弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     前略
     被告人Aの本件控訴を棄却する。
     同被告人に対し、当審における未決勾留日数中一二〇日を原判決の本刑
に算入する。
     当審における訴訟費用中証人B、同C、同D、同Eおよび同Fに各支給
した分はいずれも被告人Aの負担とする。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、被告人Gにつき、弁護人渡辺春雄名義および同成田篤郎名
義の各控訴趣意書(ただし、成田弁護人は、同人名義の控訴趣意書三枚目表八行目
に「犯意も不十分」とあるのは情状として述べたものであると釈明した。)に記載
のとおりであり、被告人Aにつき、弁護人渡辺大司名義および同佐々木衷名義の各
控訴趣意書ならびに被告人名義の上申書に記載のとおりであるから、いずれもこれ
を引用する。
 第一、 被告人Aに関する控訴趣意(量刑不当の主張を除く)について
 一、 渡辺大司弁護人の控訴趣意(事実誤認ないし法令適用の誤りの主張)につ
いて
 1 原判決が、判示第四(一)において、株式会社Hの発起人である被告人が、
I、Gと共謀のうえ、株式の払込を仮装するため、J信用金庫K支店の支店長Lに
依頼し、同人をして、株式払込金の払込がないのに同会社の設立に際し発行する株
式総数五、〇〇〇株につきその発行価額の金額金二五〇万円の払込を完了したよう
な帳簿操作をさせ、同支店長作成名義の右金額の株式払込金保管証明書を発行させ
て交付を受けたとの事実を認定したうえ、これをもつて商法第四九一条の預合行為
にあたるものと認定処断していることは、所論指摘のとおりである。論旨は、右法
条にいう預合が行なわれたというためには、発起人らが払込取扱金融機関の役職員
と通謀して単に株式払込金保管証明書を発行させたというだけでは足りず、外形上
払込を行なつたと認められる行為が存在したことが必要であるところ、本件では、
そのような行為は何ら存在しなかつた(原判示にいう「帳簿操作をさせ」たとの点
は、右の行為にあたらない。)のであるから、原判決が被告人の所為を預合と認定
処断したのは、事実を誤認したか又は法令の適用を誤つたものである旨主張する。
なるほど、原判決挙示の関係各証拠によれば、J信用金庫K支店長Lが被告人らと
通謀して株式払込金保管証明書を発行交付したについては、Lが、その際部下に命
じて、被告人から株金二五〇万円の入金が当日なされ即日被告人にその払戻がなさ
れたごとく別段預金元帳ならびに収入伝票および支払伝票に各虚偽の記帳をさせ、
かつ後日の支払請求を防ぐ意味で念のため前記Iをして右支払伝票に同人の押印を
させる等の措置をとつた事実があるだけで、それ以上に、被告人らが同信用金庫か
ら金借して形式的に株金の払込にあて実質的にはその払戻に制限が付されることに
より株金の払込がなかつたと同様の結果を生ぜしめる等の所論のような外形上払込
を行なつたと認められる行為は、何ら存在しなかつたものであることが明らか<要旨
第一>である。しかしながら、商法第四九一条の立法趣旨に徴すれば、同条にいう預
合とは、会社発起人らが株金払込取扱金融機関の役職員と通謀してなす
一切の株金払込仮装行為を指称するものと解するのが相当であつて、本件における
ように、発起人らが右役職員と通謀し株金の払込がないのに仮装の株式払込金保管
証明書を発行させてその交付を受けたものである以上、所論外形上払込を行なつた
と認められる行為がこれに伴わなくても、預合が行なわれたと認めるに十分である
というべきである。預合の意義に関する所論主張は、会社の資本充実を立法目的と
する前法条の解釈上、これに格別の合理性を見出し難いのであつて、にわかに採用
できない。原判決が被告人の所為を預合にあたるものと認定処断したのは、以上と
同趣旨によるものと解されるのであり、正当であつて、論旨は理由がない。
 2 論旨は、被告人が原判示第四(三)の公正証書原本不実記載、同行使に関し
GおよびIと共謀をなした事実はない旨主張する。しかし、原判決挙示の関係各証
拠によれば、Iは、原判示の実行行為に先立ち、同月一六、七日頃その上宿先であ
る福島県郡山市内の「ホテルM」等において、Gおよび被告人と同犯行の大綱につ
き下相談をなしたもので、遅くともこの下相談により右三者間に具体的な共謀関係
が成立したものと優に認められるのであり、記録および当審における事実取調の結
果を検討しても、原判決の共謀の認定が誤りであるとは認められない。さらに、株
式会社Hは、右証拠によつて明らかなとおり、原判示の設立登記に際して、株式の
払込は何ら行なわれず、創立総会は全く開催されたことがないなど、会社の実体を
有しない不存在のものと認められるから、その設立登記は、登記事項のすべてにつ
き不実であり、その全部について公正証書原本不実記載、同行使罪が成立するとい
うべきであつて、原判決が判示するところもこれと同趣旨と解され、必ずしも所論
のように不明確ではないところ、論旨は、商法違反(預合)は当然に会社の設立登
記を予定するものであり、従つて公正証書原本不実記載、同行使は商法違反(預
合)の必然的結果というべきであるから、商法違反(預合)の罪が成立する限<要旨
第二>り、重ねて公正証書原本不実記載、同行使の罪が成立することはない旨主張す
る。しかし、右両者の間になるほど因果関係は存するものの、後者の所
為は、前者の罪の構成要件によつて包括的に評価し尽される関係にはなく、新たな
法益を侵害する所為であるから、別罪を構成することはいうまでもない(なお、両
者の罪は、原判決判示のとおり、併合罪であると解するのが相当である。)。論旨
は採用の限りでない。
 以下省略
 (裁判長裁判官 細野幸雄 裁判官 深谷真也 裁判官 桜井敏雄)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛