弁護士法人ITJ法律事務所

最高裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2上尾税務署長が,平成18年3月9日付で控訴人に対してした控訴人の
(1)平成12年分の所得税の決定処分のうち総所得金額1001万5453
円として計算した額を超える部分及び無申告加算税の賦課決定処分のうちこ
れに対応する部分
(2)平成13年分の所得税の決定処分のうち総所得金額1164万9536
円として計算した額を超える部分及び無申告加算税の賦課決定処分のうちこ
れに対応する部分
(3)平成14年分の所得税の決定処分のうち総所得金額1535万0030
円として計算した額を超える部分及び無申告加算税の賦課決定処分のうちこ
れに対応する部分
(4)平成16年分の所得税の更正処分のうち総所得金額1009万4227
円及び退職所得金額554万5758円として計算した額を超える部分及び
過少申告加算税の賦課決定処分のうちこれに対応する部分
をいずれも取り消す。
第2事案の概要
1本件は,控訴人が,米国の法人が販売する投資商品を取得するため,本邦所
在のa銀行(以下「本件取扱銀行」という)から米国所在の銀行に米国ドル。
(以下「ドル」という)を送金した際,同銀行に対し,1ドル当たり1円の。
為替手数料を支払ったのに,処分行政庁である上尾税務署長が,上記手数料を
上記投資商品に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入せずに,控訴人に対
し,控訴人の平成12年分,平成13年分,平成14年分の各所得税の決定処
分及び各無申告加算税賦課決定処分をし,平成16年分の所得税の更正処分及
び過少申告加算税賦課決定処分(以下,併せて「本件各課税処分」という)。
をしたとして,本件各課税処分のうち,雑所得の金額につき上記手数料を所得
税法35条2項,37条1項の「必要経費」として算入して計算した税額を超
える部分が違法であると主張し,被控訴人に対し,本件各課税処分のうち,上
記各部分を超える部分の取消しを求めた事案である。
原判決は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が控訴をした。
2事案の概要の詳細(関係する法令等,争いのない事実等,争点及び争点に関
する当事者の主張)は,原判決を次のとおり改め,当審における控訴人の主張
として3項のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案
の概要等」2項ないし4項に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決3頁10行目の「雑所得の金額」の次に「事業所得の金額及び(
雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のう
ち第35条第3項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを
除く」を加える。。)
(2)同5頁23行目冒頭から同25行目末尾までを,次のとおり改める。
「本件の争点は,本件各課税処分において,本件投資商品を取得するため
控訴人が各年に支出した金額のうち,ドルを購入する際に支出されたTT
(「」。),SとTTMの差額に相当する部分以下本件差額相当額というが
各年に控訴人が受け取った本件投資商品から生じた本件受取利息に係る雑
所得の金額の計算上,必要経費に算入されるべきか否かという点にあり,
この点を除き,控訴人は,被控訴人主張の課税根拠及び計算関係を争って
いない」。
(3)同6頁10行目の「当たらない」から同12行目末尾までを,次のと。
おり改める。
「当たらず,本件差額相当額は,本件受取利息に係る雑所得の金額の計算上
必要経費に算入されない。
そうすると,本件各係争年分の所得額の計算における本件受取利息に係
る雑所得の金額は以下のとおりである。
ア平成12年分
本件受取利息のうち円建てコース分46万7712円及びドル建てコ
ース分2万5500ドルをTTBで換算した270万4699円の合計
317万2411円が本件受取利息に係る収入金額となり,そこから収
入を得るために要した負債の利子146万2000円,送金手数料3万
1388円を控除すると,167万9023円となる。
イ平成13年分
本件受取利息5万9500ドルをTTBで換算した719万3335
円が本件受取利息に係る収入金額となり,そこから収入を得るために要
した負債の利子225万5333円,送金手数料5万2436円を控除
すると,488万5566円となる。
ウ平成14年分
本件受取利息のうち円建てコース分63万4500円及びドル建てコ
ース分6万8000ドルをTTBで換算した844万0287円の合計
907万4787円が本件受取利息に係る収入金額となり,そこから収
入を得るために要した負債の利子222万9963円,送金手数料5万
5495円を控除すると,678万9329円となる。
エ平成16年分
本件受取利息のうち円建てコース分255万2000円及びドル建て
コース分6万8180.63ドルをTTBで換算した729万6110
円の合計984万8110円が本件受取利息に係る収入金額となり,そ
こから収入を得るために要した送金手数料9万6063円を控除する
と,975万2047円となる」。
(4)同7頁1行目末尾の「算入されるべきである」を「算入されるべきで。
あり,本件各係争年分の所得額の計算における本件受取利息に係る雑所
得の金額は,平成12年分は140万4523円〔167万9023円
−27万4500円,平成13年分は462万2216円〔488万〕
5566円−26万3350円,平成14年分は649万7219円〕
〔678万9329円−29万2110円,平成16年分は912万〕
0227円〔975万2047円−63万1820円〕となる」と改。
める。
3当審における控訴人の主張
(1)TTSとTTMの差額は金融機関の為替手数料であり,控訴人が本件投
資商品を取得するために商品代金に上乗せして支払ったものであるから,収
益を獲得するための価値犠牲分としての「費用」に相当し,所得税法35条
2項,37条1項の「必要経費」に該当することは明らかである。
(2)金融機関は,顧客から依頼された送金額に対しての為替レートを決める
ためのTTMとそれに手数料を加えたものであるTTSを別個に設定してい
るのであって,TTSを本件投資商品の取得原価(投資金額,元本)を決定
する一要素と解するのであれば,TTSをTTMと別個に設定する必要性も
なくなり,被控訴人の主張は合理性がない。そして,本件差額相当額が,本
件投資商品の取得原価の一部として資産に形を変えているとの被控訴人の主
張によれば,送金を依頼する金融機関によって,同一商品の価額が変わって
しまうことになり,販売元に無断で商品の価額を変更するという社会通念上
あり得ない行為を認めることになる。
(3)また,この手数料が必要経費に該当しないとすれば,金融機関に対して
支払った手数料はすべて取得原価を決定する要素ということになり,必要経
費として認められる余地がなくなってしまい不合理である。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。そ
の理由は原判決を次のとおり改めるほかは原判決事実及び理由欄の第,,「」「
3当裁判所の判断」1項ないし3項に記載のとおりであるから,これを引用
する。
(1)原判決7頁21行目冒頭から同8頁2行目末尾までを,次のとおり改め
る。
「このようにTTSとTTMの差額は,金融機関の手数料としての性格を
有するものの,本件差額相当額は,控訴人が各年に本件投資商品を取得す
るための外貨を購入する際に支払ったもので,本件投資商品という所得税
法上の資産を取得する際に支払った円貨による代価の一部として,資産の
取得価額に含まれるべき性質の支出といえるのであり,本件投資商品が売
却されるなどして,その交換価値が収入として認識されたときに初めて費
用として認識され得べきものであって,本件投資商品から生じる本件受取
利息という収益を獲得するために,支出された本件差額相当額の価値が犠
牲にされたものとはいえず,本件受取利息を得るのに直接要した費用に当
たらない。念のため付言するに,仮に,ある投資商品を10000ドルで
取得し,11000ドルで売却し(又は償還金として11000ドルを受
け取り,1000ドルの収入を得たとした場合,取得時と売却時のTT)
Mは変動はなく1ドル100円,TTBは99円,TTSは101円と仮
定すると,円貨での収入としては,79000円〔計算式11000×9
9−10000×101〕ということになり,TTBとTTMの差額相当
分及びTTSとTTMの差額相当分はいずれも収益から控除され,費用と
して認識されることになる。
したがって,本件受取利息に係る雑所得の金額の計算上,本件差額相当
額を必要経費に算入しないことが違法とはいえない。そして,控訴人は,
その余の被控訴人主張の課税根拠及び計算関係を争っておらず,本件各課
税処分に違法な点は認められない」。
(2)同8頁8行目の「構成するものになるとしても」から同10行目末尾ま
でを,次のとおり改める。
「構成するか否かといった本件差額相当額の支出先における課税関係が,控
訴人の所得計算において必要経費として算入されるべきかどうかの判断に
影響を与えるものではなく,この点に関する控訴人の主張は採用できない
い。また,控訴人は,当審において,TTSとTTMの差額が費用として
認識される余地がないことの不当性を縷々主張するが,本件投資商品を取
得する際に支払われたTTSとTTMの差額相当分は,本件投資商品が売
却されるなどして,その交換価値が収入として認識されたときに費用とし
て認識され得べきことは上記説示のとおりであって,控訴人の当審におけ
る主張は前提を欠く独自の主張であり採用の余地はない」。
2以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄
却する。
東京高等裁判所第5民事部
裁判長裁判官小林克已
裁判官綿引万里子
裁判官中村愼

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