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平成16年10月26日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官 
平成16年(少コ)第2620号敷金返還請求事件
口頭弁論終結日 平成16年10月19日
少 額 訴 訟 判 決
主         文
1 被告は,原告に対し,10万1800円を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,原告に対し,10万4350円を支払え。
第2 事案の概要
1 請求原因の要旨
原告は,被告に対し,平成14年7月8日締結の東京都大田区AB丁目C所在の
DハイツE号室(以下「本件居室」という。)の賃貸借に係る敷金契約に基づく敷金1
9万円から既払金8万5650円を控除した残金10万4350円の支払を求める。
2 被告主張の要旨
被告は,原状回復費用として,①畳の張り替え修理費用3万1800円,②襖の張
り替え修理費用2550円,③玄関から台所に至るクロスの傷の部分張り替え修理
費用3万5000円,④ペットの飼育による室内臭気,和室の押入れのカビ及び台所
の汚れを除去するためのクリーニング費用3万5000円の合計10万4350円を支
出したので,これを敷金から控除した。したがって,原告に返還すべき敷金はない。
第3 当裁判所の判断
1 契約書(甲2)の特約条項11条によれば,本件契約においては,敷金から控除さ
れるべき原状回復費用について,本契約解約時にカーペット,建具,照明等の損傷
又は修理代や退去時の室内のクリーニング,クロス交換代等は原告の負担とする
旨の記載があるが,契約の趣旨から合理的に解すると,この条項は,原告が負担
すべき費用の範囲と項目を一般的の例示したものであり,原告が本件居室を故意
又は過失によって毀損したり,あるいは原告が通常の使用を超える使用方法によっ
て損傷させた場合には,その回復を原告の負担とするが,原告の居住,使用によっ
て通常生じる損耗については,その回復を原告の負担とするものではないと解する
のが相当である。
2 ①畳の張り替え修理については,計算書(甲1)に修理費用が計上されているが,
原告は,畳表が擦り切れたり,破損した箇所はないと供述しているし,被告代表者
も日焼けによる色あせ部分がある程度である旨供述しているから,畳表に損傷があ
ったと認めることはできない。他に,原告の故意,過失又は通常使用を超える使用
方法によって損耗が生じたと認めるに足りる証拠もないから,原告に畳の張り替え
修理費用の支払義務を認めることはできない。②襖の張り替え修理については,要
望書(甲4)及び原告の供述によれば,原告が襖を損傷させたことが認められるか
ら,その部分の修理費用2550円は原告の負担とするのが相当である。③玄関か
ら台所に至るクロスの傷の部分張り替え修理については,計算書(甲1)に修理費
用が計上されているが,原告は,クロス部分を汚したことはないと供述しているし,
弁論の全趣旨によれば,本訴提起前の交渉過程において,本件不動産の管理会
社である○○商事のFは,原告に対し,クロスの部分張り替え修理費用を原告に負
担させない旨を申し入れているから,クロスが汚れていたと認めることはできない。
他に,原告の故意,過失又は通常使用を超える使用方法によって汚れが生じたと
認めるに足りる証拠もないから,原告にクロスの部分張り替え修理費用の支払義務
を認めることはできない。④ペットの飼育による室内臭気,和室の押入れのカビ及
び台所の汚れを除去するためのクリーニング費用については,計算書(甲1)に費
用が計上されているが,原告は,本件居室でペットを飼育していなかった旨供述し
ているから,ペットの臭気があると認めることはできない。原告は,友人のペットであ
るハムスターを,友人が旅行等で家を空ける際に,1週間程度の期間で,3回ほど
預かったと供述しているが,1年10か月の賃貸借期間の内,通算3週間程度の期
間であり,また,ケージ内で飼育されていたことを考慮すれば,ペットの臭気を問題
とする程度に至っていないと考えるべきである。要望書(甲4)及び原告の供述によ
れば,原告は,本件居室を退去する際に,台所などの水回りを清掃するなど,通常
の清掃をして明け渡したことが認められる。そうすると,被告において原告の故意,
過失又は通常使用を超える使用方法によって和室の押入れのカビ及び台所の汚
れがあったことを明らかにすべきところ,これを認めるに足りる証拠はなく,他に,ク
リーニングが必要であると認めるに足りる証拠もない。以上から,原告にクリーニン
グ費用の支払義務を認めることはできない。したがって,原告の負担する原状回復
費用は,2550円であると認める。
3 以上により,敷金19万円から既払金8万5650円を控除した残金10万4350円
のうち,原告が負担する原状回復費用2550円を差し引くと,返還すべき敷金残額
は10万1800円となるから,原告の請求は,主文の限度で理由がある。
東京簡易裁判所少額訴訟4係
裁 判 官  行  田     豊

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