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最高裁判例


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主文
1処分行政庁が,原告に対し,平成17年3月28日付けでした平成14年
度の労働保険料の認定決定処分(第XXX−XX号)のうち,納付すべき保
険料額が474万9962円を超える部分及び追徴金を1227万2100
円とする部分を取り消す。
2処分行政庁が,原告に対し,平成17年3月28日付けでした平成15年
度の労働保険料の認定決定処分(第YYY−YY号)のうち,納付すべき保
険料額が772万9203円を超える部分及び追徴金を1588万1900
円とする部分を取り消す。
3原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
(第1事件)
処分行政庁が,原告に対し,平成17年3月28日付けでした平成14年度の
労働保険料の認定決定処分(第XXX−XX号)を取り消す。
(第2事件)
処分行政庁が,原告に対し,平成17年3月28日付けでした平成15年度の
労働保険料の認定決定処分(第YYY−YY号)を取り消す。
第2事案の概要
本件は,建売住宅の分譲等の事業を営む原告が,建築主として注文し,他の業
者に請け負わせた建売住宅の建築工事の事業について,原告は,労働保険料の納
付義務を負う事業主に当たらないとして,平成14年度及び平成15年度の当該
事業に係る労働保険料を申告しなかったところ,処分行政庁が,原告は,当該事
業について施工管理を行っており,労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以
下「徴収法」という)8条1項が事業主として取り扱うこととしている「元請。
負人」に当たるとして,平成14年度及び平成15年度の当該事業に係る保険料
を含めて原告が納付すべき保険料の額を決定するとともに,追徴金を徴収する旨
の決定をしたことから,原告が,これらの処分の取消しを求めた事案である。
1法令の定め
(1)労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という)6条は「保険関。,
係の成立及び消滅については,徴収法の定めるところによる」と定めてい。
るところ,徴収法3条は,労災保険法3条1項の適用事業の事業主について
は,その事業が開始された日に,その事業につき労災保険に係る労働保険の
保険関係が成立する旨定めている。
(2)徴収法8条1項は「厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって,
行なわれる場合には,この法律の規定の適用については,その事業を一の事
業とみなし,元請負人のみを当該事業の事業主とする」と定めており,こ。
れを受けた同法施行規則(以下「徴収規則」という)7条は,徴収法8条。
1項の厚生労働省令で定める事業は「労災保険に係る保険関係が成立して,
いる事業のうち建設の事業」とする旨定めている。
(3)徴収法19条1項は,事業主は,保険年度ごとに労働保険料の額その他
厚生労働省令で定める事項を記載した申告書を提出しなければならない旨定
めており,同条4項は,政府は,事業主が申告書を提出しないとき,又はそ
の申告書の記載に誤りがあると認めるときは,労働保険料の額を決定し,こ
れを事業主に通知する旨定めている。
(4)徴収法21条1項本文は,政府は,同法19条4項の通知を受けた事業
主が,同条5項の規定による労働保険料又はその不足額を納付しなければな
らない場合には,その納付すべき額に百分の十を乗じて得た額の追徴金を徴
収する旨定めており,同項ただし書は,事業主が天災その他やむを得ない理
由により,労働保険料又はその不足額を納付しなければならなくなった場合
は,この限りでない旨定めている。
2争いのない事実
。(1)原告は,建築工事設計施工,不動産の売買等を業とする株式会社である
(2)原告は,平成15年5月13日,処分行政庁に対し,徴収法19条1項
に基づき,平成14年度(平成14年4月1日から平成15年3月31日ま
で)の労災保険に係る確定保険料(徴収法19条1項若しくは2項の労働保
険料又は同条4項の規定により政府が決定した労働保険料をいう。徴収規則
11条3号。以下同じ)を474万9962円とする申告書を提出した。
(3)原告は,平成16年5月6日,処分行政庁に対し,徴収法19条1項に
基づき,平成15年度(平成15年4月1日から平成16年3月31日ま
で)の労災保険に係る確定保険料を772万9203円とする申告書を提出
した。
(4)処分行政庁は,上記(2)の平成14年度申告書には,原告が,平成14年
度に施工管理を実施したすべての建売住宅の建築工事に係る保険料が申告さ
れていない誤りがあるとして,平成17年3月28日,平成14年度の労働
保険料について,徴収法19条4項に基づき保険料の額を決定し(保険料額
1億2747万1912円,不足額1億2272万1950円,徴収法2)
1条1項に基づき追徴金(1227万2100円)を徴収する労働保険料の
認定決定処分(第XXX−XX号(以下「14年度本件処分」という))。
を行い,原告にこれを通知した。
上記の14年度本件処分によって不足額とされた1億2272万1950
円は,平成14年度の建売住宅事業に係る住宅の建築工事について,原告が
注文者(建築主)として原告以外の業者に請け負わせ,原告が施工管理を行
った事業に係る労働保険料の額であった。
(5)処分行政庁は,上記(3)の平成15年度申告書には,原告が,平成15年
度に施工管理を実施したすべての建売住宅の建築工事に係る保険料が申告さ
れていない誤りがあるとして,平成17年3月28日,平成15年度の労働
保険料について,徴収法19条4項に基づき保険料の額を決定し(保険料額
1億6654万8826円,不足額1億5881万9623円,徴収法2)
1条1項に基づき追徴金(1588万1900円)を徴収する労働保険料の
認定決定処分(第YYY−YY号(以下「15年度本件処分」という))。
を行い,原告にこれを通知した。
上記の15年度本件処分によって不足額とされた1億5881万9623
円は,平成15年度の建売住宅事業に係る住宅の建築工事について,原告が
注文者(建築主)として原告以外の業者に請け負わせ,原告が施工管理を行
った事業に係る労働保険料の額であった。
(6)原告は,平成17年5月26日,処分行政庁に対し,14年度本件処分
及び15年度本件処分の各取消しを求める異議申立てをした。これに対し,
処分行政庁は,同年8月22日,原告の異議申立てを棄却する決定をした。
(7)原告は,平成17年9月22日,厚生労働大臣に対し,上記(6)の決定を
不服として審査請求をしたが,厚生労働大臣は,同日から3か月を経過して
も審査請求に対する裁決を行わなかった。
(8)原告は,平成18年3月20日,14年度本件処分及び15年度本件処
分の各取消しを求めて,本件訴訟を提起した。
3争点
本件の争点は,14年度本件処分及び15年度本件処分の適法性であり,具
体的には,原告が建築主として注文した建売住宅の建築工事が,徴収法8条1
項にいう「数次の請負」によって行われる場合に該当し,原告がその「元請負
人」として保険料納付義務を負うか否か(争点1),また,14年度本件処分及
び15年度本件処分が,信義則又は平等原則に違反するか否か(争点2)である。
4争点に関する当事者の主張
(1)争点1(原告が建築主として注文した建売住宅の建築工事が,徴収法8
条1項にいう「数次の請負」によって行われる場合に該当し,原告がその
「元請負人」として保険料納付義務を負うか否か)について
(被告の主張)
徴収法8条1項,徴収規則7条が,建設の事業が数次の請負によって行わ
れる場合において,請負関係を一括して元請負人のみを事業主とする規定を
設けた趣旨は,建設の事業においては,工事を請け負った元請負業者が仕事
の全部又は一部を下請負業者に請け負わせ,元請負業者がこれらを指揮監督
し,数次の請負が有機的関連をもって行われているのが通常であり,このよ
うな場合には,資力が乏しく補償能力の十分でない下請負業者でなく元請負
業者に災害補償の責任を負わせることが保険適用の確保のために相当であり,
また,数次の請負それぞれについて保険料の納付義務者や保険料額を確定し
て保険料を徴収することが技術的に困難であって,元請負業者に一括して保
険料を負担させることにより事務処理の簡素化が図られることから,数次の
請負を一つの事業として把握して,元請負業者から労働保険料を徴収するこ
ととしたものである。
そうすると,このような趣旨に基づく徴収法8条1項の「元請負人」の意
義については,他の者から工事を請け負っているか否か等の形式面のみに着
目するのではなく,有機的関連をもって行われる一体の工事を統括して施工
管理する立場にあるか否かという実質面に着目してこれを解釈し,そのよう
な立場にあると認められる者は,たとえ法形式的には請負人ではなく注文者
であったとしても,同条項の「元請負人」に当たると解すべきである。また,
同条項にいう「数次の請負」とは,建築業者が建築主として注文者となる建
売住宅の場合でも,注文者から請け負った請負業者がさらに下請負契約をす
れば,そこに「数次の請負」が生じ,仮に注文者から請け負った者が下請け
に出さずに自ら工事を完成させたとしても,上記のとおりその注文者が「元
請負人」に当たると解される以上「数次の請負」があるといえる。,
そして,原告は,建売住宅の建築工事を多数の業者に注文して請け負わせ,
これらの工事を統括して施工管理しており,有機的関連をもって行われる一
体の工事を統括して施工管理する立場にあったから,原告は,徴収法8条1
項にいう「数次の請負」の「元請負人」に当たり,当該工事に係る事業の事
業主として保険料の納付義務を負う。
(原告の主張)
徴収法8条1項は,建設の事業が「数次の請負」によって行われる場合に,
その「元請負人」を保険料を負担する事業主とする旨定めているところ,原
告が建築主として建売住宅の建築を注文する場合には,原告は注文者であっ
て請負人ではないことは明らかであるから,原告から請け負った者が「元請
負人」になることはあっても,原告が「元請負人」になることはあり得ない。
また,原告から請け負った者は自分で仕事を完成しても構わないのであるか
ら,そこに「数次の請負」関係があるとはいえない。そうすると,被告の主
張するような解釈はその文言の解釈として不可能であり,法的安定性,予測
可能性を著しく害するものであって許されない。また,労働者を使用する事
業主にとって,労災保険は自動的強制的に加入させられ,労働保険料は,国
税徴収の例により徴収される(徴収法29条)から,租税における課税要件
明確の原則(憲法84条)と同様に,徴収法の解釈においても明確性が重視
されなければならず「注文者」も「請負人」に含まれるとする被告の解釈,
は,文言解釈の限界を大きく超えるものであって,許されるものではない。
したがって,原告が,建売住宅の建築工事の注文者であるものについても
徴収法8条1項の「元請負人」に当たるとして行われた14年度本件処分及
び15年度本件処分は,誤った判断を前提とするものであって違法である。
(2)争点2(14年度本件処分及び15年度本件処分が,信義則又は平等原
則に違反するか否か)について
(被告の主張)
厚生労働省は,従前から施工管理の実態に即して徴収法8条1項の「元請
負人」に該当するか否かを判断すべき旨の通達を発しており,また,原告の
従業員に対し,建売業者が工事の施工管理をしている場合には「元請負人」
に該当する旨教示しているから,信義則に反さず,また,他の労働局と異な
る徴収実務によって処分が行われた事実もないから,平等原則にも反しない。
(原告の主張)
原告は,労働基準監督署の労災保険担当者との間で,建売業者である原告
は,あくまで注文者であり,徴収法8条1項の「元請負人」としての責任を
負う者ではない旨確認しており,それにもかかわらず,原告が同条項の「元
請負人」に該当するものと取り扱うことは,労働基準監督署による指導に対
する原告の信頼を裏切るものであって,信義則に反し違法であり,また,処
分行政庁(東京労働局)の徴収法8条1項の解釈運用は,他の労働局の徴収
実務に反しているから,平等原則(憲法14条1項)にも反し違法である。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(原告が建築主として注文した建売住宅の建築工事が,徴収法8条
1項にいう「数次の請負」によって行われる場合に該当し,原告がその「元請
負人」として保険料納付義務を負うか否か)について
(1)徴収法8条1項の解釈について
ア徴収法8条1項は「厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって,
行なわれる場合には,この法律の規定の適用については,その事業を一の
事業とみなし,元請負人のみを当該事業の事業主とする」と定める。そ。
して,ここにいう厚生労働省令である徴収規則の7条は,徴収法8条1項
の厚生労働省令で定める事業は「労災保険に係る保険関係が成立してい,
る事業のうち建設の事業」とする旨定めている。そうすると,これらの定
めにより,建設の事業が「数次の請負」によって行われる場合には,本来,
それぞれの請負ごとに1つの事業であるにもかかわらず「数次の請負」,
を1つの事業とみなして,その「元請負人」のみが事業主として徴収法上
の義務を負うことになる。
イそこで,同条項にいう「数次の請負」及び「元請負人」の意味について
検討するに,原告は,労災保険は,労働者を使用する事業主が自動的強制
的に加入させられるものであり,労働保険料は,国税徴収の例により徴収
される(徴収法29条)のであるから,徴収法の文言の解釈については,
租税における課税要件明確の原則(憲法84条)と同様に,文言に従って
厳格に解釈されるべきであると主張する。
たしかに,国又は公共団体が,課税権に基づき,その経費に充てるため
の資金を調達する目的をもって,特別の給付に対する反対給付としてでな
く,一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は,その形
式いかんにかかわらず,憲法84条に規定する租税に当たるというべきで
あるが,労災保険に係る労働保険料は,一定の事由が生じた労働者が保険
給付を受け取ることの反対給付として徴収されるものであるから,憲法8
4条の規定が直接に適用されることはないというべきである。
しかしながら,憲法84条は,課税要件及び租税の賦課徴収の手続が法
律で明確に定められるべきことを規定するものであり,直接的には,租税
について法律による規律の在り方を定めるものであるが,同条は,国民に
対して義務を課し又は権利を制限するには法律の根拠を要するという法原
則を租税について厳格化した形で明文化したものというべきであるから,
租税以外の公課であっても,その性質に応じて,法律によって適切な規律
がされるべきものと解すべきであり,賦課徴収の強制の度合い等の点にお
いて租税に類似する性質を有するものについては,同条の趣旨が及ぶと解
すべきである(最高裁判所大法廷平成18年3月1日判決・民集60巻。
2号587頁参照)。
そして,労働保険料については,適用事業の事業主に対しては,保険関
係が法律上当然に成立することとされ,強制的に保険に加入させられるも
のであり(徴収法3条,また,その徴収は,国税徴収の例により徴収す)
るとされ,納付しないときは強制徴収されるものである(徴収法29条,
国税徴収法47条以下参照)ことに鑑みると,賦課徴収の強制の度合いに
おいては,租税に類似した性格を有しているということができる。そうす
ると,労働保険料の負担に関しては,憲法84条の趣旨が及ぶと解すべき
であり,徴収法8条1項の規定を解釈するに当たっても,租税法規の解釈
と同様に,法的安定性及び予測可能性を害しないように明確性を重視する
必要があり,原則として規定の文言に即して解釈されるべきである。
ウそこで,このような観点から,徴収法8条1項の「数次の請負」及び
「元請負人」の意義について検討する。
まず「数次の請負」についてであるが,ここにいう「請負」について,
は,民法632条以下に定める「請負」のいわゆる借用概念であり,徴収
法8条1項にいう「請負」を民法632条以下の「請負」と別異に解釈す
べきであることを窺わせる規定は,徴収法上,何ら存在しないのであって,
民法にいう「請負」と同義であると解するのが相当である。そして,その
文言からするならば「数次の請負」とは,請負契約が,元請けから下請,
け,下請けから孫請けというように,複数の段階を経て行われているもの
をいうと解するのが相当であり,また「元請負人」とは,そのような複,
数の段階を経て請負契約がされた場合における最先次の請負契約の請負人
のことをいうと解するのが相当である。
そして,徴収法8条1項及びその委任を受けた徴収規則7条の趣旨は,
本件のような建物の建築工事を含む徴収規則7条の「建設の事業」におい
ては,建築工事を請け負った元請負業者が仕事の全部又は一部を下請負業
者に請け負わせることが一般的であるという立法事実に基づき,保険料の
徴収の確保及び徴収事務の簡素化を図る目的で,複数の段階の請負それぞ
れについて各事業主から保険料を徴収するのではなく,元請負業者に一括
して保険料を負担させることにしたものであると解され,徴収法8条1項
の「数次の請負」及び「元請負人」をその文言に従って上記のような意味
であると解釈することは,このような立法趣旨に合致するものである。
さらに,証拠(甲13)によれば,厚生労働省労働基準局労働保険徴収
課編著「改訂版労働保険徴収法(平成16年3月5日発行)は,徴収」
法8条1項の解説として「数次の請負によって行なわれる場合」とは,,
「例えば,ビル建築工事のように,工作物等の完成について注文者から直
接に仕事を請負った請負人(元請負人)が,その仕事の全部又は一部をさ
らに第三者(下請負人)に請け負わせることにより,その請負関係が数段
階に及ぶ場合をいう」と説明し「元請負人のみを当該事業の事業主と。,
する」とは「…元請負人は,その請負に係る事業については,下請負を,
させた部分を含め,そのすべてについて事業主として保険料の納付等の義
務を負わなければならないという意味である」と説明していることが認。
められ,徴収法の所管庁である厚生労働省の担当部署が編著者とされる解
説書もまた,上記のような解釈に合致する説明をしているところである。
エこれに対し,被告は,徴収法8条1項にいう「元請負人」は,他の者か
ら建築工事を請け負っているという形式面のみに着目するのではなく,有
機的関連をもって行われる一体の工事を統括して施工管理する立場にある
か否かという実質面に着目してこれを解釈し,そのような立場にあると認
められる者は,たとえ法形式的には請負人ではなくても,徴収法8条1項
の「元請負人」に当たると解すべきであると主張する。
しかしながら,建売住宅の販売業者のように,自ら建築主として建物の
建築を請負業者に注文する者は,およそ民法上の請負契約関係において,
あくまで注文者であって請負人に当たらないことは明らかであり,このよ
うな請負契約において請負人の相手方である注文者を「請負人」であると
解することは,前記のように租税法規の解釈と同様に法的安定性及び予測
可能性を重視して行うべき文言の解釈としては,困難であると言わざるを
得ない。
また,被告は,同条項にいう「数次の請負」に関して,建築業者が注文
者となる場合であっても,注文者からの請負人がさらに下請負契約をすれ
ば,そこに「数次の請負」が生じる旨主張するが,そのような場合には,
数次の請負の「元請負人」は,あくまで注文者である建築業者から最初に
請け負った請負人であって,注文者が「元請負人」となるわけではないこ
とはいうまでもない。
さらに,被告は,仮に注文者から請け負った者が下請けに出さずに自ら
工事を完成させたとしても,注文者が徴収法8条1項の「元請負人」に当
たると解される以上「数次の請負」関係があるといえる旨主張するが,,
そのような場合には請負は「数次」にわたっておらず,また,前記のとお
り注文者は「元請負人」とならないから,被告のこの主張は失当であると
言わざるを得ない。
そして,被告は「元請負人」に当たるか否かは,有機的関連をもって,
行われる一体の工事を統括して施工管理する立場にあるか否かという点に
より決すべきであると主張するが,事業が有機的関連をもって行われる一
体の工事といえるか否か,あるいは,いかなる実態があれば工事を統括し
て施工管理を行う立場にあるといえるのかについては,いずれも客観的に
判断することが困難な場合が少なくないのであって,このような明確とは
言い難い基準により,当該事業についての保険料の納付義務の有無を判断
することになれば,徴収法上,保険料の申告を義務付けられ,その申告し
た保険料の額に不足があれば,追徴金を課せられることになりかねない適
用事業の事業主の立場を,著しく不安定なものにし,労働保険料の納付に
関する事業主の予測可能性を著しく損なうものであるから,実質的な見地
から見ても,このような被告の主張する解釈を採用することはできない。
オなお,たしかに,被告が主張するように,建売住宅業者の場合でも,そ
の業者から一括して保険料を徴収できるならば,保険料の徴収の確保及び
徴収事務の簡素化を図るという趣旨を実現するためには望ましいことは容
易に推察されるところであるが,徴収法の解釈としてこれを行うことは上
記のとおり困難であると言わざるを得ないのであって,仮に被告の主張す
るような趣旨を実現する必要があるというのであれば,別途立法措置を講
ずることによってその目的を達成すべきことになろう。
(2)14年度本件処分及び15年度本件処分の適法性について
ア前記争いのない事実に加えて証拠(甲18,証人A)及び弁論の全趣旨
を総合すれば,原告は,顧客から注文を受けてそれに応じた建物を建築し
て引き渡すいわゆる注文住宅事業と,原告が建築主となって注文し,請負
業者に建物を建築させてその建物を販売するいわゆる建売住宅事業を行っ
ているところ,注文住宅事業に係る建物については,顧客である建築主を
注文者,原告を請負人として請負契約を締結し,原告はさらに複数の業者
との間で下請負契約を締結して建物を完成させて顧客に引き渡しており,
他方,建売住宅事業に係る建物については,原告が注文者(建築主)とな
り,請負業者と基本契約を締結した上で,物件ごとに複数の業者との間で
個別に請負契約を締結して,完成した建物の引渡しを受けて顧客に販売し
ていることがそれぞれ認められる。
そうすると,原告は,原告が請負人となって行う注文住宅事業に係る建
物の建築工事については,徴収法8条1項にいう「数次の請負」によって
行われる場合の「元請負人」に該当し「数次の請負」全体の事業主とし,
て労働保険料を納付しなければならないことになるが,建売住宅事業に係
る建物の建築工事については,原告は請負契約の注文者であって,同条項
にいう「数次の請負」の「元請負人」には該当しないから,徴収法8条1
項の適用はなく「数次の請負」の事業主として労働保険料を納付すべき,
ことにはならないというべきことになる。
イそして,前記争いのない事実によれば,原告は,平成14年度の労働保
険料に関し,注文住宅事業に係る建物の建築工事については,自らが事業
主であるとして,労働保険料の額を474万9962円とする申告書を提
出したが,これに対し,処分行政庁が,原告の建売住宅事業に係る建物の
建築工事についても原告が事業主に当たるとして,保険料額を1億274
7万1912円と認定したものであるところ,その差額分である1億22
72万1950円は,処分行政庁が,原告の建売住宅事業に係る建物の建
築工事について原告が徴収法8条1項の「元請負人」に該当するという誤
った解釈,判断に基づいて認定したものであるから,14年度本件処分の
うち,保険料額を原告の申告額に相当する474万9962円とした部分
は適法であるが,これを超える部分(不足額である1億2272万195
0円に相当)の決定及びこれに対する追徴金(徴収法21条1項)を定め
た決定は,違法である。
また,前記争いのない事実によれば,原告は,15年度の労働保険料に
関し,注文住宅事業に係る建物の建築工事については,自らが事業主であ
るとして,労働保険料の額を772万9203円とする申告書を提出した
が,これに対し,処分行政庁が,原告の建売住宅事業に係る建物の建築工
事についても原告が事業主に当たるとして,保険料額を1億6654万8
826円と認定したものであるところ,その差額分である1億5881万
9623円は,14年度本件処分と同様に,処分行政庁が,原告の建売住
宅事業に係る建物の建築工事について原告を徴収法8条1項の「元請負
人」に該当するという誤った解釈,判断に基づいて認定したものであるか
ら,15年度本件処分のうち,保険料額を原告の申告額に相当する772
万9203円とした部分は適法であるが,これを超える部分(不足額であ
る1億5881万9623円に相当)の決定及びこれに対する追徴金(徴
収法21条1項)を定めた決定は,違法である。
2そうすると,争点2について判断するまでもなく(争点2も,上記各限度に
おいて違法であることを争うものである,14年度本件処分及び15年度。)
本件処分は,上記の各限度において違法である。
第4結論
したがって,原告の各請求は,主文掲記の限度で理由があるからいずれも認
容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担に
つき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条ただし書を適用して,主
文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官定塚誠
裁判官工藤哲郎
裁判官古田孝夫は,転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官定塚誠

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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒105-0003 東京都港区西新橋2-7-4 CJビル6F
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒105-0003 東京都港区西新橋2-7-4 CJビル6F
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒105-0003 東京都港区西新橋2-7-4 CJビル6階
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