の騒音を控除したW値の方が低くなっ)
ている。
したがって,原告らが暴露している本件航空機騒音を把握する場合,少な
くとも各測定点における年度ごとの騒音よりも3又は4は低いものと評価す
べきである。
(ウ)本件航空機騒音の実態
a原告らに対する本件航空機騒音の影響の有無,程度は,各原告ごとに確
定されなければならないので,本件コンター内に居住しているからといっ
て,実際に暴露されている航空機騒音のW値が本件コンターの数値である
ということにはならない。
なお,本件コンターのために実施した騒音調査において作成された1日
ごとの総飛行機数を基にした機数の累積度数曲線は,7日分の測定データ
について,各日ごとの飛行機数を対比し,少ない順番に並べたものである
ため,各日ごとの結果は,実際の歴の順序とは異なって前後して並べられ
ているので,計測データのプロット位置に誤りはない。そのため,本件コ
ンターには,原告ら主張(3)イ(イ)aのような誤りはない。
b国測定点における騒音測定結果に基づく本件航空機騒音の実態
本件航空機騒音の実態は,以下のとおり,国測定点における騒音測定結
果をみると,強度のものではない。
(a)国測定点における騒音発生回数
①国測定点における1日平均騒音発生回数
国新城測定点においては,まず,1日平均騒音発生回数は,平成1
1年度から平成15年度までは34.4~49.9回であり,平成1
6年度から平成18年度までは19.4~26.4回である。また,
夜間における1日平均騒音発生回数は,平成8年度以降は1回未満と
,..,なり平成11年度から平成15年度までは02~08回であり
平成16年度から平成18年度までは0.2~0.3回で推移してい
る。さらに,早朝における1日平均騒音発生回数は,平成4年度以降
,..は1回未満となり平成11年度から平成15年度までは03~0
7回であり,平成16年度から平成18年度までは0.1回となり,
平成16年度以降も少数回で推移している。
国大謝名測定点においては,まず,1日平均騒音発生回数は,平成
11年度から平成15年度までは31.5~72.3回であり,平成
16年度から平成18年度までは15.6~22.1回で推移し,著
しく減少している。また,夜間における1日平均騒音発生回数は,平
成11年度から平成15年度までは0.1~1.1回であり,平成1
6年度から平成18年度までは0.1~0.3回で推移している。さ
らに,早朝における1日平均騒音発生回数は,平成11年度から平成
15年度までは0.2~2.3回であり,平成16年度から平成18
年度までは0.1~0.2回となり,平成16年度以降も少数回で推
移している。
②国測定点における日曜日の平均騒音発生回数
日曜日の平均騒音発生回数は,平成12年度から平成15年度まで
は,国新城測定点では2.2~29.6回,国大謝名測定点では1.
3~19.0回であり,平成16年度から平成18年度までは,国新
城測定点では0.9~2.5回,国大謝名測定点では1.0~1.7
回で推移し,著しく減少している。また,国測定点における平成12
年度から平成18年度までの1日平均騒音発生回数と比較すると,日
曜日の平均騒音発生回数が各測定点ともに引き続き少数回にとどまっ
ている。
③まとめ
以上のとおり,国測定点において測定された騒音発生回数のデータ
によれば,特に,夜間及び早朝や日曜日における1日平均騒音発生回
数は,平成16年度以降も引き続き極めて少回数にとどまっているの
で,原告ら主張のような損害を生じさせるものとは認められない。
(b)国測定点における年間W値の推移
①環境基準方式のW値(年間)
国測定点の環境基準方式のW値は,平成11年度から平成15年度
までは,W値75~83とW値80前後で推移し,平成16年度から
平成18年度までは,W値73~77で推移しており,平成14年度
以降はW値80にも至っていない。
②国施設庁方式近似W値(年間)
国測定点の国施設庁方式近似W値は,国新城測定点の平成13年度
を除いて,本件コンターのW値内で推移している。
③まとめ
以上によれば,W80区域の各測定点においては,おおむねW値8
5未満で推移しているところ,W値80未満(本件コンターでいえば
W値75)となる年度も存するので,平成16年度以降も,本件コン
ターのW値が実際の騒音状況をそのまま示しているとはいえない。
(c)国測定点における日々のW値の状況
①屋外における環境基準の達成状況
国測定点で,屋外において1年のうちW値(環境基準方式)が80
を超えた日数は,平成11年度から平成15年度までは,24~14
5日(年間の約7~40%)であり,平成16年度から平成18年度
までは,11~34日(年間の約3~9%)に減少している一方,1
年のうちW値(環境基準方式)が70を下回る日数は,平成11年度
から平成15年度までは,82~142日(年間の約22~39%)
である一方,平成16年度から平成18年度までは,149~204
日(年間の約41~56%)に増加している。
②環境基準が達成されたのと同様の屋内環境の達成状況
国測定点で,屋内において1年のうちW値(環境基準方式)が85
以下の日は,平成11年度から平成15年度までは,271~339
日(年間の約74~93%)であり,平成16年度から平成18年度
までは,325~361日(年間の約89~99%)である。このよ
うに,各測定点における最近3か年の防音工事施工室内においては,
ほぼ1年間のうちの全日数に近い日数につき,環境基準が達成された
のと同様の屋内環境が保持されている。
③まとめ
以上によれば,W80区域にあっても,平成16年度から平成18
年度までは,屋外においてさえ,年間の約41~56%に上る日数に
おいて環境基準が達成され,屋内に至っては,年間の約89~99%
の日数で環境基準が達成されたのと同様の屋内環境が保持されている
ので,原告ら主張の損害が存在するとは認められない。
なお,訴訟上の被害の立証は,個別の原告ごとの日々の暴露量を問
題とすべきであるから,実勢騒音を日別W値で用いて主張することが
相当である。
c県等測定局による騒音測定結果からみた本件航空機騒音の実態
本件航空機騒音の実態は,以下のとおり,県等測定局における騒音測定
結果をみても,強度のものではない。
(a)1日平均騒音発生回数
県等測定局における1日平均騒音発生回数は,平成11年度から平成
15年度までは,県野嵩測定局で27.3~31.2回,県上大謝名測
定局で56.6~90.5回,県新城測定局で21.6~73.0回,
市真志喜測定局で24.1~35.4回でそれぞれ推移し,平成16年
度及び平成17年度は,県野嵩測定局で19.5及び25.6回,県上
大謝名測定局で57.1及び59.6回,県新城測定局で41.4及び
55.9回,市真志喜測定局で15.1及び21.1回でそれぞれ推移
している。
(b)日曜日の平均騒音発生回数
県等測定局における平成9年度から平成17年度までの日曜日の平均
騒音発生回数は,わずかであり,各測定点における1日平均騒音発生回
数や他の曜日における平均騒音発生回数と比べて極めて少数回にとどま
っている。
(c)夜間の1日平均騒音発生回数
県等測定局における平成9年度から平成17年度までの夜間(午後1
。()。)0時から翌日午前6時までをいう以下このc及びeにおいて同じ
における1日平均騒音発生回数は,各測定点ともに極めて少数回にとど
まっている。各測定点における1日平均騒音発生回数や全時間帯の騒音
発生回数(月平均)のうち夜間の騒音発生回数(月平均)が占める割合
は,極めて小さい。
(d)環境基準達成日数及び年間W値の推移
平成16年度及び平成17年度でも,以下のとおり,W80区域にあ
る県野嵩測定局においては,年間W値が80未満で推移し,環境基準達
成日数も引き続き高い割合を占めており,W75区域にある県新城測定
局及び市真志喜測定局においては,いずれも年間W値が75未満で推移
,,,し年間の大半で環境基準を達成しているので本件コンターのW値は
実際の騒音状況をそのまま示すものではない。
①県野嵩測定局においては,年間W値は,平成11年度から平成15
年度までは,73.7~79.3で推移し,平成16年度及び平成1
7年度は,72.0及び73.8で推移しており,本件コンターのW
値である80を下回る数値となっている。他方,環境基準を達成した
日数は,平成11年度から平成15年度までは,1年のうち113~
190日(年間の約31~52%)で推移し,平成16年度及び平成
,()17年度は1年のうち206及び236日年間の約56~65%
に上り,増加している。
②県上大謝名測定局においては,年間W値は,平成11年度から平成
15年度までは,平成13年度に86.8を示したのを除き,本件コ
,,ンターのW値の85未満で推移し平成16年度及び平成17年度は
78.7及び80.9となっており,本件コンターのW値である85
未満となっている。他方,環境基準を達成した日数は,平成11年度
から平成15年度までは,1年のうち70~120日(年間の約19
~33%)で推移し,平成16年度及び平成17年度は,1年のうち
106及び129日(年間の約29及び35%)に上り,増加してい
る。
③県新城測定局においては,年間W値は,平成11年度から平成15
年度までは,70.0~72.6で推移し,本件コンターのW値の7
5未満で推移し,平成16年度及び平成17年度は,69.2及び6
.,,97で推移しており本件コンターのW値の75未満となっており
特に,平成12年度,平成16年度及び平成17年度は,70以下と
なっており,環境基準(Ⅰ類型でW値70以下)を満たしている。他
方,環境基準を達成した日数は,平成11年度から平成15年度まで
は,1年のうち190~341日(年間の約52~93%)であり,
平成16年度及び平成17年度は1年のうち276及び284日年,(
間の約76及び78%)に上り,かなりの割合を示しており,年間の
大半は環境基準を下回っている。
④市真志喜測定局においては,年間W値は,平成11年度から平成1
5年度までは,68.9~71.1で推移し,平成16年度及び平成
17年度は,66.2及び67.9で推移しており,いずれも本件コ
ンターのW値の75未満となっており,特に,平成13年度及び平成
15年度から平成17年度までは,70以下となっており,環境基準
(Ⅰ類型でW値70以下)を満たしている。他方,環境基準を達成し
た日数は,平成11年度から平成15年度までは,1年のうち206
~244日(年間の約56~67%)であり,平成16年度及び平成
,(),17年度は292及び317日年間の約80及び87%に上り
引き続き高い割合を示しており,1年のうち年間の大半は環境基準を
下回っている。
なお,県等測定局で測定されるW値は,環境基準方式で測定されたも
のであるが,防衛施設庁方式は,環境基準方式が継続時間を一律20秒
とするの対し,継続時間の補正をするので,通常は,継続時間が短い滑
走路に近いところでは,環境基準方式よりも低い数値となるから,継続
時間が長い他の地点でも,環境基準方式よりもいきなり3程度も高くな
るということはない。また,環境基準方式におけるWECPNLを,飛行回数
の90パーセンタイル値から求めたWECPNLではなく,WECPNL90パーセ
ンタイル値とを比較することは相当でない。そのため,沖縄県調査報告
書が指摘するように,環境基準方式で測定した数値は,防衛施設庁方式
のW値としては,3~5程度高い数値として評価すべきであるとはいえ
ない。
d検証の結果
検証の結果については,各測定点における測定時間が短く,同時に複数
の測定点で測定せず各時間帯1か所であったため,本件航空機騒音の全体
状況を把握することは困難であって,被告及び沖縄県が毎日24時間測定
している測定点での測定記録によるべきである。
eまとめ
本件航空機騒音は,①夜間,日曜日の平均騒音発生回数は極めて少数回
に限られていること,②年間W値は,本件コンターのW値を下回る年度が
存在する測定局や,そもそも本件コンターのW値に達する年度が存在しな
い測定局も相当数存在していること,さらに,日別W値では,屋内では一
年のうち大多数の日において環境基準が達成されたのと同様の屋内環境が
保持されていること,③特に平成16年度から平成18年度までの防音工
事を施工した室内においては,ほぼ1年間のうちの全日数に近い日数につ
き,環境基準が達成されたのと同様の屋内環境が保持されていると評価す
,。ることができることから原告ら主張の被害をもたらすものとはいえない
さらに,W75区域において実施している住宅防音工事は,住宅防音工
事希望世帯については,追加工事も含めて100%完了しているので,普
天間飛行場周辺の原告らの住宅も含む大半の住宅には,住宅防音工事が実
施されている。
したがって,本件航空機騒音の程度は,原告ら主張の被害をもたらすほ
ど強度なものであるとはいえない。また,本件航空機騒音は,多くの地域
において,近年減少傾向があるから,原告ら主張の被害も相当程度緩和さ
れているといえる。
(エ)原告ら主張の「本件低周波音の発生と程度」について
原告らが本件低周波音の発生の根拠として主張する沖縄環境ネットワーク
による低周波音公害調査及び沖縄県による低周波音測定における各測定結果
については,まず,沖縄環境ネットワークによる低周波音公害調査について
は,同調査において使用された低周波音レベル計XN-94におけるSPL
は,1.6~1000Hzを測定し,すべて足し算したものであるので,1~
80Hzの低周波音の領域を超えた80~1000Hzの騒音も含んでおり,そ
もそも低周波音のみの音圧レベルを示したものとはいえず,測定方法として
不適切である。また,SPLは,低周波音域以外の騒音域も含めて測定し,
また,平坦特性であるのに対し,A特性は,人間の音の大きさに対する感覚
に合わせて周波数ごとに重み付けをするものであるので,同じ周波数の音で
も測定結果に差が生ずるから,両特性により示された音圧レベルを単純に比
較しても,騒音と低周波音とを比較したことにはならない上,異なる条件で
測定された結果の比較を行って結論を導き出すこととなり,不当である。ま
た,沖縄県による低周波音測定が主として使用したG特性は1~20Hzの超
低周波音を対象としているから,G特性での測定をもって1~80Hzの低周
波音を調査したということはできず,また,G特性音圧レベルとA特性音圧
レベルとは基準とする周波数が異なっているから,両音圧レベルの数字を比
,。較してもそれによって騒音と低周波音の音圧を比較したことにはならない
ウ原告ら主張の「原告らの被害」の不存在等
(ア)被害認定の在り方
a原告ら主張の「広義の健康被害」について
生活妨害全部,精神的被害及び身体的被害は,それぞれ性質の異なる被
害であるから「広義の健康被害」という概念を用いることにより,共通,
被害として同質の被害と変わることはない。しかも,身体的被害(狭義の
),,健康被害は各人の健康を害するという個別性を有するものであるから
ある原告にこの被害が生じているからといって,他の原告についても同じ
ように共通して発生するものとはいえない。
したがって,原告ら主張(3)ウ(ア)aのように「広義の健康被害」
という概念を用いたとしても,これによって生活妨害全部,精神的被害及
び身体的被害が共通被害として評価し得るものとはならない。
b原告ら主張の「共通被害」について
原告らは,個々の原告について,その主張に係る被害が具体的に発生し
ていることを個別具体的に主張立証する必要があり,また,各人の性別,
,,,,,,年齢職業健康状態気質体質騒音等に対する感受性や慣れの程度
騒音等の発生源に対する利害関係,居住地域,住宅防音工事の実施の有無
等による建物の遮音性,居住期間,勤務地,通学先,身体的,心理的,社
会的な条件や生活の態様が異なるに従って,当該個々の原告が受ける被害
の有無,程度は異なるから,個々の原告ごとに被害の内容,程度を個別具
体的に明らかにする必要がある。このように,原告らが共通被害を被害と
して主張する場合でも,被害の立証の程度は,一般的な損害賠償請求の場
合と基本的に変わりはなく,原告らは,まず,何を共通被害として捉える
のかを主張した上で,原告ら全員がそのような共通被害を受けていること
を立証する必要がある。そのため,原告らの一部にそのような被害が生じ
ているとの主張立証では足りず,被害の性質が他の原告らにも認められる
ような性質・程度であることの主張立証が必要である。
まず,身体的被害については,現実の身体的な影響が生じた原告に特有
,。,の事実であってその事実を他の原告と共有することはあり得ないまた
身体的被害の発生の可能性又は危険性は慰謝料請求権の発生原因である現
実の被害に当たるということはできない上,原告ら主張(3)ウ(ア)b
のとおり,本件航空機騒音による健康被害の発生は,地域住民全体にとっ
て極めて重大な関心事であるとしても,重大な関心事であることと精神的
損害を受けていることは別であるから,このような重大な関心事であるこ
とをもって,精神的損害の原因とはならない。
また,低体重出生児の出生率の増加や幼児問題行動の被害も,その性質
上,個別被害であり,共通被害とはなり得ず,原告らの自らがこのような
,。,被害を受けていると主張する者がいないので主張自体失当であるまた
学習環境の破壊も,就学中の子供がいる場合に,その子供に生ずる被害に
すぎない。しかも,これらの被害の発生の可能性又は危険性は慰謝料請求
権の発生原因である現実の被害に当たるということはできない上,原告ら
主張(3)ウ(ア)bのとおり,普天間飛行場周辺の子供に,このような
被害が発生していることは,原告らを含む地域住民としても,重大な関心
事であるからといって,そのことが精神的損害の原因となるということで
きない。
原告らのうち,陳述書を提出していない者(原告番号171,172,
190,198,199,200,395のもの)については,その被害
の立証がされていない。また,陳述書を提出しているその外の原告につい
,,ても原告ら代理人による聞き取りにより作成されているものが多数あり
そのようなものは信用性が低く,被害の発生が疑わしいものや,本件航空
機騒音とは無関係と思われる被害の陳述も含まれている。
cWHOの環境騒音のガイドラインの位置付け
WHOは,その目的を「すべての人民が可能な最高の健康水準に達する
こと」とし,その健康も「完全な肉体的,精神的及び社会福祉の状態であ
り,単に疾病又は病弱の存在しないことではない」とされている。WHO
の環境騒音のガイドラインも,単に健康に影響を及ぼすであろう閾値を示
して各国政府にその遵守を促すものではなく,WHOの健康観に基づき,
その増進のための長期的な達成目標を示したものであり,実際にどう具現
化するのかは各国政府がそれぞれの実情に応じて定めるべきものとされて
いる。
したがって,WHOの環境騒音のガイドラインは,それによって示され
た指針値が我が国における不法行為の発生要件である被害認定の基準とす
るものとはなり得ない。
(イ)生活妨害
一般に航空機騒音が生活妨害を与える可能性があることは否定することが
できない。しかし,飛行場に航空機が離着陸する場合には,ある程度の騒音
が発生することはやむを得ず,普天間飛行場の供用による社会的な効用が多
大であることを考慮すれば,普天間飛行場周辺住民は,ある程度の航空機騒
音については不可避のものとして甘受すべきである。そこで,普天間飛行場
の供用の違法性の判断に際し最も重要な考慮要素の一つである被害の内容,
程度としては,その被害が航空機騒音による障害がある程度存在するという
程度では足りず,一般通常人の社会生活上耐えられないような重大かつ深刻
な程度でなければならない。原告らが本件航空機騒音によって生じていると
主張する「会話妨害「通話妨害「テレビ・ラジオの聴取妨害「趣味生」」,」,
活の妨害「知的作業の妨害」といった日常生活の妨害については,普天間」,
,,飛行場供用の違法性の判断においては単に騒音障害があるか否かではなく
社会生活上耐えられない程度の強い訴えの有無やそれがどの程度の原告らに
ついて生じているかを検討しなければならないところ,この点についての原
告らの主張立証は不十分である。
また,人は,一日の大半を屋内で過ごすところ,本件航空機騒音が間欠的
で一過性のものであり,屋内に到達する持続時間はほんの数十秒であること
からして,普天間飛行場周辺住民の会話,通話,テレビ・ラジオの聴取に対
する影響は,あったとしても,極めて軽微である。また,防音工事を施工し
た屋内においては,本件航空機騒音による会話,通話,テレビ・ラジオの聴
取妨害等の生活妨害は解消されている。
(ウ)睡眠妨害
一般に航空機騒音が睡眠妨害を与える可能性があることは否定することが
できない。しかし,普天間飛行場の供用の違法性判断に際し最も重要な考慮
要素の一つである被害の内容,程度としては,前記(イ)と同様,その被害
が航空機騒音による障害がある程度存在するという程度では足りず,一般通
常人の社会生活上耐えられないような重大かつ深刻な程度でなければならな
い。
どの程度の騒音であれば,人の睡眠を妨げるのか,屋外において発生した
。,騒音が人の睡眠にいかなる影響を及ぼすかについては明らかでない睡眠は
本来個人差が顕著であり,客観的には眠っているにもかかわらず不眠を訴え
る者もいるから,主観的な訴えのみから睡眠妨害の有無を認めるべきではな
い。また,慣れによって睡眠への影響が緩和される。老化による脳の血管の
動脈硬化は,睡眠障害の一因となり,また,人によっては,時計の音や波の
音等も,慣れない間は睡眠妨害の原因となる。現時点の科学的知見からは,
航空機騒音と睡眠妨害との間の関連性は,明確でないというべきである。
本件航空機騒音に起因する睡眠妨害の有無又は程度を判断するに当たって
は,睡眠が本来人の夜間の生活の営みであることに照らし,普天間飛行場に
おける航空機の夜間の運航状況と周辺住民の生活時間との関係を明らかにす
る必要があり,騒音一般又は航空機騒音一般について睡眠への影響を検討す
ることは無意味である。一般に,深夜や早朝においては,窓を閉めて睡眠を
,,とるのが通常であり仮にこれらの時間帯に航空機騒音が発生したとしても
就寝中の居室内に到達する騒音量は相当程度減衰しているはずである。これ
らの防音又は減音効果を考慮すれば,原告らが本件航空機騒音によって睡眠
,。を妨げられていることはほとんど問題とするに足りない程度といってよい
さらに,住宅防音工事による効果に加え,冷暖房機及び換気扇が取り付けら
れているから,ごく短時間,窓を開放せざるを得ない場合が生じ,その間に
たまたま騒音に暴露されて睡眠を妨げられたとしても,それはもはや法的に
保護すべき利益侵害とはいえない。
原告らが睡眠妨害があることの根拠とする沖縄県調査は,主観に基づく自
己申告によって得られたデータに基づいているところ,一般に覚せいの主観
的自己申告は客観的な睡眠妨害の測定結果と相関がないとされており,騒音
レベルの影響の検討について自己申告データを用いることは疑わしい調査方
法である。また,沖縄県調査では,オッズ比(Oddsratio。疾病の発症リス
クなどを比較するための尺度として一般に用いられているものであって,対
,,{()}照群における比率をp0暴露群における比率をp1とすると1-p0/p0
・p1/(1-p0}となるものをいう。以下同じ。なお,対照群と暴露群に{)
差がない場合にはオッズ比が1となり,暴露群での比率が対照群での比率よ
りも高い場合には1以上の値となるとされている)は,対照群の比率及び。
暴露群の比率の値が小さい場合には,相対危険度と一致する一方,対照群の
比率及び暴露群の比率の値が大きい場合には相対危険度とかけ離れたものと
なるのに,対照群の比率及び暴露群の比率の値が大きい軽度の睡眠障害につ
いてオッズ比を相対危険度と同定するものとして用いて,量反応関係がある
との結論を導く誤った統計処理による推論をしている点で分析方法上も問題
がある。しかも,沖縄県調査でも,最も重度の睡眠障害については,普天間
飛行場の調査結果において量反応関係がみられない。
(エ)精神的被害
音が,騒音として甘受される契機は,個人差が大きく,音の物理量だけで
説明できるものではない。すなわち,好ましくない音か否か,その程度はい
,。,かなる程度であるかは極めて主観的かつ心理的なものであるうるささは
騒音妨害として述べられているものに対する人間の主観的な反応であり,特
に,騒音源に対する人間の評価,態度が,うるささの反応を増大させる重要
な要因として働く可能性がある。このような影響は,それが主観的なもので
あるだけに,それが認められるとしても,法的に保護すべき利益の侵害に当
たるか否かについては慎重な検討を要するというべきである。
本件航空機騒音の発生は,1日の生活時間帯のうち限定された部分にすぎ
ず,その発生は,住民の社会生活への妨害を極力少なくするよう十分に配慮
されているから,仮にある程度の不快感はあるとしても,社会生活上受忍限
度の範囲内のものというべきである。
原告らが精神的被害があることの根拠とする沖縄県調査には,調査方法,
解析方法及び結果解釈の妥当性について,正確性に関する問題点が含まれて
おり,本件航空機騒音による精神的被害を裏付ける証拠とはならない。すな
わち,調査方法については,THIによる調査では,平成7年及び平成8年
の調査と平成3年及び平成4年の調査とは,4年もの期間を経て行われた別
の調査であり,かつ,サンプリング構成も異なっているから,それぞれ別個
に分析すべきであるのに,全体として一つの分析をしているので,不正確な
結果をもたらす危険がある。THIによる調査における調査実施方法では,
ダブルブラインド(回答者のみならず,調査員に調査の意図を知らせないこ
と)が行われていないため,調査対象者が,調査目的を告げられ,又は推知
,。,,しこれがバイアスになった可能性があるまた生活質・環境質調査でも
全居住者に調査票が配布されたW値95以上の区域と,全居住者には調査票
を配布していない低騒音区域とを比較しているほか,地元の自治会等の協力
が得られた場合には,自治会長又はその協力者が調査票を配布・回収してい
ることや調査内容などから,調査目的を推知される可能性が高い。解析方法
についても,平成6年以降の調査結果を,昭和52年当時の騒音データに当
てはめて検討し,結論を導いている点で解析方法に問題がある。
,,「」,「」さらに沖縄県調査の結果でも少しうるさいあまりうるさくない
及び「まったくうるさくない」と回答する者がW75区域でも41.1%い
るから,沖縄県調査から,普天間飛行場周辺住民が本件航空機騒音によるう
るささを共通して感じているとはいえない。また,沖縄県調査の結果によっ
ても,普天間飛行場周辺住民が原告ら主張のような本件航空機騒音によるイ
ライラ感,恐怖感,墜落への不安及び戦争への恐怖を共通して感じていると
いうことはできない。
(オ)身体的被害
飛行場周辺で航空機騒音を受けることにより,聴力損失等の健康及び身体
的被害が生ずる可能性がないというのが医学的定説であり,本件航空機騒音
,。は身体に深刻な影響を与えるほどのレベルに至っているとは考えられない
また,身体的被害については,各原告の主張する被害が本件航空機騒音に
より引き起こされたことを個別に立証する必要があるので,集団的観察には
なじまない。疫学は,確率計算の手法によって集団に流行する疾病と暴露と
の関係をみるものであり,集団に属する個々の疾病の原因を特定するもので
はない。複数の原因が想定することができる非特異性の疾患の場合,当該疾
患について考えられる原因が唯一と考えられる特異性疾患と異なり,集団現
象としての疾病多発の原因と個別患者の発症との原因とを同列に論じること
は適当でない。また,統計学的な意味での有意性は,単に偶然とは考えにく
いということであって,統計学的な関連だけでは疫学的な因果関係を意味す
るものではない。しかも,疫学的な因果関係が肯定されたとしても,法的因
果関係とは次元が異なる。そして,沖縄県調査は,本件航空機騒音の暴露を
受けた時期と疾病が生じた時期の先後関係と考慮せずに行った横断的研究で
,,。あり時間的な関係が明確でないから原因究明度は低いというべきである
また,沖縄調査は,航空機騒音の影響に関する各種研究報告についての批評
・検討を行わないまま,健康影響を肯定する結論を導くなど結果解釈の妥当
性に問題がある。THIは調査対象者の主観に基づく訴えであり,あくまで
健康影響の存在を示唆する指標にすぎないのに,沖縄県調査では,THIに
よる調査の結果から,直ちに住民に健康被害が生じているかのように扱う点
で,誤った推論であり,結果解釈の妥当性にも問題がある。
a聴力損失
聴力損失については,沖縄県調査では,普天間飛行場周辺住民の聴力検
査をしていないので,沖縄県調査の結果をもって,原告らに聴力損失が生
じていると認めることはできない。沖縄県調査の結果は,嘉手納飛行場周
辺におけるW値85以上の区域に居住する者を対象としており,普天間飛
行場周辺には,W値85以上の区域は存しないので,原告ら主張の聴力損
失の根拠となり得ない。また,沖縄県調査において聴力損失と認定された
者のように,比較的高齢の者の多い集団の場合には,加齢による聴力の減
退を考慮する必要がある上,重要な病歴に関する問診結果も欠け,また,
職業や趣味等による騒音暴露量の考慮がされていない。また,耳鳴りは,
その本態が分からないことが多いとされているので,航空機騒音との関係
も明らかにすることは不可能である。空港周辺住民に騒音性難聴がみられ
ることがないというのが定説である。
騒音性聴力損失は,騒音レベルの大きさとその持続時間によって引き起
こされるものであり,連続した長時間の暴露でなければ聴力損失は起こら
ないという見解が一般的であるので,航空機騒音は,間欠音であるから,
聴力損失は起こらないという見解が一般的である。
しかも,原告らは,聴力損失などについて,具体的,個別的に主張して
,。,おらず沖縄県調査による以外の特段の立証もしない原告らの陳述書は
誤りが多く,特定性にも欠けるなど信用性に疑問がある上,原告らは,聴
力損失や難聴などを根拠付ける診断書などの客観的資料を提出しておら
ず,聴力損失などは立証されていない。
さらに,原告らが共通被害と主張するものが,①聴力損失に至らない程
度の身体的影響,②将来聴力損失を生ずるかもしれない不安感,③将来聴
力損失を生ずる可能性又は危険性のいずれであるか判然としない。これら
のうち,①の身体的影響は,聴力損失と同一の疾病とはいえないから,聴
力損失として考慮するのは不相当である。また,③のような可能性又は危
険性はもちろん,②のような不安感は,慰謝料請求権の発生原因となるべ
き現実の被害に当たるとはいえない。
b聴力損失以外の身体的被害
「頭痛・肩こり・目まい等の症状「高血圧・心臓の動悸等「胃腸障」,」,
害等」等の被害は,個別原告ごとに主張立証する必要があるところ,原告
らの主張立証は不十分である。
また,これらの症状等は,航空機騒音以外の原因によっても生じ得るか
ら,仮に,これらの症状等が原告らに存するとしても,本件航空機騒音に
よって生じたとは認められない。原告らが主張の根拠とする沖縄県調査の
住民健康診断データは,受診率等が地域によって異なり得るので,地域の
住民全体の健康状態やその傾向を把握することができず,また,40歳以
上の住民を対象としているのに,40歳未満の者のデータも取り混ぜて分
析しており,データの抽出,分析の信頼性に疑問がある。
血圧等は,航空機騒音によって影響を及ぼすとはいえず,仮に航空機騒
音が呼吸器・循環器系機能や消化器系機能に一定の影響を及ぼす可能性が
あるとしても,それは,騒音暴露による急性反応の存在を示唆するにすぎ
ず,騒音暴露が慢性的な高血圧や心疾患,胃腸障害等の疾患を引き起こす
ことは明らかでない。また,頭痛,肩こり,めまい等は,いずれも高齢,
他疾患,普天間飛行場とは異なる生活環境等他原因の存在が疑われる。
(カ)原告ら主張の「子供の被害」について
,,低出生体重児の出生について原告らが主張の根拠とする沖縄県調査には
まず,資料となっている人口動態調査票が,市町村単位での分類となってい
るため,騒音暴露量との関連を分析する上でのサンプリング方法としては疑
問があり,調査方法について正確性に関する問題点が含まれている。また,
対照群と暴露群の間に有意差があるとの結論を導くに当たり,交絡因子とし
て重要な母親の妊娠中の就業状況等を考慮していないなど,交絡因子を十分
に取り除いていないという解析上の問題があるから,本件航空機騒音による
被害を裏付ける証拠とはならない。
幼児問題行動についても,原告らが主張の根拠とする沖縄県調査における
調査は,質問紙を配布する際に,各園の施設長や代表者に対して,航空機騒
音の影響に関する調査であることを告げているので,各園の施設長や代表者
から回答者に対し調査目的が告げられた可能性が高く,バイアスの生ずる可
能性がある。また,質問紙に記載された質問の前後関係や内容から,調査対
象者は,調査の目的が騒音との関係にあることを推測することができた可能
。,。性があるさらに親の経済状態等の交絡因子の検討も十分にできていない
この沖縄県調査については,調査方法について正確性に関する問題点が含ま
れているといえる。
学習環境の破壊の被害のうち,学童の記憶力に関する沖縄県調査は,本件
航空機騒音が学童の記憶力に影響を与えることを肯定したものとはいえない
ので,これを裏付ける証拠とはならない。また,普天間飛行場周辺で子供が
学校や家庭で学習する際,本件航空機騒音により,一過的に若干の学習妨害
を受けることがあるとしても,その妨害の程度は,本件航空機騒音だけのた
めに学習が困難又は不可能となるものでなく,学校防音工事や住宅防音工事
,,。で相当の防音効果があるのでその障害は解消し又は大幅に低減している
(キ)低周波音による被害
a原告らが本件低周波音による共通被害として主張する「不定愁訴」及び
「物的影響」については,個々の原告について,このような被害が具体的
に発生していることを主張立証する必要があるところ,そのような主張立
証はされていない。しかも,不定愁訴が各人の自覚的な症状の主張である
ことから,被害者の個別的特性に左右されないとはいえない。また,原告
らは,不定愁訴や物的影響を騒音とは異なる低周波による被害と主張する
以上,本件航空機騒音による被害とは別に低周波音固有の被害についても
主張立証する必要がある。しかし,個々の原告らに低周波音による被害が
生じているとの主張立証はない。
,,なお騒音に低周波音が加わった場合の影響に関するデータがない以上
本件航空機騒音に本件低周波音が加わったために普天間飛行場周辺でのう
るささ感が強いとはいえない。
b仮に原告らの主張するような被害の発生が認められるとしても,被告の
損害賠償責任が肯定されるためには,①普天間飛行場に係る航空機から一
定レベル(各周波数ごとの音圧レベル)以上の低周波音(1~80Hz)が
発せられていること,②原告らが①の低周波音に暴露していること,③原
告らの主張する被害と普天間飛行場に係る航空機から発せられた低周波音
との間に因果関係が認められることを,原告らが具体的に主張立証する必
要がある。
しかし,まず,①については,原告らが本件低周波音の発生の根拠とし
て主張する沖縄環境ネットワークによる低周波音公害調査及び沖縄県によ
る低周波音測定における各測定結果については,前記イ(エ)のとおり,
問題がある。また,検証の結果については,各測定点における測定時間が
短く,同時に複数の測定点で測定せず各時間帯1か所であったため,本件
低周波音の全体状況を把握することは困難である上,検証の結果からして
も,航空機による低周波音がない状態でも相当程度の低周波音に暴露され
ているから,原告ら主張の本件低周波音は,厳しいものでなく,家屋によ
る遮音効果を考慮すれば,損害賠償を認めるべき被害を与える低周波音の
発生はみられない。
次に,②について,W値算定の基となるdB(A)には低周波音の他に騒
音も含まれるから,同じW値に居住する原告が同程度の低周波音に暴露し
ているとまでいうことはできない。
また,③についても,航空機による低周波音と心身・睡眠影響との因果
関係は解明されておらず,立証は不十分である。
(ク)原告ら主張の疫学的因果関係論の問題点
疫学的因果関係は,あくまで個々の患者とは別に人間集団を対象とするか
ら,疫学上因果関係が認められるとしても,それは,訴訟において要求され
る法的因果関係及びその前提となる事実的因果関係とは次元が異なる。
原告らの主張は,疫学的因果関係が認められれば,個々の原告についての
個別立証をしなくても健康被害の存在が推定されるというものであると思わ
れるが,それが「証明」という事柄の性質及び立証責任の所在と相容れない
ことは明らかであって,本件航空機騒音と原告らの個別損害との法的因果関
係を認定することはできない。
エ普天間飛行場の公共性等
(ア)普天間飛行場の公共性
普天間飛行場は,我が国の平和と安全を維持し,極東の平和と安全を維持
するために欠くことのできない高度の公共性を有する施設である。
我が国は,自由と民主主義を基本理念とする先進自由主義国家の一つとし
て繁栄と発展の道を歩んでいる。国の存立は,国民の生活と福祉の不可欠の
,,,基盤であり国の平和と安全を確保し続けていくことは国民の幸福を守り
増進させるために必須の要件である。我が国は,武力紛争がほとんど絶える
ことのない厳しい国際情勢の中で,戦後幸いにして他国の侵略を受けること
はなかったが,将来万が一にも我が国が他国から侵略されるなどの事態が発
生すれば,国民の安全が重大な危機に直面するのみならず,これまでのよう
な自由と幸福を追求することが不可能となる。
そして,我が国は,自ら適切な防衛力を保持するとともに,日米安全保障
体制の下に国の防衛を全うしようとしているので,日本に在る米軍の使用す
る防衛施設は,その目的遂行上不可欠である。冷戦終結後においても,宗教
や民族などの対立に根ざす紛争やテロなどの新たな脅威が顕在化するなど,
国際情勢は依然として不透明・不確実な要素をはらんでいる。また,アジア
太平洋地域においても様々な不安定要因が存在している。このような国際社
会にあっては,日米安全保障体制の意義はいささかも減じていない状況にあ
るといえる。そのため,今日においても,米軍に提供される防衛施設の機能
が十分に発揮され,かつ,安定的な使用が確保されることは,我が国の平和
と独立を守り,国民生活の安全を守るため必要不可欠である。そうすると,
日本に在る米軍は,世界各地に展開している米軍と有機的に結合し,広く極
東の平和と安全を維持するため極めて重要かつ不可欠の役割を果たしている
といえる。
したがって,普天間飛行場は,安保条約に基づく日米安全保障体制の下に
おいて,日本における重要な位置を占める施設の一つであって,その使用の
必要性は,格段に高いので,その公共性は極めて高度である。
(イ)普天間飛行場の適地性及び重要性
飛行場の立地条件としては,一般に,地形的に山岳地帯から離れた平坦な
地にあり,高層建築物等障害物がないこと,気象的には年間の悪天候の発現
日数が少ないこと,風向がほぼ一定であることが必要である。普天間飛行場
は,それらの条件を満たしている。また,普天間飛行場の位置は,アジア大
陸に近く,日本列島の南端にあるため,我が国の安全及び極東における国際
の平和と安全の維持に寄与するという安保条約の目的達成のために必要とさ
れる地理的条件も満たしている。
一方,普天間飛行場については,日米安全保障協議委員会において,日米
両政府によって設置された「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)が」
平成18年5月1日にした返還等の内容を含む最終報告を了承しているた
め,被告は,現在,普天間飛行場の移設・返還に取り組んでいる。
したがって,普天間飛行場は,その代替施設が完成し,運用可能となるま
での間,我が国の安全の確保等に必要不可欠なものであり,我が国の存立上
重要な地位を占めているといえる。
(ウ)普天間飛行場の供用の違法性の判断における考慮
(ア(イ)のような普天間飛行場の公共性は,普天間飛行場の供用の違法),
性の判断において,十分に考慮されるべきである。
オ周辺対策等
(ア)はじめに
普天間飛行場における米軍機の運航活動は,安保条約6条及び地位協定2
条1項(a)に基づき,高い公益性の実現のために行われるので,適法な行
為である。本件航空機騒音は,このように適法な米軍機の運航活動に随伴し
て不可避的に生ずるから,本件航空機騒音の発生のみから,普天間飛行場の
供用が違法ということはできない。もっとも,本件航空機騒音の発生によっ
て,普天間飛行場周辺に居住している住民の日常生活に若干でも支障が生じ
ている場合には,行政がかかる騒音を放置してよいものではなく,各時代に
おける国際的及び国内的社会・経済情勢を踏まえ,居住の経緯,騒音影響の
内容と程度等あらゆる現実的側面を考慮した上で,事柄に応じた適宜の行政
対策を実施するのが望ましい。
被告は,かかる基本的視点に立ち,普天間飛行場の存続によってもたらさ
れる公益の重大性と普天間飛行場を維持するために影響を受ける住民の生活
上の利益との調和を図るため(イ)から(エ)までの周辺対策等を実施し,
ている。被告が実施する周辺対策等には,住宅等の防音工事のように騒音の
,()障害を受ける側について騒音を軽減するための措置を採る対策周辺対策
と,騒音の発生やその周辺住民への到達自体を規制する方法,具体的には騒
音を発生源で抑制する対策(音源対策)及びこれに準じる方法として運航方
式に改変を加える対策(運航対策)とに大別することができる。本件航空機
騒音により原告らを含む普天間飛行場周辺住民にもたらされる不利益又は影
響は,これらの周辺対策等によって,既に相当程度防止し,又は軽減されて
いる。
したがって,これらの周辺対策等の実績とその効果は,普天間飛行場の供
用の違法性の判断において,十分に考慮されるべきである。
(イ)普天間飛行場周辺における周辺対策
a概要
被告が普天間飛行場周辺において行ってきた周辺対策は,その主なもの
を大別すると,①障害防止工事及び学校等公共施設防音工事の助成(生活
環境整備法による廃止前の「防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和」
41年法律第135号。以下「周辺整備法」という)3条1項,2項,。
生活環境整備法3条1項,2項,②住宅防音工事の助成(生活環境整備)
),(,),法4条③民生安定施設の助成周辺整備法4条生活環境整備法8条
④特定防衛施設周辺整備調整交付金(生活環境整備法9条)のほか,⑤行
政措置に基づくものがある。
b障害防止工事及び学校等公共施設防音工事の助成
(a)障害防止工事の助成
被告は,自衛隊等の離着陸の頻繁な実施により生ずる障害を防止し,
又は軽減するため,普天間飛行場周辺において,昭和47年5月15日
から昭和49年6月26日までは周辺整備法3条1項に基づき,また,
,,翌27日からは生活環境整備法3条1項に基づき平成18年度までに
,,,,真栄原排水路工事比屋良川負担金新城排水路工事大山排水路工事
大謝名排水路工事,伊佐排水路工事,中原地区排水路工事,大山2号排
水路工事,大山3号排水路工事,喜友名排水路工事について,総額約3
5億7629万5000円の補助金(道路の整備事業に係るものは除
く)を関係自治体に交付している。。
(b)学校等公共施設防音工事の助成
被告は,自衛隊等の離着陸の頻繁な実施により生ずる音響で著しいも
のを防止し,又は軽減するため,普天間飛行場周辺において,昭和47
年5月15日から昭和49年6月26日までは周辺整備法3条2項に基
づき,また,翌27日からは生活環境整備法3条2項に基づき,学校及
び病院等の防音工事に係る必要費用相当の補助金(工事費,実施設計費
及び地方事務費)を交付し,学校及び病院等の防音工事の実現を図って
きている。
被告が普天間飛行場周辺の学校及び病院等の防音工事に対して行った
助成措置は,平成18年度までの間の合計で,143施設に対して31
8億7583万7000円である。
c住宅防音工事に対する助成措置
被告の住宅防音工事に対する助成措置は,生活環境整備法によって採用
された周辺対策であって,周辺住民の生活の本拠における航空機騒音の防
止,軽減を図ろうとするものである。被告は,昭和54年度から,生活環
境整備法4条に基づき,本件コンター内において,普天間飛行場周辺の住
,,,,宅の所有者等に対し住宅防音工事の助成を行いできるだけ多くかつ
速やかに住宅防音工事の実現を図ってきている。この助成措置は,被告が
今後とも最も重点を置く周辺対策の一つである。また,防音工事により,
室内が気密化されるから,快適な室内環境の保持を図るため,空気調和工
事も行っている。
助成の対象となる住宅防音工事の内容の概要は,内外部開口部の遮断工
事,外壁又は内壁及び室内天井面の遮断及び吸音工事並びに冷房施設及び
換気設備を取り付ける空気調和工事である。その内容は,防衛施設周辺住
宅防音事業工事標準仕方書(以下「住宅防音仕方書」という)に従って。
いる。住宅防音仕方書は,W80区域においては25デシベル以上,W7
5区域においては20デシベル以上の計画防音量を目標とし,その効果が
達成されるように,標準工法等についての基準を定めている。被告は,個
々の防音工事が完了すると,それらの工事が住宅防音仕方書のとおりに施
工されていることを確認しているから,防音工事施工後の屋内は計画防音
量のとおりの防音効果が生じているということができる。
普天間飛行場周辺における住宅防音工事の助成事業の実施状況は,昭和
,,54年度から平成18年度までの間合計延べ1万9268世帯について
補助額約350億2439万1000円の措置が採られている。また,被
告は,空気調和機器機能復旧工事に関しては,平成2年度から平成18年
度までに3524世帯に実施し,補助額約11億2637万9000円を
助成している。
d民生安定施設の助成措置
民生安定施設の助成措置とは,防衛施設の設置又は運用によりその周辺
の住民の生活又は事業活動が阻害されると認められる場合において,地方
公共団体が,その障害の緩和に資するため,生活環境施設又は事業経営の
安定に寄与する施設の整備について必要な措置を採るに際して,当該地方
公共団体に補助金を交付する措置である(周辺整備法4条,生活環境整備
)。,,,,法8条この助成の中には老人福祉センター一般住民の学習保育
休養又は集会の用に供するための施設(学習等供用施設,公民館及び図書
館等)等に対する防音助成と無線放送施設又は公園等の整備に対する一般
助成(道路改修事業を含む)とがある(生活環境整備法施行令12条。。)
被告は,普天間飛行場周辺において,平成18年度までに,防音助成と
して,公民館,市町村庁舎,消防庁舎,学習等供用施設,保健相談センタ
ー,老人福祉センター,特別集会施設,商工業研修等施設,農民研修施設
の合計36施設につき,関係地方公共団体に対し約44億376万600
0円に上る補助金を交付している。また,被告は,平成18年度までに,
一般助成として,無線放送施設,屋外運動場,体育館,特別集会施設,農
業用施設等の設置事業につき約29億7000万円,道路改修事業につき
約38億822万5000円の総額約67億7822万5000円に上る
補助金を関係地方公共団体等に交付している。
,,これらの助成によって原告らを含む普天間飛行場周辺住民の日常生活
教育活動,レクリェーション活動等の面において,普天間飛行場の維持,
運営から生ずる障害を間接的に緩和し,環境の改善,住民の福祉向上が図
られている。
e特定防衛施設周辺整備調整交付金の交付
被告は,生活環境整備法9条に基づき,生活環境整備法施行令14条所
定の公共用施設の整備のために,生活環境整備法施行令15条,生活環境
整備法施行規則3条により算出した額に従って,昭和50年度から平成1
8年度までの間に,宜野湾市に対し,合計約19億7939万9000円
に上る特定防衛施設周辺整備調整交付金を交付している。この交付金によ
る整備の対象となる公共施設は,交通施設,医療施設,環境衛生施設,教
育文化施設,社会福祉施設,消防に関する施設等である。
この交付金の交付により,原告らを含む普天間飛行場周辺住民の生活環
境の向上に効果を上げている。
f行政措置による周辺対策
被告は,bからeまでの法律に基づく諸施策のほか,行政(予算)措置
による周辺対策として,①防音事業関連維持費の補助,②空気調和機器稼
働費の補助等を行っている。
(a)防音事業関連維持費の補助
防音事業関連維持費の補助は,被告が,自衛隊等の航空機の離着陸等
の実施その他の行為により生ずる音響で著しいものを防止し,又は軽減
するために防音工事を実施した学校等に設置された換気設備(送風機,
排風機等)及び除湿設備(冷凍機,冷却塔等)の使用のために発生した
電気料金を支払う者に対し,平成16年度までは財団法人防衛施設周辺
整備協会が当該電気料金を交付している場合には同協会を通じ,その余
の場合は自ら,当該電気料金の補助を行うものである。
,,,,この補助の対象とする経費の範囲は各年度ごとに小学校中学校
高等学校,中等教育学校及び幼稚園の教育時間又は保育所の保育時間に
おいて,換気設備(送風機,排風機等)及び除湿設備(冷凍機,冷却塔
)。,等の使用に要した電気料金である平成18年度までの補助金の額は
沖縄県を除く地域においては各年度ごとに要した電気料金等に3分の2
を乗じて得た額の範囲内の額であるが,沖縄県の区域内に所在する対象
施設については特例措置が採られ,予算上の制約はあるものの,原則と
して,各年度ごとに要した電気料金の10分の10を乗じて得た額の範
囲内である。
この補助は,普天間飛行場周辺については,昭和53年度から実施さ
れており,昭和53年度から平成18年度までの実績は,総額約64億
1813万4000円に上っている。
(b)空気調和機器稼働費の補助
空気調和機器稼働費の補助は,被告が,被告の助成に基づき住宅防音
工事を実施した住宅に居住する者のうち,生活保護法(昭和25年法律
第144号)6条1項所定の被保護者であるもので,住宅防音工事によ
り設置した空気調和機器(冷房機,換気設備をいう)の稼働に伴う電。
気料金を支払う者に対し,平成16年度までは財団法人防衛施設周辺整
備協会が当該電気料金を交付している場合には同協会を通じ,その余の
場合は自ら,補助を行うものである。
平成元年度から平成18年度までの間,307世帯に対し,約378
万3000円の補助を行っている。
g基地助成交付金及び基地調整交付金の助成
被告は,国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律(昭和32
年法律第104号に基づき自衛隊等の用に供している国有固定資産土),(
),。地・建物等の所在する市町村に対して基地助成交付金を交付している
基地助成交付金は,市町村が国有資産に対して固定資産税を課することが
できないため,これに代替するものとして,被告が市町村に財政補給をし
ようとするものである。
また,被告は,施設等所在市町村調整交付金交付要綱(昭和45年11
月6日自治省告示第224号)に基づき,米軍の資産(ドル財産)に係る
税制上の特例措置等により施設等所在市町村が受ける税財政上の影響を考
慮し,市町村に財政補給を行うとの趣旨の下に基地調整交付金を交付して
いる。
基地助成交付金及び基地調整交付金は,共に総務省所管の交付金制度で
あり,いずれも一般財源の補給金である。
被告が宜野湾市に対し平成18年度までに交付した基地助成交付金及び
,,基地調整交付金は基地助成交付金が合計約24億9520万7000円
基地調整交付金が合計約113億5792万9000円に上っている。
,,この交付金の支出は被告の諸対策に伴う補助金の支出等とあいまって
これら助成を受ける地方公共団体の財政に多大の貢献をしている。
(ウ)音源対策
騒音をその発生源で抑える音源対策として,まず,地上における航空機の
エンジンテストに伴う騒音軽減のため,平成元年2月15日に開催された日
米合同委員会において,普天間飛行場にC-130,UH-1等用の消音装
置を設置することが合意された。そこで,被告は,平成4年3月26日に鉄
筋コンクリート造平屋の防音建屋に吸気消音器,排気消音器等を設置した消
音装置3棟等を完成させ,米軍に提供した。この消音装置は,同装置から約
250m(直近の施設区域境界)離れた地点で地上高1.2mにおける騒音
レベルが騒音計の聴覚補正回路のA特性で70dB(A)以下となる性能を有し
ている。
また,被告は,昭和51年度から,生活環境整備法の趣旨に基づき,普天
間飛行場内において被告の直轄事業として緑地整備事業を行ってきた。これ
は,緑地の整備によって,防風及び地上騒音の緩和等の物理的効果に加え,
緑地の存在によって景観を整え,安心感ややすらぎを与える心理的効果も期
待するものである。
(エ)運航対策
被告は,運航時間帯,離着陸の方法,滑走路の使い方,飛行経路の選び方
などを規制することによって,飛行場周辺に居住する住民に及ぼす騒音の軽
減を図る対策も行っている。
被告は,日米合同委員会の下部機関である航空機騒音対策分科会等におい
て,米軍に対し,普天間飛行場における騒音の軽減を要請している。また,
沖縄県民の負担を軽減するため,平成7年11月に日本国政府及びアメリカ
合衆国政府によって「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)が設置さ」
れ,日米合同委員会において,集中的な協議を行った結果,平成8年3月2
8日に平成8年規制措置が合意された。
平成8年規制措置は,普天間飛行場周辺の航空機騒音レベルへの懸念を軽
減するため,日本に在る米軍の任務に支障を来すことなく航空機騒音による
望ましくない影響を最小限にすべく設定された。具体的には,①日曜日の訓
練飛行は差し控え,任務の所要を満たすために必要と考えられるものに制限
される。慰霊の日のような周辺地域社会にとって特別に意義のある日につい
ては,訓練飛行を最小限にするよう配慮する。②午後10時から翌日午前6
時の間の飛行及び地上での活動は,アメリカ合衆国の運用上の所要のために
必要と考えられるものに制限される。③進入及び出発経路を含む飛行場の場
周経路は,できる限り学校,病院を含む人口密集地域上空を避けるよう設定
する。④有効な消音器が使用されない限り,又は運用上の能力若しくは即応
態勢が損なわれる場合を除き,午後6時から翌日午前8時までの間,ジェッ
トエンジンのテストは行わないといったものが含まれている。
沖縄県においては,米軍基地が存在することから派生する諸問題について
協議するために,米軍,沖縄県及び被告による三者連絡協議会が設置され,
この三者連絡協議会において騒音問題が取り上げられ,その成果として,曲
芸飛行の停止や消音装置の設置が実現している。
カ原告ら主張の「違法性を画する基準」について
昭和48年環境基準は,行政上の政策目標として騒音による好ましくない影
響を防止するという見地に立って純粋に望ましい環境の保全という観点から定
められた基準であるから,環境基準は,違法性を画する基準とはならない。
また,本件コンターも,普天間飛行場周辺地域の住民の生活の安定及び福祉
の向上に寄与することを目標とする政策的保障措置を実施するために設定した
ものにすぎないから,本件コンターのW値は,違法性を画する基準とはならな
い。また,本件コンターのW値を違法性を画する基準とすることは,本件航空
機騒音の実態からかけ離れた形式的な数値を基準とするものとなり,不当であ
る。
また,各国の基準は,各国の技術的,社会的,経済的,政治的な要素を考慮
して決せられる上,その持つ意味も一義的でないから,諸外国における規制に
在り方が本件航空機騒音の法的評価に影響を及ぼすものではない。
(4)危険への接近の法理による免責又は減額
ア免責法理としての危険への接近の法理の根拠
危険への接近の法理は,ある者がある場所に危険が存することを認識しなが
ら,又は過失により認識しないで,あえてその場所に入って危険に接近し,そ
,,のため損害を受けたときは危険を容認したもの又はそれに準ずるものとして
加害者の責任を否定するものである。私法関係にあっては,自己が自由な意思
決定によって選択した結果は自己が負担することが原則(自己責任の原則)で
あり,自らの自由な意思決定によって,あえて自己の法益を危険にさらしたに
,。もかかわらずこれによる損害を他に転嫁することは公平に反する結果となる
危険への接近の法理は,このような自己責任の原則,殊に不法行為法を支え
る根本理念の一つである衡平の理念(損害の公平な分担)に根ざす重要なもの
である。また,航空機騒音問題における免責の法理としての危険への接近の法
理は,航空機騒音問題の特質を踏まえた上で,住民の利益の保護と飛行場の存
立という二つの要請を妥当に調和して騒音問題の適正な解決を図ろうとするも
のといえる。そうすると,免責の法理としての危険への接近の法理は,違法性
又は受忍限度の判断の重要な要素として評価されるべきである。
イ免責法理としての危険への接近の法理の適用要件等
(ア)免責法理としての危険への接近の法理の適用要件
前記アの免責法理としての危険への接近の法理の根拠に照らすと,①危険
に接近した者が侵害行為の存在を認識しながらあえてそれによる被害を容認
して居住を開始したこと(以下「要件①」という,②被害が精神的苦痛又。)
は生活妨害の程度にとどまり,直接生命,身体に係わるものでないこと(以
下要件②という③侵害行為に相当高度の公共性が認められること以「」。),(
下「要件③」という)という各要件を充足する場合には,④実際の被害が。
入居時の侵害行為からの推測を超える程度のものであったとか,入居後に侵
害行為の程度が格段に増大したとかいうような特段の事情が認められない
(以下「要件④」という)限り,そのような被害は入居者において受忍し。
なければならず,この被害を理由として慰謝料の請求をすることは許されな
いと解すべきである。そして,要件①の容認とは,免責の法理としての危険
への接近の法理が,違法性判断における利益衡量の一要素であり,被害者の
承諾の理論とは異なるから,原告ら主張(5)イ(イ)bのように積極的な
容認に限られると解すべきではなく,不利益状況は単独では受け入れ難いも
のであっても,他に重視すべき利益状況があるため,これをやむを得ないも
のとして受け入れる場合も含むと考えるべきである。そうすると,要件①の
容認とは,消極的な容認で足りるというべきである。
(イ)基準日後の転入者
宜野湾市長が米軍に対し昭和44年7月には普天間飛行場の騒音について
善処要望を行っていること,教職員会宜野湾支部が昭和45年6月に騒音の
即時中止を決議していることからして少なくとも昭和47年5月15日以,(
下この(4)において「基準日」という)までには,本件航空機騒音が社。
会問題化し,かつ,広く周知されるに至っていたというべきであるから,基
準日以降に本件コンター内に転入した原告らについては,本件航空機騒音に
よる被害の発生状況を認識して居住を開始したと推定することができる。し
かも,これらの原告らについては「一定程度の航空機騒音の存在を認識し,
ながら相当期間にわたる間の住居としてあえてその住居を選択した」という
,,事情が認められる以上本件航空機騒音による被害の容認も推定されるので
基準日以降に本件コンター内に転入してきた原告らについては,被害の容認
があったものと推定される(要件①の充足。これら被害の容認があったも)
のと推定される原告らは,居住経過表の「危険への接近の法理類型」の「免
責「Ⅰ」欄に「○」の記載がある原告48名である。」
また,原告らの「共通損害」の主張立証は不十分で,被侵害利益そのもの
が認められず,また,航空機騒音に関する現在までの研究では,人の身体又
は精神面に影響が及ぶことは一般的に否定されており(要件②の充足,普)
天間飛行場には,前記(3)エのとおり,相当高度の公共性があり(要件③
の充足,普天間飛行場周辺における騒音状況はほぼ一定のレベルで推移し)
ており,特に,平成11年度以降は減少傾向が認められるので,要件④の特
段の事情は認められない。
したがって,居住経過表の「危険への接近の法理類型」の「免責「Ⅰ」」
欄に「○」の記載がある原告らに対しては,免責の法理としての危険への接
近の法理が適用されるべきである。
(ウ)再転入者及び本件コンター内複数転居者
仮に基準日以降に本件コンター内に転入したという事実のみでは,本件航
空機騒音による被害の容認を推定するには十分でないとしても,基準日以降
において本件コンター内に転居するに際し,普天間飛行場の騒音を認識して
いたことが明らかな者,すなわち,原告らのうち,①基準日以降に本件コン
ター内に居住したことがあり,その後,本件コンター外に転居したものの,
再び本件コンター内に転入した者35名,②基準日以降に本件コンター内に
居住したことがあり,その後,本件コンター内でより騒音レベルの高い区域
に転居した者29名,③基準日以降に本件コンター内で3回以上転居した者
51名(①,②,③のいずれも,本件コンター内での最初の居住開始時点が
基準日より前であるか,後であるかは問わない)については,本件航空機。
騒音による被害の容認の有無に関し,上記転居が選択の余地がないものであ
ったか否かなどの転居の具体的事情が明らかにされなければならず,その事
情の存在が明らかにされない限りは,本件航空機騒音による被害の容認が推
定され,免責の法理としての危険への接近の法理が適用されるべきである。
なお,普天間飛行場の宜野湾市の面積に占める割合は,約24.4%であ
,.,り面積の約824%を基地が占める嘉手納町等とは状況が異なっており
普天間飛行場周辺地域でも,本件航空機騒音の影響を受けずに生活すること
ができる地域が相当程度存する。そのため,普天間飛行場周辺において,本
件航空機騒音の影響を受けずに生活することができる地域が限られていると
はいえない。
,,。そして上記原告らの中には上記転居に選択の余地がないものはいない
したがって,居住経過表の「危険への接近の法理類型」の「免責」のうち
「Ⅱ-①「Ⅱ-②「Ⅱ-③」欄に「○」を記載した原告らは,上記①か」,」,
ら③までの分類に該当し,免責の法理としての危険への接近の法理が適用さ
れるべきである。
ウ減額法理としての危険への接近の法理
一般に,ある者がある場所に危険が存在することを認識しながら,又は過失
によってこれを認識しないで,あえてその場所に入って危険に接近し,そのた
めに被害を被ったときは,損害賠償額の減額事由としてこれを考慮するのが衡
平である。そうすると,危険への接近の法理によって免責が認められない場合
にも,具体的な事情のいかんにより,過失相殺の法理に準じ,損害賠償額の算
定に当たり,これを減額事由として考慮すべきである。
基準日以降に本件コンター内に転居した原告らのうち,①転居の際,本件航
空機機騒音の存在を認識していなかったものについても,本件航空機騒音が,
基準日までには,社会問題化し,かつ,広く周知されていたことからすれば,
被害をもたらす航空機騒音を認識することは容易であったので,本件航空機騒
音を認識しなかったことには過失があるといえ,また,②転居の際,本件航空
機騒音の存在及びこれによる被害を認識していたものの,本件航空機騒音の程
度又はこれによる被害の程度を認識しなかったものについては,本件航空機騒
音の存在及びこれによる被害を認識していれば,本件航空機騒音の程度又は本
件航空機騒音による被害の程度を把握せず転居したことには過失があるといえ
る。
そうすると,基準日以降に本件コンター内に転居した原告らについては,減
額の法理としての危険への接近の法理が適用されるべきである。
また,基準日以降に本件コンター内に転居した者については,その転居後の
期間にかかる損害賠償請求について,免責が認められないとしても,減額の法
理としての危険への接近の法理が適用されるべきである。
したがって,居住経過表の「危険への接近の法理類型」の「減額」の「Ⅰ」
欄に「○」を記載した原告ら64名及び同「Ⅱ」欄に「○」を記載した原告ら
32名については,上記①又は②の類型に該当し,減額の法理としての危険へ
の接近の法理が適用され,損害賠償額の算定に当たり,相当額の減額がされる
べきである。また,同「危険への接近の法理類型」の「免責」の「Ⅰ」欄又は
「Ⅱ-①「Ⅱ-②」若しくは「Ⅱ-③」欄に「○」を記載した原告らについ」,
ては,仮に免責法理としての危険への接近の法理が適用されないとしても,減
,,額の法理としての危険への接近の法理が適用され損害賠償額の算定に当たり
相当額の減額がされるべきである。
(5)消滅時効
ア消滅時効の抗弁
仮に原告らに本件航空機騒音により損害が生じているとしても,そのような
損害は,日々発生するものであり,かつ,原告らはその時点で損害及び加害者
を知ることができる。
したがって,原告らのうち第1事件原告については訴えを提起した平成14
年10月29日の前日である同月28日から,第2事件原告については訴えを
提起した平成15年4月14日の前日である同月13日からそれぞれ起算して
3年より前に発生した損害についての賠償請求権は,弁護士費用分も含めて,
時効によって消滅している。
イ原告ら主張の時効の援用についての権利の濫用に対する反論
被告は,違法な行為を継続的かつ積極的に加担してきたことはないので,原
告らの消滅時効の援用についての権利の濫用に関する主張は,根拠がない。
(6)住宅防音工事の実施による損害額への影響
,,「」,被告は原告らに対し居住経過表の住宅防音工事実績欄に記載のとおり
住宅防音工事を実施した。
,,したがって住宅防音工事の実施を受けた原告らの損害額の算定に当たっては
住宅防音工事の実施を考慮すべきである。
(7)将来の損害の賠償請求の不適法性(本案前の答弁)
原告らの将来の損害の賠償請求は,以下のとおり,その性質上,権利の成否及
び内容を一義的に明確に認定することのできないものであるから,将来の給付の
訴えを提起することができる請求権としての適格性を有しない。
したがって,原告らの将来の損害の賠償請求に係る訴えは不適法である。
ア普天間飛行場は,平成8年12月2日,日米安全保障協議委員会において,
返還等が了承された。そこで,平成12年8月25日には,被告,沖縄県及び
地元地方公共団体の間で代替施設建設協議会が結成され,被告において,平成
14年7月29日には「普天間飛行場代替施設の基本計画」を決定した。そ,
の後も,平成17年10月29日には,日米安全保障協議委員会において,普
天間飛行場の移設について,キャンプ・シュワブの海岸線の区域とこれに近接
する大浦湾の水域を結ぶ区域にL字型に代替施設を設置する政府案を盛り込ん
だ共同文書が発表され,同年11月11日には「平成17年10月29日に,
実施された日米安全保障協議委員会において承認された事項に関する当面の政
府の取組について」が閣議決定された。そして,防衛庁長官(当時)は,名護
市長及び宜野座村長との間で,平成18年4月7日,それぞれ上記政府案を基
本として代替施設を建設する旨の基本合意を締結した。他方,被告は,アメリ
カ合衆国政府との間でも,同年5月1日,日米安全保障協議委員会において,
日本に在る米軍の兵力態勢の再編に係る最終的な取りまとめをし,普天間飛行
場代替施設を,名護市の辺野古岬とこれに隣接する大浦湾と辺野古湾の水域を
結ぶ形で設置することを了承した。
以上のように,普天間飛行場について具体的な移設計画が存在するので,原
告ら主張(7)アのように普天間飛行場の閉鎖に向けた具体的な措置が採られ
ていないとはいえない。
イ仮に,本件訴訟の口頭弁論終結の日の翌日から1年間の時期において,普天
間飛行場の返還が実現しなかったとしても,普天間飛行場のような軍用飛行場
については,将来における恒常的な航空交通量ひいては航空機騒音を予測する
ことはおよそ不可能というべきである。そうすると,本件航空機騒音が,口頭
弁論終結の日の翌日以後も同程度であると推測することは不可能である。
また,本件航空機騒音に低下傾向が認められることからすれば,仮に本件訴
訟において一部の原告につき過去の損害の賠償請求が認容されることがあると
しても,将来の損害においては,受忍限度内の騒音と評価される余地もあり,
また,当然に同額の損害賠償となるとも限らない。
ウ原告らの居住場所は,相当頻繁に変動しており,しかも,その変動状況は複
。,,雑であるそうすると口頭弁論終結の日の翌日から1年間に限ったとしても
その間に本件コンター内で異なるW値の区域に転居したり,本件コンター外に
転居するなどする原告が相当数に上る可能性が高い。このような多数の原告に
ついて,被告が,転居や死亡の事実を把握するためには,原告ら全員について
住民票の調査や原告らの居住地の現地調査を頻繁に実施するよりほかないが,
このような生活状況の変動を把握し主張立証して執行を阻止することは,原告
らが自身の生活状況の変動について,請求原因事実として主張立証することに
比べて著しく困難である。
エしかも,被告は,音源対策等を含む種々の周辺対策等を検討・実施している
ところ,原告らの居住住宅に対する住宅防音工事により,本件航空機騒音によ
る影響は大幅に減少し,又は消失するので,原告らの損害賠償請求権の成否及
びその内容は,被告の実施する住宅防音工事によっても,影響を受けるといえ
る。
(8)騒音測定等請求の不当性
物権的妨害予防請求権は,将来の侵害を予防するため,予防請求の相手方に一
定の作為又は不作為若しくは被侵害者の費用による予防措置を受忍すべきことを
許すものである。そのため,予防請求権の内容も,将来の侵害予防に直結する作
為又は不作為若しくは予防措置の受忍義務でなければならないと解される。しか
し,原告ら主張の侵害行為は,米軍機の航行であるから,被告が騒音測定等を行
っても,侵害予防効果に直結することはない。
したがって,被告には,原告ら主張の騒音測定等の請求権が発生することはな
い。
第3主な争点
1本件差止請求の当否。特に,被告が,米軍と共同して妨害状態を引き起こし,又
は米軍の普天間飛行場における活動を制限することができる立場にあるかどうか
等。
2普天間飛行場に設置又は管理の「瑕疵」があるかどうか。特に,本件航空機騒音
等の侵害行為の態様と侵害の程度,原告らの本件航空機騒音等による被害の性質と
内容,侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討する
ほか,侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間に採られた被害の防
止に関する措置の有無及びその内容,効果等の事情をも考慮して,これらを総合的
に考察した結果,普天間飛行場の供用が原告らに対する関係において違法な権利侵
害ないし法益侵害となるかどうか。
,「」,3原告らについていわゆる免責法理としての危険への接近の法理が適用され
被告が免責されるかどうか。
4被告による消滅時効の援用が権利の濫用に当たるかどうか。
5損害額。いわゆる減額法理としての「危険への接近の法理」の適用の有無及び住
宅防音工事の実施による減額の有無等
6将来の損害の賠償請求に係る訴えの適否
7本件騒音測定等請求の当否
第3章当裁判所の判断
第1本件差止請求の当否(争点1)について
1共同妨害者としての責任
原告らは,普天間飛行場における米軍機による一定の時間帯の離着陸及び騒音の
規制の請求(以下「本件差止請求」という)をしているところ,被告は,前記前。
提事実1のとおり,アメリカ合衆国に対し,昭和47年5月15日(沖縄の復帰の
日)から現在まで,安保条約及び地位協定に基づき,米軍の使用する施設及び区域
として普天間飛行場を提供している。そして,原告らは,普天間飛行場を離着陸等
する米軍機による本件航空機騒音及び本件低周波音により被害を受けているから,
人格権,環境権又は平和的生存権に基づき本件差止請求をすることができると主張
しているので,その主張を前提とすると,本件航空機騒音等による被害を直接生じ
させている者は,被告ではなく,米軍であるというべきある。
したがって,被告が妨害状態を引き起こしているということはできないので,被
告が妨害状態を引き起こしていることを前提とする本件差止請求には,主張自体失
当であるというほかない。
これに対し,原告らは,被告がアメリカ合衆国に普天間飛行場を提供しているこ
とに加え,被告がいわゆる「思いやり予算」などの莫大な税金を投じて,普天間飛
行場の維持管理に協力,関与してきたことなどをもって,被告が米軍と一緒になっ
て原告らの権利を違法に侵害する状態を生じさせているなどと主張する。
しかし,被告がアメリカ合衆国に普天間飛行場を提供していることや米軍に対す
る予算措置を講ずることは,いずれも本件航空機騒音等の発生にとっては間接的な
ものにすぎないから,被告がアメリカ合衆国に普天間飛行場を提供していることや
米軍に対する予算措置を講じていることをもって,被告が米軍と共同して妨害状態
を引き起こしているということはできない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
2普天間飛行場の提供者としての責任
(1)また,原告らは,本件差止請求の前提として,被告が,普天間飛行場の提
,。供者として米軍による権利侵害状態を除去すべき義務を負っていると主張する
(),,2本件航空機騒音等による被害を直接生じさせている者は前記1のとおり
被告ではなく,米軍であるから,被告が,原告ら主張の権利侵害状態を除去すべ
き義務を負うといえるためには,その前提として,被告が米軍の普天間飛行場に
おける活動を制限することができる立場にあることを要するというべきである。
しかし,普天間飛行場に係る被告と米軍との法律関係は,前記1のとおり,安
保条約等の条約に基づくから,被告は,条約又はこれに基づく国内法令に特段の
定めのない限り,米軍の普天間飛行場の管理運営の権限を制約し,その活動を制
限することができる立場にないというべきである。
そして,安保条約等の関係条約及び国内法令に上記のような特段の定めはない
から,被告は,米軍の普天間飛行場の管理運営の権限を制約し,その活動を制限
することができる立場にはないということができる。
(3)これに対し,まず,原告らは,原告らの人格権,環境権,平和的生存権が侵
,,害されている場合には条約又はこれに基づく国内法令に特段の定めがなくても
被告が米軍の活動を制限することできると主張する。しかし,普天間飛行場に係
る被告と米軍との法律関係は,前記(2)のとおり,条約に基づく以上,被告が
米軍の普天間飛行場における活動を制限することができる立場にあるというため
には,条約又はこれに基づく国内法令に特段の定めのある必要があるというべき
であるから,原告らのこの主張を採用することはできない。
(4)また,原告らは,以下のように国内法が米軍に対して適用となる根拠を挙
げ,被告が米軍の活動を制限し得るかの主張をするけれども,以下のとおり,い
ずれも採用することができない。
ア原告らは,まず,国際法における領域主権の原則を根拠として,国は,条約
などによる特別の制限がない限り,排他的な統治権を行使することができる一
方,国内に駐留する外国軍隊を受入国の国内法令の適用から除外する一般国際
法の規則は存在しないので,領域主権は,領域内にある外国の軍用機に対して
も当然に及ぶから,日本の国内法が米軍機に対しても適用される旨主張する。
しかし,被告がアメリカ合衆国に対し普天間飛行場を提供していることは前
記(2)のとおり条約に基づいている上,地位協定3条1項において「合衆国
は,施設及び区域内において,それらの設定,運営,警護及び管理のため必要
なすべての措置を執ることができる」と定められているから,アメリカ合衆。
国が普天間飛行場の運営,管理等のため必要なすべての措置を採ることができ
ることも,条約に基づいているので,原告らの上記主張は採用することができ
ない。
イ原告らは,地位協定3条及び16条を根拠として,日本の国内法が米軍機に
対しても適用される旨主張する。
しかし,まず,地位協定3条1項2文は「日本国政府は,施設及び区域の支,
持,警備及び管理のため合衆国軍隊の施設及び区域の施設及び区域への出入の便
宜を図るため,合衆国軍隊の要請があつたときは,合同委員会を通ずる両政府間
の協議の上,それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地,領水及び
空間において,関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする」と定めてい。
るところ,同条1項2文は,それ自体,米軍の施設及び区域の施設及び区域へ
,,の出入の便宜を図るため米軍の要請があった場合における規定にすぎないから
そのような目的がない場合においても,日本の国内法が米軍機に適用されること
を前提とするものではない。また,同条3項は「合衆国軍隊が使用している施,
設及び区域における作業は,公共の安全に妥当な考慮を払つて行わなければな
らない」と定めているところ,同条3項も,同条1項において,前記アのと。
おり,アメリカ合衆国が「合衆国軍隊が使用している施設及び区域」である普
天間飛行場について,運営,管理等のため必要なすべての措置を採ることがで
きることが定められていることを前提とした上で「公共の安全に妥当な配慮」
を払うことを定めているにすぎないから,同条3項に違反した場合に,被告が
米軍の活動を制限することができることを意味するものではないと解すべきで
ある。
また,地位協定16条は「日本国において,日本国の法令を尊重し,及び,
この協定の精神に反する活動,特に政治的活動を慎むことは,合衆国軍隊の構
成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である」と定めているところ,その。
文言上,米軍の構成員等に対し,我が国の法秩序を尊重すべき一般的義務を定
めたものにすぎないと解すべきである。
したがって,地位協定3条1項2文,3項及び16条の規定は,いずれも被
告に米軍の普天間飛行場の管理運営の権限を制約する権限を付与したものと解
することはできないので,原告らの上記主張も採用することができない。
ウ原告らは,地位協定18条5項が,不法行為から生ずる周辺住民の請求を処
理するために設けられた規定であるので,金銭請求に限った規定ではなく,条
約上の特別の定めに当たる旨主張する。
しかし,同項は,外国国家に対する民事裁判権免除に関する国際慣習法を前
提として,外国の国家機関である米軍による不法行為から生ずる請求の処理に
関する制度を創設したものと解される(最高裁平成11年(オ)第887号平
成14年4月12日第二小法廷判決・民集56巻4号729頁参照)から,そ
もそも,同項の規定をもって,被告に米軍の普天間飛行場の管理運営の権限を
制約する権限を付与したものと解することはできないというべきである。しか
も,同項は,公務執行中の米軍の構成員等による不法行為から生ずる請求権に
ついて,日本国が処理する旨定める一方(同項本文,日本国が,裁判等によ)
り決定された額の支払を日本円で行うものとされ(同項(b,請求を満たす))
ために要した費用についての日本国及びアメリカ合衆国の分担に関する具体的
な定めを置いていること(同項(e)にかんがみれば,同項が予定する請求)
は,金銭賠償に係る請求に限定されていると解すべきである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
エ原告らは,航空特例法が航空法97条(航空管制権)の規定を適用除外にし
ていないことから,被告は,航空管制権に基づいて米軍機の運航を規制するこ
とができる旨主張する。
昭和27年の航空法制定とともに,米軍機と我が国の航空機との運航上の法
的調整を図るため,航空特例法が制定されている。航空特例法は,米軍機の運
航に関し航空法所定の事項について幾つかの規定の適用除外を定める一方,航
空機の運航に関する航空法第6章の規定のうち,国土交通大臣の航空交通の指
示(同法96条,飛行計画の承認(同法97条)及び到着の通知(同法98)
条)の規定については,適用除外を定めていない(なお,航空法及び航空特例
法が沖縄県に適用されるようになったのは,沖縄の復帰の日である昭和47年
5月15日以降である。そのため,我が国の領空を航行する米軍機は,すべ。)
て国土交通大臣に対し,飛行計画を通報し,更に計器飛行方式による場合にあ
ってはその承認を受けなれればならないことになりそうである。
しかし,地位協定6条1項は「すべての非軍事用及び軍用の航空交通管理,
及び通信の体系は,緊密に協調して発展を図るものとし,かつ,集団安全保障
の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。この協調及び整合を
図るため必要な手続及びそれに対するその後の変更は,両政府の当局間の取極
」。(),によつて定めると定めている証拠甲C13及び弁論の全趣旨によれば
米軍機に対する航空交通管制をすべて国土交通大臣の権限であるとすること
は,米軍機の運航に支障を来すおそれがあるから,日米合同委員会における地
位協定6条1項に基づく合意により,航空路管制業務(計器飛行方式により飛
行する航空機及び特別管制空域等を飛行する航空機に対する管制業務であっ
て,飛行場管制業務,進入管制業務,ターミナル・レーダー管制業務着陸誘導
管制業務以外のものをいう(航空法施行規則199条1項1号)は国土交通)。
大臣が所管し,その余の普天間飛行場に関する管制業務は米軍が行うものとさ
れたことが認められる。そうすると,米軍が,普天間飛行場内の離着陸,普天
間飛行場の管制圏及び進入管制区内の航行については,米軍機のみならず我が
国の航空機も含めてすべて管制し,これから離脱し,又はこれに進入する場合
には,国土交通省の航空路管制と管制の引継ぎを行うこととなっている。
以上のとおり,航空交通管制業務についても,地位協定6条1項に基づき,
基本的に米軍が行うことが日米合同委員会で合意された結果,米軍が,普天間
飛行場内の離着陸,普天間飛行場の管制圏又は進入管制区内の航行について,
管制することとなっているから,このような合意の存在及び内容にかんがみれ
ば,航空法97条をもって,被告に普天間飛行場を離着陸等する米軍機の運航
を制約する権限を付与したものと解することはできない。
したがって,原告らの上記主張も採用することができない。
(5)以上によれば,被告は,米軍の普天間飛行場の管理運営の権限を制約し,
その活動を制限し得るものではないので,本件差止請求は,被告に対してその支
配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものというべきであるから,被告
が原告ら主張の権利侵害状態を除去すべき義務を負っていることを前提とする本
件差止請求に係る原告らの主張は,主張自体失当であるというべきである(最高
裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2
号643頁,最高裁昭和63年(オ)第611号平成5年2月25日第一小法廷
判決・裁判集民事167号下359頁参照。)
3本件差止請求についてのまとめ
以上のとおり,被告は,前記1のとおり,妨害状態を引き起こしているとはいえ
ず,また,前記2のとおり,米軍の普天間飛行場における活動を制限することがで
きる立場にあるとはいえないので,原告ら主張の権利侵害状態を除去する義務を負
,,,うともいえないから本件差止請求にはその余の点について判断するまでもなく
理由がない。
第2普天間飛行場の設置又は管理の「瑕疵」の有無(争点2)について
1はじめに
(1)原告らは,本件損害賠償請求の根拠として,法的には,①国家賠償法1条
1項及び民法719条,②民事特別法1条又は③民事特別法2条を選択的に主張
するところ,いずれの根拠に基づくものであっても,原告ら主張の損害について
は差異を生ずることはないから,これらの根拠のうちのいずれかが認められるの
であれば,その余の根拠につき判断をする必要がないといえる。
(2)普天間飛行場は,前記前提事実1によれば,米軍が占有し,又は管理する
土地の工作物であると認められるので,民事特別法2条の土地の工作物であると
いえる。
(3)ところで,国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造
物が有すべき安全性を欠いている状態をいう。ここにいう安全性の欠如,すなわ
ち,他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは,当該営造物を構成する物的施設
自体に存する物理的,外形的な欠陥ないし不備によって一般的にこのような危害
を生ぜしめる危険性がある場合のみならず,その営造物が供用目的に沿って利用
されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合も含み,また,
その危害は,営造物の利用者に対してのみならず,利用者以外の第三者に対する
それをも含むものと解すべきである。すなわち,当該営造物の利用の態様及び程
度が一定の限度にとどまる限りにおいてはその施設に危害を生ぜしめる危険性が
なくても,これを超える利用によって危害を生ぜしめる危険性がある状況にある
場合には,そのような利用に供される限りにおいて,当該営造物の設置,管理に
,,,は瑕疵があるというを妨げずしたがって当該営造物の設置・管理者において
かかる危険性があるにもかかわらず,これにつき特段の措置を講ずることなく,
また,適切な制限を加えないままこれを利用に供し,その結果第三者に対して現
実に危害を生ぜしめたときは,それが当該設置・管理者の予測し得ない事由によ
るものでない限り,国家賠償法2条1項の規定による責任を免れることができな
いと解される(最高裁昭和51年(オ)第395号同56年12月16日大法廷
判決・民集35巻10号1369頁参照。そして,民事特別法2条が「国の占)
有し,所有し,又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵が
あつたために他人に損害を生じた場合の例により,国がその損害を賠償する責に
任ずる」と規定しており「例により」とは,ある事項について,他の法令の下。,
における制度又は手続を包括的に当てはめて適用することを表現する用語として
用いられるものであるから,民事特別法2条に基づく国の賠償責任についても,
国家賠償法2条1項の規定が包括的に適用することとなるので,民事特別法2条
にいう土地の工作物その他の物件の設置又は管理の瑕疵についても,国家賠償法
2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵と同様の解釈となるというべきである
(最高裁昭和63年(オ)第612号平成5年2月25日第一小法廷判決・訟務
月報40巻3号452頁参照。)
原告ら主張の普天間飛行場の設置又は管理の瑕疵は,普天間飛行場に多数の米
軍機が離着陸等をするに際して発生する本件航空機騒音等が原告らに被害を生ぜ
しめているという点にあるところ,上記のとおり,このような第三者に対する危
害も民事特別法2条の設置又は管理の瑕疵に含まれ,また,物件がその供用目的
に沿って利用されている状況のもとにおいてこれから危害が生ずるような場合も
これに含まれるというべきである。そして,普天間飛行場は,前記前提事実1の
とおり,宜野湾市の中央部に所在し,多数の住民の居住する地域に極めて近接し
ているなど立地条件が劣悪であって,多数の米軍機が離着陸等することにより普
天間飛行場周辺住民に本件航空機騒音による影響を与えることは避けられない状
況にあることからすると,普天間飛行場の供用が第三者に対する関係において違
法な権利侵害ないし法益侵害となる限り,普天間飛行場に民事特別法2条の設置
又は管理の瑕疵があるというべきである(なお,上記の要件のうち,当該営造物
,,,,の設置・管理者において特段の措置を講じまた適切な制限を加えることや
当該設置・管理者の予測し得ない事由によるものであることは,抗弁にすぎない
と解すべきである。。)
(4)そして,普天間飛行場の供用が第三者に対する関係において違法な権利侵
害ないし法益侵害となるかどうかについては,①侵害行為の態様と侵害の程度,
②被侵害利益の性質と内容,③侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内
容と程度等を比較検討するほか,④侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状
況,⑤その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容,効果等の
事情をも考慮し,これらを総合的に考察して判断すべきである(前掲最高裁昭和
56年12月16日大法廷判決,各最高裁平成5年2月25日第一小法廷判決参
照。)
これに対し,原告らは,生活妨害全部及び精神的被害は,身体的被害と同様,
他の要素との比較衡量にはなじまないので,被害の存在を違法性の判定の一要素
とし,侵害行為の態様や侵害行為のもつ公共性の内容と程度などと利益衡量する
受忍限度論を採用する余地はないというべきであると主張するけれども,生活妨
害全部及び精神的被害と身体的被害とは被害の程度を異にする上,身体的被害で
あっても,その被害の内容を他の要素と利益衡量する余地がないとはいい切れな
いから,原告らのこの主張を採用することはできない。
そこで,以下では,2において①本件航空機騒音等の侵害行為の態様と侵害の
程度及び④侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況を,3において②被侵
害利益(原告らの本件航空機騒音等による被害)の性質と内容を,4において③
侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等及び⑤被害の防止に
関する措置の有無及びその内容,効果等の諸事情を順次検討し,5においてこれ
らの事情を総合的に考察した結果,普天間飛行場の供用が第三者に対する関係に
おいて違法な権利侵害ないし法益侵害となるかどうかについて検討する。
2本件航空機騒音の態様と侵害の程度及びその継続の経緯等
(1)航空機騒音の評価方法等
前記前提事実及び括弧内の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
アWECPNLの算出式
WECPNLは,ICAOにおいて昭和44年に国際基準として採択されたECPNL
に1日の時間帯別で騒音暴露による影響に差があるとの考え方から時間帯によ
る重み付けをしたものである。
(ア)WECPNL算出の基礎となるECPNLは,次式のとおり,観測された騒音を
1機ごとにEPNLで表示してそれが平均T秒だけ継続したとし,運航機数がN0
機であったとすれば,1日当たり全騒音量(TotalNoiseExposure)が得ら
れ,それを1日(秒で表示)の期間で平均して求められる(ただし,LはEPN
Lのパワー平均値,Tは10秒とする。0。)
,,。なおICAOが定めるEPNLの算出の手順はおおむね次のとおりである
①定められた地点で離陸又は着陸の騒音を録音する。
②録音波形を0.5秒ごとにサンプリングして,各々1/3オクターブ
分析を行う。
③1/3オクターブスペクトルから0.5秒ごとの知覚騒音レベル(PN
L)を計算する。
④1/3オクターブスペクトルから特異音補正量を求め,③のPNLに加
え純音補正知覚騒音レベル(ToneCorrectedPerceivedNoiseLevel。
以下「PNLT」という)を求める。。
⑤④で求めたPNLTの時間に対する曲線から継続時間補正ファクターDを
求める。その計算式は,次のとおりである。
⑥PNLTM(最大のPNLT)にDを加えたものがEPNLである。
⑦各測定について温度及び経路の補正を行う。
⑧同一地点で最低6回の測定を行い,その90%信頼限界が±1.5dB
以内でなければならない。
(イ)WECPNLは,1日を日中(午前7時から午後7時まで,夕方(午後7)
時から午後10時まで)及び夜間(午後10時から翌日午前7時まで)の3
つの時間帯に分割した上で日中午前7時から午後10時までと夜間午(()(
{)}ECPNLL10log(T×N)/(60×60×24=+100
L10logN39.4=+-10
D=10log(1/T)ΣΔt〔PNLT(k)/10〕-PNLTM
anti-
log
d/Δt
k=0
後10時から翌日午前7時まで)の2分割をする方法もある,日中,夕方。)
及び夜間の運航回数をそれぞれN,N,Nとしたとき,次式によって求めら123
れる(ただし,Lは,1日全機のEPNLの平均である。。)
(甲D86,乙D9)
イ昭和48年環境基準
(ア)政府は,厚生省(当時)生活環境審議会における昭和43年からの審
議結果を受けて,昭和46年5月25日「騒音に係る環境基準について」,
を閣議決定し,公害対策基本法9条の規定に基づき,騒音に係る環境上の条
件について生活環境を保全し,人の健康を保護する上で,維持されることが
望ましい基準として,環境基準を定めた。その環境基準は,療養施設が集合
して設置される地域など特に静穏を要する地域では昼間45ホン(A),朝夕
40ホン(A),夜間35ホン(A),主として住居の用に供される地域では昼間
50ホン(A),朝夕45ホン(A),夜間40ホン(A),相当数の住居と併せて
商業,工業等の用に供される地域では昼間60ホン(A),朝夕55ホン(A),
夜間50ホン(A)とされ,また,道路に面する地域についても独自の基準値
が定められた。
なお,生活環境審議会公害部会騒音環境基準専門委員会の審議の中では,
地域補正について「生活環境の保全という見地からすれば,…一般住宅地,
域の指針値が維持されることが望ましいが,現在の都市騒音の実態,騒音に
関する住民の苦情や,住民に対するアンケート調査結果に地域差がみられる
こと,また国際標準化機構(ISO)の提案において地域差が認められてい
ること等の理由から,地域差を設けることは止むを得ないと考えられる」。
とされていた。
上記環境基準は,航空機騒音,鉄道騒音及び建設作業騒音については,適
WECPNLL10log(N3N10N)39.4=+++-123
用されないものとされている。
そこで,中央公害対策審議会の騒音振動部会特殊騒音専門委員会は,同年
12月18日,東京国際空港及び大阪国際空港空港周辺における航空機騒音
の被害が看過し難い状況にあり,緊急にその対策を講ずる必要があることに
かんがみて「環境保全上緊急を要する航空機騒音対策について当面の措置,
を講ずる場合における指針について(報告」と題する報告書を作成し,そ)
の中で,指針として,①夜間特に深夜における航空機の発着回数を制限し静
穏の保持を図るものとすること,②空港周辺において,航空機騒音が1日の
飛行回数100機から200機として,ピークレベルのパワー平均で90ホ
ン(A)(これは,WECPNL85,NNI(NoiseandNumberIndex。PNLに飛行回
数の補正を加えたものをいう。以下同じ)で55に当たる)以上に相当す。。
る地域について緊急に騒音障害防止措置を講ずるものとするとした。これを
受けて,中央公害対策審議会が,同月27日,上記報告書とほぼ同様の内容
の「環境保全上緊急を要する航空機騒音対策について当面の措置を講ずる場
合における指針について」との答申をした。
そこで環境庁長官当時は運輸大臣当時に対し翌28日環,(),(),,「
境保全上緊急を要する航空機騒音対策について」との勧告をし,その中で,
東京国際空港及び大阪国際空港周辺における航空機騒音による被害が極めて
深刻化し看過し難い状況にあり,このような現状に対処するため,これらの
空港周辺における航空機騒音に係る環境上の条件についての当面の指針等を
定め,指針として,①航空機騒音による空港周辺地域の住民の生活環境上の
被害をできるだけ軽減するようにすることとし,特に夜間・深夜においては
睡眠等が妨げられることのないよう,静穏の保持を図ること,②航空機騒音
がWECPNL85以上に相当する地域については,これにより住居内における日
常生活が著しく損なわれることがないようにすることなどを内容とするとと
もに,測定方法等や指針達成のための方策を明らかにした。
(甲E1の1から4まで,E4から8まで,9の1,E16)
(イ)中央公害対策審議会の騒音振動部会特殊騒音専門委員会は,昭和48
年4月12日,航空機騒音に係る諸対策を総合的に推進するに当たっての目
標となるべき環境基準の設定に際し,その基礎となる指針について検討した
結果「航空機騒音に係る環境基準について(報告」と題する報告書を作成,)
し,その中で,航空機騒音に係る諸対策を推進するに当たっての目標となる
べき環境基準の設定につき,評価単位として「WECPNL=dB(A)+10logN10
-27」の式により求められるWECPNLを用いること,指針値をWECPNL70以
下(商工業の用に供される地域においては,WECPNL75以下)とすること,
その他騒音測定方法,指針値の達成期間,指針値達成のための施策を採るこ
と等を指摘した。同委員会は,航空機騒音に係る環境基準設定の基礎となる
指針の根拠等について,横田,大阪等の空港周辺における住民被害の調査等
の資料から判断すると,NNIでおおむね30~40以下であれば航空機騒音
による日常生活の妨害,住民の苦情がほとんど表れないことなどから,環境
基準の指針値としてはその中間値NNI35以下であることが望ましいけれど
も,航空機空機騒音については,その影響が広範囲に及ぶこと,技術的に騒
音を低減することが困難であることその他輸送の国際性,安全性等の事情が
あるので,これらの点を総合的に勘案し,航空機騒音の環境基準としてはWE
CPNL70(WECPNL70は,機数200機の場合ほぼNNI40に,25機の場
合NNI35に相当する)以下とすることが適当であると判断されることや,。
一般の騒音の環境基準においても,地域類型別に基準値が定められているこ
とから,航空機騒音についても地域差を設けることが適当であると考えられ
ることを明らかにしている。
これを受けて,中央公害対策審議会は,環境庁長官(当時。以下このイに
おいて同じ)に対し,同年12月6日,同報告書を踏まえた答申をした。。
(甲E3,9の1,E16)
(ウ)環境庁長官は,前記(イ)の答申を検討した結果,昭和48年12月
27日,昭和48年環境基準を告示し,公害対策基本法9条による騒音に係
る環境上の条件につき,生活環境を保全し,人の健康の保護に資する上で維
持することが望ましい航空機騒音に係る基準(環境基準)及びその達成期間
を定めた。
その要旨は,次のとおりである。
①環境基準は,専ら住居の用に供される地域を類型Ⅰとし,Ⅰ以外の地域
であって通常の生活を保全する必要がある地域を類型Ⅱとし(各類型を当
てはめる地域は,都道府県知事が指定する,地域の類型ごとに,類型Ⅰ。)
,(,では基準値W値70以下と類型Ⅱでは基準値W値75以下とする以下
この(ウ)において,これらの基準値を「環境基準値」という。。)
②環境基準値の測定は,原則として連続7日間行い,暗騒音より10dB以
。,上大きい航空機騒音のピークレベル及び航空機の機数を記録する測定は
屋外で行い,その測定点は,当該地域の航空機騒音を代表すると認められ
る地点を選定する。
③環境基準値の測定時期としては,航空機の飛行状況及び風向等の気象条
件を考慮して,測定点における航空機騒音を代表すると認められる時期を
選定する。
④環境基準値の航空機騒音の評価は,②のピークレベル及び機種から次の
算式により1日ごとのW値を算出し,そのすべての値をパワー平均して行
う。
,,dB(A)とは1日のすべてのピークレベルをパワー平均したものをいい
Nとは,午前零時から午前7時までの間の航空機の機数をN,午前7時か1
ら午後7時までの間の航空機の機数をN,午後7時から午後10時までの2
WECPNLdB(A)10logN27=+-
間の航空機の機数をN,午後10時から午後12時までの間の航空機の機3
数をNとした場合における次により算出した値をいう。4
⑤環境基準値の測定機器は,日本工業規格C1502に定める指示騒音計
若しくは国際電気標準会議pub/179に定める精密騒音計又はこれら
に相当する騒音機器を用いるものとし,この場合において,聴覚補正回路
,,(。)はA特性としまた動特性騒音計の指針の動く速さを表すものをいう
は緩(Slow)とする。
⑥環境基準の達成期間について,公共用飛行場等の周辺地域においては,
,。次の飛行場の区分ごとに次の期間で達成され又は維持されるものとする
新設飛行場並びに第3種空港及びこれに準ずる飛行場直ちに
第2種空港A5年
(,福岡空港を除く第2種空港B及び新東京国際空港10年以内ただし
5年以内にW値を85未満とし,又はW値が85以上の地域においては屋
内で65以下とする)。
新東京国際空港を除く第1種空港及び福岡空港10年を超える期間内
に可及的速やかに(ただし,5年以内に,W値を85未満とし,又はW値
が85以上の地域においては屋内で65以下とし,また,10年以内に,
W値を75未満とし,W値が75以上の地域については屋内で60以下と
する)。
⑦環境基準の達成期間につき,自衛隊等が使用する飛行場の周辺地域にお
いては,平均的な離着陸回数及び機種並びに人家の密集度を勘案し,当該
飛行場と類似の条件にある⑥の飛行場の区分に準じて同環境基準が達成さ
れ,又は維持されるように努める。
⑧航空機騒音の防止のための施策を総合的に講じても,⑥の達成期間で環
()NN3N10NN=+++2314
境基準を達成することが困難と考えられる地域においては,当該地域に引
き続き居住を希望する者に対し家屋の防音工事等を行うことにより環境基
準が達成された場合と同等の屋内環境が保持されるようにするとともに,
極力環境基準の速やかな達成を期する。
(乙E1)
(エ)沖縄県調査委員会は,環境基準方式について,ICAOの提唱するWE
CPNLに対して,次のような仮定を置くことで導かれていると指摘する。
①ICAOのWECPNLでは,1回の飛行ごとに航空機騒音のPNLTを求めるこ
とになっている。これに対し,環境基準方式では,これを当該航空機騒音
のレベル変動の最大値dB(A)Mから換算するために,次式を仮定している。
PNLT=dB(A)M+13
②ICAOのWECPNLの計算に必要なEPNLを算出するための継続時間の補正
に関して,環境基準方式では,規準化時間を10秒と仮定している。
③ICAOのWECPNLの方法では,昼間,夕方,夜間の各時間帯ごとのECPN
Lに時間帯補正を行ってWECPNLを計算する。これに対し,環境基準方式で
は,各時間帯の飛行回数に重み付けを行うことで求める。
④ICAOのWECPNLの方法では,窓の開閉の効果を考慮するために,気温
,,に基づいて1か月のうち20度以上の時間が100時間未満のとき-5
25.6度以上が100時間以上のとき+5を補正する。しかし,環境基
準方式ではこの補正を行わない。
⑤環境基準方式では,最終的に得られた式の定数項の値(-26.365)を危
険側(-27)に丸めている。
(甲D1)
(オ)航空機騒音の測定
環境庁大気保全局(当時)は,昭和63年6月,種々の飛行場について航
空機騒音の監視測定を実施するための測定方法やデータ整理の方法などにつ
いて「航空機騒音監視測定マニュアル」を作成した。
その中には,次のような記述がある。
a飛行場の種類と飛行形態について,航空機騒音の状況は,飛行場の種類
や機種,運用形態などによって大きく異なる。民間空港では,長期間にわ
たりほぼ決まったスケジュールで大型ジェット旅客機などが離着陸を繰り
返し,1日当たりの離着陸回数や運航の手順,飛行経路もおおむね決まっ
ているのに対し,自衛隊や米軍が運用する飛行場では,戦闘機などが飛行
訓練を行うなどのため,運航回数や飛行経路の変化が極端に大きいことが
あり,また,夜間の飛行もある。このような飛行場の種類や機種,運用形
態の違いを考慮して飛行場を3つのタイプに分類して測定点の選び方や測
定方法などを記述する。
タイプ1の飛行場は,大型のジェット機やプロペラ機が定期航空運送事
業を目的として長期間にわたって定期的に離着陸する公共用飛行場であ
り,着陸のための進入方式も,小さな空港において有視界飛行方式で着陸
することがあることを除くと,計器着陸方式又はそれに準じた着陸方式で
されることが多く,飛行経路のばらつきは小さい。
タイプ2の飛行場は,自衛隊や米軍の戦闘機,ジェット輸送機,プロペ
ラ機などが飛行する飛行場であり,着陸のための進入方式も,誘導着陸方
式又は有視界飛行方式で行われる。普天間飛行場も,タイプ2の飛行場に
該当すると位置付けられる。
タイプ3の飛行場は,セスナなどの小型プロペラ機やヘリコプターが主
に離着陸する飛行場である。ヘリコプターによる騒音は,固定翼の飛行機
と比べると,飛行形態や騒音に関する特徴に異なる点がある。すなわち,
①ヘリコプターによる騒音の場合は,回転翼から発生する騒音の寄与が大
きいが,その指向性はジェット機なとと異なる。②ヘリコプターによる騒
音は,ジェット機と比べ騒音の大きさが小さいが,騒音の継続時間が長い
ことが多い。③ヘリコプターの種類によって異なるが,衝撃性の極めて強
いブレードスラップ音が聞こえることが多い。④ヘリコプターは,飛行の
自由度が極めて大きい。飛行場から離れると水平飛行をするが,その巡航
高度は固定翼機と比べてかなり低く,また,空中で静止することもある。
b測定点と測定期間については,航空機騒音を測定するに当たっては,飛
行場の種類によらず,原則として,通年測定点と短期測定点の2種類の測
定点を設け,年間を通じての総合的な騒音暴露を評価し,監視する。飛行
回数や飛行形態の変化が大きい上記タイプ2の飛行場では,通年測定点を
設けることは不可欠である。通年測定点の配置については,飛行場の運用
状況を把握するためには,少なくとも滑走路の延長上の飛行経路直下に近
。,,いところに設けることが望ましいもっとも上記タイプ2の飛行場では
航空機の飛行状況が複雑であり,滑走路上空で周回飛行を繰り返すなどの
特殊な飛行形態が多いため,滑走路端でも全ての飛行機の飛行状況を観測
できるとは限らない。短期測定については,上記タイプ2の飛行場は,飛
行回数や飛行形態の変化が大きいので「特殊飛行場周辺における航空機,
騒音の判定手法について」に基づいて,年間平均のWECPNLを推定すること
を基本とする。
なお,同判定手法は,特殊飛行場のうち,主としてジェット機が就航す
る飛行場に適用するものであり,WECPNLの平均値は1週間を周期として変
動する場合が多いなどの特性を踏まえ,航空機騒音の測定・評価方法につ
いては「飛行場ごとに基準地点を設定し,基準地点においては年間連続,
測定を実施する。任意測定地点におる測定は原則として2週間としWECPNL
の2週間平均値(パワー平均)を求め,同じ期間の基準地点におけるWECP
NL(2週間平均値)との差を算出する。基準地点における年間平均WECPNL
に上で計算した差を加えて…任意測定地点における平均WECPNLの推定値と
する」などとする。。
(乙E4)
ウ防衛施設周辺における航空機騒音コンターに関する基準
(ア)民間空港においては,民間航空機が,毎日定期的に運航しており,飛
行コースも一定であり,また,飛行回数にさほど極端な増減がなく,1週間
の飛行スケジュールは通常さほど変化がないのが常態である。
これに対し,防衛施設等の飛行場においては,自衛隊等の航空機が訓練の
必要性等のため運航しており,飛行コースが一定しておらず,また,飛行回
,,数も集中して多く飛行する日がある反面ほとんど飛行しない日があるなど
その運航状況は極めて不定期で,1日の飛行機数に変動が大きい。
(弁論の全趣旨)
()(。。),,イ防衛施設庁当時以下このウにおいて同じは昭和52年ころ
社団法人日本音響材料協会に対し「演習場周辺砲撃音等を含む防衛施設周,
辺騒音調査方法の検討」を委託し,昭和52年5月,防衛施設周辺騒音調査
。,「」研究委員会が発足した同委員会は防衛施設周辺騒音コンター作成基準
の適用方法等を検討項目として検討した結果,昭和53年3月「防衛施設,
周辺騒音調査研究報告書」をまとめた。
,「」,同委員会は防衛施設周辺騒音コンター作成基準の適用方法について
昭和51年度に提案された方法が,民間空港に関して環境庁(当時)及び運
輸省(当時)の通達によって実施されている方法と異なる体裁を持つことか
ら,適用方法の細部に疑義の生じないよう検討を加えた。そして,同委員会
は,同報告書において,同委員会副委員長であり日本大学理工学部教授であ
る木村翔が,防衛施設周辺に関する住民反応を直接面接方式により有効標本
数1245の規模で整理検討している結果として「防衛施設のように1日,
の飛行機数に変動がある場合には,1年間などの一定期間内の平均機数より
も,1日単位で数多く飛行した日を基準にしたWECPNLが住民反応に比例す
。」,,「。」るまた住民反応は離着陸方向別に大きい方のWECPNLで反応している
などとあることを踏まえて,昭和51年に作成した防衛施設周辺における航
空機騒音コンター作成基準に修正を加え「防衛施設周辺における航空機騒,
音コンター作成基準(昭和52年」を明らかにした。この昭和52年度版)
においては,①「特に防衛施設の近傍において離着陸方向別の大きい方の評
価値を用いる,②「1年間の飛行実績を用い,年間平均でなく,1日の飛。」
行回数の累積度数90%の飛行回数を用い住民反応に合わせる,③「機種。」
別,飛行態様別,飛行経路別に航空機騒音のピークレベルを求めるほかに継
続時間を測定して補正し,また着陸音補正をも含めるなどICAOの提案の
趣旨を積極的に採り入れ,民間空港の場合に単純化されている合成方法にお
いても妥当な方式をICAOの提案に基づき導入する」などの基本的立場。
としつつ,合理的な修正をしたとする。その修正点としては,騒音評価値の
算出のうち飛行回数の決定において,離着陸方向別に分けて騒音コンターを
作成する場合と,離着陸方向別に分けないで騒音コンターを作成する場合の
二者に分け,住民保護の立場から主として防衛施設の近接した地域では前者
の場合を適用し,遠方の地域では離着陸方向の影響が小さくなり,また民間
空港の場合を比較も可能なように後者を用いることができるように配慮され
るなどが含まれていた。
なお,この昭和52年度版においては,飛行回数の決定において,離着陸
方向別に分けて騒音コンターを作成する場合には,原則として最新の1年間
のデータをもとにして,離着陸方向別に,飛行した日を対象とし,1日の総
飛行回数を少ない方から累積度数曲線を求め,累積度数90%に相当する飛
行回数を,その防衛施設における離着陸方向別の1日の総飛行とした後,こ
れに離着陸方向別年間総飛行回数の機種別,飛行態様別,飛行経路別の割合
を適用して,離着陸方向別の機種別,飛行態様別,飛行経路別の1日の標準
飛行回数を決定するとする一方,離着陸方向別に分けないで騒音コンターを
作成する場合には,原則として最新の1年間のデータをもとにして,飛行し
ない日も含め,1日の総飛行回数を少ない方から累積度数曲線を求め,累積
度数90%に相当する飛行回数を,その防衛施設における1日の総飛行回数
とした後,これに年間総飛行回数の機種別,飛行態様別,飛行経路別の割合
を適用して,機種別,飛行態様別,飛行経路別の1日の標準飛行回数を決定
するとする。
同委員会は,同報告書において,このように,飛行回数の決定において,
前者の場合では「飛行した日を対象と」し,後者の場合では「飛行しない,
日も含め」ているのは,後者の場合において民間空港の場合との相互比較の
可能性を配慮したことによっていると説明している。
また,同委員会は,同報告書において,防衛施設周辺における航空機騒音
コンター作成のための標準的な調査方法,騒音評価値の算出方法,騒音コン
ターの作成方法などについて示した「防衛施設周辺における航空機騒音コン
ター作成実施要領」も明らかにした。
(甲C10)
(ウ)防衛施設庁は,前記(イ)の「防衛施設周辺騒音調査研究報告書」を
受けて,昭和55年10月2日「防衛施設周辺における航空機騒音コンタ,
ーに関する基準」を定めた。
その要旨は,次のとおりである。
,。航空機騒音評価値の算出は次の①から③までに基づき・により算出する
,,,①飛行回数の決定代表的な航空機の飛行について機種別飛行態様別
飛行経路別に調査した原則として最近1年間の日別,時間別飛行回数の飛
行回数調査結果を基にして,次により飛行回数を決定する。
1日の総飛行回数を「N=N+3N+10(N+N)」の式により算出する。飛2314
,,行しない日も含め1日の総飛行回数の少ない方から累積度数曲線を求め
累積度数90%に相当する飛行回数を,その防衛施設における1日の標準
総飛行回数とする。標準的飛行回数に1年間の総飛行回数の機種別,飛行
態様別,飛行経路別の割合を適用して,その防衛施設における機種別,飛
行態様別,飛行経路別の1日の標準飛行回数を決定する。
②継続時間の補正各騒音測定点の航空機騒音の継続時間補正値は,次の
式により算出する。
ⅰ飛行中の場合(滑走中を含む)
Tは,各騒音測定点における機種別,飛行態様別,飛行経路別の継続時j
間の平均値(秒)である。
ⅱ地上でエンジン調整中の場合(飛行中でピークレベルがほぼ平坦に連
続する場合を含む)。
③着陸音の補正各騒音測定点における機種別,飛行態様別,飛行経路別
のピーク騒音レベルのパワー平均値のうち,ジェット機の着陸時のものと
確認できるものについては,着陸音補正として2dB(A)を加える。
,,④航空機騒音評価値の算出各騒音測定点の航空機騒音の評価値はまず
各騒音測定点における機種別,飛行態様別,飛行経路別の1日当たりの騒
音暴露量(TNEL)を次の式により算出する。j
ここで,dB(A)は機種別,飛行態様別,飛行経路別のピークレベルのパj
ワー平均値であり,Nは機種別,飛行態様別,飛行経路別の1日の標準飛j
行回数,Dは③で求めた継続時間の補正値である。j
次に,各騒音測定点における航空機騒音の評価は,次の式で算出した値
(W値)により行う。
TNELdB(A)10logND23jj10jj=+++
WECPNL(10log1023)27=Σ--10
(TNELj/10)
D10log(T/20)j10j=
D10log(T/10)j10j=
騒音コンターは,各騒音測定地点において,上記④により算出したW値を
用い,W値70以上の地域について,5WECPNLごとに同一のW値を結んだ線
とする。
(甲C10,11の1,2)
(エ)沖縄県調査委員会は,防衛施設庁方式と環境基準方式との違いについ
て,次のとおり指摘する。
①標準飛行回数につき,環境基準方式では,1日ごとのWECPNLを年間を通
じてパワー平均してWECPNLの年間代表値を求める。これは,標準総飛行回
数として,ピーク騒音レベルdB(A)に応じた重み付けをした上で,飛行回
数の平均値を求めたことに相当する。
他方,防衛施設庁方式では,標準総飛行回数として90パーセンタイル
値を採用する。これは,飛行回数の日変動が大きい特殊空港については,
飛行回数の平均値を用いてWECPNLの年間代表値を求めるよりも,飛行回数
の年間変動(飛行のない日を除く)の80%レンジの上端値(90パー。
センタイル値)を用いてWECPNLの年間代表値を求めることにより,特殊空
港と民間空港周辺における住民反応の整合性が高くなるとの前記(イ)木
村翔らの報告に沿っている(ただし,標準総飛行回数の算出において,木
村翔らは飛行のない日を除いているのに対して,防衛施設庁方式では飛行
のない日を含めている点で異なる。。)
②騒音の継続時間の補正につき,環境基準方式では,実際の継続時間にか
かわらず一定値を補正するが,防衛施設庁方式では,継続時間に応じた補
正値を加算しており,その補正値も飛行中とエンジン調整中によって異な
っている。このため,防衛施設庁の算出方法は環境庁の方法よりもICA
Oが提唱したWECPNLの定義に近い。
③着陸音につき,環境基準方式では補正を行わないが,防衛施設庁方式で
は,ジェット機の着陸音に対して2dBの補正を行っている。
さらに,沖縄県調査委員会は,防衛施設庁方式と環境基準方式との違いか
ら,次のような指摘をする。
④防衛施設庁方式は,環境基準方式と異なり,上記①のとおり,標準総飛
行回数の算出につき飛行回数の90パーセンタイル値を用いる。そこで,
特殊空港周辺の無人測定局の実測値から,騒音の継続時間の補正とジェッ
ト機の着陸音補正を行わずに,飛行回数の90パーセンタイル値からWECP
NLを求めると,3程度の差となり,また,WECPNLの年間変動の90パーセ
ンタイル値からWECPNLを求めると,空港や測定点によって若干の違いはあ
るものの,ほぼ3~5の範囲内にある。そこで,環境基準方式によるW値
は,防衛施設庁方式によるW値よりも,3~5程度過小評価することとな
ると考えられる。
⑤エンジン調整音が主となる測定点で試算すると,補正によってWECPNLが
環境基準方式より5程度高くなる場合がある。環境基準方式では,航空機
騒音をレベル変動のピーク値のみで評価するので,エンジン調整音のよう
な継続時間の長い騒音は相対的に過小評価されることとなるので,防衛施
設庁方式のように,継続時間の補正を行うのが望ましい。
(甲D1,2)
(2)普天間飛行場周辺における生活環境整備法に基づく区域指定等
前記前提事実及び括弧内の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
ア防衛施設庁(当時。以下このアにおいて同じ)は,昭和52年12月,株。
式会社アコーテックに委託して,普天間飛行場及び嘉手納飛行場の周辺127
か所において航空機騒音調査を実施した。
,,普天間飛行場周辺の調査にあっては同月7日から同月11日までの5日間
事前調査を行った後,翌12日から23日までの12日間,本調査を行った。
その際,普天間飛行場の滑走路両端等に基準測定点を設置し,常時測定員を配
置し,24時間連続して,騒音発生時刻,機種,飛行方法,騒音レベル,継続
時間,気象状況等を観測した。また,一般測定点においても,午前7時から午
後7時までの間連続して,飛来する航空機の機種,機数,飛行経路,時刻等の
観測・記録と当該航空機に係る騒音レベルと継続時間を観測した。さらに,約
半数の一般測定地点については,基準測定点の調査データと対比するため,夜
間等(午後7時から翌日午前7時まで)の測定を行い,また,昼間測定も重複
実施した。これらの測定方法,使用騒音計等は,すべて定められた基準に適合
しているものであった。
そして,普天間飛行場周辺における飛行実態を代表するとみられる標準期間
()(),として同月13日火曜日から同月19日月曜日までの1週間を選定し
当該期間の1日当たりの機種別・使用滑走路別・時間帯別の標準飛行機数を算
。,,,出したその結果上記期間中の各日の総飛行機数は同月13日が158機
同月14日が349機,同月15日が142機,同月16日が97機,同月1
,,。,7日が37機同月18日が62機同月19日が128機であった被告は
上記各日の総飛行機数を基に累積度数曲線を作成し,その少ない方から数えて
累積度数90%に相当する1日の標準飛行回数を175機と算出した。
そして,防衛施設庁は,上記1日の標準飛行回数のほか,各地点のdB(A)を
,(。)算出し着陸音補正ジェット機の着陸時の騒音について2dB(A)を加算する
及び継続時間補正(継続時間の補正は10logT/20による)を行うなどして,普。
天間飛行場周辺地域のW値を求め,これに基づき騒音コンター図を作成し,昭
和56年7月18日及び昭和58年9月10日,普天間飛行場周辺について,
順次,昭和56年告示又は昭和58年告示として普天間飛行場に係る生活環境
整備法所定の第1種区域である本件コンターを指定した。
(甲D1,弁論の全趣旨)
イ沖縄県知事は,昭和63年2月16日,普天間飛行場周辺における昭和48
年環境基準所定の地域類型を告示した。
次の図の地域類型指定を当てはめる境界として示した点線で囲まれた地域か
ら普天間飛行場の敷地,都市計画法(昭和43年法律第100号)8条1項1
号に掲げる工業専用地域,緩衝緑地帯,山林,原野及び海上等を除いた地域の
うち,類型Ⅰとして,同号に掲げる第1種低層住居専用地域,第2種低層住居
専用地域,第1種中高層住居専用地域及び第2種中高層住居専用地域並びに同
号に掲げる用途地域として定められていない地域が,類型Ⅱとして,同号に掲
,,,,,げる第1種住居地域第2種住居地域準住居地域近隣商業地域商業地域
準工業地域及び工業地域が指定された。
(甲C17から20まで,59,60)
(3)普天間飛行場周辺地域における航空機騒音の実態
前記前提事実及び括弧内の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
ア普天間飛行場に離着陸する米軍機の種類及び飛行経路
(ア)航空機の種類
a常駐機
普天間飛行場には,平成15年3月時点で,次の米軍機の合計71機が
常駐している(以下,普天間飛行場に常駐している米軍機を「常駐機」と
いう。。)
(a)ヘリコプター(合計56機)
①CH-46中型強襲ヘリ(24機)
②CH-53大型輸送ヘリ(15機)
③AH-1軽攻撃ヘリ(10機)
④UH-1指揮連絡ヘリ(7機)
(b)固定翼機(合計15機)
①KC-130空中給油機(12機)
②C-12後方支援機(2機)
③T-39訓練機(1機)
b外来機
常駐機以外であって,普天間飛行場に飛来する航空機(以下「外来機」
という)には,次のようなものがみられる。。
(a)ヘリコプター
①HH-3捜索・救難ヘリ
②HH-60捜索・救難ヘリ
(b)ヘリコプター以外
①C-5戦略重量輸送機
②C-141空輸機
③KC-135空中給油機
④P-3対潜哨戒機
⑤FA-18戦闘・攻撃機
⑥F-15戦闘機
⑦AV-8垂直・短距離離着陸攻撃機
⑧A-4攻撃機
(甲C12,13,42,46)
(イ)飛行経路
a宜野湾市基地政策部基地渉外課は,職員が宜野湾市役所庁舎3階から普
天間飛行場を離着陸等する航空機の飛行経路を適宜目視にて確認した結果
に,b以下の基地ボランティアからの報告結果と併せて検討し,次の図の
とおり,飛行ルートを図面にまとめた。その結果,同課では,ヘリコプタ
ーの普天間飛行場への進入出方向は8つあると分析している。
(甲B7,C53,証人S1)
b宜野湾市が募集した基地監視ボランティアは,平成16年3月から平成
17年4月まで,普天間飛行場を離着陸等する航空機の飛行経路を監視し
た結果を随時報告している。
その概要は,次のとおりである。
①平成16年2月27日から同年3月31日まで
平成16年2月27日から同年3月31日まで常駐機につき308
機,外来機につき58機の飛行が確認された。報告された145件の飛
行経路を集約した結果は,次の図のとおりである。
このように,滑走路北東端の野嵩方面や,普天間飛行場東シナ海側の
喜友名,大山,真志喜,大謝名方面に多くが飛行しているほか,普天間
飛行場周辺を周回するように飛行しているものもある。
②平成16年4月1日から同月30日まで
平成16年4月1日から同月30日まで常駐機につき462機,外来
機につき60機の飛行が確認された。報告された101件の飛行経路を
集約した結果は,次の図のとおりである。
このように,滑走路北東端の野嵩方面,普天間飛行場の東シナ海側の
喜友名,大山,真志喜,大謝名方面に多くの飛行がみられる。
③平成16年5月1日から同月31日まで
平成16年5月1日から同月31日まで常駐機につき120機,外来
機につき48機の飛行が確認された。報告された34件の飛行経路を集
約した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の新城,喜友名,大山,真志
喜,大謝名方面に多くの飛行がみられる。
④平成16年6月1日から同月30日まで
平成16年6月1日から同月30日まで常駐機につき499機,外来
機につき23機の飛行が確認された。報告された70件の飛行経路を集
約した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の新城,喜友名,大山,真志
喜,大謝名方面に多くの飛行がみられる。
⑤平成16年7月1日から同月31日まで
平成16年7月1日から同月31日まで常駐機につき350機,外来
機につき29機の飛行が確認された。報告された59件の飛行経路を集
約した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の新城,喜友名,大山,真志
喜,大謝名方面に多くの飛行がみられる。
⑥平成16年8月1日から同月31日まで
平成16年8月1日から同月31日まで常駐機につき131機,外来
機につき33機の飛行が確認された。報告された34件の飛行経路を集
約した結果は,次の図のとおりである。
これによれば,普天間飛行場の東シナ海側の喜友名,大山,真志喜,
大謝名方面に多くの飛行がみられる。
⑦平成16年9月1日から同月30日まで
平成16年9月1日から同月30日まで常駐機につき24機,外来機
につき17機の飛行が確認された。報告された22件の飛行経路を集約
した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の喜友名,大山,真志喜,大
謝名方面に飛行がみられる。
⑧平成16年10月1日から同月31日まで
平成16年10月1日から同月31日まで常駐機につき46機,外来
機につき9機の飛行が確認された。報告された23件の飛行経路を集約
した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の新城,喜友名,大山,真志
喜,大謝名方面に飛行がみられる。
⑨平成16年11月1日から同月30日まで
平成16年11月1日から同月30日まで常駐機につき126機,外
来機につき34機の飛行が確認された。報告された34件の飛行経路を
集約した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の大山,真志喜,大謝名方面
に飛行がみられる。
⑩平成16年12月1日から同月31日まで
平成16年12月1日から同月31日まで常駐機につき42機,外来
機につき106機の飛行が確認された。報告された33件の飛行経路を
集約した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の大山,真志喜,大謝名方面
に飛行がみられる。
⑪平成17年1月1日から同月31日まで
平成17年1月1日から同月31日まで常駐機につき14機,外来機
につき144機の飛行が確認された。報告された28件の飛行経路を集
約した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の大山,真志喜,大謝名方面
に飛行がみられる。
⑫平成17年2月1日から同月28日まで
平成17年2月1日から同月28日まで常駐機につき78機,外来機
につき21機の飛行が確認された。報告された19件の飛行経路を集約
した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の大山,真志喜,大謝名方面
に飛行がみられる。
⑬平成17年3月1日から同月31日まで
平成17年3月1日から同月31日まで常駐機につき45機,外来機
につき41機の飛行が確認された。報告された29件の飛行経路を集約
した結果は,次の図のとおりである。
このように,普天間飛行場の東シナ海側の喜友名,大山,真志喜,大
謝名方面に飛行がみられる。
(乙D63)
イ沖縄県調査委員会による調査結果
沖縄県調査委員会は,平成9年9月から平成10年8月末までの1年間(た
だし,下記大山測定局については,平成10年9月から同年11月末までの期
間,県等測定局並びにいずれもW値70以上75未満の区域にある愛知測定)
局,我如古測定局,宜野湾測定局及び大山測定局における航空機騒音測定結果
を集計し,環境基準方式のW値とLdnについて,年間最大値,98パーセンタ
イル値,90パーセンタイル値,エネルギー平均値を算出し,また,継続時間
補正や着陸音補正を行い,飛行回数の年間90パーセンタイル値を用いて沖縄
県調査委員会においてできる限り防衛施設庁方式に沿って計算したとする沖縄
県調査施設庁方式近似W値を算出した。
その結果は,次の表のとおりである(表中の「騒音コンター」欄の数値は本
。,「」「」,「」,「」,件コンターのW値を示すまたWECPNL欄の最大98%90%
「平均「施設庁」は,順次,年間最大値,98パーセンタイル値,90パー」,
センタイル値,エネルギー平均値,沖縄県調査施設庁方式近似W値を示し,単
。「」「」,「」,「」,「」,,位はW値であるLdn欄の最大98%90%平均は順次
年間最大値,98パーセンタイル値,90パーセンタイル値,エネルギー平均
値を示し,単位はdBである。。)
さらに,沖縄県調査委員会は,沖縄県調査施設庁方式近似W値と本件コンタ
ーのW値との対応関係を検討した(なお,沖縄県調査委員会は,この対応関係
を検討するに当たり,平成10年4月以降に測定を開始した大山測定局を除外
している。その結果は,次の図のとおりである(縦軸は沖縄県調査施設庁方。)
式近似W値,横軸は本件コンターのW値をそれぞれ示す。。)
騒音測定
コンター日数最大98%90%平均施設庁最大98%90%平均
野嵩80-85350888380778173686561
愛知70-75331767370667161585551
我如古70-75356767168636962565349
上大謝名80-85279969187838878746966
新城75-80296888076737771666258
宜野湾70-75315767572677261595753
真志喜75-80342807674707464625955
大山70-7579737370657058575551
WECPNLLdn測定局
この図のうち,●が普天間飛行場周辺
に設置された測定局における沖縄県調査
施設庁方式近似W値である(なお,○は
嘉手納飛行場周辺における測定結果を指
す。そして,網のかかった部分にプロ。)
ットされている沖縄県調査施設庁方式近
似W値は,本件コンターのW値と整合し
ていることになるところ,沖縄県調査委
,,()員会は沖縄県調査施設庁方式近似W値が県上大謝名測定局この図のF4
では沖縄県調査施設庁方式近似W値が本件コンターのW値よりも高い数値とな
っていることを除き,本件コンターのW値と比較的よく一致しているとの結論
を導いている。
(甲D1)
ウ固定測定局点における測定結果
(ア)固定測定局点の所在地等
沖縄県は,平成9年から平成10年にかけて,次の表の①県野嵩測定局,
②愛知測定局,③我如古測定局,④県上大謝名測定局,⑤県新城測定局,⑥
宜野湾測定局,⑦市真志喜測定局及び⑧大山測定局の各航空機騒音測定局に
ついて,自動監視測定システムを導入し,かつ,嘉手納飛行場周辺地域等の
測定局も含め電話回線により同県文化環境部環境保全課内の測定本部とオン
。,,ライン化する常時測定局として整備したこれらの常時測定局はいずれも
航空機識別センサーを内蔵しており,航空機が発する騒音値と電波(トラン
スポンダ信号)を同時に観測することにより航空機騒音の判別をすることが
可能となっている。
これらの常時測定局のうち,県野嵩測定局,愛知測定局,我如古測定局及
び県上大謝名測定局にあっては平成9年4月1日から,県新城測定局,宜野
湾測定局及び市真志喜測定局にあっては平成9年9月1日から,大山測定局
,,にあっては平成10年9月8日からオンライン化された常時測定局として
次の測定条件を満たす本件航空機騒音について測定している。
①騒音値が暗騒音レベルより10dB(A)以上大きいもの(ただし,平成1
0年度については「およそ+10dB(A),平成11年度から平成14年度」
までは「騒音値が暗騒音レベルをおよそ+5~10dB(A)超えるもの)」
②騒音が5秒以上継続するもの
③航空機騒音識別センサーにより航空機が発したトランスポンダ応答信号
電波を受信したもの
他方,防衛施設庁(当時)も,昭和60年に国新城測定点(№1,国大)
謝名測定点(№2)に,平成12年に宜野湾測定点(№3)に,平成13年
に大山測定点(№4)に,それぞれ測定点を設置し,常時,70dB(A)以上
の本件航空機騒音を測定している。
上記各測定局及び測定点の所在地と普天間飛行場との位置関係は,次の図
のとおりである。
№測定局名設置場所(宜野湾市)
告示
W値
地域
類型
設置年月日管理者
①野嵩野嵩一区公民館80Ⅰ平成9年3月1日沖縄県
②愛知十九区公民館-Ⅱ平成9年3月1日沖縄県
③我如古宜野湾市民図書館-Ⅰ平成9年3月1日沖縄県
④上大謝名民間会社80Ⅰ平成9年3月1日沖縄県
⑤新城普天間中学校75Ⅰ平成9年3月1日沖縄県
⑥宜野湾宜野湾区公民館-Ⅰ平成9年3月1日沖縄県
⑦真志喜真志喜公民館75Ⅰ平成9年9月1日宜野湾市
⑧大山民間会社-Ⅱ平成10年9月8日沖縄県
(甲C14から20まで,37,38,59,60,乙C2から4まで,9から11ま
で)
(イ)県等測定局における騒音測定結果
a県野嵩測定局(W80区域)
(a)最高音圧レベル
県野嵩測定局における平成11年度から平成17年度までの最高音圧
レベルの推移は,次のグラフのとおりである。
最高音圧レベルは,この7年間では,112.0dB(A)(平成12年
度)から119.0dB(A)(平成13年度)までの間を推移しており,
同7年間の数値を単純平均すると,約114.8dB(A)である。
最高音圧レベルは,平成13年度から平成15年度にかけて緩やかに
低下した後,平成16年度に上昇している。
(b)1日平均騒音発生回数及び騒音継続累積時間
県野嵩測定局における平成9年度から平成17年度までの1日平均の
騒音発生回数及び騒音継続累積時間の推移は,次のグラフのとおりであ
る。
最高音圧レベルの推移(野嵩)
115.0
112.0
119.0
115.8
112.6
115.8
113.2
90.0
95.0
100.0
105.0
110.0
115.0
120.0
125.0
130.0
H11H12H13H14H15H16H17
年度
(H:平成)
dB(A)
1日平均騒音発生回数と累積時間(野嵩)
年度(H:平成)
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
累積時間(分:秒)05:5813:1216:0618:3916:3117:2617:0111:0414:47
発生回数(回/日)23.028.832.834.129.631.429.919.525.6
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
この9年間では,1日平均の騒音発生回数は,19.5回(平成16
年度)から34.1回(平成12年度)までの間で推移しており,同9
年間の数値を単純平均すると,約28.3(回)である。また,1日平
均の騒音継続累積時間は,5分58秒(平成9年度)から18分39秒
(平成12年度)までの間で推移しており,同9年間の平均時間は約1
4分32秒である。
1日平均の騒音発生回数は,平成16年度に20回を下回ったのを除
,,。いてはいずれも20回以上であり平成17年度に再び増加している
(c)土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数
県野嵩測定局における平成8年度から平成17年度までの土曜日及び
日曜日の平均騒音発生回数の推移は,次のグラフのとおりである。
この10年間では,土曜日については,5.9回(平成10年度)か
ら16.2回(平成14年度)までの間で推移しており,同10年間の
数値を単純平均すると,約9.7(回)である。また,日曜日について
は,1.1回(平成9年度)から7.1回(平成8年度)までの間で推
移しており,同10年間の数値を単純平均すると,約3.3(回)であ
土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数(野嵩)
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
45.0
50.0
年度(H:平成)
回/日
土曜日15.36.45.97.010.511.516.28.17.38.5
日曜日7.11.13.02.63.42.32.42.34.34.4
H8H9H10H11H12H13H14H15H16H17
る。
土曜日の平均騒音発生回数は,平成14年度に前年度から4.7回増
.,.,加して162回となったが平成15年度には81回にまで低減し
その後はグラフが平坦化している。
(d)夜間の1日平均騒音発生回数
県野嵩測定局における平成10年度から平成17年度までの時間帯別
月平均騒音発生回数は,次の表のとおりである。
そして,上記表中の各数値を12倍した上で,365日(平成12年
及び平成16年にあっては366日)で割って夜間等の1日平均騒音発
生回数を算出する(小数点第2位以下切捨て)とともに,平成8年度及
び平成9年度の夜間等の1日平均騒音発生回数と併せて,平成8年度か
ら平成17年度までの夜間等の1日平均騒音発生回数の推移をグラフで
表すと,次のとおりとなる。
年度(H:平成)H10H11H12H13H14H15H16H17
19時~22時114.3111.0144.9117.998.882.850.284.0
22時~24時11.311.510.83.34.04.13.97.8
0時~7時5.34.03.45.64.35.94.04.2
19時~7時合計130.9126.5159.1126.8107.192.858.196.0
22時~7時合計16.615.514.28.98.310.07.912.0
平成10年度から平成17年度までの時間帯別月平均騒音発生回数(単位:回)
この10年間では,夜間(午後10時から翌日午前7時まで)の1日
平均騒音発生回数は,0.2回(平成13年度から平成16年度まで)
から0.7回(平成8年度)までの間で推移しており,同10年間の数
値を単純平均すると約033回であるまた夕方及び夜間午,.()。,(
後7時から翌日午前7時まで)の1日平均騒音発生回数では,1.8回
(平成16年度)から5.1回(平成8年度及び平成12年度)までの
,,.()間で推移しており同10年間の数値を単純平均すると約365回
である。
(),夜間午後10時から翌日午前7時までの1日平均騒音発生回数は
平成8年度の0.7回を除けば,0.2回から0.4回までの間に収ま
っている。また,夕方及び夜間(午後7時から翌日午前7時まで)の1
日平均騒音発生回数については,平成9年度から平成12年度にかけて
増加し,その後平成16年度にかけて低減しているが,平成17年度に
再び増加している。
夜間及び早朝の騒音発生回数(野嵩)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
18.0
年度(H:平成)
回/日
19時~22時4.42.83.73.64.73.83.22.71.62.7
22時~24時0.40.20.30.30.30.10.10.10.10.2
0時~7時0.30.10.10.10.10.10.10.10.10.1
19時~7時合計5.13.14.14.05.14.03.42.91.83.0
22時~7時合計0.70.30.40.40.40.20.20.20.20.3
H8H9H10H11H12H13H14H15H16H17
(e)環境基準超過率
県野嵩測定局は,昭和48年環境基準の類型Ⅰに指定された地域にあ
り,その地域の環境基準がW値70以下とされているところ,県野嵩測
定局における平成10年度から平成17年度までの環境基準超過日数,
環境基準達成日数及び環境基準超過率の推移は,次のグラフのとおりで
ある。
環境基準超過率は,この8年間では,34.3%(平成16年度)か
ら68.8%(平成11年度)までの間で推移しており,同8年間の数
値を単純平均すると,約53.9(%)である。
環境基準超過率は,平成11年度から平成13年度にかけて低下し,
平成14年度に一旦増加した後,平成16年度にかけて再び低下してい
るものの,平成17年度には再び増加している。
(f)年間W値
県野嵩測定局における平成9年度から平成17年度までの年間W値の
推移は,次のグラフのとおりである。
環境基準超過率(野嵩)
年度(H:平成)

0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
超過率
達成日数(日)130113134168152190236206
超過日数(日)235249226189208173123152
環境基準超過率64.4%68.8%62.8%52.9%57.8%47.7%34.3%42.5%
H10H11H12H13H14H15H16H17
年間W値は,この9年間では,72.0(平成16年度)から79.
3(平成13年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を単純平
均すると,約75.7である。
年間W値は,この間,平成13年度から平成16年度にかけて低下し
ているが,平成17年度に再び増加している。
なお,県野嵩測定局においては,平成9年3月1日にオンライン化さ
れる以前から,年間W値を算出している。県野嵩測定局における昭和5
6年度から平成8年度までの年間W値の推移は,次のグラフのとおりで
ある。
年間W値の推移(野嵩)
(平成9年度以降)
76.276.776.576.7
79.3
76.1
73.7
72.0
73.8
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
年度(H:平成)
WECPNL
年間W値W85ラインW70ライン
年間W値の推移(野嵩)
(昭和56年から平成8年まで)
76.0
77.9
80.3
76.9
78.578.978.778.6
79.578.9
80.5
76.3
75.6
77.478.0
76.7
S56S57S58S59S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
年度(S:昭和,H:平成)
WECPNL
年間W値W85ラインW70ライン
年間W値は,この16年間では,75.6(平成5年度)から80.
5(平成3年度)までの間で推移しており,同16年間の数値を単純平
均すると,約78である。
年間W値は,この間,昭和56年度から昭和58年度にかけて4程度
増加し,平成3年度から平成4年度にかけて4程度減少したものの,そ
の後,平成7年度には78.0にまで増加している。
b県上大謝名測定局(W80区域)
(a)最高音圧レベル
県上大謝名測定局における平成11年度から平成17年度までの最高
音圧レベルの推移は,次のグラフのとおりである。
最高音圧レベルは,この7年間では,114.5dB(A)(平成16年
度)から123.0dB(A)(平成13年度)までの間を推移しており,
同7年間の数値を単純平均すると,約119.2(dB(A))である。
最高音圧レベルは,平成15年度から平成16年度にかけて数値が低
下しているが,平成17年度に再び上昇している。
(b)1日平均騒音発生回数等
県上大謝名測定局における平成9年度から平成17年度までの1日平
最高音圧レベルの推移(上大謝名)
119.0120.6
123.0
119.3120.4
114.5
117.6
90.0
95.0
100.0
105.0
110.0
115.0
120.0
125.0
130.0
H11H12H13H14H15H16H17
年度
(H:平成)
dB(A)
均の騒音発生回数及び騒音継続累積時間の推移は,次のグラフのとおり
である。
この9年間では,1日平均の騒音発生回数は,32.8回(平成10
年度)から99.0回(平成14年度)までの間で推移しており,同9
年間の数値を単純平均すると,約69.1(回)である。また,同1日
平均の騒音継続累積時間は,10分10秒(平成9年度)から53分2
0秒(平成12年度)までの間で推移しており,同9年間の平均時間は
約34分40秒である。
1日平均の騒音発生回数は,平成10年度から平成12年度にかけて
増加し,平成14年度から平成17年度にかけて低減している。
(c)土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数
県上大謝名測定局における平成9年度から平成17年度までの土曜日
及び日曜日の平均騒音発生回数の推移は,次のグラフのとおりである。
1日平均騒音発生回数と累積時間(上大謝名)
年度(H:平成)
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
累積時間(分:秒)10:1015:3832:4653:2045:1348:3047:1029:2929:45
発生回数(回/日)39.932.863.098.181.599.090.559.657.1
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
この9年間では,土曜日については,6.2回(平成10年度)から
45.2回(平成14年度)までの間で推移しており,同9年間の数値
,.()。,,を単純平均すると約245回であるまた日曜日については
1.8回(平成10年度)から19.7回(平成14年度)までの間で
推移しており,同9年間の数値を単純平均すると,約12.3(回)で
ある。
土曜日,日曜日の平均騒音発生回数は,いずれも,平成10年度から
平成14年度にかけて増加し,その後平成17年度にかけて減少してい
る。
(d)夜間の1日平均騒音発生回数
県上大謝名測定局における平成10年度から平成17年度までの時間
帯別月平均騒音発生回数は,次の表のとおりである。
土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数(上大謝名)
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
45.0
50.0
年度(H:平成)
回/日
土曜日9.26.217.832.431.645.229.626.921.6
日曜日2.01.85.219.614.219.719.117.511.7
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
年度(H:平成)H10H11H12H13H14H15H16H17
19時~22時135.7162.2411.0296.5381.5289.9169.9189.8
22時~24時7.612.321.315.143.426.124.820.9
0時~7時2.412.820.850.657.449.539.022.7
19時~7時合計145.7187.3453.1362.2482.3365.5233.7233.4
22時~7時合計10.025.142.165.7100.875.663.843.6
平成10年度から平成17年度までの時間帯別月平均騒音発生回数(単位:回)
そして,上記表中の各数値を12倍した上で,365日(平成12年
及び平成16年にあっては366日)で割って夜間等の1日平均騒音発
生回数を算出する(小数点第2位以下切捨て)とともに,平成9年度の
夜間等の1日平均騒音発生回数と併せて,平成9年度から平成17年度
までの夜間等の1日平均騒音発生回数の推移をグラフで表すと,次のと
おりとなる。
この9年間では,夜間(午後10時から翌日午前7時まで)の1日平
均騒音発生回数は,0.2回(平成10年度)から3.2回(平成14
年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を単純平均すると,約
1.5(回)である。また,夕方及び夜間(午後7時から翌日午前7時
まで)の1日平均騒音発生回数では,4.6回(平成10年度)から1
5.7回(平成14年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を
単純平均すると,約9.4(回)である。
(),夜間午後10時から翌日午前7時までの1日平均騒音発生回数は
夜間及び早朝の騒音発生回数(上大謝名)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
18.0
年度(H:平成)
回/日
19時~22時4.54.45.313.49.712.59.55.56.2
22時~24時0.20.20.40.60.41.40.80.80.6
0時~7時0.10.00.40.61.61.81.61.20.7
19時~7時合計4.84.66.114.611.715.711.97.57.5
22時~7時合計0.30.20.81.22.03.22.42.01.3
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
平成10年度から平成14年度にかけて増加し,その後平成17年度に
かけて減少している。また,夕方及び夜間(午後7時から翌日午前7時
まで)の1日平均騒音発生回数は,平成11年度から平成12年度にか
けて急増し,平成14年度から平成16年度にかけて大きく減少してい
る。
(e)環境基準超過率
県上大謝名測定局は,昭和48年環境基準の類型Ⅰに指定された地域
にあり,その地域の環境基準がW値70以下とされているところ,県上
大謝名測定局における平成10年度から平成17年度までの環境基準超
過日数,環境基準達成日数及び環境基準超過率の推移は,次のグラフの
とおりである。
環境基準超過率は,この8年間では,63.8%(平成16年度)か
ら79.1%(平成13年度)までの間で推移しており,同8年間の数
値を単純平均すると,約73.1(%)である。
環境基準超過率は,同8年間,増加と減少を交互に繰り返している。
環境基準超過率(上大謝名)
年度(H:平成)

0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
超過率
達成日数(日)7270857512089129106
超過日数(日)217261276283239253227259
環境基準超過率75.1%78.9%76.5%79.1%66.6%74.0%63.8%71.0%
H10H11H12H13H14H15H16H17
(f)年間W値
県上大謝名測定局における平成9年度から平成17年度までの年間W
値の推移は,次のグラフのとおりである。
年間W値は,この9年間では,78.7(平成16年度)から86.
8(平成13年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を単純平
均すると,約82.7である。
年間W値は,この間,平成13年度から平成16年度にかけて低下し
ているが,平成17年度に再び増加している。
c県新城測定局(W75区域)
(a)最高音圧レベル
県新城測定局における平成11年度から平成17年度までの最高音圧
レベルの推移は,次のグラフのとおりである。
年間W値の推移(上大謝名)
83.183.583.384.0
86.8
81.882.3
78.7
80.9
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
年度(H:平成)
WECPNL
年間W値W85ラインW70ライン
最高音圧レベルは,この7年間では,103.7dB(A)(平成17年
度)から110.7dB(A)(平成11年度)までの間を推移しており,
同7年間の数値を単純平均すると,約108.0(dB(A))である。
最高音圧レベルは,平成14年度まで緩やかに減少し,平成15年度
に増加した後,平成16年度以降再び緩やかに減少している。
(b)1日平均騒音発生回数等
県新城測定局における平成9年度から平成17年度までの1日平均の
騒音発生回数及び騒音継続累積時間の推移は,次のグラフのとおりであ
る。
最高音圧レベルの推移(新城)
110.7109.9
107.4106.0
110.6
107.7
103.7
90.0
95.0
100.0
105.0
110.0
115.0
120.0
125.0
130.0
H11H12H13H14H15H16H17
年度
(H:平成)
dB(A)
1日平均騒音発生回数と累積時間(新城)
年度(H:平成)
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
累積時間(分:秒)09:2339:3724:5613:3714:3337:5939:3520:5829:23
発生回数(回/日)38.877.641.823.924.677.373.041.455.9
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
この9年間では,1日平均の騒音発生回数は,23.9回(平成12
年度)から77.6回(平成10年度)までの間で推移しており,同9
年間の数値を単純平均すると,約50.5(回)である。また,1日平
均の騒音継続累積時間は,9分23秒(平成9年度)から39分37秒
(平成10年度)までの間で推移しており,同9年間の平均時間は約2
5分33秒である。
,。1日平均の騒音発生回数は数年間隔で増加と減少を繰り返している
(c)土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数
県新城測定局における平成9年度から平成17年度までの土曜日及び
日曜日の平均騒音発生回数の推移は,次のグラフのとおりである。
この9年間では,土曜日については5.4回(平成12年度)から3
3.7回(平成14年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を
,.()。,.単純平均すると約137回であるまた日曜日については1
0回(平成11年度)から14.0回(平成15年度)までの間で推移
しており,同9年間の数値を単純平均すると,約6.7(回)である。
土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数は,いずれも,平成13年度か
土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数(新城)
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
45.0
50.0
年度(H:平成)
回/日
土曜日9.49.38.45.47.533.719.513.216.8
日曜日3.15.01.02.01.412.814.010.010.9
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
ら平成14年度にかけて増加し,その後平成16年度にかけて減少した
後,平成17年度には再び増加している。
(d)夜間の1日平均騒音発生回数
県新城測定局における平成10年度から平成17年度までの時間帯別
月平均騒音発生回数は,次の表のとおりである。
そして,上記表中の各数値を12倍した上で,365日(平成12年
及び平成16年にあっては366日)で割って夜間等の1日平均騒音発
生回数を算出する(小数点第2位以下切捨て)とともに,平成9年度の
夜間等の1日平均騒音発生回数と併せて,平成9年度から平成17年度
までの夜間等の1日平均騒音発生回数の推移をグラフで表すと,次のと
おりとなる。
年度(H:平成)H10H11H12H13H14H15H16H17
19時~22時254.3148.497.9118.4386.6303.2138.3227.6
22時~24時41.731.012.13.545.745.024.737.5
0時~7時10.54.02.42.533.053.528.627.3
19時~7時合計306.5183.4112.4124.4465.3401.7191.6292.4
22時~7時合計52.235.014.56.078.798.553.364.8
平成10年度から平成17年度までの時間帯別月平均騒音発生回数(単位:回)
この9年間では,夜間(午後10時から翌日午前7時まで)の1日平
均騒音発生回数は,0.1回(平成13年度)から3.1回(平成15
年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を単純平均すると,約
1.4(回)である。また,夕方及び夜間(午後7時から翌日午前7時
まで)の1日平均騒音発生回数では,3.5回(平成12年度)から1
5.2回(平成14年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を
単純平均すると,約8.0(回)である。
(),夜間午後10時から翌日午前7時までの1日平均騒音発生回数は
平成10年度から平成13年度にかけて減少し,その後平成15年度に
かけて増加した後,平成16年度に減少,平成17年度に増加するなど
。,()一定していないまた夕方及び夜間午後7時から翌日午前7時まで
の1日平均騒音発生回数は,平成10年度から平成12年度にかけて大
きく減少し,平成13年度から平成14年度にかけて急増した後,平成
16年度にかけて減少,平成17年度に増加するなど,やはり一定して
夜間及び早朝の騒音発生回数(新城)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
年度(H:平成)
回/日
19時~22時4.48.34.83.23.812.79.94.57.4
22時~24時0.21.31.00.30.11.51.40.81.2
0時~7時0.10.30.10.00.01.01.70.90.8
19時~7時合計4.79.95.93.53.915.213.06.29.4
22時~7時合計0.31.61.10.30.12.53.11.72.0
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
いない。
(e)環境基準超過率
県新城測定局は,昭和48年環境基準の類型Ⅰに指定された地域にあ
り,その地域の環境基準がW値70以下とされているところ,県新城測
定局における平成10年度から平成17年度までの環境基準超過日数,
環境基準達成日数及び環境基準超過率の推移は,次のグラフのとおりで
ある。
環境基準超過率は,この8年間では,5.5%(平成12年度)から
46.0%(平成14年度)までの間で推移しており,同8年間の数値
を単純平均すると,約24.1(%)である。
,,。環境基準超過率はこの8年間増加と減少を交互に繰り返している
(f)年間W値
県新城測定局における平成9年度から平成17年度までの年間W値の
推移は,次のグラフのとおりである。
環境基準超過率(新城)
年度(H:平成)

0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
超過率
達成日数315317341250190221284276
超過日数5045201091621427589
環境基準超過率13.7%12.4%5.5%30.4%46.0%39.1%20.9%24.4%
H10H11H12H13H14H15H16H17
年間W値は,この9年間では,69.2(平成17年度)から72.
6(平成14年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を単純平
均すると,約71.4である。
年間W値は,この間,平成12年度まで緩やかに減少し,一旦緩やか
に増加した後,平成16年度以降再び緩やかに減少している。
d市真志喜測定局(W75区域)
(a)最高音圧レベル
市真志喜測定局における平成11年度から平成17年度までの最高音
圧レベルの推移は,次のグラフのとおりである。
,,.()最高音圧レベルはこの7年間では965dB(A)平成16年度
年間W値の推移(新城)
72.772.171.5
70.0
72.472.672.2
69.769.2
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
年度(H:平成)
WECPNL
年間W値W80ラインW70ライン
最高音圧レベルの推移(真志喜)
98.6
100.9
104.1105.1
100.2
96.5
99.2
90.0
95.0
100.0
105.0
110.0
115.0
120.0
125.0
130.0
H11H12H13H14H15H16H17
年度
(H:平成)
dB(A)
から105.1dB(A)(平成14年度)までの間を推移しており,同7
年間の数値を単純平均すると,約100.7(dB(A))である。
最高音圧レベルは,平成14年度まで緩やかに増加し,平成16年度
にかけて緩やかに増加した後,平成17年度に再び増加している。
(b)1日平均騒音発生回数等
市真志喜測定局における平成9年度から平成17年度までの1日平均
の騒音発生回数及び騒音継続累積時間の推移は,次のグラフのとおりで
ある。
この9年間では,1日平均の騒音発生回数は,15.1回(平成16
年度)から65.4回(平成10年度)までの間で推移しており,同9
年間の数値を単純平均すると,約34.5(回)である。また,1日平
均の騒音継続累積時間は,6分17秒(平成9年度)から26分13秒
(平成10年度)までの間で推移しており,同9年間の平均時間は約1
4分00秒である。
1日平均の騒音発生回数は,平成10年度から平成16年度にかけて
緩やかに減少し,平成17年度にはわずかながらも再び増加に転じてい
る。1日平均の騒音継続累積時間についても,同様に,平成16年度に
1日平均騒音発生回数と累積時間(真志喜)
年度(H:平成)
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
累積時間(分:秒)06:1726:1319:0617:1111:5314:5213:3607:0309:50
発生回数(回/日)26.265.446.143.529.835.028.615.121.1
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
かけて減少がみられるけれども,平成17年度にわずかながらも増加し
ている。
(c)土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数
市真志喜測定局における平成9年度から平成17年度までの土曜日及
び日曜日の平均騒音発生回数の推移は,次のグラフのとおりである。
この9年間では,土曜日については2.6回(平成16年度)から1
4.3回(平成10年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を
,.()。,,.単純平均すると約77回であるまた日曜日については1
4回(平成9年度)から4.9回(平成10年度)までの間で推移して
おり,同9年間の数値を単純平均すると,約2.8(回)である。
土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数は,いずれも,平成14年度か
ら平成16年度にかけて減少した後,平成17年度には再び増加するな
ど,一定していない。
(d)夜間の1日平均騒音発生回数
市真志喜測定局における平成10年度から平成17年度までの時間帯
別月平均騒音発生回数は,次の表のとおりである。
土曜日及び日曜日の平均騒音発生回数(真志喜)
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
45.0
50.0
年度(H:平成)
回/日
土曜日5.414.39.07.68.211.05.42.65.7
日曜日1.44.92.23.42.63.62.52.32.4
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
そして,上記表中の各数値を12倍した上で,365日(平成12年
及び平成16年にあっては366日)で割って夜間等の1日平均騒音発
生回数を算出する(小数点第2位以下切捨て)とともに,平成9年度の
夜間等の1日平均騒音発生回数と併せて,平成9年度から平成17年度
までの夜間等の1日平均騒音発生回数の推移をグラフで表すと,次のと
おりとなる。
この9年間では,夜間(午後10時から翌日午前7時まで)の1日平
均騒音発生回数は,0.2回(平成9年度)から2.2回(平成11年
),,.度までの間で推移しており同9年間の数値を単純平均すると約0
()。,()9回であるまた夕方及び夜間午後7時から翌日午前7時まで
年度(H:平成)H10H11H12H13H14H15H16H17
19時~22時128.883.2145.9117.3108.674.336.060.2
22時~24時8.49.411.45.37.24.34.210.1
0時~7時23.859.243.318.116.013.29.910.6
19時~7時合計161.0151.8200.6140.7131.891.850.180.9
22時~7時合計32.268.654.723.423.217.514.120.7
平成10年度から平成17年度までの時間帯別月平均騒音発生回数(単位:回)
夜間及び早朝の騒音発生回数(真志喜)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
18.0
年度(H:平成)
回/日
19時~22時2.14.22.74.73.83.52.41.11.9
22時~24時0.10.20.30.30.10.20.10.10.3
0時~7時0.10.71.91.40.50.50.40.30.3
19時~7時合計2.35.14.96.44.44.22.91.52.5
22時~7時合計0.20.92.21.70.60.70.50.40.6
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
の1日平均騒音発生回数では,1.5回(平成16年度)から6.4回
(平成12年度)までの間で推移しており,同9年間の数値を単純平均
すると,約3.8(回)である。
(),夜間午後10時から翌日午前7時までの1日平均騒音発生回数は
平成9年度から平成12年度にかけて増加し,その後平成13年度にか
けて減少した後は,平成17年度にかけてほぼ横ばいである。また,夕
方及び夜間(午後7時から翌日午前7時まで)の1日平均騒音発生回数
は,平成9年度から平成11年度にかけて増加し,平成16年度にかけ
て減少した後,平成17年度には再び増加に転じている。
(e)環境基準超過率
市真志喜測定局は,昭和48年環境基準の類型Ⅰに指定された地域に
あり,その地域の環境基準がW値70以下とされているところ,市真志
喜測定局における平成10年度から平成17年度までの環境基準超過日
数,環境基準達成日数及び環境基準超過率の推移は,次のグラフのとお
りである。
環境基準超過率(真志喜)
年度(H:平成)

0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
超過率
達成日数220206214239244238317292
超過日数145156147120116754271
環境基準超過率39.7%43.1%40.7%33.4%32.2%24.0%11.7%19.6%
H10H11H12H13H14H15H16H17
環境基準超過率は,この8年間では,11.7%(平成16年度)か
ら43.1%(平成11年度)までの間で推移しており,同8年間の数
値を単純平均すると,約30.6(%)である。
環境基準超過率は,平成11年度から平成16年度まで超過率の減少
がみられるが,平成17年度には再び増加している。
(f)年間W値
市真志喜測定局における平成9年度から平成17年度までの年間W値
の推移は,次のグラフのとおりである。
年間W値は,この9年間では,66.2(平成16年度)から71.
1(平成11年度及び平成12年度)までの間で推移しており,同9年
間の数値を単純平均すると,約69.5である。
年間W値は,この間,平成14年度までほぼ横ばいに推移した後,平
成16年度にかけて減少したものの,平成17年度には再び増加に転じ
ている。
(以上(イ)について,甲C14から20まで,59,60)
(ウ)国測定点における騒音測定結果
a国新城測定点(W80区域)
(a)最高音圧レベル
年間W値の推移(真志喜)
69.9
70.671.171.1
70.070.1
68.9
66.2
67.9
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
年度(H:平成)
WECPNL
年間W値W80ラインW70ライン
国新城測定点における昭和60年度から平成8年度までの最高音圧レ
ベルの推移及び平成9年度から平成18年度までの最高音圧レベルの推
移は,それぞれ次のグラフのとおりである。
,,最高音圧レベルは昭和60年度から平成8年度までの12年間では
115.8dB(A)(平成8年度)から121.5dB(A)(平成3年度)ま
での間で推移しており,この12年間の数値を単純平均すると,約11
8.7(dB(A))である。平成9年度から平成18年度までの10年間で
は,112.6dB(A)(平成12年度)から119.4dB(A)(平成13
),,年度までの間で推移しておりこの10年間の数値を単純平均すると
約114.9(dB(A))である。また,昭和60年度から平成18年度ま
最高音圧レベルの推移(新城〔測定点№1〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
118.1119.3118.0119.8121.1120.7121.5
118.5
116.2
119.0
116.0115.8
90.0
95.0
100.0
105.0
110.0
115.0
120.0
125.0
130.0
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
年度
(S:昭和,H:平成)
dB(A)
最高音圧レベルの推移(新城〔測定点№1〕)
(平成9年度以降)
115.3116.4116.1
112.6
119.4
115.0
112.2112.2
115.7113.8
90.0
95.0
100.0
105.0
110.0
115.0
120.0
125.0
130.0
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
年度
(H:平成)
dB(A)
での22年間の数値を単純平均すると,約116.9dB(A)である。
最高音圧レベルは,この22年間の推移を全体としてみると,おおむ
ね横ばいに推移している。
(乙C2,9)
(b)1日平均騒音発生回数等
国新城測定点における昭和60年度から平成8年度までの1日平均の
騒音発生回数及び騒音継続累積時間の推移並びに平成9年度から平成1
8年度までの1日平均の騒音発生回数及び騒音継続累積時間の推移は,
それぞれ次のグラフのとおりである(なお,平成5年度から平成12年
度までの騒音継続累積時間は明らかになっていない。。)
1日平均騒音発生回数と累積時間(新城〔測定点№1〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
年度(S:昭和,H:平成)
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
累積時間(分:秒)11:2712:3715:1310:0411:5110:5212:5608:38
発生回数(回/日)52.654.770.448.856.357.552.142.942.143.749.139.2
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
1日平均騒音発生回数と累積時間(新城〔測定点№1〕)
(平成9年度以降)
年(H:平成)
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
累積時間(分:秒)12:2614:4611:0004:2206:1805:56
発生回数(回/日)32.738.744.941.541.349.934.419.426.425.3
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
1日平均の騒音発生回数は,昭和60年度から平成8年度までの12
年間では,39.2回(平成8年度)から70.4回(昭和62年度)
までの間で推移しており,この12年間の数値を単純平均すると,約5
0.8(回)である。また,平成9年度から平成18年度までの10年
間では,19.4回(平成16年度)から49.9回(平成14年度)
までの間で推移しており,この10年間の数値を単純平均すると,約3
5.5(回)である。昭和60年度から平成18年度までの22年間の
数値を単純平均すると,約43.8(回)である。
1日平均の騒音継続累積時間は,昭和60年度から平成4年度までの
8年間では,8分38秒(平成4年度)から15分13秒(昭和62年
度)までの間で推移しており,この8年間の平均時間は約11分42秒
である。また,平成13年度から平成18年度までの6年間では,4分
22秒(平成6年度)から14分46秒(平成14年度)までの間で推
移しており,この6年間の平均時間は約9分8秒である。
1日平均の騒音発生回数及び騒音継続累積時間は,昭和60年度から
平成18年度までの22年間の推移を全体としてみると,いずれも減少
しているということができるけれども,平成16年度から平成17年度
にかけて増加している。
(乙C2,9)
(c)日曜日の平均騒音発生回数
国新城測定点における平成12年度から平成18年度までの日曜日の
平均騒音発生回数の推移は,次のグラフのとおりである。
,,.()日曜日の騒音発生回数はこの7年間では09回平成18年度
から29.6回(平成14年度)までの間で推移しており,同7年間の
数値を単純平均すると,約6.7(回)である。
日曜日の騒音発生回数は,平成14年度に急増しているけれども,同
年度を除けば,平成12年度から平成18年度にかけて緩やかに減少し
ている。
(乙C4,11)
(d)夜間の1日平均騒音発生回数
国新城測定点における昭和60年度から平成8年度までの夜間等の1
日平均騒音発生回数及び平成9年度から平成18年度までの夜間等の1
日平均騒音発生回数の推移は,それぞれ次のグラフのとおりである。
日曜日の平均騒音発生回数(新城〔測定点№1〕)
4.95.4
29.6
2.22.51.60.9
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
45.0
50.0
H12H13H14H15H16H17H18
年度
(H:平成)
回/日
(),夜間午後10時から翌日午前7時までの1日平均騒音発生回数は
昭和60年度から平成8年度までの12年間については0.7回(平成
夜間及び早朝の平均騒音発生回数(新城〔測定点№1〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
18.0
年度(S:昭和,H:平成)
回/日
19時~22時5.86.18.06.45.86.55.04.45.05.66.64.6
22時~24時0.20.30.90.40.42.11.00.50.81.01.10.4
0時~7時0.91.86.50.70.75.92.90.50.40.40.30.3
19時~7時合計6.98.215.47.56.914.58.95.46.27.08.05.3
22時~7時合計1.12.17.41.11.18.03.91.01.21.41.40.7
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
夜間及び早朝の平均騒音発生回数(新城〔測定点№1〕)
(平成9年度以降)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
18.0
年度(H:平成)
回/日
19時~22時4.34.95.05.75.15.23.21.72.82.6
22時~24時0.40.70.80.70.40.60.20.20.30.2
0時~7時0.40.40.70.60.50.60.30.10.10.1
19時~7時合計5.16.06.57.06.06.43.72.03.22.9
22時~7時合計0.81.11.51.30.91.20.50.30.40.3
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
8年度)から8.0回(平成2年度)までの間で,平成9年度から平成
18年度までの10年間については0.3回(平成16年度及び平成1
8年度)から1.5回(平成11年度)までの間で,それぞれ推移して
おり,昭和60年度から平成8年度までの12年間の平均は約2.5
(回,平成9年度から平成18年度までの10年間の平均は約0.8)
(回,昭和60年度から平成18年度までの22年間の平均は1.8)
(回)である。
また,夕方及び夜間(午後7時から翌日午前7時まで)の1日平均騒
音発生回数では,昭和60年度から平成8年度までの12年間について
.().(),は53回平成8年度から154回昭和62年度までの間で
平成9年度から平成18年度までの10年間については2.0回(平成
16年度)から7.0回(平成12年度)までの間で,それぞれ推移し
ており,昭和60年度から平成8年度までの12年間の平均は約8.4
(回,平成9年度から平成18年度までの10年間の平均は約4.9)
(回,昭和60年度から平成18年度までの22年間の平均は6.8)
(回)である。
夜間(午後10時から翌日午前7時まで)の1日平均騒音発生回数及
び夕方及び夜間(午後7時から翌日午前7時まで)の1日平均騒音発生
,,回数は昭和62年度及び平成2年度に高い数値を示しているけれども
これらを除けば,平成14年度まではおおむね横ばいであり,平成15
年度に減少した後,おおむね横ばい,又は漸減している。
(乙C2,9)
(e)環境基準超過率
国新城測定点は,昭和48年環境基準の類型Ⅰに指定された地域にあ
り,その地域の環境基準がW値70以下とされているところ,国新城測
定点における昭和60年度から平成8年度までの環境基準超過率の推移
及び平成9年度から平成18年度までの環境基準超過率の推移は,それ
ぞれ次のグラフのとおりである。
,,環境基準超過率は昭和60年度から平成8年度までの12年間では
73.2%(平成4年度)から89.2%(昭和61年度)までの間で
環境基準超過率(新城〔測定点№1〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
年度(S:昭和,H:平成)

0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
超過率
達成日数553856685857399182929188
超過日数308314270283307277291249226256264253
環境基準超過率84.8%89.2%82.8%80.6%84.1%82.9%88.2%73.2%73.4%73.6%74.4%74.2%
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
環境基準超過率(新城〔測定点№1〕)
(平成9年度以降)
年度(H:平成)

0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
超過率
達成日数83978210389101138178149153
超過日数242259271256232213210160211212
環境基準超過率74.5%72.8%76.8%71.3%72.3%67.8%60.3%47.3%58.6%58.1%
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
,,.()推移しておりこの12年間の数値を単純平均すると約801%
。,,.であるまた平成9年度から平成18年度までの10年間では47
3%(平成16年度)から76.8%(平成11年度)までの間で推移
しており,この10年間の数値を単純平均すると,約66.0(%)で
ある。昭和60年度から平成18年度までの22年間の数値を単純平均
すると,約73.7(%)である。
環境基準超過率は,この22年間の推移をみると,昭和61年度には
90%近い超過率であったものが,平成16年度には50%以下に減少
するなど,減少方向に推移している。もっとも,平成17年度には10
%ほど増加している。
(乙C1,8)
(f)年間W値
国新城測定点における昭和60年度から平成8年度までの年間W値の
推移及び平成9年度から平成18年度までの年間W値の推移は,それぞ
れ次のグラフのとおりである。
年間W値の推移(新城〔測定点№1〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
81.082.5
85.7
82.684.083.984.0
81.4
79.180.281.279.8
65.0
70.0
75.0
80.0
85.0
90.0
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
年度
(S:昭和,H:平成)
WECPNL
年間W値(環境基準方式)W85ラインW70ライン
,,.年間W値は昭和60年度から平成8年度までの12年間では79
1(平成5年度)から85.7(昭和62年度)までの間で推移してお
り,この12年間の数値を単純平均すると,約82.1である。平成9
年度から平成18年度までの10年間では,74.2(平成16年度)
から82.7(平成13年度)までの間で推移しており,この10年間
の数値を単純平均すると,約78.7である。昭和60年度から平成1
8年度までの22年間の単純平均値は80.6である。また,国施設庁
方式近似W値は,平成12年度から平成18年度までの7年間では,7
()(),4平成16年度から86平成13年度までの間で推移しており
その単純平均値は79.1である。
年間W値は,昭和60年からの22年間の推移を全体としてみると,
平成13年度まではおおむね80から85までの間でほぼ横ばいに推移
していたものが,平成14年度以降は75から80までの間で推移して
おり,この22年間では減少したということができる。
(乙C2,9,弁論の全趣旨)
b国大謝名測定点(W80区域)
(a)最高音圧レベル
年間W値の推移(新城〔測定点№1〕)
(平成9年度以降)
79.980.980.379.8
82.7
78.8
77.1
74.2
76.576.7
65.0
70.0
75.0
80.0
85.0
90.0
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
年度
(H:平成)
WECPNL
年間W値(環境基準方式)年間W値(防衛施設庁方式)
W85ラインW70ライン
国大謝名測定点における昭和60年度から平成8年度までの最高音圧
レベルの推移及び平成9年度から平成18年度までの最高音圧レベルの
推移は,それぞれ次のグラフのとおりである。
,,最高音圧レベルは昭和60年度から平成8年度までの12年間では
96.8dB(A)(平成元年度)から123.5dB(A)(昭和61年度)ま
での間で推移しており,この12年間の数値を単純平均すると,約11
7.6(dB(A))である。また,平成9年度から平成18年度までの10
年間では,110.3dB(A)(平成15年度)から120.6dB(A)(平
成11年度)までの間で推移しており,この10年間の数値を単純平均
すると,約114.5(dB(A))である。昭和60年度から平成18年
最高音圧レベルの推移(大謝名〔測定点№2〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
121.8123.5
118.5
122.4
120.0118.4
120.9
115.4
120.4118.3
114.8
96.8
90.0
95.0
100.0
105.0
110.0
115.0
120.0
125.0
130.0
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
年度
(S:昭和,H:平成)
dB(A)
最高音圧レベルの推移(大謝名〔測定点№2〕)
(平成9年度以降)
116.8115.8
120.6
116.3116.9
111.9110.3
112.3111.0
113.1
90.0
95.0
100.0
105.0
110.0
115.0
120.0
125.0
130.0
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
年度
(H:平成)
dB(A)
度までの22年間の単純平均値は約116.2(dB(A))である。
最高音圧レベルは,この22年間の推移を全体としてみると,平成元
年度に大幅に減少していることを除けば,平成15年度まで漸減し,そ
の後はほぼ横ばいである。
(乙C2,9)
(b)1日平均騒音発生回数等
国大謝名測定点における昭和60年度から平成8年度までの1日平均
の70dB以上の騒音発生回数及び騒音継続累積時間の推移並びに平成9
年度から平成18年度までの1日平均の70dB以上の騒音発生回数及び
,(,騒音継続累積時間の推移はそれぞれ次のグラフのとおりであるなお
平成5年度から平成12年度までの騒音継続累積時間は明らかになって
いない。。)
1日平均騒音発生回数と累積時間(大謝名〔測定点№2〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
年度(S:昭和,H:平成)
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
累積時間(分:秒)14:2716:2011:1811:3311:4908:3208:2310:37
発生回数(回/日)69.877.35857.656.640.339.349.945.346.75380.4
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
1日平均の騒音発生回数は,昭和60年度から平成8年度までの12
年間では,39.3回(平成3年度)から80.4回(平成8年度)ま
,,.での間で推移しておりこの12年間の数値を単純平均すると約56
2(回)である。また,平成9年度から平成18年度までの10年間で
は,15.6回(平成16年度)から72.3回(平成12年度)まで
の間で推移しており,この10年間の数値を単純平均すると,約44.
1(回)である。昭和60年度から平成18年度までの22年間の数値
を単純平均すると,約50.7(回)である。
1日平均の騒音継続累積時間は,昭和60年度から平成4年度までの
8年間では,8分23秒(平成3年度)から16分20秒(昭和61年
度)までの間で推移しており,この8年間の平均時間は約11分37秒
である。また,平成13年度から平成18年度までの6年間では,3分
34秒(平成6年度)から14分37秒(平成13年度)までの間で推
移しており,この6年間の平均時間は約8分0秒である。
1日平均の騒音発生回数及び騒音継続累積時間は,昭和60年度から
平成18年度までの22年間の推移を全体としてみると,いずれも減少
しているけれども,平成16年度から平成17年度にかけては増加して
いる。
1日平均騒音発生回数と累積時間(大謝名〔測定点№2〕)
(平成9年度以降)
年(H:平成)
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
累積時間(分:秒)14:3712:4806:5603:3405:0904:57
発生回数(回/日)56.454.859.572.35948.431.515.622.121.6
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
(乙C2,9)
(c)日曜日の平均騒音発生回数
国大謝名測定点における平成12年度から平成18年度までの日曜日
の平均騒音発生回数の推移は,次のグラフのとおりである。
日曜日の平均騒音発生回数は,この7年間では,1.0回(平成16
年度)から19.0回(平成13年度)までの間で推移しており,同7
年間の数値を単純平均すると,約7.5(回)である。
日曜日の騒音発生回数は,平成13年度から平成15年度にかけて減
少し,それ以降はほぼ横ばいに推移している。
(乙C4,11)
(d)夜間の1日平均騒音発生回数
国大謝名測定点における昭和60年度から平成8年度までの夜間等の
1日平均騒音発生回数の推移並びに平成9年度から平成18年度までの
夜間等の1日平均騒音発生回数の推移は,それぞれ次のグラフのとおり
である。
日曜日の平均騒音発生回数(大謝名〔測定点№2〕)
18.119.0
10.6
1.31.01.71.1
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
45.0
50.0
H12H13H14H15H16H17H18
年度
(H:平成)
回/日
(),夜間午後10時から翌日午前7時までの1日平均騒音発生回数は
昭和60年度から平成8年度までの12年間については0.5回(昭和
夜間及び早朝の平均騒音発生回数(大謝名〔測定点№2〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
年度(S:昭和,H:平成)
回/日
19時~22時9.510.07.47.76.14.25.25.15.65.27.19.3
22時~24時0.10.40.40.50.30.30.30.50.71.01.11.8
0時~7時0.40.60.50.60.71.20.50.60.50.51.03.7
19時~7時合計10.011.08.38.87.15.76.06.26.86.79.214.8
22時~7時合計0.51.00.91.11.01.50.81.11.21.52.15.5
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
夜間及び早朝の平均騒音発生回数(大謝名〔測定点№2〕)
(平成9年度以降)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
年度(H:平成)
回/日
19時~22時6.95.95.27.48.55.83.51.62.62.4
22時~24時0.90.70.81.01.10.30.10.10.20.3
0時~7時2.11.71.31.42.31.00.20.10.10.2
19時~7時合計9.98.37.39.811.97.13.81.82.92.9
22時~7時合計3.02.42.12.43.41.30.30.20.30.5
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
60年度)から5.5回(平成8年度)までの間で,平成9年度から平
.().成18年度までの10年間については02回平成16年度から3
4回(平成13年度)までの間で,それぞれ推移しており,昭和60年
度から平成8年度までの12年間の平均は約1.5(回,平成9年度)
から平成18年度までの10年間の平均は約1.6(回,昭和60年)
度から平成18年度までの22年間の平均は1.6(回)である。
また,夕方及び夜間(午後7時から翌日午前7時まで)の1日平均騒
音発生回数では,昭和60年度から平成8年度までの12年間について
は5.7回(平成2年度)から14.8回(平成8年度)までの間で,
平成9年度から平成18年度までの10年間については1.8回(平成
16年度)から11.9回(平成13年度)までの間で,それぞれ推移
しており,昭和60年度から平成8年度までの12年間の平均は約8.
4(回,平成9年度から平成18年度までの10年間の平均は約6.)
6(回,昭和60年度から平成18年度までの22年間の平均は7.)
6(回)である。
夜間(午後10時から翌日午前7時まで)の1日平均騒音発生回数及
び夕方及び夜間(午後7時から翌日午前7時まで)の1日平均騒音発生
回数は,平成6年度から平成8年度まで及び平成11年度から平成13
年度まで,いずれも増加しているけれども,これらの期間を除けば,全
体的には減少している。
(乙C2,9)
(e)環境基準超過率
国大謝名測定点は,昭和48年環境基準の類型Ⅰに指定された地域に
あり,その地域の環境基準がW値70以下とされているところ,国大謝
名測定点における昭和60年度から平成8年度までの環境基準超過率の
推移及び平成9年度から平成18年度までの環境基準超過率の推移は,
それぞれ次のグラフのとおりである。
,,環境基準超過率は昭和60年度から平成8年度までの12年間では
73.6%(平成2年度)から90.4%(昭和61年度)までの間で
,,.()推移しておりこの12年間の数値を単純平均すると約803%
環境基準超過率(大謝名〔測定点№2〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
年度(S:昭和,H:平成)

0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
超過率
達成日数493568626281785676797962
超過日数309328271275287226236246247278275267
環境基準超過率86.3%90.4%79.9%81.6%82.2%73.6%75.2%81.5%76.5%77.9%77.7%81.2%
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
環境基準超過率(大謝名〔測定点№2〕)
(平成9年度以降)
年度(H:平成)

0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
超過率
達成日数887990948483142204154167
超過日数252278262252249208178122206198
環境基準超過率74.1%77.9%74.4%72.8%74.8%71.5%55.6%37.4%57.2%54.2%
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
。,,.であるまた平成9年度から平成18年度までの10年間では37
4%(平成16年度)から77.9%(平成10年度)までの間で推移
しており,この10年間の数値を単純平均すると,約65.0(%)で
ある。昭和60年度から平成18年度までの22年間の数値を単純平均
すると,約73.4(%)である。
環境基準超過率は,この22年間の推移をみると,昭和61年度には
90%を超える超過率であったものが,平成16年度には40%以下に
減少するなど,減少方向に推移している。もっとも,平成17年度には
20%ほど増加している。
(乙C1,8)
(f)年間W値
国大謝名測定点における昭和60年度から平成8年度までの年間W値
の推移及び平成9年度から平成18年度までの年間W値の推移は,それ
ぞれ次のグラフのとおりである。
年間W値の推移(大謝名〔測定点№2〕)
(昭和60年度から平成8年度まで)
83.684.7
82.883.384.5
81.2
83.282.8
80.0
82.083.081.5
65.0
70.0
75.0
80.0
85.0
90.0
S60S61S62S63H1H2H3H4H5H6H7H8
年度
(S:昭和,H:平成)
WECPNL
年間W値(環境基準方式)W85ラインW70ライン
,,.年間W値は昭和60年度から平成8年度までの12年間では80
0(平成5年度)から84.7(昭和61年度)までの間で推移してお
り,この12年間の数値を単純平均すると,約82.7である。平成9
年度から平成18年度までの10年間では,73.0(平成16年度)
から82.1(平成10年度)までの間で推移しており,この10年間
の数値を単純平均すると,約78.5である。昭和60年度から平成1
8年度までの22年間の単純平均値は80.8である。また,国施設庁
方式近似W値は,平成12年度から平成18年度までの7年間では,7
4(平成16年度)から84(平成12年度及び平成13年度)までの
間で推移しており,その単純平均値は78.6である。
年間W値は,昭和60年からの22年間の推移を全体としてみると,
平成13年度まではおおむね80から85までの間でほぼ横ばいに推移
していたものの,平成14年度以降は75から80までの間で推移して
いる。
(乙C2,9,弁論の全趣旨)
エ本件航空機騒音についての検証の結果
(ア)概要
年間W値の推移(大謝名〔測定点№2〕)
(平成9年度以降)
81.082.181.980.681.5
78.4
74.8
73.0
75.475.8
65.0
70.0
75.0
80.0
85.0
90.0
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
年度
(H:平成)
WECPNL
年間W値(環境基準方式)年間W値(防衛施設庁方式)
W85ラインW70ライン
当裁判所は,平成19年5月17日(イ)から(オ)までにおいて,時(
刻のみを示すときは,いずれも同日である,普天間飛行場周辺で原告らの。)
住居等について検証を実施した。
その検証場所は①宜野湾市大謝名二丁目○○番○○号X276宅屋上以,(
下X276宅という②同市字佐真下○○番地X61宅屋上以下X「」。),(「
61宅」という,③同市野嵩一丁目43番きさらぎ公園(以下「きさらぎ。)
公園」という,④同市喜友名二丁目○○番○○号B宅屋上(以下「B宅」。)
という)の4か所である。。
X276宅及びX61宅はW80区域に,きさらぎ公園及びB宅はW75
区域にそれぞれあり,普天間飛行場との位置関係は,次の図のとおりである
(,「」,「」,「」次の図において№1はX276宅を№2はX61宅を№3
はきさらぎ公園を「№4」はB宅をそれぞれ示す。,。)
検証においては,騒音レベルと低周波音レベルを測定したところ,騒音レ
ベルについては,単発騒音レベル(L)と最大値(L)を測定した。AEAMAX
騒音レベルの測定は,平坦な地面上又は屋上の1.2~1.5mの高さで
マイクロホンを設置し,これにリオン株式会社製積分型普通騒音計NL-0
6及び同社製レベルレコーダLR-06を接続して記録する方法によった。
(イ)X276宅における検証結果
X276宅における暗騒音及び航空機騒音の測定結果は,それぞれ次の表
のとおりである。
上記のとおり,午前9時33分から午前10時12分までの39分間の測
定時間内に航空機が合計5機飛行し,その騒音レベル最大値はいずれも暗騒
音より10dB(A)以上の値であった。また,最大値が70dB(A)を超える騒音
が4機につき計測され,うち3機は80dB(A)を超える騒音であった。
(ウ)X61宅における検証結果
X61宅における暗騒音及び航空機騒音の測定結果は,それぞれ次の表の
とおりである。
暗騒音(検証地点№1)
番号
Data
No.
測定
開始時刻
LAMAX
(dB)
LAE
(dB)
129時14分54.967.4
249時46分53.069.0
3910時14分51.263.3
航空機騒音(検証地点№1)
番号
Data
No.
測定
開始時刻
LAMAX
(dB)
LAE
(dB)
機種
139時33分69.277.6AH-1
259時56分76.278.2AH-1
3610時02分90.796.2CH-46
4710時06分88.396.3CH-46
5810時11分89.196.5CH-46
上記のとおり,午前10時42分から午前11時31分までの49分間の
測定時間内に航空機が合計9機飛行し,その騒音レベル最大値は暗騒音より
1.7dB(A)から14.9dB(A)以上の値であった。また,全機につき最大値
が70dB(A)を超える騒音が計測されたけれども,80dB(A)を超える騒音は
計測されなかった(なお,上記航空機騒音の測定番号2の最大値はレベルレ
コーダ記録紙読み取り値である。。)
(エ)きさらぎ公園における検証結果
きさらぎ公園における暗騒音及び航空機騒音の測定結果は,それぞれ次の
表のとおりである。
暗騒音(検証地点№2)
番号
Data
No.
測定
開始時刻
LAMAX
(dB)
LAE
(dB)
11010時40分61.273.5
212,1310時52分69.080.1
31511時09分65.576.6
42311時31分63.375.4
航空機騒音(検証地点№2)
番号
Data
No.
測定
開始時刻
LAMAX
(dB)
LAE
(dB)
機種
11110時42分74.581.9CH-46
2(欠測)10時46分76.9-CH-46
31411時03分70.780.7P-3C
41611時18分71.080.9P-3C
51711時22分73.185.1P-3C
61811時24分71.883.8P-3C
719,2011時25分75.989.5P-3C
82111時29分76.188.6機種不詳
92211時30分76.186.1機種不詳
暗騒音(検証地点№3)
番号
Data
No.
測定
開始時刻
LAMAX
(dB)
LAE
(dB)
12413時41分56.570.6
24014時26分52.066.4
34214時30分58.567.7
上記のとおり,午後1時46分から午後2時29分までの43分間の測定
,.時間内に航空機が合計16機飛行しその騒音レベル最大値は暗騒音より1
6dB(A)から29.2dB(A)以上の値であった。また,最大値が70dB(A)を
超える騒音が3機につき計測され,うち1機(機種は不詳である)は80d。
B(A)を超える騒音であった。
(オ)B宅における検証結果
B宅における暗騒音及び航空機騒音の測定結果は,それぞれ次の表のとお
りである。
航空機騒音(検証地点№3)
番号
Data
No.
測定
開始時刻
LAMAX
(dB)
LAE
(dB)
機種
12513時46分67.678.1AH-1
22613時50分60.171.2AH-1
32713時54分65.174.8AH-1
42813時57分65.275.0AH-1
52914時01分62.574.9CH-46
63014時02分72.478.0AH-1
73114時06分70.780.7AH-1
83214時08分62.073.6CH-46
93314時11分65.577.8CH-46
103414時13分60.871.1AH-1
113514時15分66.475.4CH-46
123614時16分64.974.8AH-1
133714時19分61.070.9CH-46
143814時20分61.372.4AH-1
153914時22分60.773.7CH-46
164114時28分81.286.4機種不詳
暗騒音(検証地点№4)
番号
Data
No.
測定
開始時刻
LAMAX
(dB)
LAE
(dB)
14314時55分68.375.4
24915時20分50.464.1
上記のとおり,午後2時57分から午後3時45分までの48分間の測定
時間内に航空機が合計17機飛行し,その騒音レベル最大値は,暗騒音より
低いものも含まれているが,12機につき暗騒音の最大値68.3dB(A)を
超える騒音が測定された。また,最大値が70dB(A)を超える騒音が10機
につき計測され,うち2機は80dB(A)を超える騒音であった。
(エについて,検証の結果)
(4)本件低周波音の実態
前記前提事実及び括弧内の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
ア低周波音の意義,評価方法等
(ア)低周波音の意義
可聴音は,一般に,周波数が20Hzから2万Hzまでの範囲のものとされて
いる。人が聞こえない周波数1~20Hzの音波は「超低周波音」といわれ,
る。
航空機騒音(検証地点№4)
番号
Data
No.
測定
開始時刻
LAMAX
(dB)
LAE
(dB)
機種
14414時57分77.286.9AH-1
24515時01分69.980.5AH-1
34615時07分81.589.8AH-1
44715時11分77.586.5AH-1
54815時17分59.573.3AH-1
65015時22分55.869.5機種不詳
75115時23分77.886.0CH-46
85215時26分56.369.4機種不詳
95315時27分72.380.3CH-46
105415時30分63.574.8機種不詳
115515時31分68.879.6AH-1
125615時33分62.772.3CH-46
135715時35分74.586.7AH-1
145815時38分71.182.4AH-1
155915時40分83.091.8AH-1
166015時43分77.086.3AH-1
176115時44分72.580.3CH-46
,,人の耳の感度は2000Hzから4000Hzまでの辺りが最も良好であり
それよりも高くなっても低くなっても,聴取りが悪くなる。特に100Hz以
下では急速に感度が低下するので,一般には,超低周波音を含めて100Hz
以下の聞こえにくい音を低周波音と呼ばれている。
なお,環境庁大気保全局(当時。以下この(ア)において同じ)は,昭。
和59年12月「低周波空気振動調査報告書」において,低域可聴音であ,
る100Hz前後までの低い周波数範囲の可聴音を含めて「低周波空気振動」
と定義した。沖縄環境ネットワークが平成11年6月に取りまとめた「沖縄
の米軍航空機による低周波音公害調査」と題する報告書では「100ヘル,
ツ以下では急速に感度が低下するので,超低周波音を含めてこの100ヘル
ツ以下の音を一般に『低周波音』と呼んでいる。つまり,音の周波数が低す
ぎて人間には聞こえないか聞き取りにくい音を『低周波音』と呼ぶ」と記載
されている。他方,環境庁大気保全局は,平成12年10月,地方公共団体
の環境部担当部局の者で騒音に関する知識・経験を有する者を対象とする
「低周波音の測定方法に関するマニュアル」において「我が国における低,
周波音苦情の実態を考慮して,およそ100Hz以下の低周波数の可聴音と超
低周波音を含む音波を低周波音という。従前,環境庁で低周波空気振動と呼
んでいたものである」としつつ「ここで取り扱う範囲は,1/3オクターブバ,
ンド中心周波数で1~80Hz…の音波である」とした。また,環境省環境管
,「」理局大気生活室は平成14年3月に公表した低周波騒音防止対策事例集
でも「我が国における低周波音苦情の実態を考慮して,およそ100Hz以,
下の低周波数の可聴音と超低周波音を含む音波を低周波音という」としつ。
つ「ここで取り扱う範囲は1/3オクターブバンド中心周波数で1~80Hz…,
の音波である」とする。もっとも,同「低周波騒音防止対策事例集」の参考
資料には「日本騒音制御工学会低周波音分科会では我が国の低周波音苦情,
の実情を考慮して『低周波音測定方法の提案について』の中で低周波音の,
。周波数範囲を1/3オクターブバンド中心周波数で1~80Hz…提案している
環境庁(現環境省)が平成12年10月に明らかにした『低周波音の測定方
法に関するマニュアル』でもこの範囲を測定対象としている」との説明が。
ある。そして,環境省環境管理局大気生活室では,平成15年3月「低周,
波音対策調査調査(中間とりまとめ」において,上記「低周波音の測定方)
法に関するマニュアル」では「主な低周波音発生源の周波数特性や,我が,
国における低周波音苦情の現状等を考慮して,1/3オクターブバンド中心周
波数で1~80Hzの範囲を低周波音,このうち特に1~20Hzの範囲を超低
周波音と定義している」と位置付けている(以下,低周波音の用語は,周波
数1Hz~100Hzの範囲の音を意味するものとして用いる。。)
(甲C24,D22,106,114,乙D5から8まで)
(イ)騒音及び低周波音の評価方法
aA特性とF
騒音は,通常,騒音計の「A特性」で測定される。
A特性は,人の耳の感度に合わせて低い周波数を小さく評価するように
補正する回路のことである。A特性は,20~8000Hzの音を合計した
数値である。
これに対し,Fは,普通騒音計において,A特性のような感覚補正をせ
ず,周波数特性が平坦であるまま,物理的な音圧を測定したものである。
Fは,10~2万Hzの音を合計した数値である。
bG特性とSPL
G特性は,次の図のとおり,超低周波音に対する感覚特性によって近似
的に低周波音を感知しようとする周波数を補正する回路のことである。G
,.。,特性はおおむね05~200Hzの音を合計した数値であるG特性は
可聴音における聴感補正特性であるA特性に相当する。G特性は,平成6
年,国際標準化機構(ISO)にお
いて,低周波音の感覚的大きさを表
す尺度といて国際的に用いられるこ
とが決定されている。
これに対し,SPLは,低周波音
レベル計において,G特性のような
感覚補正をせず,周波数特性が平坦であるまま,物理的な音圧を測定した
ものである。SPLは,騒音測定機器により異なるも,おおむね1~10
00Hzの音を合計した数値である。
cWECPNLと低周波音
WECPNLは,航空機の騒音量を評価する国際基準であり,環境基準方式及
び防衛施設庁方式では,W値は,次の計算式で算出される。
WECPNL=dB(A)+10logN-27
このように,W値の基礎となる騒音はA特性による数値のみであり,G
特性やSPLは考慮されていない。
(甲C24,D114,乙D5から8まで,G29,証人平松,弁論の全趣旨)
(ウ)低周波音の発生源
低周波音の発生源として考えられるものには,送風機,往復式圧縮機,デ
ィーゼル機関,真空ポンプ,振動ふるい,燃焼装置,ジェットエンジン,ヘ
リコプター,機械プレス,橋梁,鉄道トンネル,治水施設,発破,ガスエン
ジン,変圧器がある。
(乙D5,6,8)
イ低周波音の特徴等
低周波音は,周波数が低く,波長が長いため,聴音と比べて,地表面での吸
収や空気の吸収がされにくく,障害物をおいても防ぐのが難しい等の物理的な
特徴を有している。
また,低周波音には,距離減衰しにくい,遠方まで伝播する特徴がある。
(甲C24,E30,乙D5,6,証人平松)
ウ沖縄環境ネットワークによる調査の結果
沖縄環境ネットワークは,平成11年,次の表の「測定場所」欄記載の各地
(),「」点8か所いずれも普天間飛行場周辺において各地点に対応する測定日
及び「測定時間」各記載の日時に,米軍機が発する騒音及び低周波音について
測定調査を行った。
騒音測定については,周波数補正回路はA特性を,物理的な音圧レベルを測
定する場合は平坦特性のFを用いた。また,低周波音測定については,感覚的
な音圧レベルを測定する場合はG特性を,物理的な音圧レベルを測定する場合
は平坦特性のSPLを用いた。
同調査においては,次のような結論を導いている。
①普天間飛行場周辺で航空機の音圧を測定した結果,すべての測定におい
て低周波音が騒音を上回った。また,低周波音の最大値は普天間飛行場周
辺のすべての測定場所において100dB(G)前後を記録し,その時の騒音
は78~88dB(A)であった。低周波音は騒音よりも10dB以上上回って
測定日測定時間測定場所
3月16日14時から17時まで宜野湾市真栄原K氏宅屋上
3月17日10時から16時まで宜野湾市宜野湾沖縄国際大学5号館屋上
3月18日10時から16時まで宜野湾市上大謝名普天間飛行場フェンス越し
3月24日10時から14時まで宜野湾市上原児童公園
3月25日10時から14時まで宜野湾市佐真下K氏宅内
3月26日11時から14時まで宜野湾市新城普天間第二小学校屋上
3月26日14時から15時まで宜野湾市新城普天間第二小学校教室
3月31日10時から15時まで宜野湾市嘉数高台プール
おり,屋外では単純平均で16dB大きくなっており,航空機の音圧は,騒
音問題以上に低周波音問題である可能性を否定できない。
②防音工事を施工した屋内では,約500m離れた屋外と比べ,騒音は4
2dB(A)又は32dB(A)と減少するのに対し,低周波音は変化がなく,又は
わずかな4dB(G)の減少にとどまっている。比較したデータは,同一機種
を同時刻に測定したものではないために厳密な比較にはならないけれど
も,騒音は屋内では楽になる一方,低周波音は屋外でも屋内でも余り変わ
らない性質であることが明らかであり,防音工事は低周波音の低減対策に
ならないことが分かる。
③普天間飛行場から約2km離れた地点において,CH-46が頭上を通過
して普天間飛行場へ飛行するまでの低周波音と騒音の変化を測定し,この
測定記録から低周波音と騒音の距離減衰を比較した結果,頭上音圧と音圧
とでは,低周波音は19dB(G)しか減衰しなかったのに対して,騒音は3
2dB(A)も減衰した。
④米軍機が発する低周波音の周波数を分析すると,不定愁訴など身体に影
響があるとされる周波数と重なっているので,普天間飛行場周辺住民の中
には,低周波音によって身体に悪影響を受けている被害者が存在している
可能性は否定できない。
(甲C24)
エ沖縄県による低周波音調査の結果
沖縄県は,平成13年度,平成14年度及び平成17年度に,普天間飛行場
周辺の住宅地域において,低周波音調査を実施した。
その調査結果の概要は,次のとおりである。
(ア)平成13年度調査
沖縄県は,平成13年8月14日,宜野湾市喜友名2丁目所在のアパート
(。),昭和48年環境基準の類型Ⅰに指定された地域内にある屋上において
低周波音調査を実施した。
低周波音レベルの測定は,風の影響を避けるため,リオン株式会社製低周
波音レベル計NA-18Aを二重の防風ネット内に設置し,これに同社製レ
ベルレコーダLR-06を接続して記録する方法によった。
同調査においては,同日午後2時40分から午後4時までの80分間,航
。,,空機の騒音及び低周波音レベルを観測したその結果37回の観測のうち
航空機低周波音について計測できたのは35回であり,その低周波音レベル
は,最も低い値が78.7dB(G),最も高い値が106.5dB(G)であり,8
,,0dB(G)以上90dB(G)未満が7回90dB(G)以上100dB(G)未満が10回
100dB(G)以上が17回であった。
(イ)平成14年度調査
a沖縄県は,平成15年2月5日から同月12日まで,宜野湾市喜友名2
丁目所在の防音工事の施工されていない住宅(昭和48年環境基準の類型
Ⅰに指定された地域内にある)において,屋外,屋内の騒音及び低周波。
音レベルについて測定調査を実施した。
b騒音レベルの測定は,屋外ではリオン株式会社製積分型普通騒音計NL
-06に同社製レベルレコーダLR-06を接続して記録する方法によ
り,屋内では同社製積分型普通騒音計NL-14に同社製レベルレコーダ
LR-20を接続して記録する方法によった。
また,低周波音レベルの測定は,環境庁大気保全局(当時)が平成12
年10月に明らかにした「低周波音の測定方法に関するマニュアル」に従
い,屋外ではリオン株式会社製低周波音レベル計NA-18Aを二重の防
風ネット内に設置し,これに同社製レベルレコーダLR-06を接続して
記録する方法により,屋内では同社製低周波音レベル計NA-18Aに同
社製レベルレコーダLR-20を接続して記録する方法によった。
c同調査においては,平成15年2月5日から7日間連続して航空機騒音
及び低周波音を測定し,90dB(G)以上の低周波音が発生した回数を曜日
別及び時刻別にまとめた。その結果は,それぞれ次のグラフのとおりであ
る。なお,同月10日の屋外低周波音レベルにつき,記録紙の絡まりによ
ってデータが得られなかった時間帯があるため,騒音又は屋内低周波音レ
ベルから屋外の低周波音レベルが90dB(G)以上であると推測される回数
が加えられている。
90dB(G)以上の低周波音の曜日別発生回数
日月火水木金土
曜日
低周波音発生回数
欠測時の推測回数
90dB(G)以上99dB(G)以下
100dB(G)以上
dまた,屋内の低周波音レベルは平均で10dB(G)ほど屋外より低く,騒
音レベルは平均で20dB(A)ほど屋外より低いとの結果が得られた。
eさらに,飛来したヘリコプター機種による低周波音スペクトルを分析し
た結果は,次のとおりであった。
このように,CH-53からは,20Hz及び25Hzで80dB(G)程度の
90dB(G)以上の低周波音の時刻別発生回数(週合計)


欠測時の推測回数
90dB(G)以上100dB(G)未満
100dB(G)以上
低周波音,50Hz,63Hz及び80Hzで60dB(G)を超える低周波音が発
生し,また,CH-46からは,12.5Hzから80Hzまでの各周波数で
いずれも60dB(G)を超える低周波音が発生しており,そのうち12.5H
z及び16Hzで80dB(G)を超える低周波音が生じ,さらに,AH-1から
は,10Hzから80Hzまでの各周波数でいずれも60dB(G)を超える低周
波音が発生しており,そのうち10Hz及び20Hzでは80dB(G)程度の低
周波音が生じている。
(ウ)平成17年度調査
a沖縄県は,平成18年3月3日午後2時から午後4時30までの間,宜
野湾市佐真下4番地所在の住居において低周波音調査を実施した。
b騒音及び低周波音の測定は,前記(イ)の平成14年度調査と同様,騒
音計はリオン株式会社製積分型普通騒音計NL-06を,低周波音計は同
社製低周波音レベル計NA-18,NA-18Aを用いて,同社製記録計
LR-06,LR-20に接続して記録する方法によった。
,。c同調査では米軍機に起因する75dB(G)以上の低周波音が観測された
そのほとんどが滑走路南側から着陸し北側に向け離陸するKC-130
のタッチアンドゴーの着陸時の影響であった。KC-130の影響では,
。離陸準備のための陸上移動時に屋外で86dB(G)の低周波音が観測された
一方,調査地点から数百m離れた上空をCH-46が2回飛来し,86
dB(G),88dB(G)という低周波音を屋外で記録した。屋内では屋外と比較
して低周波音レベルはおおむね10dB(G)程度低かったが,屋内の騒音と
低周波音の比較では,ヘリコプター飛来時に騒音と比較し低周波音レベル
が高めであった。
dまた,KC-130の陸上移動時の周波数分布は,着陸時と比較して2
0Hz付近の低周波側の音圧レベルが比較的高い傾向を示し,CH-46で
は,20Hz付近の音圧レベルが高く,低周波音の発生比率が高いことがう
かがえる結果であった。
(甲C21,22,50)
オ本件低周波音についての検証の結果
(ア)概要
当裁判所は,前記(3)エのとおり,平成19年5月17日(イ)から(
(オ)までにおいて,時刻のみを示すときは,いずれも同日である,普天。)
間飛行場周辺の原告らの住居等について検証を実施し,前記(3)エの本件
航空機騒音についての検証における測定場所と同一であるX276宅,X6
1宅,きさらぎ公園及びB宅の4か所において,G特性音圧レベル(L)とGMAX
1/3オクターブバンド音圧レベルについて,単発的に発生する低周波音を
測定するため,発生時の最大値を読みとった。
低周波音レベルの測定は,暗騒音レベルが高くて対象となる低周波音が精
度良く測定できない場所並びに建物や地形による音の反射,遮蔽及び回折に
よりごく局所的に音圧レベルが変化する場所を避け,風雑音減少効果の高い
全天候型防風スクリーンで保護したマイクロホンを地面上又は屋上の1.2
~1.5mの高さに設置し,これにリオン株式会社製低周波音レベル計NA
-18A及び同社製レベルレコーダLR-06を接続して記録する方法によ
った。
(イ)X276宅における検証結果
X276宅においては,午前9時13分から午前10時15分までの62
分間,暗騒音及び航空機低周波音を測定した(測定時間は各1分間。以下同
じ。その結果は,それぞれ次の表のとおりである。。)
上記のとおり,午前9時33分から午前10時11分の38分間の測定時
間内に航空機が合計6機飛行し全機につき暗騒音の最大値743dB(G),,.
....を52~281dB(G)上回るG特性音圧レベル最大値795~102
4dB(G)が計測された。
(ウ)X61宅における検証結果
X61宅においては,午前10時40分から午前11時32分までの52
分間,暗騒音及び航空機低周波音を測定した。その結果は,それぞれ次の表
のとおりである。
暗騒音(検証地点№1)
測定
開始時刻11.251.622.53.15456.38
199時13分66.666.963.564.862.655.356.955.448.448.846.0
2119時46分74.373.674.171.770.867.968.666.066.364.659.5
31610時14分68.355.455.958.957.655.748.851.450.354.550.8
測定
開始時刻1012.516202531.540506380
199時13分66.653.251.552.155.456.359.353.357.374.264.2
2119時46分74.357.858.558.962.364.161.261.662.260.660.1
31610時14分68.356.959.856.354.060.254.658.958.959.860.2


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)番

Data
No.
LGMAX
(dB)
航空機低周波音(検証地点№1)
測定
開始時刻11.251.622.53.15456.38
1109時33分90.461.461.959.860.058.157.456.653.149.962.7
2129時55分85.563.160.862.259.054.257.254.552.253.157.7
3139時59分79.568.064.960.463.462.356.755.753.948.557.6
41410時01分97.355.555.353.953.453.053.852.751.550.654.0
5(欠測)10時06分96.2
61510時10分102.456.553.654.753.251.748.650.751.551.157.0
測定
開始時刻1012.516202531.540506380
1109時33分90.485.585.160.473.883.070.571.777.176.680.1
2129時55分85.579.475.758.275.274.666.174.473.276.474.8
3139時59分79.572.766.966.168.969.068.066.466.166.265.4
41410時01分97.366.189.487.469.879.085.584.984.683.585.5
5(欠測)10時06分96.2
61510時10分102.468.593.695.275.985.789.487.085.784.487.4
(レベルレコーダ記録紙読み取り値)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)
(レベルレコーダ記録紙読み取り値)


Data
No.
LGMAX
(dB)
暗騒音(検証地点№2)
測定
開始時刻11.251.622.53.15456.38
11710時40分76.269.974.569.267.069.163.562.761.859.956.1
22010時52分70.869.267.771.873.864.963.961.759.054.953.3
32211時09分71.772.371.774.370.368.964.164.562.259.857.0
42811時31分77.484.886.983.785.181.378.776.470.668.769.4
測定
開始時刻1012.516202531.540506380
11710時40分76.251.159.968.257.262.568.461.861.859.458.2
22010時52分70.850.454.157.559.662.360.864.368.672.375.0
32211時09分71.759.959.256.359.162.865.064.168.965.763.2
42811時31分77.469.464.665.761.760.273.869.964.771.470.7


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)
上記のとおり,午前10時42分から午前11時30分の48分間の測定
時間内に航空機が合計8機飛行し,うち3機につき,暗騒音の最大値77.
4dB(G)を2.9~10.5dB(G)上回るG特性音圧レベル最大値80.3~
87.9dB(G)が計測された。
(エ)きさらぎ公園における検証結果
きさらぎ公園においては,午後1時40分から午後2時30分までの50
分間,暗騒音及び航空機低周波音を測定した。その結果は,それぞれ次の表
のとおりである。
航空機低周波音(検証地点№2)
測定
開始時刻11.251.622.53.15456.38
11810時42分87.975.173.368.967.665.168.461.560.858.056.2
21910時45分86.670.166.763.563.860.961.655.459.754.853.9
32111時03分75.578.081.778.675.471.170.469.063.863.459.7
42311時18分74.980.777.174.472.175.474.371.870.070.568.8
52411時22分72.872.573.173.570.571.367.366.164.361.559.4
62511時23分71.378.980.177.471.573.773.370.468.367.663.9
72611時25分74.576.978.276.474.373.271.568.666.165.268.1
82711時29分80.376.473.472.971.368.566.865.763.860.156.9
測定
開始時刻1012.516202531.540506380
11810時42分87.962.783.778.061.478.873.075.175.977.975.3
21910時45分86.660.080.279.061.877.171.475.773.777.780.2
32111時03分75.557.358.064.163.763.065.963.674.675.069.7
42311時18分74.965.966.361.162.361.965.865.563.477.877.5
52411時22分72.856.856.559.161.161.062.564.565.477.473.6
62511時23分71.361.757.557.456.263.160.258.668.572.265.8
72611時25分74.563.159.861.464.461.765.663.767.392.583.3
82711時29分80.356.662.768.866.670.071.671.269.891.886.5


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)
暗騒音(検証地点№3)
測定
開始時刻11.251.622.53.15456.38
12913時40分79.266.268.167.562.659.159.258.356.154.355.9
24614時29分70.655.251.953.648.853.650.648.251.545.146.8
測定
開始時刻1012.516202531.540506380
12913時40分79.258.459.863.168.265.869.362.459.164.959.3
24614時29分70.666.857.854.059.759.058.663.968.966.159.4


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)
上記のとおり,午後1時45分から午後2時23分の38分間の測定時間
内に航空機が合計15機飛行し,うち14機につき,暗騒音の最大値79.
2dB(G)を0.9~15.6dB(G)上回るG特性音圧レベル最大値80.1~
94.8dB(G)が計測された。
(オ)B宅における検証結果
B宅においては,午後2時55分から午後3時45分までの50分間,暗
騒音及び航空機低周波音を測定した。その結果は,それぞれ次の表のとおり
である。
航空機低周波音(検証地点№3)
測定
開始時刻11.251.622.53.15456.38
13013時45分83.181.480.878.677.071.169.770.965.663.059.2
23113時50分80.5
33213時53分84.168.170.268.469.566.871.070.267.061.456.4
43313時57分85.867.466.061.462.659.353.152.650.548.754.9
53414時00分81.067.565.069.560.360.958.755.550.647.347.4
63514時01分94.874.877.170.366.467.265.264.861.658.159.7
73614時06分92.266.563.462.958.957.253.053.850.450.364.1
83714時07分81.065.863.760.960.057.554.855.753.551.352.5
93814時10分87.768.565.562.562.062.556.453.554.248.855.8
103914時13分82.178.077.678.673.876.973.475.269.966.262.6
114014時15分83.974.970.971.969.667.567.765.662.056.456.2
124114時16分85.874.275.572.169.965.664.466.465.263.659.5
134214時18分77.565.365.368.264.757.455.552.653.249.748.5
144314時19分82.264.267.164.461.062.557.955.755.051.956.0
154414時22分80.163.060.563.764.361.459.558.556.854.252.2
測定
開始時刻1012.516202531.540506380
13013時45分83.177.870.261.372.268.570.167.671.869.377.9
23113時50分80.5
33213時53分84.179.875.056.272.970.477.073.475.672.670.1
43313時57分85.878.674.655.875.275.673.673.371.773.774.5
53414時00分81.055.874.867.959.074.265.570.672.272.172.1
63514時01分94.884.089.865.281.284.777.376.384.781.080.9
73614時06分92.286.980.864.381.778.879.474.577.176.172.9
83714時07分81.061.776.769.268.474.169.568.670.469.869.0
93814時10分87.777.181.177.472.181.075.978.671.771.867.2
103914時13分82.178.172.357.370.667.668.664.967.564.364.1
114014時15分83.960.075.876.958.073.368.970.570.773.169.7
124114時16分85.880.776.754.474.872.573.372.173.470.368.7
134214時18分77.557.872.864.357.869.161.368.668.966.964.5
144314時19分82.278.870.461.670.468.071.269.569.072.167.9
154414時22分80.159.174.370.957.970.466.371.268.870.867.9
(欠測)(レベルレコーダ記録紙読み取り値)
(欠測)(レベルレコーダ記録紙読み取り値)


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)
上記のとおり,午後2時57分から午後3時45分の48分間の測定時間
(()内に航空機が合計18機この18機以外に計測された1機DataNo.55
は,嘉手納飛行場所属のものであり,検証の対象外である)が飛行し,全。
機につき,暗騒音の最大値78.6dB(G)を2.6~18.9dB(G)上回るG
暗騒音(検証地点№4)
測定
開始時刻11.251.622.53.15456.38
14714時55分78.656.252.654.349.848.347.951.048.243.752.3
25315時20分74.678.075.972.063.558.958.857.150.148.346.2
測定
開始時刻1012.516202531.540506380
14714時55分78.667.669.051.666.667.363.961.865.565.458.7
25315時20分74.650.054.761.558.070.365.567.765.861.059.2


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)
航空機低周波音(検証地点№4)
測定
開始時刻11.251.622.53.15456.38
14814時57分91.658.957.461.459.251.652.653.455.159.563.6
24915時00分91.968.463.162.961.358.658.151.554.752.562.6
35015時07分97.564.160.960.857.760.458.557.658.059.168.0
45115時12分90.164.565.763.864.561.259.157.457.258.168.1
55215時17分86.075.772.871.865.360.364.358.854.949.759.7
65415時23分95.870.768.265.463.564.259.859.259.952.566.0
75515時26分82.362.357.959.354.751.650.050.850.745.447.3
85615時27分81.258.557.961.359.355.049.651.049.146.950.5
95715時30分83.954.554.251.147.749.349.453.448.746.747.7
105815時31分84.862.362.263.463.461.961.058.752.547.449.7
115915時32分88.253.351.147.548.347.544.656.352.247.955.3
126015時33分86.275.573.172.764.966.666.568.066.059.060.0
136115時35分88.754.250.456.858.754.954.755.056.052.660.7
146215時37分84.955.955.851.752.549.550.449.652.753.354.6
156315時38分86.185.886.185.885.384.583.482.280.878.976.8
16(欠測)15時40分96.8
176415時42分88.949.849.652.646.746.647.951.955.248.761.9
186515時43分92.355.954.657.172.147.647.953.853.857.060.8
196615時44分88.176.167.471.771.764.566.661.657.453.951.8
測定
開始時刻1012.516202531.540506380
14814時57分91.684.586.463.779.879.882.779.187.183.378.8
24915時00分91.987.481.458.280.476.470.471.473.771.065.0
35015時07分97.583.982.464.688.084.683.977.781.478.076.1
45115時12分90.185.178.660.679.580.379.777.581.082.578.3
55215時17分86.081.774.361.875.972.069.871.770.064.565.9
65415時23分95.866.782.489.067.181.782.592.182.882.678.6
75515時26分82.352.374.075.253.470.978.070.470.074.970.8
85615時27分81.256.775.970.157.873.673.578.575.573.171.5
95715時30分83.956.177.772.358.274.465.660.259.373.261.0
105815時31分84.856.977.674.763.778.379.475.676.773.171.5
115915時32分88.279.382.068.669.080.461.266.171.169.667.3
126015時33分86.271.177.175.074.675.477.076.978.170.366.3
136115時35分88.785.477.177.277.575.083.777.780.277.872.4
146215時37分84.965.978.076.364.475.369.062.270.866.965.0
156315時38分86.184.674.173.675.577.272.279.373.375.974.9
16(欠測)15時40分96.8
176415時42分88.984.077.377.174.680.479.775.475.177.976.1
186515時43分92.381.980.672.383.179.579.171.273.871.170.3
196615時44分88.167.080.379.865.074.770.868.870.867.968.0
(レベルレコーダ記録紙読み取り値)
(レベルレコーダ記録紙読み取り値)


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)


Data
No.
LGMAX
(dB)
1/3オクターブ中心周波数(Hz)
特性音圧レベル最大値81.2~97.5dB(G)が計測された。
(以上オにつき検証の結果)
(5)本件航空機騒音の態様と侵害の程度及びその継続の経緯等についての検討
ア本件航空機騒音の発生状況の評価方法
(ア)本件航空機騒音の原告らに対する影響は,本件航空機騒音の音量,音
質,発生回数,原告らの居住地と普天間飛行場との距離,飛行経路,離着陸
方向等に大きく左右され,更に風向,気温,地形等の自然的条件によっても
変化し得ることは,経験則上明らかである。しかし,普天間飛行場が米軍の
管理運営する飛行場であることから,普天間飛行場における米軍機の飛行実
態についても,前記(3)ア(イ)の認定事実のとおり飛行経路が複数でか
つ規則性がないという限度で認めることができるものの,それを超えて,米
軍機の日常の飛行回数,飛行経路等を具体的に認めるに足りる証拠がない。
そのため,本件航空機騒音の発生の実態を具体的かつ正確に把握することも
困難であるといえる。また,個々の原告の居住地に到達する本件航空機騒音
の程度についても,普天間飛行場と各原告の居住地との距離だけから直ちに
推認することができるものではなく,上記のとおり,飛行経路との位置関係
や地形等様々な要素によって異なるところ,こうした要素についても証拠上
明確とはなっていない。
しかし,WECPNLは,前記前提事実2のとおり,航空機騒音を適切に評価さ
れるためにICAOにおいて提案されたものであり,前記(1)イの認定事
実のとおり,我が国でも,昭和48年環境基準に採用されている上,防衛施
設庁(当時)は,前記(1)ウの認定事実のとおり,普天間飛行場のような
防衛施設としての飛行場については,民間航空機が使用する民間空港と異な
り,1日の飛行機数に変動があることから,その住民反応を考慮して,防衛
施設庁方式によるW値の算定方法を定めた上,前記(2)アの認定事実のと
おり,昭和52年12月に,株式会社アコーテックに委託して,普天間飛行
場周辺において,事前調査を含め17日間にわたる大規模かつ詳細な騒音測
定等の調査を行い,これに基づき,防衛施設庁方式に沿ってW値を算出し,
騒音コンター図を作成して,昭和56年及び昭和58年,順次,昭和56年
告示又は昭和58年告示として普天間飛行場に係る生活環境整備法所定の第
1種区域である本件コンターを指定している。
以上のように,本件コンターは,大規模かつ詳細な騒音測定等の調査に基
づき,防衛施設としての飛行場について適切に評価する方法により本件航空
機騒音を評価した結果によっていることからすると,昭和52年当時の本件
航空機騒音の実態に照応したものであると推認することができる。
しかも,航空機騒音は,前記前提事実2のとおり,騒音レベルが他の発生
源による騒音と比較してはるかに高く,広範囲に及ぶという特質があること
にかんがみれば,本件コンターを基礎として,一定程度の広がりを持った地
域ごとに,その地域に居住する住民がほぼ同程度の騒音に暴露されていると
推認するのが相当である。
したがって,本件航空機騒音の態様とその程度は,少なくとも本件コンタ
ーのための騒音測定等の調査がされた昭和52年当時については,本件コン
ターを基礎として推認するのが相当というべきである。
(イ)一方,原告らは,本件コンターについては,騒音コンターを作成する
際に,累積度数曲線における計測データのプロット位置を誤ったため,本件
コンターのW値が全体的に2.5程度過小に評価されていると主張する。そ
して,沖縄県調査報告書には「累積度数曲線は0.5日ずれてプロットさ,
れており,得られた値は総飛行機数の90パーセンタイル値ではなく,約8
3パーセンタイル値に相当していた。このため,飛行機数を訂正した上で各
測定点のWECPNLを再計算した」ところ「普天間飛行場の標準飛行機数は,,
折れ線による累積度数曲線の近似で…311(機/日,階段状の関数を用)
いた場合は…349(機/日)であった」ので「防衛施設庁の地域区分は,
騒音曝露量を測定データによって推定される値よりも若干低く見積もってい
る可能性がある」とこれに沿う記載があり(甲D1,証人平松も「国が騒)
音コンターを作成した際の累積度数曲線について,縦軸は連続している日数
のデータであるから,7日間を測定した場合には,例えば1日目は0.5の
ところに,7日目については6.5のところにプロットしなければならない
,,,のに1日目を1のところに7日目は7のところにプロットしているので
誤っている。その結果,普天間飛行場では,約2.5程度のW値の差であっ
た」などとこれに沿う証言をする。。
しかし,被告が本件コンターを作成するための資料として作成した累積度
数曲線は,次の図のとおりであり,1日当たりの総飛行機数の出現日数を度
数(ある数値の出現回数)と
捉えた上,累積度数を縦軸,
総飛行機数を横軸として,1
日当たりの総飛行機数を,そ
の少ない方からその対応する
度数を累積加算して得られた
度数軸上にそれぞれプロット
したものを曲線で結んだもの
であると理解することができ
る。すなわち,7日の間に,
37,62,97,128,
142,158,349とい
う1日当たりの総飛行機数の出現回数はそれぞれ1回であるから,累積度数
1が総飛行機数37,累積度数2が総飛行機数62,累積度数3が総飛行機
数97,累積度数4が総飛行機数128,累積度数5が総飛行機数142,
累積度数6が総飛行機数158,累積度数7が総飛行機数349と,それぞ
れ縦軸の1から7までの各整数軸上にプロットして,その少ない方から数え
て累積度数90%に相当する1日の標準飛行回数を175機と算出したこと
が誤っているということはできない。これに対し,沖縄県調査報告書は,上
記のとおり,累積度数90%に相当する1日の標準飛行回数が311機又は
349機となると指摘するけれども,そのうち,349機は,最も多く飛行
した日の飛行機数と同一の数字であって,これを累積度数90%に相当する
1日の標準飛行回数とみることに合理性はなく,また,311機も,最も多
く飛行した349機の89%に相当する数字であって,2番目に多く飛行し
た158機と比べても,これを累積度数90%に相当する1日の標準飛行回
数とみることに合理性があるということはできない。
したがって,累積度数曲線の作成に誤りがあるとは認められないから,原
告らの本件コンターのW値が全体的に過小評価されているとの主張は,前提
を欠くので,採用することはできない。
以上のとおり,本件航空機騒音の態様とその程度については,昭和52年
当時については,本件コンターを基礎として推認することが相当であるとい
うべきである。
(ウ)次に,本件コンターは,現在から30年以上前の昭和52年に実施さ
れた調査に基づいて作成されたものであるものの,前記(ア)のとおり,大
規模かつ詳細な騒音測定等の調査に基づくものであり,このような調査に基
づいて本件航空機騒音の実態を把握する資料は本件コンターを除いて外にな
いから,本件コンターに基づいて昭和52年当時から現在までの本件航空機
,,騒音の発生状況を推認することにもこれに反する客観的な証拠がない限り
合理性・相当性があるというべきである。
ところで,近年においては,前記(3)ウの認定事実のとおり,沖縄県や
被告により設置等された固定測定局点における測定結果という約10年又は
約20年という比較的長期間にわたり継続的に行われた信用性の高い調査結
。,,()果があるもっとも本件コンター内の騒音測定局点は前記前提事実61
及び前記(3)ウの認定事実のとおり,W80区域が沖縄県設置に係る2測
定局(県野嵩測定局,県上大謝名測定局)と被告設置に係る2測定点(国新
城測定点,国大謝測定点)の合計4地点,W75区域が沖縄県設置又は管理
に係る2測定局(県新城測定局,市真志喜測定局)にとどまるから,これら
のごく限られた測定局点における騒音測定結果をもって,本件コンター内全
域における本件航空機騒音の発生状況を推認することには限界があるともい
える。
以上に照らすと,上記各測定局点を本件コンター内のW80区域又はW7
5区域に分け,それぞれの騒音の大きさ,騒音発生回数及び年間W値等の数
値やその推移を把握した上で,同じW値区域に属する測定局点間における相
互の測定結果及びその各測定局点の測定結果と当該測定局点の属する区域の
本件コンターのW値との間に著しい乖離,矛盾がみられない限り,本件コン
ターに基づいて,昭和52年当時から現在までの間の本件航空機騒音の地域
的な広がり及び発生の程度を把握することは,合理性・相当性があるという
べきである。
そこで,以下では,これらの測定結果のほか,前記(3)エの認定事実の
とおりの本件航空機騒音についての検証の結果も踏まえ,W80区域又はW
75区域に応じて,各区域ごとの本件航空機騒音による発生状況を類型的に
検討する。
イW80区域における近年の本件航空機騒音の発生状況
W80区域に設置されてる測定局点は,前記ア(ウ)のとおり,県野嵩測定
局及び県上大謝名測定局並びに国新城測定点及び国大謝名測定点の4地点であ
る。
(ア)前記(3)ウ(イ)及び(ウ)の認定事実のとおりの上記4測定局点
における平成9年度以降の最高音圧レベル,1日平均の騒音発生回数及び環
,。境基準超過率の各推移をまとめるとそれぞれ次の各グラフのとおりとなる
最高音圧レベルの推移(W80区域)
年度(H:平成)
dB(A)
野嵩(沖縄県)115.0112.0119.0115.8112.6115.8113.2
上大謝名(沖縄県)119.0120.6123.0119.3120.4114.5117.6
大謝名(被告)116.8115.8120.6116.3116.9111.9110.3112.3111.0113.1
新城(被告)115.3116.4116.1112.6119.4115.0112.2112.2115.7113.8
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
1日平均騒音発生回数の推移(W80区域)
年度(H:平成)
回/日
野嵩(沖縄県)23.028.832.834.129.631.429.919.525.6
上大謝名(沖縄県)39.932.863.098.181.599.090.559.657.1
大謝名(被告)56.454.859.572.35948.431.515.622.121.6
新城(被告)32.738.744.941.541.349.934.419.426.425.3
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
上記の各グラフのとおり,最高音圧レベルは,各測定局点において毎年1
10dB(A)以上という相当高い数値を示している。また,1日平均の騒音発
生回数についてみると,県野嵩測定局にあっては20数回程度でおおむね横
ばい,又は漸減し,県上大謝測定局,国大謝測定点及び国新城測定点の3地
点にあっては平成12年度又は平成14年度以降減少し,国大謝名測定点及
び国新城測定点の数値は県野嵩測定局と同程度になっている。また,環境基
準超過率については,県上大謝名測定局は63.8~79.1%と高い数値
を示しているけれども,他の3地点においては,平成9年度又は平成10年
度と比べると相当程度減少している。このように,県上大謝名測定局と他の
3地点とでは,その数値及び推移につき若干の相違があるけれども,著しい
乖離,矛盾があるとは認められない。
これら4地点における騒音の大きさや発生回数は,平成9年度以降,県上
大謝名測定局を除き,騒音の発生回数及び環境基準超過率がいずれもおおむ
ね減少している一方,なお環境基準超過率は30%を超え,かつ,最高音圧
レベルは高い数値を維持しており,近年においても,これらの4地点におい
ては,かなり大きな騒音が高い頻度で発生しているということができる。こ
環境基準超過率の推移(W80区域)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
80.0%
90.0%
100.0%
年度(H:平成)
超過率
野嵩(沖縄県)64.4%68.8%62.8%52.9%57.8%47.7%34.3%42.5%
上大謝名(沖縄県)75.1%78.9%76.5%79.1%66.6%74.0%63.8%71.0%
大謝名(被告)74.1%77.9%74.4%72.8%74.8%71.5%55.6%37.4%57.2%54.2%
新城(被告)74.5%72.8%76.8%71.3%72.3%67.8%60.3%47.3%58.6%58.1%
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
のことは,W80区域にあるX276宅及びX61宅において実施した当裁
判所の検証により,70dB(A)以上の本件航空機騒音が,X276宅では3
9分間の測定時間内に4回,X61宅では49分間の測定時間内に9回,そ
れぞれ測定されたこととも矛盾していない。
(イ)また,前記(3)ウ(イ)及び(ウ)の認定事実のとおりの上記4測
定局点の平成9年度以降の年間W値の推移をまとめると,次のグラフのよう
になる。
上記4測定局点は,上記グラフのとおり,いずれも,数値に違いはあるけ
れども,平成13年度に最高値を記録した後,平成16年度にかけて低くな
り,平成17年度に再び高くなっている。そうすると,各測定局点における
年間W値は,いずれも同じように推移していると評価することができる。
(ウ)そして,前記(3)イの認定事実のとおり,沖縄県調査において,県
等測定局における平成9年度の騒音測定結果を基に算出した沖縄県調査施設
庁方式近似W値は,県上大謝名測定局で本件コンターのW値よりも高い数値
を示していることを除き,本件コンターのW値と比較的よく一致していると
の結論が示されているところ,この結論は,前記(3)ウ(イ)a(f)の
年間W値の推移(W80区域)
年度(H:平成)
WECPNL
野嵩(沖縄県)76.276.776.576.779.376.173.772.073.8
上大謝名(沖縄県)83.183.583.384.086.881.882.378.780.9
大謝名(被告)81.082.181.980.681.578.474.873.075.475.8
新城(被告)79.980.980.379.882.778.877.174.276.576.7
H9H10H11H12H13H14H15H16H17H18
認定事実のとおり,県野嵩測定局における昭和56年度から平成9年度まで
の年間W値が,おおむね75から80までの間で推移し,特段の増減傾向が
認められないことによっても裏付けられる。
しかも,上記の年間W値は,環境基準方式によるものであるところ,防衛
施設庁方式のW値は,前記(1)イ及びウの認定事実のとおり,継続時間に
ついて環境基準方式が一定値で補正するのに対し,継続時間を測定して補正
するため,被告指摘のように継続時間が短い滑走路に近い地点では,環境基
(,()()準方式よりも低い数値となることがあり得るもっとも前記1イオ
のような,騒音の継続時間が,ヘリコプターの方がジェット機よりも長いこ
,,とが多いとの指摘があることを考慮すると防衛施設庁方式のW値の数値が
前記(3)ア(ア)のとおり常駐機にヘリコプターが多い普天間飛行場にお
いて,滑走路に近い地点では,環境基準方式のW値の数値よりも当然に低い
数値となるということはできない)としても,そもそも,前記ア(ア)の。
とおり,防衛施設としての飛行場の周辺における住民反応を考慮して,年間
平均でなく,1日の飛行回数の累積度数90%の飛行回数を用いることを基
本としているから,理論上,環境基準方式のW値よりも高い数値となること
を前提としているといえる上,環境基準方式では,航空機騒音をレベル変動
のピーク値のみで評価するので,エンジン調整音のような継続時間の長い騒
音は防衛施設庁方式と比べ相対的に過小評価されるから,上記年間W値は,
防衛施設庁方式で定められた本件コンターのW値と比べると,相対的に低い
数値となっていることを考慮する必要がある。しかも,県等測定局の測定で
,,はトランスポンダ信号を発する飛行中又は離着陸時の騒音のみが集計され
エンジン調整音を考慮していない(甲B7)ので,県等測定局における年間
W値は,本件コンターのW値と比べ,相対的に一層低い数値となって表れる
ことを考慮する必要がある。そして,平成9年度の年間W値について,県野
嵩測定局で76.2であり,県上大謝名測定局で83.1であるのに,沖縄
県調査委員会による調査結果では,前記(3)イの認定事実のとおり,沖縄
県調査施設庁方式近似W値をそれぞれ81,88と算出していることなどに
照らすと,W80区域のW値(防衛施設庁方式のW値80~85)と比べ,
環境基準方式の年間W値5程度低いからといって,直ちに,W80区域のW
値との間に乖離,矛盾があるとみるのは相当とはいえない。
そこで,各測定局点における年間W値をみると,平成9年度から平成17
年度までの間,県上大謝名測定局では,平成16年度の78.7を除き,い
ずれも80を超えており,他の測定局点でも,県野嵩測定局の平成15年度
(73.7,平成16年度(72.0)及び平成17年度(73.8)の)
数値,大謝測定点及び国新城測定点の平成16年度の数値(大謝測定点につ
き73,国新城測定点につき74)を除き,いずれも75を超えている。も
っとも,これらの75を下回る5つの測定結果は,W80区域のW値との間
に乖離,矛盾を示すものという余地があるものの,その程度は,1から3ま
,,,での間にとどまっている上これらの3地点ではいずれも平成17年には
高い数値となり,県野嵩測定局を除き75以上の数値となっていること及び
県野嵩測定局の測定では上記のとおりエンジン調整音が考慮されていないこ
となどを併せ考慮すると,その乖離,矛盾の程度が著しいということまでは
できない。
したがって,上記各測定局点における年間W値は,W80区域の本件コン
ターのW値と,おおむね整合しているといえる上,乖離,矛盾があるという
,。余地がある部分についてもその程度が著しいとまではいうことができない
(エ)以上によれば,W80区域については,W80区域に設置されている
測定局点間における相互の測定結果及び同測定局点の測定結果とW80区域
の本件コンターのW値との間に著しい乖離,矛盾がみられないので,本件コ
ンターに基づいて本件航空機騒音の発生の地域的な広がり及び発生の程度を
把握することに合理性・相当性があるから,原告らは,昭和52年当時から
現在まで,W80区域に居住している期間,かなり大きな騒音に高い頻度で
暴露されていると推認することができる。
ウW75区域における近年の本件航空機騒音の発生状況
W75区域に設置されている測定局点は,前記ア(ウ)のとおり,県新城測
定局及び市真志喜測定局の2地点である。
(ア)前記(3)ウ(イ)の認定事実のとおりの上記2地点における平成1
1年度以降の最高音圧レベル,平成9年度以降の1日平均の騒音発生回数及
び平成10年度以降の環境基準超過率の各推移をまとめると,それぞれ次の
各グラフのとおりとなる。
最高音圧レベルの推移(W75区域)
年度(H:平成)
dB(A)
新城(沖縄県)110.7109.9107.4106.0110.6107.7103.7
真志喜(沖縄県)98.6100.9104.1105.1100.296.599.2
H11H12H13H14H15H16H17
1日平均騒音発生回数の推移(W75区域)
年度(H:平成)
回/日
新城(沖縄県)38.877.641.823.924.677.373.041.455.9
真志喜(沖縄県)26.265.446.143.529.835.028.615.121.1
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
上記の各グラフのとおり,最高音圧レベルは,毎年,県新城測定局におい
ては105dB(A)以上,市真志喜測定局においては95dB(A)以上といずれも
高い数値を示している。また,1日平均の騒音発生回数についてみると,両
,,測定局においても平成10年度から平成13年度にかけておおむね減少し
平成14年度に増加した後,平成16年度にかけて減少し,平成17年度に
。,,増加に転じるという推移となっているさらに環境基準超過率については
両測定局の間で,平成13年度までの数値及び推移に相違がみられるけれど
も,平成14年度以降は,平成16年度にかけて減少し,平成17年度に増
加に転じており,同じ推移となっている。このように,両測定局における測
定結果の数値及び推移には,最高音圧レベル及び環境基準超過率の点で相違
があるけれども,1日平均の騒音発生回数の推移は同じであるなど,両者の
間に著しい乖離,矛盾があるとまではいえない。
そこで,両地点における本件航空機騒音の発生状況について,W80区域
にある測定局点と比べてみると,両地点の本件航空機騒音の発生は,前記
(3)ウ(イ)及び(ウ)の認定事実のとおり,①最高音圧レベルの大きさ
及び環境基準超過率についてはW80区域にある測定局点と比べて低いもの
の,②1日平均の騒音発生回数については,15.1~77.6回の間にあ
環境基準超過率の推移(W75区域)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
80.0%
90.0%
100.0%
年度(H:平成)
超過率
新城(沖縄県)13.7%12.4%5.5%30.4%46.0%39.1%20.9%24.4%
真志喜(沖縄県)39.7%43.1%40.7%33.4%32.2%24.0%11.7%19.6%
H10H11H12H13H14H15H16H17
,.,り平成9年度から平成17年度までの平均が県新城測定局で約505回
市真志喜測定局で約34.5回であるのに対し,W80区域にある測定局点
も15.6~99回の間にあって,同期間における県野嵩測定局の平均の約
28.3回や平成10年度から平成17年度までにおける県上大謝名測定局
の平均の約69.1回などと比べても,さほど変わらず,③1日平均騒音累
積時間や夜間並びに夕方及び夜間の1日平均騒音発生回数についても,どち
らが上回っているといえるものでもないので,近年においても,上記両地点
においては,大きい騒音が高い頻度で発生しているということができる(な
お,WECPNLは,環境基準方式,防衛施設庁方式のいずれであっても,前記前
提事実4並びに前記(1)イ及びウの認定事実のとおり,航空機騒音のピー
クレベル(音の強度,機数(飛行回数)及び飛行時刻が主な算定要素とな)
っているところ,W80区域設置の4地点とW75区域設置の2地点の各測
定局点において,このように飛行回数や飛行時刻に関する測定データに差が
ないことに照らすと,環境基準超過率や後記(イ)年間W値の差は,最高音
圧レベルの大きさにみられるように,主に航空機騒音のピークレベルの違い
から生ずるものと推認することができる。このことは,W75区域にある。)
きさらぎ公園及びB宅において実施した当裁判所の検証により,70dB(A)
以上の本件航空機騒音が,きさらぎ公園では43分間の測定時間内に3回,
B宅では48分間の測定時間内に10回,それぞれ測定されたこととも整合
している。
(イ)また,前記(3)ウ(イ)の認定事実のとおりの上記2地点の平成9
年度以降の年間W値の推移をまとめると,次のグラフのようになる。
年間W値は,県新城測定局及び市真志喜測定局において,上記グラフのと
おり,いずれも,平成15年度まではおおむね70前後で推移し,平成16
年度に市真志喜測定局で66.2に低下がみられるものの,平成17年度に
は再び上昇し,県新城測定局と同程度の数値になっている。年間W値は,両
測定局において,数値及び推移いずれについても,多少のばらつきや不一致
があるけれども,相互に著しく乖離,矛盾するものとはいえない。
(ウ)そして,前記(3)イの認定事実のとおり,沖縄県調査委員会による
調査結果において,県等測定局における平成9年度の騒音測定結果を基に算
出した沖縄県調査施設庁方式近似W値は,W75区域にある測定局では,い
ずれも本件コンターのW値と比較的よく一致しているとの結論が示されてい
る。しかも,前記イのとおり,環境基準方式による年間W値は,防衛施設庁
方式で定められた本件コンターのW値と比べるには,相対的に低い数値とな
っていることを考慮する必要がある上,県等測定局における年間W値につい
ては,本件コンターのW値と比べ,相対的に一層低い数値となることを考慮
する必要があるところ,平成9年度における両測定局の年間W値について,
県新城測定局で72.7,市真志喜測定局で69.9であるのに,沖縄県調
査では,沖縄県調査施設庁方式近似W値をそれぞれ77,74としているこ
年間W値の推移(W75区域)
年度(H:平成)
WECPNL
新城(沖縄県)72.772.171.570.072.472.672.269.769.2
真志喜(沖縄県)69.970.671.171.170.070.168.966.267.9
H9H10H11H12H13H14H15H16H17
となどに照らすと,W75区域のW値(防衛施設庁方式のW値75~80)
と比べ,環境基準方式の年間W値が4程度低いからといって,直ちに,W7
5区域のW値との間に乖離,矛盾があるとみるのは相当とはいえない。
そこで,上記両測定局における年間W値をみると,県新城測定局における
平成12年度700平成16年度697及び平成17年度6(.),(.)(
.)(.),92の測定結果並びに市真志喜測定局における平成9年度699
(.),(.),(.平成10年度706平成13年度700平成14年度70
1,平成15年度(68.9,平成16年度(66.2)及び平成17年))
度(67.9)の測定結果を除くと,いずれも71以上の数値であるから,
これらの測定結果を除く測定結果については,W75区域のW値との間に乖
離,矛盾があるとみることはできない。また,県新城測定局のこれらの測定
結果についても,71という数値からの乖離の程度は最大で2程度にとどま
るから,乖離の程度が著しいとはいえない。一方,市真志喜測定局のこれら
の測定結果については,平成16年度の数値は71という数値から5程度乖
離しており,乖離の程度は相当なものであるといえるけれども,平成17年
度には67.9にまで上昇していることにかんがみると,平成16年度の低
い数値は一時的なものであるとみる余地もあるから,なおその乖離,矛盾の
程度が著しいと断ずることまではできない。
したがって,上記両測定局における年間W値は,W75区域の本件コンタ
ーのW値と乖離,矛盾があるという余地があるといえても,その程度が著し
いとまではいうことができない。
(エ)以上によれば,W75区域についても,W75区域に設置されている
測定局間における相互の測定結果及び同測定局の測定結果とW75区域の本
件コンターのW値との間に著しい乖離,矛盾がみられないので,本件コンタ
ーに基づいて本件航空機騒音の発生の地域的な広がり及び発生の程度を把握
することに合理性・相当性があるといえるから,原告らは,昭和52年当時
から現在まで,W75区域に居住している期間,大きな騒音に高い頻度で暴
露されていると推認することができる。
エ本件航空機騒音の影響等に関する被告主張についての検討
(ア)これに対して,被告は,まず,原告らに対する本件航空機騒音の影響の
有無,程度は,各原告ごとに確定されなければならないので,本件コンター
内に居住しているからといって,実際に暴露されている航空機騒音のW値が
本件コンターの数値であるということにはならないと主張する。
,,,()確かに原告らに対する本件航空機騒音の影響の有無程度は前記アア
のとおり,本件航空機騒音の音量,音質,発生回数のほか,原告らの居住地
と普天間飛行場との距離,飛行経路,離着陸方向,更に風向,地形等の自然
条件によっても異なるから,各原告らの居住地ごとに本件航空機騒音の影響
の有無,程度も異ってくるといえる。しかし,騒音は,大気汚染や水質汚染
とは異なり,物質的な痕跡を残さない性質を有しているといえるところ,殊
に航空機騒音は,前記ア(ア)のとおり,騒音レベルが高く,広範囲に及ぶ
特質を有していることにかんがみれば,一定の程度の広がりを持った地域ご
とに,その地域に居住する住民がほぼ同程度の騒音に暴露されていると推認
することが合理的というべきである。しかも,原告らは,原告らが本件コン
ター内に居住することにより最低限度共通に生じている被害をもって,本件
航空機騒音による被害と主張しているから,厳密にいえば暴露される騒音量
に多少の差異はあっても,慰謝料の額に差を設ける程度の違いがない地域に
居住する原告らを一つのグループとし,本件航空機騒音による侵害の程度を
把握することが合理的であるといえるから,本件コンターのW75区域とW
80区域の区分によって本件航空機騒音の発生状況を推認することも合理性
・相当性があるというべきである。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(イ)また,被告は,原告らが主張する共通被害を前提とする場合,1日2
4時間を通して騒音に暴露されていることを前提に算出されたW値を用いる
ことが不当であり,一定の合理的な根拠により特定した,多くの原告らが騒
音に暴露されていないと推定される時間帯の騒音を控除して算出されたW値
を用いるべきであって,本件コンター外の事業所に勤務する有業者をも含め
た原告らに共通する被害としては,少なくとも平日の午前9時から午後5時
までの騒音を除いたものと解すべきであるから,その時間帯に発生した騒音
を除外して,共通する被害の評価を行うことが妥当であると主張する。
被告のこの主張は,原告らが本件航空機騒音により被害を受ける時間帯及
び量が最低限共通するかどうかという観点から,本件航空機騒音による暴露
量の最も少ない者の被害をもって原告らに共通する被害とすべきであるとの
趣旨のものであると解されるところ,確かに,本件コンター外に通勤してい
る原告らは,勤務時間帯は,本件航空機騒音に直接暴露されることはないと
いえる。しかし,原告らは,第1事件及び第2事件のそれぞれ訴え提起時,
20未満の者が第1事件で24名,第2事件で31名であり,20歳以上6
5歳未満の者が第1事件で120名,第2事件で122名であり,65歳以
,,,上の者も第1事件で51名第2事件で48名であるなど様々でありまた
有職者であっても夜間に就業する者があることもうかがわれる(甲B1の7
3,124,126,B39の1)ので,それぞれ生活条件(有職者である
か無職者であるか,有職者であっても就業場所や就業条件がどうか,無職者
であっても就学しているかどうか,就学している者であっても就学場所がど
うかなど)に応じて,原告ら各自が実際に暴露される時間帯及び態様が異な
ることは容易に想定することができ,殊更,本件コンターへの通勤者のみを
捉えて,共通被害やその前提となる侵害行為の程度を捉えることに合理性が
あるとはいえない。結局,原告らの生活条件には,様々なものがあり,その
相違による暴露時間及びその程度も異なるけれども,本件コンター内に居住
しているという観点から,最小限度等しく暴露している本件航空機騒音によ
る侵害行為の程度及びこれによる被害の程度を考慮して,普天間飛行場の供
用の違法性の判断をすれば足りるというべきである。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(ウ)さらに,被告は,本件航空機騒音による侵害行為の程度を評価するに
当たっては,航空機騒音が一過性で間欠的であること,日々変化すること,
建物による遮音効果があることを考慮すべきであると主張する。
しかし,WECPNLは,前記前提事実2及び前記(1)のとおり,航空機騒音
が間欠的であることを考慮された数値であり,本件コンターのW値も,これ
を踏まえた上で,前記ア(ア)のとおり,更に防衛施設としての飛行場の周
辺のように1日の飛行機数に変動がある場合における住民反応を考慮した数
値である。また,航空機騒音が間欠的で日々変化することは,原告らのよう
に本件航空機騒音に暴露する者にとっては,本件航空機騒音に暴露する機会
を予測して行動することを困難であるにもかかわらず,これが繰り返される
ことを意味しているから,本件航空機騒音に被告主張のように間欠的で日々
変化するなどの特徴があることから,本件航空機騒音による侵害行為の程度
を低くみるべきとはいえない。さらに,建物による遮音効果については,我
が国では平均10~15dB(A)程度あるとされる(弁論の全趣旨)ものの,
一律のものではなく,窓の開閉によってその効果が大きく異なると想定され
るのに加え,高温多湿である沖縄においては,後記5(2)オ(ア)のとお
り,住宅防音工事を実施した原告らであっても,冷房装置の電気料金の負担
等の理由から,結局のところ,窓を閉め切って生活する場面は生活全体から
すれば一定の限度にとどまるといえる上,普天間飛行場周辺住民に窓を閉め
て生活することを強いる理由もないことなどを考慮すると,本件航空機騒音
による侵害行為の程度をそれだけで相当程度低くみるべきとはならないとい
うべきである。
したがって,被告の上記主張も採用することはできない。
オ昭和47年5月15日から昭和52年までの本件航空機騒音の暴露状況
沖縄県が昭和50年10月23日午後零時から翌24日午後零時まで深夜を
除き実施した調査において,60dB(A)以上の音が5秒以上継続した航空機騒
音が,普天間第二小学校において198回,宜野湾市字赤道396番地におい
て181回,同市字佐真下260番地において187回記録され,うち80dB
(A)以上の騒音発生回数は普天間第二小学校において41回,宜野湾市字赤道
396番地において31回,同市字佐真下260番地において111回記録さ
れて,環境基準方式によるW値についても,普天間第二小学校において73.
9,宜野湾市字赤道396番地において70.7,同市字佐真下260番地に
おいて79.9と算出されていること(甲C7,普天間飛行場周辺では,宜)
野湾市長が,当時の普天間飛行場の司令官に対し,昭和44年ころ,本件航空
機騒音による被害を問題として善処を求める要望を行い,また,教職者らが,
昭和45年ころ,本件航空機騒音等の即時中止を要求する決議をしたこと(乙
C5,6,沖縄国際大学においては,昭和47年4月に開校したころから,)
本件航空機騒音により,授業が何遍も中断する状況が生じていたこと(証人S
2)からすれば,普天間飛行場周辺地域は,昭和47年ころから昭和52年ま
での間についても,同年当時とあまり変わらない程度の騒音に暴露されていた
と推認することができるというべきである。
したがって,普天間飛行場周辺地域においては,昭和47年5月15日(沖
縄の復帰の日)から昭和52年当時までの間も,普天間飛行場を離着陸等する
米軍機により,かなり大きな又は大きな騒音が高い頻度で発生していると推認
することができる。
カ本件低周波音の発生状況
()(),,,ア前記4ウからオまでのとおり本件コンター内の大謝名佐真下
野嵩及び喜友名の各地点等における調査及び検証の結果において,米軍機が
普天間飛行場において離着陸等することにより生じたと認められる低周波音
が記録されている(なお,G特性音圧レベルとA特性音圧レベルとは,聴覚
,,補正回路としての特性等が異なるからそれぞれ測定された数値を比較して
どちらの数値が大きいと評価することができるものではないのは,被告主張
のとおりである。そして,普天間飛行場に常駐する米軍機は前記(3)ア。)
の認定事実のとおりヘリコプターがその多くを占めているところ,ヘリコプ
ターが前記(4)ア(ウ)の認定事実のとおり低周波音の発生源であり,低
周波音が同イのとおり距離減衰しにくい性質を有していることに照らすと,
ヘリコプターを中心とする普天間飛行場を離着陸等する米軍機は,本件航空
機騒音のみならず本件低周波音も発しており,本件航空機騒音が到達すると
ころには,等しく本件低周波音も到達していると推認することができる。
(イ)もっとも,本件コンターのW値は,前記前提事実4及び5並びに前記
(1)ウの認定事実のとおり,A特性音圧レベルを基礎として算出されてい
る。そして,A特性は,前記前提事実2及び前記(4)アの認定事実のとお
り,20~8000Hzの間の音を合計した数値であるものの,人の耳の感度
に合わせて低い周波数を小さく評価するように補正する回路のことであるか
ら,本件コンターのW値は,低周波数領域の音圧については,相当減退され
。,(),て考慮されているにとどまっているまた前記アの認定事実のとおり
低周波音には距離減衰しにくいという性質があるから,本件コンターのW8
0区域及びW75区域における低周波音暴露の具体的な状況を明らかにする
ことは困難であるというほかない。
しかしながら,本件コンターは,前記(2)アの認定事実のとおり,普天
間飛行場を離着陸する米軍機の機種,機数,飛行経路,時刻等を観測・記録
した結果に基づいて定められたものである上,前記(3)ア(イ)の認定事
実のとおりの普天間飛行場に離着陸する米軍機の飛行経路等に照らすと,普
天間飛行場の周辺において旋回訓練をするヘリコプターが多いとうかがわれ
るところ,前記前提事実5のとおりの別紙8本件コンター図によれば,W8
,,0区域はW75区域よりも普天間飛行場に近接した位置にあると認められ
かつ,低周波音についても距離減衰がしにくいといっても,前記(4)ウの
認定事実に照らせば,減退そのものがあるとはうかがわれるから,本件低周
波音の暴露の程度についても,本件コンターのW80区域とW75区域とで
は,その程度はともかく,W80区域がW75区域を相応に上回っていると
推認することが相当であるというべきである。
したがって,普天間飛行場を離着陸等する米軍機から生ずる本件低周波音
が本件コンター内の全域に到達して,原告らは,W75区域とW80区域と
の区分に応じて,相応に本件低周波音に暴露されていると認めることができ
る。
(6)本件航空機騒音の態様と侵害の程度及びその継続の経緯等についてのまと

以上によれば,原告らは,昭和47年5月15日から現在まで,それぞれW8
0区域又はW75区域に居住している期間,本件航空機騒音及び本件低周波音の
ため,W80区域にあってはかなり大きな騒音等に,W75区域にあっては大き
な騒音等に,いずれも高い頻度で暴露されているということができる。
3原告らの本件航空機騒音等による被害の性質と内容
(1)共通被害の主張
ア共通被害の主張の許容性
原告らの本件損害賠償請求は,原告ら各自の受けている被害につき,それぞ
れ固有の権利として損害賠償の請求をしているから,各原告についてそれぞれ
の被害の発生とその内容が確定されなければならない。
もっとも,原告らの主張は,原告らはそれぞれ様々な被害を受けているけれ
ども,本件では各自が受けた具体的被害の全部について賠償を求めるのではな
く,それらの被害の中には本件航空機騒音によって原告ら全員が最小限度この
程度までは等しく受けていると認められるものがあり,このような被害を原告
らに共通する損害として,各自につきその限度で慰謝料という形でその賠償を
求めるというのである。それは,結局,原告らの生活妨害,睡眠妨害及びこれ
らに伴う精神的苦痛等を一定の限度で原告らに共通するものとして捉え,その
賠償を請求するものと解することができ,例えば,生活妨害についていえば,
その具体的内容において若干の差異はあっても,静穏な日常生活の享受が妨げ
られるという点では同様であって,これに伴う精神的苦痛の性質及び程度にお
いて差異がないと認められるものが存在し得るので,このような観点から同一
と認められる性質・程度の被害を原告ら全員に共通する損害として捉えて,各
自につき一律にその賠償を求めることも許されるというべきである(前掲最高
裁昭和56年12月16日大法廷判決参照。このような場合,各原告らは,)
それぞれが受けている被害を個別具体的に主張立証するまでもなく,上記の意
味における共通被害の内容,程度を主張立証をすることをもって足りると解さ
れる。
この点,原告らは,生活妨害全部及び精神的被害と身体的被害(狭義の健康
被害)とはせつ然と区別することはできないなどとして,これらを一体と捉え
る「広義の健康被害」をもって原告らの共通被害であると主張する。
WHOが,昭和21年(1946年)に署名され昭和26年に我が国にも効
力を生じた世界保健機関憲章において「健康とは,身体的,精神的及び社会的
に完全に良好な状態をいうのであって,単に病気や虚弱でないことをいうので
はない」と健康概念を定義していることは,当事者間に争いがなく,また,生
活上に生じた被害が身体的被害にまで及び得ることや,身体的被害が生活上の
()。被害や精神的被害を伴うことがあることも想定することができる甲D12
しかし,原告らのこの主張は,民法が生命,身体,自由,名誉,財産権を別個
(,),のものと捉えている民法710条711条参照ことと整合していない上
原告ら主張の生活妨害全部の被害,精神的被害及び身体的被害は,それぞれ性
質を異にする被害であり,健康概念をどう捉えるかということや,原告ら主張
の生活妨害全部の被害,精神的被害及び身体的被害が相互に影響を及ぼす可能
性があることと,損害賠償請求における被侵害利益をどのように捉えるかとい
うことは,異なる問題であるから,これらの性質を考慮することなく,これを
一体と捉えることは相当でない。
したがって,原告らのこの主張を採用することはできず,原告ら主張の「広
義の健康被害」に含まれるとする生活妨害,睡眠妨害の被害,精神的被害及び
身体的被害を個別に検討すべきである。
イ身体的被害の主張と共通被害
原告らが主張する共通被害のうち,聴力損失,高血圧及び頭痛などの身体的
被害は,個別性の高い被害であって,個々の生活条件等にかかわらず各原告に
共通して生じていると想定することができるものとはいえない。もっとも,こ
のような身体的被害についても,ある一定のレベルの騒音に暴露されることに
よって,普天間飛行場周辺に居住するある一定範囲の住民に対し一定の身体的
被害が生ずる危険性があると認められる場合には,身体的被害の発生する危険
性がある状況で生活しなければならないことから生ずる身体的被害の発生に対
する不安感等の精神的苦痛は,普天間飛行場周辺に居住する原告らに共通して
存在し得るものと考えることができる。そうすると,このような精神的苦痛を
もって原告らに共通する精神的被害として認める余地はあるというべきであ
る。
身体的被害に関する原告らの主張は,本件航空機騒音による健康被害の発生
は,地域住民全体にとって極めて重大な関心事であるので,狭義の健康被害の
発生又はその危険性の存在は,地域住民にとっての共通の精神的被害であるの
,,,,で原告らの共通被害となるとするものであり例えば難聴についていえば
原告らの中には難聴を訴えている者がいるけれども,そのような難聴になった
こと自体を原告らの共通被害と捉え,これに対する慰謝料を請求しているので
はなく,嘉手納飛行場周辺に居住する者12症例に航空機騒音に起因すると強
く疑われる騒音性聴力損失が生じていることなどから,普天間飛行場周辺に居
住する原告らにおいても,騒音性聴力損失の被害が発生し,又は発生する危険
性があることが,地域住民全体にとって極めて重大な関心事であるので,原告
。,,らの共通被害となるとするものといえるこのように原告らの主張の中には
身体的被害発生そのものが地域住民全体にとって極めて重大な関心事であるこ
とから原告らの共通被害となるとの部分も含まれているが,このような身体的
被害は,上記のとおり,個別性の高い被害であって,個々の生活条件等にかか
わらず各原告に共通して生じていると想定することができるものとはいえない
ので,共通被害としてみる余地がないというべきである。一方,原告らの主張
のうち,身体的被害の発生の危険性があるということが地域住民全体にとって
極めて重大な関心事であるとの部分は,原告らが身体的被害が発生する危険性
がある状況で生活することを等しく余儀なくされており,そのことから生ずる
身体的被害に対する不安感等の精神的苦痛が原告らに共通する被害であるとの
趣旨の主張であると解することができる。
したがって,原告らの身体的被害に関する主張は,この趣旨で理解すること
にができる部分に限り,共通被害に関する主張として,欠けるところはないと
いうべきである。
これに対し,被告は,身体的被害については,現実の身体的な影響が生じた
原告に特有の事実であって,その事実を他の原告と共有することはあり得ず,
また,身体的被害の発生の危険性は慰謝料請求権の発生原因である現実の被害
に当たるということはできないなどと主張する。確かに,身体的被害そのもの
は現実の身体的な影響が生じた原告に特有の事実であって,身体的被害の発生
の危険性も慰謝料請求権の発生原因である現実の被害に当たるということはで
きないといえる。しかし,原告らは,上記のとおり,身体的被害やその危険性
そのものを慰謝料請求権の発生原因であると主張しているわけではなく,身体
的被害が発生する危険性がある状況で生活しなければならないことから生ずる
身体的被害の発生に対する不安感等の精神的苦痛といった身体的被害の発生の
危険性を帯有する心理的現象をもって慰謝料の発生原因である被害と主張して
いると解することができる。そして,身体的被害やその危険性そのものとは異
なり,身体的被害の発生の危険性を帯有する心理的現象をもって慰謝料の発生
原因であると主張することは許されると解される(前掲最高裁昭和56年12
月16日大法廷判決参照。したがって,被告の上記主張は,採用することが)
できない。
ウ子供の被害の主張と共通被害
他方,原告らの主張の子供の被害には,身体的被害としての性質又はこれに
類似する性質を有するものを含み,個別性の高い被害であって,各原告の年齢
や生活条件にかかわらず原告ら全員が等しく受けていると想定することができ
るものではない。そのため,原告らが子供の被害として主張する「低出生体重
児の出生」及び「幼児問題行動」の被害については,このような被害によって
精神的苦痛を受けるのは,その性質に照らし,これらの乳幼児自身に限られ,
また,原告らが子供の被害として主張する「学習環境の破壊」の被害について
も,このような被害によって精神的苦痛を受けるのは,その性質に照らし,そ
の被害を受ける就学中の子供自身に限られると考えられる。そして,民法は,
他人の権利に対する侵害については,生命を侵害した場合に限り,被害者の父
母,配偶者及び子に損害の賠償を認めている(民法711条)にすぎず,生命
の侵害又はこれに比肩し,若しくはこれに比して著しく劣らない程度の精神的
苦痛を受けるような身体に対する侵害であり,かつ,同条所定の身分関係又は
これと実質的に同視することができる身分関係がある場合でない限り,他人の
権利に対する侵害についての損害賠償は否定されているものとみるべきである
(最高裁昭和43年9月19日第一小法廷判決・民集22巻9号1923頁,
最高裁昭和49年12月17日第三小法廷判決・民集28巻10号2040頁
等参照。そのほか,仮に他人の権利に対する侵害により間接被害者が精神的)
苦痛を受けることがあるとしても,直接被害者からの請求が認められることに
よって間接被害者の精神的損害も同時に償われるのが通常であるから,当該侵
害行為と間接被害者の損害との間の相当因果関係が認められることがないのが
通常であると考えられる。そのため,直接被害者と間接被害者とが経済的に一
体であるなどのために当該侵害行為と間接被害者の損害との相当因果関係があ
る場合(最高裁昭和43年11月15日第二小法廷判決・民集22巻12号2
614頁参照)でない限り,当該侵害行為と間接被害者の精神的損害との相当
因果関係を認める余地はないというべきである。そうすると,原告ら主張の子
供の被害については,原告らの主張のように地域住民全体にとって極めて重大
な関心事となっているとしても,その性質上,身体的被害の危険性を帯有する
心理的現象が原告ら全員に生ずる可能性があり得るのと異なり,上記子供の被
害が当該乳幼児又は就学中の子供にしか生ぜず,原告ら全員に生ずる可能性が
あるとはいえないから,他人の権利に対する侵害によって原告らにも間接的な
損害が生じているとの主張であるとみるほかなく,かつ,そのような関心事と
なっているということだけでは,普天間飛行場の供用と原告ら主張の子供の被
害を原因とする精神的損害との間に相当因果関係があるという余地はないとい
うべきである。
したがって,原告らの子供の被害に関する主張は,これを原告らの共通被害
と主張している以上,主張自体失当であるというほかない。
もっとも,原告ら主張の子供の被害のうち,幼児問題行動や学習環境の破壊
の中には,生活妨害,睡眠妨害及び本件航空機騒音を直接の原因とする精神的
苦痛の一つの現れとしてみる余地があるものも含まれており,そのようなもの
については,別途,生活妨害,睡眠妨害及び同精神的苦痛の一態様として検討
することとする。
(2)航空機騒音影響の発現経路と諸要因
括弧内の証拠によれば,以下の事実を認めることができる。
ア騒音影響の発現経路
国立公衆衛生院生理衛生学部の長田泰公(以下「長田」という)は,昭和。
46年から昭和53年までの間ころ,各種論文において,騒音の人体への生理
学的な影響の発現経路について,次のように説明する。
①騒音は,まず耳から入り,内耳感音器に影響を与え,強さや期間により,
一時的又は永久的な難聴(聴力低下)を起こす。②耳の感音器からの信号(イ
ンパルス)は,聴神経を通って大脳皮質の聴覚域に達して,騒音のやかましさ
()()。,,ノイジネスや大きさラウドネスの感覚を発生させる③騒音が会話
テレビ・ラジオ,電話等の聞きたいと思う音と同時に到達すれば,聞きたいと
思う音を聴取することを妨害する(隠蔽又はマスキング。以下,聞こうとして
いる音が他の騒音によって妨害されることをマスキングということがある。。)
①から③までの影響は,耳から大脳皮質の聴覚域までに至るルートで起こり,
騒音に特有な特異的作用であり,直接作用である。①から③までの影響は,直
接作用であるから,騒音の大きさ等の物理的特性と影響の程度の関係が深い。
また,耳の感音器からの信号が脳幹網様体を介して大脳皮質全体に非特異的
な刺激を送り,騒音が一定レベル以上となると,④精神的妨害を引き起こし,
仕事,勉強,休養,睡眠等の日常生活の妨害を起こす。⑤また,その信号が脳
幹網様体を経て,視床下部から大脳旧古皮質系に影響を与えると,不快感,怒
りなどの情緒妨害を起こす。これらの生活妨害や情緒妨害は,音以外の感覚や
精神的負荷でも起こるので,騒音に特有のものでないという意味で非特異的影
響であり,間接作用である。
さらに,そうしたものが亢じ,中枢神経系への影響がある程度になると,視
床下部から自律神経を経て交感神経系緊張反応をもたらし,また,視床下部,
下垂体から,甲状腺,副腎・生殖腺の経路を経て内分泌系へ影響を起こして,
⑥脈拍・血圧・呼吸等の変調,ホルモンのアンバランス等の身体的影響を生じ
得る。これらの身体的影響は,一層間接的な作用である。
上記④から⑥までの影響は,間接作用であるから,騒音以外の条件,すなわ
ち個人,集団の感受性,生活内容,発生源に対する態度などが効いてきて,騒
音の物理的特性と被害の程度との関係が単純でなくなる。
沖縄県調査報告書では,上記のような長田の研究を踏まえて,健康影響の発
現ルートとメカニズムについて,次のような説明をする。
騒音は,外耳道から鼓膜,耳小骨連鎖を経て内耳に入り,有毛細胞に傷害を
与えることによって,聴力の低下を引き起こす。内耳の有毛細胞において神経
インパルスに変換された騒音は,聴神経を経て大脳皮質の聴覚域に達して音感
覚を成立させるとともに聴取妨害をもたらす。一方,網様体を経て大脳の新皮
質に到達した神経インパルスは,覚せい,睡眠妨害又は思考,精神作業の妨害
を起こす。また,視床下部を介して大脳旧皮質全体を刺激し,イライラ感や不
快感等の情緒妨害を起こし,さらに食欲・性欲等の本能欲を妨害するに至る。
これらの影響が一定限度を超えると,ストレス反応として,視床下部と下垂体
を介して甲状腺,副腎,生殖腺等の内分泌系に影響が現れる。さらに,視床下
部からのインパルスは,自律神経系を介して循環器系や消化器系に影響を及ぼ
すと考えられる。
(,,,,,,,,,,,甲D113の3D141718202130353979の1
2)
イ騒音の影響に関係する諸要因
,,,騒音のうるささ不快感又は影響の大きさに関係する要素は騒音側の条件
騒音を聞く人間側の条件,音と人間との間の条件に分けて示すことができる。
騒音側の条件としては,①大きさ,②高さ,音色,③持続時間と繰り返し,
④突発性,衝撃性,⑤①から④までの因子の変動性がある。人間側の条件とし
ては,①健康度(健康人,病人,②性別,年齢,③性格,知能,好み,④心)
身状態(労働,休養,睡眠)がある。音と人間との間の条件としては,①慣れ
と経験,慢性影響,②利害等の社会的関係がある。
そのうち,騒音側の条件については,騒音レベルが高いほどうるさく感じ影
響が大きい。一般的にいえば,低い音よりも高い音の方が耳障りで影響も大き
いと考えられ,純音(単一の周波数を持つ音をいう。以下同じ)成分を含ん。
だ騒音の方が広音域の騒音より不快感が強いという報告がある。また,音の持
続時間が長いほど影響が大きいが,他方で断続音・間欠音となると連続音より
うるさく感ずることがある。大きさ・高さ(周波数)が変動する音の方が定常
。,,の場合に比べて不快感が強いといわれているさらに騒音源が定位置にあり
その位置を速やかに認識し得る場合は,逆の場合と比べて不快感は軽度である
といわれる。
,,,,また人間側の条件として健康人よりも病人の方が影響を受け易くまた
覚せい時より睡眠時の方が,低レベルの騒音でも影響を受けるなどとされる。
さらに,音と人間との間の条件として,騒音には慣れがつきものであるが,
慣れるためには,時間がかかり,また,その間の心理的負担も無視することが
できない。慣れの能力には,性別,年齢,気質,体質によって差があるとされ
る。
(甲D13の3,D14,15,18,24,30,78の1,3)
(3)生活妨害
ア原告らの生活妨害の陳述
証拠(甲B1の1から194まで(枝番号6,90,103,105,10
,,。)),。6142171及び189を除くによれば以下の事実が認められる
,(「」。)原告らの多くは原告らのアンケート式陳述書以下定型陳述書という
において,本件航空機騒音による会話妨害,通話妨害,テレビ・ラジオ等の聴
取妨害の被害を中心に,そのような生活妨害について記載する(ただし,テレ
ビ・ラジオ等の聴取妨害については,画像の乱れやラジオの雑音や電波状態の
悪さのみを指摘する者(原告番号2,24,43,45,48,73,83,
89,112,136,153,163,175,185,201,211,
,,,,,,,,,236265279287289296298316338
344,349,352,360,367,387,390の各原告)も少な
くない。。)
なお,定型陳述書における会話妨害,電話聴取妨害及びテレビ・ラジオの聴
取妨害の有無についての記載を集計した結果は,次の表のとおりである(定型
陳述書における記載の集計は,定型陳述書の通数ごとに1名とし,定型陳述書
を提出した者186名に対する割合を「全体」の「%」として示している。ま
た,同集計におけるW75区域とW80区域との分類は,定型陳述書を提出し
た原告らが定型陳述書を提出した時点において居住している区域を前提にし,
それぞれのその「%」もW75区域の97名とW80区域の89名に対する各
割合を示している。定型陳述書における記載の集計において以下同じ。。)
イ沖縄県調査の結果
証拠(甲D1)によれば,以下の事実が認められる。
(ア)沖縄県調査委員会は,普天間飛行場周辺住民等の生活の質及び環境の
質に対して航空機騒音の存在が与えている影響を知る目的で調査を実施した
(以下「生活環境調査」という。生活環境調査では,生活の質及び環境の。)
質に対する影響のほか,回答者の基地及び航空機騒音に対する態度も併せて
調査対象としている。
生活環境調査は,航空機騒音暴露群として普天間飛行場周辺の宜野湾市,
浦添市及び北中城村の住民2005名並びに嘉手納飛行場周辺の北谷町,嘉
手納町,石川市(当時,具志川市(当時,沖縄市及び読谷村の住民497))
3名,非暴露群すなわち対照群として沖縄本島南部の2町1村(佐敷町(当
あるない無回答あるない無回答あるない無回答
96名1名0名93名2名2名96名0名1名
99.0%1.0%0.0%95.8%2.1%2.1%99.0%0.0%1.0%
88名0名1名88名1名0名88名1名0名
98.9%0.0%1.1%98.9%1.1%0.0%98.9%1.1%98.9%
184名1名1名181名3名2名184名1名1名
99.0%0.5%0.5%97.3%1.6%1.1%99.0%0.5%0.5%
W80区域
全体
電話聴取妨害
W75区域
テレビ・ラジオの視聴妨害会話妨害
時,大里村(当時)及び南風原町)の住民916名の合計7894名の住)
民に対し,平成8年11月から平成9年1月までの間「生活満足度「地,」,
域・生活環境「基地および航空機騒音について「睡眠について「あな」,」,」,
た自身について(フェースシート」の5つの部分から構成される合計98)
問の調査票を配布し,平成8年11月から平成9年3月までの間,これを回
収する方法により実施された。
被調査者の抽出は,まず字(あざ)を抽出し,次に住民基本台帳から無作
為に15歳以上の居住者を抽出するという層化2段無作為抽出で行った。も
っとも,嘉手納飛行場周辺のWECPNL95以上の区域では居住者が比較的少な
いとの理由から,全居住者を対象とした。
有効回答数(回数された調査票において,年齢,性別が記載され,かつ住
所から居所のWECPNLのランクが確定することができる回答の数)は,全体で
5693名であり,そのうち,普天間飛行場周辺で1448名,対照群で6
85名であった。
なお,生活環境調査では,解析に当たり,WECPNLで層化した各暴露群の年
齢・性別の構成比率が一定となるように,対照群又は暴露群全体を基準とし
て調整した回答率を用いている。
(イ)そして,沖縄県調査委員会は,航空機騒音による種々の生活妨害を知
るために,次の表に示す12の項目について「飛行機の音などによって,,
次のような迷惑を日ごろあなたはどの程度感じていますか」との質問をし,
その回答を「いつもある「ときどきある「たまにある「あまりない」」,」,」,
及び「まったくない」の5段階の評定尺度で求めた。
a上記の項目のうち,まず,沖縄県調査委員会が「コミュニケーション妨
害」と称する「会話妨害「電話聴取妨害」及び「TV聴取妨害」に関す」,
る回答結果は,次のとおりである。
b次に「作業妨害「思考妨害」及び「休息妨害」の3項目に関する回,」,
答結果は,次のとおりである。
c沖縄県調査委員会は,以上の結果を踏まえ「いつもある」のカテゴリ,
に反応した人員の割合の合計を航空機騒音暴露量に対して示すと,いずれ
においても,WECPNLの増大とともに正反応率が上昇し,著明な量反応関係
が認められること,同じWECPNLに対する生活妨害の正反応率は,普天間飛
行場周辺が嘉手納飛行場周辺に比べて高くなっており,普天間飛行場周辺
の反応率の曲線を右にWECPNLを5~10だけ移動させると,両飛行場周辺
の反応率の曲線がほぼ一致すること,生活妨害に関する質問項目に対する
反応率の中では「会話妨害「電話聴取妨害」及び「TV聴取妨害」に,」,
ついて正反応率が最も高かったこと,これらの正反応率は,いずれもWECP
NLに対しほぼ直線的に増加し,極めて明瞭な量反応関係が認められること
などと分析する。
ウ他の飛行場周辺での住民調査,騒音の影響についての学術研究等
括弧内の証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)他の飛行場周辺での住民調査等
a長田は,昭和45年,横田基地周辺における主婦を対象とする面接アン
ケート調査を行った。
長田は,その結果,会話,電話,テレビ・ラジオの聴取妨害は互いによ
く似た被害率で,他の被害よりも高率であることを指摘する上,昭和40
年に行われた伊丹空港(大阪国際空港)周辺における主に主婦を対象とし
た騒音影響調査の結果と比較して,テレビ・ラジオの聴取妨害の訴え率に
ついて,両地域とも,NNIが増加すれば,訴え率も増加する似た傾向を示
しているとの結論を得た。
(甲D17,79の1)
b財団法人航空公害防止協会は,航空機騒音の聴覚以外の生体影響に関す
る実態を明らかにするため財団法人大阪国際空港メディカルセンター計,(
画と実施は,財団法人医療情報システム開発センター理事長大島正光を委
員長とする人体影響専門委員会が担当した)に委託して,昭和55年か。
ら昭和57年度まで,大阪,東京両国際空港及び福岡空港周辺に居住し,
かつ,同協会が実施した巡回健康診断を受診した成人女性を対象として,
①個人別騒音暴露量調査,②質問紙による健康調査及び③騒音ストレスの
生物学的評価調査を実施し,昭和58年,その結果を「航空機騒音が一,
般住民に及ぼす影響に関する疫学的調査報告書」として取りまとめた。
それらの調査のうち,質問紙による健康調査は,空港周辺の成人女性が
感じているうるささや自己の健康状態についての自覚症状を明らかにする
ため,質問紙(昭和55年度にあっては214問の質問からなるコーネル
医学指数(CMI)等,昭和56年度及び昭和57年度にあってはTHI
等)を送付して,成人女性合計2961名から回答を受けて行われた。
その昭和56年度及び昭和57年度の調査をまとめた結果,会話妨害,
電話聴取妨害,テレビ・ラジオの聴取妨害,勉強,読書,仕事等の妨害の
,「」,有無についての質問に対してしょっちゅうあると答えた者の割合は
それぞれ次の表のとおりであり,騒音による生活妨害の訴えは,WECPNL値
,。の上昇に対応して増加し特にWECPNLが90を超えると著しく増していた
(a)会話妨害
(b)電話聴取妨害
(c)テレビ・ラジオの聴取妨害
(d)勉強,読書,仕事等の妨害
(乙D36)
(イ)騒音が音声伝達に与える影響についての研究結果
a厚生省(当時)国立公衆衛生院建築衛生学部小林陽太郎(以下「小林」
という)らは,昭和40年ころ,日本語無意味百音節からなる明瞭度テ。
ープを使用し,実験室において,聴覚の健全な学生5名を対象として,白
W60以上
70未満
W70以上
80未満
W80以上
90未満
W90以上
大阪国際空港***13.0%23.5%57.0%
福岡空港0.0%22.7%22.9%50.0%
東京国際空港7.4%4.3%6.7%***
W60以上
70未満
W70以上
80未満
W80以上
90未満
W90以上
大阪国際空港***16.9%32.0%66.2%
福岡空港0.0%33.8%28.7%62.5%
東京国際空港6.7%4.3%6.7%***
W60以上
70未満
W70以上
80未満
W80以上
90未満
W90以上
大阪国際空港***24.5%38.8%66.2%
福岡空港0.0%35.7%31.8%50.0%
東京国際空港8.3%7.2%13.3%***
W60以上
70未満
W70以上
80未満
W80以上
90未満
W90以上
大阪国際空港***9.4%15.3%41.1%
福岡空港0.0%18.8%18.5%18.7%
東京国際空港5.7%5.0%6.7%***
色騒音(ホワイトノイズ。可聴範囲の周波数の成分を均等に含んでいる音
をいう。以下同じ)によるマスキングの結果,その音声伝達に与える影。
。,(。響を調べたその結果S/N比信号音量と騒音量の相対的な比をいう
以下このaにおいて同じ)が30dBで明瞭度は94%であるが,S/N。
比が20dB(このdBは,聴覚補正回路としては,フラットの平坦なものを
指している。以下このaにおいて同じ,10dB,0dB,マイナス10dB。)
と下がるにつれて,明瞭度はそれぞれ85%,68%,45%,15%と
低下するとする。
小林らは,上記実験の結果に,東京都品川区及び港区内の12小学校の
教室内において,同様の明瞭度テープを用い,航空機騒音等実際の騒音に
よる影響について調査した結果を併せ考慮して,学校教室内の明瞭度を8
0~85%に保持するためには,教師の会話レベルを70dBとすると,騒
音分布中央値は50~55dBであることが必要であり,調査した学校の7
5%はその条件を満足させていなかったと結論付けている。
(甲D27の1,2,D78の1,D93)
bアメリカのカール・E・ウィリアムズらは,昭和46年ころ,時間的に
変動する航空機騒音下における会話了解度を調べるため,被験者に対し録
音した航空機騒音と試験語を同時に再生する実験を行った。
その結果,次の結論を得られたとする。
①時間的に変動する騒音下における会話了解度と明瞭度指数(AI)間
の関係については,定常騒音で得られるその関係と異なる。
,,。②明瞭度指数は時間変動騒音のマスキングは定常騒音よりも少ない
③航空機のピーク・レベルがdB(A)が76を超えると,多少の文脈上の
会話破壊がある。
(乙D39)
(ウ)騒音が学習等の知的作業に与える影響についての研究結果
a静岡県衛生研究所の鈴木登は,昭和29年から昭和40年までの間,騒
音が学習効果に及ぼす影響を調査するため,小学校,中学校及び高校を対
象とし,人工騒音を負荷した実験を行った。
その結果,①小学生を対象として騒音を負荷した条件でテストを行った
場合に,多くの児童に量的能率が上がるも質的能率が低下すること,②中
学生を対象した擬音レコードを負荷した場合に,単に暗記すればよい問題
では騒音の影響はみられないも,考えながら記憶を要するような問題で間
違いが増加すること,③高校生を対象した交通騒音を負荷した場合に,数
列,記号の暗記では騒音の影響はみられないが,思考を要する問題で間違
いが増加すること等を明らかにした。
(甲D61)
b日本女子大学名誉教授児玉省(以下「児玉」という)は,昭和39年。
から昭和45年までの期間,横田飛行場周辺において航空機騒音の住民に
及ぼす影響について調査を実施した。その中で,昭和41年ころ,横田飛
行場周辺の小学校3年生及び6年生に,ジェット機騒音,その他の日常の
騒音等を組み合わせた録音テープを聞かせて,各種の知能検査,適性検査
等を行った。
その結果,ジェット機騒音下の作業平均成績の方が他の騒音,音楽,空
白下における作業成績を上回った。
児玉は,作業後のアンケートをみても,ジェット機騒音が気にならなか
ったとする児童が多いのは航空機騒音に慣れを生じていると考えた上で,
上記の結果には,覚せい効果により,又はジェット音がなくては仕事が軌
道に乗らない,多少いわゆる中毒症状的状態になっているものではないか
と推測する。
(甲D16,62,63,乙D38,59)
c長田らは,昭和46年ころ,男子5名,女子4名の合計9名の被験者を
用い,1回の持続時間の約20秒の航空機騒音,新幹線騒音及びピンクノ
イズ(機械から生ずる単純な音であって,パワーが周波数に反比例するも
。。),のをいう以下同じの3種類の間欠音を50~90dB(A)で暴露させて
精神作業に及ぼす影響を調べた。
その結果,①標示灯に対する反応時間テストの場合,50~80dB(A)
の騒音の範囲では無音のときよりも促進的,覚せい的に作用し,②10秒
間の時間を再生させるテストの場合,新幹線騒音を除き騒音に影響がみら
れず,③図形数え作業テストの場合,騒音を聞かせることによって数え残
しが増えたものの,60~90dB(A)の騒音レベルの差や頻度の差による
影響の違いは検出できなかったが,航空機騒音の方が新幹線騒音よりも妨
害的であった。
長田らは,この結果や関連ある文献とを比較して,騒音はある程度まで
精神作業を促進するが,作業が複雑になったり長引いたりすれば妨害的に
働くこと,現実音の方が白色騒音やピンクノイズのような非現実音よりも
妨害的であること及び間欠音の頻度が増せば妨害度が高まることなどが示
唆されるとしている。
(甲D59,78の1,3,D79の1,2,弁論の全趣旨)
d国立特殊教育総合研究所教育工学研究室長詫間晋平は,昭和49年,文
部省(当時。以下このdにおいて同じ)の研究会が実施したアンケート。
調査及び自らが行った実地調査・実験の結果並びにこれを踏まえた騒音と
学習の関係について,次のように述べている。
文部省が昭和42年度に行った交通騒音が学校における学習にどのよう
な影響を与えているかについての実態調査では,小・中学校とも,外から
の音(主として交通騒音)で「大変いらいらする」と答えた児童・生徒は
,,「」,約20%おりまた勉強の大変じゃまになるとする者は約30%で
その訴え率はいずれも対照校と比較して格段に高い。騒音刺激の変動の幅
について,騒音の中央値を80dB(A)程度に保ち,交通騒音を比較的定常
的に与えた場合と,24dB程度の変動の幅を持たせた場合とでは,学習の
能率の上で,騒音の変動幅の大きい方により阻害的な影響が多いという報
告もされている。学校環境では,60dB(A)程度の騒音水準から,注意集
中を要する文章理解等の精神作業に阻害的な影響を与え始め,80dB(A)
を超えると,精密作業や工夫を要する創造的作業等に悪い影響が目立ち始
めるという報告もされている。しかし,一方で,思考類型の別によっては
騒音の影響を受けにくい場合もあるという報告もある。
騒音と学習の関係については,騒音源の水準,変動の幅,日常生活にお
ける慣れの度合い等と作業内容としての教科の別,授業の形態,思考の類
型,課題の難易等の相互作用が考えられ,個人差に属する性格上の特徴も
考慮する必要がある。したがって,学校環境において,学習への影響を指
。,標にして一定の騒音水準を決定することは現段階では困難であるただし
書き取り等による聴取明瞭度(正答率)を80%に維持するためには,概
,,,して教室で約55dB(A)以下であることを要し日常生活における読書
勉強等が妨害されるとする訴え率は,室内の騒音水準が50~55dB(A)
を超えると50%を上回ることなどが一つの目安として参考になろうと結
論付ける。
(甲D60,74)
エ生活妨害についての検討
(ア)会話,通話及びテレビ・ラジオ聴取の妨害
原告らの中には,本件航空機騒音により,その居住地において,会話妨害
(甲B2の3,5,7から10まで,原告X61,原告X39,原告X11
2,原告X142,原告X1,原告X56,原告X3,原告X48,通話)
妨害(甲B2の1,3,5,7から10まで,B3の2,3,原告X61,
原告X142,原告X1,原告X56,原告X3,原告X48,テレビ・)
ラジオの聴取妨害(甲B2の1,3,5,7,10,Bの4,原告X61,
原告X112,原告X142,原告X1,原告X56,原告X3)を受けて
いると供述し,又は陳述書に記載する者がいる。また,沖縄県調査の生活環
境調査の結果をみても,前記イ(イ)の認定事実のとおり「いつもある」,
,「」,.,と回答した者の割合は会話妨害についてはW75区域が135%
.,「」,.W80区域が178%電話聴取妨害についてはW75区域が13
5%,W80区域が19.0%「TV聴取妨害」については,W75区域,
が19.0%,W80区域が21.0%であって,無視し得ない程度の高い
数値となっている。更に評定尺度を「いつもある」から「ときどきある」に
まで広げると「会話妨害」については,W75区域が49.0%,W80,
.,「」,.,区域が549%電話聴取妨害についてはW75区域が482%
.,「」,.W80区域が561%TV聴取妨害についてはW75区域が54
6%,W80区域が62.3%となり,いずれも半数近く,又は半数を超え
る高い割合を示している。
航空機騒音は,一定の音量となると,音声伝達の妨げになることは,経験
則上明らかであり,このことは,前記ウ(イ)の認定事実のとおりの小林ら
の研究結果等によっても裏付けられている。また,沖縄県調査委員会が,前
記イ(イ)の認定事実のとおり,上記のとおりの沖縄県調査の生活環境調査
の結果を踏まえ「会話妨害「電話聴取妨害」及び「TV聴取妨害」につ,」,
いての正反応率がいずれもWECPNLに対し極めて明瞭な量反応関係が認められ
ると分析している。さらに,普天間飛行場と類似した他の飛行場での住民調
査の結果でも,前記ウ(ア)の認定事実のとおり,地域のW値又はNNI値の
上昇によって聴取妨害の訴え率が増加する傾向が認められるなど航空機騒音
により会話妨害,通話妨害及びテレビ・ラジオの聴取妨害が生じているとう
かがわれる。これらの事情に前記2のとおりの本件航空機騒音の実態を併せ
考慮すると,原告らが上記のとおり本件航空機騒音による会話妨害,通話妨
害及びテレビ・ラジオの聴取妨害について供述等し,また,定型陳述書を提
出したほとんどすべての原告らが,前記アの認定事実のとおり,このような
生活妨害を陳述する(なお,定型陳述書は,アンケート式の陳述書という性
格などのために,被告主張のような不正確なものが含まれている可能性があ
るとはいえるものの,航空機騒音による影響は,生理的,心理的,精神的な
そればかりでなく,日常生活における諸般の生活妨害等にも及び得るもので
あり,その内容,性質も複雑,多岐,微妙で,外形的には容易に補足し難い
ものがあり,被暴露者の主観的条件によっても差異が生じ得る反面,その主
観的な受けとめ方を抜きにしてはこれを正確に認識,把握することができな
いようなものであるので,主観的な証拠であるからといって,それだけで証
拠価値が低いとはいえない(前掲最高裁昭和56年12月16日大法廷判決
参照)から,少なくとも本件コンター内に居住する原告らの大まかな主観的
状況を把握するものとして,相応の証拠価値があると考える(定型陳述書の
一般的な証拠価値につき,以下同じ)ように,原告らが本件航空機騒音。)。
により会話妨害,通話妨害及びテレビ・ラジオの聴取妨害の生活妨害を受け
ていると認めることができる。そして,このような生活妨害を受ければ,こ
れに伴って精神的苦痛が生ずることも推認することができる。
したがって,原告らは,本件航空機騒音により,会話妨害,通話妨害,テ
レビ・ラジオの聴取妨害の生活妨害及びこれらに伴う精神的苦痛を受けてい
るということができる。
また,これらの被害の程度は,原告らの各居住地における本件コンターの
W値の区分が高いと大きくなることは,上記沖縄県調査の結果等から認める
ことができる。
(イ)趣味生活と知的作業の妨害
a原告らの中には,本件航空機騒音により,音楽の聴取を妨害されている
(甲B2の6,原告X112,原告X142,原告X144がピアノの)
演奏を中断させられている(原告X142)と供述し,又は陳述書に記載
するところ,本件航空機騒音が,音楽鑑賞や演奏等の趣味生活において,
音の聴取に係る活動に妨害をもたらし,これに伴う精神的苦痛が生ずるこ
とは,前記(ア)の会話等の妨害の場合と同様である。
b一方,学習,読書等の知的作業の妨害については,原告らの中には,本
件航空機騒音により,思考が停止する(甲B2の1,原告X48,読書)
が中断する(甲B2の7,また,原告X144の学習が中断させられて)
いる(原告X142)と供述し,又は陳述書に記載する者があり,また,
証人S3は,普天間第二小学校の授業は窓が開いているときは本件航空機
騒音により中断することがあり,一度中断すると元に戻って話をしなくて
はならないなどと証言する。
学習,読書等の知的作業に関する騒音の影響については,前記ウ(ウ)
の認定事実のとおり,各種研究結果等によっても必ずしも明瞭な結果は得
られておらず,このような影響を体系的かつ具体的に明らかにするような
的確な証拠は見当たらない。このような知的作業に対する騒音の影響は,
作業の性質,人間の心理状態等の要因のみならず,前記ウ(ウ)bの認定
事実のとおりの研究結果においても指摘されているように,いわゆる「慣
れ」の影響によっても左右され得るため,単純に被害の有無,程度を論ず
ることはできない面を有するとも考えられる。前記イ(イ)の認定事実の
とおりの沖縄県調査の結果や前記ウ(ア)bの認定事実のとおりの他の飛
行場周辺における住民調査における住民の訴えをみても,知的作業の妨害
について,会話等の妨害に比べれば,それほど高い訴え率を示していない
ことは,上記のような理由によるとみることができる。
,(),しかし前記ウウの認定事実のとおりの各種研究結果等によっても
複雑な作業や思考を要する問題等には,騒音による影響があることを指摘
するものが多く,航空機騒音があらかじめ予期し得ない間欠騒音であるこ
とにも照らすと,これが学習,読書等の知的作業に妨害的に作用すること
があることは経験則上も肯定されるところである上,前記(2)アの認定
事実のとおり,一般的な騒音影響の発現経路としても説明がされている。
しかも,たとえ作業結果や能率には明確な影響が現れない場合でも,前記
2のとおりの本件航空機騒音の実態にみられる騒音レベルや騒音持続時間
等に照らすと,本件航空機騒音の下での作業により,いらだちや不快感が
生ずると推認することができる。
そして,前記イ(イ)のとおりの沖縄県調査の結果からは,W値と作業
妨害,思考妨害の訴え率とが量反応関係があるとは直ちにいうことはでき
ないけれども,上記のとおり,作業結果や能率には明確な影響が現れなく
ても,本件航空機騒音の実態に照らすと,本件航空機騒音の下での作業に
より,いらだちや不快感が生ずることを推認することができることにかん
がみると,このような被害の程度が原告らの各居住地における本件コンタ
ーのW値の区分が高いと大きくなるといって差し支えないと考えられる。
(ウ)そして,前記(ア)の会話,通話及びテレビ・ラジオ聴取の妨害並び
に前記(イ)の趣味生活と知的作業の妨害による被害は,原告らの年齢,性
,,,別同居する家族の構成等によっていろいろな形態をとって現れるものの
本件航空機騒音の実態や被害の性質に照らせば,定型陳述書にこれらの被害
があると記載していない原告らや,被告主張のような定型陳述書その他の陳
述書を提出していない原告ら(原告番号171,172,190,198,
,,。()()()()199200395の各原告をいう4エイ及び5エエ
において同じ)も含めて,原告ら全員が最小限度等しく受けていると認め。
ることができる。
(エ)これに対し,被告は,人が一日の大半を屋内で過ごすところ,本件航
空機騒音が間欠的で一過性のものであり,屋内に到達する持続時間はほんの
数十秒であるから,普天間飛行場周辺住民の会話,通話,テレビ・ラジオの
聴取に対する影響は,あったとしても,極めて軽微であり,また,防音工事
を施工した屋内においては,本件航空機騒音による会話,通話,テレビ・ラ
ジオの聴取妨害等の生活妨害は解消されている旨主張する。
しかし,まず,本件航空機騒音が間欠的で一過性のものであることは,前
記2(5)エ(ウ)のとおり,原告らのように本件航空機騒音を暴露する者
にとっては,本件航空機騒音に暴露する機会を予測して行動することが困難
であるにもかかわらず,これが繰り返されることを意味している。そして,
原告らの中には,本件航空機騒音による会話,通話等の生活妨害の影響につ
いて,会話を前に戻ってやり直すこともあると供述し(原告X1,また,)
定型陳述書に,中断した会話を再開するときに初めから話したり,会話自体
が続かなかったりする(甲B1の1,会話がとぎれ会話が進展しないこと)
がよくある(甲B1の36,中断前の会話を忘れることもある(甲B1の)
39,60,125,193,どこまで話したか分からなくなる(甲B1)
の51,話す意欲がなる(甲B1の58,126,127,話が前に進ま))
ず繰り返しになる(甲B1の107,会話が続かなくなったりする(甲B)
1の108,中断後の会話はスムーズに話すことができない(甲B1の1)
24,会話をあきらめてしまう(甲B1の144)などと記載している者)
があることに照らしても,一旦妨害された生活を回復するためには,相当の
困難を伴うことは想定することができる。そうすると,本件航空機騒音によ
る生活妨害の影響は,本件航空機騒音が発生している時間に限られることは
ないから,被告主張のような,会話,通話,テレビ・ラジオの聴取に対する
影響は,あったとしても,極めて軽微であるということはできない。
また,高温多湿である沖縄においては,後記5(2)オ(ア)のとおり,
住宅防音工事を実施した原告らであっても,冷房装置の電気料金の負担等の
理由から,結局のところ,窓を閉め切って生活する場面は生活全体からすれ
ば一定の限度にとどまるといえるから,建物による遮音効果が前記2(5)
エ(ウ)のとおり10~15dB(A)程度あることや,後記5(2)オ(ア)
のとおりの住宅防音工事による防音効果を考慮に入れてもなお,原告らは,
本件航空機騒音により,室内においても,相当程度の生活妨害の被害を受け
ているというべきである。
したがって,被告の上記主張はいずれも採用することはできない。
(オ)原告ら主張の生活環境の悪化の被害について
原告らは,本件航空機騒音により,積極的永住志向が低下するなど生活環
境の悪化の被害を受けていると主張する。
しかし,原告らのこの主張は,抽象的なものにとどまる上,前記(ア)か
ら(ウ)までのとおり,個人の具体的,基本的生活利益の侵害として把握す
ることができる生活妨害の被害として法的保護を図ることによって,必要に
して十分であるというべきであるから,採用することはできない。
オ生活妨害についてのまとめ
以上によれば,原告らは,本件コンター内に居住する間,本件航空機騒音に
より,会話妨害,通話妨害,テレビ・ラジオの聴取妨害,趣味生活や知的作業
の生活妨害及びこれらに伴う精神的苦痛を,W80区域の方がW75区域より
は著しいという意味でそれぞれその居住する区域のW値に応じて,等しく受け
ていると認めることができる。
(4)睡眠妨害
ア原告らの睡眠妨害の陳述
証拠(甲B1の1から194まで(枝番号6,90,103,105,10
,,。)),。6142171及び189を除くによれば以下の事実が認められる
原告らの多くは次の表のとおり定型陳述書に本件航空機騒音により睡,,,「
眠が妨げられたことがありますか」との質問項目に対して「ある」と記載して
いる。
また,原告らは,本件航空機騒音により「睡眠を妨げられたときはどのよう
な支障がありますか」との質問項目に対しては,定型陳述書に次の表のとお。
,「」,「」。り目が覚めるとなかなか眠れないイライラするなどと記載している
この記載の集計結果をグラフで示すと次のとおりとなる。
イ沖縄県調査の結果
証拠(甲D1,乙D37,41)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
睡眠妨害により生じる支障
62.9%
34.0%
27.8%
68.0%
44.3%
11.3%
68.5%
33.7%
44.9%
76.4%
53.9%
6.7%
65.6%
33.9%
36.0%
72.0%
48.9%
9.1%
0.0%20.0%40.0%60.0%80.0%100.0%
目が覚めるとなかなか眠れない
翌日の仕事・勉強に支障を来す
体調不良を感じる
イライラする
集中力がなくなる
その他
W75区域W80区域全体
あるない無回答
75名21名1名
77.3%21.6%1.1%
76名13名0名
85.4%14.6%0.0%
151名34名1名
81.2%18.3%0.5%
睡眠妨害
W75区域
全体
W80区域
W75区域
W80区域
全体
61名
62.9%
68.5%
61名
122名
65.6%
体調不良を感じるイライラする集中力がなくなるその他
30名
33.7%
目が覚めるとなか
なか眠れない
翌日の仕事・勉強
に支障を来す
63名
33.9%
27名
27.8%
40名
44.9%
67名
36.0%
33名
34.0%
48.9%
66名
68.0%
68名
76.4%
43名
44.3%
48名
53.9%
11名
11.3%
6名
6.7%
17名
9.1%
134名
72.0%
91名
認められる。
(ア)沖縄県調査委員会は,前記(3)イ(ア)の生活環境調査において,
生活妨害に関する質問項目に,航空機騒音による「睡眠妨害」に関する質問
(なお,この「睡眠妨害」に関する質問は,航空機騒音に起因するものに限
定しているので(イ)の航空機騒音に起因するものに限定しない一般的な,
意味の「睡眠障害」の質問とは,異なるものとして扱われている)を含め。
て,回答を求めた。
その結果は次の表のとおりであった次の表において評定尺度欄にい,(,「
つもある」というのは「週に何日も妨害される」という選択肢を選択した,
者の割合を「ときどきある」というのは「週1,2回妨害される」という,,
選択肢を選択した者の割合を「たまにある」というのは「月1,2回妨害,,
される」という選択肢を選択した者の割合をそれぞれ示している。。)
(イ)また,沖縄県調査委員会は,日常における睡眠障害一般について,①
「床についたとき,寝つけなくて困ることがありますか,②「夜中に目が」
さめて,その後寝つけなくて困ることがありますか,③「朝早く目がさめ」
てしまって困ることがありますか」及び④「一晩じゅう十分に眠れなかった
感じのすることはありますか」という4つの質問をし,その回答を「週に3
」,「,」,「,」,「」,回以上ある週に12回ある月に12回あるほとんどない
「まったくない」の5段階の選択肢で求めた。
そして,沖縄県調査委員会は,睡眠障害の程度に関する尺度値について,
「週に3回以上ある」又は「週に1,2回ある」に回答した項目数を「睡眠
障害:週1,2回」とし「週に3回以上ある「週に1,2回ある」又は,」,
「月に1,2回ある」のいずれかに回答した項目数を「睡眠障害:月1,2
回」とし,その回答率を求めたところ,その結果は,次のとおりとなった。
また,この回答率をW値との関連で示すと,次の図のとおりとなった。図
(a)は,最も重度の睡眠障害を訴える者の成績,すなわち上記4つの質問
の全てに「週に1,2回ある」以上の頻度の選択肢を選んだ回答者を合計し
た人員の割合を示し,図(b)は,最も軽度の睡眠障害を訴える者の成績,
すなわち,上記4つの質問の1つ以上に「睡眠障害:月1,2回」の選択肢
を選んだ回答者の割合を示す。
次に,沖縄県調査委員会は,対照群においても少なからぬ割合で軽度の睡
眠障害が認められることから,暴露群の回答率が対照群のそれに比較してど
の程度増加しているかを検討するため,多重ロジスティック回帰分析(複数
の因子を説明変数として,ある事象が生ずる確率を推測する統計解析の方法
をいう。以下同じ)により,対照群に対する各WECPNL群の睡眠障害のオッ。
ズ比を求めた。沖縄県調査委員会が説明変数として用いたのは,WECPNL,年
齢(10歳ごとの6カテゴリ,性別,年齢と性別の交互作用及び職業の5)
つである。多重ロジスティック回帰分析により求められたオッズ比とW値の
関連は,次のとおりとなった。
沖縄県調査委員会は,この結果を踏まえ,次のように分析する。
①比較的軽度の睡眠障害を示す上記4つの質問の1つ以上に「睡眠障害
:月1,2回」の選択肢を選んだ場合には,トレンド検定(量反応関係
の検出を目的とした統計的な検定手法であり,暴露量が増加するに従っ
て,ある反応が増加し,又は減少する傾向があるか否かを検討するもの
をいう。以下同じ)による有意確率(統計的仮説検定において,差が。
ないという仮説(帰無仮説)が真であったときに,それに対応する標本
の値が生起する確率をいう。以下同じ。なお,この有意確率が十分に小
さい場合標本の仮説からのずれが統計的に無視することができない有,(
意)ものであり,帰無仮説が真でないと判断するに十分な証拠と考える
とされる)が0.05を下回り,量反応関係が有意に認められた。。
②比較的重度な睡眠障害を示す上記4つの質問の全てに「週に1,2回
ある」以上の頻度の選択肢を選んだ場合のオッズ比は,高くないのは,
普天間飛行場では,嘉手納飛行場と同じWECPNLでも,夜間の飛行が少な
く,昼間又は夕方の飛行が多いために,生活妨害の被害は相対的に大き
く,睡眠妨害が少ないと解することができる。
③比較的軽度の睡眠障害は,WECPNL75以上の全暴露群において,対照
群との間にオッズ比の有意差が認められたことから,低暴露地区におい
ても生じているとみられる。
ウ他の飛行場周辺での住民調査,騒音の影響についての学術研究等
括弧内の証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)他の飛行場周辺での住民調査等
a騒音影響調査研究会は,昭和46年ころ,大阪国際空港周辺の伊丹地区
(伊丹群)及び航空機騒音に暴露されることがほとんどない比較的静穏な
地区(対照群)に居住する2歳6か月以上4歳以下の幼児40名を対象に
して,薬物を投与して幼児を眠らせ,幼児が覚せいするまで,ピーク値6
5,75,85,95dB(A),持続時間17秒の飛行機騒音を暴露させ,
脳波等を測定する実験をした。
その結果,65dB(A)の騒音暴露では,比較的浅い睡眠段階にあった幼
児でも,ほとんどの者が変化を示さなかったものの,75dB(A)ではその
割合が減少し,85dB(A)になると比較的浅い睡眠段階では半数が,深い
.,,睡眠段階でも312%の者がそれぞれ変化を示し95dB(A)に至ると
ほとんどの者が騒音暴露前の睡眠段階より浅い睡眠段階に移行した。刺激
後1分以内に覚せいした事例は,対照群では18例中13例であるのに対
,。,,,し伊丹群では20例中8例と著明な差を示したまた脳波容積脈波
心電図,筋電図は,各刺激強度が強くなるに従って反応も高率になること
が認められ,各刺激強度間に有意な差があった。日常騒音に曝されること
の多い伊丹群にわずかながら騒音に対する慣れの傾向(騒音刺激により睡
眠を障害されにくくなっている傾向)がうかがえた。
(甲D73)
b松井利仁らは,平成18年ころ,成田国際空港周辺地域に居住する20
歳以上80歳未満の住民を対象として,質問紙調査を行った。質問紙を暴
露地域2538世帯,対照地域307世帯,9882通を配布し,これに
より得た回答6545通から一世帯一通を無作為抽出した1899通の回
答について,許容することができる睡眠妨害の頻度等について解析した。
その結果,週1,2回の睡眠妨害を耐えられると回答する住民は9%で
あるも,月1,2回の睡眠妨害を耐えられるとする住民は44%,年1,
2回の睡眠妨害を耐えられるとする住民は74%であり,また,睡眠妨害
に慣れないとの回答がWECPNLが高い地域ほど増える傾向をあるとの結果を
得た。
(甲D111,証人松井)
(イ)騒音の影響についての学術研究等
a労働科学研究所の大島正光らは,昭和30年ころ,20歳から39歳ま
での被験者4名に対し,500サイクル/秒,30~75フォーン,持続
時間3秒の純音を30秒~5分間隔で不規則に暴露させ,騒音の就寝及び
朝の覚せいに及ぼす影響について実験をした。
その結果,音響刺激の強い程,眠りに入る時刻が遅く,反応回数が多く
,,。なりまた覚せい時間が早い方にずれていくことなどが明らかにされた
これらを踏まえ,同大島らは,就寝を妨害し,朝の覚せいを促進する騒音
の限界は,40~45フォーンであり,また,音響刺激の影響は覚せい時
よりも就寝時に大きいとみることができると結論付ける。
(甲D68)
b長田らは,昭和43年ころ,19歳及び20歳の男子学生5名を対象と
して,睡眠中に午前零時から6時までの6時間連続して,40及び55dB
(A)で再現した道路交通騒音又は工場騒音並びに40dB(A)で再現した白色
騒音の暴露に暴露させて,無音を対照として,脳波,精神電流反射,脈拍
,,,。数血球数尿中副腎ホルモンを測定してその影響を調べる実験をした
その結果,脳波の波形から判定した睡眠深度は,騒音によって変化が頻
繁になり,深度の平均を計算してみると,音なしの対照実験と比較して4
0dB(A)でもかなり浅くなった。40dB(A)より55dB(A)の方が,工場騒
音より交通騒音に影響が大きかった。睡眠中に現れた覚せい型脳波の出現
回数やその延べ時間にも同じ傾向がみられた。脈拍数の変動も騒音によっ
て大きくなり,その影響は40dB(A)より55dB(A)の方が強かった。総白
血球の睡眠中の減少度には騒音の影響がみられなかったが,好酸球(白血
球の一つで,酸性色素を含み,睡眠中は通常増加するものの,外界のスト
レスが強いと減少するとされるもの。以下同じ,好塩基球(好酸球と同。)
様,白血球の一つで,睡眠中は通常増加するものの,外界のストレスが強
いと減少するとされるもの。以下同じ)の睡眠による増加は40dB(A)の。
騒音によって抑制され55dB(A)では逆に減少した白色騒音の40dB(A),。
では対照実験と差がなかった。尿中のウロペプシン(尿中のホルモンの一
種であり,副腎の刺激が強くなると増えるもの。以下同じ)の量は睡眠。
前に比べて睡眠中には減少するが,55dB(A)では減少が抑制される傾向
がみられた。精神電流反射,尿中のカテコールアミン(分子構造の一部に
カテコール核を持つアミン(アドレナリンとノルアドレナリンなど)の総
称であって,精神的緊張,交感神経緊張などにより分泌が亢進されるもの
をいう。以下同じ,17-OHコルチコステロイド(副腎皮質からの糖。)
質ホルモンが尿中に現れたものをいう。以下同じ)には,騒音の影響を。
見いだすことができなかった。被検者はいずれもよく眠れたと述べ,主観
的には騒音の影響を感じていない。また,被検者の居住地域の騒音の有無
は,結果に影響を及ぼさなかった。
長田らは,以上の結果から,40dB(A)の騒音でも睡眠が妨害されるこ
と,40dB(A)よりも55dB(A)の方がはるかに影響が大きいこと,血球数
でみる限り,白色騒音よりも現実の騒音の方が影響が大きいことが分かっ
たとするとともに,睡眠時の騒音レベルが40dB(A)を超えることは好ま
しくない旨結論付ける。
(甲D67,78の1,D79の1,乙D37)
cまた,長田らは,昭和44年ころ,前記b実験が連続した騒音による実
験であったことから,間欠騒音の睡眠への影響を連続騒音と比べて評価す
るため,19歳及び20歳の健康な男子学生5名を対象として,午前0時
から6時までの間,30分に1回の割合で2.5分の連続騒音又は10秒
ON10秒OFFの断続騒音をONタイム合計で2.5分を聞かせ脳波等
を測定する実験を行った。使用した騒音は,白色騒音,125Hz又は31
50Hzの1/3帯域騒音の3種で,暴露レベルは40dB(A)又は60dB(A)
である。
その結果,睡眠深度を脳波について調べると,前記b実験より,覚せい
期脳波の出現回数が多く,平均睡眠深度も浅くなった。3分ごとの脈拍の
変動も同実験の交通騒音に匹敵した。睡眠前の値を元にした起床直後の血
中好酸球,好塩基球の変化をみると,同実験における交通騒音,工場騒音
の40dB(A)と50dB(A)の中間に当たる影響を示した。精神電流反射,総
白血球数,尿中17-OHコルチコステロイド,ウロペプシン,カテコー
ルアミン量の変化には,同実験と同様,一定の変化を見いだすことができ
なかった。30分に1回ごとの12種の騒音の影響をみると,脳波からみ
た睡眠深度変化,脈拍数の変動のいずれも,40dB(A)よりも60dB(A)の
方が大きく,3種の騒音では白色騒音,3150Hz,125Hzの順に大き
。,,い傾向がみられた連続音と断続音とでは睡眠深度変化は連続音の方が
脈拍数では断続音の方が影響が大きかった。
長田らは,30分に1回ごと,暴露時間の合計が30分にすぎない騒音
でも,6時間連続暴露と同程度の睡眠妨害を起こすことから,睡眠には連
続した静けさが必要であると結論付けている。
そして,長田らは,昭和47年ころ,現実の間欠音の睡眠による影響を
調べるため,20歳代の男子学生5名を対象として,鉄道及び航空機騒音
をピークレベル50dB(A)又は60dB(A)で睡眠中に各42回暴露させて,
その影響を観察する実験をしたところ,脳波からみた睡眠深度や好酸球,
好塩基球につき「音なし」又は白色騒音と有意差があり,上記実験及び前
記b実験と同程度又はそれ以上の睡眠妨害がもたらされた旨報告してい
る。
(甲D69,70,D79の1)
dアメリカ合衆国連邦環境保護庁(EnvironmentalProtectionAgency。
EPA)は,昭和47年(1972年)の騒音規制法の規定に基づき,
昭和48年(1973年)7月27日に「騒音に関する公衆衛生と福祉に
関する基準(以下,後記eの資料に示された基準も含めて「EPAクラ」,
イテリア」という)を公表した。その中には,次のような内容が含まれ。
ている。
騒々しい環境下での眠りは,騒音が大きい場合,目覚めという形で,そ
,。,れ以外は眠りの段階の移行という形で眠りにある程度作用するしかし
普通は,我々のデータの大半は少数の人間しか扱っていない実験室の研究
から採ったものであり「反応」はEEG(脳波)といった生理的尺度で,
評価される。したがって,一般集団の眠りに及ぼす騒音の作用については
結論を導くに当たって注意を要する。長期的作用についての実験データー
がほとんど存在しないので,睡眠妨害の長期的作用について述べるに当た
り注意を払う必要がある。しかしながら,眠りは騒音により妨害され,あ
るグループ(老人,中年,病人等)はこの作用に特に感じやすいことを我
々は知っている。睡眠は,体力を回復させる過程であり,その間に体の器
官がエネルギーの供給や栄養物を更新していくものと考えられているの
で,騒音は,健康に有害といえる。さらに,調査データによると,睡眠妨
害がしばしば騒音による迷惑の第一の理由に挙げられることも我々は知っ
ている。騒音は,生活の質を低下させるものであるから,騒音による眠り
の妨害は,WHOの健康の定義の枠内でも健康にとって危険ということが
できる。
(甲D19,乙D11)
eアメリカ合衆国連邦環境保護庁(EPA)は,騒音規制法の規定に基づ
き,昭和49年(1974年)3月に「公衆衛生と福祉を,適切な安全限
」。界によって保護するため必要な環境騒音レベルに関する資料を公表した
その中の付録「公衆衛生と福祉の保護に必要な騒音レベルを決定するため
に直接使われない騒音の一般的影響」には,次のような記述がある。
騒音は,確かに睡眠を妨害するが,騒音暴露レベルと睡眠の深浅を関係
付けることは難しい。普通の騒音レベルでも睡眠のパターンを変えること
ができるが,この変化の意義は今でも疑問である。一部の人は騒音暴露を
受けると疲労,興奮又は不眠症を起こすが,その程度を数量的に示す確証
ははっきりしていない。現在のところ,騒音とこれらのファクターとの明
確な関係を確立することはできない。
(乙D18)
fWHOは,平成11年(1999年)4月,専門委員会において,特定
の環境と重要な健康影響ごとにまとめた環境騒音のガイドラインを策定し
た。
WHOは,その中で,①寝室(屋内)の環境条件で,睡眠妨害(夜間)
のガイドライン値をLAeq30dB(A),LAmax45dB,②寝室(屋外)の環境
,,条件で窓を開けた状態での睡眠妨害のガイドライン値をLAeq45dB(A)
LAmax60dBと定めた。
(甲D108)
エ睡眠妨害についての検討
(ア)原告らの中には,本件航空機騒音により,睡眠中に目が覚める(甲B2
の2,8,原告X61,原告X120,早朝のエンジン調整音により月2)
回ほどの睡眠妨害を受けている(甲B2の9,原告X112,多いときで)
週2,3回の睡眠妨害を受けている(原告X142,寝ようと思ったとき)
にうるさかったら寝付きが悪くなる(甲B2の10,原告X1,月数回,)
多いときに月5回くらい起こされる(甲B2の7,原告X56,週2回程)
度睡眠が妨害される(甲B2の1,原告X48)などと睡眠が妨害される旨
,()。,,供述し又は陳述書に記載する者がある甲B3の3また証人S4は
昼寝中の保育園児のうち,1,2歳の園児は入園から半年ほど,3~6歳の
園児は2,3か月ほど,本件航空機騒音により起こされ,泣いているなどと
証言する。
前記ウ(イ)の認定事実のとおり,騒音によって覚せいや睡眠深度の変化
が起こることを指摘する研究結果は存在し,40dB(A)の騒音でも睡眠が妨
害されることを示唆するものもあるものの,これらの研究結果によっても,
いかなる程度の騒音によって,どのような睡眠妨害(覚せい又は睡眠深度の
変化)が生ずるかという量的な対応関係が明確に示されているとまではいい
切れない。しかも,覚せいまでには至らないが,騒音により睡眠の深度が浅
くなることによって,いかなる身体的,精神的影響が生じ得るか,このよう
な睡眠妨害が長期にわたった場合における影響の有無及びその程度はどのよ
うなものであるかといった点については,明らかになっているということは
できない。また,前記ウ(イ)bのとおり,道路交通騒音など航空機騒音以
外の音源によっても睡眠妨害が生ずるとの実験結果や,前記ウ(イ)eの認
定事実のとおり,騒音暴露レベルと睡眠の深浅を関係付けることは難しいと
する知見もある。その影響の程度や影響が現れる騒音の下限値等について,
様々な提唱がされているのが現状であり,また,航空機騒音に対する慣れに
ついても,前記ウ(ア)の認定事実のとおり,積極,消極の両意見がある。
さらに,前記イの認定事実のとおり,沖縄県調査においても,普天間飛行場
周辺地域では,比較的重度な睡眠障害のオッズ比は,高くないと指摘されて
いる。
(イ)しかしながら,騒音と睡眠妨害の量的な対応関係が自然科学的に解明
されていないからといって,直ちに睡眠妨害がないとするのは,民事訴訟上
,。の因果関係の立証が自然科学的証明とは異なることに照らし相当ではない
まず,睡眠が騒音によって妨害されることがあることは,経験則上明らか
であり,前記(2)アの認定事実のとおり,一般的な騒音影響の発現経路と
しても説明がされている。また,夜間の本件航空機騒音の実態については,
前記2(3)ウ(イ)及び(ウ)のとおり,県野嵩測定局(W80区域,)
県上大謝名測定局(W80区域,県新城測定局(W75区域)及び市真志)
喜測定局(W75区域)並びに国新城測定点(W80区域)及び国大謝名測
定点(W80区域)の各測定地点における夜間(午後10時から翌日午前7
),,時までの1日平均騒音発生回数が平成8年度から平成17年度までの間
県野嵩測定局で0.2~0.7回,平成9年度から平成17年度までの間,
県上大謝名測定局で0.2~3.2回,県新城測定局で0.1~3.1回,
市真志喜測定局で0.2~2.2回,昭和60年度から平成18年度までの
間,国新城測定点で0.3~8.0回,国大謝名測定点で0.2~5.5回
である。これらの測定結果は,年度によりばらつきはあるものの,本件航空
機騒音(県等測定局にあっては暗騒音レベルより10dB(A)以上の(平成1
0年度についてはおよそ+10dB(A),平成11年度から平成14年度まで
は騒音値が暗騒音レベルをおよそ+5~10dB(A)超える)騒音が5秒以上
継続したもの,国測定点にあっては70dB(A)以上の騒音が5秒以上継続し
たもの)が,睡眠を妨げる時間帯に,最も多い時には1日に数回,最も少な
い時でも10日に1回発生していることを意味しており,このような1日に
数回との頻度は相当多数といえる一方,10日に1回との頻度も少ないとは
。,()いえない夜間の本件航空機騒音の発生状況等のこれらの事情に前記ア
のとおりの原告らの供述等の内容や,前記アの定型陳述書の集計結果におい
て,W75区域で77.3%,W80区域で85.4%の原告が,その程度
に差こそあれ,睡眠妨害を指摘していることを併せ考慮すると,原告らは,
本件航空機騒音によって,少なくない頻度で覚せいし,又は眠りが浅くなる
などの睡眠妨害の被害を受けていると認めることができるというべきであ
る。
そして,このような睡眠妨害を受ければ,これに伴って精神的苦痛が生ず
ることも推認することができる。しかも,夜間に本件航空機騒音のために睡
眠が妨げられるといった体験を重ねていくことによって,睡眠妨害による不
快感が徐々に高まっていくことも想定することができる。
また,原告らの定型陳述書による睡眠妨害の訴え率がW値の上昇に伴って
上昇していることに加え,前記イの認定事実のとおり,沖縄県調査の結果で
も比較的軽度の睡眠障害について量反応関係が有意に認められると指摘して
いることなどに照らすと,本件航空機騒音による睡眠妨害の被害の程度は,
原告らの各居住地における本件コンターのW値の区分が高いと大きくなると
いって差し支えないと考えられる。
そして,睡眠妨害の被害は,その被害の性質に照らせば,前記ウ(イ)b
の実験結果等にみられるように,被暴露者が主観的には意識しないこともあ
り得るといえることなどからすると,定型陳述書にこれらの被害があると記
載していない原告らや,定型陳述書その他の陳述書を提出していない原告ら
も含めて,原告ら全員が最小限度等しく受けているということができる。
そうすると,原告らは,本件航空機騒音により,W80区域の方がW75
区域よりは著しいという意味でそれぞれその居住する区域のW値に応じて,
少なくない頻度で睡眠妨害の被害及びこれに伴う精神的苦痛を等しく受けて
いるということができる。
(ウ)これに対して,被告は,深夜や早朝においては,窓を閉めて睡眠する
ことが通常であり,仮にこれらの時間帯に航空機騒音が発生したとしても,
就寝中の居室内に到達する騒音量は相当程度減衰しているはずであるから,
原告らが本件航空機騒音によって睡眠を妨げられることは,ほとんど問題と
するに足りない程度であり,また,住宅防音工事による効果に加え,冷暖房
機及び換気扇が取り付けられているから,ごく短時間,窓を開放せざるを得
ない場合が生じ,その間にたまたま騒音に暴露されて睡眠を妨げられたとし
ても,それはもはや法的に保護すべき利益侵害とはいえないと主張する。
しかしながら,高温多湿である沖縄においては,後記5(2)オ(ア)の
とおり,住宅防音工事を実施した原告らも,冷房装置の電気料金の負担等の
理由から,結局のところ,窓を閉め切って生活する場面は生活全体からすれ
ば一定の限度にとどまるといえる上,海洋性気候であるため,窓を開けて生
活することが比較的多いといえるところ,一般的に気温が下がる夜間におい
ては,その傾向が一層高まると推認することができるから,建物自体の遮音
効果が前記2(5)エ(ウ)のとおり10~15dB(A)程度あることや,後
()(),記52オアのような住宅防音工事による防音効果を考慮に入れても
なお就寝中の居室内に到達する騒音量は原告らの睡眠を妨害しない程度まで
に減衰しているとまではいうことはできない。
したがって,被告のこの主張は採用することができない。
また,被告は,睡眠妨害に関する沖縄県調査について,騒音レベルの影響
の検討について自己申告データを用いることは疑わしい調査方法であり,ま
た,対照群の比率及び暴露群の比率の値が大きい軽度の睡眠障害についてオ
ッズ比を相対危険度と同定するものとして用いて,量反応関係があるとの結
論を導く誤った統計処理による推論をしている点で分析方法上も問題がある
と主張する。
しかしながら,自己申告データであっても,対照群やW値の異なる区域と
の比較に用いる限り,統計的に意味のない数値とみることはできず,また,
対照群における比率をp0暴露群における比率をp1とするとオッズ比が1,,{(
-p0)/p0・p1/(1-p1}であるのに対し,相対危険度(対照群と暴}{)
露群の比率の比)がp1/p0であるので,対照群での比率及び暴露群での比率
のいずれのもの値が十分に小さい場合には,オッズ比と相対危険度が一致す
るといえる(甲D1)一方,対照群での比率及び暴露群での比率のいずれも
の値が十分に小さいといえない場合には,オッズ比と相対危険度が一致する
といえないものの,オッズ比と相対危険度とは上記のとおり異なる概念であ
るから,沖縄県調査においてオッズ比を相対危険度と同定するものとして用
いているとはいえない。
したがって,被告のこの主張も採用することができない。
オ睡眠妨害についてのまとめ
以上によれば,原告らは,本件コンター内に居住する間,本件航空機騒音に
より,睡眠妨害及びこれに伴う精神的苦痛を,W80区域の方がW75区域よ
りは著しいという意味でそれぞれその居住する区域のW値に応じて,等しく受
けていると認めることができる。
(5)精神的被害
ア原告らの精神的被害の陳述
証拠(甲B1の1から194まで(枝番号6,90,103,105,10
,,。)),。6142171及び189を除くによれば以下の事実が認められる
原告らの多くは,次の表のとおり,定型陳述書に,本件航空機騒音は「あな
たにどのような精神的苦痛を与えていますか」との質問項目に対して「イライ
ラする「集中力がなくなる」などと精神的苦痛について記載している。」,
この記載の集計結果をグラフで示すと次のとおりとなる。
イ沖縄県調査の結果
証拠(甲D1,6,乙D41)によれば,以下の事実が認められる。
(ア)THI調査の結果
a沖縄県調査委員会は,平成7年10月から平成8年9月までの間,生活
環境調査に先立ち,THIを用いて,住民の自覚的健康度の調査を行った
(以下「THI調査」という。。)
THIは,東京大学に在籍していた研究者3名によって自覚的健康度の
調査のために開発された質問紙健康調査票である。沖縄県調査委員会は,
THIを従来心身の自覚症状調査に用いられてきたコーネル医学指数C,(
MI)に比べ,質問項目を少なくして,かつ定量的評価を行いやすいよう
精神的苦痛の内容
90.7%
69.1%
13.4%
24.7%
56.7%
90.7%
1.0%
93.3%
70.8%
28.1%
39.3%
55.1%
92.1%
1.1%
91.9%
69.9%
20.4%
31.7%
55.9%
91.4%
1.1%
0.0%20.0%40.0%60.0%80.0%100.0%
イライラする
集中力が無くなる
何事にも無気力になってしまう
戦争体験を思い出し,恐怖感や不安を覚える
戦争に巻き込まれるのではないかという恐怖感を覚える
墜落するのではないかと恐ろしくなる
その他
W75区域W80区域全体
イライラする集中力がなくなる
何事にも無気力に
なってしまう
墜落するのではない
かと恐ろしくなる
W75区域
88名67名13名24名55名88名
90.7%69.1%13.4%24.7%56.7%90.7%
92.1%
W80区域
83名63名25名
70.8%28.1%39.3%55.1%
55.9%91.4%
全体
171名130名38名
91.9%69.9%20.4%31.7%1.1%
戦争体験を思い出し,
恐怖感や不安を覚える
戦争に巻き込まれるのでは
ないかという恐怖感を覚える
その他
1名
1.0%
1名
59名
1.1%
2名104名170名
35名49名82名
93.3%
に工夫されており,また,性格テストや精神疾患の検出のために用いられ
てきた矢田部ギルフォード性格テストやミネソタ多面的人格目録と比べ,
性格テストや精神疾患の検出に関しては専門化の程度が低いものの,測定
対象領域は広く,心身自覚症状を把握するとともに,様々な心理・性格傾
。,向や神経症傾向を定量的に示すことができると位置付けているTHIは
130の質問からなり「はい「いいえ「どちらでもない」などの3,」,」,
択式の回答となっている。THIの質問は,①「多愁訴,②「呼吸器,」」
③眼と皮膚④口腔と肛門⑤消化器⑥直情径行性⑦虚「」,「」,「」,「」,「
構性,⑧「情緒不安定,⑨「抑うつ性,⑩「攻撃性,⑪「神経質」及」」」」
び⑫「生活不規則性」の合計12の尺度に分類される(ただし,一つの質
問が二つの尺度に属することもあり,また,いずれの尺度にも属さない質
問が12ある。回答の集計は,その尺度に含まれる質問項目への回答が。)
「はい」の場合に3点「どちらでもない」の場合に2点「いいえ」の場,,
合に1点として,各尺度に対する回答から合計得点を求める。判別得点が
大きいほど,その尺度に関連する疾患に罹患している確率は高くなり,判
別得点が正のときは陽性,負のときは陰性と判別するとし,また,これら
の尺度得点・判別得点を集団について求め,適当な標準集団の値と比較す
ることで,当該集団の特徴を明らかにし,評価することもできるとする。
沖縄県調査委員会は,12個の尺度のうち「直情径行性「虚構性,,」,」
「情緒不安定「抑うつ性「攻撃性「神経質」及び「生活不規則性」」,」,」,
の7尺度は「精神的自覚症状」とみなすことができる(なお「多愁訴,,」
「呼吸器「眼と皮膚「口腔と肛門」及び「消化器」の5尺度は「身体」,」,
的自覚症状」とみなすことができる)とする。沖縄県調査委員会は,各。
尺度の内容や意味について,次のとおりとする。
bTHI調査は,平成7年10月から平成8年9月までの間,航空機騒音
暴露群として普天間飛行場周辺の宜野湾市,浦添市及び北中城村の住民2
213名並びに嘉手納飛行場周辺の北谷町,嘉手納町,石川市(当時,)
具志川市(当時,沖縄市及び読谷村の住民4840名,非暴露群すなわ)
((),()ち対照群として沖縄本島南部の2町1村佐敷町当時大里村当時
及び南風原町)の住民1031名の合計8084名の住民に対して,TH
Iに耳の聞こえの悪さといった質問5項目を加えた調査票を配付し,これ
を回収することにより,実施した。
調査表の配布は,まず行政区画を無作為に抽出し,次に住民基本台帳か
ら無作為に抽出して配布対象を選定した。もっとも,嘉手納飛行場周辺の
WECPNL95以上の区域では,居住者が少ないので,全数を対象とした。
有効回答数(回数された調査票において,年齢,性別が記載され,かつ
住所から居所の本件コンターのWECPNLのランクが確定することができるケ
ースのうち,年齢が15歳以上75歳未満の者の回答数)は,全体で64
80通あり,そのうち,普天間飛行場周辺では1745通,対照群では8
。,,()48通であった沖縄県調査委員会はTHI調査の結果に後記ウア
の住民健康調査研究会による北谷町住民に対する自覚的健康度調査におい
て行ったTHIの結果を加え,有効回答者数を7095名として,年齢,
性別構成が等しくなるように調整を行った上,分析を行った。
c沖縄県調査委員会は,前記aのとおり「精神的自覚症状」に関する尺,
度として「直情径行性「虚構性「情緒不安定「抑うつ性「攻撃,」,」,」,」,
性(沖縄県調査委員会は,この得点が低いことは,積極性に欠けること」
を意味すると位置付ける「神経質」及び「生活不規則性」の7尺度を。),
挙げているところ,このような精神的自覚症状に関する調査結果は,次の
とおりである。
まず,WECPNL以外に,年齢(6分類,性別,職業(4分類,年齢と性))
()別の交互作用をTHIの尺度に影響を及ぼす可能性のある因子交絡因子
,(,として取り上げしきい値対照群における90パーセンタイル値を用い
虚構性,攻撃性,神経質については10パーセンタイル値も用いられてい
る)を上回り,又は下回る比率に対して多重ロジスティック回帰分析に。
より各因子の影響を解析した。その結果,普天間飛行場周辺では「神経,
質」の尺度においてのみ,WECPNLとの間に1%以下の有意確率で関連が認
められると分析し,また「情緒不安定「攻撃性」及び「神経質」の各,」,
尺度について,対照群との差をオッズ比で求め,95%信頼区間を用いて
W値との関連を検討したところ,次の図に示すとおりとなった(なお,同
図中,●印が普天間飛行場の結果を示す。以下についても同様である。。)
沖縄県調査委員会は,この結果について「神経質」の高得点側に関し,
ては,高度に有意なオッズ比の上昇が認められ,また,信頼区間の範囲内
の若干の凹凸はあるけれども,WECPNLが75未満の群においても対照群と
の間に高度に有意な差があり,ほとんど全ての群でオッズ比の有意確率が
有意となっている一方「情緒不安定」及び「攻撃性」の低得点側に関し,
ては,いずれもオッズ比とW値に有意な関連は認められないなどと分析す
る。
dまた,沖縄県調査委員会は「心身症傾向(ここでいう心身症とは,精,」
神的なストレスが原因で身体的な疾患が起こっている状態を指している。
以下同じ)と「神経症傾向」について判別得点を算出し,W値との関連。
を解析した(なお,沖縄県調査委員会は,この判別について,判別得点が
正であれば,心身症傾向又は神経症傾向と判断されるものの,これらの判
別得点が高いということは,質問に対する回答パターンが,心療内科医・
精神科医により心身症・神経症と診断された患者のパターンと似ていると
いうことであり,実際に心身症・神経症と診断される確率は高いものの,
必ずしも医師の診断とは必ずしも一致するものではないと位置付けてい
る。。)
そして,沖縄県調査委員会は,多重ロジスティック回帰分析により,こ
れら2種類の判別得点について解析を行い「心身症傾向」及び「神経症,
傾向」の各尺度について,対照群との差をオッズ比で求め,95%信頼区
,。間を用いてW値との関連を検討したところ次の図に示すとおりとなった
沖縄県調査委員会は,この結果について「心身症傾向」に関しては,,
普天間飛行場周辺では,トレンド検定にて有意な量反応関係は認められな
いが,W75以上の群では対照群に比べ有意なオッズ比の上昇がみられる
一方「神経症傾向」に関しては,量反応関係は認められないと分析して,
いる。
e沖縄県調査委員会は,THI調査の結果の解析から,①種々の精神的自
覚症状を訴える者の比率は,暴露レベル(WECPNL等)に応じて高くなるこ
,「」,「」,と②精神的自覚症状に関する尺度に関しては神経質などでは
WECPNLが75未満の比較的低い騒音暴露レベルから影響がみられること,
③航空機騒音は,様々な自覚症状の訴え率を高めるにとどまらず,心身症
傾向や神経症傾向と判断される者の比率を,特に高レベル暴露群において
顕著に高めていることなどと結論付けている。
(イ)生活環境調査の結果
沖縄県調査委員会は,前記(3)イのとおり,平成8年11月から平成9
,。,,年3月までの間生活環境調査を実施したそのうち沖縄県調査委員会が
生活環境調査において,航空機騒音の心理的影響,すなわち,航空機騒音の
「」「」,。うるささ及び被害感について調査した結果は次のとおりであった
aまず,自宅における航空機騒音の「うるささ」の程度に関する調査結果
及び「たいへんうるさい」のカテゴリに反応した人員の割合の合計と航空
機騒音暴露量に対して示した結果は,次のとおりとなった。
沖縄県調査委員会は,この結果について,特に「たいへんうるさい」の
カテゴリに反応した人員の割合と航空機騒音暴露量との間には著明な量反
応関係を認め,また,嘉手納飛行場周辺と普天間飛行場周辺とを比較する
と,同じWECPNLに対して普天間飛行場周辺において,嘉手納飛行場周辺よ
り高い反応率が認められると分析している。
b次に,生活環境調査において,①航空機騒音による「被害感「イライ」,
ラ感「恐怖感」及び「戦争の恐怖」の各質問に対する回答率,②「被害」,
感」について「耐えがたい被害をうけている」及び「非常に被害をうけて
いる」のカテゴリに反応した人員の割合の合計を航空機騒音暴露量に対し
て示した結果並びに③「イライラ感「恐怖感」及び「戦争への恐怖」に」,
関する質問に対して「いつもある」及び「ときどきある」のカテゴリに反
応した人員の割合の合計を航空機騒音暴露量に対して示した結果は,それ
ぞれ次のとおりとなっている。
沖縄県調査委員会は,上記の結果を踏まえ,①航空機騒音による「被害
感」については,WECPNLの増大とともに被害感が上昇する傾向が著明であ
ること,普天間飛行場周辺住民の大多数が航空機騒音による被害感を抱い
ていると考えられること,普天間飛行場周辺の反応率が嘉手納飛行場周辺
,「」のそれよりも高いこと②自宅において感じる航空機騒音のイライラ感
についても,普天間飛行場周辺の反応率が嘉手納飛行場周辺のそれより高
い傾向が認められること,③自宅において感じる航空機騒音の「恐怖感」
について,航空機騒音の恐怖感は,墜落の不安と関連があると考えられる
こと,④「戦争への恐怖」については,航空機騒音の恐怖感と異なり低い
反応率であることなどと分析している。
cまた沖縄県調査委員会は日常生活の中で感じる不安感について飛,,,「
行機の墜落の不安「飛行機からの落下物の不安「燃料タンク等,基地」,」,
内の危険物の爆発事故の不安「戦争にまきこまれる不安」の4項目に関」,
して質問し,それぞれ5段階の選択肢によって回答を求めている。その回
答率並びにこれらの不安感に関する質問に対して非常に感じる及びか「」「
なり感じる」のカテゴリに反応した人員の割合の合計を航空機騒音暴露量
に対して示した結果は,それぞれ次のとおりとなった。
沖縄県調査委員会は,上記の結果を踏まえ,①「墜落の不安」について
は,普天間飛行場を基地とする航空機が墜落する事故は一般の民間航空機
が墜落する事故よりはるかに頻度が高い状況であるから,航空機騒音を聞
くと周辺の居住者が墜落事故を連想するであろうことは,容易に想像する
ことができること,②「落下物の不安「爆発事故の不安」及び「戦争へ」,
の不安」については,W値85までの騒音暴露量の地区では,騒音暴露量
にかかわらずほぼ反応率が一定で,20%程度であることなどと分析して
いる。
ウ他の飛行場周辺における住民調査等
括弧内の証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)山本を会長とする住民健康調査研究会は,平成3年,北谷町から委託を
受けて,THIを用い自覚的健康度を調査した。同研究会は,平成3年10
月から11月までの間,嘉手納飛行場周辺地域である北谷町住民1000名
(WECPNL75,80,85,90,95となる5つの地区に居住する住民か
らそれぞれ男女各100名)及び対照地区である北中城村の住民200名に
対して,THIを配布し,1053通の回答を受け,回答のうち質問項目に
欠損のない830通について分析をした。
その結果によると,上記WECPNLによって層化した5群(WECPNL75群,8
0群,85群,90群及び95以上群)に対照群を加えた6群間で有意差が
あるか否かを検討した結果では,有意差が認められた尺度得点・判別値の平
均値とWECPNLとの間には,WECPNLが大きくなるほど尺度得点・判別値の平均
値が大きくなるというような傾向は必ずしも著明には認めらなかった。同研
究会は,この結果のみからは,航空機騒音暴露と住民の自覚的健康観との間
には明確な因果関係は存在しないと推定されるが,航空機騒音暴露群と被暴
露群との間には,自覚的健康感に有意差が認められるので,WECPNL各層に属
する人員の数が少ないためであったとも考えられると分析する。
そして,同研究会は,この調査の結果の要約として,航空機騒音に暴露さ
れている北谷町と暴露されていない北中城村との間に,主として高年齢層で
精神的自覚症状に有意差が認められ,また,区域指定におけるWECPNL75~
90群,WECPNL95以上群と対照群(北中城村住民)とを比較すると,3群
間で有意差の認められた尺度得点・判別値は,精神的訴えを示すものに多か
った。これらのことから,航空機騒音の影響は主として精神的訴えに現れる
と考えられ,その尺度得点・判別値の平均値の大きさの順,すなわち訴えの
多さと航空機騒音暴露量との間には因果関係があると考えられ,この検討結
果は因子分析,重回帰分析を行った結果とも符合していると分析する。
(甲D1,3から5まで,乙D40)
(イ)財団法人航空公害防止協会が前記(3)ウ(ア)bのとおり財団法人
大阪国際空港メディカルセンターに委託して昭和55年度から昭和57年度
まで,大阪,東京両国際空港及び福岡空港周辺において実施した質問紙によ
る健康調査のうち,昭和56年度及び昭和57年度のTHIによる結果は,
精神的自覚症状に関しては,大阪空港周辺では「直情径行性「情緒不安,」,
定「抑うつ性「神経質」の4尺度と「心身症傾向」及び「神経症傾向」」,」,
の2判別値についてWECPNLの異なる3群間で尺度得点及び判別値に有意差が
あり,そのうち「情緒不安定性「抑うつ性「神経質」の3尺度と「心,」,」,,
身症傾向」及び「神経症傾向」の2判別値について,W値の上昇とともに平
均値が高くなった。これに対し,東京国際空港及び福岡空港の各周辺では,
。,WECPNLの異なる各群で有意差がある尺度得点や判別値はなかったもっとも
いずれの地域でも,WECPNLが高い地域ほど「情緒不安定「抑うつ性」に,」,
関する訴えが多く,神経症傾向や心身症傾向も強くなっていた。
(乙D36)
(ウ)寺井病院医師谷口堯男(以下「谷口」という)らは,昭和59年か。
ら昭和62年まで,騒音地域(W値80以上)255名及び非騒音地域19
7名の住民を対象としてTHIによる健康度調査を行った。その結果,健康
障害が高率と考えられる60歳以上の高齢者を除外して,騒音地域及び非騒
音地域において,性,年齢を一致させた男子100ペア,女子80ペアを構
成し,騒音地域及び非騒音地域に差が認められるか否かを検討すると,男女
とも,多愁訴性,心身症傾向の項目で,騒音地域において非騒音地域よりも
訴えが多く,有意差があり,女子では情緒不安定,神経症傾向の項目でも,
訴えが有意に多かったとしている。
また,谷口らは,昭和61年及び昭和62年に,小松基地騒音差止等訴訟
の原告及びその家族125名(生活環境整備法上の区域指定におけるW値7
5,80,85,90の各区域に居住)を対象として,一般健診,聴力健診
,。,,等と併せてTHIによる健康度調査等を行ったその結果一般健診では
いらいら等の神経症状の訴えが多く,THIによる健康度調査では,精神的
被害に関し,男女とも多愁訴性,心身症で尺度点数が高かった。
(甲D104,105)
(エ)財団法人空港環境整備協会航空環境研究センター環境保健部の後藤恭
一らは,航空機騒音のレベルでは空港周辺住民への聴覚影響はないとの見方
が一般的であるのに対し,音の間接的影響である非聴覚的生理影響に関する
調査はまだ解明されているとはいい難いとして,平成10年4月から7月ま
で,ある空港周辺で実施された健康診断の受診者567名を対象として,自
記式質問票による環境意識及び自覚症状に関する調査を行った。後藤らは,
一般に男性よりも女性の方が居住地での生活時間が長いことを考慮して,解
析の対象を成人女性390名に限定した。
対象者を第1種区域隣接区域(WECPNL70,第1種区域(WECPNL75))
及び第2種区域(WECPNL90)に分類して回答結果を解析した。その結果,
3区域間の差を比較検討すると,音環境評価得点は,高騒音指定区域ほど高
,,,,く不満傾向にあることを示し統計学的な有意差がみられ音環境評価は
WECPNLとの間で有意な正相関係を示していた。これに対して,心理的精神的
指標の検討では,抑うつ得点については,第2種区域群が他の2群に比べて
高い傾向を示した外は,有意差が認められず,不安得点及びストレス得点の
平均値では,3群間でほぼ等しく,不安,抑うつ傾向は,WECPNL間では相関
性がみられなかった。もっとも,ストレス得点の増減には,音環境評価と社
会的支援が寄与することが示された。
後藤らは,上記の結果を踏まえ,不安・抑うつといった精神症状と航空機
騒音暴露量との間には明確な関係はみられなかったけれども,音環境評価の
不満と精神状態に関連性が認められることが確認できたことから,航空機騒
音暴露が直接的にストレスに影響せず「音源-伝播-知覚・認識」の過程,
を経て騒音であると判断している者が不安・抑うつ傾向を生じていることが
推測され,そのような騒音の間接的な影響は示唆されるとともに,高不安,
抑うつ状態のために騒音感受性が高まっているとも示唆されると結論付け
る。
(乙D35)
エ精神的被害についての検討
(ア)原告らの中には,本件航空機騒音により,はらわたがえぐられるよう
な気持ちとなり,いらいらする(原告X120,イライラする(原告X1)
12,うるさい(甲B2の5,原告X142,非常にいらいらする,憎た))
らしくなるような気持ちになる(甲B2の7,原告X56,不愉快である)
(原告X39)などと供述し,又は陳述書に記載する者がいる。また,原告
X143は,原告X144が乳幼児のころ本件航空機騒音にびっくりして泣
いたと陳述書に記載し(甲B2の6,証人S4は,保育園児が本件航空機)
騒音を聴取すると泣き叫ぶことがあると証言する。
,,,,()()イライラ感不快感不安感恐怖感等の精神的苦痛は前記3エア
のとおり,生活妨害と同様,騒音を暴露する者の主観的条件によっても差異
,,が生じ得る一方その主観的な受けとめ方を抜きにしてはこれを正確に認識
把握することができない性質のものといえる。そして,前記アの認定事実の
とおり,原告らのうち定型陳述書を提出した者の9割以上の者が「イライラ
する」と陳述している。前記イ(イ)の認定事実のとおり,沖縄県調査の生
活環境調査の結果では「うるささ」について「たいへんうるさい」と回答,
,.,.,した者の割合はW75区域で219%W80区域で304%であり
これに「かなりうるさい」と回答した者を加えると,W75区域で58.8
%,W80区域で64.9%に達する(なお,嘉手納飛行場周辺区域におけ
る同様の調査では「たいへんうるさい」と回答した者の割合は,W値75,
以上80未満の区域で2.7%,W値80以上85未満の区域で8.4%で
あり,これに「かなりうるさい」と回答した者を加えても,W値75以上8
0未満の区域で11.8%,W値80以上85未満の区域で27%となって
おり,普天間飛行場周辺地域の同一のW値の区域よりも低い数値となってい
る「イライラ感」が「いつもある」と回答した者の割合は,W75区域。)。
で17.2%,W80区域で14.7%であり,これに「ときどきある」と
回答した者を加えると,W75区域で41.5%,W80区域で45.2%
に達する。原告らが,上記のとおり供述等し,又はそのほとんどが定型陳述
書に記載するように,本件航空機騒音を「イライラする」と感じていること
はこのような沖縄県調査の結果によっても裏付けられているといえるな,,(
お,本件航空機騒音によるイライラ感や不快感を日常感じることにより,こ
れがうっ積して種々の心理的,情緒的反応に結び付いていく可能性があるこ
とも,前記イ(ア)の認定事実のとおりの沖縄県調査のTHI調査の結果や
前記ウの認定事実のとおりの他の飛行場周辺における住民調査の結果等から
理解することができる。。)
そうすると,原告らが,本件航空機騒音により,本件航空機騒音を直接の
原因とするイライラ感や不快感の精神的苦痛(以下「本件精神的被害」とい
う)を受けていると認めることができる。。
(イ)しかも,原告らの中には,本件航空機騒音により,墜落の不安・危険
を感じる(原告X61,落ちるかとの恐怖心がある(原告X39,飛行機))
が墜落するのではないかという不安がつきまとって苦しんでいる(原告X1
20,本当に落ちるのではないかと体が震える(原告X112,いつ落ち))
ないかという恐怖感がある(原告X142,墜落しないかとの不安もある)
(甲B2の10,原告X1,ヘリコプターが燃えていないか確認する,怖)
い原告X56ヘリコプターが落ちた後の恐怖感は大変なものである原(),(
告X3)などと本件航空機騒音による普天間飛行場を離着陸する米軍機の墜
落への不安感や恐怖感について供述し,又は陳述書に記載する者がいる。そ
して,証拠(甲C12,13,36,44,45,51,53,58,枝番
号を含むF1から20まで,証人S1)によれば,普天間飛行場を離着陸す
るヘリコプター等の米軍機が,タッチアンドゴー等の訓練により,普天間飛
行場周辺を低空で飛行しながら,本件航空機騒音を発生させていること,普
天間飛行場に所属する米軍機による墜落,不時着,緊急着陸等の事故等は,
昭和47年5月15日(沖縄の復帰の日)から平成14年12月末までの間
に77件発生していた上,普天間飛行場を離陸した米軍機のヘリコプターC
H-53D型が平成16年8月13日に沖縄国際大学敷地内に墜落する事故
が発生し,これが広く報道されていることが認められる。
これらの事実に加え,前記アの認定事実のとおり,原告らのうち定型陳述
書を提出した者の9割以上の者が本件航空機騒音による精神的苦痛として
「」,()墜落するのではないかと恐ろしくなると記載していることや前記イイ
,,「」の認定事実のとおり沖縄県調査の生活環境調査の結果でも墜落の不安
,「」「」,については非常に感じる及びかなり感じると回答した者の割合は
W75区域で53.4%,W80区域で56.6%に達していることを総合
考慮すれば,原告らが本件航空機騒音により普天間飛行場を離着陸する米軍
機の墜落への不安感や恐怖感を感じているといえ,これが原告らの本件精神
的被害を等しく増大させていると推認することができるので,この点も,本
件精神的被害の内容,程度を理解する上で考慮すべきであると考える。
(ウ)他方,後記第3の1のとおり,沖縄戦の過程で,宜野湾村(当時)の
住民も,米軍に土地を接収され,収容所で生活することを余儀なくされたこ
とに加え,普天間飛行場が住民から接収した土地等に建設されたという歴史
的経緯や,原告らが居住する宜野湾市のある沖縄本島中部地域の約4分の1
の面積が普天間飛行場等の米軍基地で占められているという現状にかんがみ
ると,原告らの中には,本件航空機騒音により,その戦争体験を思い出すと
供述し,又は陳述書に記載する者がいる(甲B2の4,8,原告X39,原
告X120)ことも当然のこととみることができる。しかも,普天間飛行場
周辺の小学校でも,平和に関する授業を行っている(証人S3)から,この
ような事情は普天間飛行場周辺に居住する住民にとっての関心事となってい
るとみる余地はある。しかしながら,前記アの認定事実のとおり,定型陳述
書を提出した原告らの者のうち「墜落するのではないかと恐ろしくなる」,
と記載したものが91.4%であるのに比べ「戦争体験を思い出し恐怖感,
や不安を覚える」と記載したものが31.7%「戦争に巻き込まれるので,
はないかという恐怖感を覚える」と記載したものも55.9%にとどまって
いる。また,前記イ(イ)の認定事実のとおり,沖縄県調査の生活環境調査
の結果では「戦争の恐怖」が「いつもある」及び「ときどきある」と回答,
,.,.,した者の割合はW75区域で182%W80区域で205%であり
「戦争への不安」についても「非常に感じる」及び「かなり感じる」と回,
答した者の割合は,W75区域で34.2%,W80区域で36.7%にと
どまっており,沖縄県調査委員会は「戦争への恐怖」については,航空機,
騒音の恐怖感と異なり低い反応率であると分析し,また「戦争への不安」,
についても,W値85までの騒音暴露量の地区では,騒音暴露量にかかわら
ずほぼ反応率が一定であると分析していることから,戦争への恐怖や不安に
ついては,本件コンターのW値との間に量反応関係を認めていない。
そうすると,原告らの定型陳述書に戦争への恐怖感の被害を記載する者の
割合は,それ自体少ないとはいえないものの,本件航空機騒音と戦争への恐
怖感との関連性が統計的にもあるとはいえない上,原告らの全員の共通被害
として戦争への恐怖感への被害を捉えることもできないというべきであるか
,,,,ら原告らが本件航空機騒音により戦争への恐怖感の被害を等しく感じ
これに伴い,本件精神的被害を等しく増大させていると認めることまではで
きない。
(エ)そして,原告らが本件航空機騒音によって受ける本件精神的被害の程
度は,原告らの各居住地における本件コンターのW値の区分が高いと大きく
なることは,前記(ア)及び(イ)の沖縄県調査の結果等から認めることが
できる。
,,,また本件精神的被害は本件航空機騒音の実態や被害の性質に照らせば
原告らの年齢,性別,同居する家族の構成等によって,いろいろな形態をと
って現れるものの,定型陳述書にこれらの被害があると記載していない原告
らや,定型陳述書その他の陳述書を提出していない原告らも含めて,原告ら
全員が最小限度等しく受けているということができる。
(オ)これに対して,被告は,精神的被害に関する上記沖縄県調査には,調
査方法,解析方法及び結果解釈の妥当性について,正確性に関する問題点が
含まれており,本件航空機騒音による精神的被害を裏付ける証拠とはならな
いと主張する。
,,,,しかしながら調査方法についてはTHI調査では被告指摘のように
平成7年及び平成8年の調査と平成3年及び平成4年の調査とは,4年もの
期間を経て行われた別の調査であり,かつ,サンプリング構成も異なってい
るといえるものの,平成3年及び平成4年の調査は嘉手納飛行場周辺につい
てのものであり,普天間飛行場周辺についての調査に問題があったとの指摘
ではない。また,生活環境調査でも,全居住者に調査票が配布されたW値9
5以上の区域と,全居住者には調査票を配布していない低騒音区域とを比較
しているとする被告の指摘についても,嘉手納飛行場周辺における調査の問
題を指摘するにすぎない。
また,THI調査における調査実施方法では,ダブルブラインドが行われ
ていないとの被告の指摘については,確かに,沖縄県調査報告書には,調査
員が「調査の趣旨」を述べて調査票を配布したとの記載があり,また,地元
の区長が口添えをし,又は配布・回収をすることがあったと認められる(甲
D1,乙D40)けれども,沖縄県調査研究委員会副委員長の平松幸三が,
回答者にはもちろん,配布する調査員にも,調査の意図を知らせない方法を
採った旨の説明していること(乙D1,40)に不自然なところはなく,沖
縄県調査報告書に記載されている「調査の趣旨」が航空機騒音の影響を調査
するということを含むものと認めるに足りる証拠もないことに照らすと,被
調査者の中には航空機騒音による影響を調査することが目的であることを認
識していた者が含まれている可能性があるとしても,それだけで,THI調
査の結果全体の信用性に影響を与えるものとまではいえない。また,生活環
境調査におけるバイアスについての被告の指摘についても,配布・回収につ
いて,地元の自治会の協力を得られた場合には,自治会長又はその協力者が
行ったことを認められる(甲D1)ものの,これだけで,バイアスのため沖
縄県調査の信用性が低いということはできない。また,生活環境調査におけ
る調査内容から調査目的を推知される可能性が高いとの被告の指摘について
も,生活環境調査は,前記(3)イの認定事実のとおり,普天間飛行場周辺
住民等の生活の質及び環境の質に対し,航空機騒音の存在が与えている影響
を知る目的で,回答者の基地及び航空機騒音に対する態度も併せて調査対象
として実施されたものであり,その設問もそのような観点から作成されてい
るから,調査内容に回答者の主観が介在する可能性があることは,調査の目
的等に照らし当然のことというべきである上,質問に用いた用語や質問の配
列には相応の工夫がされていることがうかがわれる(乙D40)ので,この
ことのみをもって生活環境調査の信用性が低いということはできない。
さらに,解析方法についても,平成6年以降の調査結果を,昭和52年当
時の騒音データに当てはめて検討し,結論を導いている点で解析方法に問題
があるとの被告の指摘については,前記2のとおりの本件航空機騒音の実態
に照らせば,本件航空機騒音は,昭和52年当時と平成6年以降当時とでそ
れほど異なっているとはいえないから,その解析方法に問題があるともいえ
ない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
オ精神的被害についてのまとめ
以上によれば,原告らは,本件コンター内に居住する間,本件航空機騒音に
より,本件精神的被害を,普天間飛行場を離着陸する米軍機の墜落への不安感
や恐怖感によって増大させられつつ,W80区域の方がW75区域よりは著し
いという意味でそれぞれその居住する区域のW値に応じて等しく受けていると
認めることができる。
(6)身体的被害
ア原告らの身体的被害の陳述
証拠(甲B1の1から194まで(枝番号6,90,103,105,10
,,。)),。6142171及び189を除くによれば以下の事実が認められる
原告らの多くは次の表のとおり定型陳述書に本件航空機騒音により健,,,「
康に影響がでていると思いますか」との質問項目に対して「思う」と記載して
いる。
また,原告らは,健康影響の内容について,定型陳述書に次の表のとおり耳
鳴り,難聴,頭痛などの健康影響を受けていると記載している。
この記載の集計結果をグラフで示すと次のとおりとなる。
思う思わない無回答
72名
74.2%
80名
89.9%
4名
81.7%
21名
21.6%
8名
9.0%
29名
15.6%
152名
2.7%
健康に影響が出ていると思いますか
W75区域
W80区域
全体
4.1%
1名
1.1%
5名
39名28名32名21名16名19名9名29名5名2名34名6名
40.2%28.9%33.0%21.6%16.5%19.6%9.3%29.9%5.2%2.1%35.1%6.2%
38名25名39名24名20名24名15名30名3名2名47名13名
42.7%28.1%43.8%27.0%22.5%27.0%16.9%33.7%3.4%2.2%52.8%14.6%
77名53名71名45名36名43名24名59名8名4名81名19名
41.4%28.5%38.2%24.2%19.4%23.1%12.9%31.7%4.3%2.2%43.5%10.2%
動悸めまい難聴頭痛肩こり高血圧
W75区域
W80区域
全体
耳鳴りその他不眠症胃腸障害
疲労感
倦怠感
食欲不振
イ聴覚に関する被害についての認定事実
括弧内の証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)聴器の仕組みと難聴
音を聞くことは,外界の音波を耳で受けて,受けた音の情報が大脳皮質の
聴覚領に送られて感覚されることによって成立する。
外界からの音波を効率よく内耳にある「毛細胞(受け入れた音の情報を」
聴覚中枢路に送る神経インパルスに変換する役割をするものであり,前記
(2)アなどのとおり「有毛細胞」ともいわれるものをいう。以下同じ),。
に伝達する働きをするのが,外耳と中耳である。外耳と中耳を伝音機構とい
健康への影響の種類
40.2%
28.9%
33.0%
21.6%
16.5%
19.6%
9.3%
29.9%
5.2%
2.1%
35.1%
6.2%
42.7%
28.1%
43.8%
27.0%
22.5%
27.0%
16.9%
33.7%
3.4%
2.2%
52.8%
14.6%
41.4%
28.5%
38.2%
24.2%
19.4%
23.1%
12.9%
31.7%
4.3%
2.2%
43.5%
10.2%
0.0%20.0%40.0%60.0%80.0%100.0%
耳鳴り
難聴
頭痛
肩こり
高血圧
動悸
めまい
不眠症
胃腸障害
食欲不振
疲労感・倦怠感
その他
W75区域W80区域全体
い,伝音機構の障害で起こる難聴は「伝音性難聴」又は「伝音難聴」とい,
われる。伝音性難聴の場合には,気導聴力(外耳道を通じて音を聞かせた場
合の聴力をいう。以下同じ)が低下するが,骨導聴力(骨導を通じて内耳。
に振動を伝えて音を聞かせた場合の聴力をいう。以下同じ)が低下するこ。
とはない。
一方,内耳の毛細胞で電気的エネルギーに変換された情報は,蝸牛(かぎ
)。,,ゅう神経を経て聴覚中枢路に送られるこの内耳の毛細胞から蝸牛神経
聴覚中枢路,大脳聴覚領に至る部分を感音機構といい,感音機構の障害で起
こる難聴は「感音性難聴」又は「感音難聴」といわれる。感音性難聴の場,
合には,気導聴力及び骨導聴力のいずれもが低下する。感音性難聴には,内
耳の毛細胞の障害によって起こる「内耳性難聴」と,蝸牛神経より中枢側の
障害によって起こる「後迷路性難聴」がある。
内耳性難聴には,ストレプトマイシンによる難聴,老人性難聴等の外,騒
。,(。音性難聴がある内耳性難聴の場合にはリクルートメント現象補充現象
音の強さを増していくと,音の大きさの感覚が通常人に比べて異常に増加す
る現象をいう。以下同じ)が生ずることが多いとされる。。
ストレプトマイシンによる難聴は,ストマイ難聴と略称され,結核などの
治療に用いられるストレプトマイシン等の抗生物質の投与後に生ずる難聴で
あり,初期のオージオグラム(オージオメータを用いて聴力検査を行った結
果を図の形で記載したものをいう。以下同じ)では,高音急墜型の聴力像。
が生ずる。また,老人性難聴は,聴覚系の組織の老化が原因となるもので,
内耳から大脳までの広範囲の部位の老化により生じ,オージオグラムでは,
高音漸傾型の聴力像が生ずる。
他方,騒音性難聴は,騒音暴露をよる難聴をいい,内耳の毛細胞の変成又
は損傷によるものとされる。騒音性難聴では,初期に,オージオグラムでc-5
dip(オージオグラムにおいて,音階のc(物理調で4096Hz)にほぼ相当する5
4000Hz周波数のところで深い谷(dipはくぼみを意味する)を形成するとこ。
ろから名付けられている聴力像をいう。以下同じ)の聴力像が生ずる。も。
っとも,c-dipの聴力像については,頭部外傷の既往歴のある者や一酸化炭5
素中毒者でも生ずるとの報告もあり,また,原因不明のものもあるとされて
いる。また,騒音性難聴における初期の障害周波数は,4000Hzのみだけでな
く,5000Hz又は6000Hzにdipがある場合があるとの指摘もある。さらに,騒
音性難聴では,騒音の暴露が左右両耳ともほぼ同時に受けるため,聴力低下
の程度も左右両耳で差がないのが通常である。
(,,,,,,,,,甲D146乙D192023の2D2544から46まで5158
60)
(イ)騒音性難聴の特徴及びTTSとPTSの関係について
山本は,騒音性難聴の特徴及びTTS(TemporaryThresholdshift。聴
覚の一時的閾値移動又は一時的聴力損失をいう。以下同じ)とPTS(Per。
manentThresholdshift。永久的閾値移動又は永久的聴力損失をいう。以下
同じ)の関係について,以下のように説明する。。
強大な騒音に長期間暴露されると,回復不能な難聴になると古くから知ら
れている。騒音職場で長年勤務した作業者の聴力をオージオメーターで測定
すると,3000~6000Hzの高周波音域の聴力,特に4000Hz付近の
聴力が最も障害されているとされる。c-dipは,騒音性難聴の重要な特徴の5
一つである。騒音性難聴の初期の段階では,8000Hz以上の高周波音域の
聴力損失は,正常であり,又は軽度の損失を示すにすぎない。もっとも,c-5
dipは,強力な騒音の暴露が持続すれば,その深さと溝を増し,両側の周波
数も影響を受けるようになると伴に,加齢に起因する高周波側の聴力損失の
影響も加わって,だんだんと著明でなくなる。また,騒音性難聴は,内耳の
毛細胞の部分の損傷によって起こるとされ,感覚神経性難聴の一つとして分
類される。感覚神経性難聴とは,感覚細胞の変成に起因する聴力損失のこと
である。感覚性聴力損失の場合には,著明なリクルートメント現象を示す。
傷害が進展し,聴力損失が50dB以上にもなると,内毛細胞も関連するに至
り,指示細胞,聴神経繊維も傷害を受け,リクルートメント現象は明らかで
なくなる。
TTSは,通常,閾値が上がることを意味するので,一時的聴力損失を指
しているといえる。一方,PTSは,永久性聴力損失又は難聴と同意義であ
る。一般には,TTSを繰り返していると,PTSとなる一方,TTSがな
いとPTSも生じないのが定説といわれている。また,アメリカ合衆国の科
学アカデミーの聴力・生物音響学・生物力学委員会(CHABA)が,ある
騒音に1日8時間,常習的(週5日以上,10~20年以上暴露した者の)
,,(,PTSの値がその騒音に8時間暴露してTTS騒音暴露終了した後2
2分経過した後のTTSをいう。以下同じ)とほぼ等しいとしている仮説。
,,。が確定的とはいえないまでも日本産業衛生協会等により認められている
(甲D22,24,33,46,48,53,78の1,3,5,E9の1,2,E1
2,乙D47)
(ウ)沖縄県調査の結果
沖縄県調査委員会は,前記(5)イ(ア)のとおり,平成7年10月から
,,平成8年9月までの間自覚的健康観に関するTHI調査を実施したところ
沖縄県調査委員会は,THIの原版にある130の質問に加え「耳のきこ,
え」等に関する合計5つの質問を加えている。このうち「日ごろ耳の聞こ,
えがわるいほうですか」との質問に対する回答は,次のとおりである。
(エ)沖縄県調査における嘉手納飛行場周辺住民に対する調査結果
a沖縄県調査委員会は,嘉手納飛行場周辺に居住する住民を対象として聴
力検診を実施し,航空機騒音の暴露による聴力への影響について調査を行
った。沖縄県調査委員会では,①感音性難聴であること,②そのうち内耳
性難聴であること,③c-dipがあること及び④航空機騒音による暴露歴が5
ある一方,航空機騒音以外の騒音の暴露歴,頭部外傷及び内耳毒性のある
薬物の使用歴がないことを確認する方法で調査を行うこととした。
b沖縄県調査委員会は,まず,一次検診を3回に分けて行った。初回は,
W値90以上100未満の北谷町砂辺区(A)に居住する年齢40~69
歳の男女207名を対象とした。2回目は,同様の年齢で対象を周辺地域
に広げて,W値90以上95未満の嘉手納町屋良区(B(対象人口47)
5名)と北谷町砂辺のW値85以上90未満の地域(C(対象人口47)
4名)で行った。3回目は,25~40歳の若年層に対してW値85以上
100未満の北谷町砂辺区(A+C(対象人口587名)とW値90以)
上95未満の嘉手納町屋良(B(対象人口292名)で実施した。)
,。,,一次検診の方法は問診と聴力検査の2つであるまず問診としては
問診票を用いて,耳の聞こえ,耳鳴り,既往歴,職業性の騒音暴露歴,頭
部外傷,耳毒性薬物(ストレプトマイシン等の抗生物質)の使用歴,居住
年数等についての聞き取りを行った。上記問診票には,既往歴として,耳
の病気中耳炎爆発外傷・頭部外傷メニエール病結核その他中(),,,,(
毒症,遺伝性・家族性難聴がある場合にチェックする欄が設けられてい)
るほか,騒音暴露歴についても,大きな音のする職場で働いていた事実,
,。,兵役パチンコ等の趣味を具体的に記載するように作成されている次に
聴力検査としては,オージオメーターを使用して,純音聴力検査を実施し
た。この純音聴力検査は,防音工事の施工された公民館の一室に聴力検査
ボックスを設置し,ボックス内の騒音レベルを30dB以下とし,暗騒音に
よるマスキングの影響を受けない静穏な環境下で実施した。
40~69歳を対象とした北谷町砂辺区(A)では,平成8年5月18
日から20日まで受診者が115名(受診率55.6%)で,嘉手納町屋
良区(B)では,平成9年7月26日及び27日に受診者が104名(受
診率21.9%)で,北谷町砂辺(C)は,同年8月30日及び31日に
受診者が59名(受診率は12.4%)で実施された。また,25~40
歳の若年者を対象とした北谷町砂辺(A+C)では,平成10年7月4日
及び5日に受診者が48名(受診率8.2%)で,嘉手納町屋良(B)で
は同年9月13日に受診者が17名(受診率5.8%)で実施された。
,,これらの一次検診を受診した343名中聴力損失が高音域に認められ
かつ,慢性中耳炎の既往歴や職業性の騒音暴露歴がない者が,砂辺で28
名,屋良で12名の合計40名あった。
c沖縄県調査委員会は,一次検診の結果,騒音性聴力喪失が疑われた前記
bの40名を二次検診の対象とした。
二次検診では,まず顕微鏡下の鼓膜視診にて鼓膜の異常所見の有無をチ
ェックした後,次の(a)から(d)までの検査を実施した。これらの検査は,
沖縄県立中部病院耳鼻咽喉科外来の防音室において,防音室内の騒音レベ
ルを30dB以下として,行った。
(a)純音聴力検査
オージオメーターを用いて気導聴力及び骨導聴力のレベルを測定し
た。テスト周波数は,0.125,0.25,0.5,1,2,3,4,6,8kHz
の9周波数とし,1dBステップの上昇法にて聴力閾値を測定した。
(b)SISI検査
リクルートメント現象の有無を確認するため,1kHzと4kHzにおいて
SISI(ShortIncrementSensitivityIndex)検査を,それぞれの周波
数における閾値上20dBで行った。
(c)ティンパノメトリ
鼓膜及び中耳伝音系の障害の有無を調べるために,インピーダンスオ
ージオメーターを使用して,ティンパノメトリ(外耳道圧を+200mm水柱
から減圧していく際の中耳の可動性の変化を調べる検査。描出された波
形をティンパノグラムといい,A型,B型及びC型がある。波形が山形
でピークが外耳道圧0mm水柱付近にあるものをA型といい,中耳が正常
の場合でA型を示すとされる)を行った。。
(d)オージオスキャンによる聴力検査
純音聴力検査では見過ごされることのあるdipの有無と,dipが存在す
る場合,その深さを確認することを目的とし,聴力測定装置・オージオ
スキャンを使用して,聴力測定を実施した。測定周波数の範囲を1~8
kHzに設定した。
なお,通常の純音聴力検査が,テスト周波数を固定して検査音のレベ
ルを変化させ,その周波数における閾値を求めるものであるのに対し,
オージオスキャンによる聴力検査は,まず検査音のレベルを固定して周
波数を変化させ,あるレベルにおける可聴周波数帯域を求め,次に,被
検者の応答のなかった帯域について,検査音のレベルを上げて(通常5
dB,再度,周波数を変化させ,そのレベルにおける可聴周波数帯域を)
求めるという方法を繰り返し,最終的には非常に正確で,小さなdipも
見逃すことなく一定の周波数帯域におけるオージオグラムが得られると
される。
d沖縄県調査委員会は,以下の4条件を満たすことを基本に,二次検診の
成績を総合的に評価した。
,,,①鼓膜視診による異常所見がなくティンパノグラムがA型でかつ
純音聴力検査で気導・骨導差が認められないこと。
②SISI検査によるリクルートメント現象が陽性であること。
③純音聴力検査及びオージオスキャン・オージオメトリの結果,高周
波域にdip又はdipから更に進行したと考えられる聴力損失が認められ
ること。
④聴力損失の原因となるような既往歴や職業性の騒音暴露歴がないこ
とが問診により確認されること。
そして,沖縄県調査委員会は,以上の条件にかんがみて検診成績を検討
した結果,感音性聴力損失の症例として北谷町砂辺区で10例,嘉手納町
屋良区で2例の合計12例を確認した。
沖縄県調査委員会は,これらの聴力損失の要因としては,航空機騒音暴
露が最も有力であると結論付けている。
沖縄県調査委員会が,12例の被験者の聴力損失の主因が航空機騒音で
あると疑う理由は,次の7点である。
①地域集積性
北谷町砂辺の40~69歳を対象とした検診において,聴力損失あ
りと確認された9名(なお,残りの1名は33歳の男性である)を。
防衛施設庁のWECPNLの区分ごとに分類すると,WECPNL85~90が1
名,WECPNL90~95が2名,WECPNL95~100が6名であり,統
計的な分析を行うと,WECPNLの区分と聴力損失の間には有意な量反応
関係が判断することができる。また,上記検診について地理的分布を
求めると,聴力損失を有すると判断された者は,飛行経路又は嘉手納
飛行場のフェンスに近い位置に偏る傾向がみられる。
②聴力に関するアンケート調査の結果
沖縄県調査委員会は,前記(5)イ(ア)のTHI調査において,
前記(ウ)のとおり「日ごろ耳の聞こえがわるいほうですか」とい,
う質問を追加しているところ「はい」と答えた者の比率とWECPNLと,
の関係を多重ロジスティック回帰分析により検討した結果,下図のと
おり,WECPNL95以上の地区(北谷町砂辺)でオッズ比が2程度の値
となっており,耳の聞こえが悪いと回答した者の比率が有意に高くな
っている。
他の暴露地区においては,対照群との間に有意な差が検出されてい
ないが,W値85以上の群からW値95以上の群にかけて,オッズ比
の上昇傾向が認められるため,W値90以上の群から耳の聞こえへの
影響が生じている可能性がある。
③騒音暴露の実態
ベトナム戦争時における日最大騒音レベルは,砂辺で124dB,屋
良で127dBの高レベルの騒音が記録されており,聴力損失を来さな
いためのEPAクライテリアであるLeq(24)70dBを大きく上回り,
日本産業衛生学会の聴力保護のための騒音許容基準(24時間暴露で
80dB)も上回っている。
④NIPTSの予測結果
沖縄県調査委員会は,過去の騒音暴露の記録により推定された4k
(。。)HzにおけるNIPTS騒音暴露に起因するPTSをいう以下同じ
が20dBという予測値を求めているところ,W値95以上の地区にお
いて,受診者66人中に騒音性の聴力損失を有する者が6人確認され
たことは,上記予測結果と符合している。
⑤聴力検査結果
騒音性聴力損失は,内耳性聴力損失であり,その初期においてはc-5
dip型という独特な聴力像を示す。感音性聴力損失であり,その中で
も内耳性聴力損失であることをSISI検査で確認しているところ,c-di5
p型の聴力損失が直ちに騒音性聴力損失を意味するものではないが,c
-dip型と騒音性聴力損失との関係は,他の疾患とは比較にならないほ
ど特異性が高い。
⑥聴力損失の原因となり得る他の要因の排除
聴力損失を来す可能性のある疾患の有無,騒音作業歴を排除するた
め,一次検診,二次検診のそれぞれにおいて問診を実施した。また,
騒音性聴力損失を疑われ地域集積性を認めた9例については,自宅を
訪問して既往歴を再確認した。基地のガードマンとして2,3年働い
ていた者1名を除くと,職業的騒音暴露歴のある者はいないことが確
認された。
⑦居住年数
永久性騒音性聴力損失が発現するには,多くの場合,8~10年以
上の暴露年数が必要であるとされる。沖縄県調査委員会が騒音性聴力
損失と認定した12名の居住年数は19~43年であり,十分長い騒
音暴露年数である。
e沖縄県調査委員会は,関連の整合性など疫学的因果関係に関する5つの
判断条件を検討し,上記調査結果はこれらの判断条件を全てを完全に満た
すものではないが,総合的に評価すれば,航空機騒音への暴露と嘉手納飛
行場周辺住民に認められた聴力障害の発生との間に強い関連があることを
示すものであると考え,また,因果関係の判断は,公衆衛生学の観点から
は政策的判断としての性格を持つものであり,その判断が疾病や障害の予
防に生かされることに意義があるとする。
(甲D1,E9の1,乙D19,25,44,45,51,56,57)
(オ)騒音の聴覚に与える影響についての学術研究等
a梶原三郎を会長とする騒音影響調査研究会は,昭和46年ころ,男子学
生に防音室内で航空機騒音を暴露させる実験によって,航空機騒音による
TTSの発生に関する研究をした。
暴露音は,大阪国際空港周辺で録音したDC-8機の離陸時の騒音で,
ピークを含む約70秒間の騒音を使用した。ピークレベルは,100,9
5,92,89dB(A)の4種で,これらを2分に1回の割合で発生する騒
,,,音につきピークレベル100dB(A)については96回まで同95dB(A)
92dB(A)及び89dB(A)については256回まで暴露を行った。また,ピ
ークレベル95dB(A)で4分に1回の割合で発生する騒音につき,128
。,回まで暴露を行った被検者は22~24歳の聴力正常な男子学生5名で
同一条件の実験を5名について行って得た値の平均値を採用した。
その結果,TTSは,オフタイムも含めた総暴露時間の対数に関してほ
ぼ一次式の関係で増加すること,92dB(A)を2分間に1回の割合で暴露
した場合と,95dB(A)を4分間に1回の割合で暴露した場合とでは,暴
露したエネルギーが等しいと考えられるのに,TTSは,前者の場合の方
が後者の場合よりも大きな値を示しており,回帰係数も有意な差がみられ
たとする。
(甲D73)
b山本らは,昭和50年ころ,大阪国際空港周辺で録音したDC-8機の
離陸時の騒音で,ピークを含む約70秒間の騒音を使用し,ピークレベル
を100,95,92,89,86,83,80及び75dB(A)の8種類
とし,2分間に1回暴露を行い(95dB(A)については,4分間に1回の
暴露も行った,ピークレベル100dB(A)では総暴露回数を96回オフ。)
タイムも含む総暴露時間を3時間12分(192分)と,それ以外のピー
クレベルでは総暴露回数を256回(95dB(A)の4分間に1回の暴露に
おいては,128回)オフタイムも含む総暴露時間を8時間32分(51
2分)とし,被験者を19~24歳の聴力正常な男子学生5名として4k
HzのTTSが生ずるかどうかについて実験を行った。
,,,その結果①TTSはオフタイムも含めた総暴露時間の対数に関して
ほぼ一次式の関係で増加すること②ピークレベルが比較的低い80dB(A),
の騒音であっても,長時間暴露を行えばTTSが生ずること,③TTSを
生ずるかどうかの限界のピークレベルは75~80dB(A)の範囲にあると
考えられること,④5dB,10dBのTTSを与える場合のNNIは,それぞ
れ48~60,56~63,また,ECPNLは,それぞれ82~93,88
~95となり,ばらついていること等の結論を得たとしている。
(甲D51,78の3,4)
c東邦大学耳鼻咽喉科学教室岡田諄(以下「岡田」という)らは,昭和。
52年ころ,ジェット旅客機騒音を含む環境騒音及び職場騒音を負荷騒音
とし,どの程度の負荷レベルと負荷時間でNITTS(騒音暴露に起因す
るTTSをいう)と呼ぶことのできる閾値変動の発生の有無を明らかに。
するための実験を行った。すなわち,20~40歳の5名を被験者とし,
この被験者に対し,羽田国際空港付近で録音したボーイング747型機の
上昇通過時のフライオーバー騒音を,99dB(A)(なお,そのLeqは86.
8dBである)を2分間隔で8時間240回負荷し,1時間ごとに騒音暴。
露の終了時にTTS等を測定した。2
その結果,岡田らは,被験者5名のうち1名について航空機騒音の負荷
により4000HzにおいてTTS5dBを認めたところ,この負荷実験は2
屋外で連続的に騒音に曝されている状況を想定したものであり,多少なり
とも,特に高音域で遮音性のある家屋内での生活を考えると,純音聴力に
関しては心理的影響ほど悪影響を考えなくてもよいのではないかとしつ
つこの99dB(A)の実験で認められたTTSが102dB(A)105dB(A),,2
の負荷実験により明瞭に認められ,また他例でも同様な傾向が認められる
のであれば,このレベル付近にTTSを出現させる危険の限界がある可2
能性も高いので,負荷実験を重ねる予定であるとしている。
(乙D31)
d財団法人航空公害防止協会は,岡田及び昭和大学教授岡本途也らに委託
して,昭和52年から3か年にわたって,航空機騒音によるTTSの発生
。,及びその回復過程を実験的に明らかにする目的で調査を行ったすなわち
東邦大学,東京大学,大阪大学,日本医科大学,昭和大学及び名古屋逓信
病院の各実験室において,負荷騒音以外の騒音が入らない状態で,羽田空
港付近で録音したボーイング747型機の上昇時の騒音等を再生し,正常
者である被験者(4000HzのTTSを測定した者は754名である)。
に対し,2分30秒間に1回の割合で8時間連続暴露(ただし,聴力検査
のため1時間ごとに3~5分程度暴露が中断される)させ,聴力検査を。
行った。
その結果は,ピークレベル93,96,99,102,105dB(A)の
各騒音の暴露で4000HzのTTSが4dB以上であった者の割合は,順2
に9.3%,24.0%,19.1%,25.6%,22.5%であり,
同TTSの平均値は,順に0.89dB,1.66dB,2.19dB,2.2
04dB,1.98dBであった。また,105dB(A)の騒音を8時間暴露し
た後でも,30分経てば,TTSはほとんど回復していた。
以上の結果から,岡本らは,騒音暴露によるTTSの上昇が平均2.2
dB以下と小さくてその存在を証明しにくいから,航空機騒音の連続8時間
暴露によるTTSの上昇を認めることは困難であり,また,99dB(A)以
上であれば何らかの作用を聴覚器に与えることは否定できないけれども,
105dB(A)の騒音を8時間暴露した場合でも30分経てばTTSはほと
んど回復しているから,航空機騒音に暴露されても短時間で聴力は回復し
得ると推定されると結論付けている。
(乙D23の1,2,D32)
(カ)騒音に関する聴力保護基準
アメリカ合衆国連邦環境保護庁(EPA)が昭和49年(1974年)3
月に公表した「公衆衛生と福祉を,適切な安全限界によって保護するため必
要な環境騒音レベルに関する資料」には,次のような記述がある。
すなわち,人間の聴力が騒音によって損傷される場合,最初に4000Hz
の周波数における聴力が影響を受ける。また,聴力レベルにおける5dB以下
の変化は,一般的に無視することができ,又は重大ではないと考えられる。
そこで,最も騒音による影響を受けやすい4000Hz付近において,5dB以
上のNIPTSから全住民を実質的に保護する騒音暴露レベルは,40年間
にわたり1日8時間年間250日の騒音暴露という条件設定の下において,
Leq(8)73dBである。そして,間欠騒音は同じLeqの持続騒音よりも加害度
が小さいことから5dBを加算する一方,年間250日を年間365日に補正
するため1.6dBを,1日の騒音暴露時間を24時に補正するため等エネル
,.ギー法則を適用して換算した結果5dBをそれぞれ差し引くとLeq(24)71
4dBとなる。これを安全限界に引き下げて,全住民が,聴覚が最も敏感な周
波数である4000Hzにおいて,5dBNIPTSを超えないように保護する
ための間欠騒音のレベルは,Leq(24)70dBである。
なお,山本は,Leq(24)に13を加算すると近似的にECPNLとなり,ECPNL
に2を加算すると近似的にWECPNLとなるので,このLeq(24)70dBをWECPNL
に換算するとおよそWECPNL85となると説明する。
(甲D77,78の4,5,E9の1,2,乙D18)
(キ)他の飛行場周辺における騒音の影響に関する住民調査等
a前記(5)ウ(ア)の住民健康調査研究会による北谷町住民に対する平
成3年の自覚的健康度調査では通常のTHI法の質問項目に加えて日,,「
ごろ耳の聞こえがわるいほうですか」という質問に対する回答状況も集計
している。
その結果は,同研究会は「はい」と回答した者について,W値95群,
で最高で,続いてW値75~90群で高く,対照群で最低であると分析し
た(ただし,対照群が10.6%であるのに対し,W値75群で10%,
.,,.,W値80群で109%W値85群で10%W値90群で123%
W値95以上群が21.9%である。。)
同研究会は,W値95以上群で最高であったことなどから,航空機騒音
によって聴力に影響が現れている可能性を示唆するものとしている。
(甲D4)
b児玉は,昭和39年から昭和45年までの期間,横田飛行場周辺におい
て航空機騒音の住民に及ぼす影響について調査を実施した。その中で,第
,,。2第3年度に行った児童に対する聴覚検査の結果は次のとおりである
横田飛行場の近辺で騒音の激しい地域にある小学校の児童56名と,比
較的騒音の低い地域にある小学校の児童41名の聴力損失の度合につい
て,耳疾患のため聴力障害のあるものを除いて比較すると,前者の児童の
方が後者の児童に比べ聴力損失度が大きかった。これなどから,児玉は,
この聴力障害をもって,直ちに航空機騒音の結果と断定するわけにはいか
ないが,その可能性を大きいと考えた。
(乙D59)
c財団法人航空公害防止協会は,航空機騒音の聴力に及ぼす影響を調査す
るため,岡田及び財団法人大阪国際空港メディカルセンターに委託して,
昭和46年度から9年間にわたり聴力調査を行った。すなわち,東京,大
阪両国際空港及び福岡空港周辺など環境騒音が激しいことが常識的に明ら
かに認められる兵庫県伊丹市地区(W値85以上)ほか5地区(有騒音地
区)と,騒音がほとんど認められない岩手県宮古市郊外花輪地区の農村地
帯ほか4地区(無騒音地区)について,同じ居住地に7年以上住んでいる
こと,昼間も同じ地域にいる人で他の地区に勤務に出ないこと,満17歳
から40歳までであること等の条件を満たす者を対象とし,伝音性難聴の
ある者及び騒音職歴や慢性中耳炎等による感音性難聴のある者を除き,2
50~8000Hzの純音域値検査を行った。
その結果,その成績を有騒音地区と無騒音地区とで比較すると,まず,
①聞こえのレベルと年齢との間の相関係数からは,有騒音地区と無騒音地
。,,区の間に差が認められなかったまた②4000Hzの低下度からみても
有騒音地区の合計では1432耳中32耳(2.1%,無騒音地区の合)
計では1303耳中36耳(2.7%)に低下がみられ,有騒音地区に低
下例が多いという傾向はみられなかった。さらに,③聞こえの平均値の低
下傾向も,有騒音地区にみられやすいということもなかった。
以上の結果を踏まえ,空港周辺などの騒音が純音聴力の年齢変化に影響
を及ぼしてその衰退を促進するとは考えられないと結論付けられている。
(乙D27)
,,d谷口を代表とする騒音被害医学調査班は昭和61年及び昭和62年に
前記(5)ウ(ウ)と同様の小松基地騒音差止等訴訟の原告及びその家族
の合計125名を対象にして聴力検査を行い,また,昭和62年に小松基
地周辺の騒音地域(W値80~85の区域)から117名,非騒音地域か
ら62名をそれぞれ選んで聴力検査を行った。
その結果は,同原告らのうち,いずれか1耳の難聴度が20dBを超える
者は56名(44.8%)であり,また,30dB以上のc-dipを示す者が5
27名(21.6%)であり,対象者を60歳以下の騒音職歴,耳疾患の
ない者55名に限定すると1耳の難聴度が20dBを超える者は17名3,(
0.9%,30dB以上のc-dipを示す者は7名(12.7%)であり,ま)5
た,上記騒音地域住民117名についても,1耳の難聴度が20dBを超え
る者が63名(53.8%,耳に30dB以上のc-dipを示す者の人数が4)5
6名(39.3%)であり,対象者を60歳以下の騒音職歴,耳疾患のな
い者に限定すると,それぞれ10名(31.2%,7名(21.9%))
となり,同原告ら及び騒音地域の住民が,非騒音地域の住民に比べ,統計
上有意に高率であった。
また,上記一連の聴力検査を受けた304名から,全周波数について測
定した262名を選び出し,そこから騒音職歴のある者,耳疾患のあった
者,左右の平均聴力損失値(MAA)の差が10dB以上の者などを除いた
上,年齢による聴力喪失の影響を考慮して50歳以下の者(騒音地域38
名,非騒音地域26名)につき検討したところ,各周波数についての平均
値及び平均聴力損失値について,いずれも騒音地域の集団の方が非騒音地
域の集団に比べて大きく,統計上有意な差を示した。谷口らは,これにつ
いて多変量解析の数量化Ⅰ類法を用いて解析したところ,平均聴力損失値
において騒音地域に係る係数が6.084であり,騒音地域は,非騒音地
域に比べ約6dBの聴力損失があると考えられるとする。
(甲D104,105)
e台湾高雄医学大学のツァンーチュウ・チェン(Tsan–JuChen)らは,平
成4年(1992年)ころ,航空機騒音が学童の聴覚系機能に及ぼす影響
を明らかにすることを目的として,同じ小学校で教育を受けた6年生(明
確な耳疾患の病歴を持つ児童を除く)について,空港の飛行路の下にあ。
る小学校の児童228名と,空港から遠い小学校の児童151名を対象と
して,聴力検査を実施した。
聴力検査の結果は,飛行路の下にある学校の児童の聴力が有意に低いこ
とを示した。また,それぞれの耳について0.5kHz,1kHz及び2kHzにお
ける平均聴力閾値を計算して純音平均(PTA)とし,4kHz,6kHz及び
8kHzにおける平均聴力閾値を高純音平均(HPTA)とした上で,純音
平均値,高純音平均値及び4kHzの閾値を比較したところ,飛行路の下に
ある学校の児童において有意に高いレベルを示すとする。
(甲D1,乙D48の1,2)
ウ高血圧,頭痛,肩こりその他の身体的影響についての認定事実
括弧内の証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)沖縄県調査の結果
a沖縄県調査委員会は,前記(5)イ(ア)のとおり,平成7年10月か
ら平成8年9月までの間,自覚的健康観に関するTHI調査を実施した。
なお沖縄県調査委員会はTHIの原版にある130の質問に加え耳,,,「
のきこえ」等に関する合計5つの質問を加えている。
b沖縄県調査委員会は,THI調査に,前記(5)ウ(ア)の住民健康調
査研究会による北谷町住民に対する平成3年の自覚的健康度調査において
行ったTHIの結果を加えた有効回答数合計7095通(うち普天間飛行
場周辺地域の住民は1745通)について,年齢,性別構成が等しくなる
ように調整を行った上,WECPNL等を騒音暴露指標とし,騒音(WECPNL)以
外に年齢(6分類,性別,職業(4分類,年齢と性別の交互作用をTH))
Iの尺度に影響を及ぼす可能性のある因子(交絡因子)として取り上げ,
しきい値(対照群における90パーセンタイル値を用いる)を上回る比。
,。率に対して多重ロジスティック回帰解析により各因子の影響を解析した
その結果は,次の表に示すとおりであった。
沖縄県調査委員会は,前記(5)イ(ア)aのとおり「身体的自覚症,
状」に属する尺度として「多愁訴「呼吸器「目と皮膚「口腔と肛,」,」,」,
門」及び「消化器」の5尺度を挙げているところ,このうち,沖縄県調査
委員会による普天間飛行場周辺における身体的自覚症状に関する分析結果
は,次のとおりである。
まず,①「多愁訴」の有意確率が0.7576で「多愁訴」に関する,
オッズ比とW値に量反応関係は認められない。次に,②「呼吸器」に関し
ては,WECPNL80~85の群においてオッズ比の上昇傾向がみられるけれ
ども,有意確率は5%をやや上回っている。また,③「目と皮膚」に関し
ては,尺度得点19(90パーセンタイル値)をしきい値とするとき,ト
レンド検定の有意確率が5%未満となり,暴露群のオッズ比は,WECPNL7
0~75,WECPNL75~80,WECPNL80~85のいずれの群においても
1.5程度である。④「消化器」に関しては,オッズ比とW値に有意な関
連は認められない。
cまた,沖縄県調査委員会は,12尺度の尺度得点を因子分析することに
より,尺度得点に関与する潜在因子を抽出し,その因子得点と航空機騒音
暴露との関連を解析したところ「身体的因子」に関しては,比較的低い,
騒音暴露レベルからオッズ比の上昇傾向があり,嘉手納飛行場周辺である
W値が95以上の群で,オッズ比が2以上となった。
d沖縄県調査委員会は,THI調査結果の解析から,①種々の身体的自覚
,(),症状を訴える者の比率は暴露レベルWECPNLに応じて高くなること
②12尺度に分類される自覚症状の中で「身体的自覚症状」に属する尺,
度に関しては「呼吸器」などでは,WECPNLが75未満の比較的低い騒音,
暴露レベルから影響がみられるが「多愁訴「消化器」などでは,WECPN,」,
Lが90以上の暴露レベルの高い群においてのみ影響が認められること,
③航空機騒音は,様々な自覚症状の訴え率を高めていることなどを結論付
けている。
eまた,沖縄県調査では,平成6年度及び平成7年度に,嘉手納飛行場及
び普天間飛行場周辺の市町村で行われた老人保健法(当時の題名。以下こ
のeにおいて同じに基づく基本健康診査データを利用し最高血圧収。),(
縮期血圧,最低血圧(拡張期血圧,赤血球数,白血球数及び尿酸濃度の))
5項目について,航空機騒音の影響を解析している。
老人保健法による基本健康診査は40歳以上の住民を対象に市町村が実
施する(市町村によっては,40歳未満の住民まで対象として実施すると
ころもある)ところ,沖縄県調査委員会は,各事業所の従業員について。
は,労働安全衛生法に基づいた定期健康診断が行われるため,同基本健康
診査を受診する者は,自営業,主婦などに限られる傾向があるため,得ら
れた調査結果が住民全体を代表しているとはいえないが,暴露群及び対照
群とも同一条件の呼びかけにより受診しているから,航空機騒音の影響を
解析する場合には問題がないと考えている。解析は,多重ロジスティック
回帰分析を用い,WECPNL(ただし,普天間飛行場及び嘉手納飛行場の同じ
WECPNLに居住する住民を合わせた区分である,年齢,性別,年齢と性別。)
の交互作用及びBMIを説明変数として,各年齢世代別(10歳ごとの区
分)にしきい値を設け(なお,赤血球数,白血球数及び尿酸濃度について
は,男女別にしきい値を設けている,各しきい値を超える比率に対する。)
騒音の影響を解析した。
その結果,最高血圧及び最低血圧については,WECPNLの上昇に伴って,
オッズ比の値が高くなっており,多少の凹凸はあるものの,顕著な量反応
関係が認められる一方,赤血球数,白血球数には,オッズ比とWECPNLとの
間に顕著な関連は認められず,また,尿酸濃度については,WECPNLが上昇
するに伴い,尿酸濃度が低下する傾向を認めるとする。
なお,松井らは,平成14年,上記同様のデータを用いて,WHOの高
血圧に関する旧診断基準(160/95mmHg(収縮期/拡張期)以上)に
基づいて高血圧者の比率について分析を行った結果,WECPNLと高血圧のオ
ッズ比の間には高度に有意な量反応関係があり,WECPNLが75~80の低
暴露群においても有意な上昇が認められると結論付けている。
(甲D1,113,乙D43,証人松井)
(イ)騒音の身体に及ぼす影響についての国際的見解について
aICAOは,昭和44年(1969年)11月25日,カナダ国モント
,,リオールの本部において空港周辺における航空機騒音特別会議を招集し
29か国及び関係9団体の代表が参加して,同年12月17日まで航空機
騒音の表現と測定法,航空機騒音に対する人体の受忍限度等について議論
がされた。
同会議に出席した運輸省航空局飛行場部管理課(当時)の石野康太郎に
よる報告の内容は,以下のとおりである。
飛行場周辺における航空機騒音と健康との関係については,現在までに
各国で研究調査された結果によれば,飛行場周辺で航空機騒音を最大に受
けることにより,一般的意味での肉体的,精神的に深刻な影響を受けると
いうことを示す明確な証拠は現在のところないという結論に達した。これ
は,過去の研究努力の範囲及びその期間に限度があったため,一般生活上
の緊張の影響や悪い健康状態に対する航空機騒音の微妙な影響を見いだせ
なかったためであるが,この欠点を補う意味での長期にわたる調査研究及
び病気又は他の原因によって既に肉体的,精神的に悪い状態にある人々が
航空機騒音によって受ける緊張度による影響等について,一層の研究努力
を続けなければならないことが合意された。また,現在のところ,聴力に
対しては,航空機騒音は障害を与えることにはならないとの結論になって
いるが,聴力障害の基準そのものが工場騒音や医学的聴力データに基づい
,,て判断されたものであるからたとえ航空機騒音のように断続する騒音は
一時的又は永久的聴力障害の危険性が非常に少ないという研究結果があっ
ても,今後聴力保護基準を改善する方向で研究を進める必要があるとの結
論を得た。そこで,ICAOは,飛行場周辺における航空機騒音が,健康
,,及び聴力に有害であるということはまだ証明されていないがその確認は
会議の知る限りでは,現在までに実施されたことがない長い期間の研究に
よってしかできないことが認められた。そのため,いくつかの締結国及び
WHOを含む国際機関は,飛行場周辺で長期騒音に曝されている音源に関
する影響についての医学的,心理学的研究を積極的に進め,かつ,協力す
ることを要請するとの勧告をした。
(乙D9)
bアメリカ合衆国連邦環境保護庁(EPA)が昭和48年(1973年)
7月27日に公表したEPAクライテリアの中には,自律神経システム等
に及ぼす騒音の作用について,次のような記述がある。
騒音は,多くの異なる生理的反応を引き起こす。しかしながら,この反
応を連続的に作用すると,回復不能の変化を起こしたり,永久的健康への
影響をもたらすとする確証は存在しない。騒音暴露は,単独又はその他の
ストレス要因とあいまって一般的なストレス反応を発生させる。騒音暴露
とストレス反応との関係もストレス反応の発生が想定される閾値の騒音レ
ベル又はその期間についても解明がされていない。環境の中にみられるよ
うな適度の強さの騒音暴露が種々の形で心臓血管システムに作用するも,
循環システムに及ぼすはっきりした永久的作用については立証されていな
い。騒音が循環障害,心臓病に寄与する要因と予想は科学的データの裏付
けがされていない。
(乙D11,証人平松)
cカール・D・クライターは,昭和51年ころ,騒音が聴覚以外に及ぼす
影響という論文の中で,それまでの各研究結果等を検討した結果,当面の
結論として,自律神経によって媒介される騒音に対する無条件ストレス反
応は,人に対し傷害を及ぼす危険はなさそうであることや,聴覚意志疎通
及び睡眠を妨げ,又はそれによってストレス反応の直接原因となっている
やかましさや怒りの感情を引き出すような生活環境における騒音の結果と
して,一部の人々には,自律神経系ストレス反応が不健康に寄与する一つ
の要因となり得るであろうことなどを指摘するとともに,この結論に十分
な確信を持つためには一層の研究が必要であるとする。
(乙D12)
dカナダ国航空局が平成6年(1994年)ころに明らかにした「航空機
騒音とその影響に関するレビュー」には,次のような記述がある。
騒音は心臓血管系を含む身体的機能に多くの一時的影響を持っている。
例えば,高レベルの騒音バーストによって驚かされるならば,末梢血管の
血管狭窄と血圧の関連する過渡的変化が生ずる。このような影響は,必ず
しも有害ではなく,身体の様々な日常状況への単なる反応にすぎない。し
かしながら,騒音が更に永久的な影響に導くストレス要因として,心臓血
管に作用することがあり得るという示唆は頻繁にされてきた。
ニップシルト(Knipschild)の極めて顕著な研究は,航空機騒音の心臓
血管系への重大な長期的影響を強く示唆する。しかし,彼の結果を支持す
る他の信頼することができる研究は非常に少ない。Thomson他による研究
は,ニップシルトの研究方法論のいくつかの詳細を批判し,実験手順のい
くつかの詳細を発表されなかったことを示唆した。これにより,これらの
結果の完全な正当性に関してある程度不確実性がもたらされるが,完全に
それらを否定することができるわけではない。それらは全体として未来の
研究で更に調査される必要がある問題となるパターンを形成する。他のグ
ループについて,また,他の空港において,これらの結果を確証するため
に,更に研究を試みる必要がある。
(乙D15の1,2)
(ウ)騒音の身体に対する影響についての学術研究等
a呼吸器,循環器系機能に及ぼす影響
(a)国立公衆衛生院生理衛生学部の田多井吉之介(以下「田多井」と
いう)らは,昭和39年12月,健康な24~29歳の男子大学生5。
名を被験者として,精神作業を行わせながら,平均レベル55,70,
85ホンのあらかじめ録音した航空機騒音,工場騒音及び交通騒音と,
対照としての30~40ホンのあらかじめ録音した市街地騒音とを,1
日2時間,10日間暴露させ,血球及び副腎機能に及ぼす影響を中心に
観察する実験をした。その結果,脈拍数及び血圧の変化には著明な差異
を見いだせなかった。
また,田多井らは,昭和40年12月,健康な男子大学生5名を被験
者として,対照,交通騒音,工事騒音について,上記と同様の三段階の
レベルの騒音(対照群は35~45ホン)を30分の休止を挟んで前後
30分ずつ暴露させる第2回目の実験を行った。その結果では,騒音暴
露によって呼吸数の増加,脈拍数の減少がみられ,騒音レベルの上昇と
ともにこの反応が強まる傾向を示した。
(甲D36,37)
(b)京都大学工学部衛生工学教室の陳秋蓉らは,平成3年ころ,18
~28歳の青年男女25名に,刺激音としての白色騒音について,音圧
レベルを60,70,80,90,100dBと順次上げ,又は下げて,
各レベルごとに,30秒間の休止を挟みながら1回30秒間,合計15
回ずつ暴露させ,最高血圧を測定する実験をした。
その結果,血圧上昇と白色騒音の音圧レベルの間には直線的関係が認
められ,両者の相関係数は高く,また,血圧は,刺激音の音圧レベルに
関わりなく,刺激音暴露開始後,上昇を始め,約10秒間でピークに達
した後徐々に降下すると結論付けている。
(甲D45の1,2)
(c)そのほか,立川中央病院長木村正長らによって昭和31年ころに
行われたウサギに航空機騒音を暴露させる実験の結果において,航空機
騒音によって呼吸運動は一時的ながら影響を受け呼吸数が増加し,呼吸
振幅が増大するとともに,心拍及び血圧に対しても航空機騒音の影響は
存在し,一般に,心拍数が増加し心拍間隔が短縮し,かつ,血圧が一過
性に上昇とするとの報告がある一方,同人らによって昭和32年ころ行
われた同様の実験の結果において,呼吸運動の変化率は,刺激回数が多
くなるに従い小さくなり,同一実験を連日行うと順応がみられるとの報
告がある。
また,騒音の激しい職場で長年働いた人についても,話が全く聞こえ
ない位の騒音を長期に暴露したサイロの労働者には,勤続が長くなると
高血圧となる者が増加しているとする昭和48年の外国の報告がある一
,,(),,方騒音の急性暴露による生理的反応として末梢血管収縮脈拍
血圧を挙げられるとしつつ,その長期的影響の有無を確かめるために昭
和50年に外国で行われた高度の騒音暴露歴のあるパイロットの調査を
,,,,した結果により対照群との間に脈拍数は変動の差があったものの
レベルの差がなく,血圧についても差がみられないとの報告や,90~
95dBで600Hz以下の低音を長期に暴露した大型タンク車の運転手
は,高血圧にならないとする昭和43年の外国の報告もある。
(甲D26,75,96)
b血液に及ぼす影響
(a)田多井らによる前記a(a)の実験のうち,昭和39年に最初に
されたものでは,対照実験に比較して,騒音によって,総白血球数の増
加が抑えられ,好酸球数は,減少が強められ,その後増加が抑えられ,
また,好塩基球数の増加が強まった。騒音による影響は,55ホンで現
し,85ホンで最も強かった。また,個人差が大きかった。
昭和40年にされた第2回目の実験では,騒音暴露直前と比べると,
暴露直後の白血球数,好塩基球数は増加し,好酸球数は減少して,暴露
後3時間には回復に向かった。しかし,対照群と有意差のあったのは,
白血球数の増加のみであり,しかも,騒音の種類やレベルによる差は見
いだし得なかった。
(甲D36,37)
(b)長田らは,昭和47ころ,6人男子学生にピークレベル70~9
0dB(A)のジェット機騒音を2分又は4分に1回の割合で90分間暴露
させる実験をした。
その結果,好酸球数と好塩基球数は,騒音により減少し,実験前の数
を基とした後の減少度は騒音レベルが高いときほど大きく,4分に1回
の時よりも2分に1回の時の方が大きかった。
また,長田らは,昭和48年ころ,19~24歳の健康な男子大学生
6名に対し,中央値40dB(A),50dB(A),60dB(A)の自動車交通騒
音を2時間又は6時間,携帯用テープレコーダのイヤホンから暴露させ
て採尿するなどの実験をした。
その結果,白血球は60dB(A)で有意に増加し,好酸球数は60dB(A)
6時間暴露で減少後回復が有意に遅れた。
(甲D35,41,75)
c内分泌系機能に及ぼす影響
(a)三重県立大学医学部衛生学教室坂本弘は,昭和31年ころ,騒音
の著しい紡績作業に従事する女子作業員が同作業により尿中17ケトス
テロイド(副腎皮質ホルモンのうち副腎性性腺ホルモンであって,尿中
で測定されるものをいう。以下同じ)の減少が生ずることを確認した。
,,後健康な5名の男子を被験者とする騒音等の暴露による実験によって
騒音が尿中17ケトステロイドを減少させているなどと報告する。坂本
は,これらの実験の結果等に,騒音暴露を暴露した場合に副腎皮質刺激
ホルモンの分泌が減少することを併せ考え,騒音暴露による障害は,間
脳-下垂体系に引き起こされると考えた。
また,同教室若原正男らによる昭和34年ころの19~22歳や21
~25歳の健康男子に対する騒音の暴露による実験によっても,騒音の
暴露による尿中17ケトステロイドの減少が認められ,その主な原因は
性腺系のステロイド等の減少にあるなどの報告がされている。
(甲D43の1から3まで,D44の1,2,乙D36)
(b)田多井らによる前記a(a)の実験のうち,昭和39年に最初に
されたものでは,尿中17-OHコルチコステロイドについては,その
増加により副腎皮質機能の亢進が推定されるところ,その増加は,55
ホンでは対照と差がなかったものの,70ホンで最も大となり,85ホ
ンのときはかえって減少した。そこで,田多井らは,副腎皮質からの分
泌は騒音があるレベルまでは増加するが,それ以上の強い騒音では低下
すると考えられるとする。
一方,昭和40年にされた第2回目の実験では,尿中17-OHコル
チコステロイドの量に,対照と騒音,騒音の種類,レベルの間に有意差
がなかった。
(甲D36,37)
(c)長田らは,昭和48年ころ,19~24歳の健康な男子大学生6
名のに対し,中央値40,50,60dB(A)の自動車交通騒音を2時間
又は6時間,携帯用テープレコーダのイヤホンから暴露させて採尿する
などの実験をした。
その結果,尿中17-OHコルチコステロイドの量は,40dB(A)2
時間及び6時間暴露,50dB(A)の2時間暴露で増加し,特に40dB(A)
6時間暴露での増加が大きく,60dB(A)6時間暴露になると,かえっ
て増加が抑制された。そこで,長田らは,副腎皮質が騒音によって刺激
,。されるが負荷レベルを超えるとかえって抑制されると結論付けている
(甲D41,79の1)
dその他の身体的影響
消化器系機能に及ぼす影響として,人又は動物に航空機騒音を暴露させ
る実験により,騒音暴露による胃液分泌の変化,胃運動の抑制等の影響が
現れたことが報告されている。
(甲D21,75)
(エ)他の飛行場での住民調査等
a前記(5)ウ(ア)の住民健康調査研究会による北谷町住民に対する平
成3年の自覚的健康度調査において,同研究会が対照群,W値75~90
群及びW値95群の3群間で尺度得点・判別値の平均値を分析したとこ
,,()()ろ3群間で有意差の認められた尺度得点・判別値は前記5ウア
のとおり,精神的訴えを示すものに多かった。また,同研究会は,通常の
THI法の質問項目に加えて「ふだん自分で健康だと思いますか」とい,
う質問に対する回答状況も集計し,この質問に「いいえ」と回答する人員
の割合につき,W値95群で最高で,続いてW値75~90群で高く,対
照群で最低であると分析した(対照群が9.9%であるのに対し,W値7
5群で15.3%,W値80群で12%,W85群で11.2%,W90
群で18.3%,W値95以上群が20.1%である。。)
同研究会は,以上の結果から,航空機騒音暴露によって健康にまで影響
が生じている可能性を示唆されるとし,北谷町住民が,嘉手納飛行場の航
空機騒音暴露によって精神的自覚症状を中心として心身の健康に影響を受
けており,その影響は航空機騒音の暴露量が大きいほど強く現れるなどを
結論付けている。
(甲D4,5)
b財団法人航空公害防止協会が前記(3)ウ(ア)bのとおり財団法人大
阪国際空港メディカルセンターに委託して昭和55年から昭和57年まで
大阪,東京両国際空港及び福岡空港周辺において実施した調査のうち,昭
和56年度及び昭和57年度の質問紙(THI等)による健康調査の結果
,,,「」,「」は身体的自覚症状に関しては大阪空港周辺では多愁訴消化器
の2尺度の尺度得点について,WECPNLの異なる3群間で尺度得点に有意差
,,「」,があり特に20~30歳代の年齢層において下痢をすることがある
「胃腸の具合が悪いことがある」などの消化器系に関する自覚症状につい
ての訴えがW値の上昇に対応して増加していた。これに対し,東京国際空
港及び福岡空港の各周辺では,WECPNLの異なる各群で有意差がある尺度得
点はなかったもっともいずれの地域でもWECPNLが高い地域ほど多。,,,「
」,「」。,,愁訴消化器に関する訴えが多かったなお同健康調査の対象者は
同協会が実施している巡回健康診断の受診者であり,同健康調査と対比す
るため,巡回健康診断による胸部X線,血圧,心電図,血球,血液化学,
尿の各判定の結果をみると,東京国際空港周辺における心電図判定と尿判
定の結果を除いては,W値による有意差が認められず,巡回健診で扱われ
る検査項目となっている循環器系と肝機能に関する限り,航空機騒音がス
トレス要因と考えられる影響はなかったと結論付けられている。
また,財団法人航空公害防止協会が実施した同調査のうち,個人別騒音
暴露量調査は,空港周辺で生活する一般住民を取り巻く騒音環境を明らか
にするため,大阪,東京国際空港及び福岡空港周辺に住む成人主婦(大部
分が職業を持たない主婦)合計123名を対象として行われ,昭和55年
度及び昭和56年度においては7日間,小型携帯用の等価騒音レベル計を
身近に置き,又は外出の際には携帯する方法で,昭和57年度においては
3日間,小型携帯用の等価騒音レベル計を身近に置く(ただし,人が屋内
にいない場合の騒音レベルを明らかにするため,外出の際には等価騒音レ
ベル計を室内に置いたままにした)方法で,各人が実際に暴露されてい。
る音の10分ごとのエネルギー平均値が測定された。その結果,まず,各
対象者の屋外における騒音レベルのLeqは,航空機騒音以外に大きな騒音
源がない場合,地域のW値に対応した値を示していた。しかし,対象者が
暴露された全ての音のエネルギーを24時間にわたって平均した値である
Leq(24)は,3空港間においても,また,各空港ごとのWECPNLの異なるグ
ループ間においても,有意差はなく,大部分が60~65dB(A)の範囲内
にあった。この結果を踏まえ,対象者の屋内での暴露量が,家屋により減
退された屋外騒音と,屋内での人の話し声や家庭電気機器の作業音など対
象者自らが関与している音のエネルギー和を時間平均した値であり,その
24時間暴露量の大部分が60~65dB(A)の範囲内にあり,地域のW値
の差が反映されていなかったことから,屋内における曝露量の大部分が対
象者自ら関与している音によることを示しているとし,結局,地域住民が
うるさく感じ,又は不快に感ずる屋外騒音は,屋内でのエネルギー量とし
て表すときは極めて小さいものであることが明らかであると指摘する。
さらに,財団法人航空公害防止協会が実施した同調査のうち,生物学的
評価調査は,上記巡回健康診断において高血圧と診断された女性399名
(3空港周辺の騒音地域に居住)と一般女性24名(非騒音地域に居住)
とを対象として,3年間にわたり,月経等に関するアンケート調査,血中
ホルモン,尿中ホルモンの測定,寒冷による交換神経系の興奮度をみるた
めの寒冷昇圧試験及び眼底検査として行われた。その結果,①空港周辺住
民における月経不順,妊娠,出産の異常が多いとは認められず,②自律神
経系の異常も,寒冷昇圧試験をみる限り,全体的にみて陽性率が高いとは
考えられず,③上記寒冷昇圧試験の結果と,高血圧,眼底,尿中カテコー
ルアミン値との間に何らの関係を見いだすことはできず,交感神経系の興
奮と高血圧症との関係も見いだすことはできず,また,④航空機騒音地域
の住民と対照地域の住民との間に,血中コルチゾール値や尿中17-OH
コルチコステロイド値に差がないことから,騒音暴露による下垂体-副腎
皮質系統の機能亢進状態があるとも考えられなかったとする。
これらの質問紙による健康調査,個人別騒音曝露量調査及び生物学的評
価調査の各結果を総合して,騒音によるうるささや生活妨害などの訴えと
いったいわゆる心理的影響は,航空機騒音の高暴露レベル地域において明
らかに強く認められ,それに対応した形で健康に関する自覚症状の訴えも
増加していたが,臨床的検査結果に基づく客観的健康評価によると航空機
騒音の影響は認められなかったと結論付けられている。
(乙D36)
c前記(5)ウ(ウ)の谷口らの小松基地騒音差止等訴訟の原告及びその
家族を対象する昭和61年及び昭和62年の一般健診の結果によると,頭
痛など騒音との関連が深いと思われる症状を訴える者が多く,血圧の検査
所見をみると,高血圧が12名(9.6%,境界域高血圧が23名(1)
8.4%)であって,以上を合計した高血圧罹患率は,非騒音地域の調査
における高血圧罹患率と比較して高く,また,血圧平均値についても,全
年齢及び60歳以下のいずれにおいても,最高血圧,最低血圧ともに,非
騒音地域に比べて高かった。これら原告及びその家族の集団に対するTH
I調査による健康度調査の結果で身体に関する影響に関し男女とも口,,「
腔と肛門」の項目の尺度得点が高く,男子では「消化器,女子では「呼」
吸器」の各項目の尺度得点もやや高かった。
次に,谷口らの前記イ(キ)dと同様の騒音地域(W値80~85の区
域)の住民117名及び非騒音地域の住民62名を対象とした昭和62年
の健康診断の結果によると,高血圧及び境界域高血圧を合計した高血圧罹
患率や血圧平均値は,最高血圧,最低血圧ともに,全年齢及び60歳以下
のいずれにおいても,非騒音地域に比べて高く,原告家族集団と同様の傾
向を示した。
(甲D104,105)
エ身体的被害についての検討
(ア)原告らの供述
,,,,原告らの中には本件航空機騒音により原告X61には耳鳴り不整脈
動悸等の症状があるパニック障害が,原告X65には片側の耳が聞こえにく
い難聴が甲B2の2原告X61原告X120には左耳の耳鳴りが甲(,),(
B2の8,原告X120,原告X112には肩こりが(原告X112,原))
告X142には動悸,不整脈,左耳の難聴又は耳鳴りが(甲B2の5,原告
X142,原告X56には頭痛,耳鳴りが(甲B2の7,原告X56,原))
告X3には肩こり,胃腸障害,耳鳴りが,原告X4には難聴が(甲B4,原
告X3,原告X48には難聴,耳鳴り,高血圧が(甲B2の1,原告X4)
8,それぞれ生じているなどと供述し,又は陳述書に記載する者がいる。)
(イ)聴覚障害について
難聴,耳鳴り,その他の聴覚に関する障害(以下「聴覚障害」という)。
については,普天間飛行場周辺地域ではないものの,沖縄県調査は,前記イ
(エ)の認定事実のとおり,12例の被験者の聴力損失の主因が航空機騒音
であると疑われるとの結論を導いている上,前記イ(オ)及び(キ)の認定
事実のとおりの各種調査結果など,一定の騒音の継続的暴露によって,聴覚
障害の発生する可能性を示唆するものもみられる。また,前記(2)アのと
おり,騒音は,まず耳から入り,内耳感音器に影響を与え,強ければ,一時
的又は永久的な難聴(聴力低下)を起こすと説明されているから,聴覚障害
が騒音に特有な特異的作用であり,直接作用であるといえるため,聴覚障害
の発生の危険性に対する不安感等は,一般的に生じやすいものであると想定
することもできる。そして,原告らの中には,前記アの認定事実のとおり,
現に聴覚障害を訴える者があり,その割合は,定型陳述書を提出した者のう
,.,.。ち難聴については285%耳鳴りについては414%に上っている
そのため,原告らの一部には,普天間飛行場周辺における米軍機の飛行の状
況,原告らの居住位置によっては,本件航空機騒音により聴覚障害の発生す
る危険性がある状況で生活しなければならないことから生ずる聴覚障害の発
生に対する不安感等の精神的苦痛が生じているとみる余地はある。
しかし,聴覚障害を訴える原告らの中には,原告X3は耳鳴りの症状がな
,,(),くなりまた原告X4の難聴は病院では異常がないと言われ原告X3
原告X56も耳鳴りにつき病院に行っていない(原告X56)と供述する者
があるなど症状が消失した者,医師から病気との診断を受けていない者,医
師の診断を受けていない者もあり,診断書等の客観的資料がないため,その
症状の存在及び程度は必ずしも明らかではなく,一定の聴力閾値の上昇の程
度を明らかにする資料もないから,原告ら中に聴覚障害がある者がいること
を客観的に裏付ける証拠があるとはいえない。
また,難聴の原因としては,中耳炎や他の病気でも起こり,40歳以上に
なると耳が遠くなるとの指摘があるなど,騒音のほかにも加齢による影響そ
の他様々な原因がある(甲30,乙D20から22まで)上,原告X120
も,医師から耳鳴りの理由は分からない旨の話を受け(原告X120,原)
告X48も医師に本件航空機騒音が原因でないかというと医師からそればか
()。,りではないのではないかと話を受けた原告X48と供述しているまた
前記イ(ア)及び(イ)の認定事実のとおり,騒音性難聴は,騒音の暴露歴
,,に加えc-dipと呼ばれる4kHz付近の聴力喪失が初期の重要な特徴とされて5
それが左右両耳に現れるところ,原告らの中にこの左右対称のc-dipが確認5
される者がいることを裏付ける証拠もない。そのため,原告らの中に聴覚障
害がある者がいるとしても,その原因が本件航空機騒音によることを裏付け
る証拠はない。
さらに,航空機騒音の場合,前記イ(オ)dの認定事実のとおり,短時間
で聴力が回復するとの指摘もあるところ,前記2(3)ウ(イ)及び(ウ)
本件航空機騒音の実態のとおり,その発生回数や騒音の大きさは必ずしも一
定していないことに照らすと,本件航空機騒音による一時的聴力損失がある
としても,その聴力回復の有無,程度等も容易に把握することができない。
しかも,山本は,自らの実験の結果やその他の文献から,WECPNL85が聴力
(,障害が発生する危険性がある数値であると指摘していること甲D78の4
E9の1,2,E11,沖縄県調査において,北谷町砂辺で聴力損失あり)
と確認された9名は,前記イ(エ)dのとおり,いずれもWECPNL85~10
0に居住しており,かつ,そのうち,WECPNL85~90に居住しているもの
,,,は1名にすぎないことさらに沖縄県調査のTHI調査の結果においても
前記イ(ウ)及び(エ)dの認定事実のとおり,普天間飛行場周辺住民に関
しては,耳の聞こえに関する質問につき対照群との間に有意な差が検出され
ていないことなどの事情に照らすと,原告らが居住し,又は居住していたWE
CPNL75~85の本件コンターの区域において,聴覚障害を生ずる危険性が
あるということはできない。
これに対し,原告らは,本件コンターのW値が全体的に過小評価されてい
るので,コンターのW値が嘉手納飛行場周辺よりも低いことから,普天間飛
行場周辺において聴力障害を生ずる危険性がないとはいえないなどと主張す
るけれども,原告が主張する過小評価の程度はそもそも2.5程度にすぎな
いから,原告らに共通する被害に関する主張としては,それ自体で採用する
ことができない(なお,前記2(5)ア(イ)のとおり,本件コンターのW
値が原告ら主張のような全体的に過小評価されているとは認められない。。)
また,耳鳴りについては,その本態が医学的に解明されておらず(乙D2
6,耳鳴りの被害の程度や性質を個別に判断するだけの資料はなく,これ)
を客観的に把握することは困難である。
以上のとおり,①原告らの中に聴覚障害がある者がいることを客観的に裏
付ける証拠があるとはいえないこと,②原告らの中に聴覚障害がある者がい
るとしても,その原因が本件航空機騒音によることを裏付ける証拠もなく,
航空機騒音による聴力障害が発生する危険があるとの指摘もWECPNL85以上
の区域にとどまっており,原告らが居住し,又は居住していたWECPNL75~
85の本件コンターの区域において,聴覚障害を生ずる危険性があるとはい
えないこと,③耳鳴りを客観的に把握することは困難であることなどを考慮
すると,原告らの中に難聴,耳鳴りを訴えている者が少なくないことを考慮
しても,原告ら主張のように本件航空機騒音により聴覚障害の発生する危険
性があるということまではできない。
したがって,聴覚障害の発生に対する不安感等の精神的苦痛については,
本件航空機騒音により聴覚障害の発生する危険性があるといえないから,本
件航空機騒音による原告らの共通する被害として認めることはできないとい
うべきである。
(ウ)聴覚障害以外の身体的被害について
聴覚障害以外の高血圧又は頭痛,肩こり等の身体的被害については,原告
らの中には,前記アの認定事実のとおり,高血圧,頭痛,肩こりなどの症状
を訴える者が少なくなく,その割合は,定型陳述書を提出した者のうち,高
血圧については19.4%,頭痛については38.2%,肩こりについては
24.2%に上っている。
そして,航空機騒音によってこれらの身体的症状が発現する生理的メカニ
ズムについては,前記(2)アのとおり,騒音が起こした情緒妨害等が亢ず
ると,ストレス反応として,視床下部や自律神経系を介して交感神経系緊張
反応をもたらし,視床下部,下垂体から内分泌系へ影響を起こして,また,
視床下部から自律神経系を介して循環器等に影響を及ぼすなどと説明がされ
ている。
このように,これらの身体的症状は,ストレス反応として生ずるものであ
るから,航空機騒音による要因だけでなく,個人が抱える身体的又は精神的
な要因や,その個人を取り巻く社会的,経済的な要因によっても生ずること
があるといえる。しかも,前記ウ(イ)の認定事実のとおり,昭和40年か
ら昭和51年ころまでは,航空機騒音による健康状態に対する悪影響は見い
だせていないとするのが国際的に一般的な見解であった上,前記ウ(ウ)の
各種調査研究においては,騒音と高血圧の関係を肯定する研究がある一方,
これを否定する研究もあるなど結果はまちまちであるから,騒音暴露量と身
体的症状との間の関係が解明されているともいい難い。原告らの中には身体
的症状について医師の診察を受けた者がいるものの,医師からは,原告X6
1がパニック障害の原因は決められない旨の話を受け(原告X61)原告
X112も肩こりの原因について何も言われていない(原告X112,原)
()告X142もストレス性不整脈の原因について聞いていない原告X142
と述べているなど原告らの身体的症状の原因を本件航空機騒音にあることを
裏付ける直接的な証拠はない。また,前記ウ(ア)の認定事実のとおり,沖
縄県調査によっても,身体的影響と本件コンターのW値との関係について,
「呼吸器」などでは,WECPNL75未満の比較的低い騒音暴露レベルから影響
をみられるが「多愁訴「消化器」などではWECPNLが90以上の暴露レベ,」,
ルの高い群においてのみ影響がみられると結論付ける上,その「呼吸器」に
ついても,普天間飛行場周辺地域においては,WECPNL80~85の群におい
てオッズ比の上昇傾向がみられるけれども,有意確率は5%をやや上回って
いると指摘されているにとどまるから,必ずしも明瞭な量反応関係があると
いうものではない。そうすると,原告らの中に本件航空機騒音のみが原因と
なって高血圧や頭痛,肩こり等の身体的被害が生じている者がいると認める
ことまではできない。
しかしながら,ストレスによる交感神経活性の増加は,高血圧症の発症に
おいて重要であると考えられていると指摘があり(乙D64,また,松井)
が,ストレスによって自律神経系の交感神経の機能が亢進し血管が収斂する
ことにより血圧が上昇するほか,内分泌系においても,副腎髄質が刺激され
ることによってアドレナリンの分泌が進み,同時に血管を収縮させ,血圧が
(,),,上昇するなどと説明する甲D113乙D41などストレスが高血圧
頭痛,肩こり等の原因又はこれを悪化させる原因となることは広く知られて
いるから,航空機騒音によるストレスが原因となり,又はその原因の一つと
なって,高血圧や頭痛,肩こり等の身体的被害を生ずる危険性があることは
うかがわれる。しかも,前記ウ(イ)の認定事実のとおり,昭和40年から
昭和51年ころまでの国際的に一般的な見解は,その後に明らかにされた見
解を含めて,過去の研究努力の範囲及びその期間に限度があったため,当時
,,では騒音の健康に対する影響を見いだせなかったとしているものにすぎず
これを否定したものではなく,騒音が様々な生理的反応を引き起こすことや
ストレス反応が健康に影響を与えることを示唆している上,前記ウ(ウ)の
,,認定事実のとおり騒音と血圧の変化との関係を否定する実験もあるものの
騒音と,血圧,呼吸数及び脈拍数,白血球数,好酸球数及び好塩基球数並び
に副腎皮質からの分泌との関係を示唆する実験も少なくない。また,前記ウ
(ア)の認定事実のとおり,沖縄県調査の結果では,血圧が,WECPNLとの顕
著な量反応関係があるとされ(なお,被告は,沖縄県調査の住民健康診断デ
ータについて,受診率等が地域によって異なり得るので,地域の住民全体の
健康状態やその傾向を把握することができず,また,40歳以上の住民を対
象としているのに,40歳未満の者のデータも取り混ぜて分析しており,デ
ータの抽出,分析の信頼性に疑問があると主張するけれども,受診率等が地
,,域によって異なることを裏付ける証拠がない上沖縄県調査委員会において
前記ウ(ア)eの認定事実のとおり,得られた調査結果が住民全体を代表し
ているとはいえないが,暴露群及び対照群とも同一条件の呼びかけにより受
診しているから,航空機騒音の影響を解析する場合には問題がないと考えて
いることが直ちに誤りともいえず,また,高齢者の医療の確保に関する法律
(昭和57年法律第80号。沖縄県調査当時の題名は,老人保健法)20条
,,も40歳未満の者を対象とすることを否定する趣旨とは考えられずさらに
40歳未満の者のデータを取り混ぜて分析したとしても,分析においては,
前記ウ(ア)eの認定事実のとおり,各年齢世代別(10歳ごとの区分)に
しきい値を設け,各しきい値を超える比率に対する騒音の影響を解析してい
るので,沖縄県調査報告書における血圧とWECPNLとの顕著な量反応関係があ
るとした部分について信用性がないともいうことができないので,被告のこ
の主張を採用することはできない,また,身体的自覚症状を訴える者の比。)
率は,WECPNLに応じて高くなるとされている。これらの事情に上記のよう
な原告ら及び前記ウ(エ)の認定事実のとおりのその他の飛行場周辺住民の
自覚症状の訴え,前記2のとおりの本件航空機騒音の実態におけるその程度
や頻度等並びに前記(3)及び(4)のとおりの生活妨害や睡眠妨害に伴う
精神的苦痛の程度及び前記(5)のとおりの本件精神的被害の程度を併せ考
慮すれば,原告らには,本件航空機騒音が原因となり,又はその原因の一つ
となって,高血圧や頭痛,肩こり等のストレスによる身体的被害が生ずる危
険性が相当程度あるということができる。
そして,このような本件航空機騒音が身体に対し及ぼす影響は,ストレス
反応としての間接的なものであるため,生活妨害,睡眠妨害に伴う精神的苦
痛及び本件精神的被害による二次的な影響といえる以上,高血圧や頭痛,肩
こり等のストレスによる身体的被害の発生に対する不安感等といったその危
険性を帯有する心理的現象の被害も,原告らの各居住地における本件コンタ
ーのW値の区分が高いと大きくなるということができる。
また,人の生理反応は,複雑であり,また個人差もあるから,原告らのす
べてにとって,本件航空機騒音がストレス因子となるとは限らず,上記の原
告らの訴え率をみても,身体的症状が生じないこともあると考えられるけれ
ども,ストレス因子とはならず,又は具体的な症状として現れない場合であ
っても,これらの者が高血圧や頭痛,肩こり等のストレスによる身体的被害
の発生する危険性がある状況で生活しなければならないことから生ずるこの
身体的被害の発生に対する不安感等の精神的苦痛を受けているという点で
は,原告ら全員に共通しており,このような身体的被害の危険性を帯有する
心理的現象も原告ら全員が最小限度等しく受けているということができる。
,,もっとも本件航空機騒音がストレス反応として身体に対し及ぼす影響は
上記のように,生活妨害,睡眠妨害に伴う精神的苦痛及び本件精神的被害に
よる二次的な影響とみるべきものであり,また,このようなストレス反応の
原因の可能性がすべて本件航空機騒音にあるとはいえないから,高血圧や頭
痛,肩こり等のストレスによる身体的被害の発生に対する不安感等の精神的
苦痛を原告らに共通する被害として捉えるものの,その被害の程度は,生活
妨害,睡眠妨害に伴う精神的苦痛や本件精神的被害に若干加味する程度のも
のにとどまるとみるべきである。
したがって,原告らは,本件航空機騒音により,高血圧や頭痛,肩こり等
のストレスによる身体的被害の発生する危険性がある状況で生活しなければ
ならないことから生ずるこの身体的被害の発生に対する不安感等の精神的苦
痛を,W80区域の方がW75区域よりは著しいという意味でそれぞれその
居住する区域のW値に応じて等しく受けているということはできる。
オ身体的被害についてのまとめ
以上によれば,原告らは,本件コンター内に居住する間,本件航空機騒音に
より,聴覚障害の発生の危険性があるとはいえないので,聴覚障害の発生に対
する不安感等の精神的苦痛を受けているということはできないけれども,高血
圧や頭痛,肩こり等のストレスによる身体的被害の発生に対する不安感等の精
神的苦痛を,W80区域の方がW75区域よりは著しいという意味でそれぞれ
その居住する区域のW値に応じて等しく受けているということができる。
(7)低周波音による被害
ア低周波音の心身に係る影響についての認定事実
(ア)環境庁大気保全局(当時。以下この(ア)及びイにおいて同じ)は,。
長田,山本らを委員とする「低周波空気振動調査検討会」において,昭和5
1年度から昭和58年度までに,低周波空気振動に係る苦情の実態等にかん
がみ,低周波空気振動の実態とその人体に及ぼす影響を明らかにすることを
目的として,低周波空気振動の主要な発生源周辺等における実態調査及び低
周波空気振動の及ぼす諸影響に関する調査を行った。
環境庁大気保全局は,昭和59年12月,この調査の結果を取りまとめ,
「低周波空気振動調査報告書」として明らかにした。
同報告書は,低周波空気振動を用いた被爆者暴露実験などの結果のまとめ
,,,として以下のとおり一般環境中に存在するレベルの低周波空気振動では
人体に及ぼす影響を証明し得るデータは得られなかったとした上で,一般環
境中においては,低周波空気振動と可聴音は複合して存在しており,今後は
低周波空気振動と可聴音を複合した条件下での生理的影響,心理的反応等に
着目した調査研究を進め,低周波空気振動の及ぼす諸影響について更に解明
することが必要であるとしている。
a生理的影響
①心拍数,呼吸数,まばたき数については,かなり高いレベル(例えば
10Hz・110dB)の低周波空気振動の暴露によっても,その変化は一
定の傾向を示さず,有意な変化は見られなかった。
②血圧については,10Hz・110dB,20Hz・100dB,40Hz・9
0dBの低周波空気振動の被験者暴露実験を行ったところ,10Hz・11
0dBの暴露条件の収縮期血圧に有意な変化を得たのみで,それ以外の暴
露条件下では有意な変化は得られなかった。この実験に用いた暴露条件
下では,低周波空気振動の血圧に及ぼす明確な影響を把握するには至ら
なかった。
③脳波誘発電位については,100Hz以上の高い周波数領域の方が反応
ありの割合が高いという結果が得られ,音圧レベルと反応の有無に関し
ては明確な関係は得られなかった。
④ストレス反応(尿中ホルモン量)については,定常純音の低周波空気
振動では,かなり高いレベル(例えば10Hz・110dB)の暴露によっ
ても,有意な変化は見られなかった。全般的にみて,この実験に用いた
暴露条件下では低周波空気振動が副腎機能に対して大きな影響を与える
という結果は得られなかった。
b睡眠影響
一般環境中に存在するレベルの低周波空気振動の暴露では,睡眠に対す
,()る影響は現れなかったがこれより高いレベル例えば10Hz・100dB
の低周波空気振動によって浅い睡眠に影響が現れ始めるという結果が得ら
れた。
(乙D7)
(イ)環境省環境管理局大気生活環境室は,平成14年3月「低周波音防,
止対策事例集」をまとめた。
「低周波音防止対策事例集」は,低周波音の対策を考える場合に参考にな
るような具体的な例を示すことにより,行政の一助とすることを目的するも
のであり,その中には,低周波音による心理的苦情,生活的苦情について,
次のような記載がある。
心理的苦情は,低周波音が知覚されてよく眠れない,気分がイライラする
といった苦情である。生理的苦情は,頭痛・耳鳴りがする,吐き気がする,
胸や腹を圧迫されるような感じがするといった苦情である。心理的苦情・生
理的苦情が低周波音を原因とする場合には,20Hz以下の超低周波音による
可能性と,20Hz以上の可聴域の低周波音による可能性が考えられる。この
,,,うち超低周波音によって心理的苦情生理的苦情が発生している場合には
物的苦情も併発していることが多く,建具等の振動によって二次的に発生す
る騒音に悩まされる場合もある。可聴域の低周波音の場合は,非常に低い音
が聞こえ,又は感じられることによって,上記のような苦情が発生すること
が多い。
また,その中には,低周波音の卓越周波数と苦情の内容について,次のよ
うな記載がある。
苦情発生時の低周波音の卓越周波数は,おおよそ3~50Hzの範囲に分布
している。心理的又は生理的苦情については,苦情発生時の低周波音がいず
れも可聴域の低周波音成分が卓越している。
(乙D8)
(ウ)環境省環境管理局大気生活環境室は,平成16年6月,地方公共団体
,「」における低周波音問題対策に役立てるために低周波音問題対応の手引書
を公表した。
「低周波音問題対応の手引書」は,固定発生源から発生する低周波音につ
いて苦情が発生した場合に,苦情内容の把握・測定を行い,低周波音問題対
策のために評価指針に基づき評価することにより,低周波音問題の解決に至
,,,る道筋を示すものでありその中には心身に係る苦情の場合の評価につき
次のような記載がある。
発生源の稼働状況と苦情内容に対応関係がある場合で,①G特性音圧レベ
ルが,評価指針で示される92dB以上の場合は,超低周波音の周波数領域で
問題がある可能性が高い,②1/3オクターブバンドで測定された音圧レベ
ルと,次の図の心身に係る苦情に関する参照値を比較し,測定値がいずれか
の周波数で同参照値以上であれば,その周波数が低周波音苦情の原因である
可能性が高い。この2項目の評価方法によって,どちらかでも同参照値以上
であれば,低周波音(超低周波音を含む)の問題があると考えられる。。
,,,なおこの参照値についてはほとんどの苦情が屋内で起こることを考え
参照値は,屋内の測定値を適用することとし,また,低周波音に関する感覚
については,個人差が大きいことを考慮して,大部分の被験者が許容できる
音圧レベルを参照値としたと解説されている。
同参照値と低周波音の1/3オクターブバンド音圧レベルとの関係を図で
表すと,次の図のとおりとなる。
(乙D6)
(エ)WHOが平成11年(1999年)に特定の環境と重要な健康影響ご
心身に係る苦情に関する参照値(dB)
(1/3オクターブ中心周波数(Hz))
dB(G)
心身に係る苦情に関する参照値(dB)92888376706457524741
11.251.622.53.15456.381012.516202531.540506380
,「,とにまとめた環境騒音のガイドラインには低周波成分を含む騒音の場合
より低いガイドライン値が適用されるべきである」との記述がある。
(甲D108)
イ低周波音の物的影響についての認定事実
(ア)環境庁(当時)は,昭和52年ころ,実験室において,建具に低周波音
を照射して次第に音圧レベルを上昇させて,建具のがたつき始める音圧レベ
ルを調べる実験をした。その結果,建具は,周波数が低いほど小さな音圧で
がたつきやすく,揺れやすいものでは,5Hzで70dB,10Hzで73dB,2
0Hzで80dB辺りからがたつき始めるという結果を得た。
(乙D5,6,8)
(イ)西脇仁一は,昭和53年10月に行われた文部省(当時)科学研究費
「環境科学」特別研究シンポジウム「音環境はいかにあるべき-騒音環境を
中心にして-」の中の「機械工学と音環境」と題する論文において「一般,
に,約35Hz程度以下の周波数の音圧波が,民家で70dB以上の強さでくる
と,日本の家屋のあるガラス戸がどうかすると共鳴して,ガタガタと二次騒
音を発生する場合が多い。これは日本の家のガラス戸はその大きさや取り付
け寸法で変わるが,一般に数Hz~35Hzぐらいの共鳴振動数を持っているか
らであろう」と指摘する。
(甲D16)
(ウ)前記ア(ア)のとおり環境庁大気保全局が昭和59年に調査研究を取
りまとめた「低周波空気振動調査報告書」には,まとめとして,低周波空気
振動によって,建具のがたつきが発生する場合があることが確認されたもの
の,建具の構造,材質,取付け状態等によってがたつきが発生しやすい周波
数,音圧レベルは異なり,低周波空気振動の音圧レベルだけで建具ががたつ
くか否かを一概には判断できないことが分かったと記載されている。
(乙D7)
(エ)環境庁大気保全局が平成12年10月に明らかにした「低周波音の測
定方法に関するマニュアル」には,物的苦情について「物的苦情は,音を,
感じないのに戸や窓がガタガタする,置物が移動するといった苦情である。
物的苦情が発生する場合は,低周波音では,20Hz以下の卓越周波数成分を
もつ超低周波音による可能性が高い。なお,物的苦情は低周波音だけでなく
地面振動によっても発生する場合があるので,低周波音と地面振動の両方の
可能性を考えておく必要がある」や「これまでの研究結果によれば,揺れ。
やすい建具の場合,20Hz以下では人が感ずるよりも低い音圧レベルでがた
つくことがわかっている」との記載がある。。
(乙D5)
(オ)前記ア(イ)のとおり環境省環境管理局大気生活環境室が平成14年
にまとめた「低周波音防止対策事例集」の中には,次のような記載がある。
まず,低周波音の物的苦情として,物的苦情は,音を感じないのに戸や窓
がガタガタする,置物が移動するといった苦情である。物的苦情が発生する
場合は,低周波音では,20Hz以下の卓越周波数成分をもつ超低周波音によ
る可能性が高い。なお,物的苦情は低周波音だけでなく地面振動によっても
発生する場合があるので,低周波音と地面振動の両方の可能性を考えておく
必要がある。これまでの研究結果によれば,揺れやすい建具の場合,20Hz
以下では人が感ずるよりも低い音圧レベルでがたつくことが分かっている。
また,苦情の内容について,文献に取り上げられた低周波音の苦情は物的
苦情が多数を占めている。苦情内容別にみると,物的苦情のほとんどは,建
具のがたつきによるものである。物的苦情は,ほとんどが可聴域以下の周波
数域で発生している。
さらに,地方公共団体の対策指導事例の中には「航行中のヘリコプター,
が低空操縦しているようで,騒音,窓硝子振動があり,生活しても,いつ墜
落してくるか不安である」との苦情が寄せられたが,発生源が上空のため,
個々の感覚があり調査結果は見いだせなかったとするものがある。
(乙D8)
(カ)前記ア(ウ)のとおり環境省環境管理局大気生活環境室が平成16年
に公表した「低周波音問題対応の手引書」の中には,物的苦情の場合の評価
につき,1/3オクターブバンドで測定された音圧レベルと,次の図で示す
物的苦情に関する参照値と比較し,測定値がいずれかの周波数で同参照値以
上であれば,その周波数が苦情の原因である可能性が高いとの記載がある。
同参照値と低周波音の1/3オクターブバンド音圧レベルとの関係を図で
表すと,次の図のとおりとなる。
(乙D6)
ウ低周波音による被害についての検討
(ア)低周波音の心身に係る影響について
原告らの中には,本件低周波音により,動悸,不整脈が生ずると供述し,
又は陳述書に記載する者がいる(甲B2の2,原告X61)ところ,原告ら
は,頭痛,不眠,イライラ等のいわゆる不定愁訴は,本件低周波音による被
害の典型的な症状であると主張する。
しかし,前記ア(ア)の認定事実のとおり,低周波音が人体に及ぼす生理
物的苦情に関する参照値(dB)
(1/3オクターブ中心周波数(Hz))
dB(G)
物的苦情に関する参照値(dB)7071727375778083879399
11.251.622.53.15456.381012.516202531.540506380
的な影響については,明確な関連性を示す実験データがないのみならず,沖
縄県調査のTHI調査の結果をみても,前記(6)ウ(ア)のとおり,普天
間飛行場周辺においては,多愁訴(足がだるい,横になりたい,頭が重い,
ぼんやりする,痛い,肩がこる,体がだるい,熱っぽいなどの不定愁訴)に
関するオッズ比と本件コンターのW値に量反応関係がみられないとされ,沖
縄県調査委員会も,多愁訴については,WECPNLが90以上の暴露レベルの高
い群においてのみ影響が認められると結論付けている。
一方,原告らは,普天間飛行場周辺住民が嘉手納飛行場周辺住民と比べ高
い被害感を訴えている原因につき,本件航空機騒音に限定すると説明が困難
であるが,本件低周波音の影響を加味して検討すれば容易に説明することが
できることから,本件低周波音は,本件航空機騒音と相まって原告らに「広
義の健康被害」をもたらしているといえると主張する。
確かに,原告ら主張のように,沖縄県調査における会話妨害等の生活妨害
やうるささ,被害感,イライラ感の反応率は,前記(3)イ並びに(5)イ
(イ)及びエのとおり,W値が同一の区域において,普天間飛行場周辺の方
が嘉手納飛行場周辺よりも,高いといえる。その原因としては,証人平松及
び証人松井は,①本件低周波音による影響があること及び②本件コンターを
作成する際に計算ミスのため本件コンターのW値が全体的に過小評価されて
いることを指摘する外,証人平松において,③ヘリコプター音の独特の音質
によることを,また,証人松井において,④本件コンターの指定時と沖縄県
調査の時の騒音の違いや⑤嘉手納飛行場は,普天間飛行場よりも,夜間の騒
音で迷惑を受けている比率が高いことを指摘する。そして,ヘリコプター,
プロペラ機,ジェット機の順で低周波音dB(G)と騒音dB(A)のレベルの差が相
(,,),()対的に大きいとの指摘甲C214950を考慮すると前記23
の認定事実のとおり,常駐機にヘリコプターが多い普天間飛行場周辺におい
て,嘉手納飛行場周辺よりも低周波音による影響が相対的に大きいという余
地がある。
しかしながら,証人平松及び証人松井は,上記の原因らのうち,証人平松
が「決定的なことを申すだけのデータ」はなく,証人松井も「どれが大きい
かと言われる」と「断言はできない」と証言するところ,まず,証人平松及
び証人松井が上記原因の一つとして指摘する本件コンターのW値が全体的に
過小評価されているということは,前記2(5)ア(イ)のとおり認められ
ない。これに対し,原告らの中には,ヘリコプターの音はジェット機の音よ
りもイライラ感や不快感が強いと供述し,又は陳述書に記載しており(甲B
2の7,原告X3,原告X48,沖縄県調査報告書が指摘するように「普)
天間飛行場周辺においては,ヘリコプター騒音の発生頻度が高く,住民反応
,」。,の面で固定翼機からの騒音と違いがある可能性もあるともいえるまた
沖縄県調査委員会は,前記(4)イ(イ)の認定事実のとおり,普天間飛行
場では,嘉手納飛行場と同じWECPNLでも,夜間の飛行が少なく,昼間又は夕
方の飛行が多いために,生活妨害の被害は相対的に大きく,睡眠妨害が少な
いと解することができると指摘しているところ,WECPNLでは前記前提事実2
及び4並びに前記2(1)の認定事実のとおり夜間の時間帯補正が加算され
ることから,夜間の飛行が少ない飛行場周辺では,W値がその分低い数値と
なること,夜間の飛行が少ない飛行場周辺が夜間の飛行が多い飛行場周辺と
W値が同一の区域であることは航空機騒音のピークレベル(音の強度)や飛
行回数に格別の差がない限りその分昼間の飛行が多いといえること,普天間
飛行場周辺の方が嘉手納飛行場周辺よりも夜間の飛行が相対的に少ないこと
がうかがわれる(甲D1,乙D41,証人松井)こと,そのため,昼間の航
空機騒音の暴露状況はW値が同一の区域であれば普天間飛行場の方が嘉手納
飛行場よりも相対的に高いという余地があることから,普天間飛行場周辺住
民の方が嘉手納飛行場周辺住民よりも被害感等につき高い反応率を示してい
るとみる余地もある。これらの事情に加え,原告らが低周波音による被害と
指摘する不定愁訴の訴えについては,イライラ感を除き,同じW値の区域に
おいても,普天間飛行場周辺の方が嘉手納飛行場周辺よりも,高いことをう
かがわせる証拠はないことにかんがみると,被害感等の反応率が,普天間飛
行場周辺の方が嘉手納飛行場周辺よりも高い原因は,証人平松が可能性の一
つとして指摘するように,普天間飛行場に多いヘリコプターの発する騒音の
特質による影響にあるとみるか,証人松井が可能性の一つとして指摘するよ
うに,昼間における航空機騒音の暴露状況が,W値が同一の区域であれば,
普天間飛行場周辺の方が嘉手納飛行場周辺よりも相対的に高いことによる影
響にあるとみるのが自然であって(もっとも,沖縄県調査が平成8年9月か
ら平成9年8月末までの県測定局の測定結果に基づき検討したLdnに対して
うるささに関する質問に対する回答との関係を検討した結果では,本件コン
ターの定めたWECPNLを指標としたときにみられた普天間飛行場と嘉手納飛行
場での反応率の差が縮小されていると指摘している(甲D1)ことから,上
記の違いには,騒音暴露量の変化が影響している可能性もある,原告ら主。)
張のように,本件航空機騒音に限定すると説明が困難であるが,本件低周波
音の影響を加味して検討すれば説明することができるということはできな
い。
,(),,また前記24エ及びオの認定事実によれば本件低周波音の中には
環境省環境管理局大気生活環境室が平成16年6月に示した「低周波音問題
対応の手引書」で低周波音の問題があると考えられるとされる92dB(G)や
同「低周波音問題対応の手引書」による心身に係る苦情に関する参照値を超
えて発生しているものもあると認められるけれども,同「低周波音問題対応
の手引書」は,前記ア(ウ)の認定事実のとおり,固定音源から発生する低
周波音に対象を限定しており,本件低周波音のような固定音源でない低周波
音の及ぼす心身に係る影響については,一定の時間継続することが想定され
ている固定音源とは事情を異にすると想定することもできるので,このよう
な事情のみでは,これを認める足りる的確な証拠があるとはいえない。
以上のとおり,①沖縄県調査の結果によっても,普天間飛行場周辺住民の
訴える多愁訴と本件コンターのW値との間には量反応関係がみられないこ
と,また,②普天間飛行場周辺住民が嘉手納飛行場周辺住民と比べ訴える被
害感等が高い原因についても,普天間飛行場周辺に多いヘリコプターの発す
る騒音の特質による影響又は昼間における航空機騒音の暴露状況がW値の同
一の区域においては普天間飛行場周辺の方が嘉手納飛行場周辺よりも相対的
に高いことによる影響にあるとみることができるので,原告らの主張のよう
に,本件航空機騒音に限定すると説明が困難であるが,本件低周波音の影響
を加味して検討すれば説明することができるともいえないこと,③本件低周
波音のような固定音源でない低周波音の及ぼす心身に係る影響を認める足り
る的確な証拠がないことからすると,原告らの中に不定愁訴を訴える者がい
るとしても,それが本件低周波音の影響によるものであると認めることはで
きない。
したがって,原告らには,本件低周波音により,不定愁訴の被害を受けて
いると認めることができないのみならず,本件低周波音が本件航空機騒音と
相まって原告らの不定愁訴の身体的被害を悪化させていると認めることもで
きない。
(イ)低周波音の物的影響に伴う精神的苦痛について
一方,原告らの中には,ヘリコプターが飛ぶと,家具,建て付けがガタガ
タする(原告X61,窓がガタガタと鳴る(原告X39,ヘリコプターが))
飛ぶと,障子がガタガタする(原告X120,ヘリコプターが低空で飛ぶ)
と,ふすま,ドア,窓がガタガタするする(原告X142,ヘリコプター)
が近づくと窓ガラスがガタガタ揺れる音がする(原告X1,ヘリコプター)
が近づいてくるとアルミドアが振動する(原告X56,窓ガラス,食器棚)
等の家具が振動し,窓を閉めているときに大きい(原告X3,ヘリコプタ)
ーやジェット機が飛んできたときに窓ガラスや本立てが振動する(原告X4
8)と供述している者がいる上,定型陳述書を提出した者のうち,家屋や家
財道具の振動があると記載している者は,75.8%にも上っており(甲B
(,,,,,,1の1から194まで枝番号690103105106142
171及び189を除く,また,窓ガラス,ガラス戸及び棚の振動があ。))
(,,,,ることを個別に記載する者も少なくない甲B1の19213134
,,,,,,,,,,,404456667075808195120129
130,132,138,140,144,146,149,156,16
8,176,184,187,193。)
また,前記イ(ア)の認定事実のとおり,環境庁(当時)が昭和52年に
行った実験において,建具は,周波数が低いほど小さな音圧でがたつきやす
く,揺れやすいもので,5Hzで70dB,10Hzで73dB,20Hzで80dB辺
りからがたつき始めるという結果を得ているから,低周波音によって建具が
がたつくことは一般的な知見となっているといえるところ,前記2(4)エ
及びオの認定事実によれば,本件低周波音には,これらの数値や環境省環境
管理局大気生活環境室が平成16年6月に示した「低周波音問題対応の手引
書」で低周波音の問題があると考えられる物的苦情に関する参照値を超えて
いるものがあるとうかがわれる。しかも,低周波音に対する建物による遮音
,,(,)。効果は騒音と比べ相当小さいものとうかがわれる甲C24証人平松
そして,同「低周波音問題対応の手引書」は,前記(ア)のとおり,固定音
源から発生する低周波音を対象としているものの,建具等のがたつきについ
ては,心身に関する影響と異なり,上記の環境庁による実験の結果等をみて
も,一定の時間継続することの影響を考慮すべきことをうかがわせるものは
ない。
他方,航空機騒音による家屋の振動については,大阪府立大学教授中川憲
治が,昭和43年11月1日から昭和44年2月15日まで大阪国際空港周
辺において航空機騒音による振動を調査した結果を踏まえ,航空機の通過に
,,,,,よって地面と家屋が共に振動しかつ振動の周波数が非常に高くかつ
広範囲にわたって分布し(30~3000Hz,ほとんどの音圧レベルの周)
波数分布に対応していることなどから,航空機騒音が地上に達したときの音
圧が直接励振力として働き,地面と家屋全体がほとんど一体となって垂直に
振動していると思われると指摘している(甲D99)ことや,運輸省航空局
(当時)の委託により財団法人小林理化学研究所が昭和50年10月15日
に福岡空港周辺の木造家屋において行った航空機飛来時の騒音及び建物振動
を調査した結果を踏まえ,財団法人航空公害防止協会が屋根瓦及び建物柱の
振動は,低周波帯域(2~1000Hzを指している)よりも一般騒音の帯。
域の方が影響を大きいと指摘している(甲D100)ことに照らすと,航空
機騒音による家屋の振動は,原告らの多くが指摘するような単なる建具等の
がたつきとは,その状況を異にしているといえる。
以上のとおり,①原告らの多くが普天間飛行場を離着陸するヘリコプター
による建具等のがたつきを指摘していること,②低周波音による建具のがた
つきを裏付ける実験等の結果があり,本件低周波音には,これらの実験等に
より建具のがたつきが生ずるとされる数値を超えているものが含まれている
こと,③航空機騒音による家屋等の振動は,原告らの多くが指摘するような
建具等のがたつきとは,その状況を異にしていることを総合考慮すると,原
告らが訴える建具等のがたつきは,本件低周波音が原因であると推認するこ
とが相当である。
そして,原告らが,こうした建具等のがたつきに伴い,イライラ感及び不
快感の精神的苦痛を受けることも想定することができる上,前記2(5)カ
のとおり,本件低周波音をW75区域とW80区域との区分に応じて相応に
暴露されているということができる。
もっとも,前記イ(ウ)の認定事実のとおり,建具の構造,材質,取付け
状態等によってがたつきが発生しやすい周波数,音圧レベルは異なり,低周
波の音圧レベルだけで建具ががたつくか否かを一概には判断できないとさ
れ,また,前記イ(ア(イ(エ)及び(オ)の認定事実のとおりの実験),),
や各種見解等も建具のがたつきには揺れやすいものという留保やそ,,「」,「
の大きさや取り付け寸法で変わる」という留保が付されているから,すべて
の建具等について,特定の低周波音によりがたつきが生ずるとはいえるもの
ではない。そのため,本件低周波音による建具等のがたつきは,生活妨害や
本件精神的被害のように被害の性質から,原告ら全員が等しく受けているも
のと推認することができる性質のものではない。定型陳述書には,上記のと
おり,約75%の原告らが家屋や家財道具の振動があると記載しているもの
の,約25%の者は,このような記載をしておらず,その約75%の者の中
にも,家財道具の振動以外に家屋の振動のみを指摘する者も含まれている可
能性もある。
したがって,原告らの中には,本件低周波音により,建具等のがたつきに
伴うイライラ感及び不快感の精神的苦痛を受けているものが相当多数いると
推認することができるけれども,それを超えて,原告らが全員が最低限等し
くこのような精神的苦痛を受けていると認めることまではできない。
エ低周波音による被害についてのまとめ
以上によれば,原告らには,本件低周波音により,不定愁訴の被害を受けて
いると認めることができないのみならず,本件低周波音が本件航空機騒音と相
まって原告らの不定愁訴の身体的被害を悪化させていると認めることもでき
ず,また,原告らの中には,本件低周波音により,建具等のがたつきに伴うイ
ライラ感及び不快感の精神的苦痛を受けているものが相当多数いるといえるけ
れども,それを超えて,原告らが全員が最低限等しくこのような精神的苦痛を
受けていると認めることはできない。
(8)その他の本件航空機騒音による被害
原告らは,本件航空機騒音によって,大人の自治会活動も著しく阻害される被
害を受けていると主張し,原告X3もこれに沿う供述し,また陳述書(甲B4)
に記載する。しかし,この被害については,原告らの主張の原告らの居住地にお
ける本件航空機騒音による被害とは異なる上,原告らの居住における本件航空機
騒音による被害と関連するところがあるとしても,生活妨害のうちの会話妨害や
趣味生活の妨害等の一態様として把握することができるものにすぎないから,独
立の被害として考慮する必要はない。
したがって,原告ら主張のその他の本件航空機騒音による被害については,独
立の被害としては考慮することができない。
(9)被害の性質と内容についてのまとめ
以上によれば,原告らは,本件航空機騒音により,①会話妨害,通話妨害,テ
レビ・ラジオの聴取妨害,趣味生活,知的作業の妨害という生活妨害及び睡眠妨
害という基本的な生活利益の侵害による被害並びにこれらに伴う精神的苦痛を受
けるとともに,②本件航空機騒音を直接の原因とするイライラ感や不快感という
本件精神的被害を,普天間飛行場を離着陸する米軍機の墜落への不安感や恐怖感
によって増大させられつつ,受けており,また,③高血圧や頭痛,肩こり等のス
トレスによる身体的被害の発生に対する不安感等の精神的苦痛を受けていると認
められる。
そして,原告らは,本件航空機騒音によるこれらの被害を,W80区域の方が
W75区域よりは著しいという意味でそれぞれその居住する区域のW値に応じて
等しく受けていると認められる。
4普天間飛行場供用の公共性ないし公益上の必要性の有無と程度
(1)公共性ないし公益上の必要性の有無
ア公共性ないし公益上の必要性についての認定事実
前記前提事実及び括弧内の証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)我が国政府は,自由と人権の尊重,民主主義といった基本的な価値観
や,極東の平和と安全の維持への関心を共有し,経済面においても関係が深
く,強大な軍事力を有するアメリカ合衆国との二国間の同盟関係を継続し,
その抑止力を我が国の安全保障のために有効に機能させることで,自らの適
切な防衛力の保持と合わせて隙のない態勢を構築し,我が国の安全を確保す
るなどとする立場を採り,日米安保体制を基調とする日米協力関係を外交の
機軸としている。
そして,被告は,アメリカ合衆国に対し,安保条約6条に基づき,我が国
の安全及び極東における国際の平和と安全の維持のため,施設・区域を提供
し,アメリカ合衆国が米軍を我が国に駐留させることとしている。
普天間飛行場も,被告がアメリカ合衆国に対し安保条約6条に基づき同国
が使用を許される施設・区域として提供した施設である。
(乙E2,3)
(イ)我が国政府は,普天間飛行場等の米軍が沖縄に展開している要因とし
て,沖縄が,アメリカ合衆国のハワイ島,グアム島よりも極東の各地域に近
いため,迅速な戦力投入が可能であると同時に,我が国の周辺諸国から一定
の距離があるため,沖縄県を除く都道府県の区域にはない縦深性があるため
であると位置付けている。
(乙E3)
イ公共性ないし公益上の必要性の有無についての検討
安保条約6条は「日本国の安全に寄与し,並びに極東における国際の平和,
及び安全の維持に寄与するため,アメリカ合衆国は,その陸軍,空軍及び海軍
が日本国において施設及び区域を使用することが許される」と規定していると
ころ,前記アの認定事実によれば,普天間飛行場は,我が国の安全に寄与し,
並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するという目的を有する
安保条約6条に基づき,米軍の我が国における航空基地として重要な役割を占
めていると認められるから,普天間飛行場の供用には,国民全体の利益につな
がるものとして,公共性ないし公益上の必要性があるということができる。
(2)公共性ないし公益上の必要性の程度についての検討
前記(1)イの普天間飛行場の供用の公共性ないし公益上の必要性は,一般的
に国や地方公共団体の他の公共的役務や行政諸活動と単純に比較することはでき
ない性質を有するけれども,国民の日常生活の維持存続に不可欠な役務の提供の
ように絶対的というべき優先順位を認めることができず,普天間飛行場の供用が
国や地方公共団体の他の公共的役務や行政諸活動とは隔絶した公共性ないし公益
上の必要性を有するとはいい難い。しかも,原告らが普天間飛行場の存在によっ
て自己の利益に直結する具体的・直接的な利益を等しく受けているとは認められ
ないから,普天間飛行場の存在によって原告らを含む普天間飛行場周辺住民にも
たらされる利益は,前記(1)イのような国民全体が等しく享受する性質の公共
,。的利益であってその程度も他の国民と同等のものにとどまるというべきである
他方,普天間飛行場の供用によって,前記3のとおり,原告らが本件航空機騒音
により生活妨害等の被害を受けているところ,原告ら普天間飛行場周辺住民が普
天間飛行場の存在によって受ける利益と本件航空機騒音によって受ける被害との
間に,後者の増大に必然的に前者の増大が伴うというような彼此相補の関係が成
り立つということはできない。そうすると,そのような公共的利益の実現は,原
告らを含む普天間飛行場周辺住民という限られた一部少数者の特別の犠牲の上で
のみ可能であること考慮すれば,そこには,看過することのできない不公平が存
するということができる。
したがって,普天間飛行場の供用については,公共性ないし公益上の必要性が
あると認めることができるものの,被告主張のような極めて高度の公共性ないし
公益上の必要性があると評価することはできない。
5被害防止措置の有無,内容,効果
(1)被告の主張
被告は,本件航空機騒音により原告らを含む普天間飛行場周辺住民にもたらさ
れる不利益又は影響は,被告が実施する周辺対策等によって,既に相当程度防止
し,又は軽減されているので,被告が実施する周辺対策等の実績とその効果は,
普天間飛行場の供用の違法性の判断において,十分に考慮されるべきである旨主
張し,被告が実施する周辺対策等として,住宅等の防音工事のように騒音の障害
を受ける側について,騒音を軽減するための措置を採る対策(周辺対策)と,騒
音の発生やその周辺住民への到達自体を規制する方法,具体的には騒音を発生源
で抑制する対策(音源対策)及びこれに準じる方法として運航方式に改変を加え
る対策(運航対策)とに大別することができると指摘する。
(2)周辺対策
前記前提事実及び括弧内の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
ア生活環境整備法に基づく区域指定の告示等
(ア)沖縄県の区域においては,昭和47年5月15日(沖縄の復帰の日)
から,周辺整備法によって,学校,病院等に対する防音工事等の周辺対策が
行われるようになるため,同日までには,他の都道府県の区域に比べてその
進ちょくが遅れていた。そこで,被告は,沖縄県における周辺対策事業を促
進するため,昭和47年5月13日「沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の,
適用の特別措置等に関する法律(昭和47年法律第33号)を制定し,周」
辺整備法に基づく周辺対策の実施について特例を設け,同法4条において,
当分の間,①周辺整備法4条の事業主体について,当時「市町村」とされ,
,,ていたのを周辺整備法4条の規定の沖縄県の区域における適用については
「」,,,沖縄県又は沖縄県の区域内の市町村とし沖縄県も事業主体としまた
②費用の補助の範囲についても,当時「一部」とされていたものを,周辺整
備法4条の規定の沖縄県の区域における適用については「全部又は一部」,
とし,具体的には「沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等,
に関する法律」の委任に基づく「沖縄県の復帰に伴う防衛施設庁関係法令の
適用の特別措置等に関する政令を一部を改正する政令(昭和47年政令第」
410条)により,沖縄県を除く都道府県の区域においては補助割合が10
分の5から10分の8までとされていたのを,沖縄県の区域においては3分
の2から10分の10までと増やすこととした。
(法令の規定を除き,弁論の全趣旨)
(イ)ところで,被告は,周辺整備法が昭和41年7月26日に施行された
以後,昭和47年5月14日までは沖縄県を除く都道府県の区域において,
翌15日からは全都道府県の区域において,周辺整備法に基づき,学校,病
院等への防音工事の補助や建物等の移転の補償等の措置を講じてきたとこ
ろ,防衛施設周辺の都市化の進展,住民の生活環境保全に対する意識の高揚
等に伴って,周辺整備法に基づく措置では諸般の要請に応えられなくなって
。,,,,いたそこで生活環境整備法が昭和49年6月27日に公布施行され
以後,沖縄県の区域においても,生活環境整備法に基づく措置が講じられる
ようになった。
そして,防衛施設庁(当時)は,昭和56年及び昭和58年に,普天間飛
行場に係る生活環境整備法所定の第1種区域である本件コンターを指定し
た。
(乙G1)
イ障害防止工事及び学校等公共施設防音工事の助成
(ア)障害防止工事の助成
被告は,普天間飛行場周辺において,昭和47年5月15日から昭和49
年6月26日までは周辺整備法3条1項に基づき,また,翌27日からは生
活環境整備法3条1項に基づき,平成18年度までに,真栄原排水路工事,
比屋良川負担金,新城排水路工事,大山排水路工事,大謝名排水路工事,伊
佐排水路工事,中原地区排水路工事,大山2号排水路工事,大山3号排水路
工事,喜友名排水路工事について,宜野湾市に対し,総額約35億7629
万5000円の補助金(道路の整備事業に係るものは除く)を交付してい。
る。
(乙G17,45)
(イ)学校等公共施設防音工事の助成
被告は,普天間飛行場周辺において,昭和47年5月15日から昭和49
年6月26日までは周辺整備法3条2項に基づき,また,翌27日からは生
活環境整備法3条2項に基づき,平成18年度までに,学校及び病院等の防
音工事に係る必要費用相当の補助金(工事費,実施設計費及び地方事務費)
として,合計143施設に対して318億7583万7000円を交付して
いる。
(枝番号を含む乙G7から12まで,17,45から47まで)
ウ住宅防音工事の助成
(ア)住宅防音工事の助成は,防衛施設周辺住民の生活の本拠における航空
機騒音の防止,軽減を図るために,生活環境整備法で新たに採用された周辺
対策である。
住宅防音工事の助成の対象は,生活環境整備法4条に基づく第1種区域指
定の際に,同区域内に現に所在する住宅である。
被告は,同区域指定に先立ち,昭和54年度から,普天間飛行場周辺の本
件航空機騒音の影響が著しいと思料される蓋然性の高い地域に所在する住宅
を対象として住宅防音工事の助成を実施してきた。その後,普天間飛行場周
辺地域においても,昭和56年告示により最初の第1種区域が指定され,昭
和58年告示によって,W値75区域に第1種区域の指定が拡大するのに応
じて,助成の対象となる住宅の範囲が広げられてきた。
(乙G1,17,弁論の全趣旨)
(イ)助成の対象となる住宅防音工事は,まず,新規工事として2居室以内
の居室(平成10年度までは,家族数が4人以下の場合は1室,5人以上の
),,,,場合は2室の範囲で実施し続いて追加工事として5室を限度として
世帯人員に応じて定められた居室数から新規工事済みの居室数を差し引いた
室数の防音工事を施工している(もっとも,実際は,5室を超える室数につ
いて,防音工事が施工されていることもある。。)
(乙F2,弁論の全趣旨)
(ウ)助成の対象となる住宅防音工事の内容は,住宅に遮音,吸音及び空気
調和の機能を付加する防音工事と,防音工事により設置した空気調和機器又
は防音建具の機能を復旧する機能復旧工事がある。
そのうち,防音工事は,外部及び内部開口部の遮音工事,外壁又は内壁及
び室内天井面の遮音及び吸音工事並びに冷房装置及び換気装置を取り付ける
空気調和工事を含み,住宅防音仕方書に従って行われる。その標準的な工法
は,木造系と鉄筋コンクリート造系それぞれについて,WECPNL80以上の区
域に所在する住宅について25dB以上の計画防音量を目標とする第Ⅰ工法
と,WECPNL75以上80未満の区域に所在する住宅について20dB以上の計
画防音量を目標とする第Ⅱ工法に区分される。
他方,機能復旧工事は,平成元年度から,新たな助成措置として,防音工
事により設置された空気調和機器で,設置後10年以上経過し,老朽化等に
より現にその機能の全部又は一部を保持していないものについて実施されて
いる。
(乙G13,15,49)
(エ)住宅防音工事の助成は,被告が,住宅防音工事を行う所有者等に対す
る補助金の交付をすることにより行われる。
補助の額は,防音工事にあっては,工事費等の合計額に10分の10を乗
じて得た額であり,機能復旧工事にあっては,工事費等の合計額に,空気調
和機器の機能復旧工事においては10分の9(空気調和機器の機能復旧工事
を行う所有者等が生活保護法6条1項所定の被保護者である場合には10分
の10)を,防音建具の機能復旧工事においては10分の10を乗じて得た
額である。
(乙G13,49)
(オ)昭和58年告示により第1種区域を拡大したことにより,住宅の建設
時期が昭和58年告示と同一又はそれ以前のものであっても区域によっては
助成対象とならない住宅が生じた(いわゆる「ドーナツ現象。そこで,防」)
衛施設庁長官(当時)は,平成6年6月28日防衛施設庁訓令第18号「防
衛施設周辺特定住宅防音事業補助金交付要綱」を定め,いわゆるドーナツ現
象により助成を受けられなかった住宅に対して,特定住宅防音工事として,
住宅防音工事の助成措置を講じることとし,これを実施している。
(乙G14,50,弁論の全趣旨)
(カ)普天間飛行場周辺における住宅防音工事(防音工事,前記(オ)の特
定住宅防音工事,建替え及び区画改善を含む)の助成事業の実施状況につ。
いては,被告が,昭和54年度から平成18年度までの間,合計延べ1万9
268世帯について,総額約350億2439万1000円の補助金を交付
している。そのうち,まず,防音工事については,新規工事として1万11
44世帯の住宅に対し,追加工事として7769世帯の住宅に対して,それ
,。ぞれ施工し合計約340億5944万6000円の補助金を交付している
また,上記特定住宅防音工事については,新規工事として121世帯に対し
て,追加工事として97世帯に対してそれぞれ施工し,合計約4億6403
万円の補助金を交付している。さらに,建替防音工事及び防音区画改善工事
として,新規工事として129世帯に対し,また,追加工事として8世帯に
対しそれぞれ施工し,合計約5億0091万5000円の補助金を交付して
いる。
また,被告は,このほか,空気調和機器機能復旧工事について,平成2年
度から平成18年度までに3524世帯に対し約11億2637万9000
円を補助している。
被告が各原告に対して実施した住宅防音工事の具体的内容,すなわち,住
宅防音工事を実施した住宅,工事の種別,工事の完了年月日,室数は,居住
経過表のうち「居住地における住宅防音工事実績」欄に記載したとおりであ
る。
(乙G17,45,乙F1,2,弁論の全趣旨)
エその他の周辺対策
(ア)民生安定施設の助成措置
被告は,関係地方公共団体に対し,普天間飛行場周辺において,昭和49
年度から平成18年度までに,昭和49年6月26日までは周辺整備法4条
に基づき,また,翌27日からは生活環境整備法8条に基づき,防音助成と
して,公民館,市町村庁舎など合計36施設について,合計約44億037
6万6000円の補助金を交付している。
また,被告は,関係自治体等に対し,普天間飛行場周辺において昭和49
年度から平成18年度までに,昭和49年6月26日までは周辺整備法4条
に基づき,また,翌27日からは生活環境整備法8条に基づき,一般助成と
して,野外運動場,学習等供用施設,農業用施設,無線放送施設,消防施設
等の設置事業について約29億7000万円,道路改修事業について約38
億0822万5000円の総額約67億7822万5000円の補助金を交
付している。
(乙G17,45)
(イ)特定防衛施設周辺整備調整交付金の交付
被告は,生活環境整備法9条に基づき,生活環境整備法施行令14条所定
の公共用施設(交通施設,環境衛生施設,教育文化施設,社会福祉施設,消
防に関する施設,医療施設等)の整備のために,生活環境整備法施行令15
条,生活環境整備法施行規則3条により算出した額に従って,昭和50年度
から平成18年度までの間に,宜野湾市に対し,合計約19億7939万9
000円の特定防衛施設周辺整備調整交付金を交付している。
(乙G17,45)
(ウ)防音事業関連維持費の補助
被告は,昭和53年度から平成18年度までに,行政措置として,防音工
事を施工した学校等に対し,空調設備を稼働させ,又は稼働し得るよう維持
するための電気料金等の助成として,平成16年度までは財団法人防衛施設
周辺整備協会が当該電気料金を交付している場合には同協会を通じ,その余
,。の場合は自ら総額約64億1813万4000円の補助金を交付している
(乙G16,17,45,47)
(エ)空気調和機器稼働費の補助
被告は,平成元年度から平成18年度までに,前記ウのとおり,被告の助
成に基づき住宅防音工事を実施した住宅に居住する者のうち,生活保護法6
条1項所定の被保護者であって,住宅防音工事により設置した空気調和機器
の稼働に伴う電気料金を支払う者307世帯に対し,平成16年度までは財
団法人防衛施設周辺整備協会が当該電気料金を交付している場合には同協会
を通じ,その余の場合は自ら,行政措置による当該電気料金に対する補助と
して,約378万3000円の補助を行っている。
(乙G16,45)
(オ)基地助成交付金及び基地調整交付金
被告は,国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律に基づく固定
資産税の代替として,又は米軍の資産に係る税制上の特例措置等により施設
等が所在する市町村が受ける税財政上の影響を考慮し,基地助成交付金及び
基地調整交付金を交付している。被告は,昭和47年度から平成18年度ま
でに,宜野湾市に対し,基地助成交付金として合計約24億9520万70
00円,基地調整交付金として合計約113億5792万9000円をそれ
ぞれ支出している。
(甲C12,13,乙G45)
オ周辺対策の内容,効果についての検討
(ア)住宅防音工事の助成について
被告が定める住宅防音仕方書は,前記ウ(ウ)の認定事実のとおり,W8
0区域においては25dB(A)以上,W75区域においては20dB(A)以上の計
画防音量を目標とし,この効果が達成されるように工事で使用する建具,標
準工法等について基準を定めているところ,実際に実施された住宅防音工事
において,この仕方書に反した建具,工法が採られていることをうかがわせ
る証拠はなく,嘉手納飛行場周辺における調査の結果(甲D1,乙G20)
や原告X56及び原告X3の供述に照らすと,住宅防音工事の助成は,防音
工事を施工した居室のある住宅に居住する原告らに一定の防音効果をもたら
していると認めることができる。
しかしながら,そもそも,住宅防音工事の対象となる住宅には,第1種区
域の指定の際現に所在するものという生活環境整備法上の制限やその運用上
の制限がある上,その内容も,前記ウ(イ)の認定事実のとおり,まず新規
工事として2居室以内の居室の範囲で実施し,次に,追加工事として,世帯
人員に1を加えた室数から新規工事済みの室数を差し引いた室数の防音工事
を施工するというものであり,室数も最大で5室に制限されているから,世
帯人員数,新規工事及び追加工事の進ちょく状況等の事情により,普天間飛
行場周辺住民の居宅の全てについて,必ずしも住宅防音工事が実施されるも
のではないという限界がある。そして,人の通常の生活としては,原告X2
55が1日生活する上で,防音工事がされている寝室にずっといるわけでは
ないなどと供述するように,防音工事を施工している居室以外における生活
時間も必要不可欠である。
また,被告が助成の対象とする住宅防音工事は,部屋を密閉化するという
前提でその工事内容等が定められている。
しかしながら,まず,沖縄においては,高温多湿という気候の特質から,
仮に部屋を密閉するとすれば,夏期を中心とした年間の相当日数において,
しかも1日のうちかなりの時間において冷房装置を使用することを余儀なく
されるところ,長時間多数の部屋の冷房装置を継続して使用することは,電
気料金がかなりの負担となるといえる。定型陳述書にみても,住宅防音工事
の助成を受けて防音工事を実施していると記載する原告ら108名のうち,
,.,防音工事の利用につきほとんど使用していないと記載する者が約68%
ときどき使用していると記載する者が約25.2%おり,1日中使用してい
ると陳述する者が約40.8%であることに比べても,少なくなく(甲B1
の1から194まで(枝番号6,90,103,105,106,142,
171及び189を除く。もっとも,定型陳述書の当該質問は「防音工。),
事の利用度」であり,他の質問項目の回答内容をみると,その回答を記載す
るにあっては,防音工事を施工した居室を密閉して防音効果を受けながら使
用しているどうかを基準として回答している者だけでなく,その効果の享受
の有無にかかわらず当該居室自体を使用しているかどうかを基準として回答
している者が含まれているとうかがわれる,沖縄県調査における生活環境。)
調査でも,住宅防音工事を実施した世帯においても,約30%前後の者がほ
とんど窓を開けた状態で防音工事を施工した部屋を使用しており,常に窓を
閉め切って使用する者は10~20%程度にすぎないとの結果がある(甲D
1)ところ,こうした原告らの陳述や調査結果は,原告らや被調査者の主観
に基づく訴えによるものであることを考慮しても,普天間飛行場周辺におい
て実施された住宅防音工事の現実的な効果の一側面を表すものと評価するの
が相当である。そして,上記原告ら108名のうち,住宅防音工事に対する
不満として,クーラー代がかかることを定型陳述書に記載する者が約76.
((,,,,7%と多い甲B1の1から194まで枝番号690103105
106,142,171及び189を除く)ことからすると,沖縄県調査。)
委員会が,電気料金の補助がないことが,クーラーを利用せず,窓を開けて
生活する者が多い一つの理由となっていると推測する(甲D1)のも,合理
的であると考えられる。そして,被告が,普天間飛行場周辺住民の経済的負
担の軽減を考慮して,生活保護法に基づく被保護者に対する空気調和機器稼
働費の補助を行っていることは前記エ(エ)の認定事実のとおりであるけれ
ども,これは,かなり限定された者にとどまっている。
また,原告らの中には,沖縄で窓を閉め切って生活することは無理である
(原告X61,音がないときは開けっ放しである(原告X112,涼しい))
風を入れるため,開けた状態にしておくことがある(原告X56,音がな)
ければ窓を開けっ放しにしておく(原告X255)など窓を開けて生活する
,(,,ことが比較的多い旨供述し又は陳述書に記載する甲B2の7B3の4
,)。,,59一般的に人が一日中密閉された部屋で過ごすことは困難であり
特定の時期を除けば,換気などのために窓を開けて生活するのがむしろ自然
であるといえるところ,沖縄は,高温多湿で,夏が長いにもかかわらず,最
高気温が32度程度にしかならず,風が強いという海洋性気候であるため,
窓を開ければ夏期にも十分クーラーを使用せずに生活することができるとい
う気候上の特徴がある(甲D1)上,定型陳述書に住宅防音工事の助成を受
けて防音工事を実施していると記載する原告ら108名のうち,住宅防音工
事の不満として,密室にすることでかえって住環境が悪くなると定型陳述書
に記載する者が約51.5%いる(甲B1の1から194まで(枝番号6,
90,103,105,106,142,171及び189を除く)こと。)
,,を考慮すると防音工事が施工された屋内に密閉した状況で生活することは
それによって一定の防音効果があるにせよ,普天間飛行場周辺住民の現実的
な生活形態に必ずしもそぐわないといわざるを得ない。
以上によれば,住宅防音工事の助成は,被告がこれを周辺対策における最
も重要な施策と位置付け実施し,それによって防音工事を施工した居室のあ
る住宅に居住する原告らに一定の防音効果をもたらしているといえるもの
の,対象となる住居や防音工事の施工される室数に制限がある上,同居室内
で窓を閉め切って生活する場面は生活全体からみれば一定の限度にとどまる
といえるから,普天間飛行場の供用の違法性の判断において,被告が実施し
た住宅防音工事の助成それ自体をもって,一般的に違法性そのものを減ずる
要素として考慮すべきものと評価することまではできず,これによる便益を
受けた各原告について,本件航空機騒音による被害の一部を軽減する事情と
して考慮するにとどまるものと評価すべきである。
(イ)その他の周辺対策について
①障害防止工事の助成は,自衛隊等の航空機の離陸,着陸,急降下又は低
空における飛行のひん繁な実施により生ずる障害を防止し,又は軽減するた
めのものとも位置付けられる(周辺整備法3条1項,生活環境整備法3条1
項,生活環境整備法施行令1条1号等)ものの,特定の施設について必要な
工事をするために助成するものであるから,原告らの本件航空機騒音による
被害を直接軽減するものということはできないから,普天間飛行場の供用の
違法性の判断において考慮すべき事情とは認められない。
また,②学校等公共施設防音工事の助成については,学校等における防音
工事によって,原告らの居住地における本件航空機騒音による被害を直接軽
減するものではないので,この助成をもって本件訴訟における普天間飛行場
の供用の違法性の判断において考慮すべき事情とはならない。③防音事業関
連維持費の補助についても,防音工事を施工した学校等を対象とするもので
あるから,学校等公共施設防音工事の助成と同様に,この補助をもって本件
訴訟における普天間飛行場の供用の違法性の判断において考慮すべき事情と
はならない。
④民生安定施設の助成措置について,被告は,この措置によって,原告ら
を含む普天間飛行場周辺住民の日常生活,教育活動等の面において,普天間
飛行場の維持,運営から生ずる障害を間接的に緩和し,環境の改善,住民の
福祉向上が図られている旨主張するけれども,同助成措置の対象が公民館や
野外運動場等の施設であって,原告らの本件航空機騒音による被害を直接軽
減するものとは認められないから,普天間飛行場の供用の違法性の判断にお
いて考慮すべき事情とは認められない。また,⑤特定防衛施設周辺整備調整
交付金についても,被告は,同交付金の交付によって,原告らを含む普天間
飛行場周辺住民の生活環境の向上に効果を上げている旨主張するけれども,
同交付金の整備の対象が公共用施設であって,民生安定施設の助成措置と同
様,原告らの本件航空機騒音による被害を直接軽減するものとは認めること
はできないから,普天間飛行場の供用の違法性の判断において考慮すべき事
情とは認められない。
さらに,⑥基地助成交付金及び基地調整交付金の交付についても,原告ら
の本件航空機騒音による被害を直接軽減するものとは認める余地はないか
ら,普天間飛行場の供用の違法性の判断において考慮すべき事情とは認めら
れない。
以上によれば,住宅防音工事の助成及び空気調和機器稼働費の補助を除く
被告主張の周辺対策については,いずれも原告らの本件航空機騒音による被
害を直接軽減するものではないので,普天間飛行場の供用の違法性の判断に
おいて考慮すべき事情とは認められない。
(3)音源対策及び運航対策
ア音源対策及び運航対策について
括弧内の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
(ア)音源対策
a消音装置の設置
被告は,地上における航空機のエンジンテストに伴う騒音軽減のため,
平成元年2月15日に開催された日米合同委員会において,普天間飛行場
にC-130,UH-1等用の消音装置を設置することが合意された。こ
れに基づき,被告は,平成4年3月26日,鉄筋コンクリート造平屋の防
,,音建屋に吸気消音器排気消音器等を設置した消音装置3棟等を完成させ
米軍に提供した。
(弁論の全趣旨)
b緑地整備事業
被告は,昭和51年度から平成18年度までの間に,生活環境整備法の
趣旨を踏まえ,緑地の整備によって,防風及び地上騒音の緩和等の物理的
効果をもたらすとともに緑地の整備によって景観を整え,安心感ややすら
ぎを与える心理的効果も期待するものと位置付け,普天間飛行場内におい
,,,て緑地整備事業を行い植栽面積12万0700平方メートルを実施し
撫育管理工事を含め総額2億7981万9334円を支出した。
(乙G18,45,弁論の全趣旨)
(イ)運航対策
我が国とアメリカ合衆国は,日米合同委員会において協議を行った結果,
平成8年3月28日,日米合同委員会の下部機関である航空機騒音対策分科
委員会において,平成8年規制措置を合意した。
平成8年規制措置は,普天間飛行場周辺地域社会の航空機騒音レベルへの
懸念を軽減するため,下記の措置が「在日米軍の任務に支障をきたすことな
く航空機騒音による望ましくない影響を最小限にすべく設定された」もので
あり,そのため,飛行の安全,任務の遂行及び騒音規制が最も考慮すべき点
であることを認識しつつ,これらの措置が採られることとなる。
具体的には,以下のような内容である。
①進入及び出発経路を含む飛行場の場周経路は,できる限り学校,病院を
含む人口稠密地域上空を避けるよう設定する。
②普天間飛行場近傍(飛行場管制区域として定義される区域,すなわち,
飛行場の中心部より半径5陸マイル(約8㎞)内の区域)において,航空
機は,海抜1000フィート(約305m)の最低高度を維持する。ただ
し,次の場合を除く。
承認された有視界飛行方式による進入及び出発経路の飛行,離着陸,有
視界飛行方式の場周経路,航空管制官による指示がある場合又は計器進入
③任務により必要とされる場合を除き,現地場周経路高度以下の飛行を避
ける。
④普天間飛行場の場周経路内で着陸訓練を行う航空機の数は,訓練の所要
に見合った最小限に抑える。
⑤アフター・バーナーの使用は,飛行の安全及び運用上の所要のために必
要とされるものに制限される。離陸のために使用されるアフター・バーナ
ーは,できる限り早く停止する。
⑥普天間飛行場近傍及び沖縄本島の陸地上空において,訓練中に超音速飛
行を行うことは,禁止する。
⑦午後10時から翌日午前6時までの間の飛行及び地上での活動は,アメ
リカ合衆国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される。
夜間訓練飛行は,在日米軍に与えられた任務を達成し,又は飛行要員の練
度を維持するために必要な最小限に制限される。部隊司令官は,できる限
り早く夜間の飛行を終了させるよう最大限の努力を払う。
⑧日曜日の訓練飛行は差し控え,任務の所要を満たすために必要と考えら
れるものに制限される。慰霊の日のような周辺地域社会にとって特別に意
義のある日については,訓練飛行を最小限にするよう配慮する。
⑨有効な消音器が使用されない限り,又は運用上の能力若しくは即応態勢
が損なわれる場合を除き,午後6時から翌日午前8時までの間,ジェット
・エンジンのテストは行わない。
⑩エンジン調整は,できる限りエンジン・テスト・セル(サイレンサー)
を使用する。
⑪普天間飛行場近傍においては空戦訓練に関連した曲技飛行は行わない。
しかしながら,あらかじめ計画された曲技飛行の展示は除外される。
⑫普天間飛行場に配属され,又は普天間飛行場を一時的に使用するすべて
の航空関係従事者は,周辺地域社会に与える航空機騒音の影響を減少させ
るために本措置に述べられている必要事項について十分に教育を受け,こ
れを遵守する。
(甲C13,乙G19,弁論の全趣旨)
イ音源対策及び運航対策の効果についての検討
音源対策のうち,前記ア(ア)bの緑地整備事業は,その内容からして,原
告らの本件航空機騒音による被害を軽減するという面では直接的な効果は認め
られない。また,前記ア(ア)aの消音装置の設置についても,被告が米軍に
提供した消音装置は,具体的な内容が明らかでなく,その効果を示す的確な証
拠もない上,普天間飛行場の常駐機のうち,一定のものを対象としていること
がうかがわれるから,前記2のとおりの本件航空機騒音の発生に対して,現実
的な効果が十分なものであると認めるに足りる証拠はない。
一方,前記ア(イ)の運航対策は,これが功を奏しているのであれば,本件
航空機騒音の暴露が全体として減少するのみならず,原告らの本件航空機騒音
による睡眠妨害の原因となる夜間における本件航空機騒音の発生の減少が相当
程度見込まれるはずである。しかしながら,まず,本件航空機騒音の暴露に関
する各種騒音指標の経年変化については,前記2のとおり,W80区域及びW
75区域のいずれにおいても,平成8年規制措置が講じられた後も,夜間の騒
音発生回数や年間W値等について,一般的な減少傾向があるとまではいえず,
また,前記3(5)エ(イ)の認定事実のとおり,普天間飛行場を離着陸する
ヘリコプター等の米軍機が,タッチアンドゴー等の訓練により,普天間飛行場
周辺を低空で飛行しながら,本件航空機騒音を発生させているといえるから,
被告が主張する運航対策によっても,本件コンターに居住する原告らが相当大
きな騒音に暴露されている状況に依然として大きな変化がないというべきであ
る。また,平成8年規制措置については,前記ア(イ)の認定事実のとおり,
その趣旨自体が「在日米軍の任務に支障をきたすこと」がないという一種の限
定付きのものであり,具体的な規制措置の内容も,飛行経路,飛行高度,夜間
訓練飛行等のいずれの措置についても例外や制限が存する。そうすると,平成
8年規制措置は,本件航空機騒音の程度を減少させる現実的な効果が十分なも
のということはできない。
以上によれば,被告主張の音源対策のうち,緑地整備事業は,原告らの本件
航空機騒音による被害を直接軽減するものとは認められないので,普天間飛行
場の供用の違法性の判断において考慮すべき事情とはいえない。また,被告主
張の音源対策のうちの消音装置の設置及び運航対策は,その現実的な効果が十
分なものとは認められないので,普天間飛行場の供用の違法性の判断において
十分に考慮することができる事情とまではいうことができない。
6普天間飛行場供用の違法性
(1)違法性の判断基準
前記1(4)のとおり,普天間飛行場の供用が第三者である原告らに対する関
係において違法な権利侵害ないし法益侵害となるかどうかを判断するに当たって
は,①侵害行為の態様と侵害の程度,②被侵害利益の性質と内容,③侵害行為の
もつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか,④侵害行
為の開始とその後の継続の経過及び状況,⑤その間に採られた被害の防止に関す
る措置の有無及びその内容,効果等の事情をも考慮し,これらを総合的に考察し
て決すべきである。
(2)違法性を画する基準
ア前記(1)の違法性の判断において考慮すべき諸事情について,既に前記2
,。から5までにおいて個別に検討したことなどをまとめると次のとおりとなる
(ア)本件航空機騒音等の態様とその程度については,前記2のとおり,原告
らは,昭和47年5月15日(沖縄の復帰の日)から現在までの間,それぞ
れW80区域又はW75区域に居住している期間,本件航空機騒音及び本件
低周波音のため,W80区域にあってはかなり大きな騒音等に,W75区域
にあっては大きな騒音等に,いずれも高い頻度で暴露されているといえる。
(イ)原告らの本件航空機騒音による被害の性質と内容については,前記3
のとおり,原告らは,本件航空機騒音により,①会話妨害,通話妨害,テレ
ビ・ラジオの聴取妨害,趣味生活,知的作業の妨害という生活妨害及び睡眠
妨害という基本的な生活利益の侵害による被害並びにこれらに伴う精神的苦
痛,②本件航空機騒音を直接の原因とするイライラ感や不快感という本件精
神的被害及び③高血圧や頭痛,肩こり等のストレスによる身体的被害の発生
に対する不安感等の精神的苦痛を等しく受けていると認められる。
そして,これらの被害は,直接生命,身体に係わるような重大なものと評
価するまではできないけれども,原告らが人間であるに相応しい生活を営む
上で重要な利益等の侵害であり,また,相互に密接に関連し,相互に影響し
合って,総体としての被害を増大させている側面を有しているといえる(な
お,高血圧や頭痛,肩こり等のストレスによる身体的被害の発生に対する不
安感等の精神的苦痛についての被害の程度は,前記3(6)エのとおり,生
活妨害,睡眠妨害に伴う精神的苦痛や本件精神的被害に若干加味する程度の
ものにとどまるとみるべきである。しかも,これらの被害のうち,特に生。)
活妨害と本件精神的被害については,同一のW値の区域にある嘉手納飛行場
周辺住民と比べても,相当深刻な程度のものということができる。
したがって,原告らの本件航空機騒音による被害は,原告らにおいて当然
に甘受しなければならないような軽度の被害であるということはできない。
そして,原告らは,前記3のとおり,本件航空機騒音による上記被害を,
W80区域の方がW75区域よりは著しいという意味でそれぞれその居住す
る区域のW値に応じて,等しく受けていると認められる。
なお,普天間飛行場供用の違法性の判断においては,普天間飛行場供用に
伴う本件航空機騒音等が原告らを含む普天間飛行場周辺住民らの全体に対し
どのような種類,性質,内容の被害をどの程度に生ぜしめているかが一つの
重要な考慮要素となるので,この場合における被害の総体的な判断において
は,必ずしも原告ら全員に共通する被害のみに限らず,原告らの一部にのみ
生じている特別の被害も考慮の対象とすることができると解される(前掲最
高裁昭和56年12月16日大法廷判決参照)ところ,前記3(7)のとお
り,原告らの中には,本件低周波音により,建具等のがたつきに伴うイライ
ラ感及び不快感の精神的苦痛を受けているものが相当多数いるので,この事
情も,普天間飛行場供用の違法性の判断における被害の総体的な判断におい
ては,考慮すべきであるといえる。
(ウ)他方,普天間飛行場の供用のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容
と程度については,普天間飛行場は,前記4のとおり,我が国の安全に寄与
し,並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するという目的を
有する安保条約6条に基づき,米軍の我が国における航空基地として重要な
役割を占めており,普天間飛行場の供用には,国民全体の利益につながるも
のとして,公共性ないし公益上の必要性があるけれども,普天間飛行場の存
在によって原告らを含む普天間飛行場周辺住民にもたらされる利益は,国民
全体が等しく享受する性質の公共的利益であって,そのような公共的利益の
実現は,原告らを含む普天間飛行場周辺住民という限られた一部少数者の特
別の犠牲の上でのみ可能であること考慮すれば,そこには,看過することの
できない不公平が存するというべきである。
したがって,普天間飛行場の供用の違法性の判断において,普天間飛行場
の供用に公共性ないし公益上の必要性があるものの,被告主張のような極め
て高度の公共性ないし公益上の必要性があるということはできない。
(エ)本件航空機騒音等による侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状
況については,前記前提事実1のとおり,米軍が昭和20年4月に沖縄本島
に上陸し,占領,接収した地域に普天間飛行場を建設した上,被告が,アメ
リカ合衆国に対し,昭和47年5月15日から,安保条約6条及び地位協定
2条1項に基づき,米軍の使用する施設及び区域として,普天間飛行場を提
,,(),供していることから本件航空機騒音の発生が始まり前記アのとおり
現在まで本件航空機騒音等が継続している。
(オ)被害の防止に関する措置の有無及びその内容,効果等については,前
記5のとおり,住宅防音工事の助成は,防音工事を施工した居室のある住宅
に居住する原告らに一定の防音効果をもたらしているとはいえるものの,対
象となる住居や防音工事の施工される室数に制限がある上,同居室内で窓を
閉め切って生活する場面は生活全体からみれば一定の限度にとどまるといえ
るから,一般的に違法性そのものを減ずる要素として考慮すべきものと評価
することまではできず,これによる便益を受けた各原告について,本件航空
機騒音による被害の一部を軽減するものとして考慮するにとどまるというべ
きである。また,被告主張のその他の周辺対策及び音源対策のうちの緑地整
備事業は,原告らの本件航空機騒音による被害を直接軽減するものではない
ので,普天間飛行場の供用の違法性の判断において考慮すべき事情とはいえ
ず,また,被告主張の音源対策のうちの消音装置の設置及び運航対策も,現
実的な効果が十分なものであるとはいえず,普天間飛行場の供用の違法性の
判断において十分に考慮することができる事情とまではいうことができな
い。
イところで,上記のような違法性の判断において考慮すべき要素の多くは,生
活環境整備法の指定区域と関連している上,生活環境整備法に基づく区域指定
において採用されているWECPNLによる航空機騒音の評価は,前記前提事実及び
前記2(1)のとおり,騒音レベル,発生回数,時間帯による影響の差異等を
総合考慮して,航空機騒音の人間に対する影響を把握しようとするもので,I
CAOによって提案され,我が国でも,昭和48年環境基準においても採用さ
れているものであり,現時点において最も信頼性の高い評価方式の一つという
ことができる。しかも,本件コンターは,前記2のとおり,本件航空機騒音の
発生の地域的な広がり及び発生の程度を把握する指標とすることに合理性・相
当性がある。そうすると,普天間飛行場の供用の違法性の判断においては,生
活環境整備法の指定区域である本件コンターにおけるW値をもって画するの
が,最も現実的かつ合理的である。
そして,昭和48年環境基準は,前記前提事実3及び前記2(1)イのとお
り,類型Ⅰの地域においてはW値70以下,類型Ⅱの地域においてはW値75
以下を基準値として定めているところ,前記前提事実3のとおり,人の健康を
保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準(公害対
策基本法9条1項,環境基本法16条1項)であるため,被告主張のように,
我が国政府が航空機騒音に関する総合的な施策を進める上で達成することが望
ましい値を設定した行政上の目標となる基準であって,規制基準でもない(乙
E35,36)から,当然に私法上の違法性を画する基準となる性格を有する
ものではない。
しかしながら,昭和48年環境基準の基準値は,前記2(1)イのとおり,
被告自らが住民被害の調査等の資料に基づき,輸送の国際性,安全性等飛行場
の有する公共性に類する事情等違法性の判断において考慮されるべき要素と似
かよった要素も総合的に考慮して基準を設定しているものであり,自衛隊等が
使用する飛行場の周辺地域においても,平均的な離着陸回数及び機種並びに人
家の密集度を勘案するなどした上で,達成され,又は維持されることが求めら
れているものであるから,普天間飛行場の供用の違法性の判断においても,し
ん酌すべき意味を持つものというべきである。
しかも,防衛施設周辺地域の生活環境等の整備について必要な措置を講ずる
などのために制定された生活環境整備法は,前記前提事実4のとおり,その4
条において,国は「航空機の離陸,着陸等のひん繁な実施により生ずる音響,
に起因する障害が著しいと認め」る区域を第1種区域と指定し,住宅防音工事
の助成措置を採ることとしているところ,第1種区域指定の基準となる値は,
前記前提事実4のとおり,数次の改正を経て,W値75となっている。このこ
とは,被告がW値75以上の区域について「航空機の離陸,着陸等のひん繁な
実施により生ずる音響に起因する障害が著しい」と評価していることを示して
いるともいえるので,普天間飛行場の供用の違法性の判断においても,しん酌
すべきであるというべきである。
,,,これに対し被告は本件コンターを違法性判断における基準とすることは
本件航空機騒音の実態からかけ離れた形式的な数値を基準とするものとなり,
不当であると主張するけれども,本件コンターがなお本件航空機騒音の発生の
地域的な広がり及び発生の程度を把握する指標とすることに合理性・相当性が
あるのは,上記のとおりであるから,被告のこの主張は採用することができな
い。
,,なお昭和48年環境基準では地域類型別に基準値が定められているところ
前記2(1)イの認定事実のとおり,昭和48年環境基準に地域類型が設けら
れているのは昭和46年の「騒音に係る環境基準について」において地域類型
別に基準値が定められているためであり,また,同環境基準において地域類型
別に基準値が定められているのは当時の都市騒音の実態,騒音に対する住民の
苦情等を考慮したためとうかがえるから,航空機騒音の特色を必ずしも反映し
ていないとみる余地があること,商業的・工業的騒音と航空機騒音とはその大
きさやうるささの点で大きな差異があること,沖縄県知事による用途地域指定
においては,前記2(2)イの認定事実のとおり,類型Ⅱの地域には,近接商
業地域,商業地域,準工業地域及び工業地域のほか,第1種住居地域,第2種
住居地域及び準住居地域といった住居地域も含まれていること及び生活環境整
備法に基づく区域指定にはこのような地域類型による区分がないことにかんが
みれば,商業的・工業的騒音が生じやすい地域に居住する者が,そうでない地
域に居住する者に比べ,当然に本件航空機騒音による被害を一定程度甘受すべ
きとはいえず,普天間飛行場の供用の違法性の判断において昭和48年環境基
準のように地域類型の区分によって差を設けることが相当であるとはいえな
い。
ウ以上のような,前記イのとおりのWECPNLによる航空機騒音の評価の意義並び
に昭和48年環境基準の基準値及び第1種区域指定の基準となるW値の意義等
に加え,前記アのとおり,①本件航空機騒音のため,W80区域にあってはか
なり大きな騒音等に,W75区域にあっては大きな騒音等に,いずれも高い頻
度で暴露されて,その結果,②原告らが,本件航空機騒音により,W75以上
の区域である本件コンター内において,当然に甘受しなければならないような
軽度の被害とはいえない被害を等しく受けているのに対し,③普天間飛行場の
供用に公共性ないし公益上の必要性があるものの,被告主張のような極めて高
度の公共性ないし公益上の必要性を有するものでなく,また,④本件航空機騒
音による侵害行為の開始における歴史的経緯や本件航空機騒音の継続の経緯等
に加え,⑤被告実施の被害防止措置は違法性の判断において考慮すべき事情と
はいえないもの又は効果が十分なものとはいえないことなどを総合的に考察す
ると,普天間飛行場の供用においては,W値75をもって違法性を画する基準
とするのが相当である。
(3)違法性の有無
以上によれば,普天間飛行場の供用は,本件コンターに居住し,又は居住して
いた原告らとの関係において,違法な権利侵害ないし法益侵害に当たるというべ
きである。
7まとめ
よって,普天間飛行場の供用は,原告らが本件コンター内に居住している間,当
該原告らに対する関係において,違法な権利侵害ないし法益侵害となっているとい
えるので,その限りにおいて,普天間飛行場に民事特別法2条の設置又は管理の瑕
疵があるということができる。
第3免責法理としての「危険への接近の法理」の適用の有無(争点3)について
1認定事実
前記前提事実及び括弧内の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
(1)普天間飛行場の形成過程
,,(。。)ア米軍は昭和20年4月に沖縄本島に上陸し宜野湾村当時以下同じ
,,。,の集落の一部を占領接収しその地域に普天間飛行場を建設した沖縄県は
終戦後,アメリカ合衆国が施政権者とされることとなったため,普天間飛行場
も,米軍の接収下にあり,また,アメリカ合衆国が施政権者として管理,運営
していた。被告は,沖縄の復帰に先立ち「沖縄における公用地等の暫定使用,
に関する法律」を制定し,同法等に基づき,普天間飛行場の使用権原を取得し
た上,沖縄の復帰に伴い,アメリカ合衆国に対し,安保条約6条及び地位協定
2条1項に基づき,普天間飛行場を,米軍の使用する施設及び区域として,提
供した。普天間飛行場は,以後,アメリカ合衆国が地位協定3条1項に基づき
管理,運営し,米軍機の運航等に使用している。
イ宜野湾村は,昭和20年3月ころ,22の集落からなり,人口が約1万40
00人であった。普天間飛行場が建設される地域は,当時,宜野湾村の野嵩,
新城,喜友名,伊佐,大山,真志喜,大謝名,佐真下,宜野湾,神山,赤道,
中原,上原の13の各集落の一部であり,中央を南北に横断する形で,約30
00本の松が街道沿いに植えられていたため宜野湾並松街道と呼ばれる県道が
通っていた。それぞれの集落の昭和19年10月当時の人口は,野嵩が848
,,,,,人新城が320人喜友名が767人伊佐が348人大山が1248人
,,,,真志喜が426人大謝名582人佐真下が395人宜野湾が1171人
,,,。神山が374人赤道が418人中原が431人上原が330人であった
宜野湾村は,昭和20年当時,普天間に沖縄県庁中頭郡地方事務所が設置さ
れる沖縄本島中部の中心地域であり,首里と越来村(当時。現在の沖縄市の一
部)を結ぶ上記県道沿いでは商業が営まれていた外は,サトウキビを中心とし
た農業で生計を営む者が多い農村地帯であった。
米軍は,昭和20年4月1日に沖縄本島中部西海岸に上陸した後,建物及び
土地を接収しながら,主力部隊を南進させていった。宜野湾村の住民は,同月
10日ころから野嵩集落にあった収容所で生活することを余儀なくされるなど
した後,より北部の収容所に移転させられた。
米軍は,間もなく,宜野湾村の村役場などが置かれて,宜野湾村の中心地で
あった宜野湾集落を中心にして,軍事飛行場の建設に取りかかり,真志喜及び
普天間の各集落に駐屯部隊を置くとともに,宜野湾,佐真下,神山,中原,新
城及び喜友名の各集落を接収していった。これなどにより,宜野湾村は,終戦
直後,約4割近くが米軍基地として占拠されることとなった。
一方,収容所に収容されていた住民は,米軍から,同年11月から順次,米
軍が軍用地として使用しない地域について,元居住地への移動を許可された。
しかし,昭和21年3,4月までに住民の移動が一応完了したものの,元の居
住地に戻れない住民も多く,普天間,野嵩方面にひとまず移動する者もいた。
その後,例えば,宜野湾集落にあっては,昭和22年10月23日,元居住地
への移動を許可されたものの,自分の土地が軍用地として使用されていないの
は3分の1程度で,残りの土地は軍用地として使用されていたため,宜野湾集
落の住民は,元の土地所有権に関わりなく,解放された土地を一律平等に割り
当てることとし,平等意識のもとに集落の再興を図った。
(甲E55,60から66まで,71,72,証人S1,証人S2)
ウ普天間飛行場の周辺部には,戦後,随時米軍から返還されるに応じ,返還さ
れた土地に住民が移り住むなどし,普天間飛行場を取り囲むように,幹線道路
が整備され,学校,病院,マンション等の建物が建ち並ぶようになるなど都市
化が進行し,昭和37年に宜野湾市となった。
(甲C12,13,E60,67,証人S2,弁論の全趣旨)
(2)普天間飛行場周辺地域
ア普天間飛行場は,宜野湾市の中央部に位置する。
宜野湾市は,沖縄本島の中部西海岸にあり,平成17年当時の人口が8万9
769万人である。宜野湾市は,東シナ海に面し,北には北谷町,東には中城
村,北東には北中城村,南東に西原町,南に浦添市に接しており,那覇市から
北に12㎞,沖縄市から南に6㎞の地点にある。宜野湾市の面積は,19.5
8平方キロメートルで,陸地は東西6.1㎞,南北5.3㎞のやや長方形をし
ており,概して平坦である。
(甲C12,58,E68)
,(,,,,,イ沖縄本島は南部地域那覇市の外豊見城市南城市八重町与那原町
南風原町,糸満市の各行政区域を指している。以下同じ,中部地域及び北部。)
地域(名護市,国頭郡,伊平屋村,伊是名村の各行政区域を指している。以下
同じ)に区分され,普天間飛行場は,中部地域に位置する。。
沖縄県の53市町村のうち25市町村(いずれも平成14年当時)には,平
成14年3月31日現在,合計38施設,2万3728.8haの米軍基地が所
在しており,沖縄県の面積22万7194ha(同年1月1日現在)の10.4
%を占めている。しかも,そのうち,一時使用施設を除く米軍の専用施設は,
2万3360haあり,同年3月31日現在,日本にある米軍専用施設の74.
7%が沖縄県にある。
また,沖縄本島には,2万2665.3haの米軍基地が所在しており,沖縄
本島の約18.8%を占めている。そして,沖縄本島の中部地域には,平成1
4年3月末現在,普天間飛行場のほか,嘉手納飛行場等の米軍基地が集中して
,,.。おり次の表のとおり地区面積の約253%が米軍基地で占められている
宜野湾市においては,平成14年当時,米軍基地の占める割合が,上記のと
おり,沖縄県平均では10.4%であるのに対し,普天間飛行場が同市の陸地
面積の約24.7%を占めており,普天間飛行場にキャンプ瑞慶覧等を加えた
米軍基地が同市の陸地面積の約32.7%を占めている。また,同陸地面積か
ら基地面積を差し引いた面積に係る人口密度についても,次の表のとおり,全
県平均は652.5人/平方キロメートルであるのに対し,宜野湾市は,66
80.4人/平方キロメートルであって,那覇市の7881.8人/平方キロ
メートルに次いで高くなっている。
(甲C13,乙F4)
ウ本件コンターは,別紙8本件コンター図のとおりである。
本件コンターの区域は,普天間飛行場を中心として,宜野湾市のみならず,
浦添市,北谷町及び北中城村の一部にまで広範囲に及んでいる。
エまた,普天間飛行場の北側には,宜野湾市に隣接する北谷町の外,沖縄市及
び北中城村にまたがるキャンプ瑞慶覧が存在し,また,北谷町の外,嘉手納町
及び沖縄市には,嘉手納飛行場が存在する。平成15年当時の面積は,キャン
プ瑞慶覧が642万6000平方キロメートルで,嘉手納飛行場が1995万
平方キロメートルである。
米軍基地の面積が占める割合は,前記イの表のとおり,平成14年当時,嘉
手納町が82.8%,北谷町が56.4%,読谷村が44.6%,沖縄市が3
5.9%である。また,基地面積を除いた部分の人口密度は,嘉手納町が53
.,.,174人/平方キロメートル北谷町が43564人/平方キロメートル
沖縄市が3884.7人/平方キロメートルであり,人口が集中している。
しかも,嘉手納飛行場周辺地域においても,生活環境整備法に基づく区域指
定がされており,その区域は,嘉手納町,北谷町,沖縄市及び読谷村のみなら
ず,うるま市の一部にまで相当広範囲に及んでいる。
(甲C13,D1,乙G4)
オ昭和56年告示及び昭和58年告示による生活環境整備法に基づく区域指定
においては「那覇防衛施設局に備え置いて縦覧に供する図面に普天間飛行場,
に係る第1種区域として示す部分」という形式で指定がされている。
(乙G4,5)
(3)沖縄の人々の特徴
沖縄の人々は,集落ごとにある拝所を中心に行事があるなど地縁が強い上,清
明(シーミー)という親族,家族が先祖の墓に集まり,重箱を供えて,食事をし
ながら談笑して,親族の絆を確認し合うという風習があるなど先祖崇拝が強く,
また,門中の制度にみられるように血縁が強い。
(甲C12,E56,59,70)
(4)普天間飛行場の返還合意
普天間飛行場は,日本国政府及びアメリカ合衆国政府によって,平成7年11
月に設置された沖縄に関する特別行動委員会(SACO)が,平成8年12月2
日,今後5年ないし7年以内に,十分代替施設が完成し運用可能になった後,普
天間飛行場を返還するなどの内容の最終報告をして,日米安全保障協議会におい
て,この最終報告を了承された。
我が国政府は,その後,現在まで,関係地方公共団体を加えて,普天間飛行場
の移設に向けた所要の努力を続けている。
(甲C13,枝番号を含む乙G30から33まで)
(5)関係自治体等による善処要望等
普天間飛行場周辺地域では,宜野湾市長が,当時の普天間飛行場の司令官に対
し,昭和44年ころ,本件航空機騒音による被害を問題として善処を求める要望
を行い,また,教職者らが,昭和45年ころ,本件航空機騒音等の即時中止を要
求する決議をした。
2免責の法理としての危険への接近の法理の適用要件
前記第2の3及び4のとおり,原告らの本件航空機騒音による被害が生活妨害,
睡眠妨害及びこれらに伴う精神的苦痛,イライラ感や不快感という本件精神的被害
又はストレスによる身体的被害の発生に対する不安感等の精神的苦痛のようなもの
であって,直接生命,身体に係わるような重大なものであるとはいえず,また,普
天間飛行場の供用には公共性ないし公益上の必要性があることに照らすと,原告ら
のうち,被告主張の居住経過表の「危険への接近の法理類型」の「免責「Ⅰ」に」
「○」印が記載された者48名,同「Ⅱ-①」に「○」印が記載された者35名,
「Ⅱ-②」に「○」印が記載された者29名「Ⅱ-③」欄に「○」印が記載され,
(,「」)た者51名原告らのうちこれらのいずれかに○印が記載された者108名
についても,本件航空機騒音の存在を認識しながらあえてそれによる被害を容認し
て居住したと認められる場合には,入居後に実際に受けた被害の程度が入居の際そ
の存在を認識した騒音から推測される被害の程度を超えるものであったとか,入居
後に騒音の程度が格段に増大したとかいうような特段の事情が認められない限り,
その被害は当該原告において受忍すべきであり,その被害を理由として慰謝料の請
求をすることは認められないと解するのが相当である(前掲最高裁昭和56年12
月16日大法廷判決参照。)
3本件航空機騒音の存在の認識についての検討
(1)前記1(5)の認定事実によれば,本件航空機騒音について,昭和47年
5月15日(沖縄の復帰の日)よりも前に,宜野湾市長による善処要望や教職者
らによる即時中止を要求する決議がされていたことは認められるけれども,これ
らが日刊紙等により日常的に報道されるなどしていたとはうかがわれないから,
同日において,本件航空機騒音の存在が,一般に周知されていたとまでは認める
ことはできない。しかも,原告らのうち,本件コンター内の転居の際にした下見
のときには,本件航空機騒音が聞こえなかったなどと供述し,又は陳述書に記載
する(甲B2の2の2,B4,B12の2,B25の2,B26の2,B28の
2,B29の2,B30の2,B31の2,B33の2,B41の2,B43の
2,原告X48)ところ,普天間飛行場における航空機の飛行には,前記第2の
2の本件航空機騒音の実態のとおり,年間を通じても,また,1日のうちでも,
定常性がない上,土地建物の購入又は賃借に当たってその下見をするのは,週末
が主として利用されていた(甲B2の2の2,B25の2,B29の2,B41
の2,B43の2,原告X48)ところ,本件航空機騒音の発生が週末には前記
第2の2のとおり比較的少ないことに照らすと,上記原告らが述べる内容が必ず
しも不自然であるとはいえない。
そうすると,居住経過表の「危険への接近の法理類型」の「免責「Ⅰ」欄に」
「○」印が付された原告らが,昭和47年5月15日以降に本件コンター内の住
所に転居したことから,転居当時,本件航空機騒音の存在を認識していたと推認
することはできない。
(2)また,前記1(2)オの認定事実によれば,昭和56年告示及び昭和58
年告示による生活環境整備法に基づく区域指定においては,那覇防衛施設局等に
備え置いて縦覧に供する図面を確認しない限り,どの区域が第1種区域として指
定されているのかを必ずしも確定することができないと認められる上,被告にお
いて,普天間飛行場周辺地域のどの区域が第1種区域内すなわち本件コンター内
にあるかを一般に周知したことをうかがわせる証拠はない。そうすると,居住経
過表の「危険への接近の法理類型」の「免責「Ⅱ-①「Ⅱ-②」及び「Ⅱ-」」,
③」欄に「○」印が付された原告らにつき,単に本件コンターに居住した経験が
あるというだけでは,本件航空機騒音の存在を認識していたと推認することも困
難である。
したがって,被告が免責法理としての危険への接近の法理の適用があると主張
する原告108名から後記5で検討する原告(その原告の家族である原告も含
む)58名を除いた50名の原告のうち,原告番号121,131,187,。
220,230,231,247,268,275,283,324,333か
ら335まで,367及び393の各原告16名は,そのいずれも本件コンター
内の住所への転居の際,本件航空機騒音の存在を認識していたと認めるに足りる
証拠はない。
(3)もっとも,前記(2)の50名から同16名を除いた原告ら34名のうち,原
告番号74,110,186及び223の各原告は,そのいずれかの本件コンタ
ー内の住所への転居の際に,本件航空機騒音があることを知っていた旨質問書に
記載している(甲B27の1,B36の1,B50の8,28)ので,その際,
本件航空機騒音の存在を認識していたと認めることができる。また,原告番号7
5及び222の各原告は,それぞれその家族が上記原告番号74又は223の各
原告である(甲B1の42,甲B1の117)から,本件航空機騒音の存在を認
識していたと推認することができる。
また,原告番号78,85,114,156,173,177,184,20
5,213,218,219,233,234,236,237,246,25
,,,,,,,,6271272274284から286まで294318323
363,382及び395の各原告は,本件コンター内における従前の居住地と
同一の,又はこれと近隣した住所に転居しているから,その転居の際,本件航空
機騒音の存在を認識していたと推認することができる。
4本件航空機騒音による被害の容認についての検討
(1)前記3のような本件コンター内の住所への転居する際,本件航空機騒音の
存在を認識している者であっても,その居住をやむを得ず開始することもあるか
ら,本件航空機騒音の存在を認識して,相当長期間にわたる間の住居としてその
住所を選択したことから,被告主張のように,直ちにあえて本件航空機騒音によ
る被害を容認して居住したと推認することができるというものではない。
そして,普天間飛行場周辺においては,次のような事情がある。
すなわち,まず,①沖縄県は,他県と陸で接していない上,前記1(2)の認
,,,,定事実のとおり沖縄本島の中部地域には普天間飛行場のほか嘉手納飛行場
キャンプ瑞慶覧等の米軍基地が集中し,米軍基地の占める割合は,中部地域の陸
地面積の約25.3%,宜野湾市の陸地面積の約32.7%に上っているため,
沖縄本島の中部地域には,そもそも住民の居住することができる地域が限られて
いる。しかも,普天間飛行場周辺において,前記前提事実5及び前記1(2)の
認定事実のとおり,本件コンターは,広範囲に及んでおり,また,嘉手納飛行場
周辺においても生活環境整備法に基づく区域指定がされた区域が相当広範囲にあ
るから,沖縄本島の中部地域において,航空機騒音の影響を受けずに生活するこ
とができる区域に居住地を定めることは実際上困難である。他方,航空機騒音の
影響を受けずに生活することができる沖縄本島の南部地域,北部地域に居住する
ことは,後記②のような沖縄の人々の特徴に沿わない面がある上,当裁判所に顕
著な事実及び前記1(2)イの認定事実によれば,沖縄県には,那覇市にモノレ
,,ールがあるのを除くと鉄道がなく公共交通機関としては外にバスしかないため
自動車の利用が多く,那覇市近郊等では,交通渋滞が日常的に生ずる等交通事情
が悪く,通勤,通学の便が良いとはいえず,雇用機会が多い那覇市等は,特に人
口密度が高く,地価も高い一方,北部地域は,その多くを森林,原野が占めてお
り,もともと居住に適した土地に乏しく,就業先も限られていると認められるか
ら,沖縄本島の南部地域,北部地域に居住することにも一定の困難を伴うといえ
る。そうすると,沖縄本島においては,実際問題として,居住地を選択する幅が
限られているといえる。
また,②前記1(3)の認定事実のとおり,沖縄の人々は,もともと,地縁が
強い上,先祖崇拝が強く,また,血縁が強いという背景があるため,強い郷土意
識を有しているといえるから,証人S2が証言するように,沖縄の人々は,自分
たちの育ったところで住みたいという気持ちがある,故郷に戻りたいという気持
ちが非常に強いという共通する特徴を有しているということができる。しかも,
普天間飛行場周辺住民は,前記1(1)の認定事実のとおり,米軍が昭和20年
4月に沖縄本島に上陸した後,米軍から土地を接収されて,やむを得ず他の地域
で生活を始めたものの,元の居住地への移動を許可される際も,解放されたわず
かな土地を平等意識のもとに割り当て集落の復興を図ったなどという歴史的事情
があることなどからすると,このような地元回帰意識を一層強く有していると推
察することもできる。そして,普天間飛行場周辺住民が自らが生まれ育った土地
や,親族が生活する土地で生活する傾向が強く,また,一旦自らが生まれ育った
地域を離れた者であっても,しばらくした後は同一の地域又は近隣の地域に戻っ
て生活する者が多いことは,居住経過表記載の居住経過からも,うかがわれる。
さらに,③普天間飛行場は,前記1(4)の認定事実のとおり,我が国政府及
びアメリカ合衆国政府によって返還期限を平成8年12月2日から5年ないし7
年以内と合意されているところ,その期限は既に経過している。
以上のとおり,①沖縄本島の中部地域においては,そもそも住民が居住し得る
地域が狭い上,航空機騒音の影響を受けずに生活することができる地域が狭い一
方,沖縄本島の南部地域,北部地域に居住することにも一定の困難が伴うから,
沖縄本島において居住地を選択する幅が限られているという事情があり,また,
②普天間飛行場周辺に居住している者のうち,少なくとも沖縄の人には,そもそ
も地元回帰意識が強い特徴を有している上,普天間飛行場周辺の歴史的事情がそ
の意識を一層強いものとしているから,普天間飛行場周辺住民について,あえて
本件航空機騒音による被害を容認するという心情が生じにくいという事情もあ
り,さらに,③普天間飛行場については,我が国政府とアメリカ合衆国との返還
合意期限が既に過ぎていることからすると,恒久的に存続が予定されている飛行
場の周辺で居住を開始することとは異なるので,少なくとも両国間で返還合意が
された平成8年以降に普天間飛行場周辺地域に居住することは,将来を見据えた
やむを得ないものとみる面もある。
以上の諸事情を総合考慮すると,本件コンター内の住所に転居する際,本件航
空機騒音の存在を認識している者について,その転居理由が,通勤の利便性等の
固有の生活利益に基づいているものであっても,実家に近い場所での生活等の固
有の生活利益に基づいているといえないものであっても,普天間飛行場が周辺に
存在することによって得られる利益を期待するものと認められる場合でない限
り,その居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機
騒音による被害を容認して居住したとみることができないというべきである。
(2)そして,原告ら(後記5で検討する原告58名を除く)の中には,前記。
3(3)のとおり,本件航空機騒音の存在を認識しているといえる者がいるもの
の,その転居の理由は,原告番号74,110,186,223の各原告にあっ
てはその転居先が実家や勤務先の近くであるとか,以前の住居が老朽化のため解
体されることになって近隣に転居したとかというものであって(甲B27の1,
2,B36の1,B50の8,28,普天間飛行場が周辺に存在することによ)
って得られる利益を期待するものとは認められず,また,その他の原告の転居理
由についても普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待す
るものであることをうかがわせる証拠はないから,あえて本件航空機騒音による
被害を容認しているとみることはできない。
(3)したがって,本件航空機騒音の存在を認識している原告らについても,あえて
本件航空機騒音による被害を容認して本件コンター内の住所に転居したと認める
ことはできない。
5被告が特に指摘する原告らについての検討
被告は,以下の原告(その原告の家族である原告も含む)58名については,。
その移転経過に照らし,いずれも本件航空機騒音による被害を認識し,これを容認
して本件コンター内に転居しているから,免責法理としての「危険への接近」の法
理を適用すべきである旨主張する(1)から(29)までにおいては,丸数字を付(
して記載した住所を当該各項においてそれぞれ「①住所「②住所」などと表記す」,
る。。)
(1)原告X1(原告番号1番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B2の10,原告X1)によれば,以下の事実が
認められる。
(ア)原告X1は,平成4年6月1日,宜野湾市字我如古(本件コンター外)
から①宜野湾市真志喜2丁目(W75区域)に転居し,平成10年6月27
日,①住所から②同市上原1丁目(W75区域)に転居し,平成12年6月
25日,②住所から③同市上原1丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X1は,居住していた前記(ア)の我如古にある借家が古くなっ
たことから,勤務先である宜野湾市役所への通勤の利便性を考えて,前記
(ア)①住所への転居をした。同原告は,その後,結婚を機会に,同様の通
勤の利便性を考えて,同②住所への転居をした。また,同原告は,同様の通
勤の利便性を考えて,犬を飼うために知人が家主であるアパートで生活する
こととし,同③住所への転居をした。
(ウ)原告X1は,前記(ア)我如古(本件コンター外)の借家で居住して
いた当時から,本件航空機騒音がうるさいと感じていた。
イ原告X1の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,勤務先への通勤の利便性に
あり,これに加え,借家の老朽化,結婚又は犬の飼育のためにあるところ,こ
のような転居理由は,いずれも,固有の生活利益の実現に向けられたものであ
っても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待する
ものとは認められない。そうすると,同原告は,①住所から③住所までの転居
の際,たとえ本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しているとして
も,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみ
るべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認していたとは認めら
れない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在を認識しながら,職場に近いこと
や犬の飼育をすることができる場所といった利便性を優先させて①住所から③
住所までに転居しているから,本件航空機騒音による被害を容認していると主
張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用することはできな
い。
ウしたがって,原告X1があえて本件航空機騒音による被害を容認して前記ア
(ア)の①住所から③住所までへの転居をしたとは認められない。
(2)原告X26(原告番号26番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B14の1,2)によれば,以下の事実が認めら
れる。
(ア)原告X26は,昭和49年3月6日,東京都杉並区松ノ木2丁目から①
宜野湾市大謝名(W80区域)に転居し,昭和50年11月6日,①住所か
ら②同市大謝名3丁目(W80区域)に転居した。
(イ)原告X26は,結婚を機会に,勤務先に近い①住所にマンションを借
りて生活するため,前記(ア)①住所への転居をした。同原告は,その後,
勤務先にも近く,相場よりもかなり安い値段で①住所から約400~500
mほど離れた場所に住宅を購入できたことから,前記(ア)②住所への転居
をした。
(ウ)原告X26は,前記(ア)の①住所及び②住所への転居の際,本件航
空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生ずるな
どの被害があると考えていた。
イ原告X26の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,①住所への転居は結婚を
機会として勤務先に近いという通勤の利便性に,②住所への転居は勤務先に近
,,。い場所でかつ安い値段で住宅を購入することができる経済的な理由にある
まず,通勤の利便性という理由は,固有の生活利益の実現に向けられたもので
あっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待す
るものとは認められない。また,住宅を安く購入するという経済的な理由につ
いても,当該住宅の価格が相場よりもかなり安くなっていた原因が普天間飛行
場が周辺に存在することにあると認めるに足りる証拠はないから,普天間飛行
場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとまでは認めら
れない。そうすると,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,①住所及び②住所へ
の転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しているとして
も,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみ
るべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認していたとまでは認
められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しなが
ら,経済性や利便性を優先させて②住所への転居をしているから,本件航空機
騒音による被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告
のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X26があえて本件航空機騒音による被害を容認して前記
ア(ア)の②住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻であるX25(原告番号25番)についても,原告X26
,()と同様の理由によりあえて本件航空機騒音による被害を容認して前記アア
の②住所に転居したと推認することはできない。
(3)原告X41(原告番号41番)について
(),。ア前記前提事実及び証拠甲B50の3によれば以下の事実が認められる
(ア)原告X41は,平成5年7月1日,浦添市字西原(本件コンター外)か
ら,①宜野湾市嘉数3丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X41は,①住所が実家から歩いて5分程度の場所にある上,所
有者である実弟から安く賃借することができるため,前記(ア)の転居をし
た。
イ原告X41の転居理由は,実家に近く,かつ,安く賃借することができると
ころにある。まず,実家に近い場所で生活するという理由は,前記4(1)の
とおり,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生まれ育った土地や,親族
が生活する土地で生活する傾向が強いことに照らせば,普天間飛行場が周辺に
存在することによって得られる利益を期待するものとは認められない。また,
賃料が安いのは家屋の所有者が実弟であることによるものであって,普天間飛
行場の存在に関係のあるものとは認められないから,普天間飛行場が周辺に存
在することによって得られる利益を期待するものとまでは認められない。そう
すると,同原告は,前記ア(ア)の①住所への転居の際,たとえ本件航空機騒
音の存在及びこれによる被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に
照らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本
件航空機騒音による被害を容認していたとまでは認められない。
被告は,同原告が実家のすぐ近隣に転居しているので,その転居の際,本件
航空機騒音の存在を認識していたはずであるにもかかわらず,経済的理由を優
先させて①住所に転居しているから,本件航空機騒音による被害を容認してい
ると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用することは
できない。
ウしたがって,原告X41があえて本件航空機騒音による被害を容認して前記
ア(ア)の①住所への転居をしたとは認められない。
(4)原告X122(原告番号122番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B46の1,2,原告X122)によれば,以下
の事実が認められる。
(ア)原告X122は,昭和46年5月10日から,①宜野湾市普天間1丁目
(W75区域)に居住していたところ,昭和62年5月30日,①住所から
②同市野嵩4丁目(W75区域)に転居し,平成3年2月23日,②住所か
ら③同市普天間2丁目(W75区域)に転居し,平成7年3月10日,③住
所から④同市野嵩2丁目(W80区域)に転居した。
(イ)原告X122は,①住所の実家で居住していたが,結婚を機会に,実
,,()父の介護も考えて①住所にある実家に近い場所で生活するため前記ア
②住所への転居をした。同原告の実父は,昭和62年当時,糖尿病であった
,,,。ため毎朝午前6時に同原告からインスリン注射を受ける必要があった
同原告は,子供が生まれたため,住居が手狭になったので,より広い住居
を求めて,実家から車で1,2分の距離にある③住所に居住することとし,
前記(ア)③住所への転居をした。
同原告は,長男として仏壇を管理する必要があり,また,実家の近くには
実母の墓もあったものの,実家の近くには適度な空き地がなかったため,実
家に比較的近く,安く売りに出されていた④住所に土地を購入して,家を新
築しため,前記(ア)④住所への転居をした。
(ウ)原告X122は,①住所に居住していた当時から,本件航空機騒音を
うるさく感じ,イライラすることがあった。同原告は,前記(ア)の②住所
から④住所までへの各転居の際,本件航空機騒音があることを知っており,
また,それにより生活に支障が生ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X122の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,長男として,実父の世
話や仏壇の管理などをする必要があり,結婚や子供の誕生などの機会に,実家
に近い場所で生活をするところにある。まず,実父の世話や仏壇の管理などの
理由は,いずれも固有の生活利益の実現に向けられたものであっても,普天間
飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは認めら
れない。また,実家に近い場所で生活するという理由も,前記4(1)のとお
り,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生まれ育った土地や,親族が生
活する土地で生活する傾向が強いことに照らせば,普天間飛行場が周辺に存在
。,することによって得られる利益を期待するものとは認められないそうすると
同原告は,前記ア(ア)の①住所から④住所までへの各転居の際,たとえ本件
航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しているとしても,前記4(1)
の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,
あえて本件航空機騒音による被害を容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,①住所に居住していた当時から,本件航空機騒音の状況
を認識しており,同②住所から④住所までへの各転居の際には,本件航空機騒
音の存在及びそれによる被害を認識しながら,いずれも近接している前記ア
(ア)の各住所において,転居を繰り返している上,同各転居に選択の余地が
ないとの事情もないから,本件航空機騒音による被害を容認していると主張す
るけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X122があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の各住所への転居をしたとは認められない。
(5)原告X123(原告番号123番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B32の1,2)によれば,以下の事実が認めら
れる。
(ア)原告X123は,平成4年8月15日,浦添市宮城5丁目(本件コンタ
ー外)から①宜野湾市真栄原1丁目(W75区域)に転居し,平成6年2月
1日に前記神島マンションに転居した後,平成14年2月12日,中頭郡中
城村字南上原(本件コンター外)から②宜野湾市野嵩2丁目(W80区域)
に転居し,第1事件の訴えの提起後の平成16年12月1日,②住所から③
同市野嵩1丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X123は,平成4年,就職のため,出身地の沖縄に戻ったが,
新居が見付かるまで,叔母が賃借していたマンションである前記(ア)の神
島マンションに居候した。同原告は,勤務先であるラグナガーデンホテルへ
の通勤の便が良く,また,小学・中学時代を過ごし,友人の多い地域である
真栄原地区に新居を見付けたので,前記(ア)①住所への転居をした。
同原告は,平成6年に同ホテルを退職し,平成10年,平成11年ころか
ら,政党で働くようになっていたところ,平成14年ころ,当時宜野湾市野
嵩を地盤に活動していた市議会議員の後を継ぐため,前記(ア)②住所への
転居をした。同原告は,平成16年ころ,②住所が手狭になり,自宅で会合
を開くことができるような広い場所に住みたいと考え,前記(ア)③住所へ
の転居をした。
(),(),ウ原告X123は前記アの①住所から③住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,同原告は,同②住所及び③
住所への転居の際は,本件航空機騒音により生活に支障が生ずるなどの被害
があると考えていた。
イ原告X123の転居理由は,①住所への転居は通勤の利便性や友人が多いこ
とに,②住所及び③住所への各転居の理由は市議会議員としての政治活動にあ
る。まず,通勤の利便性という理由は,固有の生活利益の実現に向けられたも
のであっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期
待するものとは認められない。また,市議会議員としての政治活動をするため
という転居理由も,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益
を期待するものとまでは認められない。そうすると,同原告は,前記(ア)の
①住所から③住所までへの各転居の際,たとえ本件航空機騒音の存在及びそれ
による被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居
住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音によ
る被害を容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在を認識しながら,通勤の便が良い
ことや友人が多いことなどの事情を優先させて①住所に転居し,また,住居が
手狭という理由で③住所に転居しているから,同各転居の際は本件航空機騒音
による被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこ
の主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X123があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の①住所及び③住所への転居をしたとは認められない。
(6)原告X130(原告番号130番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B18の1,2,原告X130)によれば,以下
の事実が認められる。
(),,()ア原告X130は昭和56年3月1日浦添市字西原本件コンター外
(),,から①宜野湾市野嵩1丁目W75区域に転居し昭和62年5月26日
①住所から②同市野嵩3丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X130は,昭和49年から,宜野湾市役所に同市職員として勤
務しているところ,昭和56年当時,当時の宜野湾市長と同原告が組合員と
なっている同市職員組合との意見が食い違っていたことなどから,同年8月
に行われる同市長選挙で,当時の同市長を落選させたいと考えた。そして,
同原告は,宜野湾市内に住所を定めれば,宜野湾市長選挙の選挙権を取得す
ることができ,また,通勤にも便利であると考えて,前記(ア)①住所への
転居をした。
その後,同原告は,住宅を新築するため,沖縄市や西原町を含めて土地を
探したものの見付からず,通勤距離が長くならないように,多少土地の値段
,,が高くても宜野湾市内の通勤が便利なところを探していたところたまたま
②住所の土地が,相続財産処分という売主側の事情により,周囲の土地より
も安く売りに出されていたため,同土地を購入し,前記(ア)②住所への転
居をした。
(ウ)原告X130は,前記(ア)の①住所及び②住所への各転居の際,本
件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生ず
るなどの被害があると考えていた。
イ原告X130の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,①住所への転居は通勤
の利便性や選挙権の取得に,②住所への転居は通勤の利便性や経済的な理由に
ある。まず,通勤の利便性の理由は,固有の生活利益の実現に向けられたもの
であっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待
するものとは認められない。また,選挙権の取得や経済的な理由についても,
普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとま
では認められない。そうすると,同原告は,同(ウ)のとおり,同(ア)の①
住所及び②住所への各転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を
認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得
ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認
していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しなが
ら,通勤の利便性や選挙権の取得,経済的事情等を優先させているから,本件
,,航空機騒音による被害を容認していると主張するけれども上記説示に照らし
被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X130があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の①住所及び②住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻である原告X129(原告番号129番)についても,原
告X130と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して
前記ア(ア)の①住所及び②住所に転居したと推認することはできない。
(7)原告X139(原告番号139番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の15)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X139は,昭和42年6月11日から,①宜野湾市普天間2丁目
(W75区域)に居住していたところ,平成元年12月2日,①住所から②
同市新城2丁目(W80区域)に転居し,平成7年12月22日,②住所か
ら③同市野嵩1丁目(W75区域)に転居し,平成10年3月24日,③住
所から④①住所に再び転居した。
(イ)原告X139は,実家である①住所に居住していたものの,家族の都
合のため,前記(ア)②住所への転居をした。同原告は,その後,結婚を機
会に,家族が増え広い部屋に引っ越す必要があったため,同③住所への転居
をした。
同原告は,その後,実家で生活するため,同④住所への転居をした。
(),(),ウ原告X139は前記アの②住所から④住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X139の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,家族の都合や結婚,実
家での生活のためにある。まず,家族の都合や結婚との理由は,いずれも固有
の生活利益の実現に向けられたものであっても,普天間飛行場が周辺に存在す
ることによって得られる利益を期待するものとは認められない。また,実家で
生活するという理由も,前記4(1)のとおり,沖縄では地縁・血縁が強く,
人々は自らが生まれ育った土地や,親族が生活する土地で生活する傾向が強い
ことに照らせば,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を
期待するものとは認められない。そうすると,同原告が,同(ウ)のとおり,
同(ア)の②住所から④住所までへの各転居の際,本件航空機騒音の存在及び
それによる被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,そ
の居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音
による被害を容認していたとまでは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しなが
ら,本件コンター内での転居を繰り返している上,各転居に選択の余地がない
との事情もないから,本件航空機騒音による被害を容認していると主張するけ
れども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X139があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の②住所から④住所までへの転居をしたとは認められない。
(8)原告X141(原告番号141番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の16)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X141は,昭和48年4月22日,本件コンター外から,①宜野
湾市新城1丁目(W80区域)に転居し,平成6年10月24日,①住所か
ら②同市普天間2丁目(W75区域)に転居し,平成8年5月23日,②住
所から③①住所に再び転居し,平成8年10月28日,同市赤道2丁目(本
件コンター外)に転居し,平成10年7月1日,同所から④同市普天間2丁
目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X141は,結婚を機会に,実家である①住所に近い場所で家賃
の安い物件を見付けたため,前記(ア)②住所への転居をした。同原告は,
,,,肉親の看護世話実家の手伝いをし又は肉親・実家の支援を受けるために
①住所と同じ実家で再び生活することとし,前記(ア)③住所への転居をし
た。同原告は,その後,本件コンター外に転居したものの,小学3年生まで
住んでいた普天間2丁目付近に戻りたいという気持ちが生じ,実家に比較的
近いことから,同④住所への転居をした。
(),(),ウ原告X141は前記アの①住所から④住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X141の④住所への転居理由は,前記ア(イ)のとおり,小学3年生
まで住んでいた普天間2丁目付近に戻りたいという気持ちが生じたことや,実
家に比較的近いことにあるところ,これらの転居理由は,前記4(1)のとお
り,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生まれ育った土地や,親族が生
活する土地で生活する傾向が強いことに照らせば,普天間飛行場が周辺に存在
。,することによって得られる利益を期待するものとは認められないそうすると
同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の①住所から④住所までへの各転
居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しているとしても,
前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみるべ
きであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認していたとは認められな
い。
,,,被告は同原告が本件コンター内で3回以上転居を繰り返しているところ
本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識していながら④住所に転居し
ている上,同転居に選択の余地がないとの事情もないから,同原告には本件航
空機騒音による被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,
被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X141があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の④住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻である原告X140(原告番号140番)についても,原
告X141と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して
前記ア(ア)の④住所に転居したと推認することはできない。
(9)原告X142(原告番号142番)
ア前記前提事実及び証拠(甲B2の5,原告X142)によれば,以下の事実
が認められる。
(ア)原告X142は,昭和58年4月3日から,①宜野湾市字我如古(W7
5区域)に居住していたところ,昭和61年4月29日,①住所から②同市
新城2丁目(W80区域)に転居し,昭和63年10月2日,②住所から同
市喜友名1丁目(本件コンター外)に転居した後,平成元年3月30日,同
所から③同市普天間1丁目(W75区域)に転居した。同原告は,平成2年
5月22日,③住所から上記喜友名1丁目に再び転居した後,平成9年5月
24日,同所から④同市普天間2丁目(W75区域)に転居し,第1事件の
訴えの提起後の平成16年1月18日,④住所から⑤同市普天間2丁目(W
75区域)に転居した。
(イ)原告X142は,宜野湾市議会議員選挙に立候補するに当たり,喜友
名地区から立候補しても当選できないと考え,また,同原告はもともと普天
間出身であったことから,普天間地区から立候補する方が当選の確率が高い
と考えて,前記(ア)④住所への転居をした。また,同原告は,④住所に白
蟻が発生し,家主から退去を求められたため,④住所と50mほど離れた場
所である前記(ア)⑤住所への転居をした。
イ原告X142の④住所への転居理由は,前記ア(イ)のとおり,市議会議員
選挙での当選確率を高めるところにある。同原告がもともと普天間地区の出身
であり,前記4(1)のとおり,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生
,,まれ育った土地や親族が生活する土地で生活する傾向が強いことに照らせば
上記の転居理由が普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を
期待するものとは認められない。また,⑤住所への転居理由についても,家主
の都合によるものであり,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られ
。,,()る利益を期待するものとは認められないそうすると同原告は前記アア
の住所④及び⑤への転居の際,たとえ本件航空機騒音の存在及びそれによる被
害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむ
を得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を
容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,①住所,②住所及び③住所における居住経験からして,
本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識していたはずであるにもかか
わらず,市議会議員選挙に当選する確率が高いという理由で④住所に転居し,
また,④住所に近い⑤住所に転居している上,同各転居に選択の余地がないと
の事情もないから,本件航空機騒音による被害を容認していると主張するけれ
ども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X142があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の④住所及び⑤住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻子である原告X143(原告番号143番)及び同X14
4(原告番号144番)についても,同X142と同様の理由により,あえて
本件航空機騒音による被害を容認して前記ア(ア)の④住所及び⑤住所に転居
したと推認することはできない。
(10)原告X146(原告番号164番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の19)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X146は,昭和54年7月23日,本件コンター外から①宜野湾
市字真志喜(W80区域)に転居し,昭和59年10月1日,①住所から②
同市字大謝名(W80区域)に転居し,平成7年7月4日,②住所から③同
市真志喜1丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X146は,結婚し,子供が生まれたところ,共稼ぎであったた
め,実家の親に子供の面倒をみてもらうために,実家である①住所に近い場
所で生活するため,前記(ア)②住所への転居をした。また,同原告は,自
家用車を所有していなかったため,勤務先に近いことや,子供たちの通学に
も便利で,また,発展している地域であることを考慮して,前記(ア)③住
所への転居をした。
(ウ)原告X146は,前記(ア)の③住所への転居の際,本件航空機騒音
があることを知っており,また,それにより生活に支障が生ずるなどの被害
があると考えていた。
イ原告X146の③住所への転居理由は,前記ア(イ)のとおり,通勤・通学
の利便性等にあるところ,これらの利便性は,固有の生活利益の実現に向けら
れたものであっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利
益を期待するものとは認められない。そうすると,同原告は,前記ア(ウ)の
とおり,同(ア)の③住所への転居の際,本件航空機騒音が本件航空機騒音の
存在及びそれによる被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照ら
せば,その居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航
空機騒音による被害を容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
たにもかかわらず,通勤・通学の利便性を優先させて③住所に転居しているか
ら,本件航空機騒音による被害を容認していると主張するけれども,上記説示
に照らし,被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X146があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の③住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の子である原告X165(原告番号165番)についても,原
告X146と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して
前記ア(ア)の③住所に転居したと推認することはできない。
(11)原告X174(原告番号174番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の23)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X174は,昭和58年4月3日,①宜野湾市字我如古(W75区
域)に転居し,昭和61年5月7日,①住所から②同市普天間1丁目(W7
5区域に転居し平成4年3月22日②住所から③同市真栄原3丁目W),,(
80区域)に転居した。
(イ)原告X174は,家族の都合により,前記(ア)の①住所から③住所
までへの転居をした。
(ウ)原告X174は,前記(ア)の①住所から③住所までへの転居の際,
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X174は,前記ア(イ)のとおり,家族の都合を理由に同(ア)の各
住所に転居しているところ,その家族の都合の具体的内容までは明らかではな
いものの,その転居理由が,普天間飛行場が周辺に存在することによって得ら
。,,れる利益を期待するものと認めるに足りる証拠はないそうすると同原告は
同(ウ)のとおり,同(ア)の各住所への転居の際,本件航空機騒音の存在及
びそれによる被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,
その居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒
音による被害を容認していたとまでは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,①住所から③住所までへ転居を繰り返している上,同各転居に選択の
余地がないとの事情がないから,本件航空機騒音による被害を容認していたと
いえるなどとして,同原告につき免責法理としての危険への接近の法理を適用
すべきであると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用
することはできない。
ウしたがって,原告X174があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の①住所から③住所までへの転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻であるX175(原告番号175番)についても,原告X
174と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して前記
ア(ア)の①住所から③住所までに転居したと推認することはできない。
(12)原告X201(原告番号201番)について
(,),ア前記前提事実及び証拠甲B44の1から3まで原告X201によれば
以下の事実が認められる。
(ア)原告X201は,昭和59年7月8日,①宜野湾市野嵩2丁目(W80
区域)に転居し,平成10年7月5日,①住所から②同市野嵩2丁目(W8
),,。0区域に転居し同年12月15日②住所から③①住所に再び転居した
(イ)原告X201は,実家に近い場所で生活するため,不動産業者を介し
て,予算を考慮し,新築の住居を購入して,前記(ア)①住所への転居をし
。,,,た同原告は①住所に居住している際妻と別居することとなったものの
できれば関係を修復したいと考えていたことから,①住所に近く,かつ,入
居可能であったことから,前記(ア)②住所への転居をした。その後,同原
告は,妻との関係が修復したことから,①住所と同じ場所で妻と同居するた
め,前記(ア)③住所への転居をした。
(ウ)原告X201は,前記(ア)の①住所への転居の際,実家に近い場所
であったものの,実家は普天間飛行場のフェンスのすぐそばにあり,①住所
は同フェンスから離れていると感じていたため,①住所にも本件航空機騒音
,,。,()があるものの実家ほどはひどくないと考えていた同原告は前記ア
の②住所及び③住所への各転居の際には,本件航空機騒音があることを知っ
ており,また,それにより生活に支障が生ずるなどの被害があると考えてい
た。
イ原告X201の各転居理由は,前記ア(イ)のとおり,①住所への転居は実
家に近い場所で生活すること,②住所及び③住所への転居は妻との不仲及びそ
の解消にある。まず,実家に近い場所で生活するという理由は,前記4(1)
のとおり,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生まれ育った土地や,親
族が生活する土地で生活する傾向が強いことに照らせば,普天間飛行場が周辺
。,に存在することによって得られる利益を期待するものとは認められないまた
②住所及び③住所への転居理由は,いずれも同原告の個人的な事情に基づくも
のであり,特に③住所への転居については,もともと夫婦で暮らしていた生活
の本拠である住居に戻るにすぎないから,普天間飛行場が周辺に存在すること
によって得られる利益を期待するものとは認められない。そうすると,同原告
は,前記ア(ア)の①住所から③住所までへの転居の際,たとえ本件航空機騒
音の存在及びそれによる被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に
照らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本
件航空機騒音による被害を容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,①住所への転居の際は,実家から800mと近いので,
本件航空機騒音の存在を認識したとみるべきである上,経済的事情や利便性を
,,優先させて①住所に転居したから本件航空機騒音による被害を容認しており
また,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しながら,②住所及び
③住所への転居を繰り返した上,同各転居に選択の余地がないとの事情もない
から,同被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告の
この主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X201があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の①住所から③住所までへの転居をしたとは認められない。
なお,同原告の妻子である原告X202(原告番号202番,同X203)
(原告番号203番)及び同X204(原告番号204番)については,前記
ア(ア)の①住所への転居においては,原告X201と同様の理由により,あ
えて本件航空機騒音による被害を容認して前記ア(ア)の①住所に転居したと
推認することはできず,また,前記前提事実7のとおり,原告X70と異なる
時期に前記ア(ア)の①住所と同一の住所に転居した際も,その転居理由が普
天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものである
ことをうかがわせる証拠はないから,あえて本件航空機騒音による被害を容認
して同住所に転居したと認めることはできない。
(13)原告X228(原告番号228番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の29)によれば,以下の事実が認められ
る。
ア原告X228は昭和50年12月21日①宜野湾市普天間2丁目W(),,(
75区域に転居し平成6年11月10日①住所から同市上原2丁目本),,(
件コンター外)に転居し,平成11年7月26日,同所から②同市新城2丁
(),,目W80区域に転居し第2事件の訴えの提起後の平成17年7月3日
②住所から③同市普天間2丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X228は,①住所にある実家に近いことや,普天間第二小学校
に通っていた子供の通学の利便性を図るため,前記(ア)②住所への転居を
した。
(ウ)原告X228は,前記(ア)の②住所への転居の際,本件航空機騒音
があることを知っており,また,それにより生活に支障が生ずるなどの被害
があると考えていた。
イ原告X228の②住所への転居理由は,前記ア(イ)のとおり,実家に近い
ことや,子供の通学に便利であることにある。まず,実家に近い場所で生活す
るという理由は,前記4(1)のとおり,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は
自らが生まれ育った土地や,親族が生活する土地で生活する傾向が強いことに
照らせば,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待す
るものとは認められない。また,通学の利便性という理由も,固有の生活利益
の実現に向けられたものであっても,普天間飛行場が周辺に存在することによ
って得られる利益を期待するものとは認められない。そうすると,同原告が,
前記ア(ウ)のとおり,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識して
いるとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始し
たものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による容認していたとは認
められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,子供の通学の利便性を優先させて②住所に転居しているから,本件航
空機騒音による被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,
被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X228があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の②住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻である原告X229(原告番号229番)についても,原
告X228と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して
前記ア(ア)の②住所に転居したと推認することはできない。
(14)原告X238(原告番号238番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B1の123,B37の1から6まで,B50の
32の1,2,原告X240)によれば,以下の事実が認められる。
(ア)原告X238は,昭和50年2月28日生まれであり,原告X240の
子である。
同原告は,昭和51年11月21日,中頭郡中城村字奥間(本件コンター
外)から①宜野湾市普天間1丁目(W80区域)に転居し,平成4年9月5
日,①住所から②同市普天間1丁目(W80区域)に転居し,同年11月1
5日,②住所から③同市普天間1丁目(W80区域)に転居し,平成7年4
月5日,③住所から東京都足立区南花畑3丁目(本件コンター外)に転居し
た。同原告は,平成8年5月8日,同所から④③住所に再び転居し,平成9
年7月7日,④住所から⑤宜野湾市嘉数4丁目(W75区域)に転居し,平
成12年12月8日,⑤住所から⑥③住所に再び転居した。
(イ)原告X238は,祖父(原告X240の父である)が所有する家が。
ある①住所に居住していた当時,①住所の家が道路拡張のため取り壊される
ことになったため,隣接する②住所に仮住まいすることとし,前記(ア)②
住所への転居をした。また,原告X238は,祖父が③住所にマンションを
新築したことから,当時17歳であったため,そのマンションで暮らした方
が安心で便利であるとの原告X240らの判断により,同③住所への転居を
した。その以降,③住所が同原告の実家となった。
同原告は,東京に出稼ぎに行った後,③住所と同じ実家で生活するため,
前記(ア)④住所への転居をした。同原告は,結婚を機会に,自己の実家の
ある③住所と妻の実家である浦添市との間にある⑤住所に新居を設けるた
め,前記(ア)⑤住所への転居をした。
同原告は,妻と離婚し,働きながら子供を育てていくためには実家の支援
が必要であったことから,③住所と同じ実家で生活するため,前記(ア)⑥
住所への転居をした。
(),(),ウ原告X238は前記アの②住所から⑥住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X238の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,③住所への転居は祖父
の新築したマンションで暮らした方が安心で便利であるとの親の判断によった
こと,⑤住所への転居は結婚を機会に夫婦双方の実家との距離関係を考慮した
こと,⑥住所への転居は働きながら子供を育てていくためには実家の支援が必
要であったことにある。これらの理由は,いずれも,固有の生活利益の実現に
向けられたものであっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得ら
れる利益を期待するものとは認められない。そうすると,同原告は,同(ウ)
のとおり,同(ア)の②住所から⑥住所までへの各転居の際,本件航空機騒音
の存在及びそれによる被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照
らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件
航空機騒音による被害を容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在又はそれによる被害を認識しなが
ら,生活の利便性などを優先させて③住所から⑥住所までに転居している上,
同転居に選択の余地がなかったとの事情もないから,本件航空機騒音による被
害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を
採用することはできない。
ウしたがって,原告X238があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の③住所から⑥住所までへの転居をしたとは認められない。
また,原告X239(原告番号239番)についても,原告X238と同様
の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して前記ア(ア)の⑥
住所に転居したと推認することはできない。
エまた,原告X240(原告番号240番)については,証拠(甲B37の1
から6まで,原告X240)によれば,原告X240は,父所有の家がある①
住所等への転居の際,本件航空機騒音があることを知っており,また,それに
より生活に支障が生ずるなどの被害があると考えていたものの,実家に近い場
所で居住し,又は子供と暮らすため,本件コンター内で転居を繰り返してきた
ことが認められるので,その転居の理由は,普天間飛行場が周辺に存在するこ
とによって得られる利益を期待するものとまでは認められないから,前記4
(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみるべきであ
って,あえて本件航空機騒音による被害を容認して転居したと認めることはで
きない。
(15)原告X242(原告番号242番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の33)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X242は,①宜野湾市普天間(W80区域)に居住していたとこ
ろ,昭和58年5月25日,①住所から中頭郡北谷町字吉原(本件コンター
外)に転居した後,昭和59年5月21日,同所から②宜野湾市野嵩3丁目
(W75区域)に転居し,平成4年2月11日,②住所から③同市野嵩4丁
目(W75区域)に転居し,同年11月15日,③住所から④同市普天間1
丁目(W80区域)に転居した。また,同原告は,第2事件の訴えの提起後
の平成17年4月8日,④住所から⑤同市普天間1丁目(W80区域)に転
居し,同年10月13日,⑤住所から中頭郡北中城村字島袋(本件コンター
外)に転居した。
(イ)原告X242は,結婚を機会に,宜野湾市普天間2丁目にある勤務先
への通勤に便利であることや,同市普天間1丁目にあった実家に近い場所で
あることから,前記(ア)②住所への転居をした。同原告は,その後,②住
所にある住居が老朽化のため取り壊すこととなったことから,普天間小学校
,,に通学する子供の通学に便利であることや実家に近い場所であることから
前記(ア)③住所への転居をし,また,子供の通学に便利であることや実家
が④住所や⑤住所にあったことから,前記(ア)④住所及び⑤住所への転居
をした。
(),(),ウ原告X242は前記アの②住所から⑤住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X242の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,②住所への転居は通勤
の利便性や実家に近い場所での生活,③住所への転居は通勤の利便性及び子供
の通学の利便性,④住所及び⑤住所への転居は子供の通学の利便性及び実家で
の生活にある。まず,通勤・通学の利便性については,固有の生活利益の実現
に向けられたものであっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得
られる利益を期待するものとは認められない。また,実家又はこれに近い場所
で生活するという理由についても,前記4(1)のとおり,沖縄では地縁・血
縁が強く,人々は自らが生まれ育った土地や,親族が生活する土地で生活する
傾向が強いことに照らせば,普天間飛行場が周辺に存在することによって得ら
。,,()れる利益を期待するものとは認められないそうすると同原告は前記アウ
のとおり,同(ア)の②住所から⑤住所までへの各転居の際,本件航空機騒音
の存在及びそれによる被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照
らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件
航空機騒音による被害を容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,通勤の利便性を優先させて②住所に転居した上,同転居に選択の余地
がないとの事情もないから,本件航空機騒音による被害を容認していると主張
,,。するけれども上記説示に照らし被告のこの主張を採用することはできない
ウしたがって,原告X242があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の②住所から⑤住所までへの転居をしたとは認められない。
また,原告X241(原告番号241番)及び同X243(原告番号243
番)について,同X242と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による
被害を容認して前記ア(ア)の②住所から④住所までに転居したと推認するこ
とはできない(なお,被告は,原告X244(原告番号244番)について。
も,同X242と同一の転居に関し,同人と同様に本件航空機騒音による被害
を容認していると主張するけれども,原告X244は,同X242と同一住所
への同一時期の転居をしていない上,④住所における出生による居住(甲A1
の146,B1の124)についても,同X242と同様の理由により,あえ
て本件航空機騒音による被害を容認して居住したと推認することはできないの
で,被告のこの主張を採用することができない。。)
(16)原告X249(原告番号249番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の35)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X249は,昭和47年7月8日生まれである。
同原告は,昭和54年5月5日,本件コンター外から①宜野湾市新城1丁
目(W80区域)に転居し,昭和61年12月15日,①住所から②同市新
城2丁目(W75区域)に転居し,平成元年8月31日,②住所から③同市
新城2丁目(W75区域)に転居し,平成2年12月4日,③住所から沖縄
市字泡瀬(本件コンター外)に転居した後,平成3年3月20日,同所から
④③住所に再び転居した。また,同原告は,平成5年6月1日,④住所から
⑤同市野嵩2丁目(W80区域)に転居し,同年12月10日,⑤住所から
⑥同市真志喜3丁目(W75区域)に転居し,平成6年3月25日,⑥住所
から⑦同市普天間1丁目(W80区域)に転居し,平成11年12月1日,
⑦住所から⑧同市普天間2丁目(W75区域)に転居した。さらに,同原告
は,平成14年5月28日,⑧住所から⑨同市野嵩1丁目(W75区域)に
転居し,平成15年3月24日,⑨住所から⑩同市普天間1丁目(W80区
域)に転居し,第2事件の訴えの提起後の同年7月28日,⑩住所から⑪同
市普天間1丁目(W80区域)に転居し,平成16年7月20日,⑪住所か
ら⑫同市普天間2丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X249は,両親の転居に伴って,前記(ア)②住所及び③住所
への転居をした後,両親が離婚したため実父とともに暮らしていたところ,
,()。実母と一緒に生活するため③住所と同じ前記ア④住所への転居をした
同原告は,成人に達した後,今度は実父と一緒に生活するため,同⑤住所へ
の転居をし,再び実母と一緒に生活するため,同⑥住所への転居をした。同
,,,原告は結婚を機会に妻の実親が所有しているマンションに居住するため
前記(ア)⑦住所への転居をした。同原告は,実父が自宅を購入したことを
機会に,実父と同居するため同⑧住所への転居をした。同原告は,その後,
子供が生まれて手狭になり,また,実父との折り合いが一時的に悪化したた
めに,浦添市にある勤務先に通勤する利便性も考え,同⑨住所への転居をし
た。同原告は,仕事を辞めて収入が減ったため,家賃が安く,また,宜野湾
市普天間1丁目にある妻の実家に近いため,同⑩住所への転居をした後,知
人の紹介で,広くて家賃の安い部屋を借りることができたことから,同⑪住
所への転居をした。
(),(),ウ原告X249は前記アの②住所から⑪住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X249の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,④住所から⑥住所まで
の転居は親から扶養を受けるため,⑦住所及び⑧住所への転居は自己又は妻の
,,実家の援助を受けるため⑨住所への転居は子供が生まれて手狭になったため
⑩住所及び⑪住所への転居は収入が減り,また妻の実家に近い場所にあるため
にそれぞれある。これらの理由のうち,まず,④住所から⑨住所までへの転居
については,いずれも固有の生活利益の実現に向けられたものであっても,普
天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは認
められない。また,経済的に折り合いを付けながら,妻の実家に近い場所で生
活するなどという⑩住所及び⑪住所への転居理由も,前記4(1)のとおり,
沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生まれ育った土地や,親族が生活す
る土地で生活する傾向が強いことに照らせば,普天間飛行場が周辺に存在する
ことによって得られる利益を期待するものとは認められない。さらに,⑫住所
への転居についても,上記④住所から⑪住所の転居の理由に照らすと,普天間
飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものと推認する
ことはできない。そうすると,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の
②住所から⑪住所までへの各転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる
被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はや
むを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害
を容認していたとは認められない。
,,,被告は同原告が本件航空機騒音及びそれによる被害を認識していながら
経済的理由を優先させて,②住所から⑫住所までにそれぞれ転居した上,同各
転居に選択の余地がないとの事情もないから,本件航空機騒音による被害を容
認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用す
ることはできない。
ウしたがって,原告X249があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の②住所から⑫住所までへの転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻子である原告X250(原告番号250番,同X251)
(原告番号251番)及び同X252(原告番号252番)についても,原告
X249と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して前
()(()記アアの⑦住所から⑪住所までに転居した同X252による前記アア
,(,))の⑦住所にあっては出生により居住した甲A1の150B1の127
と推認することはできない。
(17)原告X253(原告番号253番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の36)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X253は,昭和52年10月20日から,①中頭郡中城村字安谷
屋(W75区域)に居住していたところ,昭和55年3月20日,①住所か
ら②宜野湾市新城2丁目(W75区域)に転居し,平成9年3月27日,②
住所から③同市野嵩2丁目(W80区域)に転居した。
(イ)原告X253は,結婚を機会に①住所に居住していたところ,夫の祖
父を介護するため,前記(ア)②住所への転居をした。
同原告は,その後,離婚を機会に,長らく空き家になっていた知人所有の
建物に管理をする代わり無償で居住させてもらえることとなったため,同③
住所への転居をした。
(ウ)原告X253は,前記(ア)の①住所への転居の際,本件航空機騒音
があることを知らなかったけれども,前記(ア)の同②住所及び③住所への
転居の際は,本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生
活に支障が生ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X253の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,①住所への転居は,結
婚に,②住所への転居は,夫の祖父の介護に,③住所への転居は,離婚にそれ
ぞれあるところ,これらの理由は,いずれも固有の生活利益の実現に向けられ
たものであっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益
。,,(),を期待するものとは認められないそうすると同原告は同ウのとおり
同(ア)の②住所及び③住所への転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれに
よる被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住
はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による
被害を容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件コンター内での転居を繰り返しているところ,本件
,,航空機騒音及びこれによる被害を認識していながら経済的理由を優先させて
③住所に転居しているから,本件航空機騒音による被害を容認していると主張
,,。するけれども上記説示に照らし被告のこの主張を採用することはできない
ウしたがって,原告X253があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の③住所への転居をしたとは認められない。
(18)原告X254(原告番号254番)について
ア前記前提事実及び証拠(枝番号を含む甲B20)によれば,以下の事実が認
められる。
(ア)原告X254は,平成7年1月8日,宜野湾市喜友名2丁目(本件コン
ター外)から①同市新城1丁目(W80区域)に転居し,同年3月12日,
①住所から②同市喜友名1丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X254は,結婚を機会に,既に夫が居住していた①住所に転居
し,その後,出産をするため,実家である宜野湾市喜友名2丁目に近く,よ
り広いアパートである②住所に転居した。
(ウ)原告X254は,前記(ア)の①住所及び②住所への転居の際,本件
航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生ずる
などの被害があると考えていた。
イ原告X254の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,①住所への転居は,結
婚を機会に夫が居住していた住居で生活するためにあり,また,②住所への転
居は,実家の援助を期待し,かつ,出産後の生活に支障が出ない広さのアパー
トに住むためにある。これらの理由は,いずれも固有の生活利益の実現に向け
られたものであっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる
利益を期待するものとは認められない。そうすると,同原告は,同(ウ)のと
おり,同(ア)の①住所及び②住所への転居の際,本件航空機騒音の存在及び
それによる被害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,そ
の居住はやむを得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音
による被害を容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,経済面を重視した事情により,①住所に転居しているから,本件航空
機騒音による被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被
告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X254があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の①住所及び②住所への転居をしたとは認められない。
(19)原告X255(原告番号255番)について
(,),ア前記前提事実及び証拠甲B38の1から3まで原告X255によれば
以下の事実が認められる。
ア原告X255は昭和63年4月22日①中頭郡北中城村字安谷屋W(),,(
75区域)から②宜野湾市字喜友名(W75区域)に転居し,同年7月18
日,②住所から③同市喜友名2丁目(W75区域)に転居し,平成2年5月
20日,③住所から④同市喜友名1丁目(W75区域)に転居した。また,
同原告は,平成4年2月16日,④住所から同市喜友名2丁目(本件コンタ
ー外に転居した後平成7年2月1日④住所から⑤同市喜友名1丁目W),,(
75区域)に転居し,平成8年5月19日,⑤住所から⑥同市喜友名1丁目
(W75区域)に転居し,平成9年12月8日,⑥住所から⑦同市喜友名1
丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X255は,家族の都合により前記(ア)②住所への転居をし,
また,同市喜友名2丁目にある実家又はこれに近い場所で生活するために同
③住所への転居をした後,夫の事業がうまくいかなかったため,平成2年5
月,少しでも家賃の安いところを求めて,同④住所への転居をした。同原告
は,その後も,できるだけ家賃の安いところを探し,同⑤住所及び⑥住所へ
の転居をした。同原告は,平成9年,夫と離婚することとなり,二人の小学
生の娘を抱えて,新たな住居を探す必要が生じたところ,喜友名地区で少し
でも安い物件を探し,知人が家主であることもあり,同住所⑦への転居をし
た。
同原告は,両親が早く亡くなり,幼い妹の近くにいたいという気持ちがあ
る上,転校したくないという子供たちの気持ちを優先して,同市喜友名地区
内で転居を繰り返した。
(),(),ウ原告X255は前記アの②住所から⑦住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X255の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,経済的事情に加えて,
幼い妹の近くに住みたいという希望や,二人の小学生の娘の転校したくないと
。,,いう気持ちへの配慮にあるということができるまず経済的事情については
同じ喜友名地区の中で特に安い物件を探していたということからすれば,普天
間飛行場が存在すること以外の理由によって家賃が安くなっていると認める余
地があるから,家賃の安い物件に転居したことが,普天間飛行場が周辺に存在
することによって得られる利益を期待するものとまでは認められない。また,
妹の近くに住みたいという希望や二人の小学生の娘の転校したくないという気
持ちへの配慮は,固有の生活利益の実現に向けられたものであっても,普天間
飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは認めら
れない。そうすると,同原告は,同(ウ)のとおり,同(ア)の②住所から⑦
住所までへの各転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識し
ているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始
したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認してい
たとは認められない。
,,,被告は同原告が本件コンター内を3回以上にわたり転居しているところ
本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識していながら,経済的理由を
優先させて④住所及び⑦住所に転居している上,同各転居に選択の余地がない
との事情もないから,本件航空機騒音による被害を容認していると主張するけ
れども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X255があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の②住所から⑦住所までへの転居をしたとは認められない。
(20)原告X257(原告番号257番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の52)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X257は,昭和61年3月31日,東京都世田谷区世田谷4丁目
(本件コンター外)から①宜野湾市新城2丁目(W75区域)に転居し,同
年6月2日,①住所から②同市新城1丁目(W75区域)に転居し,同年9
月8日,②住所から③①住所(W75区域)に再び転居し,平成8年10月
10日,③住所から④同市喜友名1丁目(W75区域)に転居し,第2事件
の訴えの提起後の平成15年5月5日,④住所から⑤同市新城2丁目(W8
0区域)に転居した。
(イ)原告X257は,①住所にある実家で生活するため,前記(ア)①住
所への転居をした。同原告は,実家に近い場所にあり,かつ,知人が所有す
るアパートの部屋を無償で借りて,一人暮らしをするため,同②住所への転
。,,,,居をしたその後同原告は実家で生活するため同③住所への転居をし
結婚を機会に,実家に近い場所にあるため,同④住所への転居をした。さら
に,同原告は,妊娠を機会に,夫の実家から支援を受けるため,夫の実家で
生活することとし,同⑤住所への転居をした。
(),(),ウ原告X257は前記アの①住所から⑤住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X257の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,①住所,③住所から⑤
住所までへの転居は自己又は夫の実家で生活することに,②住所への転居は実
家に近い場所で生活することに,⑤住所への転居は妊娠を機会に夫の実家から
の子育ての援助を受けることにそれぞれある。まず,実家又はこれに近い場所
,(),,で生活するという理由は前記41のとおり沖縄では地縁・血縁が強く
人々は自らが生まれ育った土地や,親族が生活する土地で生活する傾向が強い
ことに照らせば,いずれも普天間飛行場が周辺に存在することによって得られ
る利益を期待するものとは認められない。また,実家から子育てのために援助
を受けるという理由も,固有の生活利益の実現に向けられたものであっても,
普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは
認められない。そうすると,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の①
住所から⑤住所までへの各転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被
害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむ
を得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を
容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件コンター内を3回以上に転居しているところ,本件
航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識していながら,実家に近い場所で
あるとの理由により④住所に転居した上,当該転居に選択の余地がないとの事
,,情もないから本件航空機騒音による被害を容認していると主張するけれども
上記説示に照らし,被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X257があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の④住所への転居をしたとは認められない。
(21)原告X290(原告番号290番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の41)によれば,以下の事実が認められ
る。
ア原告X290は昭和45年1月10日から①宜野湾市野嵩2丁目W(),,(
80区域)に居住していたところ,平成6年2月14日,①住所から②同市
野嵩2丁目(W80区域)に転居し,平成7年8月12日,②住所から③同
市真志喜3丁目(W75区域)に転居し,平成12年5月17日,③住所か
ら④同市野嵩2丁目(W80区域)に転居した。
(),,,イ原告X290は結婚を機会に実家である①住所にも近いことから
前記(ア)②住所への転居をし,義兄夫婦の好意で2階を貸してもらえたこ
とから,同③住所への転居をした。そして,同原告は,実家に近い場所に,
自宅を新築して,同④住所への転居をした。
(),(),ウ原告X290は前記アの②住所から④住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X290の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,②住所への転居は,結
婚を機会に実家から独立することや実家に近い場所にあることに,③住所への
転居は,義兄夫婦から家屋2階の貸与を受けたことに,④住所への転居は,実
家に近い場所で自宅を新築したことにそれぞれある。まず,実家に近い場所で
生活するという②住所及び④住所への各転居理由は,いずれも,前記4(1)
のとおり,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生まれ育った土地や,親
族が生活する土地で生活する傾向が強いことに照らせば,普天間飛行場が周辺
。,に存在することによって得られる利益を期待するものとは認められないまた
義兄夫婦から家屋2階の貸与を受けたという③住所への転居理由についても,
血縁の強さが影響しているとうかがわれるので,普天間飛行場が周辺に存在す
ることによって得られる利益を期待するものとまでは認められない。そうする
と,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の②住所から④住所までへの
各転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しているとして
も,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始したものとみ
るべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認していたとは認めら
れない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,経済的理由を優先させて,③住所及び④住所に転居した上,同各転居
に選択の余地がないとの事情もないから,本件航空機騒音による被害を容認し
ていると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用するこ
とはできない。
ウしたがって,原告X290があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の③住所及び④住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻である原告X291(原告番号291番)についても,同
X290と同様の理由から,あえて本件航空機騒音による被害を容認して前記
ア(ア)の③住所及び④住所に転居したと推認することはできず,また,同原
告の子である原告X292(原告番号292番)及び同X293(原告番号2
93番)についても,同X290と同様の理由から,あえて本件航空機騒音に
よる被害を容認して前記ア(ア)の④住所に転居したと推認することはできな
い。
(22)原告X325(原告番号325番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B48の1から3まで)によれば,以下の事実が
認められる。
ア原告X325は昭和58年12月19日千葉県市川市八幡1丁目本(),,(
件コンター外)から①宜野湾市新城1丁目(W75区域)に転居し,昭和6
2年1月25日,①住所から②同市野嵩2丁目(W80区域)に転居し,平
成元年8月1日,②住所から③同市上原2丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X325は,結婚を機会に,夫の父親の所有するアパートである
①住所で生活するため,前記(ア)①住所への転居をし,自己の経営する薬
局の入っている建物と同一の建物の上の階にあるアパートが見付かったこと
から,通勤の利便性のために,同②住所への転居をし,また,同薬局を宜野
湾市野嵩1丁目に移転したのに伴い,そこから歩いて数分の距離にあるとの
通勤の利便性のために,同③住所への転居をした。
(ウ)原告X325は,前記(ア)の①住所への転居の際,本件航空機騒音
があることを知らなかった。また,同原告は,前記(ア)の②住所及び③住
所への転居の際は,本件航空機騒音があることを知っており,また,それに
より生活に支障が生ずるなどの被害が全くないとまでは考えていなかった。
イ原告X325の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,①住所への転居は,夫
の実家で生活すること,②住所及び③住所への転居は,通勤の利便性にそれぞ
れある。まず,実家で生活するとの理由は,前記4(1)のとおり,沖縄では
地縁・血縁が強く,人々は自らが生まれ育った土地や,親族が生活する土地で
生活する傾向が強いことに照らせば,普天間飛行場が周辺に存在することによ
って得られる利益を期待するものとは認められない。また,通勤の利便性とい
う理由も,固有の生活利益の実現に向けられたものであっても,普天間飛行場
が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは認められな
い。そうすると,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の②住所及び③
住所への各転居の際,たとえ本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識
しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開
始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認して
いたとは認められない。
,,,被告は同原告が本件コンター内を3回以上にわたり転居しているところ
本件航空機騒音の存在及びそれによる影響があることを認識していながら,通
勤の利便性を優先させて,②住所及び③住所に転居しているから,本件航空機
騒音による被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告
のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X325があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の②住所及び③住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の子である原告X326(原告番号326番)についても,原
告X325と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して
前記ア(ア)の②住所及び③住所に転居したと推認することはできない。
(23)原告X336(原告番号336番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の54)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X336は,昭和50年2月5日,宜野湾市内の本件コンター外か
ら①宜野湾市野嵩2丁目に転居した。
(イ)原告X336は,①住所に転居する以前は,①住所から約100mの
距離にあるところに居住していたところ,市道建設のため立ち退きを余儀な
くされ,①住所の借地上に家屋を新築し,前記(ア)の転居をした。
(ウ)原告X336は,前記(ア)の転居の際,本件航空機騒音があること
を知っており,また,それにより生活に支障が生ずるなどの被害があると考
えていた。
イ原告X336の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,市道建設のために転居
を余儀なくされたことにあり,市道敷設による立ち退きというやむを得ない理
由で転居を余儀なくされた同原告が自己の生活基盤となっている地域において
生活を続けることは,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利
益を期待するものとは認められない。そうすると,同原告は,同(ウ)のとお
り,同(ア)の①住所に転居する際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被
害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむ
を得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を
容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,①住所に転居しているところ,①住所を転居場所にしなければならな
いというやむを得ない事情がないから,本件航空機騒音による被害を容認して
いると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用すること
はできない。
ウしたがって,原告X336があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の①住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻である原告X337(原告番号337番)についても,原
告X336と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して
前記ア(ア)の①住所に転居したと推認することはできない。
(24)原告X338(原告番号338番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B39の1,2)によれば,以下の事実が認めら
れる。
(),,()ア原告X338は昭和57年10月8日①宜野湾市赤道赤道1丁目
(W75区域)に転居し,昭和59年5月15日,①住所から東京都新宿区
大久保2丁目(本件コンター外)に転居した後,昭和60年8月22日,同
所から②①住所に再び転居し,平成11年3月23日,②住所から③宜野湾
市野嵩3丁目(W80区域)に転居し,第2事件の訴えの提起後の平成16
年2月10日,③住所から④同市野嵩1丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X338は,②住所と同じ①住所が実家であるところ,宜野湾市
普天間2丁目にある勤務先である夜間営業の飲食店への通勤に便利であるた
め,前記(ア)③住所への転居をした。
(ウ)原告X338は,前記(ア)の③住所への転居の際,本件航空機騒音
があることを知っており,また,それにより生活に支障が生ずるなどの被害
があると考えていた。
イ原告X338の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,通勤の利便性にあると
ころ,通勤の利便性という理由は,固有の生活利益の実現に向けられたもので
あっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待す
。,,(),()るものとは認められないそうすると同原告は同ウのとおり同ア
の③住所に転居する際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識して
いるとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始し
たものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認していた
とは認められない。
,,,被告は同原告が本件コンター内を3回以上にわたり転居しているところ
本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識しながら,通勤の利便性を優
先させて,本件コンター内のより高いW値の区域にある③住所に転居した上,
同転居に選択の余地がないとの事情もないから,本件航空機騒音による被害を
容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用
することはできない。
ウしたがって,原告X338があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の③住所への転居をしたとは認められない。
(25)原告X345(原告番号345番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B40の1から3まで)によれば,以下の事実が
認められる。
(ア)原告X345は,平成9年4月30日,島尻郡座間味村字座間味(本件
コンター外)から①宜野湾市野嵩1丁目(W75区域)に転居し,平成15
年3月10日,①住所から②同市野嵩1丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X345は,宜野湾市我如古にある妻の実家にも近い場所である
ということを主な理由とし,沖縄市美里にある勤務先への通勤や普天間小学
,()。校に通う子供の通学の利便性も考慮して前記ア①住所への転居をした
また,同原告は,妻の実家に近い②住所に家や土地を購入したことから,前
記(ア)②住所への転居をした。
(ウ)原告X345は,前記(ア)の①住所及び②住所への各転居の際,本
件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生ず
るなどの被害があると考えていた。
イ原告X345の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,妻の実家に近い場所で
生活したいという希望や通勤・通学の利便性にある。まず,妻の実家に近い場
所で生活するという理由は,前記4(1)のとおり,沖縄では地縁・血縁が強
く,人々は自らが生まれ育った土地や,親族が生活する土地で生活する傾向が
強いことに照らせば,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利
益を期待するものとは認められない。また,通勤・通学の利便性という理由に
ついても,固有の生活利益の実現に向けられたものであっても,普天間飛行場
が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは認められな
い。そうすると,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の①住所及び②
住所への転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識している
としても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始したも
のとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認していたとは
認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,通勤・通学の利便性等を優先させて,①住所に転居している上,実家
の近くに居住すべき特別の理由はないから,本件航空機騒音による被害を容認
していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採用する
ことはできない。
ウしたがって,原告X345があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の①住所及び②住所への転居をしたとは認められない。
また,原告X346(原告番号346番)についても,原告X345と同様
の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して前記ア(ア)の①
住所及び②住所に転居したと推認することはできない。
(26)原告X349(原告番号349番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の47)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X349は,昭和58年1月6日,中頭郡与那城村(当時)字屋慶
名(本件コンター外)から①宜野湾市字我如古(W75区域)に転居し,昭
和59年1月6日,①住所から本件コンター外に転居した後,平成12年5
月1日,中頭郡北谷町字吉原(本件コンター外)から②宜野湾市野嵩1丁目
(),,W75区域に転居し第2事件の訴えの提起後の平成15年5月16日
②住所から③同市野嵩2丁目(W80区域)に転居し,同年9月8日,③住
所からうるま市与那城屋慶名(本件コンター外)に転居した。
(イ)原告X349は,①住所に1年間居住した後に本件コンター外に転居
したところ,その約16年後に,宜野湾市野嵩にある勤務先への通勤や子供
が通う普天間小学校,普天間中学校への通学に便利であるため,前記(ア)
②住所への転居をした。その後,同原告は,同様に子供の通学に便利である
ため,前記(ア)③住所への転居をした。
(ウ)原告X349は,前記(ア)の②住所及び③住所への各転居の際,本
件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生ず
るなどの被害があると考えていた。
イ原告X349の②住所及び③住所への転居理由は,前記ア(イ)のとおり,
いずれも,通勤又は通学の利便性にあるところ,通勤又は通学の利便性という
理由は,固有の生活利益の実現に向けられたものであっても,普天間飛行場が
周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは認められない。
そうすると,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の②住所及び③住所
への各転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識していると
しても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始したもの
とみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認していたとは認
められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,通学の利便性等を優先させて,②住所及びより騒音レベルの高い区域
,,にある③住所に転居した上同各転居に選択の余地がないとの事情もないから
本件航空機騒音による被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照
らし,被告のこの主張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X349があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の②住所及び③への転居をしたとは認められない。
また,同原告の子である原告X350(原告番号350番)について及び同
(),,X351原告番号351番についても原告X349と同様の理由により
あえて本件航空機騒音による被害を容認して前記ア(ア)の②住所及び③に転
居したと推認することはできない。
(27)原告X355(原告番号355番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の55)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X355は,①宜野湾市野嵩(野嵩2丁目(W80区域)に居住)
していたところ,昭和55年10月20日,①住所から②宜野湾市字普天間
(W75区域)に転居し,昭和58年10月17日,②住所から③①住所に
再び転居し,平成11年4月11日,③住所から④同市野嵩1丁目(W75
区域)に転居した。
(イ)原告X355は,結婚を機会に,①住所にある実家に近い場所で生活
するため,前記(ア)②住所への転居をした。同原告は,実家で生活するた
め,同③住所への転居をしたものの,実家が狭くなったことや,実家に近い
場所で生活するために,同④住所への転居をした。
(),(),ウ原告X355は前記アの②住所から④住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X355の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,実家又はこれに近い場
所で生活するためにある。実家又はこれに近い場所で生活するという理由は,
前記4(1)のとおり,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生まれ育っ
た土地や,親族が生活する土地で生活する傾向が強いことに照らせば,普天間
飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは認めら
れない。そうすると,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の②住所か
ら④住所までへの各転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認
識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず
開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認し
ていたとは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,実家の近くにあることだけの理由で,②住所及び④住所に転居してい
る上,同各転居に選択の余地がないとの事情もないから,本件航空機騒音によ
る被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主
張を採用することはできない。
ウしたがって,原告X355があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の②住所及び④住所への転居をしたとは認められない。
(28)原告X359(原告番号359番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の53)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X359は,昭和41年6月20日から,①宜野湾市字普天間2丁
目(W75区域)に居住していたところ,平成5年4月18日,①住所から
同市赤道2丁目(本件コンター外)に転居した後,平成8年12月10日,
(),,同所から②同市新城1丁目W80区域に転居し平成11年1月31日
(),,②住所から③同市新城2丁目W75区域に転居し平成17年3月6日
③住所から同市伊佐1丁目(本件コンター外)に転居した。
(イ)原告X359は,実家である①住所から転居した後,本件コンター外
で居住していたところ,子供の通学に便利であり,かつ,①住所にある実家
まで歩いていける場所として,②住所を選び,前記(ア)②住所への転居を
した。同原告は,その後,子供が成長して家が狭くなったことから,子供の
通学する普天間第二小学校の学区を変えずに広い家に引っ越す必要があった
ことや,実家に近いことから,前記(ア)③住所への転居をした。
(ウ)原告X359は,前記(ア)の②住所及び③住所への各転居の際,本
件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生ず
るなどの被害があると考えていた。
イ原告X359の②住所及び③住所への転居理由は,前記ア(イ)のとおり,
,,,。いずれも子供の通学に便利でかつ実家に近い場所で生活するためにある
まず,通学の利便性という理由は,固有の生活利益の実現に向けられたもので
あっても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待す
るものとは認められない。また,実家に近い場所で生活するという理由は,前
記4(1)のとおり,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生まれ育った
土地や,親族が生活する土地で生活する傾向が強いことに照らせば,普天間飛
行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは認められ
ない。そうすると,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の②住所及び
③住所への各転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識して
いるとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむを得ず開始し
たものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を容認していた
とは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
ながら,通学の利便性等を優先させて,②住所及び③住所に転居している上,
同各転居に選択の余地がないとの事情もないから,本件航空機騒音による被害
を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張を採
用することはできない。
ウしたがって,原告X359があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の②住所及び③住所への転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻である原告X360(原告番号360番)についても,原
告X359と同様の理由により,本件航空機騒音による被害を認識して前記ア
(ア)の②住所及び③住所に転居したと推認することはできない。
(29)原告X364(原告番号364番)について
ア前記前提事実及び証拠(甲B50の49)によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)原告X364は,平成元年12月12日,宜野湾市字長田(本件コンタ
ー外)から①同市上原(W75区域)に転居し,平成3年8月12日,①住
所から②同市野嵩2丁目(W80区域)に転居し,平成6年1月12日,②
住所から③同市野嵩1丁目(W75区域)に転居した。
(イ)原告X364は,結婚を機会に,②住所にある妻の実家に近く,同市
宜野湾1丁目にある自己の勤務先及び同市野嵩1丁目にある妻の勤務先への
通勤に便利であるため,前記(ア)①住所への転居をした。
その後,同原告は,妻の実家で生活するため,同②住所への転居をした。
同原告は,妻の実家に近く,自己及び妻の通勤にも便利であり,かつ,子
供にも自分たちが通った小学校に通わせたいという希望がかなえられる③住
所に新居を購入し,同・住所への転居をした。
(),(),ウ原告X364は前記アの①住所から③住所までへの各転居の際
本件航空機騒音があることを知っており,また,それにより生活に支障が生
ずるなどの被害があると考えていた。
イ原告X364の転居理由は,前記ア(イ)のとおり,①住所及び③住所への
転居は自己及び妻にとって通勤に便利で,かつ,妻の実家に近い場所で生活す
るなどのために,また,②住所への転居は妻の実家で生活するためにある。ま
ず,通勤の利便性という理由は,固有の生活利益の実現に向けられたものであ
っても,普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待する
ものとは認められない。また,妻の実家又はこれに近い場所で生活するという
理由は,前記4(1)のとおり,沖縄では地縁・血縁が強く,人々は自らが生
,,まれ育った土地や親族が生活する土地で生活する傾向が強いことに照らせば
普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものとは
認められない。そうすると,同原告は,前記ア(ウ)のとおり,同(ア)の①
住所から③住所までへの各転居の際,本件航空機騒音の存在及びそれによる被
害を認識しているとしても,前記4(1)の説示に照らせば,その居住はやむ
を得ず開始したものとみるべきであって,あえて本件航空機騒音による被害を
容認していたとは認められない。
被告は,同原告が,本件航空機騒音の存在及びそれによる被害を認識してい
たにもかかわらず,通勤の利便性等を優先させて①住所及び②住所に転居した
上,同各転居に選択の余地がないとの事情もないから,本件航空機騒音による
被害を容認していると主張するけれども,上記説示に照らし,被告のこの主張
を採用することはできない。
ウしたがって,原告X364があえて本件航空機騒音による被害を容認して前
記ア(ア)の①住所から③住所までへの転居をしたとは認められない。
また,同原告の妻である原告X365(原告番号365番)についても,原
告X364と同様の理由により,あえて本件航空機騒音による被害を容認して
前記ア(ア)の①住所から③住所までに転居したと推認することはできない。
6まとめ
以上によれば,被告が免責法理としての「危険への接近の法理」の適用があると
主張する原告らについては,前記3のとおり,本件航空機騒音の存在に認識してい
たと認められず,又は前記4及び5のとおり,あえて本件航空機騒音による被害を
容認して本件コンター内の住所に転居したとは認められないから,原告らについて
免責法理としての「危険への接近の法理」を適用して被告を免責することはないと
いうべきである。
第4被告による消滅時効の援用が権利の濫用に当たるかどうか(争点4)などについ

1消滅時効の成否
(1)消滅時効の起算日
民事特別法2条に基づく損害賠償の請求権についても,民法724条の適用が
(),,ある国家賠償法4条参照ところ第1事件原告は平成14年10月29日に
,,,第2事件原告は平成15年4月14日に本件各訴えの提起をしたこと被告は
原告らに対し,同年9月25日の本件口頭弁論期日において,第1事件及び第2
事件の各訴えの提起の日からさかのぼって3年より以前の各日に発生した損害賠
償債権について,時効を援用するとの意思表示をしたことは,当裁判所に顕著で
ある。
また,原告らの損害は日々発生することは当事者間に争いがないので,本件の
損害賠償の請求権は,それぞれ発生した日から別個に消滅時効が進行すると解す
るのが相当である。
(2)「損害及び加害者を知った(民法724条前段)時期」
普天間飛行場は,前記前提事実1のとおり,昭和47年5月15日の沖縄の復
帰に伴い,アメリカ合衆国に対し,安保条約及び地位協定に基づき,米軍の使用
する施設及び区域として提供されたところ,前記第2の2のとおり,普天間飛行
場周辺地域は,その当時も,現在とあまり変わらない程度の本件航空機騒音に暴
露されていたと推認することができる。
しかし,それを超えて,前記第3の3(1)のとおり,同日において,本件航
空機騒音の存在及びそれによる被害が一般に周知されていたとは認めるに足りる
証拠はない。
もっとも,我が国とアメリカ合衆国が平成8年3月28日に平成8年規制措置
を合意したときには,遅くとも本件航空機騒音による被害が一般に周知されてい
たと認めることができる。
そうすると,原告らは,遅くとも平成8年3月28日においては損害及び加害
者を知ったと推認することができる。
したがって,昭和47年5月15日から平成8年3月28日までに生じた損害
に係る損害賠償の請求権については,翌29日から3年間行使をしないことによ
り消滅し,また,同日以降に生じた損害に係る損害賠償の請求権については,本
件コンター内に居住している日のそれぞれのその翌日から3年間行使をしないこ
とにより,本件各訴えの提起により中断されたものを除き,消滅するというべき
である。
2被告による消滅時効の援用についての権利の濫用の該当性
,。原告らは被告が時効を援用することは権利の濫用として許されない旨主張する
しかし,原告らの本件各訴えの提起が遅れたことについて被告に特段責められる
べき点があるとはうかがわれず,そのほか,被告による消滅時効の援用が権利の濫
用に当たることを基礎付ける事情があることを認めるに足りる証拠もない。
したがって,原告らのこの主張は採用することはできない。
3まとめ
以上によれば,第1事件原告らについては平成14年10月29日(第1事件の
訴えの提起の日)の前日から起算して3年前の日である平成11年10月28日ま
でに生じた損害に関する損害賠償の請求権が,第2事件原告らについては平成15
年4月14日(第2事件の訴えの提起の日)の前日から起算して3年前の日である
平成12年4月13日までに生じた損害に関する損害賠償の請求権が,いずれも時
効により消滅しているといえる。
第5原告らの損害額(争点5)について
1基本となる慰謝料額
(1)慰謝料額の算定基準
前記第2の2のとおり,普天間飛行場周辺に居住する原告らが暴露している本
,,件航空機騒音の程度は本件コンターのW値に基づき認定することが相当であり
また,原告らが本件航空機騒音によって受ける生活妨害,睡眠妨害及びこれらに
伴う精神的苦痛,イライラ感や不快感という本件精神的被害並びにストレスによ
る身体的被害の発生に対する不安感等の精神的苦痛の被害も,本件コンターのW
値が高くなるに従いその程度も大きくなると認めることができるから,慰謝料額
の算定に当たっては,本件コンターのW値を基準として算定することが相当であ
る。
したがって,原告らの慰謝料は,原告らにおいて,本件コンター内のW75区
域又はW80区域のうち,居住し,又は居住していた区域及びそれぞれその期間
を考慮して算定することとする。
(2)基本となる慰謝料の額
原告らは,1日単位で慰謝料を請求しているところ,原告らの損害が日々発生
していることは当事者間に争いがないから,慰謝料の額は,1日を単位として算
定するのが相当である。
基本となる慰謝料の額については,原告らがW75区域又はW80区域に居住
することにより最低限等しく暴露する本件航空機騒音の程度,原告らが最低限等
しく受けている本件航空機騒音による被害の内容及び程度,被告が被害軽減のた
めに行っている諸施策(住宅防音工事の助成については,後記2のとおり別途考
慮する)の内容及びその現実的効果その他本件に表れた一切の事情を総合考慮。
し,本件コンターのW値ごとに分けて,W75区域については1日当たり100
円,W80区域については1日当たり200円とするのが相当である。
そして,原告らが過去の損害として賠償を求めることができる期間は,前記第
4のとおり,第1事件原告については平成11年10月29日から,第2事件原
告については平成12年4月14日から,いずれも口頭弁論終結の日である平成
20年1月31日までである。ただし,上記期間内に新たに本件コンター内の住
所に転居した原告らについては転居の日から,上記期間内に本件コンター外に転
居した原告らについてはその転居の前日まで,上記期間内に死亡した被承継人に
ついてはその死亡日の前日までが,それぞれ損害賠償を求めることができる期間
となり,本件コンター内でW値の異なる区域に転居した原告については,転居の
前日までが従前に居住していたW値の区域に対応する上記慰謝料の額で,転居の
日から新たに居住したW値の区域に対応する上記慰謝料の額で算定することとす
る(その算定の結果は,第1事件原告については平成11年10月29日から平
成15年1月6日(第1事件の訴状送達の日)まで及び第2事件原告については
平成12年4月14日から平成15年5月6日(第2事件の訴状送達の日)まで
,「()」,に係る損害にあっては別紙5賠償額一覧表訴状送達前のとおりであり
また,第1事件原告については平成15年1月7日(第1事件の訴状送達の日の
翌日)から,第2事件原告については同年5月7日(第2事件の訴状送達の日の
翌日)から,ぞれぞれ平成20年1月31日(口頭弁論終結の日)までに係る損
害にあっては,別紙6「賠償額一覧表(訴状送達後」のとおりである。)。)
2減額事由
(1)減額法理としての「危険への接近の法理」の適用の有無
被告は,居住経過表の「危険への接近の法理類型」の「免責「Ⅱ-①「Ⅱ」」,
-②」及び「Ⅱ-③」欄に「○」印が付された原告ら108名のみならず,居住
経過表の「危険への接近の法理類型」の「減額「Ⅰ」及び「Ⅱ」欄に「○」印」
が付された原告ら合計95名について,本件航空機騒音による被害を認識し,又
は過失によって認識しないまま居住を開始したから,慰謝料額は減額されるべき
であると主張する。
前記第2の3及び4のとおり,本件航空機騒音による被害が生活妨害,睡眠妨
害及びこれらに伴う精神的苦痛,イライラ感や不快感という本件精神的被害又は
ストレスによる身体的被害の発生に対する不安感等の精神的苦痛の被害であっ
て,直接生命,身体に係わるような重大なものではなく,普天間飛行場の供用に
は公共性ないし公益上の必要性があることからすると,原告らのうち,ある者が
航空機騒音等による被害を容認までしなくとも,その被害が存在することを認識
し,又は過失により認識していなかった場合には,事情のいかんによっては,損
害の公平な分担という損害賠償法の理念から,損害賠償額を減額するのが相当と
する場合があると解する余地もある。
しかし,前記第3の4のとおり,普天間飛行場がある沖縄本島の中部地域にお
いては,航空機騒音の影響を受けずに生活することができる地域が狭い一方,沖
縄本島で居住地を選択する幅が限られている事情があるので,一般的に損害回避
の可能性が低いといえるまた居住経過表の危険への接近の法理類型の免。,「」「
責「Ⅱ-①「Ⅱ-②」及び「Ⅱ-③」欄に「○」印が付された原告ら108」」,
名の中には,前記第3の3のとおり,本件航空機騒音による被害を認識している
者がおり,また,居住経過表の「危険への接近の法理類型」の「減額「Ⅰ」及」
び「Ⅱ」欄に「○」印が付された原告ら合計95名も含め,過失によりその被害
を認識しないで居住地を定めた者がいるとしても,居住経過表の「危険への接近
の法理類型」の「免責「Ⅱ-①「Ⅱ-②」及び「Ⅱ-③」欄に「○」印が付」」,
された原告ら108名の中には,前記第3の4及び5のとおり,その転居理由が
普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待するものである
者がいるとは認められない上,居住経過表の「危険への接近の法理類型」の「減
額「Ⅰ」及び「Ⅱ」欄に「○」印が付された原告ら合計95名についても,そ」
の転居理由が普天間飛行場が周辺に存在することによって得られる利益を期待す
るものと認めるに足りる証拠がないのみならず,被告が減額法理としての「危険
への接近の法理」の適用があると主張する原告らについて,損害回避のために適
切な行動を採ることを期待することが相当な事情があるとうかがわせる証拠もな
い。一方,前記第2の5のとおり,被告の実施している周辺対策等は,住宅防音
工事において本件航空機騒音による被害の一部を軽減するものにとどまり,その
他においても本件航空機騒音による被害を直接軽減するもの又は効果が十分なも
のとはいえないものである上,前記第3の3のとおり,被告において,普天間飛
行場周辺地域のどの地域が本件コンター内にあるかを一般に周知したことをうか
がわせる証拠もない以上の諸事情にかんがみると被告が減額法理としての危。,「
険への接近の法理」の適用があると主張する原告らが,たとえ航空機騒音による
被害の存在を認識し,又は過失により認識しないまま本件コンター内に居住地を
定めたとしても,これらの原告について損害賠償額を減額することは,損害の公
平な分担という損害賠償法の理念からして公平であるとはいえない。
したがって,減額法理としての「危険への接近の法理」を適用する前提を欠く
から,被告が減額法理としての「危険への接近の法理」の適用があると主張する
原告らについて同法理を適用して慰謝料額を減額することはできないというべき
である。
(2)住宅防音工事の実施による減額
被告が各原告に対して実施した住宅防音工事の具体的内容,すなわち,住宅防
音工事を実施した住宅,工事の種別,工事の完了年月日,室数は,居住経過表の
うち「居住地における住宅防音工事実績」欄に記載したとおりであることは前記
第2の5(2)ウ(カ)の認定事実のとおりであり,また,住宅防音工事の効果
が同「居住地における住宅防音工事実績」欄の「完了年月日」の午前零時から生
ずることは当事者間に争いがない。
そして,前記第2の5(2)オ(ア)のとおり,原告らのうち,被告の助成に
より住宅防音工事の実施を受けた者は,これにより一定の防音効果の便益を受け
ているといえるから,その便益を受けた各原告について,本件航空機騒音による
被害の一部を軽減すると認めることができるので,その便益を受けた期間に生じ
た慰謝料額を減額することが相当である。
もっとも,前記第2の5(2)オのとおり,防音工事の施工されている室内で
窓を閉め切って生活する場面は生活全体からみれば一定の限度にとどまるので,
住宅防音工事の効果は本件航空機騒音による被害を根本的に解消するものという
ことはできない。また,防音工事を施工している室数が増加すれば,本件航空機
騒音による損害の軽減の程度が増加する面があるといえる一方,防音効果を得る
ために伴い,窓を閉め切って生活することによる不快感や冷房装置の稼働による
電気料金の負担といった不利益も増加するという面があるので,住宅防音工事に
よる便益が防音工事を施工している室数の増加に単純に比例するとはいえない。
以上を総合考慮すると,原告らのうち,住宅防音工事を実施した者及びその同
居者については,同「完了年月日」に記載された日から,防音工事を施工した室
数が1室のみである場合には10%,同室数が2室以上ある場合には10%に加
え2室目以降の1室ごとに更に5%ずつ(ただし,5室以上の場合は一律合計3
0%)を前記1(2)の基本となる慰謝料の額から減額して慰謝料額とするのが
相当である(その算定の結果は,別紙5「賠償額一覧表(訴状送達前」及び別)
「()」「」。)。紙6賠償額一覧表訴状送達後の各防音工事欄記載のとおりである
3弁護士費用
弁論の全趣旨によれば,原告らは,各自,本件訴訟の提起及び追行を原告ら訴訟
代理人弁護士に委任したと認められるところ,事案の難易,請求額,認容された額
その他諸般の事情を考慮すれば,原告ら各人に対する慰謝料額の10%をもって,
本件における普天間飛行場の設置,管理の瑕疵と相当因果関係にある弁護士費用と
認められる(その算定の結果は,別紙5「賠償額一覧表(訴状送達前」及び別紙)
「()」「」。)。6賠償額一覧表訴状送達後の各弁護士費用額欄記載のとおりである
第6将来の損害の賠償請求に係る訴えの適否(争点6)について
1継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権については,たとえ同一
態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても,損害賠償請求権
の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具体的に請
求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができ,かつ,そ
の場合における権利の成立要件の具備については債権者においてこれを立証すべ
く,事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生として捉
えてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものは,将来の
給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものと解するの
が相当である。そして,飛行場等において離着陸する航空機の発する騒音等により
周辺住民らが精神的又は身体的被害等を受けていることを理由とする損害賠償請求
権のうち口頭弁論終結の日の翌日以降の分については,将来それが具体的に成立し
たとされる時点の事実関係に基づきその成立の有無及び内容を判断すべく,かつ,
その成立要件の具備については請求者においてその立証の責任を負うべき性質のも
のであって,このような請求権が将来の給付の訴えを提起することのできる請求権
としての適格を有しないと解すべきである(前掲最高裁昭和56年12月16日大
法廷判決,前掲最高裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判
決,前掲最高裁昭和63年(オ)第611号平成5年2月25日第一小法廷判決,
最高裁平成18年(受)第882号同19年5月29日第三小法廷判決・裁判所時
報1436号1頁参照。)
そうすると,本件航空機騒音により精神的又は身体的被害等を受けていることを
理由とする原告らの被告に対する損害賠償請求権のうち口頭弁論終結の日の翌日以
降の分については,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権
としての適格を有しないものというべきである。
2これに対し,原告は,本件航空機騒音による被害については,口頭弁論終結時と
同一の内容,程度の状況が,口頭弁論終結後1年の間,継続する蓋然性が極めて高
く,口頭弁論終結後1年間であるので,その予測可能性が確実に高いから,一義的
に明確になっているなどと主張する。
確かに,普天間飛行場については,前記第3の1(4)の認定事実のとおり,沖
縄に関する特別行動委員会(SACO)が,平成8年12月2日,今後5年ないし
7年以内に,十分代替施設が完成し運用可能になった後,返還するなどの内容の最
終報告をして,日米安全保障協議会において,この最終報告を了承された後,現在
まで,日米政府が関係地方公共団体を加え普天間飛行場の移設に向けた所要の努力
を続けているといえるものの,口頭弁論終結の日である平成20年1月31日の翌
日から平成21年1月31日までの間に,普天間飛行場の返還がされる見込みがあ
るとはうかがわれない上,前記第2の2のとおりの本件航空機騒音の実態・推移に
加え,被告が新しく騒音コンターを作成することは予定されていない(弁論の全趣
旨)ことなどに照らすと,平成20年2月1日から平成21年1月31日までの間
に,原告らが,本件コンター内の同一の居住地で居住している限り,口頭弁論終結
の日に受けている本件航空機騒音による被害の程度と格別異ならない被害を受ける
こととなると推認することができるとする余地もある。
しかし,そもそも,本件コンター外や本件コンター内のW値の異なる区域に転居
するかどうかということは,専ら原告らの個人的な事情にかかわるから,客観的に
予想することが困難である。しかも,原告らの中には,居住経過表のとおり,本件
各訴えの提起後において,本件コンター内から本件コンター外に転出した者が63
名,本件コンター内での転居をした者が29名(そのうち,本件コンターのW値の
異なる区域へ転居した者は14名)おり,また,平成18年7月1日から平成19
年7月1日までの1年間に限ってみても,転居の事実が認められる原告が19名い
る。そのため,口頭弁論終結の日である平成20年1月31日において本件コンタ
ー内に居住している各原告は,翌2月1日から1年間までであっても,本件コンタ
ー外や本件コンター内のW値の異なる区域に転居することがあると想定することが
できるから,同期間において,本件コンター内の同一の居住地で居住し続けると推
認することはできない。
そして,原告らのW75区域又はW80区域における居住の事実は,請求原因の
一部として原告らが立証すべき事実であるところ,当該原告において立証すること
が容易である一方,被告において原告らが口頭弁論終結の日に居住していたW75
区域又はW80区域から転居したとの事実を立証すべきとすることは,口頭弁論終
結の日の翌日から1年間にわたって,被告が同各原告全員についてその転居の有無
を常に把握しなければならないことになるものの,このようなことは,本件各訴訟
における原告の合計が400名近くに上ることに照らせば,困難を伴うといえるの
みならず,個人情報の保護という観点からも不当であるといえる。そうすると,原
告らの本件コンター内における居住の事実という点だけからしても,本件各訴えの
うち,将来の損害の請求に係る部分については,損害賠償請求権の成否及びその額
をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具体的に請求権が成立したと
される時点において初めてこれを認定することができ,かつ,その場合における権
利の成立要件の具備については債権者においてこれを立証すべく,事情の変動を専
ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生として捉えてその負担を債務
者に課するのは不当であると考えられるものというべきである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
3以上によれば,原告らの本件各訴えのうち将来の損害の賠償請求に係る部分は,
権利保護の要件を欠くものであり,不適法である。
第7本件騒音測定等請求の当否(争点7)について
1原告らは,被告に対して,①人格権,②環境権若しくは③平和的生存権又は④不
法行為の法的効果から発生する妨害排除請求権・妨害予防請求権に基づき,普天間
飛行場における米軍機の離着陸等の差止めに代わる次善の策として,本件航空機騒
音を測定・記録し,本件航空機騒音が到達する地域を明確にすべきことの請求(以
下「本件騒音測定等請求」という)をすることができると主張する。。
2しかし,まず,前記第1のとおり,本件航空機騒音による被害を直接生じさせて
いるのは,被告ではなく,米軍であるから,被告が妨害状態を引き起こしていると
はいえない上,被告は,米軍の普天間飛行場における管理運営の権限を制約し,そ
の活動を制限し得るものではないので,本件航空機騒音による被害防止の措置を採
るべき法的立場にはないということができる。そうすると,被告が騒音測定等を行
い得るかどうかを問わず,被告には,本件航空機騒音による妨害を排除し,その妨
害を予防する義務はないというべきである。
したがって,①人格権,②環境権又は③平和的生存権から発生する妨害排除請求
権・妨害予防請求権に基づく本件騒音測定等請求は,これらの権利があるかどうか
を検討するまでもなく,主張自体失当であって,理由がない。
3また,④不法行為については,実定法上の根拠がある場合を除き,損害を賠償す
る責任以外の責任を負うことはないと解されるところ,原告らが不法行為の根拠と
して主張する国家賠償法1条1項及び民法719条,民事特別法1条,2条のいず
れの規定をみても,被告に損害を賠償する責任以外の責任を負わせることができる
根拠は見いだせない。
したがって,④不法行為の法的効果から発生する妨害排除請求権・妨害予防請求
権に基づく本件騒音測定等請求も,主張自体失当であって,理由がないというべき
である
4以上によれば,本件騒音測定等請求には,その余の点について判断するまでもな
く,理由がない。
第4章結論
1原告らの損害賠償請求のうち,将来の損害の賠償請求に係る訴えは,不適法であ
る。
2原告らの損害賠償請求のうち,平成20年1月31日(口頭弁論終結の日)まで
に発生した過去の損害の賠償請求については,被告に対し,民事特別法2条に基づ
き,別紙5「賠償額一覧表(訴状送達前」の「原告氏名」欄に記載した各原告に)
おいて,同各原告に対応する同「賠償額一覧表(訴状送達前」の「損害賠償額合)
計」欄に記載の各金員の損害及び同各金員に対する,第1事件原告については不法
行為の日の後である平成15年1月7日から,第2事件原告については不法行為の
日の後である同年5月7日から,いずれも支払済みまで民法所定の年5分の割合に
よる各遅延損害金並びに別紙6「賠償額一覧表(訴状送達後」の「原告氏名」欄)
,「()」に記載した各原告において同各原告に対応する同賠償額一覧表訴状送達後
の各「損害賠償月額合計」欄記載の各金員の損害及び同金員に対する同「賠償額一
覧表(訴状送達後」の同金員に対応する各「遅延損害金起算日」欄に記載した日)
(不法行為の日の後)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害
金の各支払を求める限度で理由があるけれども,その余の請求は,いずれも理由が
ない。
なお,原告らの請求のうち,過去の損害の賠償請求を認容した部分については,
仮執行の宣言を付することが相当である一方,仮執行免脱の宣言は相当でない。も
っとも,仮執行の宣言の執行開始時期については,本判決が被告に送達された日か
ら14日を経過したときと定めるのが相当である。
3原告らの損害賠償請求以外の請求である本件差止請求及び本件騒音測定等請求
は,いずれも理由がない。
那覇地方裁判所沖縄支部民事部
裁判長裁判官河合芳光
裁判官森健二
裁判官佐々木公は,転補につき署名押印することができない。
裁判長裁判官河合芳光

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