弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件特別抗告を棄却する。
         理    由
 本件特別抗告の趣意は、別紙各特別抗告申立書と題する書面記載のとおりである。
 弁護人中村勝次、同岡田俊男、同江島晴夫の特別抗告理由について。
 所論前段は、第一審がAを証人として尋問するにあたり、申立人に立会および尋
問の機会を与えなかつたのは、憲法三七条二項に違反すると主張するが、一たん公
開公判手続を経た確定判決に対して、再審を開始するか否かの手続は、公判そのも
のではなく、受訴裁判所の訴訟手続に属しないことは、当裁判所の判例(昭和二三
年(つ)第二五号同年一一月八日大法廷決定刑集二巻一二号一五〇〇頁、昭和三二
年(し)第一四号同三三年五月二七日第三小法廷決定刑集一二巻八号一六八五頁)
の趣旨に徴して認められるところ、憲法三七条二項は、刑事被告人に対し、受訴裁
判所の訴訟手続において、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられる
旨を規定したものであることもまた、当裁判所の判例(昭和二四年(つ)第九三号
同二五年三月六日大法廷決定刑集四巻三号三〇九頁、昭和二五年(あ)第七九七号
同二七年六月一八日大法廷判決刑集六巻六号八〇一頁)である。しからば第一審が
再審請求の理由の有無についてする事実の取調して証人の尋問をするに当り、申立
人に立会および尋問の機会を与えなかつたとしても、そのことをもつて憲法三七条
二項に違反するということはできないのである。のみならず、本件記録によれば、
第一審は、弁護人らの申請に基いて、A他二名を広島拘置所において証人として尋
問する旨を決定し、その日時場所、証人名を右決定の謄本をもつて、申立人、弁護
人三名ならびに検察官に各別に通知して立会の機会を与え、さらに受命裁判官によ
るAに対する証人尋問に当つても、同様に、申立人、弁護人三名ならびに検察官に
その旨を各別に通知して立会の機会を与え、弁護人三名はAの尋問に立ち会いかつ
尋問をしていることが認められるのであるから、第一審の事実取調の手続に違憲違
法の点は存しないというべきである。また所論後段は、弁護人が原審に対して証人
を申請したのに、原審がこれを取り調べなかつたのは、憲法三七条二項に違反する
と主張するが、再審の請求の理由の有無を判断するに当り、いかなる方法をもつて
事実の取調をするかは、再審の請求を受けた裁判所の合理的な裁量にゆだねられて
おり、申請にかかる証人の取調をせずに、再審の請求を理由がないと判断したから
といつて、憲法三七条二項違反の問題を生ずるものでないことは、当裁判所の判例
(昭和二三年(れ)第八八号同年六月二三日大法廷判決刑集二巻七号七三五頁、昭
和二八年(し)第一二号同年一一月二四日第三小法廷決定刑集七巻一一号二二八三
頁)とするところであるから、原審が合理的判断をもつて、所論の証人を取り調べ
ずに、即時抗告の申立を棄却したからといつて、違憲、違法な点は全くない。従つ
て所論はすべて理由がない。
 申立人本人の特別抗告理由について。
 所論のうち憲法三七条二項違反を主張する点については、弁護人の特別抗告理由
に対して判断したのと同一であるから、右判断を引用する。また所論は、憲法三八
条一項違反を主張するが、原決定は第一審決定の認定した事実を維持する旨説示し
たにとどまり、なんら新な事実を認定したものではないのみならず、所論の点を除
いても原決定挙示の証拠により同決定説示の事実は、充分に認定できるのであるか
ら、所論は前提を欠くものというべく、また憲法三七条一項違反の主張は、原審に
おいて主張判断を経ていない事柄であるので、前提を欠き、憲法一五条二項、七六
条、九九条各違反の主張は、実質は憲法違反に名を藉りて、原決定が適法に認定し
た事実の誤認を主張するに帰着し、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張を
出ないから、すべて適法な特別抗告理由に当らない。
 よつて、刑訴四三四条、四二六条一項に則り、裁判官全員一致の意見で主文のと
おり決定する。
  昭和三七年一二月二五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

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