弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
横浜地方検察庁で保管中の回転弾倉式けん銃1丁(同庁平成13年領第2395号
符号1)並びに実包18個(同領号符号2及び3。ただし,同領号符号2-6,2
-7及び3-8は鑑定のため試射され,同領号符号2-8,2-9及び3-9は鑑
定のため分解されたものである。)を没収する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,法定の除外事由がないのに,平成13年6月29日午前9時44分こ
ろ,川崎市(以下略)の被告人方居室において,回転弾倉式けん銃1丁(横浜地方
検察庁平成13年領第2395号符号1)をこれに適合する実包18個(同領号符
号2及び3。ただし,同領号符号2-6,2-7及び3-8は鑑定のため試射さ
れ,同領号符号2-8,2-9及び3-9は鑑定のため分解されたものである。)
と共に保管して所持した。
(法令の適用)
被告人の判示行為は銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項
に該当するので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処し,刑法21条を
適用して未決勾留日数中100日をその刑に算入することとし,横浜地方検察庁で
保管中の回転弾倉式けん銃1丁(同庁平成13年領第2395号符号1)並びに実
包18個(同領号符号2及び3。ただし,同領号符号2-6,2-7及び3-8は
鑑定のため試射され,同領号符号2-8,2-9及び3-9は鑑定のため分解され
たものである。)は判示の犯罪行為を組成した物で被告人以外の者に属しないか
ら,同法19条1項1号,2項本文を適用してこれらを没収することとする。
(量刑の事情)
本件は,暴力団の本部長の地位にあった被告人が,けん銃1丁及びその適合実包
18個をセカンドバッグに入れて,自宅の押入れ内に隠匿所持した事案である。
被告人は,本件けん銃及び実包を所持するに至った経緯等について,平成12年
8月上旬ころ,後に死亡した暴力団の組長から個人的なものとして中身を知らされ
ずに品物の保管を依頼され,その後,それがけん銃と実包であることを確かめたも
のの,返還する時機を失したまま所持していたものである旨供述するところ,この
ような被告人の供述は,変遷が認められる上,その内容にも不自然な点が散見され
るなど,そのまま信用することはできないが,いずれにしても,被告人は,けん銃
とその適合実包であることを明確に認識しながら,これを隠匿所持していたもの
で,犯行の動機等に酌むべき事情はなにもないこと,暴力団幹部の地位にあった被
告人において,殺傷力の高い真正けん銃1丁とその適合実包18個を共に保管し,
直ちに使用可能な状態で所持していたのみならず,被告人の所属していた暴力団に
おいては,組長が平成13年5月に何者かに射殺されるという事態が生じており,
これに対する報復等を理由とする暴力団間の抗争が起こりかねない状況にあったこ
となどからすれば,これらが凶器として使用され,多数の者を殺傷するという最悪
の事態に発展する危険性も高かったものといわなければならず,犯行の態様等もは
なはだ危険かつ悪質であること,さらに,反社会性が極めて強い犯罪であり,一般
予防の観点からも厳しい態度をもって臨む必要があることなどの事情に照らすと,
被告人の刑事責任は非常に重いといわなければならない。
したがって,幸い,本件けん銃等が使用される前に犯行が発覚し,実害の発生を
未然に防止し得たこと,被告人の実兄や同棲している女性が出廷し,今後の被告人
の更生に協力していきたいと証言していること,被告人は長年にわたり暴力団構成
員として活動しているが,前科はまったくないこと,被告人は,本件犯行を素直に
反省し,所属している暴力団を脱退する意思を表明しており,今後は,まじめに働
いて更生したいと供述していることなどの被告人に有利な事情をできる限りしんし
ゃくしても,刑の執行を猶予することはとうてい考えられず,本件については被告
人を懲役4年に処するのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役6年並びにけん銃1丁及び実包18個没収)
平成13年12月18日
横浜地方裁判所第三刑事部
     裁判長裁判官志   田洋
             裁判官小   林   康   男
             裁判官西   村   真   人

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