弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
申立人の本件仮差押執行取消の申立は却下する。
訴訟費用は申立人の負担とする。
       事   実
(申立の趣旨)
第一、申立人訴訟代理人は、
「1 被申立人らが、申立外仙台工作株式会社に対する仙台地方裁判所昭和四二年
(ヨ)第二五八号有体動産仮差押決定にもとづいて昭和四二年六月二五日別紙第一
物件目録(一)同第二物件目録(一)記載の各物件に対してなした仮差押執行、
2 別紙被申立人目録記載一一三番P1を除くその余の被申立人らが、申立外仙台工
作株式会社に対する仙台地方裁判所昭和四二年(ヨ)第二六九号有体動産仮差押決
定にもとづいて、昭和四二年七月二日別紙第一物件目録(二)同第二物件目録
(二)記載の各物件に対してなした仮差押執行、
3 別紙被申立人目録記載一一三番P1を除くその余の被申立人らが、申立外仙台工
作株式会社に対する右1項および同2項記載有体動産仮差押決定にもとづいて、昭
和四二年七月四日別紙第三物件目録記載の各物件に対してなした仮差押執行、は、
いずれも仙台地方裁判所昭和四二年(ワ)第五五一号第三者異議請求事件の本案判
決に至るまでこれを取消す。」
との裁判を求めた。
第二、被申立人ら訴訟代理人は(但し、第一の2、3項の申立に対するものとして
は別紙被申立人目録記載一一三番P1はこれを除き、以下同様の趣旨で記載するもの
とする。)、「申立人の申立はいずれもこれを却下する。」との裁判を求めた。
(申立原因)
 申立人訴訟代理人は、申立原因として次のとおり述べた。
第一、被申立人らは申立外仙台工作株式会社(以下仙台工作という)に対する債権
の保全のため、同人らの仙台工作に対する仙台地方裁判所昭和四二年(ヨ)第二五
八号有体動産仮差押決定にもとづいて、昭和四二年六月二五日別紙第一物件目録
(一)同第二物件目録(一)記載の各物件(以下第一の(一)の物件、第二の
(一)の物件という)に対し仮差押執行をなした。
第二、また、別紙被申立人目録記載一一三番P1を除くその余の被申立人らは、仙台
工作に対する債権の保全のため、同人らの仙台工作に対する右裁判所昭和四二年
(ヨ)第二六九号有体動産仮差押決定にもとづき、昭和四二年七月二日別紙第一物
件目録(二)、同第二物件目録(二)記載の各物件(以下第一の(二)の物件、第
二の(二)の物件ということにする)に対し仮差押執行をなしたほか、同人らの仙
台工作に対する前項の仮差押決定および右仮差押決定にもとづき、昭和四二年七月
四日別紙第三物件目録記載の各物件(第三の物件ということにする)に対して仮差
押執行をなした。
第三、しかしながら、第一の(一)、(二)の各物件は、いずれも申立人所有のも
ので仙台工作に賃貸しているものであり、第二の(一)、(二)および第三の各物
件は、いずれも申立人が昭和四一年四月一日から翌四二年六月二〇日頃までの間に
購入(但し一部は昭和三六・七年頃購入したものもある)したもので申立人の所有
にかかるものである。
第四、そこで、申立人は、右以上の物件(以下本件差押物件ということにする)に
関し、被申立人らを相手として昭和四二年七月二五日仙台地方裁判所に対し第三者
異議請求の訴を提起したが、同訴の判決確定に至るまで右仮差押執行が継続すると
きは、右各物件が損耗又は風化してその価値が減ずるばかりでなく、特に第二の
(一)、(二)の物件は鋼材で、申立人において営む鉄骨加工に使用することがで
きず、第三の物件は、鉄骨加工の半製品にしてこれが仕上げ加工ができないためい
づれもスクラツプ化し、将来回復することのできない損害を申立人において受ける
ことが明白となつてきた。
第五、よつて申立人は、保証金提供を条件としてでも申立の趣旨のとおりの裁判を
求める。
(申立原因に対する答弁および主張)
 被申立人ら訴訟代理人は、申立原因に対する答弁および積極的主張として次のと
おり述べた。
第一、答弁
 申立原因第一、第二の事実(本件差押物件に対する被申立人らの仮差押執行の事
実)および同第三の事実(本件差押物件が申立人の所有物件であることの事実)な
らびに同第四の事実中、申立人が、被申立人らを被告として右差押物件に関し昭和
四二年七月二五日仙台地方裁判所に対し第三者異議の訴を提起したことの事実は、
いづれも認めるが、同第四のその余の事実は認めない。申立人が本件差押物件に関
し第三者異議請求権者である旨の同第五の主張は争う。
第二、主張
 ところで被申立人らは、申立原因第五の主張を争う理由として次の理由を掲げ
る。
 即ち一人会社の場合、その株式会社は社団法人たる実態を欠くに至るため、その
社員は有限責任の利益を受ける実質的根拠がないから、一人会社の単独社員たる株
主は会社債権者に対して直接責任を負担し、本件仮差押事件のような場合その株主
は、第三者異議の訴にいう第三者に該当しないというべきである(松田二郎著株式
会社法研究一九九頁以下、松田二郎、鈴木忠一共著条解株式会社法(上)一二頁以
下、松田二郎著株式会社の基礎理論一一八頁、各参照)。
 仮に一人会社の株主は即会社債権者に対して第三者たり得ないということができ
ないとしても、親子会社は、①危険負担の分散、②人事管理上の必要性、特に社外
工員の引きとめ又は子会社として社外工員供給会社を作るなどの必要性、③税金対
策、④労働対策特に従業員の労働攻勢を緩和又は組合勢力の弱体化を図る必要性、
⑤乱用目的、特に不当取引架空取引による損益の操作、財産隠匿強制執行免脱など
の関係から作られることが多いといわれ、(法務省民事局第五課長田代有嗣著親子
会社の法律一頁以下参照)、特に一人会社の場合は会社と株主は経済的には完全同
一体であるから取引に関する事項などについては少くとも両者はまさに同一体とし
ての取扱いを受けるべきものであり(田代有嗣著前掲四二頁)、したがつて、利害
関係人に対する関係で時には法規解釈上会社法人格否認論(特定の法律関係におい
て法人格の独立性に限界を設ける論)が展開されなければ会社制度を認めた法目的
ないしは衡平の原則に反する結果を是認することとなるといわなければならない。
 そこで法人格が否認される(会社法人格の独立性の限界)場合の要件を本件事件
に即してみる場合、親会社の子会社に対する支配関係、①株式所有による支配、②
役員兼任による支配、③契約による支配、例えば専属下請契約など、④実質的支配
(例えば物の賃貸借契約を通じて事実上契約条件にしたがい貸主が借用人を支配す
る)があり且つこの支配が現実的であること、また会社に法形態の乱用が存する場
合、例えば会社の利用による第三者詐害の方法として過少資本の会社を設立してこ
れに融資物の貸与などの方法をとり有限責任の原則を利用する場合又は、不当労働
行為による子会社を解散しながら(偽装解散も含む)子会社に対する債権者に対し
ては有限責任の原則および会社の独立性を利用するなどの場合、右客観的乱用の事
実のほか親会社に主観的乱用の目的が存在すること、(広島大学政経論叢第七巻三
号・四号・第八巻一号・三号蓮井良憲著「会社の独立性の限界ー一人会社を中心と
してー」、私法第二四号・加美和照著「会社法人格の限界と否認」、新労働法講座
所収・橋詰洋三著「会社解散と不当労働行為」、判例時報五五一号登載・福岡高裁
昭和四三年一〇月一六日判決、最高裁昭和四四年二月二七日第一小法廷判決、下民
集一一巻一号一九四頁・千葉地裁昭和三五年一月三〇日判決、同民集四頁・熊本地
裁八代支部昭和三五年一月一三日判決など参照)などがその要件となるということ
ができる。
 したがつて以下右要件に照らし、抗弁として、申立人たる川岸工業株式会社の実
態と仙台工作の実態およびその関係、川岸工業株式会社に吸収合併された川岸鉄工
株式会社の実態と同会社の右会社に対する相互関係、川岸工業株式会社の法人格乱
用およびその意図などを事実をもつて主張することにする。
一、申立人川岸工業株式会社(以下川岸工業ということにする)の設立から現在に
至るまでの沿革。
(一) 資本構成。
 川岸工業は、昭和二二年三月P2が大阪において創立した個人経営の川岸工業所お
よび同工業所九州支店戸畑工場(九州戸畑市所在)を母体として二代目P3が主体と
なり資本金三五万〇、〇〇〇円で大阪に設立したのに始まるが、昭和二四年一月資
本金三〇〇万〇、〇〇〇円に増資、昭和三三年二月本店を九州福岡市に移転、昭和
三五年三月資本金六〇〇万〇、〇〇〇円翌三六年一月資本金一五〇〇万〇、〇〇〇
円に各増資し、同年九月資本金一、〇〇〇万〇、〇〇〇円の川岸鉄工株式会社(本
店東京)を吸収合併したうえ同年九月東京と九州に支店を設け、同年一一月資本金
七、四〇〇万〇、〇〇〇円に増資翌三七年一月本店を東京に移転、株式を東京株式
市場第二部に上場、同年七月資本金一億三、〇〇〇万〇、〇〇〇円同年一二月一二
日資本金二億〇〇、〇〇〇、〇〇〇円昭和三九年資本金三億〇〇、〇〇〇、〇〇〇
円に各増資し、昭和三九年五月資本金四二〇万〇、〇〇〇円の株式会社川岸仙台工
場(同年六月商号変更により仙台工作株式会社となる)の全株式を取得したが、同
会社は昭和四二年七月二五日解散したため右取得株式全部を償却し、現在に至つて
いるものである。
(二) 役員構成。
 右川岸工業の主たる役員構成の変遷についてみるに、設立当初の初代代表取締役
社長は前記P3常務取締役九州支店長はP4(現代表取締役社長)がなつたが、昭和
二七年一一月からは右P4が代表取締役社長に就任し現在に至つていること、昭和三
一年からは同P4の実弟P5が平取締役として就任、昭和三二年以降昭和四二年(仙
台工作解散後)まで同人は代表専務取締役となり、加えて昭和三六年八月以降右P
4の娘婿であるP6が代表専務取締役として就任現在に至つているほか、P7は、昭和
三一年四月同会社に入社したが、資材部長を経て昭和三六年八月平取締役となり、
昭和三九年一一月から同社千葉工場次長、昭和四三年一一月からは常務取締役に就
任し現在に至つている。
(三) 物的設備である所有工場数の変遷と現状。
 川岸工業設立当初は工場は、九州戸畑工場のみであつたが、昭和三四年牧山工場
を設置、昭和三六年八月川岸鉄工株式会社の吸収合併により同社所有の仙台工場を
取得翌三七年更に千葉第一工場を増設、昭和四〇年九月三〇日(第一九期決算時)
現在における所有工場は、
① 小倉工場 (有形固定資産二億五四、八五万三、〇〇〇円)
② 牧山工場 (同資産二億二一、六二万五、〇〇〇円)
③ 大阪工場 (同資産三五、一三万一、〇〇〇円)
④ 千葉第一工場 (同資産七億二三、一五万〇、〇〇〇円)
⑤ 仙台工場 (同資産八一、二四万一、〇〇〇円)
⑥ 徳山工場 (同資産一億三〇、三〇万四、〇〇〇円)
⑦ 佐世保工場 (同資産一七、七九万六、〇〇〇円)
⑧ 東港工場 (同資産九一、八一万四、〇〇〇円)
⑨ 福山作業所 (同資産一七、七二万四、〇〇〇円)
の九工場となつたが、
 昭和四一年九月三〇日(第二〇期決算時)現在における所有工場は、右①の小倉
工場、②の牧山工場、③の大阪工場、④の千葉第一工場、⑤の仙台工場、⑥の徳山
工場の六工場となり、
 昭和四二年九月三〇日 (第二一期決算時)現在における所有工場は、
① 小倉工場 (有形固定資産二億六三、九九万〇、〇〇〇円)となり第一九・二
〇期決算時より増加)
② 牧山工場 (同資産一億八一、四七万一、〇〇〇円となり第一九・二〇期決算
時より減少)
③ 大阪工場 (同資産五八、四三万六、〇〇〇円となり第一九・二〇期決算時よ
り増加)
④ 千葉第一工場 (同資産六億三四、〇三万四、〇〇〇円となり第一九・二〇期
決算時より減少)
⑤ 千葉第二工場 (同資産二四、〇二万一、〇〇〇円、新設工場)
⑥ 仙台工場 (同資産七三、九六万七、〇〇〇円、昭和四二年七月工場閉鎖によ
り第一九・二〇期決算時より減少)
⑦ 徳山工場 (同資産一億六三、五二万五、〇〇〇円、第一九・二〇期決算時よ
り増加する)
の七工場に増減変更し、
 昭和四三年九月三〇日(第二二期決算時)現在における所有工場は、
右①の小倉工場および②の牧山工場は、昭和四二年一一月頃設立された資本金四
〇、〇〇万〇、〇〇〇円の川岸興産株式会社(全株式を川岸工業で所有)に譲渡
し、従来からの工場は右③の大阪工場(但し有形固定資産一億〇七、七三万九、〇
〇〇円に増加)④の千葉第一工場(但し同資産六億三七、六六万四、〇〇〇円に増
加)⑤の千葉第二工場(但し同資産二四、二八万四、〇〇〇円に増加)⑥の仙台工
場(但し同資産六六、七八万四、〇〇〇円に更に減少)⑦の徳山工場(但し同資産
一億六三、九七万六、〇〇〇円に増加)となつたが、更に新設工場として福山工場
(同資産八八、一八万八、〇〇〇円)が加わつたため
合計六工場に更に増減変更となつている。
(四) 関連会社数とこれに対する株式所有率役員兼任数ならびに取引関係。
1 昭和四〇年九月三〇日 (第一九期決算時)現在における関連会社数とこれに
対する株式所有率および役員兼任数は、
① 小倉工作株式会社 (資本金九、〇〇万〇、〇〇〇円、株式所有率九五パーセ
ント役員三名)
② 牧山工作株式会社 (資本金五〇、〇〇万〇、〇〇〇円、株式所有率九〇パー
セント役員二名)
③ 仙台工作株式会社 (資本金四、二〇万〇、〇〇〇円、株式所有率一〇〇パー
セント、役員二名)
④ 千葉工作株式会社 (資本金二〇、〇〇万〇、〇〇〇円、株式所有率四八パー
セント、役員三名)
⑤ 千葉工事株式会社 (資本金二、〇〇万〇、〇〇〇円、株式所有率六二パーセ
ント、役員二名)
⑥ 徳山工作株式会社 (資本金二〇、〇〇万〇、〇〇〇円、株式所有率八八パー
セント、役員一名)
⑦ 佐世保工作株式会社 (資本金一、〇〇万〇、〇〇〇円、株式所有率一〇〇パ
ーセント、役員数三名、但し第二〇期決算時において株式償却)
⑧ 東港工作株式会社 (資本金六〇万〇、〇〇〇円、株式所有率二五パーセン
ト、役員数一名、但し当期決算時において解散、第二一期決算時において株式償
却)
⑨ 株式会社川岸工事 (資本金三、〇〇万〇、〇〇〇円、株式所有率一〇〇パー
セント、役員数三名)
⑩ 栄進化学株式会社 (資本金六、二五万〇、〇〇〇円、株式所有率二四パーセ
ント、役員一名)
の一〇社であり(以下小倉工作株式会社を小倉工作といい、その他の会社も同様と
呼称する)、昭和四一年九月三〇日(第二〇期決算時)現在における関連会社数と
これに対する株式所有率および役員兼任数は、
①小倉工作(九五パーセント、二名)②牧山工作(九一パーセント、一名)③仙台
工作(一〇〇パーセント二名)④千葉工作(四九パーセント、三名)⑤千葉工事
(六三パーセント、二名)⑥川岸工事(一〇〇パーセント、〇名)⑦栄進化学(二
四パーセント、一名)の七社となり、右徳山工作は当期決算時において解散、株式
は第二一期決算時において償却、合計右七社に減少し、
昭和四二年九月三〇日(第二一期決算時)現在における関連会社数とこれに対する
株式所有率および役員兼任数は、
①小倉工作(九八パーセント、一名)②牧山工作(九二パーセント、一名)(以上
二社は第二二期決算時において合併資本金五九、〇〇万〇、〇〇〇円の西日本川岸
工業株式会社と商号を改め、その際、川岸工業所有の株式はいずれも九州電力株式
会社、八幡製鉄株式会社、株式会社電気ビルに額面で譲渡された。)
③千葉工作(四九パーセント、三名)④千葉工事(八三パーセント二名)⑤川岸工
事一〇〇パーセント、〇名)⑥栄進化学(二四パーセント、一名)
の合計六社に減少し、仙台工作は昭和四二年七月解散、当期決算時において株式償
却された。
2 そして、昭和四三年九月三〇日(第二二期決算時)現在における関連会社数と
これに対する株式所有率および役員兼任数は、
①千葉工作(資本金二〇、〇〇万〇、〇〇〇円、株式所有率四九パーセント、役員
三名はいずれも従来と変らず)②千葉工事(資本金二、〇〇万〇、〇〇〇円、株式
所有率八三%に上昇、役員二名、したがつて従来より株式所有率のみ上昇)③栄進
化学(前記と資本金、株式所有率、役員数いずれも同一)の三社に新らたに④川岸
興産株式会社(前記のとおり当期において設立され、資本金四〇、〇〇万〇、〇〇
〇円、株式所有率一〇〇パーセント、役員数一名)が加わつたが、前記川岸工事も
解散され、当期において川岸工業は、同川岸工事の所有株式を償却し、その関連会
社は更に四社に減少した。
3 しかも右栄進化学および川岸興産を除いては、解散された各会社を含めて、い
ずれも前記(三)において記載した各工場を借用して川岸工業の受註する鉄骨工事
につき同川岸工業から鋼材の現物供与を受けながら、これに賃加工を加える下請工
事を専属になす取引関係にあつたものであり、昭和四一年九月三〇日現在における
小倉工作、牧山工作、千葉工作、仙台工作の各資本金と、これらに対して貸与して
いる川岸工業の有形固定資産を一〇〇として対比その比率をみると、
小倉工作 三ないし四パーセント
牧山工作 二五パーセント
千葉工作 二ないし三パーセント
仙台工作 五パーセント
となつている。
(五) P4およびその一族の川岸工業株式の所有率。
また昭和四一年九月三〇日(第二〇期決算時)現在におけるP4およびその一族の川
岸工業株式の所有率をみると、
① P4 二三、八パーセント
② P8 四、五パーセント(妻)
③ P9 一、七パーセント(長男)
④ P10 一、七パーセント(次男)
⑤ P11 一、一パーセント(次女)
⑥ P5 二、五パーセント(実弟)
⑦ P6 三、二パーセント(娘婿)
⑧ P12 一、一パーセント(P4の長女でP6の妻)
合計 三九、六パーセント
昭和四二年九月三〇日(第二一期決算時)現在における株式所有率をみると、
① P4 一一・二パーセント
② P8 四・五パーセント
③ P9 一・七パーセント
④ P10 一・七パーセント
⑤ P11 一・一パーセント
⑥ P6 三・二パーセント
⑦ P12 一・一パーセント
⑧ 川岸商事株式会社一六・六パーセント(P4が発起人となつて設立した会社)
合計 四一・一パーセント
昭和四三年九月三〇日(第二二期決算時)現在における株式所有率をみると、
① P4 一五・四パーセント
② P8 四・五パーセント
③ P9 一・八パーセント
④ P10 一・五パーセント
⑤ P11 一・二パーセント
⑥ P6 三・二パーセント
⑦ P12 一・二パーセント
⑧ 川岸商事株式会社(主としてP4らが発起人となつて設立した会社) 一六・六
パーセント
合計 四五・四パーセントとなつて現在に至つている。
二、川岸鉄工株式会社(以下川岸鉄工という)の設立から同社の川岸工業に吸収合
併されるまでの沿革。
(一) 資本構成とその所有する有形固定資産。
川岸鉄工は、昭和三二年二月、川岸工業代表取締役社長であつたP4、今野鉄工株式
会社の実質的に有力株主となつていたP13らが発起人となつて資本金一〇、〇〇万
〇、〇〇〇円で設立され、本店を東京に営業所と工場及びその設備を仙台に置き、
昭和三六年八月その頃資本金一五、〇〇万〇、〇〇〇円、本店を九州福岡市に置く
右川岸工業に吸収合併された会社であるが、仙台に有するその有形固定資産は、仙
台市<以下略>合計八、二九七・五平方メートル(二、五一〇坪)の工場用地と、
右<以下略>木造亜鉛メツキ鋼板葺平屋建居宅床面積四〇・四九平方メートル(一
二・二五坪)、右<以下略>仙台工作所有地)の連続地上所在家屋番号六四〇番鉄
骨造亜鉛メツキ鋼板葺二階建工場総面積五、一四三・五六平方メートル(一、五五
五・九四坪)外付属建物鉄骨造亜鉛メツキ鋼板葺平屋建配電室床面積三六・三六平
方メートル(一一坪)、鉄骨造亜鉛メツキ鋼板葺二階建工場総面積三四五・五八平
方メートル(一〇四・五四坪)、右<以下略>木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建工場床
面積一八一・八一平方メートル(五五坪)、同<以下略>木造瓦葺二階建事務所総
面積一四〇・七二平方メートル(四二・五七坪)合計総面積五、八八八・五八平方
メートル(一、七八一・三坪)の建物および右工場に設置のクレーン工作機械など
その価格八千数百万円に及ぶものであつた。
(二) 役員構成。
 そこでその役員構成をみるに、設立当初からの代表取締役社長は、その頃資本金
三、〇〇万〇、〇〇〇円、本店および工場を九州戸畑市に有する川岸工業の代表取
締役社長であつた前記P4であり、取締役仙台工場長は、その頃資本金一、五〇万
〇、〇〇〇円本店を仙台市堤通りに有する今野鉄工株式会社の事実的に有力株主で
あつたP13で、仙台営業所長は、前川岸工業戸畑工場長であつたP14が任命された
が、前記設立年である昭和三二年八月には取締役副社長としてP6(P4の娘婿)が
就任し、昭和三六年三月右P4が代表取締役社長の地位を同P6に譲つてからは同人
が代表取締役社長に就任しそれから僅か数カ月を経て前記(一)のとおり川岸鉄工
は川岸工業に吸収合併されたものである。
三、仙台工作株式会社(設立当初は今野鉄工株式会社と称し、後に今野鉄骨工事株
式会社、株式会社川岸仙台工場の各商号を経て仙台工作株式会社となる。以下仙台
工作という)の設立から解散に至るまでの沿革。
(一) 資本構成とその所有する有形固定資産の変遷。
1 仙台工作は、昭和三一年三月一日資本金一、五〇万〇、〇〇〇円今野鉄工株式
会社として設立され、本店および工場を仙台市<以下略>に置いたが、昭和三三年
三月同市<以下略>の川岸鉄工仙台営業所と同一地に本店を移し、その頃商号を今
野鉄骨工事株式会社に、同年八月二四日に株式会社川岸仙台工場にそれぞれ変更、
昭和三七年二月二、五〇万〇、〇〇〇円、翌三八年三月四、二〇万〇、〇〇〇円に
資本金を各増資のうえ、昭和三九年六月四日に至つて再びその商号を仙台工作に改
めた会社で、その株式は設立当初から昭和三九年五月二七日までは殆んど前記二の
(一)(二)記載のとおりP13とその一族で所有していたが、同年同月二八日その
全株式を川岸工業で取得したため商法上全くの一人会社となつたもので、昭和四二
年七月二五日累積赤字が一億数千万円になつて営業継続が不可能であることを理由
に解散された会社である。
2 そしてその所有する有形固定資産は、昭和三九年五月右一人会社となるまで
は、仙台市<以下略>合計三、八八一・八七平方メートル(一、一七四・二七坪)
の工場用地と、右<以下略>、木造瓦葺二階建宿舎総面積二九三・三八平方メート
ル(八八・七五坪)の建物のほか、鉄骨加工に使用する工作機械の一部と小工具を
有していたが、右一人会社となつた際、右工場用地および建物は全部、川岸工業の
債務支払いのための代物弁済として川岸工業に所有権を移転され、その所有する不
動産は全く無くなつてしまつた。
 したがつて、右一人会社となつてからは、川岸工業から貸与を受けていた有形固
定資産と比較して僅かの工作機械用具と事務用具を除いては全く不動産の持たない
(勿論独自の工場も持つていない)殆んど単に従業員のみを抱える会社となつてし
まつた。
(二) 役員および主要幹部社員などの人的構成。
 そこで次にその人的構成をみるに、昭和三一年設立当初は、事実的有力株主であ
つたP13の実弟であるP15が代表取締役に就任したが、昭和三三年三月本店を前記
<略>に移転した頃から代表取締役に右P13が就任し、監査役には元川岸工業戸畑
工場長でその当時川岸鉄工仙台営業所長であつたP14が就任したものの、昭和三八
年一二月P13が事実上代表取締役の地位を降りてからは、仙台工作の経営に川岸工
業代表専務取締役東京支店長でもあつた前記二の(二)のP6(P4の娘婿で川岸鉄
工が川岸工業に吸収合併される直前の同鉄工代表取締役社長)同様川岸工業の平取
締役でもあつたP7らが当り、翌三九年二月代表取締役社長に右P6(川岸工業代表
取締役と兼務)、代表取締役工場長にP16(仙台工作設立当初からの社員でP13退
陣直前仙台工作の平取締役となつていた者)、平取締役に川岸工業取締役兼務で右
P7およびその当時川岸工業仙台営業所長でもあつたP17が兼務で各就任したほか、
昭和三六年頃から同仙台営業所員であつたP18が工場次長兼工務課長に任命され
た。
 しかしながら、昭和四一年三月P16が事実上代表取締役工場長の地位を辞任して
からは、同年六月二〇日頃まで川岸工業の出向社員P19が工場長に任命されたもの
の、それから後は、同工場長に、前千葉工作株式会社(前記第二の一の(四)のと
おり川岸工業千葉第一工場を借用して川岸工業受注工事の専属下請をしている会社
で代表取締役はP6)の社員で元川岸工業労働組合共闘会議議長であつたP20が、経
理課長には前川岸工業本社経理長であつたP21が、川岸工業の出向社員として川岸
工業仙台営業所長兼務で各任命され、また工作課長には千葉工作の社員で労働組合
の役員でもあつたP22がなり、同年一一月には右P20も仙台工作の取締役に就任の
うえ川岸工業代表専務取締役でP4の実弟であるP5が来仙、事実上仙台工作の代表
者としてその経営に携わるようになつて翌四二年一月三一日右P6に代り代表取締役
に就任、同年四月一日から仙台工作の経営機構に従来なかつた営業部を設けてから
は、右P21がその営業部長をも兼務するようになつたが、同年七月二五日仙台工作
は解散されるに至つた。
(三) 仙台工作と対川岸鉄工および川岸工業間の営業的関係。
1 川岸鉄工設立の動機。
 ところで、川岸鉄工の設立の動機をみるに、川岸工業の有力株主で代表取締役で
あつたP4は鉄骨工事の受註に関して東北、北海道方面への進出を意図し、その頃倒
産して再出発を図ることを意図して設立された仙台の今野鉄工株式会社の事実上の
有力株主であつたP13らと共に昭和三二年二月前記二のとおり川岸鉄工株式会社を
設立し、右P4は自からはその代表取締役社長に、P13は取締役仙台工場長に就任、
前記の如く、今野鉄工株式会社所有地たる<以下略>に仙台営業所を設置のうえ、
同社所有地と右今野鉄工所有地にまたがる工場用地に宮城県工場誘置条例の優遇措
置を得て仙台工場(前記二の(一)参照)を建設し昭和三三年三月頃からその施設
全部右今野鉄工に川岸鉄工受註の鉄骨工事を専属的に下請することを条件に貸与し
た。
2 仙台工作の対川岸鉄工および川岸工業との間の営業的関係。
 したがつて、今野鉄工は、川岸鉄工仙台工場が完成してからは、同社の受註する
鉄骨工事の専属的下請会社となり、その営業内容は、川岸鉄工発註の鉄骨工事につ
き主として同川岸鉄工から供給を受けた鋼材に賃加工を加えることを業としていた
もので、川岸鉄工が川岸工業に吸収合併されてからもこの関係は川岸工業に承継さ
れ、その商号が仙台工作に変り昭和四二年七月二五日解散するに至るまで一貫して
変らなかつた。
(四) 仙台工作の対川岸鉄工対川岸工業との間の一般従業員の業務、人事、労務
対策に対する面からの関係。
1 そこで右関係を、従業員の通常業務の面からみるに、川岸工業仙台営業所にお
いて受註する工事の受註単価の積算、鋼材の検収保管などの業務は川岸鉄工仙台営
業所との間の関係を含めて、従来から仙台工作の従業員によつてなされたりしてい
たほか、出来高査定の事務補助を同従業員がしたりしていたものである。
2 そして他面仙台工作の従業員に対する給与、労働条件の決定など具体的生産予
定の立案人事、労務対策などは、仙台工作が前記のとおり一人会社になつてから
は、全て川岸工業本社の決定にもとづいて執行されていた。
四、仙台工作の真の解散理由。
 さて仙台工作は川岸工業側の主張によれば、累積赤字一億数千万円にも及んだた
め余儀なくされたものであるとされているが、仙台工作は後記(二)のとおり以上
の対川岸鉄工および川岸工業との人的・物的および営業的関係からみても全く経済
的・社会的にその関係は一体的であつて、特に川岸工業において仙台工作の全株式
とその所有不動産を取得してからは、仙台工作は川岸工業の子会社として完全に支
配従属し、その一体性はむしろ単に合併手続をとらないだけの強固なものとなつて
いた。したがつて仙台工作の右解散は単なる累積赤字によるものとはいえない。
 以下これを川岸工業の別会社方式を基調とする経営政策との対比で明らかにす
る。
(一) キヤラバン商法の基本形態としての別会社方式。
1 鉄骨工事は、受註請負形式による営業活動であるから、これが営業は他産業に
比して発註先に対する納期の厳守が強く要請されると共に、その利益の主たる部分
は加工賃よりも鋼材使用によるその利鞘そのものにあるといわれている。
2 したがつて、川岸工業は常に鋼材を仕入れて通常これをストツクしながら、鉄
骨工事の受註活動をしていたが、より多くの受註活動をなすためには、仕事のある
地域に工場を建設しては営業活動をなし、仕事が少くなればその工場を他の仕事の
ある地域に実質的に移転して、計画的に受註事情をみながら営業活動をすることが
より経済的に利潤を上げることができる(これをキヤラバン商法という)と共に、
これが工場を他の独立法人格者に貸与して同工場に就業する従業員を右他の法人格
者に帰属する者をもつて専属的に当てれば、新受註先開拓による営業の危険性を分
散することが可能となつて株式会社の有限責任制度を利用するときは、自己の所有
する有形固定資産を守ることができ(危険負担の分散化)、また受註請負の特質か
らくる右納期の厳守のための人事管理の強化・右工場移転に伴う従業員の集団的配
置転換に対する労働攻勢を回避するためには社外工を確保することが最も容易であ
るが、右専属下請会社の従業員をもつて自己の所有工場の生産活動に当てれば、あ
たかも社外工を使用したと同様の結果を得ること(労働攻勢の弱体化)ができるこ
とに気付いた。
3 そこで、川岸工業は、その手初めに前記二の(一)のとおり、昭和三一年度下
半期からの投資ブームに乗つて東北北海道方面への営業活動の拡大を意図し、その
頃倒産して再出発を図つていた仙台所在の今野鉄工株式会社の営業権を足がかりと
すべく、その代表取締役社長であつたP4の資本を通じて右今野鉄工の実質的有力株
主であつたP13の資本と結びつき、川岸鉄工株式会社を設立のうえ宮城県工場誘致
条例の優遇措置を利用してその有形固定資産八千数百万円にも及ぶ仙台工場を建設
し、これが施設全部を昭和三三年三月頃右今野鉄工に専属下請会社となることを条
件に貸与し、東北方面の鉄骨工事の受註活動を始めたほか、九州戸畑市に有する自
社所有の戸畑工場に就労する従業員を抱える株式会社川岸戸畑工場を設立して、同
会社に右戸畑工場を右今野鉄工に対すると同様川岸工業の専属下請会社となること
を条件に貸与し(前記一の(三)(四)参照)、昭和四〇年九月三〇日、昭和四一
年九月三〇日、昭和四二年九月三〇日、昭和四三年九月三〇日各現在時における四
年間の川岸工業の所有工場は前記一の(三)のとおり変遷し、またこれらの工場の
貸与を受けることを条件として川岸工業の専属下請会社になり、且つ資本的にも役
員の兼任面からも関連を有する会社は、昭和四〇年九月三〇日、昭和四一年九月三
〇日、昭和四二年九月三〇日、昭和四三年九月三〇日、各現在時における四年間に
おいて前記一の(四)のとおり変遷していることでも明らかであるように、昭和三
九年九月三〇日現在で①小倉工作②牧山工作③仙台工作④千葉工作⑤千葉工事⑥徳
山工作⑦佐世保工作⑧東港工作⑨川岸工事⑩栄進化学の一〇社であつたものが、翌
四〇年九月三〇日現在では右⑦の佐世保工作の株式は他に譲渡し⑧の東港工作は解
散してその所有する株式(右佐世保工作については一〇〇パーセント東港工作につ
いて二五パーセントを前記第二の一の(四)のとおり所有していた)は第二〇期お
よび第二一期決算時においてそれぞれ償却し、昭和四一年九月三〇日現在において
は右⑥の徳山工作を解散して第二一期決算時においてその所有する株式(前記第二
の一の(四)のとおり八八パーセントを所有していた)を償却、昭和四二年九月三
〇日現在で仙台工作を解散第二一期決算時においてその所有する株式(前記第二の
一の(四)、三の(一)の1記載のとおり一〇〇パーセント所有)を償却し、昭和
四三年には右①の小倉工作②の牧山工作を合併して西日本川岸工業株式会社と商号
を変更のうえその持株(①の小倉工作は前記第二の一の(四)のとおり九八パーセ
ント②の牧山工作は同記載のとおり九二パーセント)を九州電力株式会社・八幡製
鉄株式会社などに額面で譲渡したが、他方においては右西日本川岸工業に貸与して
いる有形固定資産を管理所有する川岸興産株式会社を川岸工業において全株取得す
る形式で設立した(前記第二の一の(四)の2参照)ほか、昭和四二年八幡製鉄が
千葉県に君津工場を建設すると、これが工事などの受註を目的として同工場敷地内
に千葉第二工場(君津工作所)を設置し(第二の一の(三)参照)仙台工作におい
て使用している機械の一部転用を意図したり、仙台工作解散により解雇した従業員
の一部を同工場の社外工として就業させ、また昭和四五年開催の大阪万国博の工事
受註を当て込んで昭和四三年には大阪工場の設備を拡大し(前記第二の一の(三)
参照)四国・本州の夢のかけ橋が計画されるや右のとおり一旦徳山工作を解散して
同工場を他に賃貸するなどしていながら自社の従業員を派遣してより直接的経営に
乗り出し、日本鋼管株式会社が福山に大工場を新設するやこれが工事などの受註を
当て込んで福山工場を拡大するなど(前記第二の一の(三)参照)からして明らか
なようにそのキヤラバン商法を実現してきた。
(二) キヤラバン商法の一具現としての仙台工作の計画倒産。
次に川岸工業のキヤラバン商法を仙台工作にのみ焦点を当ててみることにする。
1 まず、①川岸工業の主要株主は前記第二の一の(五)のとおりその代表取締役
社長であるP4とその一族で占められていること、②川岸鉄工の人的・物的構成は前
記第二の二の(一)(二)のとおりであり、③仙台工作と川岸鉄工との物的関係は
前記第二の二の(一)記載のとおりであり、④その営業的関係は前記第二の三の
(三)のとおりである。
2 しかも、川岸鉄工設立の動機は前記第二の三の(三)の1のとおりであり、そ
の役員構成と変遷が前記第二の二の(二)のとおりであるところから明らかなよう
に川岸鉄工の設立と前記第二の一の(一)同第二の二の(一)(二)のとおりの川
岸工業への吸収合併は、その設立当初から予定されたものであり、加えて右P4を通
じてみるときは、仙台工作と川岸工業とは川岸鉄工設立当時から全く無縁のもので
はなく、むしろ外形的には姉妹会社たる川岸鉄工と右P4を通じての支配従属の関係
にある親子会社の関係にあつたものということができる。
3 そして前記第二の一の(一)、同第二の二の(一)(二)のとおり川岸鉄工が
川岸工業に吸収合併されてからは、その親子関係は直接的となり、特に前記第二の
一の(一)、第二の三の(一)の1のとおり昭和三九年五月川岸工業において仙台
工作の全株式を取得してからは、同第二の三の(二)記載のとおりの役員および主
要幹部社員などの人的構成・同第二の三の(四)の従業の業務混同・人事労務対策
生産計画の決定などとあいまつて、仙台工作は川岸工業に完全に一体化し、その実
体は単に形式的法律上の合併手続をとらないだけの経済的社会的には吸収合併会社
の実質を有するようになつたが、これは仙台工作が昭和三八年三月三一日決算時ま
では全て黒字の利益が計上されていたことから川岸工業はその利益収奪を図るた
め、折よく同年一二月の年末一時金支給闘争で全金労働組合川岸仙台工場支部(仙
台工作の従業員をもつて組織された労働組合)の労働攻勢を利用したほか、川岸工
業の仙台工作に対する融資債権の弁済を強要することによつて時の代表取締役であ
つたP13を仙台工作から追い出し、前記第二の三の(一)の1のとおり自から仙台
工作の株主となつてこれを乗取つた結果にほかならない。
4 さて、そこで次に川岸工業の仙台工作に対する利益収奪の状況をみるに、川岸
工業の仙台工作から得た利益は昭和四二年三月以前は毎月約四、〇〇万〇、〇〇〇
円で昭和四〇年九月三〇日期には年間約五〇、〇〇万〇、〇〇〇円翌四一年九月三
〇日期には約四〇、〇〇万〇、〇〇〇円に達したが、この四一年度の四〇、〇〇万
〇、〇〇〇円の利益を同期における川岸工業の仙台工作に対する全投融資額一億三
四、七四万〇、〇〇〇円(土地・工場などの建物・その他工作機械など一切の有形
固定資産八二、三〇万四、〇〇〇円、短期貸付金四八、二三万六、〇〇〇円、資本
金四、二〇万〇、〇〇〇円)に対する利回り率として算出し、昭和四一年九・一〇
月期一年間の鉄鋼業界の主要会社である八幡製鉄・富士製鉄・日本鋼管・川崎製
鉄・神戸製鋼・住友金属の各子会社に対する投融資額とこれに対する利回り率と比
較してみるとき、最高の日本鋼管の利回り率一一・四パーセントと比較してもこれ
の二・六倍、右会社の平均利回り率七・六三パーセントと比較すると何んと約三・
九倍の二九・六九パーセントの利益を川岸工業は仙台工作からあげていたことが明
らかになつたように、不当に高額の利益を収奪した。
 ちなみに、仙台工作の解散は累積赤字が一億数千万円にものぼつたからとされて
いるが(前記第二の三の(一)の1参照)、その殆んどの負債は川岸工業に対する
ものであるが、これは右不当な利益収奪を如実に示しているものといえる。
5 ところが、川岸工業は総額約七・八億の投資をして千葉第一工場を建設しその
営業活動の主力をこれに移すや、仙台工作の従来の外註費が受註工事高の約一五パ
ーセントから多くても二七パーセントであつたのを、昭和四一年からは急激に受註
高の三六パーセントから六〇パーセントに上昇させ、仙台工作の従業員の仕事を奪
いながら他方では下請工場の育成を図つてその累積赤字を急激に膨張させたほか、
昭和四一年九月三〇日決算時における累積赤字が五一、三三万四、〇三三円である
といいながら、昭和四二年四月からは一切の融資をせず右赤字額からするならば如
何なる債務の支払いも短期間にすることが不可能であることを知りながら、あえて
月間二、〇〇万〇、〇〇〇円のリース料(工場等の賃貸料・看板料・貸付金利息な
どを包含する名義)を仙台工作において川岸工業に支払えないときは催告なしに直
ちに仙台工作は貸与を受けている仙台工場を川岸工業に明渡す旨の契約を結んだう
え、昭和四二年三月の収支決算においては仙台工作の川岸工業から受註した工事利
益を川岸工業の仙台工作に対する債権に相殺充当の処置をとつて仙台工作を解散に
至らせた。
 したがつて仙台工作の解散はその株主たる川岸工業の不当取引および利益操作に
よる計画倒産計画解散である。
(三) キヤラバン商法の一具現としての仙台工作の解散と不当労働行為。
最後に仙台工作の解散を全金労働組合川岸仙台工場支部に対する不当労働行為の面
から明らかにする。
1 川岸工業は、その営業が受註請負方式であるため特に発註先に対する信用保持
などから工事納期の厳守が至上命令となつていたこともあつて労働組合を蛇蝎の如
く嫌つていた。したがつて川岸工業で労働組合結成の動きがあつたのは昭和二六年
頃からであつたが、会社側の恫喝と切りくずしにあつて日の目を見ることができ
ず、昭和三〇年末からの極秘による準備によつてようやく結成に成功するや、自か
らの危険負担の分散化と共に労働組合の勢力分断弱体化を図るため従業員の身分を
川岸工業と別個独立の法人格を有する会社に帰属させる別会社方式をとることに
し、前記四の(一)の3のとおり殆んど九州戸畑工場の従業員のみを包摂する株式
会社川岸戸畑工場(前記一の(三)(四)の1のとおり後に小倉工作となる)を設
立したが、その際労働組合の反対抵抗に対して従来のとおり恫喝と切りくずしによ
りその設立を強行したほか、従業員に持株制度を導入のうえ組合役員を重役に登用
して右労働組合の勢力を分断弱体化させた。
 そしてこれに味をしめた川岸工業は前記一の(三)(四)のとおり工場を作つて
はこれに就労する従業員を抱える○○工作株式会社なる別会社を積極的に右川岸工
業の各工場とは切り離して設立し、意図的に労働者の一体的団結を阻止してきた
が、同子会社単位に結成されていた各別の労働組合が結集し、昭和三九年に川岸工
業労働組合共闘会議が結成され、そのうち、全金労働組合川岸仙台工場支部(仙台
工作の組合)がその中核的存在になつてきてからは、折から前記四の(二)の4の
とおり仙台工作からの利潤収奪と前記四の(一)の3のとおりの千葉第二工場(君
津工作所)が完成しつつあつたためこれが機械設備を仙台工作で使用している機械
の一部をもつて補充することと、同工場の社外工確保の方法として仙台工作の一部
従業員を配置転換する必要があつたこともあつて、これが実現のために特に右組合
の抵抗を予想してこれを忌み嫌いその存在につき相当の障害を感じていた。
2 そこで前記三の(二)のとおり昭和四一年三月仙台工作の代表取締役兼工場長
であつたP16がその職を辞任してからは、同労働組合の組織を破壊するべくまず前
記四の(二)の4のとおり急遽計画的に仙台工作の赤字累積を増大させると共に、
昭和四一年六月からは前記三の(二)のとおり労働組合の内情に精通したP20、P
22を子会社である千葉工作から仙台工作に派遣し、右P20を工場長に、右P22を工
作課長にそれぞれ任命して右労働組合の勢力分断のための職制改革を図ろうとした
うえ、昭和四二年四月から従来の元請価格割引受註制度をリース料支払制度に切換
えるいわゆる新体制をとり入れるに際し、同労働組合委員長などを工場長に就任要
請したりしてこれが懐柔策を図つたが、株主たる川岸工業の意の如く同組合がなら
なかつたことから、従来の方法では右労働組合の勢力分断破壊は不可能であること
を知るに及び前記四の(二)の5の契約を盾にとり累積赤字を口実に労働組合員全
員解雇を目的として本件解散に至つたものである。
 したがつて川岸工業による仙台工作の本件解散とこれにもとづく被申立人らの解
雇は不当労働行為を構成するものであり、仙台工作の存在は前記物的人的一体性を
有していると共に川岸工業における法人格乱用目的でその意義を有していたに過ぎ
ないから、申立人は本件差押物件に対し第三者異議権を有する第三者ということは
できない。
 よつて申立人の本件仮差押取消の申立につき却下を求める。
(被申立人らの積極的主張に対する申立人の答弁と反論)
申立人訴訟代理人は、被申立人らの積極的主張事実に対する答弁および同主張に対
する反論として次のとおり述べた。
第一、被申立人らの積極的主張事実に対する答弁と積極主張
一、被申立人らの抗弁事実中
① 第二の一の事実 (川岸工業の設立から現在に至るまでの沿革……資本構成・
役員構成・物的設備である所有工場数の変遷と現状・関連会社数とこれに対する株
式所有率役員兼任数ならびに取引関係・P4およびその一族の川岸工業株式所有率)
全部
② 第二の二の事実 (川岸鉄工の設立から同社が川岸工業に吸収合併されるまで
の沿革……資本構成とその所有する有形固定資産・役員構成)全部
③ 第二の三の事実(仙台工作の設立から解散に至るまでの沿革)のうち、
(一)の事実(資本構成とその所有する有形固定資産の変遷)
(二)の事実(役員および主要幹部社員などの人的構成)
(三)の事実(川岸鉄工設立の動機・仙台工作と対川岸鉄工および川岸工業との間
の営業関係)
(四)の1の事実(川岸鉄工・川岸工業両会社仙台営業所において受註する工事の
受註単価の積算・鋼材の検収保管数量検査等の業務状況)
全部
④ 第二の四の(一)の1の事実(鉄骨工事の特質)全部
⑤ 第二の四の(一)の3の「川岸工業の意図・動機などの主観的部分」を除くそ
の余の事実
⑥ 第二の四の(二)の1の事実(川岸工業の主要株主の状況・川岸鉄工の人的物
的構成仙台工作と川岸鉄工との物的営業的関係)全部
⑦ 第二の四の(二)の4の事実のうち「川岸工業の仙台工作から得た利益は、昭
和四二年三月以前は毎月約四、〇〇万〇、〇〇〇円で、昭和四〇年九月三〇日期に
は年間約五〇、〇〇万〇、〇〇〇円、翌四一年九月三〇日期には約四〇、〇〇万
〇、〇〇〇円であつたこと、昭和四一年九月三〇日期における川岸工業の仙台工作
に対する出資金を含めた全投融資額は一億三四、七四万〇、〇〇〇円であつたこ
と。」の事実
⑧ 第二の四の(二)の5の事実のうち「川岸工業は約七・八億の投資をして千葉
第一工場を建設したこと。川岸工業は仙台工作との間で昭和四二年四月以降の取引
につき、月間二、〇〇万〇、〇〇〇円のリース料を仙台工作は川岸工業に支払う、
もしこの支払いないときは催告なしに直ちに貸与を受けている仙台工場を仙台工作
は川岸工業に明渡す旨の契約を結んだこと。川岸工業は昭和四二年三月末日までの
仙台工作に対する出来高未払分は三月末日付で全額を川岸工業の仙台工作に対する
債権に相殺充当した。」旨の事実
はいずれもこれを認めるが、その余の抗弁事実は全部認めない。
二、ところで被申立人らは、川岸工業と仙台工作との間の資本・人的・物的・営業
的関係・川岸工業仙台営業所において受註する受註単価の積算等の業務関係、その
他営業活動の予算制・人事労働条件の決定関係から川岸工業と仙台工作との間は経
済的社会的に一体となつている旨、また仙台工作の解散は川岸工業のキヤラバン商
法にもとづいた計画倒産であり、全金労働組合川岸仙台工場支部破壊のための解散
である旨、主張するので申立人は次のとおり反論する。
(一) 川岸工業は、P4の資本を通じて東北・北海道方面への企業進出を意図し、
そのため仙台工作を足がかりとするべく川岸鉄工を設立したもので、これは設立当
初から川岸工業に吸収合併することを予定して設立されたものである旨の主張につ
いて(第二の四の(一)の3、同(二)の2)。
 川岸鉄工は、P4個人とP13その他川岸工業となんら関係のない者らが発起人とな
つて設立されたもので、もちろん川岸工業とは資本関係は全くなく、むしろ仙台工
作の前身であつて倒産会社である申立外株式会社今野鉄工所の従業員の救済と同社
の残存施設の活用を目的として設立されたものである。したがつて川岸工業は対川
岸鉄工および仙台工作との間において川岸鉄工が吸収合併されてその取引関係を承
継するまでは営業的にもなんらの関係を有せず、また右吸収合併も川岸鉄工設立当
初から予定されていたものではない。
(二) 川岸工業はキヤラバン商法を行うために多数の工場を建設すると共に関係
会社を設立し、仕事がなくなればその工場を他に移転し、関係会社も解散した旨の
主張について(第二の四の(一)の3)。
 川岸工業の関係会社のうち、東港工作や徳山工作などが経営不振のため倒産した
ことはあるが、関係会社の使用する工場を移転したことはなくまた東港工作や徳山
工作などが倒産した頃新らしく設立した関係会社は一つもない。
 即ち東港工作は累積赤字金七六、一四万三、五二六円、徳山工作は同じく金五
五、〇二万一、六一一円となつて倒産したものであつて、その当時における川岸工
業の東港工作に対する貸倒債権は金七四、九〇万五、二六〇円であり、徳山工作に
対するものは金四二、六一万五、二四〇円であつた。したがつてこれがため川岸工
業は第一九期決算以降経理の行づまりが生じたものであつて、これらを不良債権と
して処理したからこそやつと第二二期決算以降になつて再び利益の増大をもたらし
てきたものであり、川岸工業が利益のみを追求し意識的に倒産させたものではな
い。
 尚佐世保工作の株式は他に譲渡したものであり、徳山工場は徳山工作の解散直後
閉鎖したものの直ちに申立外山口工事株式会社に賃貸しているものである。
(三) 川岸工業は川岸鉄工を吸収合併してからは仙台工作との間で親子関係が直
接的になると共に特に仙台工作の全株式を取得してからは、仙台工作に対して人事
労務対策・生産計画の決定などすべて本社でなされ、また業務は混同しその関係は
全く一体化していた旨の主張について(第二の四の(二)の3)。
1 まず営業関係についてみるに川岸工業は、川岸鉄工を吸収合併した後、川岸鉄
工対仙台工作の関係を承継したので、仙台工作とは取引上の提携関係こそあつたが
仙台工作の代表取締役P13がその地位を退くまでは仙台工作は完全にP13一族によ
つて支配されていて川岸工業から全く独立したところの経営がなされ、また仙台工
作は川岸工業の専属的下請会社になつていたものの、川岸工業は同社に対して自か
らの受註活動を禁じたこともなく、むしろ仙台工作は川岸工業において全株式を取
得した後になつても本工事に対する追加工事或いは細かい鉄骨工事などは独自の立
場でこれを受註する活動をしていたもので営業活動自体川岸工業の絶対支配下にあ
つたものではない。
2 次に仙台工作の人事・労務対策についてみるに経理課長になつたP21は川岸工
業の出向社員であつたのでこれは別としてP20、P22などは最終的には仙台工作の
代表取締役であつたP6が決定したものであつて川岸工業で転勤させたものではな
い。そして仙台工作は独自の取締役会・管理職会議・職制機構・就業規則・文書様
式などを有して川岸工業とは別個独立の人事を行つていたものであり、労働組合と
の交渉も仙台工作独自において労働組合と交渉していたものであつて、これらの点
で仙台工作は川岸工業と一体となつていたということはできない。
3 次いで業務の混同についてみるに川岸工業仙台営業所において受註する工事の
受註単価の積算・出来高査定については仙台工作の従業員一名を専従で使用してい
たが、同人は右営業所に対する出向社員として勤務していたものであるからこれに
対する給料分は川岸工業で仙台工作に支払つているものであり、しかも受註見積と
単価の積算・出来高査定などについては仙台工作に対して発註予定の工事又は発註
した工事についてなしていたもので、これはむしろ川岸工業仙台営業所の職員とし
て仕事をしていたものとみるのが相当であり、鋼材の検収保管・数量の検査などに
ついては仙台工作の従業員二・三名が従事していたがこれは二・三日に一回時折な
されていたものでしかもこの従業員は二・三名で仙台工作の全従業員と対比して二
ないし三パーセントに過ぎないばかりか仙台工作独自で行う補助材料の手当と川岸
工業から仙台工作において受領した主材料を同各係に手交する仕事に附随して行う
場合が多いのであるからいずれにしろこれらの状況をもつて川岸工業と仙台工作の
業務が混同しているとみることはできないというべきである。
(四) 川岸工業は仙台工作の収益性に着目しこれを乗取つた旨の主張について
(第二の四の(二)の3)。
 仙台工作は川岸鉄工との取引関係が始まつてから川岸鉄工が川岸工業に吸収合併
されてこの取引関係を川岸工業において承継し仙台工作が解散するに至るまで、川
岸鉄工又は川岸工業から工場およびこれに設備されている機械等の相当部分の貸与
と鋼材の提供を受けながら専属して川岸鉄工又は川岸工業の受註する鉄骨工事を下
請しこれに賃加工を加えていたものであるがその収益性は川岸工業において仙台工
作の全株式と不動産を取得した直前ともいうべき昭和三九年三月の決算期において
累積欠損金一三、五六万一、二三一円を出していたものでむしろ収益性に乏しい会
社であつた。
 しかもその頃仙台工作の代表取締役をしていたP13は仙台工作のほかに今野振興
株式会社という仙台工作と同業の会社を経営していたが同今野振興の仙台工作に対
する昭和三九年三月三一日現在における借受金元金六、六六万二、八六〇円、右元
金に対する利息その他工事未収金を除く未収金六、九〇万三、八八〇円工事未収金
三一万〇、〇〇〇円、立替金三二万一、〇八四円など合計一四、〇〇万〇、〇〇〇
円を超える債務を負担していた。
 そこで川岸工業は右仙台工作の累積欠損および今野振興の債務に対する弁済の方
法としてP13等から懇請されてやむなく仙台工作の株式と不動産を取得したもので
あつて、決して仙台工作を収益性に着目して乗取つたものではない。
(五) 川岸工業は仙台工作から不当な利益の収奪を図つていた旨の主張について
(第二の四の(二)の4)。
 なるほど川岸工業は前記第二の四の(二)の4申立人の答弁第一の一の⑦のとお
り、昭和四一年度における仙台工作に対する発註利益として約四〇、〇〇万〇、〇
〇〇円を得ていること、またその全投融資額は一億三四、七四万〇、〇〇〇円であ
るがこの利回り率を算出するためには川岸工業は右の頃仙台工作の営業活動を肩代
りして行つていたものであるから投融資に対する利回り率を算出する際に除せられ
るべき発註利益は右数字から仙台工作の営業活動の肩代り分についてのいわゆる
「間接経費」を削除したものでなければ正当な利回り率を算出することはできない
というべきである。
 しかも投下資本についての利回り率を算出するには、その基礎となる投下資本に
は有形固定資産や短期貸付金・資本金などのほかに仮払金・前渡金その他関係会社
に対する全ての出捐金が加えられなければならないし、川岸工業が仙台工作に貸付
けていた短期貸付金は全て無利息・無担保であつたから、被申立人らが算出した住
友金属の場合その利回りは推定利息金約三・一億円を控除して算出したのと比較算
出することは当を得ないものというべきである(疎甲九六号証三〇頁参照)。
 したがつて川岸工業が仙台工作から不当な利益を収奪しているということはでき
ない。
(六) 昭和四二年四月から川岸工業は従来の発註方式(元請受註額のうち賃加工
額の部分から一定の金額を控除した額で仙台工作に発註する方式)から月間二〇〇
万〇、〇〇〇円のリース料(工場等の賃貸料・看板料・貸付利息など包含する名
義)を徴収する制度を強要することによつて仙台工作を計画的に倒産させたほか、
仙台工作の労働組合を破壊するべく解散した旨の主張について(第二の四の(二)
の5および(三))。
 川岸工業は従来月間にして約四、〇〇万〇、〇〇〇円の利益を仙台工作から得て
いたが、これに対し仙台工作の従業員は川岸工業が工事のピンハネが大きい世間並
以上の搾取をするなどとかなり必要以上の疑惑を川岸工業に対して持つていた。そ
こで川岸はこの疑惑をはらいのけ、仙台工作の再建を図るため「仙台工作が従来か
ら借り受けていた工場機械器具などの賃貸料・借入金の利息看板料などを含めたも
のをリース料としこれを月二〇〇万〇、〇〇〇円に評価して川岸工業に支払う(従
来は工場の賃貸料などは支払つていない)。
 その代り仙台工作は自からの勢力で鉄骨工事を受註する(但し当分の間は従来ど
おり川岸工業が受註してこれを仙台工作が下請受註する)。その受註価格は川岸工
業が元請受註する価格から、川岸工業で供給する鋼材費などの時価額を控除した残
価格とする(従来は元請価格から鋼材費の時価を控除した残額から再び約二〇パー
セントの受註利益を差引いた金額で仙台工作は受註していた)。」として仙台工作
自体も営業部を設け、新体制を設定したものである。
 したがつて従来から川岸工業が仙台工作から得ていたものは月約四、〇〇万〇、
〇〇〇円であつたものを定額二、〇〇万〇、〇〇〇円に下げてその支払額をガラス
張りにしたものであつて被申立人らの主張するようなものではない。
 しかしながら仙台工作は昭和四二年四月金三、五六万九、二九八円、翌五月には
金三、八八万二、五二〇円という新らたな欠損が累積して右リース料の支払いすら
支払うことができず、しかも仙台地方は全国的に見て非常に受註単価が安いうえ季
節的影響を受けやすいこと、仙台工作はその施設・人員などが受註量の多い時季に
見合うようになつていたが、右季節的影響を受けることと、東北地方は一般的に小
規模な仕事が多く収益性に欠けたことから解散せざるを得なくなつたものであつて
川岸工業が計画的にまた仙台工作の労働組合破壊のために解散したものではない。
第二、被申立人らの法人格否認の法理の適用主張に対する反論
 いわゆる法人格否認の法理はアメリカにおいて株式会社法に関する判例の積重ね
の中で論ぜられるに至つたものであるが、これは、
 競業禁止の合意をなした後にそれを潜脱するための目的で法人を設立した場合、
 強制執行を免れ、又は財産を隠匿するために法人を設立してこれに全財産を出資
するなどした場合、
 その他法律の禁止する行為等を敢えて脱法的になす目的として法人を設立するな
どした場合、
など相手方の保護を図るため又は取締規定など立法趣旨を貫くために法人の行為を
個人の行為に還元する方法として展開されている理論であつて、これはあくまでも
具体的な行為について差止命令を許容したり法人名義の行為を個人の行為に還元し
て評価することを許容する理論であつて当該法人の存在自体を一般的に否定する理
論ではない(大隅健一郎法人格否認の法理・法曹時報第二巻第八号五頁以下参
照)。
 したがつてこの法理は法人の観念が公共の便益を打破し不法を正当化し詐欺を擁
護し又は犯罪を防護するために利用されるときなどの場合というように極めて厳格
な反社会的な要件を必要として一人又は極めて少数人が「会社の全株式を有する」
というだけでは不充分でありたとえ一個人が特定の事業につき「有限責任の利益を
享有するために」一人会社の形態を利用したとしても、また「親会社が子会社の全
株式を所有し且つ共通の役員・共通の事務所を持ち、共通の代理人により行動して
いる」としてもそれだけでは子会社の法人格を否認することができないというべき
である(前掲書四頁以下)。
 しかも右法理の適用されている事案の多くは脱法行為を禁止する取締的規定の拡
大適用の可否が問題となつている事案か、又は諸不当行為の差止を命じ得る法条の
拡大適用の可否が問題となつている事案であるから我国においては、権利濫用の法
理などのほか詐害行為の取消などの法律規定の活用で充分であるので右理論を導入
することは必ずしも普遍妥当性を有するものとはいえない(西原寛一・会社制度の
濫用・末川先生古稀記念論文集中巻一二三頁以下参照)。
 加えてこの法理は個々の具体的法規についての解釈論に還元して各個の特殊事情
や法規の趣旨に照らし、法人とその背後にある実質的行為主体との同一性を考察す
ることによつて具体的に裁判所によつて判断されるべきものともされている(蓮井
良憲・会社の独立性の限界・私法第一九号一一七頁以下参照)ところからしても、
この法理は我が国では未だ熟していない理論である。
 被申立人らが実定的にこの法理が裁判所においても認められているとして昭和四
四年二月二七日最高裁判決をとりあげているようであるが、この判例は単に傍論と
して法人格否認論の適用を言及したに過ぎないものであるから、必ずしも確定した
判例ということはできない。
 よつて以上の理由からしても被申立人らの主張は全く根拠を欠き失当というべき
である。
(証拠)(省略)
       理   由
第一、被申立人らは、申立外仙台工作に対する債権保全のため、仙台地方裁判所昭
和四二年(ヨ)第二五八号有体動産仮差押決定にもとづき、昭和四二年六月二五日
第一の(一)の物件および第二の(一)の物件を、また被申立人P1を除くその余の
被申立人らは、右債権保全のため同裁判所昭和四二年(ヨ)第二六九号有体動産仮
差押決定にもとづき、昭和四二年七月二日第一の(二)の物件および第二の(二)
の物件ならびに右昭和四二年(ヨ)第二五八号仮差押決定にもとづいて同七月四日
第三の物件を各仮差押執行をしたこと、しかしながら以上の物件はいずれも申立人
川岸工業所有のものであつたため、川岸工業は昭和四二年七月二五日右被申立人ら
を相手として仙台地方裁判所に第三者異議請求の訴を提起したことの申立原因事実
についてはいずれも当事者間に争いがない。
第二、
一、そこでまず被申立人らの事実主張の点についてみるに、
① 川岸工業の設立から現在に至るまでの沿革と題する第二の一の事実((一)の
資本構成・(二)の役員構成・(三)の物的設備である所有工場数の変遷と現状・
(四)の関連会社数とこれに対する川岸工業の株式所有率・役員兼任数ならびに取
引関係・(五)のP4およびその一族の川岸工業株式所有率)全部、
② 川岸鉄工の設立から同社が川岸工業に吸収合併されるまでの沿革と題する第二
の二の事実((一)の資本構成とその所有する有形固定資産・(二)の役員構成)
全部、
③ 仙台工作の設立から解散に至るまでの沿革と題する第二の三の事実のうち、
(一)の資本構成とその所有する有形固定資産の変遷について記載した事実・
(二)の仙台工作の役員および主要幹部社員などの人的構成について記載した事
実・(三)の仙台工作と対川岸鉄工および川岸工業間の営業的関係について記載し
た事実ならびに(四)の1の川岸工業仙台営業所において受注する工事の受注単価
の積算・鋼材の検収保管などの業務および仙台工作が右会社から受注した工事の出
来高査定事務などの業務補助は仙台工作の従業員によつてなされていた旨の事実、
についてはいずれも全部当事者間に争いがない。
二、しかも仙台工作の従業員に対する人事給与・労務対策の決定および仙台工作の
具体的生産目標と経営政策の立案決定と川岸工業との関係、ならびに川岸工業の中
における関連会社としての仙台工作の位置付け(第二の三の(四)の2の主張)に
ついて判断するに疎乙二七号証の一・二によれば川岸工業本店総務部P23発として
仙台工場長P20宛に親展で「昭和四一年度の仙台工作従業員に対する春季賃上げと
同年度の夏期一時金支給額の決定およびその発表すべき日指示と、仙台工作従業員
P24・P25の係長承認決定の通知を昭和四一年七月一日付でなし、これにもとづき
P20は翌七月二日付で右賃上げを全金労働組合川岸仙台工場支部に対し通知してい
ること、疎乙二九号証によれば右P23が右P20に対し昭和四一年七月九日付で仙台
工作従業員のうち管理職者の昭和四一年春季昇給金額の決定と夏季賞与は無利子貸
付にするようにとの指示通知書を発していること、疎乙一〇・二八号証によれば川
岸工業の常務取締役であるP26および右P23は川岸工業本店総務部P26・P23名義
でP20に対し、昭和四一年七月八日付で昭和四一年夏季一時金支給は千葉工作方式
で組合と妥結するようにとの指示書を出していること、疎乙三三号証および証人P
20の第二回証言によれば、右P23から仙台営業所P21および右P20宛に昭和四一年
八月二二日付で、横領事件を起した仙台工作経理課長P27の解雇処分をその処分理
由を付して指示していること、疎乙七一号証によれば、川岸工業総務部長とP23名
義で仙台営業所長P19に対し昭和四〇年一〇月二日付で第二〇期仙台営業所の受注
目標は月産六〇〇トンとしその受注単価は七万六、〇〇〇円とすること、尚諸計費
の削減を強化することの決定通知を出し、疎乙三八号証によれば、右P23が右P
20・P21に対し昭和四一年八月二三日付で仙台工作における昭和四一年七月分の収
支実績の明細報告を川岸工業で定めた経費予算などとの対比で要求していること、
疎乙九七・一〇の各号証によれば、川岸工業が大蔵大臣に提出した川岸工業の第一
九期第二〇期の各有価証券報告書営業の状況(1)工事能力の項目で「仙台工作を
含む関係会社の従業員は川岸工業で監理しているのでその能力を当初の能力として
示した」旨記載していること、疎乙一四・一六・二四号証によれば、川岸工業の営
業案内書および川岸工業入社案内書にはいずれも仙台工作で貸与を受け使用してい
る仙台工場を川岸工業の直営工場と思わせるように記載していること、疎乙二三号
証および証人P28の第三回証言被申立人P29本人の第一回尋問結果によれば、昭和
四一年二月一七日川岸工業が東北電力株式会社八戸火力発電所タービン室鉄骨工事
の受注に際して同電力に提出した加工要領書には職制機構として「川岸工業鉄構本
部長P6・仙台駐在取締役P19・仙台営業所長P17・仙台工場長P16・同次長兼工務
課長P18・同工作課長P28・同機械課長代理P30・同工事課長代理P31」と記載し
て提出し、しかも川岸工業の受注活動と仙台工作の作業活動も現実に右職制指揮手
続と作業手続で行われていたこと、疎乙一〇・三七号証および被申立人P29本人の
第一回尋問結果によれば仙台工作の総務課長P32が昭和四〇年一一月一〇日に川岸
工業の本社を伺つた際、同人に対し同川岸の会長P33は「労務政策の基本事項は川
岸工業本社で指示する。」同川岸の常務取締役P26は「仙台工作は法的には独立会
社であるが、川岸工業の中で物事を考えること、物品の調達は現在一〇〇〇円以上
のものはすべて報告事項となつているが、これは一万〇、〇〇〇円以上としてもよ
い。」同川岸工業代表取締役東京支店長兼仙台工作代表取締役P6は「仙台工作の従
業員に対する賃金は査定配分を加えるようにせよ。手袋の配分は千葉工作の状況を
見て決定すること。現在一時金の支給については仙台工作独自の妥結は考えていな
い。」旨の指示をしたこと、の各事実を認めることができ、この事実と疎乙八九号
証の三、証人P32の第一回第二回各証言ならびに前記第二の一の資本構成・人的構
成・営業関係など弁論の全趣旨によると、仙台工作の経営は、従業員に対する人事
給与・労務対策の決定および仙台工作の具体的生産目標と経営政策の立案決定など
全てに亘り川岸工業の具体的指示と決定によつてなされていたことを認めることが
でき、これに反する証人P21の第二回証言および同P20P32の各証言部分等は右認
定に照らしたやすく措信できない。
 したがつて、被申立人らの主張の第二の三の(四)の1の川岸工業仙台営業所の
業務と仙台工作の業務の混同に関する事実(前記第一の一の③のとおり当事者間に
争いがない)が、仮に申立人の主張のとおり仙台工作の全従業員数からみれば二な
いし三パーセントに過ぎなかつたとしても、同業務の混同は仙台工作の川岸工業に
対するサービス的立場からのものではなく、右川岸工業の仙台工作に対する完全支
配の結果仙台工作の従業員が本来川岸工業の従業員をもつてなすべき業務を肩代り
的になさざるを得なかつたものと推認せざるを得ず、しかも前記第一の事実と以上
の事実からするならば、仙台工作は資本的にも業務的にも川岸工業に完全に支配さ
れた子会社であるということができる。
第三、次に右川岸工業と仙台工作との事実関係をもとに被申立人らの主張する法人
格否定の法理について考察することにする。
一、法人格否定の法理とは「一定の会社が法が積極的に認める会社の経済的社会的
有用性の目的範囲を事実上潜脱してその構成員たる社員(株式会社であればその株
主)によつて利用される場合、その会社の取引その他同会社に対する債権債務関係
者に対する関係で法の求める衡平の観念に合致した解釈をなし、裁判所において当
該会社の独立した法主体性に限界を画し、その限界をはみ出る部分については法人
格の構成社員に対する独立性を否定することができる。」とする理論であつて、こ
れは、申立人が主張するように必ずしも会社制度が乱用される場合にのみ適用され
る理論ではなく、また会社法人格を一般的画一的に否定する理論でもない。
 そして会社の存在がそれ自体乱用に至らない場合でも法人格否定の理論が適用さ
れる場合としては、「会社の行為が法律上のみならず、事実上も別個独立の法主体
でなければならないことを前提とする法律解釈において、事実上その会社の社員た
る個人が会社形態の背後に隠れていながら法律上社員とは別個独立した会社の行為
として自己の目的実現のために法律関係に関与しているような場合」などがあげら
れ、会社形骸論によりその構成社員に直接責任を認める理論(昭和四三年(オ)第
八七七号事件昭和四四年二月二七日最高裁第一小法廷判決参照)もその適用の一場
面ということができる。
 そこで更に右一適用場面を推究すると結局はこれは社員個人が会社の財産業務な
どを事実上完全に支配して、その個別的独立性に一線を画することができず、事実
上社員たる個人と会社たる個人が法的形式的には独立した法主体性を有するに拘ら
ず社会的経済的にこの二者が包括した一個の単一体を構成していること(例えば右
二者が人的物的そして業態上混同している場合)に着眼して法人格否定の法理を適
用しようとしているものということができる。
 したがつて右論理からするならば法の認める会社制度の存立目的からして法人格
否定の理論は我が法制において法の究極の目的たる正義に適うものであり、また会
社法を貫く企業維持の原則に悖るものでもないからこれを積極的に採用すべきもの
というべきであつて申立人のこれに反する主張は全くその根拠を有しないものとい
わざるを得ない。
二、さてそこで、以下右法人格否定の法理を社員が法人である場合の親子会社特に
株式会社に当てはめて考察することにする。
(一) 株式会社の株主有限責任は法律によつて認められたものであるが(商法二
〇〇条)これは事業資本の調達に資する経済的効用を有すると共に個人を株主とす
る株式会社においては、その株主に有限責任の特権を認めることによつて集約形成
した株式会社そのものの存在自体がその企業活動の面において社会的効用を果して
いるということができる。したがつて個人を株主とする株式会社の株主有限責任を
否定することは右株式会社の社会的効用を否定することになるということができ
る。しかしながら、法人を株主とする株式会社の株主有限責任を否定してもその株
主たる法人と株式会社とが経済的社会的に一個の独立した単位を構成する場合は同
法人を構成する個人の株主有限責任を否定しない限りこれは右株式会社の社会的効
用に反するということはできない。むしろ株主たる法人の構成員は既に自己自体の
企業活動において有限責任の特権を享受しながら更にその所属する法人が他の株式
会社の株主になることによつて実質的には二次的有限責任の特権即ち二重に亘る特
権を有することになる。有限責任の原則は右のとおりその有する社会的効用の要請
から、その法人に対する債権者の利益を犠牲にしても認めたものであるが、債権者
の利益を犠牲にしても株主に有限責任の原則の享受し過ぎ(二重の有限責任)を積
極的に是認するものではない。なぜならば、右の如く有限責任の原則の享受し過ぎ
を是認するときは法自体が有するところの自己目的たる衡平を法自から否定するこ
とになるからである。したがつて法人格否定の法理は株式所有による親子会社にお
いては個人株主によつて構成される株式会社よりは、会社自体の形骸性を問題とし
なくても容易に適用さるべきものということができる。
(二) さてしからば法人格否定の法理にしたがい子会社の債権者に対する責任を
親会社においてその独立性を否定されて負担する責任条件とは如何なる場合である
かを考察するに、まず第一に親会社と子会社とは前記のとおり経済的に単一の企業
体たる実体を有すること、第二にその企業活動の面において親会社の子会社に対す
る管理支配が現実的統一的でその活動そのものに経済的社会的単一性を有すること
を必要とすると解すべきである。なぜならば、経済的単一性をもつて法律的にも直
ちに単一体であるということができず、むしろ親会社の現実的な統一的管理支配が
欠けるときはそれは法人格が形式的に別個独立である限りその社会的経済的活動の
単位面からみればかえつて企業活動そのものの分離独立を示すことにほかならず、
また法人の社員から独立したその法主体性はその企業の独立した経済的社会的に単
一な企業活動の社会的有用性によつて法がこれを付与したものだからである。
(三) そこで更に右企業の経済的単一性の内容を明らかにするに、これは親子両
会社が財産的物権的に同一体となつていることであるが、結論的には、親会社が子
会社の業務財産を一般的に支配し得るに足る子会社の株式を所有することにあると
いうべきである。けだし、例えば一人会社即ち親会社が子会社の全株式を所有する
ときは親会社の株主からみれば究極においてはこの両者の財産的物権的関係は株主
の財産処分権の面からみて全く同一体の関係にあるということができるが、企業活
動の面からみて株主たる親会社が株主総会において子会社の取締役を選任しその取
締役の業務執行を通じて子会社の財産を一般的物権的に管理支配するのでなければ
親子両会社の財産は物権的にも管理支配の面からしても全く同一体の関係にあると
いうことができないからである。
(四) したがつて子会社に対する親会社の法人格の独立性が一定の債権者に対す
る関係で限界を画され又は否定されるためには第一に親会社が子会社の業務を一般
的に支配し得るに足る株式(子会社の)を所有していることであり(一人会社はこ
の典型ということができる)第二に親会社が子会社を企業活動の面において現実的
統一的に管理支配していることを必要とする(親会社と子会社の相互の業務が混同
していること、子会社の従業員の人事労務対策などがすべて親会社の意思によつて
決定されていること、などがその例である。)と解すべきであるが、右子会社に対
する直接債権者には任意に積極的に子会社を選択してこれに対し信用拡大を図つた
能動的債権者(例えば商取引における債権者)と消極的な因果の関係で債権者とな
つた受動的債権者とがあるので法人格否定の法理を適用するためには右債権者を区
別して考察することを必要とすべきである。なぜならば、右能動的債権者に対する
関係において法人格否定の理論を適用し、子会社の責任を親会社に追求しうるもの
とすれば、それは自己責任の原則に悖ることになると共に右債権者を過度に保護す
ることになつて衡平を目的とする法の理念に反することになるからである。
 だとするならば、子会社に対する親会社の法人格の独立性が一定の債権者に対す
る関係で限界を画され又は否定され親会社がその一体性を有するがために子会社の
責任を自からの責任として負担すべきものとされるためには第一に親会社が子会社
の業務を一般的に支配し得るに足る株式を所有すると共に親会社が子会社を企業活
動の面において現実的統一的に管理支配していること、第二に株主たる親会社にお
いて右責任を負担しなければならないとするところ対債権者は親会社自から会社制
度の乱用を目的として子会社を設立するなど(例えば子会社を利用して法を潜脱す
る場合、子会社の利用による契約の回避・過少資本の子会社を設立して第三者を詐
害するなどのほか、親会社が子会社の従業員に対して不当労働行為をなすなど。)
の事情がない限り右子会社に対する関係で受動的立場に立つ債権者に限ると解すべ
きである。支配あるところに責任ありとする法原則は右のことを意味するものであ
り、右要件は自動車損害賠償保障法三条の法意および民法七一五条の使用者責任に
おいて判例学説がいわゆる外形理論を確立した趣旨と対照してみるとき容易に肯定
できるであろう。
(五) さてしからば、被申立人らは仙台工作に対する関係でいかなる債権者とな
つているかというに、疎甲七ないし九号証および弁論の全趣旨によれば、いずれも
解散によつて解雇されるまでは全部仙台工作の従業員であつて、前記第一のとおり
被申立人らにおいて本件物件に対して仮差押執行をなしたのは、右解雇に伴つて生
じた仙台工作に対する退職金等の債権を保全するためであつたことが明らかであ
る。
 しかも右事実からするならば、右保全債権は仙台工作との雇傭関係に伴つて生じ
た債権であることが明らかであり、その雇傭関係に伴つて生じた債権はたとえ被申
立人らにおいて任意に仙台工作を選択して入社した結果生じたものとしても、その
雇傭関係において被申立人らの地位は使用者において一方的に定められる就業規則
によつて労働条件のすべてを拘束される(就業規則の法的性質を契約説・法規説の
いずれからみても同様である。労働基準法八九条九〇条九三条参照)ところからみ
るならば、使用者の一方的意思によつて支配された従属労働関係から生じた債権で
あるから、これは受動的関係によつて生じた債権というべきである。
(六) したがつて以上の事実関係および論理からすれば、被申立人らのその余の
主張事実について判断するまでもなく、申立人たる川岸工業は前記主張事実欄第二
の一の(一)・同第二の三の(一)の1の事実を援用記載した本理由欄第二の一の
とおり昭和三九年五月二八日仙台工作の全株式を所有し、遅くもそれ以来本理由欄
第二の二において認定したとおり仙台工作を資本的にも企業活動の面からしても現
実的統一的に完全に支配してその相互の企業関係は単一化していること、そして被
申立人らはいずれも受動的債権者であるから、被申立人らにおいて申立人たる川岸
工業に対し法人格否定の法理の適用を主張することができるというべきである。
(七) ところで被申立人らの本件保全債権の債務名義が申立外仙台工作に対する
ものであるから、右法人格否定の法理は直接申立人に対する債権でない点で適用で
きないのではないかという論が生ずるかも知れないが、右のとおり川岸工業は対被
申立人に対する関係では、仙台工作と対立独立した法人格を主張できず、むしろ融
合した単一体として法的評価を受けるのであるから、形式的には被申立人らは改め
て申立人たる川岸工業に対しその債務名義を取得することは形式的一般的には仙台
工作と法人格が別個であるから可能であるが、結局右被申立人らの得た仙台工作に
対する債務名義はその実体においては申立人たる川岸工業に対するものともいうこ
とができる。
 したがつて以上の理由からするならば、本件差押物件に対して申立人被申立人ら
以外の全くの第三者が利害関係を有することの存在について主張立証のない本件申
立においては申立人は法人格否定の法理の適用を主張する被申立人らに対する関係
においては、仮差押決定に対する債務者の異議申立としてその債務名義に表示され
た債権の存在保全の必要性などを争うならばともかくとして、民事訴訟法五四九条
に定める第三者異議請求権者としての第三者には該当しないといわざるを得ない。
第四、よつて以上の理由により、被申立人らのその余の主張について判断するまで
もなく申立人川岸工業の本件仮差押執行取消の申立は理由がないからこれを却下す
ることとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり
決定する。
(裁判官 藤枝忠了)
(別紙 物件目録省略)

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