弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人武田弦介の上告理由第一点について。
 論旨は、本件農地買収処分は副業として農業を営むに過ぎない被上告人Bに対す
る売渡を目的としてなされたものであるから当然無効である、という。
 しかし、農地の売渡処分が耕作の業務を営むものでない者に対してなされたとい
う瑕疵は、右売渡処分が当該農地の買収処分と同時に行なわれた場合においても、
単に売渡処分を違法たらしめるに過ぎないのであつて、買収処分そのものを当然無
効たらしめるいわれはない。所論引用の判決は、事案を異にする本件には適切でな
い。
 論旨は、所詮独自の見解に立脚するものであつて、採用の限りでない。
 同第二点について。
 論旨は、原判決には自作地を小作地と誤認した違法がある、という。
 しかし、原判決がその確定した事実関係のもとで本件農地を小作地と認定したこ
とは、相当であり(昭和二九年九月七日第三小法廷判決、民集八巻九号一五七三頁、
昭和三二年一一月一日第二小法廷判決、民集一一巻一二号一八七〇頁参照)、所論
引用の判決は、本件に適切でない。
 されば、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 論旨は、原判決が、上告人において農地調整法四条による知事の許可を受けない
で被上告人Bに耕作させていた本件農地を自作農創設特別措置法三条一項二号の小
作地と認めて買収したのを適法であると判断しながら、その後、本件農地の売渡し
を受けた右被上告人から上告人が同農地の引渡を受け、現実にこれを耕作していた
にもかかわらず、当該使用収益権の設定につき農地法三条による農業委員会の許可
を受けていなかつたという理由で上告人を同条二項一号の小作農でないと認め、同
農地についてなされた所有権移転許可処分の無効確認を求める本件訴についての上
告人の原告適格を否定したことは理由齟齬の違法をおかしたものである、という。
 しかし、自作農創設特別措置法三条は、農地所有者に基準面積をこえる面積の農
地の所有を禁止し又は不適正な農地の経営をなくすることを目的として、所定の要
件に該当する農地を買収する旨を規定したものであるから、農地調整法四条による
知事の許可なくして耕作権が設定されている農地であつても、自作農創設特別措置
法三条所定の小作地に含まれるものと解すべきである(昭和二九年一二月二日第一
小法廷判決、民集八巻一二号二一二七頁参照)。
 また、本件農地所有権移転許可処分の無効確認を求める訴は、上告人が所有権以
外の権原に基づいて同農地を耕作していることをその請求の原因とするものである
が、右権原の設定につき知事の許可を受けていないことは、上告人の主張自体に照
らして明らかである。ところで、農地法は、その三条一項において、「農地又は採
草放牧地について……使用貸借による権利、賃借権……を設定し、若しくは移転す
る場合には、省令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなけれ
ばならない。」と規定し、右規定に違反する行為はその効力を生ぜず(同条四項参
照)、違反者は三年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金に処する(九二条参照)こ
ととしている。したがつて、農地につき賃借権等の設定を受け現に当該農地を耕作
している者であつても、右権利の設定について農業委員会の許可を受けていない以
上、当該農地の所有権移転につき知事が第三者に与えた許可処分の無効確認を求め
る原告適格を有しないといわなければならない。
 されば、叙上と同趣旨に出た原判決は、相当であつて所論の違法はなく、論旨は、
独自の見解に立脚するものであり、採用することができない。
 同第四点について。
 論旨は、原審が本件農地買収処分には保有面積を侵害した違法はないと判断した
ことが自作農創設特別措置法三条一項二号の解釈を誤り、判例に違背し、審理不尽、
理由不備の違法をおかしたものである、という。
 しかし、原審の右判断は、その挙示の証拠に照らし是認することができ、論旨は、
所詮、原審の裁量に属する証拠の取捨選択、事実の認定を非難するに過ぎないもの
であり、採用の限りでない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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