弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
       本件控訴をいずれも棄却する。
       控訴費用は控訴人の負担とする。
 事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人品川区建築主事が富洋モータース株式会社に対し,確認済証番号第H15確認-工品川区XXXXXX
号により建築確認をした擁壁について,平成16年1月29日付けでした検査済証(第H15確済-工品川区YYYY
YY号)の交付を取り消す。
 3 被控訴人品川区建築審査会が控訴人に対し,平成16年6月9日付けでした裁決を取り消す。
4訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
第2 事案の概要
 事案の骨子,関係法令の定め,前提となる事実,本案前の争点に関する当事者双方の主張の要旨及び本案に関す
る控訴人の主張の要旨は,原判決の「事実及び理由」第二に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3判断
1当裁判所も,本件訴えのうち,被控訴人品川区建築主事が本件擁壁についてした検査済証の交付(本件交付)の
取消しを求める部分は不適法として却下すべきであり,また,被控訴人品川区建築審査会が本件交付の取消しを求める
審査請求についてした裁決(同審査請求を却下する旨の裁決)の取消しを求める請求は理由がないので棄却すべきもの
と判断する。その理由は,原判決の理由説示(「事実及び理由」第三の一及び二)と同一であるから,これを引用す
る。
控訴人は,本件交付が判決により取り消された場合,特定行政庁には建築基準法9条1項に基づく違反是正命令
を発する義務が生じ,本件擁壁に接して居住する控訴人の生命,身体,財産に危険を及ぼす違法な状態に対して必要な
措置が講じられることにより,控訴人の権利利益が回復するのであるから,本件交付の取消しを求める訴えには,訴え
の利益がある旨主張する。
   しかしながら,原判決が説示するとおり,違反是正命令は,当該建築物等が建築基準関係規定に適合しているか
どうかを基準とするものであって,これを発するかどうかは特定行政庁の裁量にゆだねられているのであり,検査済証
の交付の取消判決によって,特定行政庁に対し,違反是正命令を発する法的拘束力が生ずるものではなく,また,検査
済証の交付は,特定行政庁が違反是正命令を発する上において,法的障害となるものでもないから,本件交付の取消し
を求める訴えは,訴えの利益を欠くというべきである。そして,このように解すべきことは,最高裁判所昭和59年1
0月26日第二小法廷判決・民集38巻10号1169頁(建築基準法6条1項による確認を受けた建築物の建築等の
工事が完了したときは,その確認の取消しを求める訴えの利益は失われる旨を判示),同平成5年9月10日第二小法
廷判決・民集47巻7号4955頁(都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し,当該工事
の検査済証の交付がされた後においては,その許可の取消しを求める訴えの利益は失われる旨を判示)等の趣旨から明
らかである。
 2よって,原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。
   
 東京高等裁判所第10民事部
  裁判長裁判官   大  内  俊  身
       裁判官 大  野  和  明
裁判官小川浩は,差支えにつき署名押印することができない。
  裁判長裁判官   大  内  俊  身
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