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平成24年2月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成22年(ワ)第37433号商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成24年1月26日
判決
山口県下関市<以下略>
原告A
訴訟代理人弁護士増田利昭
札幌市中央区<以下略>
被告株式会社たけうち
(旧商号:株式会社H・S・C)
訴訟代理人弁護士小野昌史
主文
1被告は,原告に対し,526万3924円及び内金479万392
4円に対する平成23年1月8日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は被告の負担とする。
4この判決の第1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,527万3316円及び内金479万3924円に対
する平成23年1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,後記2アの登録商標(以下「本件商標」といい,その商標権を「本
件商標権」という。)の商標権者であった原告が,被告がその経営する店舗に
おいて使用する別紙被告標章目録記載の各標章(以下「被告各標章」と総称す
る。)は,本件商標と類似の商標であって,被告による被告各標章の使用は原
告の本件商標権の侵害に当たる旨主張して,被告に対し,商標権侵害の不法行
為に基づく損害賠償を求めた事案である。
2争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全
趣旨により認められる事実である。)
原告における本件商標権の取得
ア株式会社タスコシステム(以下「タスコシステム」という。)は,次の
登録商標(本件商標)の商標権者であった。
登録番号第4264970号
出願日平成9年5月27日
設定登録日平成11年4月23日
指定役務第42類「そばの提供」
登録商標別紙商標目録記載のとおり
イタスコシステムは,平成20年8月15日,株式会社コレスケイト(以
下「コレスケイト」という。)に対し,本件商標権を譲渡し,同月28日,
本件商標権について上記譲渡に係る移転登録がされた。
その後,平成20年11月4日,本件商標権について存続期間の更新登
録がされた(甲13)。
ウ原告は,平成21年2月4日,コレスケイトから,本件商標権の譲渡を
受け,同月18日,本件商標権について上記譲渡に係る移転登録がされた。
なお,その後原告は,本件商標権を株式会社マックスパートナーに譲渡
し,平成23年3月23日,本件商標権について上記譲渡に係る移転登録
がされた(甲13)。
被告の行為等
ア被告(旧商号「株式会社H・S・C」)は,遅くとも平成21年2月1
8日から平成23年1月7日までの間,被告が経営する飲食店である「北
前そば高田屋北3条店」及び「北前そば高田屋南2条店」(以下,
これらを併せて「本件各店舗」という。)において,そばを含む飲食物の
提供を行うに当たり,被告各標章を本件各店舗の看板,宣伝用のポスター,
チラシ,パンフレット,インターネット上のウェブサイト等に付して,宣
伝,広告を行った。
イ被告各標章は,いずれも本件商標と類似する。
また,被告による本件各店舗におけるそばを含む飲食物の提供は,本件
商標権の指定役務と同一又は類似する役務に当たる。
3争点
本件の争点は,①被告による本件商標権侵害の不法行為の成否,具体的には,
本件商標権について被告が被告主張の「使用権原」を有していたかどうか(争
点1),②被告が賠償すべき原告の損害額(争点2)である。
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(本件商標権侵害の不法行為の成否)について
原告の主張
ア被告による被告各標章についての前記第2の2アのとおりの使用(以
下「本件使用」という。)は,原告の本件商標権の侵害とみなす行為(商
標法37条1号)に該当し,原告に対する不法行為を構成する。
イこれに対し,被告は,後記のとおり,タスコシステムから本件各店舗等
に関する営業権(本件商標権を含む。)の譲渡を受けた正華産業株式会社
(以下「正華産業」という。)が上記譲渡に係る事業を法人化して被告を
設立し,これに伴い本件商標権の使用権原を取得したから,被告による被
告各標章についての本件使用は,本件商標権の侵害に当たらない旨主張す
る。
しかしながら,商標権の移転は,登録をしなければその効力を生じない
ところ(商標法35条,特許法98条1項1号),本件商標権について,
タスコシステムから正華産業に対して移転登録はされておらず,かえっ
て,本件商標権は,タスコシステムからコレスケイト,コレスケイトから
原告へと順次譲渡され,それぞれ移転登録がされたものであるから,被告
の主張は失当である。
被告の主張
タスコシステムは,平成20年8月1日,正華産業に対し,当時,タスコ
システムが経営していた本件各店舗等の飲食店に関するすべての営業権を
譲渡し,その営業権の中には,本件商標権も含まれていた。
そして,正華産業は,タスコシステムから譲り受けた上記営業権に係る事
業を法人化し,被告を設立させたものであり,これに伴い,被告は,本件商
標権の使用権原を取得した。
したがって,被告による被告各標章についての本件使用は,本件商標権の
使用権原に基づくものであり,本件商標権の侵害に当たらないから,原告主
張の不法行為は成立しない。
2争点2(原告の損害額)について
原告の主張
ア使用料相当額
被告による本件使用が原告の本件商標権侵害の不法行為を構成する
ことは,前記1のとおりである。
本件使用がされた平成21年2月18日から平成23年1月7日ま
での間,被告は,本件各店舗において,別紙損害計算書の「売上」欄の
各「売上合計」記載の売上げを計上した。
そして,原告が本件商標の「使用に対し受けるべき金銭の額に相当す
る額」(商標法38条3項)(使用料相当額)は,上記売上金額の1%
に当たる479万3924円(別紙損害計算書の「使用料相当損害金」
欄記載の合計額)である。
したがって,原告の商標法38条3項に基づく使用料相当額の損害額
は,上記と同額である。
イ弁護士費用
被告による本件商標権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相
当額の原告の損害額は,前記アの損害額の10%に当たる47万9392
円が相当である。
ウまとめ
以上によれば,原告は,被告に対し,本件商標権侵害の不法行為に基づ
く損害賠償として527万3316円(前記ア及びイの合計額)及び内金
479万3924円に対する不法行為の後である平成23年1月8日か
ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
ることができる。
被告の主張
原告主張の損害額は争う。
ただし,被告が,平成21年2月18日から平成23年1月7日までの間,
本件各店舗において,別紙損害計算書の「売上」欄の各「売上合計」記載の
売上げを計上したことは認める。
第4当裁判所の判断
1争点1(本件商標権侵害の不法行為の成否)
被告各標章が本件商標と類似すること,被告による本件各店舗におけるそ
ばを含む飲食物の提供は,本件商標権の指定役務と同一又は類似する役務に
当たることは当事者間に争いがない。
そうすると,被告による被告各標章についての本件使用は,原告の本件商
標権の侵害とみなす行為(商標法37条1号)に該当し,原告に対する本件
商標権侵害の不法行為を構成するというべきである。
これに対し,被告は,タスコシステムから本件商標権を含む本件各店舗等
の飲食店に関するすべての営業権の譲渡を受けた正華産業が,上記譲渡に係
る事業を法人化して被告を設立させ,これに伴い被告は,本件商標権の使用
権原を取得したものであり,被告による本件使用は,上記使用権原に基づく
ものであるから,本件商標権の侵害に当たらない旨主張する。
しかしながら,商標権の譲渡(移転)は,登録をしなければ,その効力を
生じないところ(商標法35条において準用する特許法98条1項1号),
被告が主張するタスコシステムから正華産業への本件商標権の譲渡につい
ては,その登録がされたことを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,被告による本件使用が本件商標権の使用権原に基づくとの被
告の上記主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
2争点2(原告の損害額)
使用料相当額
本件使用がされた平成21年2月18日から平成23年1月7日までの
間,被告が,本件各店舗において,別紙損害計算書の「売上」欄の各「売上
合計」記載の売上げを計上したことは当事者間に争いがない。
そして,証拠(甲14ないし18)及び弁論の全趣旨によれば,本件商標
の使用料相当額は,売上金額の1%と認めるのが相当である。
そうすると,本件使用に係る原告の商標法38条3項に基づく使用料相当
額の損害額は,原告の主張するとおり,別紙損害計算書の「使用料相当損害
金」欄記載の合計額479万3924円と認められる。
弁護士費用
被告による本件商標権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当
額の原告の損害額は,本件事案の内容,審理の経過等諸般の事情を考慮し,
47万円と認めるのが相当である。
まとめ
以上によれば,原告は,被告に対し,本件商標権侵害の不法行為に基づく
損害賠償として526万3924円(前記との合計額)及び内金479
万3924円に対する不法行為の後である平成23年1月8日から支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることがで
きるというべきである。
3結論
以上によれば,原告の請求は,526万3924円及び内金479万392
4円に対する平成23年1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員
の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし,その余は理由
がないからこれを棄却することとし,訴訟費用については,民事訴訟法64条
ただし書の規定により被告に全部負担させることとし,主文のとおり判決す
る。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官大鷹一郎
裁判官大西勝滋
裁判官上田真史
(別紙)被告標章目録
1北前そば高田屋
※標準文字。字体は問わない。


45
67


10
11
(別紙)商標目録
(別紙)損害計算書
使用料相当損害金
高田屋北3条店高田屋南2条店売上合計(売上合計×1%)
1H21.02(2/18-2/28;11日間)\5,131,340\2,234,670\7,366,010\73,660
2H21.03\17,962,891\7,438,781\25,401,672\254,016
3H21.04\17,696,448\6,061,635\23,758,083\237,580
4H21.05\15,026,769\5,602,216\20,628,985\206,289
5H21.06\17,280,856\5,711,559\22,992,415\229,924
6H21.07\18,041,693\5,700,140\23,741,833\237,418
7H21.08\15,310,073\5,208,535\20,518,608\205,186
8H21.09\15,812,591\5,035,642\20,848,233\208,482
9H21.10\16,848,494\5,142,121\21,990,615\219,906
10H21.11\15,447,059\4,893,221\20,340,280\203,402
11H21.12\20,545,477\7,007,623\27,553,100\275,531
12H22.01\15,200,949\4,823,790\20,024,739\200,247
13H22.02\14,230,646\4,430,271\18,660,917\186,609
14H22.03\18,403,413\5,622,986\24,026,399\240,263
15H22.04\17,192,971\4,626,351\21,819,322\218,193
16H22.05\14,170,596\4,516,670\18,687,266\186,872
17H22.06\15,630,982\5,000,309\20,631,291\206,312
18H22.07\14,888,177\5,016,700\19,904,877\199,048
19H22.08\12,975,612\4,689,349\17,664,961\176,649
20H22.09\14,156,765\3,887,185\18,043,950\180,439
21H22.10\14,461,539\4,400,885\18,862,424\188,624
22H22.11\13,966,418\5,069,692\19,036,110\190,361
23H22.12\17,623,065\6,512,902\24,135,967\241,359
24H23.01(1/1-1/7;7日間)\2,181,987\573,473\2,755,460\27,554
\4,793,924
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