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令和2年11月10日宣告広島高等裁判所
令和2年(う)第91号①所得税法違反,②詐欺,③医薬品、医療機器等の品質、
有効性及び安全性の確保等に関する法律違反被告事件
原審広島地方裁判所令和元年(わ)第434号,同第548号,同第602号,
同第649号,同第725号
主文
本件控訴を棄却する。
理由
1本件控訴の趣意は,弁護人小野裕伸作成の控訴趣意書及び同補充書に記載さ
れているとおりであるから,これらを引用する。論旨は,被告人を懲役3年及び罰
金1000万円に処し,懲役刑につき執行猶予を付さなかった原判決の量刑が重過
ぎて不当であるというのである。そこで,記録を調査して検討する。
2本件は,脳神経外科等の診療所を営む被告人が,①業として医薬品を不正に
代金合計約9360万円で転売し,②その売上を収入から除外して申告することに
よって所得税合計約4481万円を脱税し,③訪問診療や注射を行った事実がない
のに,これがあるように装って診療報酬の支払いを請求して合計約925万円を詐
取したという,医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法
律違反,所得税法違反及び詐欺からなる事案である。
原判決が(量刑の理由)の項で説示する内容に誤りはない。
3⑴所論は,被告人が,医薬品の転売による売上を所得申告から除外したのは,
被告人には転売が違法との認識がなく,また,仕入れ額に満たない額での転売であ
って利益がなかったことから申告が不要であると思い込んだだけであって,脱税の
ためではなく,これら一連の犯行が計画的であるとの原判決の認定は誤りであるな
どと主張する。
しかしながら,所論が依拠する被告人の供述内容は,医薬品の業としての無許可
販売が違法であることを,医師である被告人が知らなかったなどという点で不自然
である上,当初より転売目的で仕入れた医薬品について,その仕入れ額を経費とし
て計上する一方で,1回数百万円に及ぶ売上について計上の必要がないと思ってい
たという点で不合理というほかはなく,偽名を用いていることなどに照らしても,
およそ信用しがたいものである。被告人による医薬品の転売行為が,脱税を念頭に
して行われたものであり,これら一連の犯行が計画的であるとの原判決の認定に誤
りはなく,所論は採用できない。
⑵所論は,詐欺について,①不正請求に係る患者は,患者の総数からすれば,
割合的にごくわずかであったこと,②不正請求に係る患者らのうち4名については,
いずれも,患者らが介護保険による介護サービスを受けられるようにしたり,保険
によるマッサージや鍼灸治療を受けられるようにしたりするためであったことなど
を指摘し,これらの事情を考慮すれば,被告人の刑事責任は軽減されるべきである
という趣旨の主張をする。
しかしながら,①不正請求に係る患者の割合がわずかであるとの主張は,その患
者の人数(23人)からして必ずしも割合がわずかとはいい難い上,その主張の意
味するところは,要は,その余の患者に係る余罪がないということを指摘するにと
どまるものであって,この点が量刑上,意義を有するとはいえない。②不正請求の
動機が,患者に介護サービス等を受けさせたいとの動機によるものであったとの主
張についても,正確な病状を前提にその要否が検討されるべき介護サービス等を,
不正な診断名を付けることによって受けさせること自体,本来許されないのであっ
て,上記のような動機が仮に存在していたとしても,そのことにより被告人の刑事
責任がいささかも軽減されるものではないことは明らかである。所論はいずれも採
用できない。
⑶本件において,医薬品の不正転売と脱税とが一連の計画的犯行であり,その
犯情が悪質であることは,原判決が説示するとおりである。また,本件詐欺につい
ては,その財産的被害の大きさはもとより,医師に対する信頼を逆手にとり,患者
の認知機能の低下に乗じるなどしてなされたという点でも悪質な犯行である。
こうした犯情を踏まえれば,その他の所論を十分に考慮しても,被告人を懲役3
年及び罰金1000万円に処し,執行猶予を付さなかった原判決の量刑は,その刑
期及び罰金額の点も含め,重過ぎて不当とはいえない。
論旨は理由がない。
4よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとして,主文のとお
り判決する。
令和2年11月13日
広島高等裁判所第1部
裁判長裁判官多和田隆史
裁判官水落桃子
裁判官廣瀬裕亮

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