弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は、控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は、控訴人Aに対し金三〇万円、控
訴人Bに対し金一〇万円、控訴人Cに対し金二〇万円および右各金員に対する昭和
三一年七月一九日以降完済に至るまでの年五分の割合による金員を支払え。訴訟費
用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求
め、被控訴代理人は主文第一項と同旨の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用および認否は、左記を加えるほ
か、原判決の事実摘示と同一であるから、これをとこてに引用する。
 控訴代理人は、次のとおり主張した。
 一、 控訴人Aと訴外亡Dとが訴外Eより譲渡を受けた金六〇万円の債権は、右
両名の間で別段の取り定めをしなかつたので、民法第四二七条の規定により平等の
割合で分割されたものである。原判決の事実摘示欄第二の三項中「準共有」という
字句は、かかる趣旨のものである。
 二、 被控訴人は、訴外Fが被控訴人を代表する権限を有しないことを理由に上
記債権譲渡を承諾する権限がなかつた旨主張するが、右Fは当時被控訴人の理事で
あり、しかも新川施工区の工区長として右施工区の土地改良工事一切を指揮監督し
ていたので、控訴人AおよびDは、右Fが被控訴人を代表する権限を有するものと
信じていたのであつて、被控訴人の定款に理事長のみが代表権を有する旨の規定が
あることを知らなかつた。理事長の規定並びに理事長が被控訴人を代表する旨の定
款の定めは組織内の規定であるから、かかる制限は善意の第三者である上記控訴人
らには対抗できないものである。従つて、Fが上記債権譲渡を異議なく承諾してい
る以上、その承諾前すでに被控訴人がEに右債務の弁済をなしであつたとしでも、
これをもつて譲受人である控訴人らに対抗しえず、その支払を免れることはできな
い。このことは、民法第四六八条第一項の規定によつて明らかである。
 三、 仮りにFの承諾が有効てなかつたとしても、譲渡人であるEより被控訴人
に債権譲渡の通知をなした。右通知が確定日附のある通知でなかつたとしても、そ
の通知を受けた後の譲渡人に対する事由をもつては、控訴人らに対抗できない筋合
である。被控訴人は、Eに対する債務を昭和二九年五月二四日までに完済している
と主張するが、この五月二四日というのは上記債権譲渡の前日に該当し、この主張
は明らかに支払責任を回避せんがためのものにほかならない。このことは、昭和三
〇年四月一八日に五回にも分けて金七二九、四二〇円の支払をなしていることから
明らかであつて、この支払金はいずれも債権譲渡の通知の前の昭和二八年中の契約
に基づく支払である。従つて、譲渡の通知の前はともかくとして、その後の支払を
譲渡人であるEになしているかぎり、そのことをもつて控訴人らに対する支払義務
を免れることはできない。
 被控訴代理人は、次のとおり主張した。
 一、 控訴人らは被控訴人の定款に理事長のみが代表権を有する定めがあること
を知らなかつたから、かかる定款の規定は善意の第三者である控訴人らに対抗し得
ない旨主張する。しかし、土地改良法第一九条は「理事は定款の定めるところによ
り土地改良区を代表する」と規定し、土地改良法の法律自体の中で代表者の定めを
なさず、すべて定款の定めるところによつて代表者が定まる旨規定されている。こ
の点、民法の法人がその第五三条において「理事ハ総テ法人ノ事務ニ付キ法人ヲ代
表ス」と規定されているのと基本的に異なるのである。土地改良法は、さらにその
第三五条において民法第四四条第一項、第五〇条、第五四条、第五五条および第六
六条の規定を準用したにもかかわらず、殊きらに民法第五三条の規定を準用してい
ない。これは農業協同組合法がその第四五条において、さらにまた消費生活協同組
合法がその第四二条において、いずれも民法第五三条、第五四条の規定を準用して
いるのと対比すると、土地改良区の場合は明らかに理事全員が一般的に代表権限を
有するのではなく、定款によつて始めて代表権限を有するものが定まるのである。
従つて、土地改良区の定款によつて理事長一人を改良区の代表者と定めることは、
定款によつて代表権者を創設したことで、理事の一般的な代表権を制限したもので
はない。従つて、控訴人ら主張のごとく、被控訴人の定款によつて理事長のみが代
表権を有するものであるということを控訴人らが知らなかつたとしでも、被控訴人
はこれに対抗し得るものである。
 そうだとすると、被控訴人を代表する権限を有しないFが、たとえ上記債権譲渡
を了承したとしても、被控訴人が右譲渡を承諾したことにならないし、またその通
知を受けたことにもならない。従つて、民法第四六八条に該当する余地もない。
 二、 被控訴人が甲第一号証のごとき書面の存在すること、またその内容を知つ
たのは本件訴訟が提起されたことによるものであつたが、仮りに控訴人らの主張す
るように、昭和二九年五月二五日に被控訴人に上記債権譲渡の通知がなきれたとし
でも、被控訴人は同月二四日すでにEに対し全債務を支払つてしまつており、同月
二五日にはEは被控訴人に対し譲渡すべき債権を有していなかつたものである。な
るほど控訴人ら主張のように、乙第一八号証乃至第二二号証によれば、昭和三〇年
四月一八日被控訴人はEに全七二九、四二〇円の支払をしているようにみえるが、
現実には上記昭和二九年五月二四日に全債務を完済したところ、その後Eの工事に
未竣工があつたり、過払分があることが判明し、その操作のために書面上支払つた
ごとく作成されたもので、真実債権があつて支払われたものではないのである(乙
第二三号証、第二四号証)。従つて、譲渡の通知後に譲渡人であるEに支払つたと
いうことはない。
 三、 控訴人らは、Fが被控訴人の理事であり、新川区の施工区長であつたので
あるから、たとえ代表権がなかつたとしでも、工区内の工事施工の交渉、契約、承
認等についてFのなした行為については被控訴人が責任を負うべきであると主張す
る。しかし、たとえ理事であつても、施工区長であつても、その工事施工の交渉、
契約、承認等はいずれも改良区の代表者である理事長がなさなければならないもの
であり、実際にもそうしできたものである。単なる理事または施工区長がなしてい
たものではない。施工区自体は改良区内部においてはともかく、外部に対して独立
性を有するものではないし、もちろん人格を有するものではない。また土地改良法
には商法第二六二条に相応するような規定も存在しない。然るところ、甲第一号証
の記載は新川区の施工区長Fの名でなされたものであるから、被控訴人において責
任を負うべき筋合ではない。控訴人ら主張のごとくであるとすれば、改良区におい
て代表権者を定めた法律的意義が全くなくなつてしまうことになり、首肯すること
のできないものである。
 証拠として控訴代理人は、当審証人Fの証言および当審における控訴人Aの本人
尋問の結果を各援用した。
         理    由
 原審証人E、原審および当審における証人Fの各証言によつて真正に成立したも
のと認められる甲第一号証と右証人E、同Fの各証言、原審および当審における控
訴人Aの本人尋問の結果によれば、Eが昭和二九年五月二五日被控訴人に対する資
材納入および新川施工区の工事請負代金の内金六〇万円の債権を控訴人Aおよび亡
Dの両名に譲渡したこと、および同日被控訴人の理事で、新川施工区の区長である
F(この事実ほ、当事者間に争がない)にその旨通知したところ、Fはこれを異議
なく承諾したことが認められ、他に右認定を動かすことのできる証拠はない。
 控訴人らは、右Fが被控訴人の理事で、新川施工区の区長であつたことから当然
被控訴人を代表する権限があるものと信じて、上記債権譲渡の通知をしたのであつ
て、Fもこれを異議なく承諾した以上、善意の第三者である控訴人AおよびDは右
譲渡を被控訴人に対抗できる旨主張するのに対し、被控訴人はこれを争い、土地改
良法第三五条が準用している民法第五四条の規定は、土地改良区の代表者である理
事の代表権に制限が加えられた場合にのみ適用されるべきものであるから、本件の
ように被控訴人の代表者でない理事のFに対する債権譲渡の通知又は承諾について
はその適用がないと主張するので、次に判断する。
 <要旨>土地改良法第一九条第一項は「理事は、定款の定めるところにより、土地
改良区を代表する。」旨規定する。
 従つて、理事は当然には土地改良区を代表する権限を有せず、定款で土地改良区
を代表するものと定められた理事のみが代表権を有するものと解するを、相当とす
る。このことは、同法第三五条が民法第五三条の規定を準用していないことに徴し
ても亦、明らかである。ところで土地改良法第三五条は民法第五四条の規定を準用
しているが、右は民法第五四条の文言から明らかなように、理事の代表権に一定の
制限を加えた場合のことを指称しているのであつて、代表権を有しない理事につい
ては、同条適用の余地は全然存しないのである。
 成立に争のない乙第一号証(三条郷土地改良区定款)によれば、理事の互選によ
つて定められた理事長が被控訴人の三条郷土地改良区を代表するものと定められて
いることが認められ、Fが上記債権譲渡の当時理事長でなかつたことは、当事者間
に争がないから、Fが上記債権譲渡を承諾したとしでも被控訴人にその効力が及ふ
筋合はないものといわなければならない。控訴人らはFが被控訴人を代表する権限
を有するものと信じていたから、土地改良法第三五条、民法第五四条の規定によつ
て右譲渡を被控訴人に対抗できる旨主張するけれども、上段判示のとおり、かよう
な場合、右規定の適用をみる余地はないから、控訴人らの右主張は理由がなく、採
用することができない。
 控訴人らは、仮りに右承諾が無効だとしても昭和二九年五月二五日Eから被控訴
人に対し上記債権譲渡の通知をしたから(甲第一号証)、右通知後被控訴人がEに
なした金七二九、四二〇円の支払は控訴人らに対抗できない旨主張するが、Eが被
控訴人の代表者である理事長に右通知をした旨を認めるに足る証拠はない。前顕甲
第一号証(権利譲渡契約書)には上記債権譲渡の通知先として「三条郷土地改良区
理事長G殿」という記載があるが、上段判示のとおりEは上記債権譲渡をFに通知
したにとどまるのであるから、かかる記載があるからといつて、そのことから直ち
に被控訴人の理事長に通知したことにならないことは、いうまでもない。
 そうだとすれば、上記債権譲渡の承諾又は通知の有効なことを前提とし、被控訴
人に対し金三〇万円およびこれに対する履行期後で本件訴状送達の日の翌日である
こと本件記録上明らかな昭和三一年七月一九日以降完済に至るまての民法所定の年
五分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人Aの本訴請求、回じく金一〇万
円およびこれに対する上記昭和三一年七月一九日以降完済に至るまでの民法所定の
年五分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人Bの本訴請求、同じく金二〇
万円およびこれに対する上記昭和三一年七月一九日以降完済に至るまでの民法所定
の五年分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人Bの本訴請求は、いずれも
その余の点について判断するまでもなく理由がないから失当として棄却すべきであ
る。従つて、これと同趣旨に出た原判決は正当である。
 よつて、控訴人らの本件控訴は、上記のとおり理由がないから民事訴訟法第三八
四条第一項の規定により棄却することとし、控訴費用の負担につき同法第九五条、
第八九条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 村松俊夫 裁判官 兼築義春 裁判官 吉野衛)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛