弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における未決勾留日数中六〇日を原判決の本刑に算入す
る。」との部分を破棄する。
     その余の部分に対する本件各上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意について
 記録によれば、被告人は、第一審判決判示第一の強制わいせつの事実について、
起訴前である平成五年九月一二日、勾留状の執行を受け、その後第一、二審を通じ
て勾留を継続されていたものであるが、その間、第一審は、平成六年一月一三日、
本件被告事件について、被告人を懲役二年八月に処し、未決勾留日数中四〇日を右
刑に算入する旨の判決を言い渡し、これに対して被告人が同月一九日控訴を申し立
てたところ、原審は、同年五月一一日、右控訴を棄却するとともに、「当審におけ
る未決勾留日数中六〇日を原判決の本刑に算入する。」との判決を言い渡したこと
が明らかである。また、記録によれば、被告人は、平成元年一二月二七日東京地方
裁判所において、強制わいせつ未遂罪により、懲役一年二月、四年間刑の執行猶予・
保護観察付きの判決の言渡しを受け、同判決は平成二年一月一一日確定したが、本
件被告事件が第一審に係属中の平成五年一二月一日右刑の執行猶予言渡しの取消決
定があり、同決定は同月七日確定し、同日から右刑の執行が開始され、原判決の言
渡し当時はいまだ右刑の執行中であったことが認められる。
 そうすると、被告人に対する本件の原審における未決勾留の全期間が右刑の執行
と重複することが明らかであり、原判決中原審における未決勾留日数を本刑に算入
した部分は、刑法二一条の適用について、所論引用の当裁判所の判例(最高裁昭和
二九年(あ)第三八九号同三二年一二月二五日大法廷判決・刑集一一巻一四号三三
七七頁、最高裁昭和六二年(あ)第二二六号同年七月一六日第一小法廷判決・裁判
集刑事二四六号一九五頁)と相反する判断をしたものといわなければならず、論旨
は理由がある。
 なお、原判決中その余の部分に対する検察官の上告は、上告趣意として何らの主
張がなく、したがって、その理由がないことに帰する。
 弁護人井波七郎の上告趣意について
 所論は、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当たらない。
 よって、刑訴法四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条ただし書により、原
判決中「当審における未決勾留日数中六〇日を原判決の本刑に算入する。」との部
分を破棄し、原判決中その余の部分に対する各上告は、同法四一四条、三九六条に
より棄却し、当審における訴訟費用は、同法一八一条一項ただし書により被告人に
負担させないこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官平本喜禄 公判出席
  平成六年一一月二五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    中   島   敏 次 郎
            裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    河   合   伸   一

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