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裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用並びに当審における補助参加の費用は控訴人の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取消す。
2 被控訴人が中労委平成二年(不再)第一号事件につき平成三年一一月六日付で
なした命令のうち主文第一項前段(初審命令を取り消した部分)を除く部分を取消
す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
本件控訴を棄却する。
第二 当事者の主張
 当事者双方の事実の主張は、次のとおり原判決に対する控訴人の不服の理由及び
これに対する被控訴人並びに被控訴人補助参加人(以下単に「補助参加人」とい
う。)の反論の要旨を摘示するほかは、原判決の事実摘示(原判決書「事実及び理
由」のうち第二、第三のとおりであるから、これを引用する。
一 控訴人の不服の理由
1 控訴人も、原判決が労働組合法七条三号に該当する場合につき一般論として説
くところには異論はない。しかしながら、本件は、併存する複数の労働組合の一方
に対して組合事務所を貸与し、他方にはこれを拒否したという事案ではない。もと
もと控訴人から組合事務所の貸与を受けていた労働組合が分裂し、その結果一人を
除いた全員が所属することとなった組合が従前貸与されていた組合事務所を使用
し、そこから除かれた一人がこれとは別に新たに組合事務所の貸与を申し入れたと
いう事案である。前者を優遇したのではないことはもとより、後者に対して控訴人
が組合事務所の貸与を拒否したからといって、複数の組合に対して差別的な取扱い
をしたことにはならないというべきである。
 控訴人が、組合事務所貸与に関する補助参加人との交渉の過程で、貸与しない理
由としてどのような説明をしたかは別として、控訴人は、貸与する必要性に乏しい
場合には、いかに控訴人の側に物的な余裕があるときであっても貸与の要求に応ず
べきではないと考えているのであって、必要性が乏しいから貸与しなかったまでの
ことである。
 そもそも労働組合に対して組合事務所の提供などの便宜供与をするかどうかは使
用者の自由な判断にまかされることであり、労働組合の要求があれば常にこれに応
じなければならないものではない。しかも、控訴人会社においては、右のとおり多
数から除かれた一人であるAが補助参加人組合に加入したほかはこれに加わる者が
ないという状態が長く続いた。労働組合の内部事情に意図的に介入することを避け
るべき使用者として、控訴人が、もっぱら員数という客観的な側面から判断し、補
助参加人の組合事務所供与の要求は、これを必要とする事情に乏しい場合に当たる
と考えたことには合理的な理由がある。
 確かに、一時的には、連帯労組及び連合産労に組合事務所を貸与した状態のもと
で補助参加人が事務所の貸与を受けられないという事態が生じたのであるが、万一
これをもって差別ということができるとしても、それを解消するためには補助参加
人の貸与の要求に応ずるほかないとするのは、あまりにも少数派組合を優遇する立
場に偏した、政策的な判断であり、承服できない。控訴人は、すでに各組合に貸与
されている組合事務所の返還を受けるために交渉を続け、一部において成果を挙げ
ていた。これもまた差別解消の一方法というべきである。その努力をもって本件係
争を念頭に置いた対策的措置であると極め付けるのは不当である。
2 平成四年一一月一八日、控訴人と連帯労組及び同組合所属の分会員らとの間に
おいて、控訴人会社に所属する連帯労組の分会員らは、和解の対象外となった一人
を除くほか全員が、平成四年一二月三一日までに控訴人会社を任意退職するとの内
容を含む訴訟上の和解が成立し、まもなく履行された。和解の対象外となった一人
も、これとは別に同年一二月二二日付で任意退職した。また、両者の交渉により、
控訴人大津工場内の連帯労組が使用中であった組合事務所については平成五年四月
二五日、栗東工場内の組合事務所については平成四年一二月二九日それぞれ退去す
るとの合意が成立し、まもなく履行された。これにより、既に連合産労から返還を
受けた分と合せ、控訴人会社の構内には、いかなる労働組合の組合事務所も存在し
ないこととなった。
 本件命令は、補助参加人と他の労働組合との間に差別があることを理由に大津工
場内に補助参加人のために組合事務所の貸与を命ずるものであるが、他の組合の事
務所が存在しなくなった以上、命令の根拠は失われたというべきである。それにも
かかわらず本件命令が維持されれば、社内の最少数組合である補助参加人のみが組
合事務所の貸与を受けるという逆の差別が生ずることになり、却って不当な結果と
なる。
二 控訴人の主張に対する被控訴人の認否並びに反論
1 控訴人の1の主張が誤りであることは、補助参加人が反論するとおりであるか
らこれを援用する。
2 控訴人の2の主張は次の二点において誤っている。
 行政処分である不当労働行為救済命令に対する取消訴訟の違法判断の基準時は、
救済命令発令時と解するのが相当である。控訴人が他の二組合に貸与していた組合
事務所が、その後控訴人に返還されるなどしたために、現在においては控訴人の構
内には労働組合の事務所が一つも存在しないということが事実であったとしても、
右の事実はいずれも救済命令発令後に起ったことであるので、救済命令並びにこれ
を維持した本件命令の当、不当には何ら影響するところがない。
 また、他の二組合が事務所を控訴人に返還したのは、事務所の貸与を受ける必要
性がなくなったとの各組合の独自の判断によるものであって、現在においても、事
務所は日常活動の拠点として必要であると主張している補助参加人組合が、その他
の二組合の意向に拘束される理由はない。
三 控訴人の主張に対する補助参加人の認否並びに反論
1 控訴人は、複数の組合に対して異なった取扱いをしたことはないと主張する
が、事実に反する。控訴人が主張する一人を除いた全員は、補助参加人を脱退した
ものであり、補助参加人自体は、その構成員の数に変動はあったものの別個の組合
になったわけではない。控訴人は、この事情を十分に承知しながら、脱退した者た
ちによって連帯労組が結成されるや、これに対しかつて補助参加人に認めていた権
利等をそのまま継承させ、さらに優遇する傍ら、補助参加人には一切の権利を認め
ないという差別を行ってきたのである。
 控訴人は、補助参加人に対して事務所を貸与できない理由についてあれこれ主張
するけれども、その経過は、先ず場所も金もないと主張し、次いで、一人組合に対
しては事務所を提供することができないと主張し、補助参加人の分会員が二人にな
るとこの点も主張しなくなったものである。結局控訴人は、事務所を貸与しないと
の結論を決めておいて、あとから様々な口実を設けていたに過ぎないのである。控
訴人が、労働組合運動の活動の領域から生ずべき組合事務所の必要性について一方
的に判断しようとするのも、不当労働行為意思の実現そのものであって、不当であ
る。
 差別解消の方法について控訴人が主張するところも、本件の経緯からすれば、組
合事務所の返還を受けたこと自体が本件係争を念頭に置いた対策的措置であること
は明白であり、なんら理由がないばかりか、結局は、複数組合併存のもとで差別取
扱の不当労働行為をしても、その紛争継続中に実力をもって差別状態を解消して行
けば、いかなる不当労働行為も許されると主張しているのと同じことであって、不
当である。
2 控訴人の2の主張は、救済命令発令後であり、かつ本件命令が発せられた後の
ことを取り上げて、本件命令の取消しの理由としようとするものであり、それ自体
で理由がない。救済命令が違法であったか否かは、命令が発せられたときの事情に
基づいて判断すべきものであり、その後の事情により命令が遡って違法であったこ
とになるものではない。
 のみならず、控訴人が主張する連帯労組の組合員の任意退職の実質は、それらの
者が、控訴人と密接な利害関係を有する小野田セメントグループの株式会社灰孝本
店と西神戸レミコン株式会社とが共同出資して設立した控訴人の運送専門の子会社
たる「株式会社バード」に全員再雇用され、組合活動も従来どおり保証されるとい
うものである。株式会社バードの従業員となった連帯労組の組合員は、その後も車
両を控訴人の大津工場内に置き、大津工場内に設置されたタイムカードにより出退
勤の管理を受け、ロッカー、休憩室、食堂も従来どおり利用し、しかも、連帯労組
がこれまで利用して来た組合事務所を連帯労組バード分会事務所として平成五年四
月二五日ころまで利用していた。その間控訴人と連帯労組との間で利用継続をめぐ
って紛争が生じた形跡はない。控訴人大津工場内の連帯労組の掲示板は、それらの
者が連帯労組バード分会用としてそのまま利用している。その後、大津市<以下略
>に株式会社バードの事務所ができるや、連帯労組はそこに組合事務所を得た。控
訴人の連帯労組に対する優遇措置は、そのまま、あるいは従来にも増して続いてい
るというべきである。
第三 証拠(省略)
       理   由
 当裁判所も、控訴人の請求は理由がなく、棄却すべきものと判断する。その理由
は、当事者双方並びに補助参加人の当審における主張に鑑み、次のとおり当裁判所
の判断を加えるほかは、原判決の理由説示(原判決書「事実及び理由」のうち「第
四 争点に対する判断」)のとおりである(なお原判決書四七頁二行目及び七行目
の「あっても」を「あれば」に改める。)から、これを引用する。
一 控訴人の不服の理由1について
 控訴人は、補助参加人と連帯労組との関係を取り上げて、本件が、併存する複数
の労働組合の一つに対して他の組合と差別扱いした場合とは異なる所以を強調す
る。しかし、複数の組合が併存するに至った以上、併存するそれぞれの組合に対す
る控訴人の態度が中立的であったか否かが問題となることには変りはなく、複数組
合が併存するに至った経緯は、控訴人の態度を判断するに当っての一つの事情に過
ぎないというべきである。しかも連帯労組の前身である運輸一般労組が成立したの
は昭和五八年一〇月のことであり、本件救済命令も原判決も、それ以降の具体的事
実を基に控訴人の補助参加人に対する態度を問題としているのであって、補助参加
人の出自ないし存続の経緯を考慮しても控訴人の態度はなお差別的意図に基づくと
推認されても止むを得ないとするものである。当裁判所の判断も同様であって、控
訴人の主張は採用することができない。
 控訴人が、組合員が一人であるような組合には組合事務所は必要ないと考えるこ
と自体は、使用者の一つの判断であるから、そのこと自体は直ちに不当労働行為と
なるものではなく、また、労働組合に対して便宜供与をするかどうかは使用者がそ
の判断で決めれば足りることも控訴人の主張するとおりである。しかしながら、問
題は、そのような判断が他の組合との関係でも公平に貫かれたかどうかということ
なのであり、原判決が認定した事実関係(当裁判所の認定も同様である。)のもと
では、当裁判所も、控訴人の態度は補助参加人をことさらに差別したと評価されて
も止むを得ないものであると考える。
二 控訴人の不服の理由2について
1 控訴人の主張は、控訴人が補助参加人の組合事務所貸与の要求に応じなかった
のは、他の組合に対するのと同じく、必要性の乏しい場合には貸与すべきでないと
の考えに基づくのであるから、なんら補助参加人を差別したことにならないし、補
助参加人と他の労働組合とに対する控訴人の扱いを仮に差別だといい得るにして
も、それを解消するためには、補助参加人にも事務所を貸与するという方法による
必要はなく、控訴人会社に存在する他の二組合から既に貸与してあった組合事務所
の返還を受けることによっても実現できるとの、不服の理由1における主張を前提
にして、その後他の二組合から完全に組合事務所の返還を受けたのは、必要性の乏
しい事務所の返還を求める控訴人の一貫した態度の現れであり、かつこれによりも
はや差別状態はなくなったというものである。
 しかし、控訴人が、必要性の乏しい場合には組合事務所の貸与を認めないという
考えにおいていずれの組合をも平等に扱っていたとは認め難いことは、原判決説示
のとおりであり、次に認定する事実もむしろこのことを裏付けるものといえる。
2 いずれも原本の存在と成立とに争いのない丙第一八号証、第一九号証、第二〇
号証の一、二、第二一号証、第二二号証、撮影者、撮影年月日、撮影場所並びに被
写体に争いのない丙第二四ないし二七号証並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の
各事実を認めることができる。
イ 平成四年一一月一八日に、控訴人と連帯労組及び同組合所属の分会員らとの間
に、控訴人会社に所属する連帯労組の分会員ら全員が平成四年一二月三一日までに
控訴人会社を任意退職するとの内容を含む訴訟上の和解が成立し、まもなくその者
らは控訴人会社を退職した。そして、控訴人大津工場内の連帯労組の組合事務所に
ついては平成五年四月二五日に立退きが完了し、栗東工場内の連帯労組の組合事務
所も退去が済んでいる。
ロ 右和解においては、同時に、株式会社灰孝本店と西神戸レミコン株式会社とが
共同で平成五年一月一日までに両社の生コンクリート輸送を目的とする会社を設立
し、同社が控訴人を退職した連帯労組の組合員らを雇用することが約され、平成四
年一二月一八日には和解の趣旨に従って大津市<以下略>に株式会社バードが設立
された。右の株式会社灰孝本店と控訴人とは、一方の代表者が他方の取締役を兼ね
るほか複数の取締役を共通にする関係にあり、また株式会社バードの取締役の一人
に控訴人の取締役を退任した者が就任した。
ハ 控訴人と株式会社バードとの間には、製品運送契約書が取り交わされている
が、その契約によれば、株式会社バードは控訴人の指示を受けてその顧客に生コン
クリートを運送すべきことのほか、運送状況が円滑でないときには、控訴人会社が
他の運送会社をして運送の仕事に当たらせることができるだけでなく、そのために
株式会社バードの車両を利用することができるものとされている(もっとも、その
際の交通事故等による損害はすべて株式会社バードにおいて負担すべきこと、車両
の更新は原則として株式会社バードの負担においてすることとされている。)。
ニ 控訴人会社を退職した右の者らは、株式会社バードに雇用され、連帯労組バー
ド分会として活動し、新たに組合事務所を得ている。
3 右に認めた事実関係は、控訴人が、すべての組合に対する関係で、必要性の乏
しい場合には組合事務所を貸与すべきでないとの考えで一貫していたとの控訴人の
主張の真実性を疑わせるものでこそあれ、控訴人の主張を裏付けるものとするには
程遠い。なるほど、控訴人がこのようにして会社内から労働組合の事務所をすべて
放逐することに成功したといえるから、控訴人の態度は形式的には一貫されたとい
えるにしても、控訴人にとってその運輸部門は不可欠であり、連帯労組バード分会
に対して新たに組合事務所が提供されているところからすると、連帯労組との従前
の関係は実質的にはなんら変らずに続いていると見られても止むを得ないのであっ
て、連合産労からの組合事務所返還が本件救済命令を念頭に置いてなされた対策的
措置とも見られるとの原判決の判断を裏付けこそすれ、この判断を履す事由となる
ものではない。
 ところで、控訴人は、右に認めた事実と原審認定のとおりの連合産労の組合事務
所返還の経緯からすれば、控訴人会社の構内には、労働組合が使用する組合事務所
は一つもないことになるから、控訴人は、本件命令が維持されることになれば、か
えって新たな逆の差別が生ずると主張する。
 しかしながら、救済命令の取消訴訟における違法判断の基準時が救済命令のなさ
れた時と解すべきであることは、これまでの判例によって明らかにされているとこ
ろであるのみならず、控訴人の連合産労に対する組合事務所返還要求とその実現
が、むしろ本件係争を念頭に置いた措置であると見るべき余地が大きいことは原判
決説示のとおりであって、その事情が変ったことを窺わせる証拠はないから、控訴
人によって事後に発生せしめられた右の事情をもって本件命令を違法であるとする
ことはできない。
以上のとおりであるから、原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 上谷清 小川英明 曽我大三郎)

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