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平成27年11月17日判決言渡
平成20年(行ウ)第602号都市計画決定無効確認等請求事件
主文
1本件各訴えのうち,都市計画決定の無効確認を求める訴え,都市計画の廃止
手続を求める訴え,都市計画の違法確認を求める訴え,原告らが都市計画法5
3条1項の規定する建築制限を受けない地位にあることの確認を求める訴え及
び都市計画決定の廃止手続をとらないことの違法確認を求める訴えを,いずれ
も却下する。
2原告X1のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1請求の趣旨
(1)別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定が無効であることを確認する。
(2)被告は,別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定に係る都市計画の廃
止手続をせよ。
(3)別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定による都市計画が違法である
ことを確認する。
(4)原告らが,別紙2物件目録記載1及び同2の不動産について,別紙1都
市計画目録記載1の都市計画決定により都市計画法53条1項の規定する建
築物の建築の制限を受けない地位にあることを確認する。
(5)被告が別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定に係る都市計画の廃止
手続をとらないことが違法であることを確認する。
(6)被告は,原告X1に対し,100万円及びこれに対する平成20年10
月28日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(7)被告は,原告X1に対し,2118万円及びこれに対する平成25年3
月13日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第2事案の概要
本件は,別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定(以下「本件都市計画決定」
といい,これによって定められた都市計画を「本件都市計画」という。)に係る
都市計画施設である幹線街路外郭環状線の2(以下「外環の2」という。)の区
域内に別紙2物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)及び同2の建
物(以下「本件建物」といい,本件土地と併せて「本件不動産」という。)を所
有して居住していたX2(平成21年▲月▲日死亡。以下「承継前原告」とい
う。)から本件不動産を相続した原告らが,外環の2に係る本件都市計画は,別
紙1都市計画目録記載2の都市計画決定に係る都市計画施設である都市高速道路
外郭環状線(以下「外環本線」という。)の構造形式が嵩上式(高架式)である
ことを基礎となる重要な事実としていたところ,別紙1都市計画目録記載2(4)
の平成19年4月16日付けの都市計画変更決定(以下「平成19年外環本線変
更決定」という。)において外環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に
変更されたことにより,本件都市計画は重要な事実の基礎を欠くこととなって違
法なものになったなどとして,①行政事件訴訟法3条4項所定の無効等確認の
訴えとして,本件都市計画決定が無効であることの確認を求め(以下,この請求
に係る訴えを「本件無効確認の訴え」という。),②行政事件訴訟法3条6項
1号所定のいわゆる非申請型の義務付けの訴えとして,本件都市計画の廃止手続
の義務付けを求め(以下,この請求に係る訴えを「本件義務付けの訴え」とい
う。),③行政事件訴訟法4条所定の公法上の法律関係に関する確認の訴えと
して,(a)本件都市計画が違法であることの確認,(b)原告らが本件不動産に
ついて都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を受けない地位にあ
ることの確認,及び,(c)被告が本件都市計画の廃止手続をとらないことが違
法であることの確認を求める(以下,これら(a)ないし(c)の各請求に係る訴えを
併せて「本件各法律関係確認の訴え」という。)ほか,承継前原告から本件不動
産以外の全ての遺産を相続した原告X1が,④承継前原告において,外環の2
に係る都市計画の廃止義務の懈怠という被告による不作為の違法な公権力の行使
により,承継前原告が,本件不動産を収用されるという不安を抱いたり,同項の
規定する建築物の建築の制限等がされたりして,財産権(憲法29条1項),居
住の自由(憲法22条1項)及び平穏に生活する自由(憲法13条)を侵害され
たことにより,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料100万円及びこれに対す
る遅延損害金の支払請求権を有していたところ,これを相続したとしてその支払
を求め(以下,この請求に係る訴えを「本件国家賠償請求の訴え」という。),
⑤少なくとも平成19年外環本線変更決定において外環本線の構造形式が嵩上
式から大深度地下方式に変更されたことにより,外環の2に係る都市計画の根拠
とされた公共的必要性が消滅し,本件都市計画決定に伴う都市計画法53条1項
の規定する建築物の建築の制限が承継前原告に対して特別な犠牲を課すものとな
ったため,承継前原告が,憲法29条3項に基づき,建築物の建築の制限による
本件土地の価格の下落分2118万円の損失補償の請求権を有していたところ,
これを相続したとして当該損失補償及びこれに対する遅延損害金の支払を求める
(以下,この請求に係る訴えを「本件損失補償の訴え」という。)事案である。
1関係法令の定め
本件の関係法令の定めは,別紙3「関係法令の定め」に記載のとおりである
(別紙中で定義した略称等は,以下の本文においても,同様に用いるものとす
る。)。
2前提事実(証拠等の掲記のないものは当事者間に争いがない。)
(1)当事者
ア承継前原告(大正15年▲月▲日生)は,昭和44年1月7日に本件土
地の持分2分の1を相続によって取得し,昭和51年12月27日に本件
土地上に本件建物を建築し,昭和53年6月5日に本件土地の残余の持分
を相続によって取得し,本件不動産を所有していた。(甲15の1ないし
4,甲16の1ないし3,甲128,甲129,甲161)
イ承継前原告は,平成21年▲月▲日に死亡した。平成22年2月9日
の遺産分割協議により,本件不動産は,承継前原告の妻である原告X1と
長男である原告X3が各2分の1の割合により相続し,その余の承継前原
告の遺産は,全て原告X1が単独で相続した。(甲128,129,甲1
61)
ウ本件不動産(承継前原告及び原告X1の住所地)は,本件都市計画決定
に係る都市計画施設である外環の2の区域内に存在する。
エ被告は,外環本線及び外環の2に係る各都市計画についての建設大臣の
権限を承継した地方公共団体である。
(2)東京外かく環状道路
ア東京外かく環状道路は,都心から約15kmの圏域において,都心から
郊外に向けて放射方向に延びる高速道路を環状に連絡しようとする延長約
85kmの自動車専用高速道路である。
イ東京外かく環状道路のうち,関越自動車道から東名高速道路までの約1
8kmの区間が都市高速道路外郭環状線(外環本線)である。
(3)外環本線及び外環の2に係る昭和41年の各都市計画決定
ア建設大臣は,昭和41年7月30日,旧都市計画法3条に基づき,別紙
1都市計画目録記載2(1)のとおり,東京都世田谷区α1を起点とし,同
区α2等を経由し,東京都練馬区α3埼玉県界を終点とする幅員23m
(ただし,一部幅員の異なる区間がある。),延長約1万8060mの外
環本線に係る都市計画決定をし,これを告示した(建設省告示第2430
号)。
なお,旧都市計画法等の当時の法令の規定上,都市施設である道路の構
造形式は都市計画決定の内容とはされていなかったものの,外環本線の構
造形式は上記の都市計画決定の時点で嵩上式(高架式)とされていた。
イ建設大臣は,上記アの外環本線に係る都市計画決定がされた日と同じ昭
和41年7月30日,旧都市計画法3条に基づき,別紙1都市計画目録記
載1(1)のとおり,東京都世田谷区α4×番地を起点とし,東京都武蔵野
市α5を経由し,東京都練馬区α6×番地を終点とする幅員40m(ただ
し,一部幅員の異なる区間がある。),延長約9650mの外環の2に係
る都市計画決定をし,これを告示した(建設省告示第2428号)。
(4)都市計画法の施行
旧都市計画法は,現行の都市計画法が昭和44年6月14日に施行された
ことにより,同日をもって廃止され(都市計画法附則1項,2項1号,都市
計画法施行法1条,都市計画法の施行期日を定める政令),外環の2に係る
都市計画及び外環本線に係る都市計画は,都市計画法の規定による相当の都
市計画とみなされた(都市計画法施行法2条)。
(5)外環本線及び外環の2に係る昭和61年の各都市計画変更決定
ア被告は,昭和61年1月21日,外環本線の関越道から埼玉県境までの
区間の構造形式を嵩上式から掘割式に変更し,同区間の車線数を6車線と
するとともに,両側に環境施設帯を設置するために幅員を23mから64
mに拡幅することとして,都市計画法21条に基づき,別紙1都市計画目
録記載2(2)のとおり,外環本線に係る都市計画を変更する旨の決定をし,
これを告示した(東京都告示第56号)。
なお,上記の都市計画変更決定において,都市計画法施行規則7条2号
の規定に基づき,外環本線を基本的に嵩上式とすることが正式に都市計画
の内容とされた。(甲25,乙38の1及び2)
イ被告は,上記アの外環本線に係る都市計画変更決定がされたのと同じ昭
和61年1月21日,外環の2について,上記アの外環本線に係る都市計
画変更決定において外環本線が掘割式に変更された部分と重なり合う区間
(放射第7号線(通称「α7」)から補助第230号線までの区間)約6
80mを廃止することとし,都市計画法21条に基づき,別紙1都市計画
目録記載1(2)のとおり,外環の2に係る都市計画を変更する旨の決定を
し,これを告示した(東京都告示第56号)。
(6)外環本線に係る平成4年の都市計画変更決定
被告は,平成4年6月1日,外環本線の関越道のインターチェンジ部分
(東京都練馬区α8,同区α9間)の幅員を変更することとし,別紙1都市
計画目録記載2(3)のとおり,外環本線に係る都市計画を変更する旨の決定
をし,これを告示した(東京都告示第667号)。
(7)外環本線に係る平成19年の都市計画変更決定(平成19年外環本線変
更決定)
被告は,平成19年4月6日,外環本線の構造形式を基本的に嵩上式から
地下式に変更し,前記(5)アの都市計画変更決定において車線数を6車線と
された区間以外の区間の車線数も6車線に増やすこととし,別紙1都市計画
目録記載2(4)のとおり,外環本線に係る都市計画を変更する旨の決定(平
成19年外環本線変更決定)をし,これを告示した(東京都告示第588
号)。
(8)本件訴えの提起
承継前原告は,平成20年10月16日,本件訴えを提起した。(顕著な
事実)
(9)外環の2に係る一部事業認可及び都市計画一部変更決定
ア被告は,平成24年7月18日,外環の2のうちの東京都練馬区α10
×番から同区α11×番までの延長1000m,幅員48mないし78m
の区間(その時点における外環の2の最北端に位置し,関越道のα12ジ
ャンクションに隣接する区間。以下「α12JCT区間」という。)につ
いての都市計画事業である「東京都市計画道路事業幹線街路外郭環状線の
2」について,都市計画法59条2項に基づき,自らを施行者として,関
東地方整備局長に対して都市計画事業の認可の申請をし,同年9月7日付
けで認可を受け,同月27日に同法62条1項に基づく告示がされた(関
東地方整備局告示第335号)。(甲107の1ないし5,108,10
9,乙50)
イ被告は,平成26年11月28日,外観の2の幹線街路放射第6号線か
ら幹線街路放射第7号線までの区間(延長約4370m)の車線の数を2
車線と決定し,東京都練馬区α13から同区α10までの区間(延長約2
840m。以下「練馬3キロ区間」という。)の幅員を40mから22m
に変更し,同区α13,α14及びα15各地内に面積約5100㎡の交
通広場を設置することとし,都市計画法21条に基づき,別紙1都市計画
目録記載1(3)のとおり,外環の2に係る都市計画を変更する旨の決定を
し,これを告示した(東京都告示第1573号)。(甲166,甲171
の1ないし5)
3主たる争点
(1)本件無効確認の訴えについて
ア本件都市計画決定の処分性の有無(争点①)
イ本件都市計画決定の無効事由の有無(争点②)
(2)本件義務付けの訴えについて
ア本件都市計画の廃止手続の処分性の有無(争点③)
イ本件都市計画の廃止手続がとられないことによる重大な損害を生ずるお
それの有無及びその損害を避けるための他の適当な方法の有無(争点④)
ウ本件都市計画の廃止手続の義務付けの可否(争点⑤)
(3)本件各法律関係確認の訴えについて
ア本件各法律関係確認の訴えに係る確認の利益等の有無(争点⑥)
イ本件各法律関係確認の訴えにおいて確認の対象となる公法上の法律関係
(本件都市計画の違法性,本件不動産についての都市計画法53条1項の
規定する建築物の建築の制限,本件都市計画の廃止手続をとらないことの
違法性)の存否(争点⑦)
(4)本件国家賠償請求の訴えについて
ア外環の2に係る都市計画の廃止義務違反による不作為の違法な公権力の
行使の有無(争点⑧)
イ承継前原告の損害(争点⑨)
(5)本件損失補償の訴えについて
ア都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を理由とする本件
土地に係る損失補償の要否(争点⑩)
イ承継前原告の損失(争点⑪)
4争点についての当事者の主張
(1)本件都市計画決定の処分性の有無(争点①)
(原告ら)
ア処分性の判断基準
抗告訴訟の対象となる行政庁の処分とは,その行為によって直接国民の
権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているも
のをいう。
イ都市計画決定に伴う都市計画施設の区域内における建築物の建築制限等
により当該区域内に土地を所有する者の権利が直接的に侵害,制限される
こと
本件都市計画決定は,都市施設である道路についての都市計画決定であ
るところ,都市施設に関する都市計画決定が告示されると,都市計画施設
の区域内において建築物の建築をしようとする者は,原則として都道府県
知事等の許可を受けなければならず(都市計画法53条1項),しかも,
都道府県知事はいつでも,何の要件も必要とせずに,都市計画施設の区域
内において同法55条1項の規定による区域の指定を行うことができると
ころ,指定された区域内で行われる建築物の建築については,同法54条
の規定にかかわらず,同法53条1項の規定による建築許可をしないこと
ができるものとされている。同法55条1項の規定によって建築物の建築
が許可されない場合には,都道府県知事等による土地の時価による買取り
がされる旨定められているが(同法56条),土地を売却せずに土地上の
建物を建築したい所有者にとっては何の意味もない。
また,同法55条1項の規定による区域の指定がされ,同条4項の公告
がされたときに,同法57条1項の規定による公告がされると,当該区域
内の土地を有償で譲り渡そうとする者は,その予定対価の額等を都道府県
知事等に届け出なければならなくなり,都道府県知事は,上記の届出があ
った後30日以内に通知をすることにより,当該土地を予定対価の額で買
い取ることができるものとされている(同条)。
さらに,都市計画施設の区域内に土地を所有する者は,都市計画決定に
基づく建築物の建築制限や土地の有償譲渡の制限により,当該土地を他に
売却しようとしても通常の取引の場合のように買手を見つけることが困難
になるという制限を受けることになり,特にこの制限については排除する
ために争うべき後続する処分が存在しない。
このように,都市施設に関する都市計画決定がされると,都市計画施設
の区域内においては,建築物の建築や土地の譲渡を自由に行うことができ
なくなるという制限や,通常の取引の場合のように所有する土地の買手を
見つけることが困難になるという制限を受けることになり,これは,都市
計画施設の区域内に土地を所有する者の財産権を直接的に侵害,制約する
ものである。
したがって,都市施設に関する都市計画決定は,国民の法的地位に直接
的な影響を及ぼすものであるから,抗告訴訟の対象となるべき処分性が認
められる。
ウ都市計画決定により土地の収用等を受けるべき地位に立たされること
都市施設に関する都市計画事業は,都市計画決定,都市計画事業の認可,
収用というように手続が進行していくところ,都市計画事業の認可は,都
市計画決定を前提として行われるものであり(都市計画法61条1号),
しかも,都市計画事業の認可の基準は,①申請手続が法令に違反しないこ
と,②事業の内容が都市計画に適合し事業施行期間が適切であること,③
その他行政機関の許可等が必要な場合には許可等がされていること(ある
いはそれが確実なこと)(同条)というごく単純なものである上,上記の
各要件のうち,都市計画事業の認可の際に実質的な判断があり得る②の
「事業の内容が都市計画に適合し」という要件の審査は,実際は形式的な
図面等の照合が行われるにすぎないため,都市計画決定がされたのに都市
計画事業の認可がされないようなことは極めて例外的である。
また,都市計画決定に伴う建築物の建築の制限等の効果も,都市計画が
事業化されてこれが遂行されるまでの間に,事業の障害となる事態が発生
することを防止するためのものである。
さらに,都市計画事業において土地の収用等を受けるべき地位に立たさ
れていることの排除を求めるという場合,一応,都市計画決定に続く都市
計画事業の認可を待ってこれに対する抗告訴訟を提起することが考えられ
るものの,都市施設に関する都市計画は,必ずしも都市計画事業として施
行しなければならないというわけではなく,同法59条の都市計画事業の
認可を受けることなく都市計画を施行することも可能であるため,都市計
画事業の認可前から任意買収による土地取得が進められ,買収に応じて他
に転出する者が現れたり,さらには,都市計画施設を整備する工事が進行
したりした結果,都市計画事業の認可に対する抗告訴訟において,都市計
画決定が違法であるとして当該事業認可が違法であると判断されたとして
も,行政事件訴訟法31条1項に基づき特別の事情による請求の棄却の判
決(以下「事情判決」という。)がされてしまうことが大いに予想される。
このように,都市計画施設についての都市計画事業において,都市計画
決定は,都市計画の手続の一連のプロセスの中で,土地の収用等にまで継
続する権利制限の発端となる行為であり,同法の仕組みからすれば,都市
計画決定がされた段階で,都市計画施設の区域内の土地の土地所有者は,
土地の収用等を受ける地位に立たされる。
したがって,都市施設に関する都市計画決定は,都市計画施設の区域内
の土地所有者の法的地位を具体的に変動させるものということができるか
ら,抗告訴訟の対象となるべき処分性が認められる。
エ都市計画決定がされているという段階で司法判断の対象とするのに十分
な紛争の成熟性が認められること
(ア)都市施設に関する都市計画決定について,都市計画法(平成23年
法律第105号による改正前のもの)11条2項は,「都市施設につい
ては,都市施設の種類,名称,位置及び区域その他政令で定める事項を
都市計画に定めるものとする」とし,それを受けて,都市計画法施行令
6条1項は,「法第11条第2項の政令で定める事項は,次の各号に掲
げる施設について,それぞれ当該各号に定める」ものとし,同項1号は,
「道路種別及び車線の数(車線のない道路である場合を除く。)その
他の構造」を定めるものと規定している。また,同条2項は,「前項の
種別及び構造の細目は,国土交通省令で定める」とし,これを受けて,
都市計画法施行規則7条は,「令第6条第2項の国土交通省令で定める
種別及び構造の細目は,次の各号に掲げる種別及び構造について,それ
ぞれ当該各号に掲げるものとする」とし,同条1号は,「道路の種別
自動車専用道路,幹線街路,区画街路又は特殊街路の別」と定め,同条
2号は「道路の構造車線の数(特殊街路その他の車線がない道路であ
る場合を除く。),幅員並びに嵩上式,地下式,掘割式又は地表式の別
及び地表式の区間において鉄道又は自動車専用道路若しくは幹線街路と
交差するときは立体交差又は平面交差の別」を定めるものと規定してい
る。そして,都市計画の内容等は,総括図,計画図及び計画書によって
表示されており(同法14条1項),実際,都市計画事業の認可の際し
ても,図面と計画,事業の概要を示す書類を照合して適合性を判断して
いるにすぎない。
このように,一般に都市施設(道路)に関する都市計画決定では,都
市計画の内容である当該都市施設(道路)についての基本的事項は全て
定められており,都市計画決定がされた段階で司法審査を行うべき事項
は全て出尽くしているから,紛争が抽象的であるとか,不明確であると
はいえず,現に,都市計画事業の認可に対する抗告訴訟においても,そ
こで争われるのは専ら都市計画決定の違法性である。
したがって,都市施設に関する都市計画決定は,その内容について,
司法審査を受けるに足りる具体性を備えており,十分に紛争としての成
熟性があるから,抗告訴訟の対象となるべき処分性が認められる。
(イ)特に本件都市計画決定については,本訴訟係属中の平成24年9月
に外環の2の一部であるα12JCT区間についての都市計画事業の認
可がされているところ,α12JCT区間についての都市計画事業認可
申請書に記載された「申請の理由」等からすると,南北道路のネットワ
ークの強化のため,外環の2の残りの部分が事業化されることが当然の
前提となっているものと考えられる。さらに,α12JCT区間に続く
練馬3キロ区間についても,事業化に向けた具体的な準備のために平成
26年11月28日に都市計画変更決定がされた。
都市計画法は,都市計画を「当該都市の健全な発展と秩序ある整備を
図るために必要なものを,一体的かつ総合的に定めなければならない」
と規定していることからすると(同法13条1項本文),一体的総合的
に定められている都市計画の一部が事業化された場合,他の部分につい
ても,事業化される蓋然性が格段に高まっているといえる。また,都市
計画の一部について都市計画事業の認可がされていると,都市計画事業
の認可がされている区域外の住民等が自己の居住地を事業地とする都市
計画事業の認可を待ってこれに対する抗告訴訟を提起した場合に,既に
都市計画の一部について都市計画事業の認可がされて事業化が進行し,
同法に基づく種々の手続が進行してしまっているとして,その訴訟にお
いて,都市計画決定が違法であるとして当該事業認可が違法であると判
断されたとしても,事情判決がされてしまう可能性が高いことからする
と,実効的な救済を図るためには,都市計画の一部について都市計画事
業の認可があった段階で都市計画決定に対する取消訴訟等を認める必要
がある。
そうすると,α12JCT区間について事業化され,また,それに続
く練馬3キロ区間について事業化に向けた具体的な準備のための都市計
画変更決定がされた本件都市計画決定については,司法判断を受けるべ
き紛争の成熟性があるから,抗告訴訟の対象となるべき処分性が認めら
れる。
オ小括
以上によれば,都市施設に関する都市計画決定,特に本件都市計画決定
のように都市計画の一部が事業化されている都市計画決定については,抗
告訴訟の対象となるべき処分性が認められる。
(被告)
ア処分性の判断基準
抗告訴訟の対象となる行政処分とは,公権力の主体たる国又は地方公共
団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し
又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
イ都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限等は都市計画決定
に処分性を認める根拠とはならないこと
都市施設に関する都市計画決定されると,都市計画施設の区域内におい
ては,建築物の建築につき,原則として都道府県知事等の許可を要するこ
とになるところ(都市計画法53条1項),この建築物の建築の制限は,
具体的な施行時期が未定の段階において,都市計画として決定される計画
についての将来の事業の円滑な施行を確保するために付与された付随的な
効果であり,当該区域内の不特定多数の者に対する一般的,抽象的な規制
にすぎず,特定の個人に対して具体的な処分がされたというものではない。
上記の建築物の建築の制限は,建築物を建築しようとする者が,建物の建
築の許可申請をして不許可となったときに初めて具体化するものであり,
このような場合には,当該不許可に対する抗告訴訟を提起し,その手続に
おいて,都市計画決定の違法性を争うことも可能である。また,上記の建
築物の建築の制限は,建築物の建築に限り許可制とした上で,軽易なもの
は許可を不要とし(同項1号),木造2階建程度の建物などで移転,除去
が比較的容易なものについては許可をしなければならないとされているな
ど(同法54条3号),都市計画事業の認可後の建築物,工作物等に関す
る制限(同法65条)と比べて,制限の内容としては弱く,違反者に対し
て罰則が適用されることもない。このように,同法53条1項の規定する
建築物の建築の制限は,都市計画決定の効果として個人の権利に対し直接
影響を及ぼすようなものではなく,都市計画決定に伴う付随的な効果にと
どまるものであり,建築物の建築が不許可とされた場合にこれを争う手段
もあることからすると,都市計画決定の処分性を認める根拠とはならない。
また,都市計画施設の区域内において,土地の有償譲渡について事前に
都道府県知事への予定対価の額等の届出を要することとされ,この届出が
された場合に都道府県知事による買取り可能になるのは,都道府県知事等
が同法55条1項の規定による指定を行った区域内に限られており(同法
57条1項),都市計画決定がされたからといって,当然に上記の区域の
指定がされるわけではないことからすると(現に本件都市計画決定に係る
外環の2の区域については,同法55条1項の規定による都知事による区
域の指定はされていない。),同法57条の規定する土地の有償譲渡の制
限も,都市計画決定の処分性を認める根拠とはならない。
その他,原告らが主張する土地を売却する困難等についても,都市計画
決定の処分性を認める根拠となるものではない。
ウ都市計画決定により土地の収用等を受けるべき地位に立たされるわけで
はないこと
外環の2のような一市町村の区域を越える広域の見地から決定すべき都
市施設については,現行法上,都道府県が,都道府県都市計画審議会の議
を経て,国土交通大臣の同意を得た上,都市計画決定をしてその告示をす
る(都市計画法11条1項1号,15条1項6号,18条,20条)。そ
の後,都道府県が,当該都市計画施設(同法4条6項)の整備を都市計画
事業(同条15項)として施行しようとする場合には,国土交通大臣の認
可を受ける必要があり(同法59条2項),この都市計画事業の認可の告
示がされることによって,施行者である都道府県に対して事業地内の土地
を収用し得る地位が付与されることになる(同法70条1項,土地収用法
第4章)。
このように,都市計画事業は,その制度上,都市計画決定から都市計画
事業の完了までの間にいくつかの手続が予定されているところ,都市計画
決定の段階では,総括図,計画図及び計画書において,計画の大体の輪郭
が示されるにすぎず(同法14条,都市計画法施行規則9条),事業の施
行時期も定まっているわけでもなく,今後進展する手続の基本となる事項
が一般的,抽象的に定められているにすぎない(同法11条1項,3項,
都市計画法施行令6条,6条の2)。また,都市計画は,その後の状況の
変化に応じた変更が当然に予定されており,同法には,都市計画決定後の
都市計画の変更の手続(同法21条)が定められているなど,必ずしも,
当初の都市計画決定で定められた都市計画のとおりに都市計画事業の認可
や土地収用が行われるとは限らず(現に外環本線に係る都市計画について
は,昭和41年7月の都市計画決定後も,構造形式の嵩上式から堀割式へ
の変更,幅員の変更などの都市計画決定の変更を経て,平成19年4月に
は嵩上式構造形式が地下式へと変更する旨の決定がされており,外環の2
に係る都市計画についても,昭和61年1月に,一部の区間が廃止されて
いる。),都市計画の変更によって,以前は都市計画の区域内にあるとさ
れていた土地が,その区域から除外されて土地収用を受けることがなくな
ることもあり得るのであるから,都市計画決定がされたことから直ちに,
当該都市計画施設の区域内の土地の所有者が土地収用等を受ける地位に立
たされるとはいえない。
そうすると,都市計画決定の段階では,都市計画施設の区域内の土地所
有者等の権利にどのような具体的な変動を及ぼすかがいまだ確定されたと
はいえないから,都市計画決定は,個人の具体的権利義務に影響を及ぼす
ものではなく,処分性は認められない。
エ都市計画決定の段階では紛争として成熟している段階にあるとはいえな
いこと
(ア)都市施設である道路についての都市計画決定の内容は,現行の都市
計画法を前提としても,道路の種別(自動車専用道路,幹線街路,区画
街路又は特殊街路の別),道路の構造(車線の数,幅員並びに嵩上式,
地下式,堀割式又は地表式の別及び地表式の区間において鉄道又は自動
車専用道路若しくは幹線が入りと交差するときは立体交差又は平面交差
の別),名称,位置及び区域という基本的な枠組みを定めるものにすぎ
ない(同法11条2項,都市計画法施行令6条1号,都市計画法施行規
則7条)。
一方,都市計画事業の認可を申請する段階に至ると,施行者の名称,
都市計画事業の種類,事業計画(収用又は使用の別を明らかにした事業
地,設計の概要,事業施行期間)明らかにした上で,事業地を表示する
図面(①事業地の位置を示した縮尺5万分の1以上の地形図,②収用す
べき部分・使用すべき部分や収用・使用すべき物件を色分けし,主要な
物件を図示した縮尺2万5千分の1以上の実測平面図),設計の概要を
表示する図面(主要な施設の位置及び内容を示した縮尺2万5千分の1
以上の平面図),資金計画書(収支予算を明らかにして作成されたもの。
収入の確実と認められる金額を収入金として計上し,適正かつ合理的な
基準により算定した経費を支出金として計上したもの。)などを提出す
ることが必要となる(同法60条,同規則44条ないし47条)。
このように,都市計画決定の段階では,都市計画事業の基本的な枠組
みが決まっているだけで,その具体的な施行内容,施行時期,資金計画
も,都市計画施設の区域の権利者から所有権を取得すべきなのか使用で
足りるかということすら決まっていないことからすると,いまだ都市計
画施設の区域内の土地所有者等の法的地位が影響を受けているとはいえ
ず,紛争として成熟しているとはいえない。
(イ)被告が外環の2の一部であるα12JCT区間について都市計画事
業の認可を受けたのは,この区間において,外環本線の事業が実施され
たことが前提となっている。すなわち,外環本線のうちのα12JCT
区間と重なる付近では,その北端において既に供用されている関越道以
北の東京外かく環状道路と接続するところ,この関越道以北の部分の構
造形式は堀割式であり,これに接続する部分については,大深度地下の
公共的利用に関する特別措置法及び同施行令の規定する大深度地下を利
用することができず,地下を通るにしても大深度ではなく,地表に近い
ところとなるため,事業実施には用地買収が必要となる。また,外環本
線に係る都市計画には,α12ジャンクションで接続する関越道への連
結路及び一般道への出入口でα7インターチェンジ(仮称)における連
結路の建設事業が含まれているものの,これらの連結路は地下から地上
に移行するものであり,一部は嵩上式となるため,この部分についても
用地買収が必要となる。さらに,外環本線のトンネル部分の掘削にはシ
ールド工法を採用することができるが,外環本線のα12ジャンクショ
ン付近については,連結路が地表や高架となる部分はもとより,地下に
おける連結路への分岐部分や連結路が地下を通る部分も開削工法で施工
されるため,その大部分で地上部を利用して建設工事が行われることに
なる。加えて,この外環本線の事業地には,もともと都道であるα16
通り及びα17通り(いずれも幅員約4mの歩道のない一方通行路)が
あるが,これらの道路は,外環本線の事業化により,建設工事が施工さ
れる段階から道路としての機能を失ってしまうため,このままでは当該
地域の道路ネットワークが分断されることになるところ,外環本線の事
業者である国(国土交通省)が現状を復旧する場合,単に現状の狭隘な
一方通行の道路に復旧するにとどまるため,α16通り及びα17通り
を管理する被告は,地域の円滑な交通や歩行者の安全の確保を図るため
の道路整備を推進する責務を負う立場として,外環の2のα12JCT
区間の事業を実施することにより,地上部の道路を往復二車線で緑豊か
な歩道を設けた快適な道路に改良することとし,外環本線の整備に合わ
せ,外環の2に係る計画区間のうちα7から練馬主要区道33号線(前
原交差点)までの約1kmの区間(α12JCT区間)について,都市
計画事業によって整備することとしたのである。その他,外環の2に係
る都市計画と外環本線に係る都市計画とは,α12JCT区間において
複雑に重なり合っており,二つの都市計画線が錯綜している状況にある
ため,両方の計画地にまたがっている地権者が数多く存在するところ,
この地域における外環本線の事業実施に当たっては,地下式といえども
用地買収が必要であり,仮に二つの事業実施時期がずれた場合,これら
の地権者においては,用地の事業者の移転がそれぞれの事業毎に二段階
で行われることになり,居住地や事業地の移転等の関係で生活再建を円
滑に行うに当たって支障となりかねないことから,双方の事業を同時期
に実施することが強く望まれていた。
このように,α12JCT区間について都市計画事業の認可を受けた
のは,α12JCT区間の状況に応じた特別な事情があったからであり,
α12JCT区間と残余の約8kmの区間,そのうちでも特に本件土地
の付近の区間とでは事情が異なっており,残余の約8kmの区間につい
ては,外環本線の事業に併せて事業化すべき事情は見受けられず,都市
計画事業の認可が差し迫った状況にあるとはいえない。
したがって,α12JCT区間の都市計画事業の認可等は,本件都市
計画決定について処分性を認める理由とはならない。
(2)本件都市計画決定の無効事由の有無(争点②)
(原告ら)
ア外環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたことによ
って外環の2に係る都市計画が重要な事実の基礎を欠くこととなったこと
(都市計画法13条1項違反)
(ア)都市計画基準に係る都市計画法13条1項柱書きは,都市計画につ
いて,国土形成計画,首都圏整備計画等,国土計画又は地方計画に関す
る法律に基づく計画,及び道路,河川,鉄道,港湾,航空等の施設に関
する国の計画に適合するとともに,土地利用,都市施設の設備に関する
事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを,
一体的かつ総合的に定めなければならないとし,同項11号において,
都市施設について,土地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案し
て,適切な規模で必要な位置に配置することにより,円滑な都市計画を
確保し,良好な都市環境を保持するように定め,同項19号において,
このような基準を適用するについて,同法6条1項の規定による都市計
画に関する基礎調査の結果に基づき,かつ,政府が法律に基づき行う人
口,産業,住宅,建築,交通,工場立地その他の調査の結果について配
慮することとしている。上記各規定の趣旨は,客観的,実証的な基礎調
査の結果に基づく土地利用,交通等についての現状の正しい認識及び将
来の的確な見通しを踏まえて,合理的な判断がされ,都市施設が適切な
規模で必要な位置に配置されることを確保しようとすることにある。
そして,上記のような同法の規定及びその趣旨からすれば,都市計画
について,基礎調査から導き出される個々の基礎事実の変更,消失にと
どまらず,全ての基礎調査において共通の前提とされている事実,すな
わち,基礎とされた重要な事実が大幅に変更したり,消滅したりした場
合には,当該都市計画は,同法13条1項に違反するものとなり,当該
都市計画を決定した都市計画決定は違法となる。
なお,行政処分の瑕疵を判断するにつき,処分時の事情によるべきか,
処分後判決時までに生じた事情も考慮して行うべきかについては,当該
行政訴訟における請求の目的や当事者が違法であるとする法律関係の性
質,根拠となる法令の趣旨等を勘案して決すべきところ,都市計画決定
のように,その処分の効力によって発生した法律上の効果が存続し,そ
の効果を存続させることが当該行政処分の目的内容となっているものに
ついては,当該行政処分がされた後の事情についても,当該行政処分の
効力の判断を行うに際して考慮されるべきである。したがって,都市計
画について,その基礎とされた重要な事実を欠いていた場合はもとより,
その後の事情の変化により,基礎とされた重要な事実が大幅に変更,消
滅した場合にも,重要な事実の基礎を欠くものとして,当該都市計画は,
同項に違反するものとなり,当該都市計画を決定した都市計画決定は違
法となる。これは,後記イ以下においても同様である。
(イ)この点,まず,次の諸事情からすると,外環の2は外環本線と一体
のものであり,外環本線の構造形式が嵩上式とされていたことこそが,
外環の2に係る都市計画の基礎とされた重要な事実ということができる。
aそもそも外環の2はその名が示すとおり,外環本線に係る都市計画
に伴って計画された一般道であり,付議された東京都市計画地方審議
会(以下「都計審」という。)に先立つ東京都市計画街路調査特別委
員会(以下「街路特別委員会」という。)においても,それまでされ
てきた街路計画に係る道路網の再検討とは無関係に,東京都市計画高
速道路調査特別委員会で議論されていた外環本線との関係で,付属街
路とともに,突然道路網計画に入れられたものである。しかも,外環
の2に係る議案は,外環本線に係る議案と一括して都計審に上程され,
都計審等においても,外環本線と関連付けられた説明がされているだ
けで,独自の必要性の説明は全くされないまま,3回の都計審で継続
審議された後,共に特別委員会に付され,3回の特別委員会での審理
を経て都計審で一括して決議されている。
b外環の2は,その区間は外環本線の区域と約9kmにわたって完全
に重複しており,その構造も構造形式を嵩上式とする幅員23mの外
環本線を収用することができるようにするため,幅員が40mとされ
ていたなど,高速道路である外環本線を収容するための空間として計
画されていた。
c都計審等の議事録からも明らかなように,外環の2は,構造形式を
嵩上式とする外環本線の維持管理や日照等の点で通常の利用に適しな
い土地(死に地)の利用のため,また,予想交通量から外環本線が6
車線ではなく,4車線とされた関係で,外環本線で処理することがで
きなくなった交通量を処理するため,さらには,高速道路建設である
外環本線の建設に伴う地元対策のために計画されたものであり,東京
23区周辺で急増する交通需要を処理するために必要として決定され
たことをうかがわせる事情は見当たらず,都市間ネットワーク機能も
ないなど,独自の必要性は認められない。
なお,被告は,外環本線と外環の2とが,機能,目的を異にすると
主張するが,高速道路一般の機能,目的と幹線街路一般の機能,目的
が異なることは当然であり,何ら外環本線と外環の2の一体性を否定
する理由にはならない。
d昭和41年に外環の2に係る都市計画決定がされた後も,昭和45
年に建設大臣によって外環本線に係る都市計画の凍結宣言がされると,
外環本線に係る都市計画と共に約40年間にわたって凍結され,また,
昭和61年に外環本線の一部の構造形式が嵩上式から掘割式に変更さ
れた際には,外環の2に係る都市計画のうちの上記部分と重なる部分
が自動的に廃止され,さらに,外環の2は,平成19年外環本線変更
決定において外環本線の構造形式が嵩上式から地下式に変更されるこ
とにより,「高速道路が地下化された場合に検討が必要な路線」(要
検討路線)に位置付けられた。
e外環の2に係る収用費を含む事業費についても,外環本線が設置さ
れる幅員23m分については,嵩上式の外環本線の費用(国の費用)
で収用されることになるため,収用費が不要となるとされていたなど,
独自の予算構想もなかった。
(ウ)このように,外環の2は外環本線と一体のものであり,外環の2に
係る都市計画は,外環本線の構造形式が嵩上式であることを基礎となる
重要な事実としていたところ,平成19年外環本線変更決定において外
環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたことにより,
重要な事実の基礎を欠くこととなって都市計画法13条1項に違反する
ものとなり,外環の2に係る都市計画を決定した本件都市計画決定は違
法なものとなった。そして,このことは,平成26年11月28日の都
市計画変更決定がされた時点でも同様である。
イ外環の2に係る都市計画は外環本線に係る都市計画との間で一体性,総
合性を欠くこと(都市計画法13条1項違反)
(ア)都市計画法13条1項は,その柱書き前段の後半部分において,都
市計画は「土地利用,都市施設の整備及び市街地開発事業に関する事項
で当該都市の健全な発展秩序ある整備を図るため必要なものを,一体的
かつ総合的に定めなければならない」と規定しているところ,上記のよ
うな都市計画の一体性,総合性は,単一の都市計画の内部だけで要請さ
れるものではなく,むしろ関連する複数の都市計画相互間においてこそ
要請されるものである。
そして,一定範囲の空間に関わる複数の都市計画が存在する場合,こ
れらが一体性,総合性の要請を満たしているか否かは,総体としての都
市計画という観点から,当該空間に関わる複数の都市計画の目的が有機
的に連携し,積極的に協働しているか否かによって判断されるべきであ
り,少なくとも,ある都市計画の目的が他の都市計画の目的と矛盾し,
これを阻害することになる場合には,両都市計画は,一体性,総合性を
欠くものとして,同項に違反するものとなる。また,一方の都市計画が
先行して事業化されて判断が固定化されている場合には,後続の都市計
画について,当該決定の決定権者において,先行する都市計画との間で
一体性,総合性を保持するように変更する義務が発生し,このような変
更がされなければ,後続の都市計画は,先行している都市計画との間で
一体性,総合性を欠くものとなり,当該都市計画を決定した都市計画決
定は違法となる。
(イ)外環の2と外環本線は,いずれの都市計画決定の決定主体も被告で
あり,また,共に都市施設である道路に関する都市計画であって,さら
に,昭和41年に都市計画決定がされた当時,外環の2と外環本線の区
域が重複しており,しかも,都市計画決定自体が同時にされていること
からすると,外環の2に係る都市計画と外環本線に係る都市計画とは,
一定の空間の空間形成に関する共通の目標に向けた積極的協働が求めら
れ,それゆえ,求められる一体性,総合性の程度も極めて高く,両者は,
複数の目標が単に矛盾なく両立するという程度を越えて,同一の目標あ
るいは有機的に連携した複数の目標に向けて積極的協働をすることが,
より高度に求められる。
(ウ)この点,外環本線に係る都市計画は,平成19年外環本線変更決定
において,構造形式が当初の嵩上式から大深度地下方式へと変更されて
いるところ,その目的は,外環本線が特に高度な土地利用が図られてい
る東京都内の既成市街地部を通過するため,「沿道環境を保全し,移転
等の影響を極力少なくするため」という行政目的から,用地買収や土地
収用,区分地上権設定範囲を極力小さくし,早期整備を図るというもの
であった。
これに対し,外環の2に係る都市計画は,外環本線の変更前のルート
と同一の地上部に幹線街路を建設するというものであり,この計画が事
業化された場合には,変更前の外環本線と重複する正に高度な土地利用
が図られている既成市街地部を縦断して用地買収や土地収用等が全面的
に必要となるから,外環の2に係る都市計画の内容及びこれを整備した
場合の効果は,既に先行している外環本線計画の目的と積極的に協働し
ているどころか,その計画の目的達成を不可能か,少なくとも著しく困
難とするものであって,外環本線に係る都市計画の目的と一見明白かつ
本質的に矛盾するものとなっている。
したがって,外環の2に係る都市計画は,外環本線に係る都市計画と
の間で一体性,総合性を欠くものとなっており,都市計画法13条1項
に違反するものとなっているから,外環の2に係る都市計画を決定した
本件都市計画決定は違法である。そして,このことは,平成26年11
月28日の都市計画変更決定がされた時点でも同様である。
ウ外環の2は「当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なも
の」ではなく,「適切な規模で必要な位置に配置」されたものでもないこ
と(都市計画法13条1項違反)
(ア)都市計画法13条1項柱書き前段は,都市計画は「当該都市の健全
な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを,一体的かつ総合的に定
めなければならない」と規定し,同項11号前段は,「都市施設は,土
地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,適切な規模で必要
な位置に配置することにより,円滑な都市活動を確保し,良好な都市環
境を保持するように定めること」と規定している。
したがって,都市施設に関する都市計画が同項の規定する都市計画基
準に適合しているというためには,当該都市施設が「当該都市の健全な
発展と秩序ある整備を図るため必要なもの」であり,かつ,「土地利用,
交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,適切な規模で必要な位置に
配置」されたものであることを要する。
(イ)しかるに,本件都市計画決定に係る都市計画施設である外環の2は,
次のとおり,「当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要な
もの」ではないし,「土地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案
して,適切な規模で必要な位置に配置」されたものでもない。
aまず,道路建設の必要性は,基本的に自動車交通の処理機能の観点
から検討されるべきであるが,次のとおり,外環の2には自動車交通
の処理機能の観点からみて,必要性が認められない。
(a)本件都市計画決定に係る都市計画施設である外環の2の区域は,
住宅地として整備された際に整然とした土地割りがされており,南
北に相応の幅員をもった道路が並行して10本以上走っており,緊
急車両等の通行にも支障はないことからすると,これらに加えて南
北に道路を整備する必要性が乏しいことは明らかである。そもそも,
日本の人口は平成20年12月をピークに減少傾向にあり,今後も
人口は減少していくことが見込まれるところ,この人口の減少に伴
って交通量も減少していくことは明らかであり,警視庁交通部が毎
年作成している交通量統計表においても,都県境流出入交通量は,
過去10年間についてみても平成16年から減少傾向となっており,
その他の部分でも,交通量の基調は横ばいであり,少なくとも交通
量が増加する客観的根拠は見いだせない。しかも,現在事業化され
ている外環本線が完成すれば,外環の2の区域における南北の通過
交通は劇的に少なくなるはずであり,昭和41年当時は4車線とさ
れていた外環本線が,平成19年外環本線変更決定において6車線
にされたことからすると,自動車交通の処理機能の点からは外環の
2が必要ないことは明らかである。
(b)昭和41年以前に作成された東京都の細道路網図には,外環の
2に相当する場所に道路計画が記載されていないことからすると,
昭和41年以前には,外環の2の計画地には,地域的な道路整備の
必要性もなかったといえる。また,外環本線及び外環の2に係る都
計審での審議経過をみても,昭和41年当時の交通量調査を基礎に
最も議論されたのは,外環本線の中央道以北を6車線とするか4車
線とするかということであり,しかも,当時の交通量調査を基礎に
決められたというルートについても,外環の2ではなく,外環本線
における交通量の処理の必要性から決められたものであった。さら
に,被告が東京23区における道路交通網整備を検討して平成16
年3月に策定した「区部における都市計画道路の整備方針」では,
外環の2について全く言及されておらず,被告が平成18年4月に
策定した「多摩地域における都市計画道路の整備方針(第三次事業
化計画)」(以下「平成18年多摩整備方針」という。)でも,外
環の2は,今後10年間で優先的に整備すべき優先整備路線とされ
ていないどころか,逆に,「高速道路が地下化された場合に検討が
必要な路線」(要検討路線)とされている。しかも,平成18年多
摩整備方針の前提となった調査委託報告書において,外環の2は,
「都市間ネットワークの形成」の機能も,「骨格幹線道路位置付け
路線」としての機能もないとされている。加えて,被告が平成18
年6月に公表した「東京外かく環状道路(関越道~東名高速間)将
来交通量について」では,外環の2が整備された場合と整備されな
い場合の2通りの推計がされているところ,外環の2がある場合で
もない場合でも,ほとんど交通量は同じという結果となっており,
場所によっては外環の2がある方が周辺道路の交通量が増すという
結果となっている。
(c)被告は,現在の交通の状況を前提として,外環の2に必要とさ
れる道路の規模は片側1車線,両側で2車線の道路であると主張し
ており,この被告の主張を前提とすると,幅員を40mとする外環
の2の計画が「適切な規模で必要な位置に配置」されたものでない
ことが明らかである。
b前記のとおり,道路の必要性は,基本的に自動車交通の処理機能の
必要性から検討されるべきであり,また,防災対策としては道路建設
の他にも様々なものがあることからすると,防災上の必要性は道路の
必要性を基礎付ける付随的な理由にしかならないものである。しかも,
被告自身の行った調査によれば,外環の2の区域周辺は,東京都の東
側地域に比べて震災や火災の危険は大きくはないとされており,外環
の2が,被告が作成した「防災都市づくり推進計画」において,特に
整備が必要な地域である「整備地域」や「重点整備地域」に指定され
たり,「骨格防災軸(都市計画道路等)」に位置付けられたりしては
いない。むしろ,外環の2は,防災上重要な意味をもつ地域コミュニ
ティを分断して破壊する有害なものともいえるものであり,防災の観
点からも必要性がないことが明らかである。
c外環の2が不必要であることは地元にも認識され,外環の2を建設
しないことが地元の主要な意見となっている。
d都市施設が「適切な規模」といえるためには,事業を行うことの必
要性や実施することにより生じる便益などの得られる利益(計画のプ
ラス効果)と事業を実施することによる地域住民の負担を始めとする
負の影響(計画のマイナス効果)及び財政的負担(財政的コスト)な
どの失われる利益(広い意味での費用)を比べるという費用対効果の
観点からの検討(費用便益分析)が必要である。
そして,都市施設が「適切な規模」といえるためには,少なくとも
その費用対効果(便益/費用)が1.0以上であることが必要である
ところ,外環の2の用地買収費用は,買収の必要な面積45万㎡に公
示価格及び基準値価格の平均値41万4750円を乗じた1866億
3750万円に,都市計画道路予定地であることにより価格が下落し
ている割合1.16を乗じた2149億9950万円となるのに対し,
外環の2により得られる便益は,○駅から○駅までの間の約2分の1
についてみると,走行時間短縮便益として約630億円,走行経費減
少便益として約30億円の合計約670億円前後にすぎない。そうす
ると,外環の2の約2分の1の区間についてみても,費用が約107
5億円に対して便益が約670億円であり,外環の2の費用対効果
(便益/費用)が1.0に満たないことは明らかであるから,外環の
2は「適切な規模」のものとはいえない。
e外環の2に係る都市計画は,現に,平成19年外環本線変更決定の
後も,場当たり的に,α12JCT区間の事業化,練馬3キロ区間の
計画変更がされており,随所で,不合理かつ大きな無駄,矛盾を抱え
た道路計画となっており,全体として,廃止されるべき計画であるこ
とが露呈されている。
(ウ)このように,外環の2は,「当該都市の健全な発展と秩序ある整備
を図るため必要なもの」ではないし,「土地利用,交通等の現状及び将
来の見通しを勘案して,適切な規模で必要な位置に配置」されたもので
もないから,都市計画法13条1項に違反するものであり,外環の2に
係る都市計画を決定した本件都市計画決定は違法なものである。そして,
このことは,平成26年11月28日の都市計画変更決定がされた時点
でも同様である。
エ本件都市計画決定における住民の意思の反映の過程が手続的正義に反す
ること
被告は,昭和45年に外環本線に係る都市計画と共に外環の2に係る都
市計画が凍結されてから30年近くを経た後,これらの都市計画を復活さ
せる過程で,PI(パブリック・インボルブメント。以下同じ。)協議会,
PI会議,有識者委員会,「地上部街路に関する話し合いの会」(以下
「話し合いの会」という。)などといった場をそれぞれ設定し,外環本線
及び外環の2によって影響を受けるであろう沿線の住民との間で,情報提
供,意見聴取,意見交換を行って都市計画に「反映」させるための「市民
参加プロセス」の手続を採ることを表明した。
しかしながら,被告は,PI協議会やこれを引き継いだPI会議の議論
とは別に,これらに諮ることなく,平成17年1月,外環道の地上部分に
ついて,外環の2の計画廃止以外に道路を残す案も含めた3案を公表した
上,平成24年3月には,外環本線のα12ジャンクション予定地である
外環の2のα12JCT区間について,事業化の説明会を突如開催し,話
し合いの会には事前に相談や報告をしないまま,同年7月には一部事業化
の認可の申請をし,同年9月に認可を得ている。
このように,被告は,PI協議会やPI会議,話し合いの会といった
「市民参加のプロセス」の手続を形式的には履践するのであるが,実際に
は,沿線の住民の意思を都市計画に「反映」させようという考えを持って
おらず,被告による上記のようなやり方は手続的正義に反しているから,
本件都市計画決定は違法である。
オ昭和41年にされた外環の2に係る都市計画決定が内閣の認可を欠くこ

(ア)外環の2に係る都市計画決定は,当初,昭和41年7月30日に旧
都市計画法3条に基づいてされていることから,同条の規定する内閣の
認可が必要であるのに,これがされていない。
(イ)この点,許認可等を不要とすることができる旨を規定する臨時措置
法は,その適用の要件として「大東亜戦争ニ際シ行政簡素化ノ為必要ア
ルトキ」が規定されているところ,第二次世界大戦の終了によってこの
要件を充足することは不可能となったため,当然に失効した。また,臨
時措置法は,戦時行政特例法とともに,各種許認可事務等に関する行政
事務の統一化,効率化,簡素化を図り,強化された内閣総理大臣の権限
により,「大東亜戦争」の遂行のための戦時生産体制,特に軍需生産体
制の強化,確立を遂げることを目的として制定されたものであるが,こ
の目的の達成のため,許認可等を勅令によって不要とするなど,行政手
続の根幹である許認可の要否等を勅令に全面委任するという極めて乱暴
な措置がとられているのであり,戦争が終結すれば当然に失効すべきも
のである。
仮に臨時措置法が第二次世界大戦の終了によって当然に失効していな
かったとしても,臨時措置法は,法律により許可,認可,免許,特許,
承認,検査,協議,届出,報告等を要するとされているあらゆる行政手
続について,勅令(日本国憲法施行後は政令)により,上記の許可等を
不要とすること(臨時措置法1項1号),申請等があってから一定期間
の経過によって許可等があったものとみなすこと(同項3号),「ソノ
他ノ簡捷化ノ為ノ必要ナル措置」をすることができること(同項6号)
を定めているところ,これらは法律が定めている数々の許認可制度に係
る権限の全てを勅令(政令)に包括的に委任するものであるから,憲法
41条に違反するものとして無効である。
そうすると,昭和41年7月30日にされた外環の2に係る都市計画
決定について,臨時措置法を根拠として,旧都市計画法3条の規定する
内閣の認可が不要であるとすることはできない。
(ウ)したがって,昭和41年7月30日にされた外環の2に係る都市計
画決定については,旧都市計画法3条の規定する内閣の認可が必要であ
ったにもかかわらず,これがされていないということになるから,本件
都市計画決定は違法である。
カ本件都市計画決定の違法性が重大かつ明白であること
前記アないしオのとおり,本件都市計画決定は違法であるところ,その
違法性は,多くの住民を立ち退かせて生活を奪うという被侵害利益が重大
なものである。その一方,外環の2に係る都市計画自体はいまだ実施され
ていないから,外環の2に係る都市計画を前提とした第三者の保護を考慮
する必要はなく,その違法性が明白であることは必要ではないから,本件
都市計画決定は,その違法性が重大であることのみをもって無効となる。
仮に本件都市計画決定の違法性が明白であることが必要であるとしても,
外環の2に係る都市計画は,外環本線の構造形式が嵩上式であることを基
礎となる重要な事実としていたところ,平成19年外環本線変更決定にお
いて外環本線の構造形式が大深度地下方式に変更されたことにより,重要
な事実の基礎を欠くこととなって,都市計画法13条1項に違反すること
なり,外環の2に係る都市計画を決定した本件都市計画決定が違法なもの
であることは明白となった。また,平成18年4月21日の東京都知事の
定例記者会見において,本件都市計画決定の違法性を基礎付ける事実が公
表されたことにより,本件都市計画決定の違法性は明白なものとなったと
もいえるから,本件都市計画決定は,その違法性が重大かつ明白なものと
して,無効である。
(被告)
ア外環本線の構造形式が嵩上式から地下式に変更されたからといって外環
の2に係る都市計画が重要な事実の基礎を欠くということにはならないこ

(ア)外環の2に係る都市計画は,外環本線に係る都市計画と区域が重複
することから,その内容が整合するように定められた上,内容に矛盾が
ないように都計審にも同時に付議されたことは確かである。
しかしながら,次の各事実によれば,外環本線の構造形式が嵩上式で
あることは,外環の2に係る都市計画の基礎とされた重要な事実ではな
かった。
a建設省告示第2428号によって告示された外環の2を含む都市計
画決定は,東京都内において過去に決定済みであった都市計画道路網
について,おおむね東京23区の環状6号線の外側の範囲を対象にし
て再検討を行った結果,幹線街路,補助線街路を追加,変更し,全体
で2580kmの都市計画道路を1490kmに改めるということを
内容とするものであり,外環の2は,このようにして見直しが行われ
た都市計画道路網を構成する幹線道路の一つとして,都計審の議を経
て決定されたものであり,上記の範囲にある他の街路とともに全体の
街路計画の中の一路線として決定されたものであった。より具体的に
は,衆議院建設委員会において当時の被告首都整備局長が説明したと
おり,外環の2は,東京23区周辺の市街化に伴い急増する交通需要
を契機とした同区域での道路交通網整備のため,交通需要の起終点調
査を行った結果,交通需要が急激に増えている環状8号線の外側に環
状9号線ともいうべき街路を造る必要が認められたことから,幹線街
路の一つとして都市計画決定されたものである。外環の2は,幹線街
路として他の都市計画道路とのネットワークを構成し,交通を円滑化
するという既存の細街路のみでは果たされない機能を有しており,本
件都市計画決定において基礎とされた重要な事実は,東京23区周辺
の市街化に伴い急増する交通需要を契機としたこの区域での道路交通
網整備の必要性であった。
なお,特別委員会や都計審の審議経過等においても,外環の2に係
る都市計画決定が構造形式を嵩上式とする外環本線の存在があるから
こそ計画されたことの根拠となるような審議はされていないし,都計
審等においては,通常,都市計画の内容全てについて口頭での説明や
議論が行われるわけではないから,外環の2の独自の必要性について
の説明や議論がないからといって,その必要性が否定されるものでは
ない。
bそもそも,外環の2は,円滑な交通処理,良好な市街地環境の形成,
災害時の防災性の向上などの多様な機能を有する都市の骨格を形成す
る幹線街路であり,地上部に建設されることにより,その効用を発揮
し得るものである。すなわち,外環の2は,地上部に建設されるから
こそ,地上から自由に出入りすることが可能となり,建築基準法43
条1項の規定する道路として,接する土地を建築物の敷地とすること
を可能にし,さらには,他の都市計画道路とのネットワークを構成し,
街区を形成し,延焼防止帯などとして防災機能を備え,路線バスの走
行等の公共交通機関の利便性を高め,生活道路への通貨交通の流入を
回避し,緑地帯を設け沿道環境の向上を図ることができるというもの
であり,歩行者専用道や自転車専用道を設けるなどの利用方法も考え
られる。
これに対し,外環本線は,より広く首都圏の道路交通の骨格として
計画された自動車専用道路である東京外かく環状道路の一部分に当た
るものであり,都心から約15kmの圏域を環状に連結する延長約8
5km道路で,東名高速道路,中央道や関越道などの自動車専用道路
と連結するほか,東京外かく環状道路全体としてみると,東北道,常
磐道,東関東道などの自動車専用道路とも連絡しているなど,首都圏
の高速道路網を構成する非常に重要な道路である。また,外環本線は,
一般街路と分離した平面交差のない自動車専用道路(都市高速道路)
であり,沿道の土地からの出入りができないこと,建築基準法43条
1項の道路からは除外されているため,沿道の土地は建築物の敷地と
しての接道要件を満たさないこと,周辺の細街路とのネットワークを
構成するものでもないこと,路線バスなど地域の公共交通機関には活
用し難いことなど,外環の2とは機能を異にしている。
このように,外環の2は,外環本線とは異なる独自の機能を有して
いる。
c外環本線の一部の構造形式を嵩上式から堀割式に変更する外環本線
に係る昭和61年の都市計画変更決定に伴って外環の2の一部が廃止
されたが,このことをもって,外環本線の構造形式が嵩上式であるこ
とが外環の2に係る都市計画において基礎とされた重要な事実であっ
たということにはならない。むしろ,平成19年外環本線変更決定に
伴って,外環本線の附属街路が廃止されているにもかかわらず,外環
の2に係る都市計画が廃止されていないことは,外環の2が,外環本
線の構造形式が嵩上式であることを基礎としておらず,独自の必要性
があって計画されたことを示している。
(イ)外環本線は,もともと東京外かく環状道路の一部を構成し,都心部
の慢性的な渋滞を解消し,国際競争力を高めるとともに快適で利便性の
高い都市を実現する上で必要不可欠な道路として,早期着工を図るべき
優先度の極めて高い都市計画であったところ,平成19年4月の都市計
画(変更)決定により,ジャンクション(東名高速道路,中央道,関越
道と立体交差で接続する部分)及びインターチェンジ(自動車専用道路
ではない東八道路,青梅街道,α7と立体交差で接続する部分)を別と
して,基本的に大深度地下を利用する地下方式に計画が変更されたこと
により,事業化に向けての具体的な内容を整え,可及的に事業の進捗に
取り組む段階となった。
これに対し,外環の2に係る都市計画は,前記(ア)のとおり,外環本
線の構造形式が嵩上式であることを基礎となる重要な事実としていたわ
けではなく,外環本線が基本的に大深度地下を利用する地下方式となっ
たことにより,外環本線との間で,具体的な,設計,建設工事を一体的
かつ総合的に行わなければ非効率となるような関係が相当程度希薄とな
り,事業化の歩調を合わせる大きな意味が特に認められなくなったこと
から,他の多くの都市計画道路と共にネットワークを構成するものであ
るという位置付けを前提としつつ,改めて,計画内容を検討することと
しているところである。
したがって,収用の問題や原告らの主張する住環境の観点から,外環
本線が地下式として地上部から姿を消したから地上部の外環の2も廃止
が当然であるという原告らの主張は,両者の位置関係のみのとらわれた
当を得ないものである。
(ウ)以上によれば,外環の2に係る都市計画は,外環本線の構造形式が
嵩上式であることを基礎とされた重要な事実とするものではなく,平成
19年外環本線変更決定において外環本線の構造形式が嵩上式から地下
式に変更されたからといって,重要な事実の基礎を欠くことになったと
いうことはない。
なお,そもそも,抗告訴訟における行政処分の違法性判断の基準時は,
当該行政処分がされた当時であるところ,原告らが本件都市計画決定
(ないし外環の2に係る都市計画)の違法事由(無効事由)として主張
する平成19年外環本線変更決定は外環の2に係る昭和41年の都市計
画決定の後にされたものであるから,この平成19年外環本線変更決定
を前提とした主張自体が失当というべきである。一般的に,行政処分後
に法令あるいは事実状態の変化があった場合には,まず行政庁が変化し
た事情に基づいて第一次判断権を行使すべきであって,これを待たずに
訴訟の中で処分後の法令あるいは事実状態に照らして処分の違法性を判
断することは,行政庁の第一次判断権を侵すものであって,行政処分の
適法性の事後審査という抗告訴訟の本質に反する。したがって,本件訴
訟においても,本件都市計画決定がされた後の事情の変化を基礎事情と
して,その違法性が判断されるべきではない。
イ外環の2に係る都市計画は外環本線に係る都市計画との間で一体性,総
合性を欠くものではないこと
(ア)都市計画法13条1項柱書きは,都市計画が,国の総合的な国土計
画や地方計画に関する法律に基づく計画,あるいは道路,河川,鉄道,
港湾,空港等に関する国の計画に適合することを前提とした上で,土地
利用に関する計画,都市施設の整備に関する計画及び市街地再開発に関
する計画について,これらを一体的かつ総合的に定めることを規定して
いる。これは,総体としての都市計画という観点からの整合性を問うも
のであって,個々の都市施設同士の場所的(位置的)関係という狭い議
論で問題が尽きるという性質のものではない。
(イ)前記アのとおり,外環本線と外環の2は道路としての役割や機能を
異にしており,外環本線の構造形式が嵩上式であることは,外環の2に
係る都市計画において基礎とされた重要な事実ではなかったから,外環
本線と外環の2が平成19年外環本線変更決定後も併存することに何ら
矛盾はなく,外環の2に係る都市計画は外環本線に係る都市計画との間
で一体性,総合性を欠くものではない。
また,そもそも,平成19年外環本線変更決定は,外環本線が,広域
幹線道路網の一翼の担うものとして首都圏の交通,環境問題を改善する
うえで重要な幹線道路であること,構造形式を嵩上式としていた都市計
画決定について地元の理解が得られずに話合いができない時期があった
こと,その間に土木技術の進歩があったことなどの各要素を総合的に考
慮した結果,その構造形式を地下式に変更して計画を具体化するという
決定を行ったものであって,収用の範囲を小さくすることが主要な目的
というわけではないから,外環本線と同じ路線の地上部に外環の2が存
在したとしても,外環本線の目的と矛盾するということはない。
(ウ)以上によれば,外環の2に係る都市計画は,外環本線に係る都市計
画との間で,一体性,総合性を欠くものではないから,外環の2に係る
都市計画は都市計画法13条1項に違反するものではなく,外環の2に
係る都市計画を決定した本件都市計画決定は違法ではない。
なお,前記ア(ウ)のとおり,抗告訴訟における行政処分の違法性の有
無,すなわち,違法性判断の基準時は,当該行政処分がされた当時であ
るところ,原告らが本件都市計画決定(ないし外環の2に係る都市計画)
の違法事由(無効事由)として主張する平成19年外環本線変更決定は
昭和41年の外環の2に係る都市計画決定の後にされたものであり,そ
の主張自体が失当である。
ウ外環の2は「当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なも
の」であり,「適切な規模で必要な位置に配置」されていること
(ア)外環の2は,次のとおり,自動車交通の処理機能の点から必要性が
ある。
a外環の2は,東京23区周辺の市街化に伴い急増する交通需要を契
機とした同区域での道路交通網整備の必要性から計画された幹線道路
であり,他の都市計画道路とネットワークを構成し,交通を円滑化す
るという既存の細街路のみでは果たされない機能を有している。現在
でも,例えば,外環の2の区域内にある本件土地の周辺地区には,練
馬区北部方面と武蔵野市及び三鷹市方面との南北方面に通ずる幹線街
路に匹敵する道路が存在せず,武蔵野市及び三鷹市方面と練馬区北部
方面との間の行き来を必要とする車両(緊急時に出動する消防用自動
車,救急用自動車などの緊急自動車を含む。)は,環状八号線やα1
8通りまで迂回するか,いわゆる生活道路(住宅街や商店街にあり,
幅員が狭く,自動車より人の交通が多い道路)への流入を余儀なくさ
れ,円滑な道路交通に著しい支障を生じさせるとともに,幅員の狭い
生活道路への車両流入に伴う交通事故の危険性などが懸念される状況
になっており,このような状況からも,練馬区北部方面と武蔵野市及
び三鷹市方面との南北方面に通ずる幹線道路としての外環の2の整備
の必要性が認められる。
b都道府県道等の交通量の全般的な減少傾向があることを前提として,
既存の街路計画について,これを縮小することを含めて再検討すると
しても,都市計画道路網を構成している多数の計画道路のうち,どの
路線について車線の減少や計画廃止等を行うのかは,相当に慎重な考
慮を要するものであり,都道府県道等の交通量の全般的な減少傾向に
よって外環の2の必要性が直ちに否定されるものではない。
c外環本線からこぼれる車両を受容するためだけに外環の2が都市計
画決定されたのであれば,外環の2を4車線規模の幹線道路として都
市計画決定する必要はなかったはずであるから,外環の2が単に外環
本線からこぼれる車両を需要するためだけに計画されたものではない
ことは明らかである。また,外環の2が4車線として計画されていた
ことからすると,外環本線が地下化により2車線増えたとしても,外
環の2で予定していた交通量の全てを受容できるわけではないし,外
環本線は,構造形式を地下式としているため,インターチェンジ(α
7,青梅街道,東八道路)以外の部分では他の道路や沿道へ出入りが
できない上,自動車の交通機能以外の空間機能,市街地形成機能を果
たすことができないことからすると,外環本線が6車線となったから
といって,直ちに外環の2の幹線街路としての必要性がなくなるもの
でもない。
d平成18年多摩整備方針では,外環の2について,交通処理機能の
確保,バス交通を支える道路網の形成,震災時における防災性の向上,
良好な居住環境地区の形成という評価項目において,その必要性が確
認されている。外環の2は,外環本線が地下化された場合には,その
計画線や構造等の検討が必要な路線として抽出されているものの,こ
れは直ちに廃止すべきことを意味するものではない。外環の2につい
ては,計画の廃止という選択肢も全く排除されないものの,その計画
線や構造形式等を変更した上で,外環の2が都市計画道路網を構成す
る幹線街路の機能を維持することにも十分な合理性がある。
(イ)都市における道路には,概括すると,①都市における円滑な移動
を確保するための交通機能,②都市環境,都市防災等の面で良好な都
市空間を形成し,供給処理施設等の収容空間を確保するための空間機能,
③都市構造を形成し,街区を構成するための市街地形成機能がある。
外環の地上部街路の検討に際して説明されている「自動車交通の処理」
「防災性の向上」「環境の確保」「ライフラインの収容」の各機能は,
上記の①ないし③の機能を具体的に説明したものであり,仮に,原告ら
が主張するとおり,外環の2について,自動車交通の処理機能の重要性
が相対的に低くなったとしても,外環の2には交通以外の機能も存在す
るから,外環の2に係る都市計画としての必要性はなくなっていない。
具体的には,まず,外環の2が整備された場合,周辺道路の交通の流
れがスムーズになり,自動車からのCO₂排出量,NOx排出量,SPM
排出量が削減され,地球環境の保全が図られるほか,外環の2に街路樹
や緑地が整備されれば,α19公園やα20公園など大規模な緑の拠点
を結ぶことにより,玉川と荒川で囲まれる大きな軸とその内側にある緑
などで東京を包み込むネットワークの一部を担うことになり,ヒートア
イランド現象の緩和に寄与することが期待されるなど,都市環境の保全
が図られることとなる。
また,外環の2が整備された場合,外環の2の沿線地域に位置するα
19公園一帯やX4アパート一帯,α20公園,X5大学一体等の広域
避難場所へのルートとして,青梅街道や新青梅街道などの東西方向の緊
急輸送道路に加えて南北方向のルートが確保されることになり,避難拠
点及び被告指定の避難場所から災害拠点病院までの輸送や,救援物資等
の輸送に資することになるほか,災害時以外においても,救急車両の到
着時間の短縮が期待され,安心な生活環境創出にも資することになる。
さらに,外環の2が整備されて路線バスが運行するようになった場合,
南北方向のバス路線が充実したり,安全,快適なバス停環境が創出され
たりすることにより,バス利用者の利便性が強化される。
(ウ)外環の2は,外環本線の構造形式が地下式に変更されたことに伴っ
て,当初外環本線の建設が予定されていた区域についての計画線等を含
めて再検討をしている段階であり,この段階で直ちに予算構想を具体化
することができないのは当然である。
原告らが主張する費用便益分析は,街路計画の是非を論じる際に参考
とする一つの材料にはなるとしても,そもそもそこで金銭的に算出され
る便益は,道路の整備によってもたらされる全てを網羅するものではな
く(例えば「環境」「防災」「暮らし」といった便益は算出されていな
い。),その結果のみを絶対的基準として都市計画が都市計画法13条
1項の規定する都市計画基準に適合するか否かを判断することはできな
い。しかも,原告らが独自に行った費用便益分析の概算に基づく費用対
効果に係る主張は,費用に比し便益が過少に評価されたり,便益に対し
て費用が過大に評価されたりしており,比較する対象についてバランス
を欠いている。
したがって,外環の2が「適切な規模」ではないということはできな
い。
(エ)以上によれば,外環の2は,「当該土地の健全な発展と秩序ある整
備を図るため必要なもの」であり,「土地利用,交通等の現状及び将来
の見通しを勘案して,適切な規模で必要な位置に配置」されているとい
えるから,都市計画法13条1項に違反するものではない。
なお,前記ア(ウ)のとおり,抗告訴訟における行政処分の違法性の有
無,すなわち,違法性判断の基準時は,当該行政処分がされた当時であ
るところ,原告らが本件都市計画決定(ないし外環の2に係る都市計画)
の違法事由(無効事由)として主張する事実のほとんどが昭和41年に
外環の2に係る都市計画決定がされた後のものであり,その主張自体が
失当である。
エ本件都市計画決定が適法な手続によってされたものであること
(ア)本件都市計画決定は,旧都市計画法及び都市計画法の規定する手続
に従ってされた適法なものである。
(イ)なお,前記ア(ウ)のとおり,抗告訴訟における行政処分の違法性の
有無,すなわち,違法性判断の基準時は,当該行政処分がされた当時で
あるところ,原告らが手続的正義に反するとして主張する事実は外環の
2に係る昭和41年の都市計画決定がされた後のものであり,その主張
自体が失当である。
オ外環の2に係る昭和41年の都市計画決定について内閣の認可は不要で
あること
外環の2に係る都市計画決定がされた昭和41年7月30日当時は,臨
時措置法1項1号,臨時特例2条1項1号,日本国憲法施行の際現に効力
を有する命令の規定の効力等に関する法律2条1項,同法附則2項,日本
国憲法の施行の際現に効力を有する勅令の規定の効力等に関する政令1項
の規定により,都市計画決定について内閣の認可を受けることは要しなか
ったから,外環の2に係る昭和41年の都市計画決定について内閣の認可
の有無を確認することができないとしても,本件都市計画決定に法律上の
瑕疵があることにはならない。
なお,臨時措置法は,それ自体の効力の終期を定める規定がなく,失効
した際の経過措置に関する規程も存在せず,委任を受けた勅令の効力の効
力等の終期等を定める規定も存在しないことからすると,「大東亜戦争」
の終結によって当然に効力を失うものではなく,しかるべき時点で,改め
て状況に応じて同法及びその委任に基づく勅令の改廃及びその後の措置を
検討するという前提で制定されたものと理解することができる。そして,
臨時措置法は,日本国憲法施行後も直ちに廃止されることはなく,行政事
務に関する国と地方の関係等の整理及び合理化に関する法律(平成3年法
律第79号)が平成4年5月20日に施行されるまでは,廃止されていな
かった。また,内閣総理大臣が国務大臣を任命することとされた日本国憲
法下においては,新たに主務大臣となった建設大臣が行う都市計画決定に
ついて,関係する行政各部に属する事項についての調整を行うために,逐
一,内閣の認可を受ける必要性はなくなったといえるし,むしろ,都市計
画決定の効力を内閣の認可にかからしめるという制度は,中央集権的な性
格を強めるものであって,内閣の認可を不要とする方が地方自治の本旨に
適合することから,臨時措置法の規定に基づく臨時特例は日本国憲法の施
行に当たって廃止されなかったとも考えられる。さらに,臨時措置法1項
1号の規定は,現に実定法として存続しているものとして,長い年月にわ
たって運用されていることからすると,これを前提にされた各種の行政行
為の効力を覆すことは,広範かつ著しい悪影響を及ぼすことが明らかであ
る。加えて,臨時措置法は,行政簡素化のため必要があるときとして,委
任の目的を絞っているから,委任の範囲が無限定で広範に失するとまでは
いえない。したがって,臨時措置法及びこれに基づく臨時特例を根拠とし
てされた外環の2に係る昭和41年の都市計画決定については,少なくと
も,臨時措置法1項1号及び臨時特例2条1項1号の規定の適用に関する
限りは,憲法の規定に違反してこれを無効とすべきような瑕疵はないもの
と評価すべきである。
(3)本件都市計画の廃止手続の処分性の有無(争点③)
(原告ら)
本件都市計画決定に処分性が認められるのと同様,本件都市計画の廃止手
続についても処分性が認められる。
(被告)
本件都市計画決定に処分性がないのと同様,本件都市計画の廃止の決定は
もとより,廃止手続にも処分性はない。
(4)本件都市計画の廃止手続がとられないことによる重大な損害を生ずるお
それの有無及びその損害を避けるための他の適当な方法の有無(争点④)
(原告ら)
ア本件都市計画の廃止手続がされないことにより「重大な損害を生ずるお
それがあ」ること
本件都市計画に係る都市計画施設である外環の2の区域内に本件不動産
を共有する原告らは,本件都市計画決定に伴って,都市計画法53条1項
の規定する建築物の建築の制限や同法57条の規定する土地の有償譲渡の
制限を受けているほか,近い将来,本件不動産が公用収用されるという地
位に立たされている。そのため,原告らは,所有する建物の修理や改築を
しようにも,どの程度すれば良いのか不安定な状況に追い込まれ,また,
いつか移転を迫られ,生活が破壊されてしまうのではないかという不安の
下で生活している。このような,建築制限による居住空間の不安定や生活
や人生に対する不安は,金銭による回復が困難な精神的苦痛による損害で
ある。
そして,本件都市計画の廃止手続がされなければ上記のような損害が発
生し続けるのであるから,本件都市計画の廃止手続がされないことにより
「重大な損害を生ずるおそれがあ」るといえる。
イ「他に適当な方法がない」こと
仮に本件都市計画決定が違法,無効であることが確認されたとしても,
直ちにその効力がなくなることにはならないから,上記アの建築制限等に
よる居住空間の不安定や,生活,人生に対する不安は避けられない。
特に,違法な都市計画により土地を他に売却しようとしても通常の取引
の場合のように買手を見つけることが困難になるという制限については,
これを排除するために争うべき後続する処分が存在しない。これを争うた
めに,建築不許可処分の取消訴訟をしろというのは,実際には必要のない
建築確認の為の設計図の作成等をさせ,不許可となるのが分かっているの
に建築確認申請をせよというのに等しく,訴訟の方法として余りにも迂遠
であり,実効的な救済手段とは到底いえない。
したがって,上記アの損害を避けるためには,本件都市計画の廃止手続
の義務付けを求める以外に「適当な方法がない」といえる。
(被告)
ア本件都市計画の廃止手続がされないことにより「重大な損害を生ずるお
それがあ」るとはいえないこと
都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限や同法57条の規
定する土地の有償譲渡の制限は,実際に建物を建築したり,土地を有償譲
渡したりしようとする際に問題となるものであって,具体的な建築物の建
築計画や土地の譲渡予定がない時点で重大な損害が生じるおそれがあると
いうことはできない。また,都市計画施設の区域内において土地の収用を
するためには,都市計画事業の認可が必要であるから,都市計画決定がさ
れているだけでは,都市計画施設の区域内に土地を所有しているからとい
って,土地の収用という重大な損害が生じるおそれがあるとはいえない。
イ「他に適当な方法がない」わけではないこと
都市計画法53条1項の規定による建築物の建築の制限については,建
築確認の義務付けの訴え等によって争うという方法があるし,都市計画施
設の区域内における土地の収用についても,都市計画事業の認可に対する
抗告訴訟や当該収用裁決に対する抗告訴訟によって争うという方法がある
から,仮に原告らの主張するような損害が生じるおそれがあるとしても,
「その損害を避けるために他に適当な方法がない」というわけではない。
(5)本件都市計画の廃止手続の義務付けの可否(争点⑤)
(原告ら)
ア被告が本件都市計画を変更すべき義務を負うこと
(ア)都市計画法21条1項は,都市計画区域が変更されたとき,基礎調
査等の結果都市計画を変更する必要が明らかになったとき,その他都市
計画を変更する必要が生じたときは,遅滞なく都市計画を変更しなけれ
ばならないと規定している。
同項の趣旨は,当初前提としていた都市計画区域が変更されたり,当
初の都市計画が前提としていた事実が変化したりした場合は,もはや当
初の都市計画に係る事業を実施しても「都市の健全な発展と秩序ある整
備を図り,もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与するこ
と」(同法1条)にはならないため,都市の健全な発展等に資するよう
計画の変更をすべきことを定めたものと理解することができる。
したがって,都市計画決定自体に行政裁量が認められるとしても,裁
量権の行使の前提となる事実の変化によって都市計画を維持することが
できなくなった場合は,当該都市計画決定をした行政庁において,同法
21条1項に基づき,都市計画を変更すべき義務が生じ,これを変更し
ない場合には,当該行政庁の裁量権の範囲の逸脱又は濫用となる。
(イ)そして,外環の2に係る都市計画は,昭和41年に当初の都市計画
決定がされた後,地域住民らの反対運動に応えて昭和45年に事実上凍
結され,その後,約50年にもわたって事業化されずに区域内の住民の
権利を制限し続けている。
また,前記(2)の原告らの主張欄のとおり,外環の2に係る都市計画
は,外環本線の構造形式が嵩上式であることを基礎となる重要な事実と
していたところ,平成19年外環本線変更決定において外環本線の構造
形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたことにより,重要な事実
の基礎を欠くこととなった上,外環本線に係る都市計画との関係で一体
性,総合性を欠くものとなり,しかも,外環の2は,都市の健全な発展
と秩序ある整備を図るため必要なものではなく,適切な規模で必要な位
置に配置されているともいえないなど,都市計画法13条1項に違反す
るものとなっている。
さらに,上記のとおり,外環の2に係る都市計画が同項に違反するこ
とは明白であるところ,外環本線と外環の2は,その目的や区域が重複
するために密接不可分の関係にあることや,平成19年外環本線変更決
定において外環本線の構造形式を大深度地下方式に変更した目的や経緯,
当該手続において被告が行った判断等に鑑みれば,両計画の決定権者で
ある被告において,外環の2に係る都市計画を変更しないで維持すると
いう選択肢は残されておらず,被告は,外環の2に係る都市計画を変更
すべき義務を負っているというべきである。
イ被告が本件都市計画の廃止手続をとるべき義務を負うこと
上記アのとおり,被告は,外環の2に係る都市計画を変更すべき義務を
負っているところ,そもそも,外環の2は構造形式を嵩上式とする外環本
線の収容空間であることを主たる目的としていたところ,平成19年外環
本線変更決定において外環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に
変更されたため,外環の2はその主たる目的を失った。また,外環本線は,
長年の時の経過による社会経済的条件等の変化により,遅くとも平成19
年時点では,嵩上式のままでは都市計画法13条1項の規定する都市計画
基準に適合しない状況にあったため,平成19年外環本線変更決定におい
てその構造形式を大深度地下方式に変更せざるを得なかったところ,より
事業規模の大きな外環本線でさえ地上部においてはその犠牲に見合う公共
的必要性が認められなかったのに,幹線道路である外環の2にその必要性
が認められることはあり得ない。さらに,外環の2に係る都市計画を事業
化してその区域内の住民らを立ち退かせて街を破壊するのであれば,外環
本線の構造形式を大深度地下方式に変更した趣旨の大半を没却し,外環本
線に係る都市計画との間で,一体性,総合性を確保することはできないこ
とになる上,大深度地下方式とされた外環本線に掛ける税金が無駄になる
ということを意味し,このような判断を行う裁量が被告にあるとは考えら
れない。
そうすると,外環の2に係る都市計画については,廃止するという選択
肢しかなく,上記アのとおり,外環の2に係る都市計画を変更すべき義務
を負う被告は,外環の2に係る本件都市計画を廃止すべく拘束されている。
そして,被告が,本件都市計画の廃止義務を履行していないことは,平成
26年11月28日の都市計画変更決定がされた時点でも同様である。
(被告)
いわゆる非申請型の義務付け訴えの本案要件は,行政庁がその処分をすべ
きであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認めら
れ又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を逸脱し,又はそ
の濫用となる場合である。
そして,裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否
を審査するに当たっては,決定内容を成す諸事項を定めることについて,政
策的,技術的な見地から行われる都市計画決定権者たる行政庁の広範な裁量
に委ねられていることを前提として,その裁量権の行使について範囲の逸脱
や権限行使の濫用に当たるか否かが判断されるべきである。
この点,まず,そもそも,外環本線に係る都市計画と外環の2に係る都市
計画は当初から別個のものであり,また,自動車専用道路である外環本線と
幹線街路である外環の2は道路としての機能を異にするものであって,外環
の2に係る都市計画は,外環本線の構造形式が嵩上式であることを基礎とな
る重要な事実とするものではなく,平成19年外環本線変更決定において外
環本線の構造形式が嵩上式から地下式に変更されたとしても,外環の2に係
る都市計画が重要な事実の基礎を欠くということにはならないという点は,
前記(2)の被告の主張アのとおりである。また,外環の2に係る都市計画が,
外環本線に係る都市計画との間で,総合性,一体性を欠くものではないこと
も,同イのとおりである。さらに,同ウのとおり,道路の必要性は自動車交
通の機能に限られるものではなく,外環の2は,幹線街路として他の都市計
画道路とのネットワークを構成し,交通を円滑化するという既存の細街路の
みでは果たされない機能を有し,防災等の機能を含めて地下化された外環本
線では果たすことができない機能を有することからすると,外環の2の必要
性が失われたということはないから,外環の2に係る都市計画は都市計画法
13条1項に違反するものではなく,原告らの主張はその前提を欠くもので
ある。
また,被告は,平成17年1月に公表した「外環の地上部の街路について」
で示した外環の2の在り方についての基本的な三つの考え(「現在の都市計
画の区域を活用して道路と緑地を整備」「都市計画の区域を縮小して車道と
歩道を整備」「代替機能を確保して都市計画を廃止」)に基づいて,平成2
0年3月に公表した「外環の地上部の街路について~検討の進め方」で示し
た検討の視点と検討のプロセスにより,「交通」「環境」「防災」「暮らし」
の各視点において外環の2の整備に伴って予想される効果を示した資料を作
成して公表し,外環の2の必要性やその在り方等について広く意見を聴きな
がら具体的に検討を進めているという段階にある。そして,外環の2は,複
数の地方公共団体の区域にわたる道路網全体を構成する幹線街路という都市
施設としての特性ゆえに広域に及ぶ多様な影響や区域内の住民や地方公共団
体等の関係者の多岐にわたる意見の検討の必要があることから,方針を定め
るまでには相当長期間を要することはやむを得ないというべきである。しか
も,都市計画を変更するには,都市計画決定と同様に,都市計画の案の縦覧,
都市計画審議会の議を経なければならないことからすると(同法21条2項,
17条,18条),被告が外環の2の区域内の住民等の意見を聴きつつ具体
的な検討を進めている現段階において,被告が外環の2に係る都市計画を廃
止すべく拘束されているとは認められないから,被告に対して本件都市計画
の廃止手続を義務付けることはできない。
(6)本件各法律関係確認の訴えに係る確認の利益等の有無(争点⑥)
(原告ら)
ア本件各法律関係確認の訴えの対象が法律上の争訟であること
原告らは,本件都市計画決定によって権利制限を受けており,建築制限
等による不利益排除,土地の収用防止を目的に具体的な法的権利関係の確
認を求めているのであるから,本件各法律関係確認の訴えが法律上の争訟
であることは明白である。
イ本件各法律関係確認の訴えには確認の利益があること
(ア)原告らは,本件都市計画決定がされたことにより,外環の2の区域
内にある本件土地の収用を受けるべき地位に立たされている。また,都
市施設に関する都市計画決定は,それが告示されると,都市計画施設の
区域内においては,建築物の建築につき,原則として都道府県知事等の
許可を要することになり(都市計画法53条1項),また,都道府県知
事等はいつでも,何の要件も必要とせずに,同法55条1項の規定によ
る区域の指定をすることができるところ,この区域内において行われる
建築物の建築については,同法54条の規定にかかわらず,都道府県知
事等は同法53条1項の規定する許可をしないことができるようになる
ため,原告らは,本件土地上にある本件建物の建て替えや増改築につい
ての制限を受けていることになる。さらに,同法55条1項の規定によ
る区域の指定がされ,同条4項の公告がされたときに,同法59条1項
の規定による公告がされると,それから一定期間経過後は,上記の区域
内の土地を有償で譲り渡そうとする者は,その予定対価の額等を都道府
県知事に届け出なければならなくなり,都道府県知事等は届出後一定期
間内の通知によって当該土地を予定対価の額で買い取ることができるも
のとされているため(同法57条),原告らは,本件土地の有償譲渡に
ついても制限を受けていることになる。加えて,原告らは,本件土地の
収用を受ける可能性があり,かつ,建築制限等があるため,本件不動産
を他に売却しようとしても通常の取引の場合のような買手を見つけるこ
とが困難になるという極めて現実的で深刻な制限も受けている。
(イ)次に,土地の収用等を受けるべき地位に立たされていることの排除
を求める場合は,一応,後続する都市計画事業の認可を待ってその取消
訴訟等を提起することが考えられるものの,都市施設に関する都市計画
は制度上必ずしも都市計画事業として施行しなければならないわけでは
なく(土地区画整理法3条の4参照),都市計画法59条の都市計画事
業の認可を受けることなく都市計画を遂行することが可能であるため,
都市計画事業の認可に対して抗告訴訟を提起し,その訴訟において,都
市計画決定が違法であるとして当該事業認可が違法であると判断された
としても,既に工事が進捗しているため公共の福祉に適合しないとして,
事情判決がされる可能性が大きい。特に,本件都市計画決定については,
前記のとおり,α12JCT区間について,都市計画事業の認可がされ
て事業化が進められ,さらに,練馬3キロ区間についても,事業化に向
けた具体的な準備のため,平成26年11月28日付けで都市計画(変
更)決定がされており,原告らの共有する本件土地を事業地とする外環
の2についての都市計画事業の認可がされた後に,これに対する抗告訴
訟を提起し,その訴訟において,本件都市計画決定が違法であるとして
当該事業認可が違法であると判断されたとしても,事情判決がされる蓋
然性が高い。
また,本件都市計画決定に伴う同法53条1項の規定する建築物の建
築の制限等のため,本件不動産を他に売却しようとしても通常の取引の
場合のような買手を見つけることが困難になるという不利益については,
後にその適否を争うことでその不利益を排除することのできるような後
続の行為というものは考えられない。
さらに,原告らが求めるものは,本件都市計画決定に伴う同項の規定
する建築物の建築の制限等による不利益を排除し,かつ,土地の収用に
よって住まいを奪われないようにすることであり,そのために,計画し
ていない建築申請をしてその不許可処分について訴訟を提起せよという
のはあまりにも迂遠であり,到底有効適切な訴訟形態とはいえないから,
建築申請不許可処分に対する抗告訴訟は,いずれも本件各法律関係確認
の訴えに係る確認の利益を否定する理由にはならない。
その一方,本件都市計画決定は,そこから派生する上記のような法的
効果の基礎となるものであり,本件各法律関係確認の訴えにおいて各請
求が認められれば,原告らの求める土地の収用防止や建築制限等による
不利益の排除が実現される。
(ウ)したがって,仮に本件都市計画決定に対する抗告訴訟が認められな
い場合,原告らが本件土地を収用されるべき立場に立たされることや,
都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を受けることを争
うために最も有効適切な争訟方法として,公法上の当事者訴訟としての
本件各法律関係確認の訴えについての確認の利益が認められるべきであ
る。
(被告)
ア本件各法律関係確認の訴えの対象は法律上の争訟ではないこと
司法権の行使として裁判所が審判することができる対象は,裁判所法3
条にいう「法律上の争訟」に限られるところ,「法律上の争訟」とは,当
事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,
かつ,それが法律を適用することにより終局的に解決することができるも
のに限られ,特定の者の具体的な法律関係についての紛争(法律の適用に
伴う具体的な法律関係についての紛争)がなければ,「法律上の争訟」で
はなく,裁判所が審判することができる対象とはならない。
しかるに,都市計画決定は個人の権利義務に対して具体的な変動を与え
るという法律上の効果を伴うものではないことからすると,本件都市計画
の違法確認を求める訴え(請求の趣旨(3))や本件都市計画の廃止手続を
とらないことの違法確認を求める訴え(請求の趣旨(5))は,当事者間の
具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争ではなく,「法律上
の争訟」には当たらない。
また,本件不動産について都市計画法53条1項の規定する建築物の建
築の制限を受けない地位の確認を求める訴え(請求の趣旨(4))について
も,そもそも,建築物の建築の許可を要するということをもって,直接的
な権利制限がされているとはいえないし,都市計画自体が変更される可能
性もあることなども考慮すると,本件建物の建て替え等の具体的な建築物
の建築の予定のない原告らについては,いまだ同項の規定する建築物の建
築の制限を受ける可能性のある立場にあるとはいえないから,同項の規定
する建築物の建築の制限を受けない地位にあることの確認は,「法律上の
争訟」に当たらない。
イ本件各法律関係確認の訴えには確認の利益がないこと
都市計画法53条1項は,都市計画施設の区域内における建築物の建築
を一律に制限するものではなく,これを許可制とするものであり,しかも,
軽易なものについては許可を不要とした上(同項),移転,除去が比較的
容易なものについては許可をしなければならないとされている(同法54
条3号)。このような制度の内容からすると,同法53条1項の規定によ
る建築物の建築の制限は,都市計画施設の区域内の住民への直接的な権利
制限をするものとはいえない。
また,原告らには本件建物の建て替え等の建築物の建築の具体的な予定
はなく,具体的な建築物の建築が不許可になるのかどうかも明らかでない
のであるから,この段階で同項に基づく制限を受ける可能性があるとは到
底いえない。
さらに,原告らは,原告らの共有する本件土地を事業地とする都市計画
事業の認可がされた段階でこれに対する抗告訴訟を提起することができる
し,建築制限についても,同項の規定する許可申請が不許可とされた段階
でこれに対する抗告訴訟を提起することができるのであるから,本件各法
律関係確認の訴えは,紛争の成熟性がなく,確認の利益がない。
(7)本件各法律関係確認の訴えにおいて確認の対象となる公法上の法律関係
(本件都市計画の違法性,本件不動産についての都市計画法53条1項の規
定する建築物の建築の制限,本件都市計画の廃止手続をとらないことの違法
性)の有無(争点⑦)
(原告ら)
本件都市計画が違法なものであることは,前記(2)の原告らの主張欄のと
おりであり,また,本件都市計画決定が違法,無効なものである以上,原告
らは,都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を受けない地位
にある。さらに,前記(5)の原告らの主張のとおり,被告は本件都市計画の
廃止手続をとるべき義務を負っているのであるから,これをとらないことは
違法である。
(被告)
前記(2)の被告の主張のとおり,本件都市計画決定は適法にされたもので
あり,本件都市計画決定が適法である以上,原告らは都市計画法53条1項
の規定する建築物の建築の制限を受けるべき地位にある。また,被告は本件
都市計画の廃止手続をとるべき義務を負っていないから,これをとらないこ
とは何ら違法ではない。
(8)外環の2に係る都市計画の廃止義務違反による不作為の違法な公権力の
行使の有無(争点⑧)
(原告X1)
前記(5)の原告らの主張のとおり,外環の2に係る都市計画は,外環本線
の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたことに伴って重要な事
実の基礎を欠くこととなった上,外環本線に係る都市計画との関係で一体性,
総合性を欠くこととなり,外環の2に係る都市計画自体の必要性も認められ
ないことから,被告は,外環の2に係る都市計画を早急に廃止すべき義務を
負っている。
にもかかわらず,被告は,外環の2に係る都市計画を廃止せずにその効力
を存続させているだけではなく,一部では事業化まで進めているところ,こ
のような被告の行為は,外環の2に係る都市計画の廃止義務に違反する不作
為の違法行為である。
特に被告は,一方で,承継前原告を含む住民に対して外環本線の地下化に
よって住居の移転の心配がなくなったかのような説明をしながら,他方で,
外環の2を外環本線とは別個の計画として残存し得るという説明をして,実
際には外環の2に係る都市計画を廃止することなく推し進めようとしており,
このような被告の態度は,いわゆる二枚舌的態度というべきものであって,
被告による外環の2に係る都市計画の廃止義務違反は極めて違法性が高いと
いうべきである。
そして,外環の2に係る都市計画が事業化されれば,承継前原告は,最終
的に自らが所有する本件不動産からの移転を余儀なくされることは確実であ
ったことから,外環の2に係る都市計画を廃止しないことは,承継前原告と
の関係において違法な公権力の行使に該当する。
したがって,外環の2に係る都市計画を廃止せずに残存させる不作為その
ものが,被告の承継前原告に対する違法な公権力の行使であることは明らか
である。
(被告)
本件都市計画決定は有効であって,被告は外環の2に係る都市計画を廃止
すべき義務を負うことはなく,外環の2に係る都市計画を廃止しないことが
裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるわけでもない。被告は,平成19年外
環本線変更決定以降も,外環の2に係る都市計画について,その必要性や在
り方について広く意見を聴きながら検討を進めているのであって,被告に直
ちに外環の2に係る都市計画を廃止すべき作為義務は発生していない。
したがって,原告X1の主張は,その前提を欠くものである。
(9)承継前原告の損害(争点⑨)
(原告X1)
承継前原告は,外環の2に係る都市計画が廃止されないため,終の棲家と
決めた愛着のある本件不動産を奪われるのではないかという不安を抱いて生
活せざるを得なかった。また,それだけではなく,長年にわたって承継前原
告を含む地域住民の努力によって作り出され,成長させてきた地域を,この
ような違法な都市計画によって分断,破壊されるおそれがあることも,耐え
難い苦しみであった。さらに,本件都市計画決定に伴う都市計画法53条1
項の規定する建築物の建築の制限により,承継前原告は本件建物を自由に改
築することさえできなくなっていた。
このように,承継前原告は,被告による外環の2に係る都市計画の廃止義
務違反という不作為の違法行為により,本件土地に対する財産権(憲法29
条1項),本件土地に居住し続けるという居住の権利(憲法22条1項),
違法な公権力の行使を受けずに平穏に生活する権利(憲法13条)を害され
ており,これによって被った承継前原告の精神的苦痛を償うための慰謝料は
100万円を下ることがない。
(被告)
外環の2に係る都市計画は承継前原告が所有していた本件土地の区域にお
いて事業化自体がされていなかったのであるし,本件都市計画決定に伴う都
市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限も,公共の福祉による制
限であることからすると,承継前原告について,慰謝料の支払をもって償う
べきほどの損害は発生していない。
(10)都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を理由とする損失
補償の要否(争点⑩)
(原告ら)
ア都市計画法に基づく制限について損失補償をすべき場合
憲法29条3項は,私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のため
に用いることができると定めている。
この点,都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限は,都市
計画自体の公益上の必要性が高いこと,収用されるまでの現在の利用は認
められていること,土地が買収又は収用される際には,その土地が権利制
限を受けていないものとして有する価額の補償を受けることができること
などから,原則として,社会的な受忍限度の範囲内のものであり,特別の
犠牲には当たらず,損失補償は要しないと解されている。しかしながら,
これが公共の利益を理由として正当化され,損失補償を必要とせずに権利
者たる個人に対してその受忍を強いることできるのは,その制限等が都市
計画の実現を担保するために必要不可欠であり,かつ,権利者に無補償で
の制限を受忍させるほどに合理的な理由がある場合に限られる。
したがって,①制限が必要不可欠性を欠き違法である場合,すなわち,
都市計画がその行政目的に即した意義を失い,当該都市計画の根拠とされ
た特定の公共的必要性が消滅している場合や,②都市計画について,他
の都市計画の目的を本質的に阻害する結果を招くため,その実施が事実上
不可能な状態に至っている場合には,都市計画決定に基づく制限であるこ
とを理由に損失補償を否定することはできず,特別な犠牲としてその損失
が当然に補償されるべきである。
イ本件都市計画決定に伴う都市計画法53条1項の規定する建築物の建築
の制限について損失補償がされるべきであること
国及び地方公共団体は,都市の整備,開発その他都市計画の適切な遂行
に努めなければならないとされており(同法3条1項),この「適切な遂
行」には適時に事業に着手することも含まれるところ,都市計画の事業化
には時間を要するとの一般論を前提としてもなお,本件都市計画決定がさ
れてから40年以上にわたって事業に着手されることなく放置されている
ということは,本件都市計画決定に伴う同法53条1項の規定する建築物
の建築の制限が量的に蓄積され続けることを意味すると同時に,本件都市
計画決定段階における外環の2に係る都市計画の必要性や実現可能性に関
する計画権者の見通し,その後の計画存続の判断の合理性に対して極めて
重大な疑問を投げかけるものであり,外環の2に係る都市計画の根拠とさ
れた特定の公共的必要性が消滅していることを推認させるものである。
また,外環の2に係る都市計画がその行政目的や計画の必要性の大部分
を依存していた外環本線に係る都市計画については,平成19年外環本線
変更決定により,その構造形式が大深度地下方式に変更されており,これ
により,外環の2に係る都市計画はその基礎となった重要かつ本質的な基
礎事実を事実上喪失しており,本件都市計画決定の根拠とされた特定の公
共的必要性が消滅していることは明らかである。
さらに,平成19年外環本線変更決定による外環本線に係る都市計画の
変更の目的は,「沿道環境に配慮し,移転等の影響を極力小さくするため」
であるところ,外環の2に係る都市計画は,上記のような目的と整合しな
いばかりか,この目的を達成不可能にするほど矛盾した内容である。
そうすると,外環の2に係る都市計画は,平成19年外環本線変更決定
がされた後は,①その行政目的に即した意義を失い,都市計画決定の根
拠とされた特定の行政的必要性が消滅しているばかりか,②計画の実施
が他の都市計画の目的を本質的に阻害する結果を招くためその実施が事実
上不可能な状態に至っている。
そして,現に,本件都市計画決定がされているため,外環の2の区域内
に本件土地を共有する原告らは,同項により本件土地上にある本件建物の
建て替え等が制限されている。また,現在の建物の規模と同程度の規模及
び構造の建物を再建築することが許可されるとはいっても,将来,土地建
物が収用される可能性があるのであればそのような再建築を行うことを決
断することはできないし,仮に建物を再建築したとしても,収用時に補償
されるのは再建築後の経過年数を考慮した評価額となり,同程度の住環境
の不動産を取得するには大幅に不足することからすると,本件都市計画決
定に伴う承継前原告に対する土地利用上の制限の程度は軽微であるという
ことはできない。さらに,本件都市計画決定がされていることにより,そ
の事業化や土地収用を待たずに,本件不動産の取引価格が下落しているこ
とからすると,本件都市計画決定に伴う建築制限等が受忍限度を超えるに
至っていることは明らかというべきである。
したがって,本件都市計画決定に伴って本件土地について建築物の建築
の制限がされていることについて,損失補償がされるべきである。
(被告)
都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限は,都市計画施設の
区域内にある不動産の所有権を有する者が当然に負担すべき内在的制約に属
するものであるところ,都市計画の区域に属している土地の所有者は,同法
54条に定める基準の範囲内で都道府県知事等の許可を得て,建築物を建築
(建て替え)することも可能であることからすると,都市計画決定による権
利制限の程度は収用等の場合と同視すべきほどに強度なものではなく都市計
画決定に基づく建築については損失補償を要しない。
また,外環の2に係る都市計画が重要な事実の基礎を欠くこととなってい
ないことや,外環の2に係る都市計画が外環本線に係る都市計画の目的を本
質的に阻害するものではないこと,外環の2の必要性が失われていないこと
は,前に述べたとおりである。
したがって,本件都市計画決定に伴って本件土地について建築物の建築の
制限がされていることについて,損失補償は不要である。
(11)承継前原告の損失(争点⑪)
(原告ら)
本件都市計画決定に係る都市計画施設である外環の2の計画区域内では,
建物の建築(新築,改築,増築,移転)をしようとする場合には都知事の許
可を必要とし,地階を有する建築物の建築は許可されない。これは,本件土
地の所有者であった承継前原告にとってみると,本来は所有権の権能として
保有していたはずの地下使用権を制限されており,その反面,将来的な収用,
管理のために,被告が本件土地の地下を目的とする(地下)地上権類似の権
利を設定して排他的にその使用(管理)をしているものと評価することがで
きるから,本件都市計画決定に伴う建築制限等によって被った承継前原告の
損失は,本件土地の地下の利用権ということになる。
そして,地下を利用することができないことによる土地の減価率は0.1
0であり,本件土地の都市計画制限のない通常の更地としての正常価格は2
億1180万円であるから,補償されるべき損失は2118万円となる。
(被告)
争う。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前提事実に加えて,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実を認めるこ
とができる(各末尾括弧内記載の証拠等は,認定に主として用いたものであ
る。)。
(1)都計審における審議
ア昭和41年4月22日,第146回都計審が開催され,外環の2等に係
る議案(第2044号),外環本線に係る議案(第2045号)及び外環
本線の附属街路(昭和41年当時の表記は「付属街路」であったが,以下
「外環附属街路」という。)等に係る議案(第2046号。以下,これら
の3議案を併せて「外環関係3議案」という。)が一括して上程,審議さ
れ,いずれも継続審議となった。
上記の外環の2等に係る議案(第2044号)は,東京都における都市
計画街路網の再検討を行った街路特別委員会の報告に基づいて,全体で2
580kmの都市計画街路を1490kmに改めるものであり,この中に
外環の2が含まれていた。上記の都計審において,被告の担当者は,外環
の2等に係る議案(第2044号)について,「外郭環状線の2というの
が追加してございます。これはのちほど申し上げます外郭環状線に関連あ
る道路でございます」と説明した。
上記の外環本線に係る議案(第2045号)は,東京都都市高速道路に
外環本線を追加するものである。
上記の外環附属街路等に係る議案(第2046号)は,外環本線を作る
に当たって,地元へのサービス道路として,外環本線の外側に片側の幅員
6mの附属街路を作ることとし,これを都市高速道路附属街路に追加する
ことなどを内容とするものであった。
(以上につき,甲47,乙13)
イ昭和41年5月4日,第147回都計審が開催され,外環関係3議案が
継続審議となった。(甲48)
ウ昭和41年5月18日,第148回都計審が開催され,外環関係3議案
が特別委員会に付議された。
上記の都計審において,被告の担当者は,外環本線と外環の2について,
「関連街路,あるいは付属街路というようなものを設けまして,高速道路
だけをつくるのではなしに,地元のサービスのできる道路とも合わせてつ
くるような計画を提案しておるわけでございます」などと説明した。
(以上につき,甲49,乙14)
エ昭和41年5月23日,第1回東京都市計画地方審議会議第2044号
ほか特別委員会(以下,同特別委員会を「2044号ほか特別委員会」と
いう。)において,外環の2等に係る議案(第2044号),外環関係3
議案についての説明がされた。(甲29)
オ昭和41年5月26日,第2回2044号ほか特別委員会が開催された。
(甲51)
カ被告首都整備局長は,昭和41年6月1日に開かれた衆議院建設委員会
に参考人として招致された際,外環の2について「今回の外郭環状線を含
みます周辺区の街路計画の改定作業というのは,全般的な,マクロ的な都
市計画の改定作業の一番最後に残されたもの」であるとし,その改定作業
の方法について「20年後,30年後の交通需要を推定いたしまして,各
交通需要の発生時点ごとに,この交通需要を処理し得るような交通能力の
ある街路計画を立てる」ものであると説明し,周辺の交通状況について
「交通調査の結果によりますと,環状6号線の外側の周辺区の交通需要は
急激に増加いたしております。これは周辺部の市街化が急激に進んでおる
のに比例してふえておるわけでございます。」と述べ,道路整備の必要性
のある場所としては,「その各地区別に一番交通の発生地点に近いところ
に必要な幹線道路を補強する必要がある,こういう意味で環状6号,7号,
8号ではどうしても足らない。この路線はそれぞれ必要な強化を講じます
けれども,さらに環状8号線の外側に環状9号ともいうべき街路をどうし
てももう一本はさむ必要がある。そうしてここにあわせて自動車専用道路
をつくる必要がある,こういう判断をいたしたわけでございまして,住居
専用地区の中を通らざるを得ないことになったわけでございます。」,
「どうしても環状線をつくらなければならないとすれば,一番交通需要の
発生地点につくるのが常識でございます。その発生地点は環状8号とその
外側の武蔵野,三鷹地域にきめられておる環状線の間にある」などと説明
した。(乙28)
キ昭和41年6月3日,第3回2044号ほか特別委員会において,外環
関係3議案が一括して採決され,いずれも原案に賛成する者が多数であっ
た。(甲52)
ク昭和41年6月6日第149回都計審において,外環関係3議案が一
括して採決され,いずれも原案どおり賛成多数で可決された。(甲50,
乙19)
(2)外環本線及び外環の2に係る昭和41年の各都市計画決定
ア建設大臣は,昭和41年7月30日,旧都市計画法3条に基づき,別紙
1都市計画目録記載2(1)のとおり,東京都世田谷区α1を起点とし,同
区α2等を経由し,東京都練馬区α3埼玉県界を終点とする幅員23m
(ただし,一部幅員が異なる区間がある。),延長約1万8060mの外
環本線に係る都市計画決定をし,これを告示した(建設省告示第2430
号)。
なお,旧都市計画法の規定上,都市計画決定の内容自体にはなっていな
かったものの,外環本線の構造形式は嵩上式(高架式)とされていた。
(以上につき,前提事実(3)ア)
イ建設大臣は,上記アの外環本線に係る都市計画決定がされた日と同じ昭
和41年7月30日,旧都市計画法3条に基づき,別紙1都市計画目録記
載1(1)のとおり,東京都世田谷区α4×番地を起点とし,東京都武蔵野
市α5を経由し,東京都練馬区α6×番地を終点とする幅員40m(ただ
し,一部幅員の異なる区間がある。),延長約9650mの外環の2に係
る都市計画決定をし,これを告示した(建設省告示第2428号)。(前
提事実(3)イ)
ウ上記イの外環の2を含む建設省告示第2428号の都市計画決定は,東
京都内において過去に決定済みであった都市計画道路網について,おおむ
ね東京23区の環状第6号線の外側の範囲を対象にして再検討を行った結
果,全体で2580kmの都市計画道路を1490kmに改めるというこ
とを内容とするものであり,この際,既定の細道路については,その一部
が補助線街路に組み入れられたが,大部分は市街地開発事業等に委ねるこ
ととして廃止された。(甲47,乙13,乙20,乙24,弁論の全趣旨)
エ前記ア及びイの各都市計画決定がされた時点において,外環の2の経路
は,外環本線の経路と重なっており,その幅員は,外環の2が40m,外
環本線が23mであり,外環の2の方が外環本線よりも幅員が広く,外環
の2の中に構造形式を嵩上式とする外環本線が包摂されるようになってい
た。(甲7の4の2,甲22の3,甲23の3,甲24ないし27,弁論
の全趣旨)
(3)都市計画法の施行
ア旧都市計画法は,現行の都市計画法が昭和44年6月14日に施行され
たことにより,同日をもって廃止され(都市計画法附則1項,2項1号,
都市計画法施行法1条,都市計画法の施行期日を定める政令),外環本線
に係る都市計画及び外環の2に係る都市計画は,都市計画法の規定による
相当の都市計画とみなされた(都市計画法施行法2条)。(前提事実(4))
イ臨時措置法の規定によって設けられた委任命令の一つである臨時特例は,
旧都市計画法及び旧都市計画法施行令の特例を規定するものであったため,
都市計画法施行令附則2条2号の規定により,都市計画法が施行された日
と同日である昭和44年6月14日に廃止された。
(4)都市計画の凍結
建設大臣は,昭和45年10月9日の参議院建設委員会において,外環本
線に係る都市計画を凍結する旨の発言をした。(甲11)
(5)外環本線及び外環の2に係る昭和61年の各都市計画変更決定
ア東京都知事は,昭和61年1月21日,別紙1都市計画目録記載2(2)
のとおり,外環本線に係る都市計画の変更決定をし,同日,同目録記載1
(2)のとおり,外環の2に係る都市計画変更決定し,これらを告示した
(東京都告示第56号)。(前提事実(5)ア,イ)
イ上記アの外環本線に係る都市計画変更決定は,外環本線について,関越
道から埼玉県境までの区間,延長約1160mについての構造形式を嵩上
式から堀割式に変更するとともに,車線の数を4車線から6車線に変更し,
両側に,植樹帯のほか地域のサービス道路,自転車道,歩行者道を設けた
それぞれ幅20mの環境施設帯を設置し,これに伴って,標準幅員を23
mから64mに拡幅するというものであり,また,外環の2に係る都市計
画変更決定は,外環の2について,外環本線の掘割式に変更された部分と
重なり合う放射第7号線(通称「α7」)から補助第230号線までの区
間約680mを廃止するというものであった。(甲24)
なお,上記アの外環本線に係る都市計画変更決定において,外環本線の
構造形式を基本的に嵩上式とすることが正式に都市計画の内容とされた。
(前提事実(5)ア)
(6)外環本線に係る都市計画の平成4年の変更決定
被告は,平成4年6月1日,外環本線の関越道のインターチェンジ部分
(東京都練馬区α8,同区α9間)の幅員を変更することとし,別紙1都市
計画目録記載2(3)のとおり,外環本線に係る都市計画の変更決定をし,こ
れを告示した(東京都告示第667号)。(前提事実(6))
(7)平成19年外環本線変更決定までの経緯
ア建設省と被告は,平成6年11月に開催された第8回首都道路会議にお
いて,外環本線の整備について,地下構造を含めて引き続き検討を行うこ
ととし,意見交換,検討の場を設けることを決定した。建設省と被告は,
この決定を受けて設けられた「東京外かく環状道路懇談会」において,外
環本線についての意見交換,検討を行った結果,道路構造や地上部の在り
方等,今後地元との話合いを進めることができる計画案の見通しを得たと
して,平成9年9月頃,外環本線の道路構造については,環境保全,まち
づくり等の観点から,地下構造(ボックス構造等)を有力な案とし,地域
の利便性,まちづくりの観点から他の道路との接続や地上部の在り方など
について関係自治体等の意見を幅広く聞きながら計画の具体化を図ってい
くという方針で進めることを確認した。(乙2)
イ国土交通省関東地方整備局と被告都市計画局は,平成13年4月,「東
京外かく環状道路(関越道~東名高速)の計画のたたき台~幅広い議論の
ために~」と題するパンフレットを作成した。
上記パンフレットでは,外環本線に係る都市計画について,沿道環境へ
の影響を考慮し,現計画を地下構造に変更するとした上,外環本線を地下
化した場合の地上部の利用について,それぞれの地域の実情や地域の意向
等に合わせて検討するため,公園や歩行空間を整備する場合,バス路線な
ど公共交通を整備する場合,幹線道路を整備する場合,住宅,地域コミュ
ニティを維持する場合の四つのメニューを示した。
(以上につき,甲14の1)
ウ平成14年6月,外環本線について計画の構想段階から幅広く意見を聴
くパブリック・インボルブメント(PI)方式で話し合うことを目的とし
て,沿線の7区市の住民と区市の担当者,国土交通省と被告の担当者で構
成するPI外環沿線協議会が設立され,平成16年10月までの間に42
回の協議会,2回の現地視察等が実施された。(乙3)
エ被告都市整備局は,平成17年1月,「外環の地上部の街路について」
と題するパンフレットを作成し,その中で,外環の2について,「東京都
では,改めて現在の都市計画の内容を地域の皆さんにお示しし,高速道路
の外環を地下化した場合の地上部の取扱いについて,今後,皆さんの意見
を聴きながら具体的な検討を進めてまいります。」とした上で,外環の2
の取扱いについて,①現在の都市計画の区域を活用して道路と緑地を整
備,②都市計画の区域を縮小して車道と歩道を整備,③代替機能を確
保して都市計画を廃止という三つの考え方を示した。(乙6)
オ被告及び多摩地域の関係28市町は,平成18年4月,多摩地域におけ
る都市計画道路を計画的,効率的に整備することを目的として,「多摩地
域における都市計画道路の整備方針(第三次事業化計画)」(平成18年
多摩整備方針)を策定,発表した。
平成18年多摩整備方針では,未着手の都市計画道路を対象とし,①
交通処理機能の確保,②都市間ネットワークの形成,③バス交通を支
える道路網の形成,④震災時における防災性の向上,⑤良好な居住環
境地区の形成,⑥大気汚染物質及び温室効果ガスの排出抑制,⑦拠点
整備やまちづくりへの貢献,⑧環境軸の形成の八つを「必要性の確認」
の評価項目として,そのいずれかに当てはまるものを必要性のある道路と
して確認しているところ,外環の2は,これに当てはまるとして必要性が
確認されたものの,今後10年間(平成18年度から平成27年度まで)
において優先的に整備すべき路線には含まれておらず,「高速道路が地下
化された場合に検討が必要な路線」とされていた。
(以上につき,甲40,乙7,乙26)
カ被告は,平成18年6月2日,平成19年外環本線変更決定に先立って,
当該決定に係る都市計画の案の縦覧を行ったが,この縦覧に係る図書の一
つである都市計画の案の理由書では,外環本線に関する経緯や地域の状況,
土木技術の進歩,環境への配慮などを総合的に勘案し,東名高速道路から
関越自動車道までの区間について,構造形式を嵩上式から地下式に変更し,
併せて,土地の適正かつ合理的な利用の促進を図るために立体的な範囲を
定める等の都市計画変更を行うものであり,その際,起点から終点までの
車線数を6車線とし,一方で,外環本線に沿って東八道路とのインターチ
ェンジ以南でかつ東名高速道路とのジャンクション以北の地表部に設ける
こととしていたおおむね幅員6mの外環附属街路の道路計画を廃止するも
のとされていた。(乙46,弁論の全趣旨)
キ国土交通省関東地方整備局と被告都市整備局は,平成18年6月,「東
京外かく環状道路(関節道~東名高速間)これまでに頂いたご意見・ご
提案と計画の具体化の検討等における考え方」と題する冊子を発表したが,
そこでは,外環本線について,沿線地域での移転や地域の分断への影響な
どをできるだけ小さくするために,構想段階では,極力,大深度地下を活
用することとしたこと,大深度地下方式は,地上にある建物の移転の必要
がないため,地域分断を最小限に抑えることができること,高架構造では
都市計画上のルート上の建物は全て移転が必要となるが,大深度地下方式
とすることで,移転が必要となるのは開削ボックス区間の建物だけになる
ことを説明した上,外環の2については,これまで,①現在の都市計画
の区域を活用して道路と緑地を整備,②都市計画の区域を縮小して車道
と歩道を整備,③代替機能を確保して都市計画を廃止という三つの考え
方を示して意見を聴いてきており,平成18年多摩整備計画においても,
外環本線が地下化された場合,その必要性について検討する路線として位
置付けられていることから,地域分断等が生じないよう配慮しつつ,外環
本線と同様,周辺のまちづくりも含め,住民の意見を聴きながら取扱いに
ついて検討を進めていくとしていた。(甲14の2)
ク杉並区長は,平成18年10月10日付けで,東京都知事に対し,外環
本線(世田谷区α2から練馬区α3までの間)の事業に係る環境影響評価
準備書に対する意見を提出しているところ,その中で,「地上部の外環ノ
2については,青梅街道IC周辺の交通量予測以外には今回の環境影響評
価準備書の対象外としていますが,外環本体との関連が深いため,この取
り扱いを保留したまま環境影響評価をし,事業を進めることには問題があ
ります。地元住民や環境への影響が大きい外環ノ2については,地元住民
及び当区の意見を十分に尊重するよう要望します。」としていた。(甲9
7)
また,武蔵野市長は,平成19年1月10日頃,外環本線の構造形式を
地下式とする都市計画変更案についての東京都知事からの意見照会に対す
る回答において,外環の2について,沿線地域の住環境保全の観点から,
現時点ではその整備の必要性は認識しておらず,また,外環本線と一体の
ものとして,外環本線に係る都市計画の変更に伴って都市計画の変更が必
要であり,廃止することを含め,計画の方向性,検討のプロセスを早急に
明らかにするように求めていた。(甲19,弁論の全趣旨)
ケ平成19年3月,第176回都計審が開催され,外環本線の構造形式を
基本的に嵩上式から地下式に変更し,車線数を6車線に変更することなど
を内容とする都市計画の変更に係る議案が原案どおり可決された。
上記の都計審において,被告の担当者は,外環本線に係る都市計画の変
更に係る議案は,沿道環境を保全し,移転等の影響を極力少なくするため,
構造形式を嵩上式から地下式に変更するものであると説明した上,外環の
2について,高速道路である外環本線の収容空間を兼ねているものの,幹
線道路ネットワークを構成する都市計画道路であり,高速道路の外環本線
とは機能が異なると考えていることから,三つの検討の方向性を示して住
民の意見などを聴いているが,外環本線の地下化とは別に検討すべきとの
意見もあるため,併せて都市計画変更案を提出するということはせず,今
後,外環本線に係る都市計画変更が決まれば,住民の意見を聞きながら,
国及び関係区市と検討を進め,できるだけ早期に具体的な案を取りまとめ
ていきたいなどと説明した。
(以上につき,乙8)
(8)外環本線に係る平成19年の都市計画変更決定(平成19年外環本線変
更決定)
ア被告は,平成19年4月6日,外環本線の構造形式を基本的に嵩上式か
ら地下式に変更し,車線の数を6車線に変更することとし,別紙1都市計
画目録記載2(4)のとおり,外環本線に係る都市計画の変更決定(平成1
9年外環本線変更決定)をし,これを告示した(東京都告示第588号)。
(前提事実(7))
イ外環附属街路(東八道路以南,東名高速道路まで)は,外環本線が嵩上
式であることを前提として,外環本線の建設によって分断された接道しな
い土地や利用できない土地が生じないよう沿道住民の利便に資することを
目的として計画されたものであったため,外環本線の構造形式が嵩上式か
ら地下式に変更されることにより,その機能が不要となったとして,平成
19年外環本線変更決定と同時に,都市計画上廃止されることになったが,
外環の2については,廃止や変更は行われなかった。(甲10の3,乙6,
弁論の全趣旨)
(9)平成19年外環本線変更決定後の外環の2に関する事実経過
ア被告都市整備局は,平成19年8月,「外環の地上部の街路について」
と題するパンフレットを作成し,その中で,同年4月に外環本線の構造形
式を地下式に変更したことを踏まえ,改めて,現在の都市計画の内容を示
し,地上部(外環の2)の取扱いについて,意見を聴きながら具体的な検
討を進めるとした上で,外環の2の取扱いについて,①現在の都市計画
の区域を活用して道路と緑地を整備,②都市計画の区域を縮小して車道
と歩道を整備,③代替機能を確保して都市計画を廃止という三つの考え
方を示した。(甲2)
イ被告は,平成20年2月,「外環(東京外かく環状道路)関越道~東名
高速間」と題するパンフレットを作成し,その中で,外環の地上部街路
(外環の2)について,外環本線の構造形式を嵩上式から地下式に変更し
たことを踏まえ,今後,地上部街路(外環の2)についても,環境,防災,
交通ネットワーク等の観点から,その必要性や整備の在り方などについて,
広く意見を聴きながら検討を進めていくという考えを示した。(甲1)
ウ被告都市整備局は,平成20年3月,外環の2について,「外環の地上
部の街路について検討の進め方」と題するパンフレットを作成し,その
中で,平成19年外環本線変更決定において外環本線の構造形式が基本的
に嵩上式から地下式に変更されたことを踏まえ,今後,環境,防災,交通,
暮らしの四つの視点で,地上部街路(外環の2)の必要性や在り方につい
て,広く意見を聴きながら検討を進め,都市計画に関する被告の方針をと
りまとめていくという考えを示した。(乙9)
エ被告は,外環の2に関する地域住民,地上部街路沿線町会,商店会等,
区又は市,国土交通省との話合いの場として,沿線区市ごとに「外環の地
上部街路に関する話し合いの会」(話し合いの会)を設置し,平成21年
以降,武蔵野市,練馬区及び杉並区において,話し合いの会を開始し,そ
れぞれ話し合いの会を複数回,実施している。(甲53の1及び2,甲1
46,甲147,甲150,甲168の1及び2,甲169の1ないし3,
乙33ないし37,乙43,乙44)
オ国土交通省関東地方整備局と被告都市整備局は,平成21年4月,「東
京外かく環状道路(関越道~東名高速間)対応の方針」と題する冊子を発
表し,その中で,外環の2のうちのα12JCT区間について整備する考
え方を示した。(甲127)
カ外環本線(関越道から東名高速道路までの区間16.2km)は,平成
21年5月に事業化された。(甲93,乙47)
国土交通大臣,X6株式会社及びX7株式会社は,平成25年11月8
日付けで,外環本線について,大深度地下の公共的利用に関する特別措置
法に基づく使用認可申請書を所管大臣である国土交通大臣宛てに提出した
が,上記申請書では,外環本線を大深度地下に建設する理由として,地上
式の道路の場合と比較して,土地の改変をできる限り減らし,また,自動
車からの排出ガス,騒音及び振動が沿道に与える影響を最小限に抑えるこ
とができること,大深度地下を使用し施工することにより,用地取得や区
分地上権設定範囲を極力小さくすることができること,特に高度な土地利
用が図られている東京都内の既成市街地部を通過するため,用地取得や区
分地上権設定範囲を極力小さくして早期整備を図る必要があることが挙げ
られていた。(甲140の1ないし5)
また,国土交通大臣,X6株式会社及びX7株式会社は,同日付けで,
国土交通大臣及び東京都知事に対し,外環本線に係る都市計画事業承認及
び認可申請書を提出したが,上記申請書では,外環本線に係る都市計画が
平成19年において大深度地下を活用した立体的な都市計画とされたのは,
沿線環境への配慮の観点から,市街地への影響が最小限になるよう配慮が
されたものであるとされていた。(甲139の1ないし11)
(10)外環の2の一部事業認可等
ア被告は,平成24年7月18日,東京都練馬区α10×番から同区α1
1×番までの延長1000m,幅員48mないし78mの区間(その時点
における外環の2のうち最北端に位置し,関越道のα12ジャンクション
に隣接する区間。α12JCT区間)についての都市計画事業である「東
京都市計画道路事業幹線街路外郭環状線の2」について,都市計画法59
条2項に基づき,施行者として,関東地方整備局長に対して都市計画事業
の認可の申請をし,同年9月7日付けで認可を受け,同月27日に同法6
2条1項に基づく告示がされた(平成24年関東地方整備局告示第335
号)。(前提事実(9)ア)
被告は,上記都市計画事業の認可申請の理由について,「本整備により,
外環道や関越インター,α7へのアクセス性が向上するなど,本地域の南
北道路ネットワークが強化されるとともに,歩道や緑地帯の整備による良
好な都市環境が創出される。また,延焼遮断帯として地域の防災性向上に
寄与する」としていた。(甲107の1)
イ武蔵野市長は,平成25年2月26日に開催された武蔵野市議会平成2
5年第1回定例会において,外環の2について,その必要性を認識してお
らず,練馬区において部分的な工事着手があったことは極めて遺憾である
と述べた。(甲157)
ウ被告都市整備局は,平成26年1月,「練馬区おける外環の地上部街路
についてあり方(複数案)」と題するパンフレットを作成し,その中で,
外環の2のα7から青梅街道までの約3kmの区間(練馬3キロ区間)に
ついて,代替機能を確保して都市計画を廃止することは,既存道路の拡幅
が必要となり,沿道の土地利用の状況などを考慮すると採用することは困
難であると考えているとした上,地上街路の在り方(複数案)として,①
車道,歩道,植樹帯を設置した道路(幅員18m),②車道,自転車道,
歩道,植樹帯を設置した道路(幅員22m),③車道,自転車道,歩道,
植樹帯,緑地帯を設置した道路(幅員40m)の3案を示した。(甲13
5)
なお,練馬3キロ区間は,原告らが所有する本件不動産から,杉並区を
間に挟み,約1.5km離れた場所に位置している。(甲32の1及び2,
弁論の全趣旨)
エ練馬区は,平成26年2月,「「外環の2」に関する今後の取組方針」
と題する文書を公表したが,その中で,外環の2について,区内の南北交
通に資する都市計画道路であるとともに,快適な都市環境の創出や延焼遮
断帯の形成などの環境面,防災面などの観点からも重要な都市計画道路で
あると考えており,都市計画の取扱いを明確にした上で,早期に整備を図
るように被告に要請していくとした上,その際には,車道は2車線(片側
1車線)とすること,広幅員の歩道と自動車道を確保すること,延焼遮断
帯としての機能が発揮できる幅員を確保すること,可能な限り緑化を図る
ことなどに配慮するように併せて被告に要請していくとした。(乙62)
オ被告都市整備局は,平成26年5月14日,練馬3キロ区間について,
幅員22mの道路への都市計画変更手続をすることなどを内容とする「外
環の地上部街路(外環の2)の都市計画に関する方針」を発表し,これに
基づき,都市計画変更素案を作成し,被告は,同年6月,「都市計画変更
素案のあらまし」及び「練馬区における外環の地上部街路について・これ
までの検討の総括」と題する各パンフレットを作成した。
上記の各パンフレットの説明によれば,外環の2のα7から青梅街道ま
での区間について,事業中のα12ジャンクション地域(α12JCT区
間)及び(仮称)青梅街道インターチェンジの整備により地上部が改変さ
れる区間を除いて都市計画の区域を縮小し(縮小区間約2840m),車
線数は2車線(片側1車線)とし,標準幅員は,道路の基本的な機能を確
保した上で,歩行者,自転車,自動車の通行空間を構造的に分離可能な2
2mとするものとされているが,上記区間以南の青梅街道から東八道路ま
での区間(杉並,武蔵野,三鷹区間)については,引き続き,検討のプロ
セスに基づき,広く意見を聴きながら検討を進めるものとし,都市計画変
更の対象外とされている。
(以上につき,甲153,甲154,乙64,乙65)
カ被告は,平成26年9月19日,外環の2に係る都市計画について,練
馬3キロ区間の幅員を22mにすることなどを内容とする都市計画(変更)
案を公告し,同年10月3日までの2週間,公衆の縦覧に供した。(乙6
9)
キ被告は,都計審の議を経た上,平成26年11月28日,外観の2の幹
線街路放射第6号線から幹線街路放射第7号線までの区間(延長約437
0m)の車線を2車線と決定すること,東京都練馬区α13から同区α1
0までの区間(延長約2840m。練馬3キロ区間)の幅員を22mに変
更すること,同区α13,α14及びα15各地内に面積約5100㎡の
交通広場を設置することとして,都市計画法21条1項に基づき,別紙1
都市計画目録記載1(3)のとおり,外環の2に係る都市計画の変更決定を
し,これを告示した(東京都告示第1573号)。(甲170,乙69,
前提事実(9)イ)
(11)その他
ア本件都市計画決定に係る都市計画施設である外環の2の区域内にある原
告らの所有する本件土地は,地積373.55㎡の宅地であり,第1種低
層住居専用地域に指定された地域にあり,建ぺい率は40%,容積率は8
0%とされており,第1種高度地区に指定された地域にあるため,10m
の高度制限が課されているほか,最低敷地面積は120㎡とされ,建築基
準法22条及び23条により屋根や外壁に不燃材料を使わなければならな
いとされている。(甲15の4,甲102,甲128)
イ本件建物は,別紙2物件目録記載2のとおり,その構造は木造スレート
葺2階建て,床面積は1階が96.39㎡,2階が52.65㎡である。
(甲16の3,甲129)
ウ本件土地の周囲は,低層建物を主体とする古くからの住宅地であり,標
準的な使用は,2階建て程度の中規模一般住宅,アパート等の敷地であり,
やや古い住宅等が多い。(甲32の1,甲86,甲102,甲141,甲
142,甲152)
エ東京都知事は,本件都市計画決定に係る都市計画施設である外環の2の
区域内において,都市計画法55条1項の規定による区域の指定は行って
いない。(弁論の全趣旨)
オ原告らは,本件不動産の譲渡を具体的に予定しているわけでも,外環の
2の区域内にある本件土地において,建築物の建築を具体的に予定してい
るわけでもない。(弁論の全趣旨)
2本件無効確認の訴えについて
(1)抗告訴訟の対象について
原告らは,本件都市計画決定が抗告訴訟の対象となることを前提として,
行政事件訴訟法3条4項所定の無効等確認の訴えとして,本件無効確認の訴
えを提起している。
この点,抗告訴訟は,行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟であり,
行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為を対象として,その効力等を
争う訴訟である(行政事件訴訟法3条)。そして,ここでいう行政庁の処分
その他公権力の行使に当たる行為(以下「行政処分」ということがある。)
とは,公権力の主体たる国又は地方公共団体が行う行為のうち,その行為に
よって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律
上認められているものをいう。
したがって,本件無効確認の訴えが適法であるためには,本件都市計画決
が,抗告訴訟の対象となる行政処分であること,すなわち,直接国民の権利
義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているもので
あることが必要となる。
(2)都市計画事業に関する法令の定め
ア都道府県又は市町村が,道路等の都市施設(都市計画法11条1項)を
都市計画事業(同法4条15項)として整備しようとする場合,まず,当
該都市施設を定めた都市計画の案を作成し,これを公衆の縦覧に供した後
(同法17条1項),都市計画審議会の議を経て都市計画を決定し(同法
18条,19条),その旨の告示をする(同法20条1項)。都市計画決
定がされた場合でも,都道府県又は市町村は,都市計画を変更する必要が
生じたときなどは,都市計画変更の案を公衆の縦覧に供した後,都市計画
審議会の議を経て都市計画を変更する旨の決定をする(同法21条)。そ
して,都道府県又は市町村が,当該都市施設に関する都市計画事業を施行
する場合(同法59条),その段階で,当該都市計画事業について,収用
又は使用の別を明らかにした事業地,設計の概要,事業施行期間及び資金
計画という事業計画の基礎的事項を記載した申請書により都市計画事業の
認可の申請をし(同法60条1項ないし3項),国土交通大臣又は都道府
県知事の認可を受ける必要がある(同法59条)。国土交通大臣又は都道
府県知事は,都市計画事業の認可をしたときは,遅滞なく,施行者の名称,
都市計画事業の種類,事業施行期間及び事業地を告示するものとされてお
り(同法62条1項),この認可の告示がされると,当該都市計画事業の
施行者に対して事業地内の土地を収用し得る地位が付与される(同法70
条1項,土地収用法第4章)。
イ都市施設に関する都市計画決定がされると,都市計画施設の区域内にお
いて建築物の建築をしようとする者は,原則として都道府県知事等の許可
を受けなければならないが,政令で定める軽易な行為等については都道府
県知事等の許可を受けることを要しないとされている(都市計画法53条
1項)。また,当該建築物が,階数が2以下で,かつ,地階を有せず,主
要構造部が木造,鉄骨造,コンクリートブロック造その他これらに類する
構造であって,容易に移転し,又は除去することができるものであると認
められる場合等の一定の場合には,都道府県知事等は,同項の規定による
許可の申請を許可しなければならないとされているが(同法54条),都
市計画施設の区域内の土地でその指定したものの区域内において行われる
建築物の建築については,許可をしないことができる(同法55条)。さ
らに,都道府県知事等(同条4項の規定により,土地の買取りの申出の相
手方として公告された者があるときはその者。以下,同法56条1項の適
用に関しては同じ。)は,事業予定地内の土地の所有者から,同法55条
1項によって建築物の建築が許可されないときはその土地の利用に著しい
支障を来すこととなることを理由として,当該土地を買い取るべき旨の申
出があった場合においては,特別の事情がない限り,当該土地を時価で買
い取るものとされている(同法56条1項)。
ウ都市計画法55条4項の規定による公告があったときは,都道府県知事
等(同項の規定により,同法57条2項本文の規定による届出の相手方と
して公告された者があるときはその者。以下,同条の適用に関しては同
じ。)は,速やかに,国土交通省令で定める事項を公告するとともに,国
土交通省令で定めるところにより,事業予定地内の土地の有償譲渡につい
て,同法57条2項から4項までの規定による制限があることを関係権利
者に周知させるため必要な措置を講じなければならない(同条1項)。上
記の公告の日の翌日から起算して10日を経過した後に同法55条1項の
規定による指定がされた区域内の土地を有償で譲り渡そうとする者は,原
則として,当該土地,その予定対価の額及び当該土地を譲り渡そうとする
相手方等を書面で都道府県知事等に届け出なければならない(同法57条
2項本文)。上記の届出があってから30日以内に都道府県知事等が届出
をした者に対して届出に係る土地を買い取るべき通知をしたときは,当該
土地について,都道府県知事等と届出をした者との間に届出書に記載され
た予定対価の額に相当する代金で,売買が成立したものとみなされる(同
条3項)。
(3)都市計画決定の処分性について
アまず,原告らは,都市施設に関する都市計画決定がされると,都市計画
施設の区域内において建築物の建築の制限や土地の有償譲渡の制限がされ
ることをもって,都市計画決定に処分性が認められると主張する。
しかしながら,都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限は,
都市計画施設の区域内において建築物の建築をしようとする者について,
原則として建築物の建築についての都道府県知事等の許可を受けなければ
ならないとするものであるところ,この制限は,特定の個人に向けられた
ものではなく,一般的に都市計画施設の区域内の建築行為を都道府県知事
の許可にかからしめるという抽象的な効果を持つものにすぎないから,都
市計画施設の区域内の土地所有者等の権利を直接的,具体的に制限するも
のとはいえない。また,同項ただし書1号により,政令で定める軽易な行
為等については同項本文の規定する許可を受けることを要しないとされて
いるほか,同法54条により,当該建築物が,階数が2以下で,かつ,地
階を有せず,主要構造部が木造,鉄骨造,コンクリートブロック造その他
これらに類する構造であって,容易に移転し,又は除去することができる
ものであると認められる場合等の一定の場合には,都道府県知事等は,同
法53条1項の規定による許可の申請を許可しなければならないとされて
おり,仮に同項の規定に違反した者がある場合でも,土地区画整理法76
条4項の規定するような原状回復等の命令がされたり,同法140条の規
定するような当該命令違反に対し刑罰が科されたりする仕組みにはなって
いないことからしても,都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の
制限が課されることをもって,都市施設に関する都市計画決定が,直接当
該都市計画施設の区域内の土地所有者等の権利義務を形成し,又はその範
囲を確定するものと認めることはできない。さらに,都市施設に関する都
市計画決定がされてから長期間が経過し,その結果,建築制限が長期間に
わたって課されるという結果となったとしても,これは都市計画決定がさ
れた後の事情にすぎず,同項の規定する建築物の建築の制限が,都市計画
施設の区域内の土地所有者等の権利を直接的,具体的に制限するものとは
いえないという上記判断を左右するものではない。しかも,同項の規定す
る建築物の建築の制限については,同項の規定する許可の申請に対して都
道府県知事等による許否の判断がされることになるから,同項に基づいて
建築物の建築の制限を受ける者に対する救済は,上記の許否の判断に係る
処分に対する抗告訴訟の提起を認めれば足りると考えられる。
次に,同法57条の規定する土地の有償譲渡の制限についても,そもそ
もその効力は,都道府県知事によって同法55条1項の規定による区域の
指定がされた場合に,当該区域内において生じるものであり(同法57条
2項),都市計画決定がされることによって直ちに生じるわけではなく,
上記の区域の指定について特段の要件が定められていないからといって,
その指定によって生じる効力を都市計画決定自体から生じる効果であると
解することはできないから,原告らの主張は失当である。
その他,原告らは,都市計画施設の区域内に土地を所有する者は,都市
計画決定に伴う建築物の建築の制限や土地の有償譲渡の制限により,当該
土地を他に売却しようとしても通常の取引の場合のように買手を見つける
ことが困難となるという制限を受けていると主張するが,現にこのような
制限に伴う不利益があったとしても,これは上記の建築物の建築の制限等
に端を発する事実上のものにとどまるというべきあり,このような不利益
があることをもって,都市施設に関する都市計画決定が,直接当該都市計
各施設の区域内の土地所有者の権利義務を形成し,又はその範囲を確定す
るものであると認めることはできない。
そうすると,都市計画決定に伴って同法53条1項の規定する建築物の
建築の制限や同法57条の規定する土地の有償譲渡の制限等が生じること
をもって,都市施設に関する都市計画決定の処分性を認めることはできな
いというべきである。
イ次に,原告らは,都市施設に関する都市計画決定がされると,都市計画
施設の区域内の土地の所有者等は,当該土地の収用を受ける地位に立たさ
れるから,都市計画決定には処分性が認められると主張する。
この点,都市施設に関する都市計画決定は,都市施設の整備を目的とし
た都市計画事業の手続の一部を構成するものであり,都市計画決定がされ
ることにより,抽象的には都市計画施設の区域内の土地が収用される可能
性が生じることは確かである。また,上記アで説示したとおり,都市施設
に関する都市計画決定については,将来の都市計画事業の円滑な実施を目
的として,都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限等の効果
が生じるものとされていることも確かである。
しかしながら,都道府県又は市町村が道路等の都市施設を都市計画事業
として整備しようとする場合には,まず,同法11条に基づいて都市計画
において当該都市施設を定めた上で,具体的に事業を施行しようとする段
階で,同法59条に基づいて都市計画事業の認可を得る必要がある。そし
て,都市計画事業においては,都市施設に関する都市計画決定がされた段
階では,施行者に法的強制力をもった事業の施行権は付与されないため,
都市計画施設の区域内の土地を当然に収用することができるわけではなく,
都市計画事業の認可の申請の際に初めて,収用又は使用の別を明らかにし
た事業地,設計の概要,事業施行期間及び資金計画という事業計画の基礎
的事項が明らかにされ(同法60条1項ないし3項),都市計画事業の認
可がされることにより,法的強制力をもった事業の施行権が付与され,事
業地内の土地を収用することができるようになるのであり,この点で,土
地区画整理事業において,事業計画決定がされると,施行者に法的強制力
をもった事業の施行権が付与され,特段の事情がない限り,ほぼ確実に施
行区域内の宅地の所有者等について換地処分が行われることになることと
は異なっている。
このように,都市計画施設の区域内の土地所有者等は,都市計画決定が
されたからといって,当然に都市計画事業の手続に従って土地の収用を受
けるべき地位に立たされるとはいえないから,都市計画決定が,直接当該
区域内の土地所有者等の権利義務を形成し,又はその範囲を確定するもの
と認めることはできない。
しかも,前記のとおり,都市計画事業を施行するためには,同法59条
の規定する都市計画事業の認可を受けることが必要となり,これによって
事業地内の土地の収用を受けるべき地位に立たされる土地所有者等の救済
は,都市計画事業の認可に対する抗告訴訟の提起を認めれば足りると考え
られるから,具体的な施行時期も未定である都市計画決定の段階で抗告訴
訟によってその違法性を争うことを認める必要はないというべきである。
ウこれに対し,原告らは,都市計画については都市計画事業の認可がされ
ないまま土地の任意買収等によって事業が遂行されることがあるため,都
市計画事業の認可に対する抗告訴訟において,都市計画決定が違法である
として当該事業認可が違法であると判断されたとしても,その間に土地の
任意買収等によって当該都市計画事業が遂行された結果,事業全体に著し
い混乱をもたらすとして事情判決がされる可能性があるから,都市計画決
定自体に対する抗告訴訟を認めなければ,土地の収用を受けるべき地位に
立たされる都市計画施設の区域内の土地所有者等に対する実効的な権利救
済が図れないと主張する。
しかしながら,例えば,都市計画事業として土地区画整理事業が行われ
る場合,①都市計画決定,②事業計画決定を経て,③換地処分に至るとこ
ろ,施行区域内の権利者は,仮に②の事業計画決定を対象とした抗告訴訟
の提起が認められないとすると,換地処分等を対象とした抗告訴訟により
同決定の適法性を争うしかなく,その訴訟において仮に違法が認められた
としても,事業全体に著しい混乱をもたらすとして事情判決がされる可能
性も相当程度あるため,施行区域内の権利者の実効的な権利救済を図るた
めには,事業計画決定がされた段階で,これに対する抗告訴訟の提起を認
める必要性があるのに対し,都市施設に関する都市計画事業の場合には,
①都市計画決定,②都市計画事業の認可を経て,③土地収用に至るところ,
事業地内の土地所有者等は,②の都市計画事業の認可に対する抗告訴訟に
より都市計画決定の適法性を争うことができるのであり,この場合におい
て,任意買収によって事業が遂行されていることなどを理由に事情判決を
しなければならないような事態が一般的に想定し得るともいえないから,
都市計画事業の認可に対する抗告訴訟を認めるだけでは事業地内の土地所
有者等に対する実効的な権利救済が果たされないということはできない。
また,原告らは,都市計画決定について,本件都市計画決定のように一
部事業認可がされた場合には類型的に事情判決がされる可能性が高いから,
都市計画決定に対する抗告訴訟を認めなければ,都市計画施設の区域内の
土地所有者等に対する実効的な権利救済が図れないと主張するが,そもそ
も,ある行政行為について処分性が認められるかどうかは,当該行政行為
自体の客観的かつ抽象的な性質の問題であり,これは当該行政行為がされ
た時点で判断されるべきものであるから,当該行政行為がされた後の事情
によって,処分性の有無が左右されると解することはできず,都市計画決
定の後に一部事業認可がされたことにより,当該都市計画決定の処分性が
認められると解するのは困難というべきである。そして,このことは,都
市計画の一部について,事業化を前提とした都市計画変更決定がされたよ
うな場合も同様である。
このように,都市計画事業の認可に対する抗告訴訟において事情判決を
しなければならないような事態が一般的に想定し得るとはいえない以上,
実効的な権利救済のために都市計画決定を抗告訴訟の対象として取り上げ
るのが合理的であるとはいえないし,仮に都市計画決定後に一部事業認可
がされたり,事業化を前提とした都市計画変更決定がされたり,さらには,
任意買収によって都市計画事業が進行したりして,これらの事情によって
公法上の法律関係の確認の訴えに係る確認の利益が基礎付けられるという
のであれば,これを活用することによってその実効的な権利救済を図るこ
とも可能であることからすると,都市計画施設の区域内の土地所有者等に
対する実効的な権利救済という点からも,都市計画決定の処分性を認める
必要性を認めることはできないというべきである。
エその他,原告らは,都市施設に関する都市計画決定について,その内容
が具体的であり,違法性の判断が可能であることを処分性が認められるべ
き根拠として主張するが,行政行為の処分性の有無は,その行為によって,
直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認め
られているか,あるいは,実効的な権利救済のために当該行為を抗告訴訟
の対象として取り上げるのが合理的であるかどうかによって判断されるべ
きものであり,原告らの主張する都市計画決定の内容の具体性等は,その
処分性を直ちに基礎付けるものとは認められない。
(4)小括
以上によれば,本件都市計画決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分には
当たらないから,行政事件訴訟法3条4項所定の抗告訴訟である無効等確認
の訴えの対象とすることはできず,本件無効確認の訴えは,その余の点につ
いて判断するまでもなく,不適法なものというべきである。
3本件義務付けの訴えについて
原告らは,行政事件訴訟法3条6項1号所定のいわゆる非申請型の義務付け
の訴えとして,本件都市計画の廃止手続の義務付けを求めているところ,前記
2で判断したとおり,そもそも都市計画決定自体に処分性を認めることができ
ない以上,都市計画を廃止する決定についてもまた,処分性を認めることがで
きないというべきである。仮に原告らが求めるものが都市計画の「廃止手続」
であったとしても,都市計画の廃止の手続自体に処分性を認めることができな
いことも明らかである。
そうすると,本件義務付けの訴えは,抗告訴訟の対象とならない行政庁の行
為の義務付けを求めるものであり,その余の点について判断するまでもなく,
不適法な訴えというべきである。
4本件各法律関係確認の訴えについて
(1)公法上の法律関係に関する確認の訴えにおける確認の利益について
原告らは,行政事件訴訟法4条所定の公法上の法律関係に関する確認の訴
えとして,本件都市計画が違法であることの確認(請求の趣旨(3)),原告
らが本件不動産について都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制
限を受けない地位にあることの確認(請求の趣旨(4)),及び,被告が本件
都市計画の廃止手続をとらないことが違法であることの確認(請求の趣旨
(5))を求めている。
この点,公法上の法律関係に関する確認の訴えは,民事訴訟における確認
の訴えと同様,即時確定の利益があること,すなわち,当事者間の紛争が確
認判決によって即時に解決しなければならないほど切迫して成熟したもので
あることを必要とするのであり,即時確定の利益を欠く確認の訴えは,確認
の利益を欠く不適法な訴えとなるものである。
(2)本件各法律関係確認の訴えの確認の利益について
ア上記の即時確定の利益の有無を本件各法律関係確認の訴えについて検討
すると,以下の諸点に鑑みれば,本件各法律関係確認の訴えは即時確定の
利益を欠くものというべきである。
(ア)本件各法律関係確認の訴えにおいては,外環の2に係る本件都市計
画が都市計画法13条1項の規定する都市計画基準に適合するかどうか
が問題とされているところ,外環の2に係る都市計画は,平成19年外
環本線変更決定において外環本線の構造形式が地下式に変更される前後
から,その在り方についての検討が続けられており(認定事実(7),(9),
(10)),その間に,外環の2のうち,α12JCT区間について都市計
画事業の認可がされたり(認定事実(10)ア),練馬3キロ区間の幅員を
変更する旨の都市計画変更決定がされたりしていることからすると(認
定事実(10)キ),外環の2に係る本件都市計画は,現時点においても,
その内容が変更される可能性が多分にあり,いまだ不確定な状態にある
ということができる。
(イ)また,本件各法律関係確認の訴えのうち,本件都市計画が違法であ
ることの確認請求(請求の趣旨(3))については,本件都市計画決定に
係る都市計画施設である外環の2の区域内に本件土地を共有する原告ら
は,本件土地を事業地に含む都市計画事業の認可がされた段階で,これ
に対する抗告訴訟を提起し,その訴訟において本件都市計画の適法性を
争うことができるのであり,それによって本件土地の収用という不利益
を回避することができることからすると,単に本件都市計画決定がされ
ているというだけでは,原告らについて事後の回復が困難な不利益が生
じているとはいえず,本件都市計画の適法性を確認の訴えによって争う
切迫した必要性があると認めることはできない。同様に,被告が本件都
市計画の廃止手続をとらないことが違法であることの確認請求(請求の
趣旨(5))についても,原告らは,本件土地を事業地に含む都市計画事
業の認可がされた段階で,これに対する抗告訴訟を提起し,その訴訟に
おいて,本件都市計画の廃止がされなかったことについて,最終的な都
市計画決定ないし都市計画の適法性の問題として争うことができるので
あり,それによって土地の収用という不利益を回避することができるこ
とからすると,単に本件都市計画決定がされている,あるいは本件都市
計画の廃止手続がとられていないというだけでは,原告らについて,事
後の回復が困難な不利益が生じているとはいえず,本件都市計画の廃止
手続をとらないことの適法性を確認の訴えによって争う切迫した必要性
があると認めることはできない。
(ウ)一方,原告らが本件不動産について都市計画法53条1項の規定す
る建築物の建築の制限を受けない地位にあることの確認請求(請求の趣
旨(4))についても,単に建築物の建築について許可を要するというだ
けでは確認の利益を基礎付けることができるような不利益があるとはい
えないし,具体的に生じる可能性のある建築物の建築ができないという
不利益についても,同項の規定する建築許可申請の不許可処分に対する
抗告訴訟において,その不許可処分の適法性の前提となる本件都市計画
決定の適法性を含めて争うことができると解されるから,単に本件都市
計画決定に伴って同項の規定する建築物の建築の制限が課されていると
いうだけでは,原告らについて事後の回復が困難な不利益が生じている
とはいえない。しかも,原告らにおいては,本件土地において建築物の
建築を具体的に予定しているわけではないこと(認定事実(11)オ)から
すると,本件不動産について同項の規定する建築物の建築の制限を受け
ない地位にあるか否かを確認の訴えによって争う切迫した必要性がある
と認めることはできない。
(エ)その他,本件都市計画決定に伴う建築物の建築の制限等のため,本
件不動産を他に売却しようとしても通常の取引の場合のような買手を見
つけることが困難になるという原告らの主張についても,仮にこのよう
な事情があったとしても,それは本件都市計画決定に伴って事実上,一
般的,抽象的に生じたものというべきであるし,事後の回復が困難な不
利益であるとまでは認められない。
イこれに対し,原告らは,本件都市計画決定に係る都市計画施設である外
環の2について,α12JCT区間の都市計画事業の認可がされたり,事
業化を前提とした練馬3キロ区間の都市計画変更決定がされたりしたこと
により,紛争の成熟性が高まったから,本件各法律関係確認の訴えについ
ての確認の利益が認められると主張する。
しかしながら,外環の2のうち,都市計画事業の認可がされたα12J
CT区間は,外環の2の最北端に位置し,関越道のα12JCTに隣接す
る区間であり(認定事実(10)ア),また,都市計画変更決定がされた練馬
3キロ区間は,原告らが所有する本件不動産から,杉並区を間に挟み,約
1.5km離れた場所に位置していること(認定事実(10)ウ),上記都市
計画変更決定に当たり,練馬3キロ区間以南の青梅街道から東八道路まで
の区間(杉並,武蔵野,三鷹区間)については,引き続き広く意見を聴き
ながら検討を進めることとされ,都市計画変更の対象外とされたこと(認
定事実(10)オ)からすると,上記の都市計画事業の認可や都市計画変更決
定がされたことにより,本件各法律関係確認の訴えについて,紛争の成熟
性が高まり即時確定の利益が生じたと認めることはできない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。本件各法律
関係確認の訴えについて確認の利益があるとする原告らのその余の主張も,
これまで説示したところに照らせば,いずれも採用することができない。
(3)小括
以上によれば,本件各法律関係確認の訴えは,確認の利益を欠くものとし
て,不適法な訴えというべきである。
5本件国家賠償請求の訴えについて
(1)原告X1の主張する被告の違法行為
原告X1は,外環の2に係る都市計画を早急に廃止すべき義務を負ってい
るのにこれを廃止しないという被告の不作為の違法行為により,承継前原告
において,精神的苦痛を被ったため,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料
100万円の損害賠償請求権及びこれに対する遅延損害金請求権を有してい
たと主張する。
(2)都市計画決定に関する行政庁の行為の違法性の判断基準
都市計画法は,都市計画基準を設け(同法13条1項),都市計画一般に
つき,国土計画又は地方計画(公害防止計画を含む。)に適合すること,都
市の健全な発展と秩序ある整備を図るために必要なものを一体かつ総合的に
定めるべきこと,自然環境の整備又は保全に配慮すべきことなどを定めた上
(同項柱書き),個別の都市計画についての規定を置いており,都市施設に
ついては,土地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案して適切な規模
で必要な位置に配置することにより円滑な都市活動を確保し,良好な都市環
境を保持するように定めることなど(同項11号)を規定しているところ,
これらの規定は,都市計画の目標となる事項や,策定に当たり考慮すべき要
素を挙げるにとどまっており,そこから都市計画の内容を直ちに導き出すこ
とは困難である。
そして,都市施設の規模,配置等に関する事項を定めるに当たっては,当
該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な
見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ないことからすると,
都市施設に関する都市計画の決定(都市計画を変更する決定を含む。)につ
いては,その内容について,行政庁の広範な裁量に委ねられているというべ
きであり,裁判所が当該決定の内容の適否を審査するに当たっては,当該決
定が裁量権の行使としてされたことを前提として,その基礎とされた重要な
事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又
は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考
慮すべき事情を考慮しないこと等により,その内容が社会通念に照らし著し
く妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこ
れを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。
都市計画決定の行政行為としての適法性自体が上記のように判断されるこ
とに加え,国家賠償法1条1項にいう「違法」とは,公務員が個別の国民に
対して負担する職務上の法的義務に違背したことをいうことからすれば,都
市計画を廃止しないという不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法と評価
されるためには,都市計画決定についての行政庁の広範な裁量を前提として
もなお,都市計画を廃止すべきことが明確に義務付けられるような事情があ
る場合に限られるものと解するのが相当である。
(3)本件都市計画を廃止する義務の有無について
ア原告らは,外環の2に係る都市計画決定がされてから長期間が経過して
いることのほか,①平成19年外環本線変更決定において外環本線の構
造形式が嵩上式から地下式に変更されたことにより,外環の2に係る都市
計画が重要な事実の基礎を欠くに至ったこと,②外環の2に係る都市計
画が,平成19年外環本線変更決定において構造形式が地下式に変更され
た外環本線に係る都市計画と一体性,総合性を欠くに至ったこと,③外
環の2が都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものではなく,
適切な規模で必要な位置に配置されていない状態になっていることから,
外環の2に係る都市計画が都市計画法13条1項に違反しているとして,
被告が外環の2に係る都市計画を廃止する義務を負うと主張する。
イしかしながら,まず,外環の2に係る都市計画決定から長期間が経過し
ていることについては,そもそも都市計画事業は,その性質上,完了まで
に長期間を要するのはやむを得ないものである上,道路に関する都市計画
では,一般に,全体としての道路網の整備が必要とされ,全体と切り離し
て特定の街路又はその一部分のみの整備の必要性,合理性の有無を論ずる
ことはできないから,特定の地域についてたまたま都市計画事業が長期間
にわたって実施されない結果となったとしても,当該都市計画が合理性を
欠くに至ったということはできない。また,本件都市計画決定がされて以
降の経過に鑑みると(認定事実(4)以下),外環の2に係る都市計画の事
業化には相当の時間を要することもやむを得ないというべきであり,外環
の2に係る都市計画決定から現在までの間に長期間が経過していることを
もって直ちに,都市計画の決定について広範な裁量権を有する被告におい
て,外環の2に係る都市計画を廃止すべきことが義務付けられたと認める
ことはできない。
ウ次に,前記1の認定事実によれば,外環本線に係る都市計画と外環の2
に係る都市計画が整合性を保ったものとして都市計画決定がされていたこ
と(認定事実(1),(2)),昭和61年に,外環本線に係る都市計画の変更
に併せて外環の2に係る都市計画も変更されていること(認定事実(5)),
多摩地区における都市計画道路を計画的,効率的に整備するために策定さ
れた平成18年多摩整備方針では,外環の2は,高速道路が地下化された
場合に検討が必要な路線とされていたこと(認定事実(7)オ)などからす
ると,外環本線と外環の2とは,その構造等において,事実上,一体のも
のとして計画されたものと認めるのが相当である。
しかしながら,その一方で,外環本線に係る都市計画と外環の2に係る
都市計画は,別個の手続を経て決定されたものであり(認定事実(1),
(2)),当然のことながら,法的に一体のものではない。また,自動車専
用道路(都市高速道路)である外環本線と幹線街路である外環の2とは,
そもそもその機能が異なること,外環の2に係る昭和41年の都市計画決
定がされた当時の被告首都整備局長が,衆議院建設委員会において,外環
の2について,東京23区周辺の市街化に伴い急増する交通需要を契機と
した同区域での道路交通網整備の検討の結果,都市計画街路とされたとい
う趣旨の説明をしていること(認定事実(1)カ),その他,昭和61年の
外環本線の変更に伴う外環の2の一部廃止は,外環本線が当該部分におい
て堀割式とされ,外環本線の両側に地域のサービス道路等を設けたそれぞ
れ幅20mの環境施設帯が設置され,標準幅員が23mから64mに拡幅
されたことを理由とするものであり,外環本線が地下化されたことによる
ものではないことなどすると(認定事実(5)),外環の2は外環本線の有
していない独自の機能を有する道路であり,外環本線の構造形式が嵩上式
から地下式に変更されたからといって,外環の2に係る都市計画が明らか
に重要な事実の基礎を欠くに至ったと認めることはできないし,都市計画
の決定等について広範な裁量権を有する被告において,外環の2に係る都
市計画を変更の余地もなく直ちに廃止すべきことが明確に義務付けられた
と認めることはできない。
エさらに,前記1の認定事実によれば,外環本線の構造形式が嵩上式から
地下化された理由が,環境や土地収用への配慮にあったこと(認定事実
(7))は確かであるが,そもそも,外環本線の目的は,飽くまで,都市高
速道路として(広域の)自動車交通に資するということにあり(前提事実
(2),認定事実(1)),環境や土地収用への配慮は,外環本線の構造形式を
変更した動機であって,構造形式が地下式に変更されたのは,外環本線の
目的を実現するための手段が変更されたにすぎないことからすると,外環
の2が従前の外環本線の区域と同じ区域の地上部に作られるからといって,
外環の2に係る都市計画が,上記のような目的を有する外環本線に係る都
市計画との関係で明らかに総合性,一体性を欠くものと認めることはでき
ず,都市計画の決定等について広範な裁量権を有する被告において,外環
の2に係る都市計画を直ちに廃止すべきことが明確に義務付けられたと認
めることはできない。
オ加えて,原告らが指摘するように,人口の減少等により,外環の2に求
められる自動車交通の処理機能の低下を前提としても,道路に関する都市
計画では,一般に,全体としての道路網の整備が必要とされ,全体と切り
離して特定の街路又はその一部分のみの整備の必要性,合理性の有無を論
ずることはできないものであるし,幹線道路は自動車交通以外にも様々な
機能を担うものであることからすると(認定事実(7)オ),都市計画の決
定等について広範な裁量権を有する被告において,外環の2に係る都市計
画を変更の余地もなく直ちに廃止すべきことが明確に義務付けられたと認
めることはできない。
カその他,被告において,外環の2に係る都市計画を廃止すべきことが明
確に義務付けられたと認めるに足りる証拠はない。
(4)小括
以上によれば,被告において,外環の2に係る都市計画を廃止すべきこと
が明確に義務付けられたとは認められない以上,被告がこの義務を懈怠した
という不作為の違法行為を認めることはできないから,その余の点について
判断するまでもなく,原告X1の本件国家賠償請求の訴えに係る請求は理由
がない。
6本件損失補償の訴えについて
(1)原告X1の請求
原告X1は,都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を原因
として本件土地の価格が2118万円下落しており,これが受忍限度を超え
るものであったため,承継前原告において,憲法29条3項に基づいて21
18万円の損失補償請求権を有していたと主張する。
(2)損失補償の要否について
ア承継前原告が所有していた本件不動産については,別紙1都市計画目録
記載1(1)の当初の都市計画決定の告示がされた昭和41年7月30日以
降,建築基準法(昭和43年法律第101号による改正前のもの)による
建築物の建築の制限が課されており,都市計画法が施行された昭和44年
6月14日以降は,上記都市計画決定に係る都市計画が同法の規定による
都市計画とみなされることになったため,同法53条1項の規定する建築
物の建築の制限が課されていた。
イこの点,上記アのような建築物の建築の制限があるというだけでは,一
般に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せ
られたものということはできず,憲法29条2項を根拠として上記の制限
による損失につき補償請求をすることはできないものと解されるところ,
原告X1は,①外環の2に係る都市計画が,その都市計画決定がされて
から40年以上にわたって事業に着手されることなく放置されていること,
②平成19年外環本線変更決定において外環本線の構造形式が嵩上式か
ら地下式に変更されたことにより,外環の2に係る都市計画はその基礎と
なった重要かつ本質的な基礎事実を事実上喪失し,その根拠とされた特定
の公共的必要性が消滅したこと,③外環の2に係る都市計画は,外環本
線の構造形式が地下式とされた目的と整合しないばかりか,この目的を達
成することを不可能にするほど矛盾したものであることなどから,外環の
2に係る都市計画は,少なくとも外環本線に関する変更決定がされた平成
19年4月以降,決定自体がその行政目的に即した意義を失い,当該都市
計画決定の根拠とされた特定の行政的必要性が消滅しているばかりか,こ
れを実施することが他の都市計画の目的を本質的に阻害する結果を招くた
めその実施が事実上不可能な状態に至っているとして,外環の2に係る都
市計画決定に伴って本件土地に課される都市計画法53条1項の規定する
建築物の建築の制限は,本件土地の所有者であった承継前原告に特別の犠
牲を強いるものであるから,憲法29条3項に基づき,損失補償が必要で
あると主張する。
ウしかしながら,仮に都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制
限が長期間にわたった場合に損失補償が必要となるということがあり得る
としても,外環の2に係る都市計画決定がされてから承継前原告が死亡す
るまでの間の建築基準法(昭和43年法律第101号による改正前のもの)
44条及び都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限は,昭和
41年7月30日から平成21年▲月▲日までの約43年間であるとこ
ろ,前記1の認定事実のとおり,①本件土地の所在する地域は,都市計
画により,第1種低層住居専用地域とされているため,建ぺい率は40%,
容積率は80%となり,第1種高度地区とされているため,10mの高度
制限があること(認定事実(11)ア),実際,本件不動産の周囲は,低層建
物を主体とする古くからの住宅地であって,高度な土地利用が従来行われ
ていた地域ではなく,また,現にそれが予定されている地域であるとは認
められないこと(認定事実(11)ウ),②本件土地の上に現に存在する本
件建物は,木造2階建であって,これを改築するのには,同法53条1項
ただし書1号,都市計画法施行令37条により,同項本文の規定する許可
を受けることを要しないこと,③本件土地については,同法55条1項
の規定による東京都知事による区域の指定がされておらず(認定事実(11)
エ),上記のような本件建物と同程度の規模及び構造の建築物を再度建築
することについては,同法54条3号により許可がされるものと考えられ
ることなどからすると,本件土地に係る建築物の建築の制限が約43年と
いう長期間にわたっていることを考慮に入れたとしても,本件土地につい
ての同法53条1項の規定する建築物の建築の制限による不利益をもって,
承継前原告の特別の犠牲ということはできないというべきである。
また,原告X1は,都市計画が意義を失っていたり,実現が不可能にな
っていたりする場合に,当該都市計画決定による建築物の建築の制限が土
地所有者等に特別の犠牲を課するものとして損失補償を要すると主張する
が,仮に原告X1の主張を前提としたとしても,前記5(3)ウ,エにおい
て説示したとおり,平成19年外環本線変更決定において外環本線の構造
形式が嵩上式から地下式に変更されたからといって,外環の2に係る都市
計画について,重要な事実の基礎を欠くことが明らかになったとか,外環
本線に係る都市計画との一体性,総合性を欠くことが明らかになったとは
いえず,外環の2に係る都市計画が,意義を失っているとか,実現が不可
能になっているとは認められないというべきである。
エその他,原告X1は,損失補償を必要とする理由として,将来の収用の
可能性による建築物の建築のちゅうちょや取引価格の下落を主張するが,
これらについても,都市計画施設の区域内に位置する不動産の所有権を有
する者は当然に負担すべき内在的制約であり,制限の程度は収用等の場合
と同視すべきほどに強度なものではなく,一般的に当然に受忍すべきもの
とされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものであるとまで認
めることはできない。
オそうすると,外環の2に係る都市計画決定がされてから承継前原告が死
亡するまでの間の本件不動産に関する建築基準法(昭和43年法律第10
1号による改正前のもの)44条及び都市計画法53条1項の規定する建
築物の建築の制限によって生じた損失が,一般的に当然に受忍すべきもの
とされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということは困
難であるから,承継前原告は,直接憲法29条3項を根拠として上記の損
失について補償を請求する権利を有していたものと認めることはできない。
(3)小括
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告X1の本件
損失補償の訴えに係る請求は理由がない。
第4結論
よって,本件訴えのうち,原告らの本件無効確認の訴え(請求の趣旨(1)),
本件義務付けの訴え(請求の趣旨(2))及び本件各法律関係確認の訴え(請求の
趣旨(3)ないし(5))はいずれも不適法な訴えであるから,これらを却下し,原告
X1の本件国家賠償請求の訴え(請求の趣旨(6))及び本件損失補償の訴え(請
求の趣旨(7))に係る各請求はいずれも理由がないから,これらを棄却すること
とし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官増田稔
裁判官齊藤充洋
裁判官佐野義孝
関係法令の定め
1都市計画法(大正8年法律第36号)
都市計画法(大正8年法律第36号。昭和42年法律第75号による改正前も
の。以下「旧都市計画法」という。)3条は,都市計画,都市計画事業及び毎年
度執行すべき都市計画事業は,都市計画審議会の議を経て,主務大臣が決定をし,
内閣の認可を受けなければならない旨規定していた。
2建築基準法(昭和25年法律第201号)
建築基準法(昭和43年法律第101号による改正前のもの)44条2項は,
都市計画として決定して内閣の認可を受けた計画道路(同法42条1項4号に該
当するものを除く。)内においては,次の①及び②に該当する建築物で,容易に
移転し,又は除却することができるものでなければ,建築してはならない旨規定
していた。
①階数が2以下で,かつ,地階を有しないこと。
②主要構造部が木造,鉄骨造,コンクリートブロック造その他これらに類す
る構造であること。
3都市計画法(昭和43年法律第100号)
(1)都市計画法4条は,その5項において,同法において「都市施設」とは,
都市計画において定められるべき同法11条1項各号に掲げる施設をいう旨,
その6項において,同法において「都市計画施設」とは,都市計画において定
められた同法11条1項各号に掲げる施設をいう旨,それぞれ規定している。
(2)都市計画法6条1項は,都道府県は,都市計画区域について,おおむね5
年ごとに,都市計画に関する基礎調査として,国土交通省令で定めるところに
より,人口規模,産業分類別の就業人口の規模,市街地の面積,土地利用,交
通量その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び将来の見通しについて
の調査を行うものとする旨規定している。
(3)都市計画法11条は,その1項1号において,都市施設として道路を掲げ,
その2項において,都市施設については,都市計画に都市施設の種類,名称,
位置及び区域を定めるものとするとともに,面積その他政令で定める事項を定
めるよう努めるものとする旨規定している。
(4)都市計画法13条は,その1項柱書きにおいて,都市計画区域について定
められる都市計画は,国土形成計画,首都圏整備計画,その他の国土計画又は
地方計画に関する法律に基づく計画(当該都市について公害防止計画が定めら
れているときは,当該公害防止計画を含む。)及び道路,河川,鉄道,港湾,
空港等の施設に関する国の計画に適合するとともに,当該都市の特質を考慮し
て,同項1号ないし19号に掲げるところに従って,土地利用,都市施設の整
備及び市街地開発事業に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を
図るために必要なものを,一体的かつ総合的に定めなければならない旨,同項
11号前段において,都市施設は,土地利用,交通等の現状及び将来の見通し
を勘案して,適切な規模で必要な位置に配置することにより,円滑な都市活動
を確保し,良好な都市環境を保持するように定める旨,同項19号において,
同項1号から18号までの基準を適用するについては,同法6条1項の規定に
よる都市計画に関する基礎調査の結果に基づき,かつ,政府が法律に基づき行
う人口,産業,住宅,建築,交通,工場立地その他の調査の結果について配慮
する旨,それぞれ規定している。
(5)都市計画法14条1項は,都市計画は,国土交通省令で定めるところによ
り,総括図,計画図及び計画書によって表示するものとする旨規定している。
(6)都市計画法15条1項は,一の市町村の区域を超える広域の見地から決定
すべき地域地区として政令で定めるもの又は一の市町村の区域を超える広域の
見地から決定すべき都市施設若しくは根幹的都市施設として政令で定めるもの
に関する都市計画等は都道府県が,その他の都市計画は市町村が定める旨規定
している。
(7)都市計画法17条は,その1項において,都道府県又は市町村は,都市計
画を決定しようとするときは,あらかじめ,国土交通省令で定めるところによ
り,その旨を公告し,当該都市計画の案を,当該都市計画を決定しようとする
理由を記載した書面を添えて,当該公告の日から2週間公衆の縦覧に供しなけ
ればならない旨,その2項において,同条1項の規定による公告があったとき
は,関係市町村の住民及び利害関係人は,同項の縦覧期間満了の日までに,縦
覧に供された都市計画の案について,都道府県の作成に係るものにあっては都
道府県に,市町村の作成に係るものにあっては市町村に,意見書を提出するこ
とができる旨,それぞれ規定している。
(8)都市計画法18条1項は,都道府県は,関係市町村の意見を聴き,かつ,
都道府県都市計画審議会の議を経て,都市計画を決定するものとする旨規定し
ている。
(9)都市計画法19条1項は,市町村は,市町村都市計画審議会(当該市町村
に市町村都市計画審議会が置かれていないときは,当該市町村の存する都道府
県の都道府県都市計画審議会)の議を経て,都市計画を決定するものとする旨
規定している。
(10)都市計画法20条は,その1項において,都道府県又は市町村は,都市計
画を決定したときは,その旨を告示し,かつ,都道府県にあっては関係市町村
長に,市町村にあっては都道府県知事に,同法14条1項に規定する図書の写
しを送付しなければならない旨,その3項において,都市計画は,同条1項の
規定による告示があった日から,その効力を生ずる旨,それぞれ規定している。
(11)都市計画法21条は,その1項において,都道府県又は市町村は,都市計
画区域又は準都市計画区域が変更されたとき,同法6条1項若しくは2項の規
定による都市計画に関する基礎調査又は同法13条1項19号に規定する政府
が行う調査の結果都市計画を変更する必要が明らかとなったとき,遊休土地転
換利用促進地区に関する都市計画についてその目的が達成されたと認めるとき,
その他都市計画を変更する必要が生じたときは,遅滞なく,当該都市計画を変
更しなければならない旨,その2項前段において,同法17条から18条まで
及び19条及び20条の規定は,都市計画の変更(17条,18条2項及び3
項並びに19条2項及び3項の規定については,政令で定める軽易な変更を除
く。)について準用する旨,それぞれ規定している。
(12)都市計画法53条1項は,その本文において,都市計画施設の区域又は市
街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は,国土交
通省令で定めるところにより,都道府県知事(市の区域内にあっては,当該市
の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない旨,
そのただし書において,政令で定める軽易な行為(1号)等については,この
限りでない旨,それぞれ規定している。
(13)都市計画法54条は,都道府県知事等は,同法53条1項の規定による許
可の申請があった場合において,次のいずれかに該当するときは,その許可を
しなければならない旨規定している。
①当該建築が,都市計画施設又は市街地開発事業に関する都市計画のうち建
築物について定めるものに適合するものであること。
②当該建築が,同法11条3項の規定により都市計画施設の区域について都
市施設を整備する立体的な範囲が定められている場合において,当該立体的
な範囲外において行われ,かつ,当該都市計画施設を整備する上で著しい支
障を及ぼすおそれがないと認められること。ただし,当該立体的な範囲が道
路である都市施設を整備するものとして空間について定められているときは,
安全上,防火上及び衛生上支障がないものとして政令で定める場合に限る。
③当該建築物が次に掲げる要件に該当し,かつ,容易に移転し,又は除却す
ることができるものであると認められること。
イ階数が二以下で,かつ,地階を有しないこと。
ロ主要構造部(建築基準法2条5号に定める主要構造部をいう。)が木造,
鉄骨造,コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。
(14)都市計画法55条は,その1項前段において,都道府県知事等は,都市計
画施設の区域内の土地でその指定したものの区域又は市街地開発事業(土地区
画整理事業及び新都市基盤整備事業を除く。)の施行区域(同法56条及び5
7条において「事業予定地」という。)内において行われる建築物の建築につ
いては,同法54条の規定にかかわらず,同法53条1項の許可をしないこと
ができる旨,その4項において,同条1項の規定する土地の指定をするときは,
その旨を公告しなければならない旨,それぞれ規定している。
(15)都市計画法56条1項は,都道府県知事等(同法55条4項の規定により,
土地の買取りの申出の相手方として公告された者があるときは,その者)は,
事業予定地内の土地の所有者から,同条1項本文の規定により建築物の建築が
許可されないときはその土地の利用に著しい支障を来すこととなることを理由
として,当該土地を買い取るべき旨の申出があった場合においては,特別の事
情がない限り,当該土地を時価で買い取るものとする旨規定している。
(16)都市計画法57条は,その1項において,市街地開発事業に関する都市計
画についての同法20条1項(同法21条2項において準用する場合を含む。)
の規定による告示又は市街地開発事業若しくは市街化区域若しくは区域区分が
定められていない都市計画区域内の都市計画施設に係る同法55条4項の規定
による公告があったときは,都道府県知事等(同項の規定により,同法57条
2項本文の規定による届出の相手方として公告された者があるときは,その者。
以下この条において同じ。)は,速やかに,国土交通省令で定める事項を公告
するとともに,国土交通省令で定めるところにより,事業予定地内の土地の有
償譲渡について,同項から同条4項までの規定による制限があることを関係権
利者に周知させるため必要な措置を講じなければならない旨,その2項本文に
おいて,前項の規定による公告の日の翌日から起算して10日を経過した後に
事業予定地内の土地を有償で譲り渡そうとする者(土地及びこれに定着する建
築物その他の工作物を有償で譲り渡そうとする者を除く。)は,当該土地,そ
の予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは,これを時価を基準
として金銭に見積った額。以下この条において同じ。)及び当該土地を譲り渡
そうとする相手方その他国土交通省令で定める事項を書面で都道府県知事等に
届け出なければならない旨,その3項において,同条3項において,同条2項
の規定による届出があった後30日以内に都道府県知事等が届出をした者に対
し届出に係る土地を買い取るべき旨の通知をしたときは,当該土地について,
都道府県知事等と届出をした者との間に届出書に記載された予定対価の額に相
当する代金で,売買が成立したものとみなす旨,それぞれ規定している。
(17)都市計画法59条は,その1項において,都市計画事業は,市町村が,都
道府県知事(第一号法定受託事務として施行する場合にあっては,国土交通大
臣)の認可を受けて施行する旨,その2項において,都道府県は,市町村が施
行することが困難又は不適当な場合その他特別な事情がある場合においては,
国土交通大臣の認可を受けて,都市計画事業を施行することができる旨,それ
ぞれ規定している。
(18)都市計画法62条1項は,国土交通大臣又は都道府県知事は,同法59条
の認可又は承認をしたときは,遅滞なく,国土交通省令で定めるところにより,
施行者の名称,都市計画事業の種類,事業施行期間及び事業地を告示し,かつ,
国土交通大臣にあっては関係都道府県知事及び関係市町村長に,都道府県知事
にあっては国土交通大臣及び関係市町村長に,同法60条3項1号及び2号に
掲げる図書の写しを送付しなければならない旨規定している。
(19)都市計画法65条1項は,同法62条1項の規定による告示又は新たな事
業地の編入に係る同法63条2項において準用する同法62条1項の規定によ
る告示があった後においては,当該事業地内において,都市計画事業の施行の
障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物の建築その他工作物
の建設を行い,又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を
行おうとする者は,都道府県知事等の許可を受けなければならない旨規定して
いる。
(20)都市計画法70条1項は,都市計画事業については,土地収用法20条
(同法138条1項において準用する場合を含む。)の規定による事業の認定
は行なわず,都市計画法59条の規定による認可又は承認をもってこれに代え
るものとし,同法62条1項の規定による告示をもって土地収用法26条1項
(同法138条1項において準用する場合を含む。)の規定による事業の認定
の告示とみなす旨規定している。
4都市計画法施行法(昭和43年法律第101号)
都市計画法施行法2条は,都市計画法の施行(昭和44年6月14日。都市計
画法の施行期日を定める政令(昭和44年政令第157号)。)の際,現に旧都
市計画法の規定により決定されている都市計画区域及び都市計画は,それぞれ都
市計画法の規定による相当の都市計画とみなす旨規定している。
5都市計画法施行令(昭和44年政令第158号)
(1)都市計画法施行令(平成10年政令第331号による改正前のもの)6条
は,その1項1号において,都市計画法11条2項の政令で定める事項として,
道路については,種別及び車線の数(車線のない道路である場合を除く。)そ
の他の構造とする旨,その2項において,同条1項の種別及び構造の細目は国
土交通省令で定める旨,それぞれ規定している。
(2)都市計画法施行令37条は,都市計画法53条1項1号の政令で定める軽
易な行為は,階数が2以下で,かつ,地階を有しない木造の建築物の改築又は
移転とする旨規定している。
なお,都市計画法施行令(平成元年政令第309号による改正前のもの)3
7条2項は,都市計画法53条1項ただし書の政令で定める軽易な行為は,階
数が2以下で,かつ,地階を有しない木造の建築物の改築又は移転とする旨規
定している。
6都市計画法施行規則(昭和44年建設省令第49号)
都市計画法施行規則(平成10年建設省令第37号による改正前のもの)7条
は,都市計画法施行令6条2項の国土交通省令で定める種別及び構造の細目は,
次の①及び②に掲げる種別及び構造について,それぞれ次のとおりとする旨規定
している。
①道路の種別自動車専用道路,幹線街路,区画街路又は特殊街路の別
②道路の構造幅員並びに嵩上式,地下式,掘割式又は地表式の別及び地表
式の区間において鉄道又は自動車専用道路若しくは幹線街路と交差するとき
は立体交差又は平面交差の別
7許可認可等臨時措置法(昭和18年法律第76号。平成3年法律第79条によ
る廃止前のもの。以下「臨時措置法」という。)
臨時措置法1項は,「大東亜戦争ニ際シ行政簡素化ノ為必要アルトキハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ法律ニ依リ許可,認可,免許,特許,承認,検査,協議,届出,
報告等ヲ要スル事項ニ付左ニ掲グル措置ヲ為スコトヲ得」と規定し,同項1号に
おいて,「左ニ掲グル措置」の一つとして「許可,認可,免許,特許,承認,検
査,協議,届出,報告等ヲ要セザルコトトスルコト」を掲げている。
8都市計画法及同法施行令臨時特例(昭和18年勅令第941号。以下「臨時特
例」という。)
(1)臨時特例(昭和42年政令第345号による改正前のもの)1条は,戦時
行政特例法及び臨時措置法の規定に基づく都市計画法の特例並びに大東亜戦争
中における都市計画法施行令の特例は,臨時特例の定めるところによる旨規定
している。
(2)臨時特例(昭和42年政令第345号による改正前のもの)2条1項1号
は,旧都市計画法3条の規定による内閣の認可は要しない旨規定している。
9日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和
22年法律第72号)
(1)日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律2
条1項は,他の法律(同法1条の規定により法律と同一の効力を有する命令の
規定を含む。)中「勅令」とあるのは「政令」と読み替えるものとする旨規定
している。
(2)日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律附
則2項は,同法の施行に関して必要な事項は,政令でこれを定める旨規定して
いる。
10日本国憲法施行の際現に効力を有する勅令の規定の効力等に関する政令(昭和
22年政令第14号)
日本国憲法施行の際現に効力を有する勅令の規定の効力等に関する政令1項は,
日本国憲法施行の際,現に効力を有する勅令の規定は,昭和22年法律第72号
1条に規定するものを除くほか,政令と同一の効力を有するものとする旨規定し
ている。
以上

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弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
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我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
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すでに経験を有する弁護士
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