弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成21年9月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成20年(行ケ)第10436号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成21年8月20日
判決
原告ダイセル化学工業株式会社
同訴訟代理人弁護士吉澤敬夫
同弁理士平田忠雄
岩永勇二
角田賢二
遠藤和光
中村恵子
被告日本化薬株式会社
同訴訟代理人弁護士小池豊
櫻井彰人
萱島博文
同弁理士川口義雄
小野誠
渡邉千尋
金山賢教
大崎勝真
坪倉道明
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2007−800227号事件について平成20年10月14日に
した審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,下記1のとおりの手続において下記2の本件発明についての特
許を無効とした別紙審決書(写し)記載の本件審決(その理由の要旨は下記3のと
おり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1本件訴訟に至る手続の経緯
(1)原告は,発明の名称を「エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置」と
する特許第2926040号(平成10年4月16日特許出願。特許法41条1項
の規定に基づく優先権主張日:平成9年5月9日。平成11年5月7日設定登録。
請求項の数は,後記(3)の訂正後は11である。以下「本件特許」という。)に係
る特許権者である(甲72)。
(2)被告は,平成12年1月28日,本件特許について,特許異議の申立てを
行い,原告は,平成12年9月12日付け及び平成13年6月25日付け(甲7
3)で訂正請求をしたところ,平成13年8月23日付けで,訂正を認め,特許を
維持するとの異議の決定がされた。
(3)被告は,平成19年10月19日,本件特許について,特許無効審判を請
求し,無効2007−800227号事件として係属した。原告は,平成20年1
月7日付けで,本件特許に係る明細書中,特許請求の範囲の記載を訂正するとの訂
正請求をした(甲74)。以下,同請求に係る訂正を「本件訂正」といい,本件特
許における本件訂正に係る明細書(甲74添付の全文訂正明細書)を「本件明細
書」という。
(4)特許庁は,平成20年10月14日,本件訂正を認めた上,「特許第29
26040号の請求項1∼11に係る発明についての特許を無効とする。」との本
件審決をし,同月24日,その謄本を原告に送達した。
2本件発明の要旨
本件明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし11の記載は次のとおりである。
以下,請求項の番号に従って,「本件発明1」などといい,これらをまとめて「本
件発明」という。
【請求項1】ガス排出口を有するハウジング内に,衝撃センサが衝撃を感知するこ
とにより作動する点火手段と,該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生
するガス発生剤と,前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィル
タ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において,
前記ガス発生剤は,含窒素有機化合物の含有量が25∼60重量%,酸化剤の含
有量が40∼65重量%,スラグ形成剤の含有量が1∼20重量%で,70kg/
cmの圧力下に於ける線燃焼速度が7∼15mm/secのもので,充填量が,(a)2
運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20∼50g,(b)助手席用のエア
バッグ用ガス発生器においては50∼190gであり,
前記フィルタ手段は,かさ密度が3.0∼5.0g/cmで,かつ圧力損失が23
0℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10∼2000
mmHOのもので,フィルタ手段の圧力損失値は,前記ハウジングに形成された前記2
ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり,前記ガス排出口が形成された前記
ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成さ
れており,
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和
Aの値(A/At)を300より大きく1300以下に規制することを特徴とする
エアバッグ用ガス発生器。
【請求項2】ガス排出口を有するハウジング内に,衝撃センサが衝撃を感知するこ
とにより作動する点火手段と,該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生
するガス発生剤と,前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィル
タ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において,
前記ガス発生剤は,テトラゾール若しくはその金属塩,トリアゾール若しくはそ
の金属塩,トリアミノグアニジン硝酸塩,カルボヒドラジッド又はニトログアニジ
ン(「ニトログアージン」の記載は「ニトログアニジン」の誤記と認められる。)
である含窒素有機化合物の含有量が25∼60重量%,酸化剤の含有量が40∼6
5重量%,スラグ形成剤の含有量が1∼20重量%で,70kg/cm(「k/2
cm」の記載は「kg/cm」の誤記と認められる。)の圧力下に於ける線燃焼速度22
が7∼15mm/secのもので,充填量が,(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生
器においては20∼50g,(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては5
0∼190gであり,
前記フィルタ手段は,かさ密度が3.0∼5.0g/cm(「/cm」の記載は33
「g/cm」の誤記と認められる。)で,かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で103
00リットル/minの空気流量に対して10∼2000mmHOのもので,フィルタ2
手段の圧力損失値は,前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よ
りも低いものであり,前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記
フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており,
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和
Aの値(A/At)を450∼1300に規制することを特徴とするエアバッグ用
ガス発生器。
【請求項3】前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表
面積の総和Aの値(A/At)が,運転席用及び助手席用のエアバッグ用ガス発生器
において,A/At=450∼1000であり,前記ハウジングは,前記各ガス排
出口を有するディフューザシェルと,前記点火手段を収容する中央筒部材が配置さ
れる中央孔を有するクロージャシェルとを含み,前記ディフューザシェル,前記中
央筒部材,及び前記クロージャシェルは別体のものが一体化されていることを特徴
とする請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項4】前記各ガス排出口の開口面積の総和Atは,(a)運転席用のエアバッ
グ用ガス発生器においては,50∼200mm,(b)助手席用のエアバッグ用ガス2
発生器においては,60∼500mmであることを特徴とする請求項1∼3の何れ2
か1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項5】前記各ガス発生剤の表面積の総和Aは,(a)運転席用のエアバッグ用
ガス発生器においては,4×104∼7×104mm,(b)助手席用のエアバッグ2
用ガス発生器においては,6×104∼3×105mmであることを特徴とする請2
求項1∼4の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項6】前記ガス排出口は,その内径が2∼5mmであり,前記ディフューザ
シェルはプレス成形によって形成されていることを特徴とする請求項3∼5の何れ
か1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項7】前記ガス発生剤は,前記含窒素有機化合物が30∼40重量%である
ことを特徴とする請求項1∼6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項8】前記含窒素有機化合物がニトログアニジンであることを特徴とする請
求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項9】前記スラグ形成剤が酸性白土であることを特徴とする請求項1又は8
項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項10】前記ガス発生剤は単孔円筒形状であることを特徴とする請求項1∼
9の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項11】エアバッグ用ガス発生器と,
衝撃を感知して前記ガス発生器を作動させる衝撃センサと,
前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと,
前記エアバッグを収容するモジュールケースとを含み,
前記エアバッグ用ガス発生器が請求項1∼10の何れか1項記載のエアバッグ用
ガス発生器であることを特徴とするエアバッグ装置。
3本件審決の理由の要旨
(1)本件審決の理由は,要するに,本件発明について,優先権の主張の基礎と
された先の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず,特許
法29条の規定の適用については,先の出願の時にされたものとみなすことができ
ず,現実の出願日である平成10年4月16日を出願日とすると,本件発明は,下
記アないしウの引用例1ないし3に記載された各発明(以下,その順に従って,
「引用発明1」などという。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができ
たものであるから,本件発明に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してさ
れたものとして,無効とすべきである,というものである。
ア引用例1:特開平10−29493号公報(甲1)
イ引用例2:特開平7−52748号公報(甲18)
ウ引用例3:国際公開96/10494号パンフレット(甲7)
(2)なお,本件審決が認定する本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点
のうち取消事由に関係する相違点3ないし5は,次のとおりである。
一致点:ガス排出口を有するハウジング内に,衝撃センサが衝撃を感知すること
により作動する点火手段と,該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生す
るガス発生剤と,前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ
手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において,
前記ガス発生剤は,含窒素有機化合物の含有量が25∼60重量%,酸化剤の含
有量が40∼65重量%,スラグ形成剤の含有量が1∼20重量%で,70kg/
cm2の圧力下に於ける線燃焼速度が7∼15mm/secであるものを含み,充填量
が,(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20∼50g,(b)助手席
用のエアバッグ用ガス発生器においては50∼120gであるものを含み,
前記フィルタ手段は,かさ密度が3.0∼5.0g/cmで,前記ガス排出口が3
形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路とな
る間隙が形成されており,
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和
Aの値(A/At)を規制するエアバッグ用ガス発生器。
相違点3:フィルタ手段の圧力損失について,本件発明1は,「20℃の雰囲気
下で1000リットル/minの空気流量に対して10∼2000mmHO」であるの2
に対し,引用発明1は,「常温及び流量100l/min/cmの条件下で,0.32
×10∼1.5×10kg/cm」である点。−2−22
相違点4:A/Atの値について,本件発明1は,「300より大きく1300
以下」に規制しているのに対し,引用発明1は,「(a)運転席用エアバッグにおい
ては,A/At=100∼300,(b)助手席用エアバッグにおいては,A/At
=80∼240」である点。
相違点5:フィルタ手段の圧力損失値と,ガス排出口の圧力損失値の関係につい
て,本件発明1は,「フィルタ手段の圧力損失値は,前記ハウジングに形成された
前記ガス排出口の圧力損失値よりも低い」のに対し,引用発明1は,このような関
係を有するか不明である点。
4取消事由
(1)本件発明1についての無効判断の誤り
ア阻害事由を看過した判断の誤り(取消事由1)
イ引用例2についての認定・判断の誤り(取消事由2)
ウ最適化の手法等による容易想到性の判断の誤り(取消事由3)
(2)本件発明2ないし11についての無効判断の誤り(取消事由4)
第3当事者の主張
1取消事由1(阻害事由を看過した判断の誤り)について
〔原告の主張〕
(1)本件発明1と引用発明1との技術思想の異同
引用発明1は,ガス発生剤の燃焼によって発生する圧力(燃焼内圧)をフィルタ
手段によって制御する思想に基づいている。これに対し,本件発明1は,燃焼内圧
をフィルタ手段によって制御するという思想とは全く逆に,ハウジングに設けられ
た開口部(ガス排出口)側で燃焼内圧を制御する思想に基づくものであって,フィ
ルタ手段側では,燃焼内圧に大きな影響を与えることのないようにするため,フィ
ルタ手段の圧力損失に関する「かさ密度が3.0∼5.0g/cmで,かつ圧力損3
失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気量に対して10∼2000
mmHOのもの」であるとする要件,「フィルタ手段の圧力損失値は,前記ハウジン2
グに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低い」とする要件などの構成が
特定されている。
(2)本件発明1に引用発明1を適用することの阻害事由の有無
ア引用発明1は,本件発明1の主要な発明特定事項である「10∼2000
mmHOのフィルタ手段」,「ハウジングに形成されたガス排出口の圧力損失値より2
低い圧力損失値のフィルタ手段」及び「A/Atを300より大きく1300以下
に規制する」構成とは正反対の構成であり,これらを置き換えると,引用発明1の
目的・技術思想に反する結果となるものであるから,本件発明1の引用例とするこ
とができない阻害事由を内在するものであり,また,引用発明1の高圧損フィルタ
を低圧損フィルタに変更することは,引用例1及び2に記載も示唆もされていない
ものであって,本件発明1の進歩性の判断に当たり,引用例1を対比判断の資料に
使用することができないにもかかわらず,本件審決にはこの点を看過した誤りがあ
る。
なお,引用発明1は,原告の出願に係るものであるが,アジド系ガス発生剤を
用いたガス発生器から非アジド系ガス発生剤を用いたガス発生器への移行期に開発
された技術であって,当時のエンハンサ室,ガス発生剤室(燃焼室)及びフィルタ
室を隔壁やコンバスタカップなどで分割した3室構造が主流であったアジド系ガス
発生剤を用いたガス発生器に多用されていた技術を引き継いだ発想に基づきながら,
従来のこのような隔壁やコンバスタカップなどの燃焼室隔壁部材の役割・機能を果
たす代替手段として,クーラント/フィルタ自体を用いることにより,ガス発生剤
室(ガス発生手段用燃焼室)を画成し,この部屋で燃焼ガスの圧力を正常な燃焼に
とって望ましい値に維持することを特徴とするものである(【0012】【002
5】)のに対し,引用発明1におけるA/Atは,A/At値が,ガス発生剤20
ないし50gについて100ないし300とされ,この比の設定によってガス発生
剤の燃焼速度が運転席用エアバックに適した速度に調整され,ガス発生器に備わる
ガス発生剤が所望の時間内で完全燃焼することを保証するという特徴を有するもの
であって,A/Atの機能・役割は補完的なものである。
イまた,相違点4に係るA/Atの値の差異の点について,引用例1の明細書
【0182】の記載は,本件発明1の「A/Atを300より大きく1300以下
に規制する」構成を利用することを否定するものであって,本件発明1とは技術思
想を異にするものであるから,引用例1の「A/At=100∼300」の値を,
本件発明1の「A/Atを300より大きく1300以下」に置き換えることはで
きず,これを仮に置換してしまうと,引用例1の発明では「ガス発生器内の圧力は
過大となり,ガス発生材料の燃焼速度が余りに大きくなる」ため,その目的に反す
る結果となる。
(3)小括
したがって,引用発明1を本件発明1の引用発明とするには明白な阻害事由を
内在するのであって,本件発明1の進歩性の判断に当たり,引用例1を対比判断の
資料に使用し得ないものである。
〔被告の主張〕
(1)本件発明1と引用発明1との技術思想の異同
本件審決は,相違点5として,フィルタ手段とハウジング開口部の圧力損失の大
小関係につき,引用発明1と本件発明1との相違点を認め,また,相違点3として,
フィルタ手段の圧力損失につき,引用発明1と本件発明1との相違点を認めている。
(2)本件発明1に引用発明1を適用することの阻害事由の有無
ア本件審決(37頁11∼17行)は,引用発明1においても,「フィルタ手
段」(クーラント/フィルタ407)と「ハウジングに設けられた開口部」(A/
Atの値)のうち,いずれか一方の要因のみによっても燃焼ガスの圧力(燃焼内
圧)を適正に制御し得るといえ,そうしてみると,相違点3や相違点5につき,
「フィルタ手段」と「ハウジングに設けられた開口部」の圧力損失の大小関係を本
件発明1のように調整(反転)することが不可能といえるような理由はないとした
ものであって,的を射た判断ということができる。
イ原告は,引用例1の明細書【0182】における記載は,本件発明1の「A
/Atを300より大きく1300以下に規制する」構成を利用することを否定す
るものであって,引用発明1は,本件発明1とは技術思想を異にすると主張するが,
「燃焼圧力」=「フィルタ全体の圧力損失」+「開口部全体の圧力損失」との関係
式が成立するものであるから,引用例1の明細書【0231】の「ハウジング内最
大内圧は,専ら開口部総面積によって規制する」との記載に準じて当該開口部によ
りガス発生剤の燃焼(ハウジング内最大内圧)を制御する場合には,そのフィルタ
手段として低圧損のものを採用すべきことを当業者が当然に想起することができ,
逆に,そのようにして選択した低圧損のフィルタ手段に応じて開口部の圧損を高く
する(A/Atを300より大きくする)ことも,引用発明1で否定されている構
成ということはできない。
(3)小括
ガス発生器の燃焼室内(ガス発生剤の燃焼内圧)を所定の値に制御しようとする
際,それに影響するフィルタ手段の圧力損失とハウジング開口部の圧力損失の大小
関係を変更することが技術的に不可能であったなどということはできないものであ
るから,単にそのような大小関係を変更したら引用発明1のものとは反対の関係に
なるからといって,直ちに,引用発明1を本件発明1の引用例とするには元々阻害
事由が内在していたとか,引用例1を対比判断の資料とはできないとされるもので
はない。
2取消事由2(引用例2についての認定・判断の誤り)について
〔原告の主張〕
(1)引用例2の読み方
相違点3に係る判断における本件審決(34頁14∼23行)の引用物2につい
ての認定は,「燃焼室14と調整用空間17との圧力がほぼ同等となること」につ
いての認定とフィルタ16の圧力損失の認定において誤っている。
引用例2には,その開示されているフィルタ16が「燃焼ガスの圧力にほぼ影響
を与えないフィルタ」であるとは記載されておらず,【0016】に「この圧力調
整用空間17は冷却捕集フィルタ16の外周部までガスの流通を可能とし,フィル
タ16を均一に利用できるようにする。しかも,燃焼ガスの圧力が縮径されたガス
排出口2で決定され,燃焼室14と圧力調整用空間17との間では圧力がほぼ同等
となり,フィルタ16を通過するガスの流出速度が抑制されて固体残渣がガス圧に
よりフィルタ16から押し出されることが防止される。」と記載されているにすぎ
ず,燃焼室14と空間17との間の圧力がほぼ同等となるのは「燃焼ガスの圧力が
縮径されたガス排出口2で決定」されるからである。引用例2の冷却捕集フィルタ
16が「燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えない」圧力損失を有するものであると認
定した本件審決には誤りがあり,引用例2のフィルタ16を引用発明に適用しても
本件発明1を導くことはできない。
(2)引用例2記載のフィルタ16の圧力損失の高さ
引用例2のフィルタ16は,アジ化ナトリウム(NaN)に代表されるアジド系3
ガス発生剤の使用を前提としたフィルタである(【0017】,【0018】)。
アジ化ナトリウムは,自己分解反応によって,金属ナトリウムと窒素ガスを発生
するところ,金属ナトリウムは,沸点883℃,融点98℃であり,ガス発生剤が
燃焼している時は気体で存在し,また,非常に反応性が強く,強アルカリであるた
め,バッグから放出されると人体に悪影響を与えるおそれがあるため,ナトリウム
に対する対策が重要であって,ナトリウムを伴う残渣を捕捉するためのフィルタに
おいては,気体の金属ナトリウムを冷却して液体にしてこれらを捕捉するため,高
い冷却・濾過性能が必要となり,基本的に高圧損のものであることが常識となって
いる。
このように,引用例2のフィルタ16は,アジ化ナトリウム系ガス発生剤の残渣
捕集能力向上を目指した発明であることを勘案すると,本件発明1よりもはるかに
圧力損失の高いフィルタである可能性が高く,本件発明1に規定するような低圧損
な構成のフィルタを使用するものであるということができないことから,「フィル
タ16は燃焼圧力にほぼ影響を与えないもの」であるとした本件審決の認定は誤っ
ている。
また,引用例2の【0015】の「前記支持板12は冷却捕集フィルタ16を支
持し,フィルタ16がガス圧により変形するのを防止するとともに,ガス排出口2
との間に圧力調整用空間17を形成している。」との記載からは,フィルタ16が
変形するほどの圧力損失があること,同【0020】の「なお,この冷却捕集フィ
ルタ16の体積は,燃焼室14全体の体積の約33%を占め」との記載のとおり,
フィルタ16が燃焼室14の33%を占める大きなフィルタであること,同【00
25】の「(1)図3に示すように,支持板12を円錐状に形成すると同時に,冷却
捕集フィルタ16を支持板12に沿うように円錐状に形成して,フィルタ16内を
燃焼ガスが流れ易くすること。」との記載のとおり,フィルタ16の通過面積を少
し増やすとガスが流れやすくなることが認められ,これによると,引用例2のフィ
ルタ16は,作動時にフィルタ前後で圧力損失が存在すること,フィルタは相当大
きな体積を占めること,圧損を減らす工夫を設計者が実施していることが理解でき,
フィルタ16は,「圧力に影響を与えないフィルタ」ではないことことが分かる。
さらに,引用例2においては,「燃焼室14はハウジング1内においてキャップ
4と支持板12との間に形成され」(【0015】)ているものであるから,フィ
ルタ16収容部分も燃焼室14に含まれるにもかかわらず,本件審決は,これを無
視し,燃焼室14がガス発生剤収容部分のみであると決め付け,フィルタ16の前
後で圧力差がないと認定し,また,引用例2の【0016】は圧力調整用空間17
について説明している部分であるから,同段落における「燃焼ガスの圧力」におけ
る「燃焼ガス」とは圧力調整用空間17に存在する燃焼で発生したガスのことであ
るにもかかわらず,本件審決は,この「燃焼ガスの圧力」を燃焼部(ガス発生剤収
容部)の圧力と誤認し,その結果,排出口2が燃焼部の圧力を決定するとの誤った
認定をし,これを基に,ほとんど圧損のないフィルタでアジド系ガス発生剤の燃焼
残渣を捕集できるという技術的に非常識な認定をしたものである。
さらにまた,引用例2において,ガス排出口2は「縮径されたガス排出口2」と
の記載があるとおり,ハウジング1の径を縮小したものであることが分かるが,燃
焼ガスを高圧に制御するための開口部面積は,燃焼部の断面性よりもはるかに小さ
い面積でなければならないところ,引用例2の図1や3をみると,高圧ガスを制御
できるほどにまで縮小された径であると読むことができないこと,引用例2の【0
012】に「ガス導入管を介して」と記載されるとおり,ガス排出口2にはある程
度の太さを有するガス導入管が取り付けられるため,ガス排出口2は,それに合わ
せたある程度の太さを有する径である必要があって,ハウジング1内全体を制御で
きるほど高圧損の開口部とは考えられないことからすると,ハウジング1内全体の
燃焼ガスの圧力を決定できるほどガス排出口2が縮径されていると考えることはで
きず,ガス排出口2が決定するのは,圧力調整用空間17の「燃焼ガス」の圧力で
あって,ガス排出口2が生成する圧力損失は圧力調整用空間17内部の圧力分布が
解消できる程度の小さなものであるということができる。
〔被告の主張〕
(1)引用例2の読み方
引用例2の【0016】には,「燃焼室14と圧力調整用空間17との間では圧
力がほぼ同等とな」ることが記載されており,そのようなガス発生器に用いられる
フィルタ16が「燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないフィルタ」であることは,
当業者が技術常識に照らして理解することである。
加えて,本件明細書の【0011】にも,「ただしA/Atの値を上記のように
明確に定義する上では,ガスの流れを絞り,燃焼内圧をコントロールする部分より
手前側で大きな抵抗を持った部材を有しないことが望ましい。例えば,後で説明す
る実施例においてでもそうであるが,通常燃焼圧力をコントロールする部分即ちガ
ス排出口の手前にはクーラント・フィルタが配置され,発生したガスの冷却とガス
中の固形残渣の捕集を行う。」と説明されているところ,引用例2においても「燃
焼ガスの圧力が縮径されたガス排出口2で決定され」るようにするのならば,この
縮径されたガス排出口2の手前側に大きな抵抗を持った部材(高圧損のフィルタ手
段)を配するようなことを当業者が行うようなはずはなく,この点からでさえ,引
用例2のフィルタが「ガスの圧力にほぼ影響を与えないもの」であるべきことに間
違いはない。
(2)引用例2記載のフィルタ16の圧力損失の高さ
引用例2の【0016】によると,引用例2においても,ガス排出口2により燃
焼ガスの圧力を制御することによってフィルタ16を圧力制御に関与させないとい
う技術思想が開示されており,そして,同段落の燃焼室14と圧力調整用空間17
との間では圧力がほぼ同等となるとの記載も併せて考慮すると,フィルタ16の圧
力損失は低いものとみることができる。
3取消事由3(最適化の手法等による容易想到性の判断の誤り)について
〔原告の主張〕
(1)最適化の手法
本件審決は,相違点3の圧力損失値につき,最適化をすることによって本件発明
1の数値を導くという操作を行い,さらにそのことによって相違点4の「A/At
の値」についても,最適化が再度必要であるとし,2度にわたる最適化の操作をし
ている。
公知技術との対比によって容易推考性を肯定するためには,主引例に副引例の記
載をそのまま適用することによって対象発明が導けるか否かを素直に判断するのが
原則であり,主引例との相違点に副引例の記載を適用しても対象発明が導けないと
きには,容易想到性は否定されなければならない。一般に,これらの組合せによっ
て完全には対象発明が導けない場合であっても,発明の本質とかかわらない差異部
分等について,技術水準を参照して差異部分についても容易想到性を肯定できる場
合があり得るが,本件審決の認定・判断は,そのような場合とは全く異なる。
本件審決が行った2度にわたる最適化は,以下の(2)及び(3)のとおり,引用例の
組合せによっても発明の本質部分が異なることになるため対象発明が導けない場合
につき,「後知恵」に基づき引用例に全く記載のない「ある種の発明」を2度にわ
たって行うことによって,引用例同士を無理やり組み合わせて容易想到性を肯定し
ようとするもので,最適化ができることを裏付ける証拠その他の合理的な根拠は一
切存在せず,本件審決の行っている対比は,本件発明1と引用例とは異なる架空の
発明を対比しているに等しく,もはや容易想到性を肯定することができる限度を超
えている。
(2)相違点3に係る圧力損失値の最適化
ア本件審決(35頁3∼7行)は,「引用発明のクーラント/フィルタ40
7に引用例2に開示された前記技術思想を適用する際,燃焼室隔壁部材を廃止する
ことができる程度に圧力損失を大きくすることも考慮の上,圧力損失値の最適化を
図り,20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10∼20
00mmHOの範囲内に設計することに格別の困難性はない。」とするが,前記のと2
おり「低圧損なフィルタ」の技術思想が引用例2に開示されているとした判断が誤
りであることに加え,圧力損失の最適化を図るとなぜ本件発明1の圧力損失値の範
囲を導くことができるのか不明であることや,引用例1には,本件発明1のフィル
タの圧力損失の数値範囲とすることによって燃焼室隔壁部材を廃止することができ
ることの開示も示唆もないことからも,本件審決は誤ってる。
イ引用発明1のクーラント・フィルタ407は,「燃焼ガスの圧力を望ましい
値に維持することができ,燃焼室隔壁部材を廃止することができ」るようなもので
あって,①クーラント・フィルタ自身がガス発生剤燃焼時の圧力室を画成すること,
②クーラント・フィルタ自身が燃焼ガスの圧力制御に係ること,という機能を有す
る圧力損失の高い「高圧損なフィルタ」であることが明らかである。引用例1の
【0182】においても,「ガス発生剤の燃焼を調整するために,A/Atについ
て適当な設定がされる」こと,「A/Atの適当な設定範囲を外れると,燃焼時間
は望ましい範囲外となり,かかる燃焼時間をもつエアバッグ用ガス発生器は使用し
得ない」ことが記載されているにすぎず,引用例1の他の記載を含め,引用発明の
A/Atの数値範囲(例えば運転席用エアバッグでは100≦A/At≦300)
においてA/Atの値を適当に調整することが記載されているとしても,当該数値
範囲を超えてまでA/Atの値を設定して調整するとか,その調整によって燃焼ガ
スの圧力を適正化できるとか,その結果燃焼ガスの圧力を望ましい値に維持できる
などの開示は一切ない。
これに対し,本件発明1では,本件明細書の【0011】において「ただしA/
Atの値を上記のように明確に定義する上では,ガスの流れを絞り,燃焼内圧をコ
ントロールする部分より手前側で大きな抵抗を持った部材を有しないことが望まし
い」とし,【0012】において「…この通気抵抗は,燃焼内圧をコントロールす
る部分であるガス排出口にも存在するが,クーラント・フィルタを配置する際には,
ガス排出口の通気抵抗よりもクーラント・フィルタの通気抵抗の方が低い場合にA
/Atの値を先述の如く正確に設定することができる。」と記載されており,燃焼
内圧をコントロールする機能を有しない(【0040】)フィルタ手段を使用して
このフィルタ手段の圧力損失値を前記各ガス排出口の圧力損失値より低くしたため,
作動開始から作動終了までの作動期間中において,「…外気の温度差によって影響
を受けることなく,安定した作動性能を示す」(【0092】)という効果をサポ
ートして確実にする前記異質の効果を奏するものである。
ウ以上のとおり,本件発明1では,フィルタが燃焼時の圧力制御へ関与するこ
とを極力排除し,ハウジングの開口部の面積とガス発生剤の表面積の関係であるA
/Atの値によって(外郭容器側で)基本的な圧力制御をしているから,フィルタの
目的及び使い方が引用発明1と全く正反対であって,引用発明1を見た当業者が,
それと正反対のフィルタを使用しようとする動機付けが存在しない。
また,このような正反対のフィルタ手段を相互に入れ替えて矛盾なく双方の発明
を成り立たせることは元々困難であり,それ自体が阻害事由に当たるものであって,
仮に引用例2に開示されたフィルタ16が審決の認定するような「燃焼ガスの圧力
にほぼ影響を与えないフィルタ」である「低圧損なフィルタ」であったとしたなら
ば,これをそのまま引用発明1に適用すると,引用発明の「燃焼ガスの圧力を望ま
しい値に維持することができ,燃焼室隔壁部材を廃止することができ」るようなも
のではないから,引用発明1は成り立たなくなるし,逆に,引用例2に開示されて
いるとする「低圧損なフィルタ」に,審決の認定する「燃焼室隔壁部材を廃止する
ことができる程度に圧力損失を大きくすることも考慮の上,圧力損失値の最適化」
を図ると,それはもはや審決の認定する引用例2に記載のフィルタですらなくなっ
てしまうのであって,そのような「圧力損失を大きく」したフィルタは,本件発明
1の目的に反するものとなる。
そして,どのような基準に基づき,どのような思考過程によれば,「20℃の雰
囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10∼2000mmHOの範囲2
内に設計する」ことが可能であるのかは理解できず,そのような最適化を必要とす
る動機付けとなるべき根拠,また,そのような最適化を可能とする技術的根拠及び
それを裏付ける証拠も全く見当たらない。
エ本件審決(35頁21∼24行)は,引用例2に開示されているフィルタの
みを個別に取り出し,容易に引用発明のフィルタに置き換えることができるとする
が,ガス発生器の燃焼時の圧力制御は,フィルタのみで可能であるわけではなく,
開口部の圧力損失その他の要因との兼ね合いで達成されるものであり,ガス発生器
の発明は,それらの多くの要因を組み合わせて特定の動作をさせることを技術思想
としているものであるところ,本件発明1は,「燃焼ガスの圧力」が「フィルタの
圧力損失」及び「A/At」の関数であることを前提として成立しているものであ
るから,一方の要素であるフィルタのみを取り出し,異なる技術思想によるガス発
生器に簡単に転用できるようなものではない。
(3)相違点4に係るA/At値の最適化
ア本件審決(35頁末行∼36頁10行)は,「引用発明1は,…ガス発生剤
を運転席用エアバッグでは40∼60msec,助手席用エアバッグでは50∼80
msecで全て燃焼させるために,ガス発生器内の圧力が最適な値になるようにA/
Atの値を調整しているといえる。」「そして,このA/Atの最適値は,ガス発
生剤の燃焼速度や,ガス発生器内の圧力に影響を与える種々の要素が変化すれば,
異なるものになることは明らかといえるところ,引用発明のクーラント/フィルタ
407の圧力損失は,ガス発生器内の圧力に影響を与えるものである。したがって,
このクーラント/フィルタ407の圧力損失を前記[相違点3]についてで検討し
たように設計すれば,A/Atの値の最適化が再度,必要になることは明らかであ
る。」とするが,引用発明1のクーラント/フィルタ407は,従来はクーラント
と別個にコンバスタカップ,コンバッションリング等の燃焼室画成部材を必要とす
ることから,大型化,重量化を招く結果になることにかんがみ,燃焼室画成部材を
廃止して小型化,軽量化を期すためのもの(【0012】,【0013】)であっ
て,燃焼室内で発生する燃焼ガスの圧力をガス発生剤の正常な燃焼にとって望まし
い値に維持する所定の圧力損失値を有するものである(【0025】)ところ,引
用発明1のクーラント/フィルタ407を,「10∼2000mmHO」の圧力損失2
値になるような「低圧損なフィルタ」とすれば,燃焼時の圧力室を形成するような
フィルタでなくなってしまうことから,燃焼室画成部材が必要となって,小型化,
軽量化の目的に反する結果となる。
以上のとおり,引用発明1のクーラント/フィルタ407をその目的に反してま
で,「A/Atの値の最適化が再度必要」とするということの動機付けとなる技術
的又は論理的根拠が存在しない。
イまた,引用発明1が「100∼300」という低い「A/At」値を採用し
ているのは,「A/Atの比がその最大値を超える時,エアバッグ用ガス発生器内
の圧力は過大となり,ガス発生材料の燃焼速度が余りに大きくなる結果となる。該
比が最小値より小さくなると,エアバッグ用ガス発生器内の圧力が十分上昇せず,
燃焼速度が余りに小さくなるという結果となる。何れの場合も,燃焼時間は望まし
い範囲外となり,かかる燃焼時間をもつエアバッグ用ガス発生器は使用し得な
い。」(【0182】)という思想に基づくものであって,これを「300より大
きく1300以下」という高い値の「A/At」とすることは引用発明1の技術思
想に反するものとなり,引用発明1自体が成立しないことになるから,本件発明1
と相反する技術思想を開示する引用発明1には阻害事由が存在し,また,そのよう
な阻害事由を克服して相反する技術を採用するための動機となる技術的な根拠及び
それを裏付ける証拠が必要も示されていない。
ウ本件審決は,引用発明1の「100∼300」という低い「A/At」値を,
本件発明1の「300より大きく1300以下」という高い「A/At」値にする
ことが容易であるとするが,引用発明1ではガス発生器内の圧力が過大にならない
ようにするために,そのような構成を採用しているのに対し,本件発明1があえて
これを超える構成を採用しているのは,本件明細書【0033】及び【0034】
に記載されるように,外気温の影響を少なくすることができることを大きな理由と
するものであって,本件発明1は,「このように各ガス排出口の開口面積の総和A
tに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大に規
制して,85℃と20℃,また20℃と−40℃とでの,内容量60リットルタン
クを用いたタンク内圧力試験におけるそれぞれの最大圧力同士の差を,20℃での
該タンク内圧力試験の最大圧力の25%以内とすることができる。」(同【001
0】)という効果を達成し,大きな外気温の差のある場所で使用される自動車用の
ガス発生器において,しかも外気温に影響され易い非アジド系ガス発生剤を採用し
たガス発生器において,ガス発生器の作動時に於けるハウジング最大圧力が,外気
の温度差によって影響を受けることなく,安定した作動性能を示すことのできるガ
ス発生器となる」(同【0092】)という,引用発明1を含む従来例にない格別
の効果を奏する発生器を得ることができたのである。
このように,本件発明1は,引用発明1とは異なる技術思想に基づき,その数値
範囲を設定することによって,引用発明1や他の公知例と異なる格別の作用効果を
達成しているのであるから,引用発明1の「100∼300」という低い「A/A
t」値を,本件発明1の「300より大きく1300以下」という高い「A/A
t」値にすることが,容易に置き換え可能なことであるとか,最適化の範囲内の事
項であるとはいうことができない。
(4)実験報告書(甲22)の認定
本件審決(36頁21∼24行)は,「甲22号証に添付された公正証書の謄本
の写しを参酌すると,A/Atの値が409程度のガス発生器も本件特許の出願前
より公知であったといえ,300より大きく1300以下の範囲という値自体,こ
の技術分野において,格別な値であるとはいえない。」とするが,甲22中の「ガ
ス発生器の分解調査」によると,ガス発生器の燃焼室は上側燃焼室と下側燃焼室と
に2分され,下側燃焼室のガス発生剤だけが点火手段から着火用の開口を介して着
火される構造になっているものであり,2分された上側燃焼室と下側燃焼室は,着
火用の開口として機能し得ない極めて小さな3つの小孔を有した仕切板によって完
全に隔離されている本件発明1とは異なる機構のものであって,上側燃焼室のガス
発生剤は下側燃焼室のガス発生剤及び点火手段からどのようにして着火されるのか
は不明であるから,甲22に示されるガス発生器において,認定されているA/A
tの値が409程度との値の意味が不明であってどのような技術的意義を有してい
るか不明であるから,このような技術的意義が不明な数値を根拠にして「300よ
り大きく1300以下の範囲という値自体,この技術分野において,格別な値であ
るとはいえない」とした本件審決の判断は誤っている。
(5)相違点5の判断
本件審決(36頁26∼末行)は,「引用発明1に記載されたクーラント/フィ
ルタ407に,引用例2に開示された前記技術思想を適用し,…引用発明1のA/
Atの値について,このクーラント/フィルタ407の圧力損失等を考慮の上,最
適化すれば,引用発明1の燃焼室428の圧力は,クーラント/フィルタ407に
ほぼ影響を受けることなく,ハウジング403に形成されたガス排出口411によ
り制御されることになる。」「このとき,クーラント/フィルタ407の圧力損失
値は,ハウジング403に形成されたガス排出口411の圧力損失値よりも低いこ
とは明らかであって,本件発明1の相違点5に係る構成とすることに格別の困難性
はない。」とするが,上記のとおり,引用例2は本件審決が認定するような技術思
想を開示していないこと及び10∼2000mmHOと300<A/At≦13002
に関する2度にわたる最適化はいずれも誤りであるから,これらを前提とする相違
点5における判断も誤っている。
(6)本件発明1の作用効果
本件審決(37頁1∼3行)は,「本件発明1を全体としてみても,作用効果に
ついては,引用発明1ないし3から当業者が予測できる範囲のものである」とする
が,本件発明の効果は,①300<A/At≦1300の構成により,最大内圧で
破裂する破裂板を使用しないで外気の温度差の影響を受けることなくガス発生剤の
時間内完全燃焼によりガス発生器の安定した作動を示すことができ(本件明細書
【0090】,【0091】等),また,②上記ガス発生器において,300<A
/At≦1300を正確に設定することができる(同【0012】,【0040】
等)というものであって,このような効果は,引用発明1ないし3から当業者が予
測できる範囲のものではなく,格別であり,顕著であって,本件審決の判断は誤っ
ている。
〔被告の主張〕
(1)最適化の手法
原告は,本件審決につき,「架空の発明」に基づいているとか,「正反対の技術
思想」を組み合わせているなどと非難するが,フィルタで「燃焼室を画成」しつつ
このフィルタを「燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えない」ものとすることができる
ものであって,「架空の発明」とか「正反対の技術思想」を組み合わせているもの
ではない。すなわち,一方で引用例1に従いフィルタで「燃焼室を画成」しつつ,
他方で引用例2に従い「燃焼ガスの圧力が縮径されたガス排出口2で決定され」る
ようにすべきと当業者が動機付けられるのは,引用例2において「さらに,冷却捕
集フィルタ16をニットワイヤでプレス成形により形成し,かつ圧力調整用空間1
7により圧力調整を図ったことから,フィルタ16の構造を従来よりも簡易にする
ことができて,ガス発生器の小型化を図ったり,製造コストの低減を図ることがで
きる」(【0024】)ところ,この点は,引用例1でも「従って,従来のクーラ
ントを備えるガス発生器においては,部品点数が増加し,またガス発生器の径が拡
大し,そのためにガス発生器の大型化,重量化を招く結果となっている」(【00
13】)ことに相通じるところがあるからである。
(2)相違点3に係る圧力損失値の最適化
ア原告は,引用発明1のクーラント・フィルタ407が高圧損なフィルタであ
り,本件発明1のフィルタは低圧損なフィルタであることから,フィルタの目的及
び使い方が全く正反対であって,引用発明1を見た当業者が,それとは正反対のフ
ィルタを使用しようとする動機付けが存在しないと主張するが,引用例2の「燃焼
ガスの圧力が縮径されたガス排出口2で決定され,燃焼室14と圧力調整用空間1
7との間では圧力がほぼ同等となり,フィルタ16から押し出されることが防止さ
れる」と同等の効果であるところの,本件発明1の「フィルタ手段が高圧領域に配
置されているため,ガス流速も遅く,ミストやスラグ粒子の捕集も効率的で,バッ
グに持ち込まれ,穴明き・ガス漏れの原因になることはない。捕集ミストやスラグ
粒子は重力で流れ落ち,フィルタ手段の目詰まりを起こすこともない」を得ようと
し,また,引用例2のフィルタ16も燃焼室14を直接画成していることにかんが
みて,この引用例2の技術思想を引用例1に組み合わせて本件発明1のような構成
とする動機付けが存在するものということができる。
イまた,原告は,引用例2に開示されたフィルタが「低圧損なフィルタ」であ
ったとしたなら,これをそのまま引用発明1に適用すると,引用発明の「燃焼室隔
壁部材を廃止することができ」るようなものではないから,引用発明1は成り立た
なくなると主張するが,引用例2の図1には,フィルタ16が燃焼室14を直接画
成することが示されており,原告の上記主張は,何らの事実に基づくものとはいえ
ない。
ウさらに,引用例1の【0231】には,追加の操作パラメータとして,ハウ
ジング内最大内圧を「専ら開口部総面積によって規制する」ことも記載されており,
その場合に「低圧損のフィルタ」に入れ替えることが引用例1において阻害されて
いたということもできない。
エさらに加えて,引用例1記載のフィルタの線径やかさ密度は本件発明1と同
一のものであることから,直接燃焼室を画成するフィルタとしつつ,本件発明1の
「20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10∼2000
mmHOの範囲内に設計する」ことに技術的困難性もない。2
オ原告は,本件発明1につき,「燃焼ガスの圧力」が「フィルタの圧力損失」
及び「A/At」の関数であることを前提として成立しているものであるから,一
方の要素であるフィルタのみを取り出し,異なる技術思想によるガス発生器に簡単
に転用できるようなものではないと主張するが,本件審決は,引用例2に記載され
たフィルタとすれば,それに応じてA/At値の最適化(相違点4)も必要になる
と認定した後,そのA/At値の最適化についても十分に検討しているものであっ
て,フィルタのみを個別に取り出しているわけではない。本件審決(35頁23,
24行)は,「燃焼圧力」=「フィルタ全体の圧力損失」+「開口部全体の圧力損
失」の関係式に照らせば,引用例2に記載されたフィルタ(燃焼ガスの圧力に影響
を与えないフィルタ)とした場合には,それに応じてA/At値の最適化(開口部
を高圧損とする)が必要にあるという当然のことを「二つの要因のうち,いずれか
一方の要因のみでは,燃焼ガスの圧力を適正化できないという理由はない」と表現
したものである。
(3)相違点4に係るA/At値の最適化
ア原告は,引用発明1のクーラント/フィルタ407を「10∼2000
mmHO」の圧力損失値となるような「低圧損なフィルタ」とすれば,燃焼時の圧力2
室を形成するようなフィルタでなくなってしまうと主張するが,引用発明1のクー
ラント/フィルタ407に相違点3について検討したように設計すること,すなわ
ち,引用発明1に引用例2のフィルタを適用することは,同時に,引用例2の【0
016】の「燃焼ガスの圧力が縮径されたガス排出口2で決定され」るということ
を意味するから,その際には,「A/Atでインフレータの燃焼圧力を制御するこ
とが技術常識」であることにかんがみて,「A/At値の最適化が再度必要」とな
るものということができ,原告の上記主張は理由がない。
イまた,原告は,引用発明1につき,「300より大きく1300以下」とい
う高い値の「A/At」とすることは引用発明1の技術思想に反するものとなり,
引用発明1自体が成立しないことになると主張するが,本件審決は,相違点3での
判断に従って,引用発明1のフィルタ手段として低圧損のものを採用した場合には,
それに応じてA/At値を最適化することは容易と認定・判断しているにすぎず,
むしろ,A/At値のみを個別に取り出して議論する原告の方がその前提からして
誤っているといわざるを得ず,原告の上記主張は失当である。
ウ原告は,本件発明1のA/At値が「300より大きく1300以下」とい
う範囲とする技術的意義として,外気温度の影響を少なくすることができる点にあ
ると主張し,本件明細書【0092】には「ガス発生器の作動時に於けるハウジン
グ最大圧力が,外気の温度差によって影響を受けることなく,安定した作動性能を
示すことのできるガス発生器となる」と記載されているが,その所望の時間内に完
全燃焼させ得ることや,外気温度差への効果を示す本件発明に係る出願書添付の図
7に関する実施例は,本件明細書【0089】ないし【0091】程度のもの,A
/At値については「A/At=502」の1点のみしかなく,そのような唯一の
実施例から,「300より大きく1300以下」の全範囲において上記図7に示さ
れると同等の効果を示すことができると知ることができないものであって,本件発
明1のA/At値につき,「300より大きく1300以下」の全範囲において外
気温度差に対する有利な効果が奏されるとはいうことができず,本件発明1の「3
00より大きく1300以下」との技術的意義が,外気温度の影響を少なくすると
いう作用にあるとの原告の主張は成立せず,本件審決(36頁15∼20行)が
「引用発明のA/Atの値について,前記[相違点3]についてで検討したクーラ
ント/フィルタ407の圧力損失や,周囲温度の変化等,ガス発生剤の燃焼速度や,
ガス発生器内の圧力に影響を与える種々の要素を考慮の上,最適化することは当業
者にとって容易であって,300より大きく1300以下という範囲の値に設計す
ること自体,格別の困難性はない。」としたことに誤りはなく,原告の上記主張は
採用できない。
(4)実験報告書(甲22)の認定
甲22のガス発生器は,実際の市販乗用車に搭載されていたものであるところ,
上側,下側双方の燃焼室のガス発生剤のいずれも,衝突を感知して適切に着火され,
燃焼するものであって,この上下燃焼室に装填されたガス発生剤の表面積の総和を
本件発明1の「A」と対比することも正当であって,本件審決(36頁21∼24
行)が,「甲22号証に添付された公正証書の謄本の写しを参酌すると,A/At
の値が409程度のガス発生器も本件特許の出願前より公知であったといえ,30
0より大きく1300以下の範囲という値自体,この技術分野において,格別な値
であるとはいえない。」としたことに誤りはない。
(5)相違点5の判断
上記のとおり,本件審決における引用例2の認定に誤りはなく,また,本件審決
が10∼2000mmHO及び300<A/At≦1300の最適化は容易としたこ2
とに誤りがないから,相違点5における判断にも誤りはない。
(6)本件発明1の作用効果
原告は,本件発明の効果として,①300<A/At≦1300の構成により,
最大内圧で破裂する破裂板を使用しないで外気の温度差の影響を受けることなくガ
ス発生剤の時間内完全燃焼によりガス発生器の安定した作動を示すことができ,②
上記ガス発生器において,300<A/At≦1300を正確に設定することがで
きると主張するが,上記①については,そもそも外気温の影響や所定時間内に燃焼
させ得るという点を示す本件出願書添付の図7に関する実施例は,唯一,A/At
=502の場合だけであるから,本件発明1の「300<A/At≦1300」の
全範囲において同様の作用効果が得られることが理解できるようなものではなく,
また,上記②についても,引用例1に引用例2の技術思想を適用すれば,フィルタ
の圧力損失はガス排出口の圧力損失よりも低くなり,その場合にはガス排出口の圧
力損失値の設定によりガスの燃焼を正確に制御できることは当業者が容易に予測で
きることであって,いずれの点についても,原告の主張に理由はない。
4取消事由4(本件発明2ないし11についての無効判断の誤り)について
〔原告の主張〕
本件発明1につき進歩性がないとする本件審決の判断は誤っているところ,本件
発明2は,本件発明1の「含窒素有機化合物」を「テトラゾール若しくはその金属
塩,トリアゾール若しくはその金属塩,トリアミノグアニジン硝酸塩,カルボヒド
ラジッド又はニトログアニジンである」に限定し,A/Atについて,本件発明1
の「300より大きく1300以下に規制する」を「450∼1300に規制す
る」に限定したものであるから,本件発明1についてと同様の理由によって進歩性
を有するものということができ,また,本件発明3ないし11は,直接あるいは間
接に少なくとも本件発明1を引用するものであるところ,本件発明1についてと同
様の理由によって進歩性を有するということができ,以上によると,本件発明2な
いし11を無効とした本件審決も誤っており,取り消されるべきである。
〔被告の主張〕
原告主張の取消事由1ないし3に理由がないところ,原告は,本件発明2ないし
11の発明特定事項に関する本件審決の判断について争うものではないから,本件
発明2ないし11についての本件審決の判断に誤りがあるということはできない。
第4当裁判所の判断
1取消事由1(阻害事由を看過した判断の誤り)について
本件発明1について(1)
前記第2の2の【請求項1】に記載の本件発明1の要旨及び本件明細書の発明の
詳細な説明によると,エアバッグは所望時間内でガス発生剤が完全燃焼して所定量
のガスを発生する必要があるが,従来,ハウジング内に充填されるガス発生剤につ
き,比較的線燃焼速度が高いアジド系ガス発生剤と線燃焼速度が低い非アジド系ガ
ス発生剤が知られていたが,線燃焼速度が低い非アジド系ガス発生剤では,所望の
時間内に燃焼させるために厚みに薄肉が要求され,長時間の自動車の振動に耐え,
かつ,工業的に安定した状態でペレット状のガス発生剤を製造することは事実上不
可能であり,また,ガス発生器のハウジング内圧は外気の温度によって異なること
から,外気の温度に依存することなく安定した作動性能を示すことのできるガス発
生器の提供が困難であったという問題を有していたところ(【0002】∼【00
04】【0006】),本件発明1は,ガス発生剤がハウジング内で燃焼する場合,
その燃焼性能が特にハウジング内の圧力に依存し,燃焼時のハウジング内圧(燃焼
内圧)が高いほど燃焼速度が増大することから,非アジド系ガス発生剤のような線
燃焼速度が低いガス発生剤を用いる場合において,特に,ガス発生剤の表面積総和
と,ガス発生器ハウジングにおけるガス排出口の開口面積総和Aとの比を,3At
00より大きく1300以下という範囲に設定してガス排出口の通気抵抗を高める
ことにより,ガス発生剤の燃焼時におけるハウジング内圧を適切な圧力に制御して
ガス発生剤を所望の時間内に完全燃焼させるようにし(【0001】【0005】
【0007】∼【0010】【0025】∼【0027】【0029】∼【003
4】),また,ガス発生器には,発生したガスの冷却とガス中の固形残渣の捕集を
行うために20℃の雰囲気下で1000リットル/の空気流量に対して10min
∼2000という圧力損失を有するクーラント・フィルタがガス排出口の手HO2
tA前に設けられ,ガス排出口の開口面積の総和Aとガス発生剤の表面積の総和
の比(300より大きく13000以下)を正確な値に設定するため,これに影響
を与えないようにクーラント・フィルタの圧力損失をガス排出口による圧力損失よ
りも低いものとし,これにより,ハウジング最大内圧(燃焼内圧)が外気の温度に
依存されることなく,安定した作動性能を発揮することのできるエアバッグ用ガス
発生器とする(【0011】∼【0013】【0035】【0038】∼【004
0】【0089】【0090】)との意義を有するものであると認めることができ
る。
引用発明1について(2)
ア引用例1には,特許請求の範囲として,次の記載がある。
【請求項53】複数個のガス排出口を有するハウジングと,
前記ハウジング内に配設される点火手段と,
前記ハウジング内に配設され前記点火手段により点火されて燃焼ガスを発生する固
形ガス発生剤と,
前記固形ガス発生剤を収容し前記燃焼ガスの冷却及び燃焼残渣の捕集を果たすクー
ラント/フィルタ手段とを含み,
前記各固形ガス発生剤の表面積の総和をA,前記各ガス排出口の開口面積の総和を
Atとするとき,AとAtとの比の値A/Atが,(a)運転席用エアバッグにお
いては,A/At=100∼300,(b)助手席用エアバッグにおいては,A/
At=80∼240,(c)側突用エアバッグにおいては,A/At=250∼3
600であるエアバッグ用ガス発生器。
【請求項55】前記固形ガス発生剤は,70kg/cmの圧力下において,5∼12
5mm/secの線燃焼速度を有する請求項53記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項57】前記固形ガス発生剤の充填量が20∼50gである請求項53記載
のエアバッグ用ガス発生器。
イ上記アの特許請求の範囲の記載及び引用例1の発明の詳細な説明によると,
従来のエアバッグ用ガス発生器で用いるクーラントは,その空隙構造が単純である
ため燃焼残渣を捕捉することに問題があり,別個にフィルタを必要とする上,圧力
損失が小さいために燃焼室画成部材も必要となり,このためにガス発生器内部にコ
ンバスタカップ等の別途の仕切りを設ける必要があるなど,構造が比較的複雑であ
るという問題があったこと(【0002】【0004】【0009】【0012】
∼【0014】),また,従来のガス発生剤は有毒なアジド系化合物を主成分とし
ており,環境に対する影響及び乗員の安全という観点から非アジド系ガス発生剤を
用いることが望まれていたが(【0003】【0004】),非アジド系ガス発生
剤は線燃焼速度が低く,望ましい燃焼時間を得ようとすると,材料ペレットの厚さ
を薄くする必要があるため,工業的に安定で長時間の自動車振動に耐えるようなペ
レットを製造することは実際上不可能であるという問題があったこと(【000
5】【0006】),このような問題を解決するため,引用発明1では,ガス発生
剤の表面積の総和Aと,ハウジングを構成するディフューザシェルのガス排出口の
開口面積の総和Atの比を運転席用エアバッグにおいて300以下の値とするなど
し,ハウジング内の最大内圧(燃焼内圧)を専ら開口部総面積によって規制すると
ともに,特に,クーラント・フィルタにつき常温で流量100l/min/cmに2
つき0.3×10∼1.5×10kg/cmの圧力損失を有するものとして,−2−22
燃焼ガスの冷却と燃焼残渣の捕集という目的を達成し,またこのクーラント・フィ
ルタにより,別途の仕切りを設けることなく燃焼室を画成する構成とするものであ
って(【0016】【0021】【0035】【0042】【0100】∼【01
03】【0105】【0107】【0113】【0114】【0136】【013
7】【0182】【0220】【0223】【0226】【0236】),このよ
うな構成とすることにより,非アジド系ガス発生剤につき,燃焼室内で燃焼ガスの
圧力をガス発生手段の正常な燃焼にとって望ましい値に維持し,また,ガス発生器
のディフューザシェルを比較的簡単な構造としたもの(【0025】【0048】
∼【0050】【0136】【0137】【0209】【0220】【0232】
【0234】【0235】【0237】【0238】)であると認めることができ
る。
(3)阻害事由の有無について
以上によると,本件発明1も,引用発明1も,エアバッグ用ガス発生器及びエア
バッグ装置に関するものであるところ,そのいずれも,ガス発生剤の燃焼によって
発生した燃焼ガスは,クーラント・フィルタを通過して冷却,燃焼残渣の捕集を受
けた後,ハウジングのガス排出口から排出されてエアバッグに送られるものである
が,クーラント・フィルタも,開口総面積にかかわるガス排出口も,所定の圧力損
失を有するから,ガス発生器の燃焼室の燃焼内圧は,その他の箇所で生じる圧力損
失分を除けば,両者の和によって定まることになり,ハウジング燃焼室の燃焼内圧
は,クーラント・フィルタの圧力損失と開口総面積による圧力損失とによって制御
されることになる。
そして,引用発明1は,ハウジング内の最大内圧を専らガス排出口による開口総
面積によって規制するものであり,クーラント・フィルタは,燃焼残渣の捕集が可
能で,別途の仕切りを設けることなく燃焼室を画成できるように設定された圧力損
失を有するものであるが,一方,本件発明1においても,クーラント・フィルタは
燃焼残渣が捕集できる程度の圧力損失とされ,ハウジング最大内圧(燃焼内圧)は
開口総面積に関するパラメータによって規定され,コンバスタカップ等の別途の仕
切部材も設けられていないものであるから,両者の規定された値は異なるものの,
圧力損失におけるハウジングのガス排出口による開口総面積とクーラント・フィル
タの存在という相関的関係があることにつき相違はなく,両者は基本的技術思想を
共通にするものということができる。
原告は,本件発明1は燃焼内圧をコントロールする機能を有しない圧力損失の小
さいクーラント・フィルタを用いるのに対し,引用例1のクーラント・フィルタは
燃焼ガスの圧力を正常な燃焼にとって望ましい値に維持するための圧力損失の大き
なものであって,両者の技術的思想は全く異なるから,引用例1を本件発明1の引
用例とするには明白な阻害事由が内在すると主張するが,上記(1)のとおり,本件
発明1のフィルタ手段の圧力損失値は,ガス排出口の圧力損失値よりも低い(請求
項1)ものであるが,そのクーラント・フィルタは発生ガス中の燃焼残渣を捕集で
きるようにガスの流れに対してある程度の抵抗値を有する(【0039】)もので
あるところ,一方,引用例1のクーラント・フィルタも,燃焼残渣を捕集する圧力
損失を有し,その圧力損失にガス排出口の圧力損失が加わって燃焼内圧を望ましい
値に維持されるものであって,しかも,引用例1ではハウジング最大内圧を専らガ
ス排出口により規制するとされているものであるから,両者の技術思想が異なると
はいえず,また,本件発明1でもコンバスタカップ等を用いることなく,所定の圧
力損失を有するクーラント・フィルタがガス燃焼剤を内部に収容しているものであ
るから,引用例1で記載される「画成」の構成を備えていないとすることもできず,
原告の上記主張は採用することができない。
また,原告は,引用例1に開示されたA/At値は100∼300であり,引用
例1は,本件発明1におけるA/Atを300より大きく1300以下に規制する
構成とする利用を否定するものであって,本件発明1とは技術思想を異にするもの
であると主張するが,エアバッグ用のガス発生器は,自動車の衝突時に乗員を保護
するためのものであり,所定時間でガス発生剤が燃焼しガスを発生する必要があっ
て,燃焼時間は燃焼内圧によって変化するものであるところ,燃焼内圧は,クーラ
ント・フィルタによる圧力損失とA/Atとに応じて定まるガス排出口の開口総面
積による圧力損失により制御されるものであるから,この望ましい燃焼内圧とする
ためには,クーラント・フィルタの圧力損失が変更されればA/Atの値も変更さ
れることになるものであって,引用例1において,設定されたクーラント・フィル
タの圧力損失との関係でA/Atが100∼300とされているとしても,A/A
tの値を300より大きくすること自体が技術的に相容れないものとして否定され
ているといえるようなものではなく,原告の上記主張も採用できない。
(4)小括
したがって,原告の主張に係る取消事由1は,理由がない。
2取消事由2(引用例2についての認定・判断の誤り)について
(1)引用発明2について
ア引用例2には,特許請求の範囲として,次の記載がある。
【請求項1】ガスを冷却するとともに,ガス中の固体残渣を捕集する冷却捕集フィ
ルタであって,
ニットワイヤを所定形状にプレス成形したことを特徴とする冷却捕集フィルタ。
【請求項2】ハウジング内に点火手段を有する点火室と,前記点火手段の点火によ
り燃焼してガスを発生するガス発生剤が充填された燃焼室と,前記ガスを冷却する
と同時にガス中の固体残渣を捕集する冷却捕集フィルタと,冷却捕集されたガスを
排出するガス排出口とを備えたガス発生器であって,
前記冷却捕集フィルタがニットワイヤを所定形状にプレス成形したものであるこ
とを特徴とするガス発生器。
イ上記アの特許請求の範囲の記載及び引用例2の発明の詳細な説明によると,
従来のエアバッグに用いられるガス発生器では,冷却捕集フィルタとして2種類の
フィルタが相当厚く形成されているため,燃焼ガスの冷却効果が大きくなり過ぎて
圧力が低くなってしまうため,規定の圧力を得るためにガス発生剤の量を増加させ
る必要があり,その結果,ガス発生器の圧力上昇や排出される固体ナトリウムの増
加という問題があったところ(【0002】【0006】),引用発明2は,この
問題を解決するため,ハウジング1の一端開口にキャップ4が固定され,他端は縮
径されてガス排出口2が形成されており,ハウジング内には,多数のガス流出孔1
1を有し強度のある支持板12が係止されてキャップ4との間に燃焼室14を,ガ
ス排出口2との間には圧力調整用空間17を形成した構成とされ,燃焼室14のキ
ャップ4側にはガス発生剤15が,支持板側12にはニットワイヤの金網が巻回さ
れて円柱状にプレス成形された冷却捕集フィルタ16が収容されており(【000
9】【0010】),点火薬9によりガス発生剤15が燃焼されると,燃焼ガスの
圧力が縮径されたガス排出口2で決定され,燃焼室14と圧力調整用空間17との
間で圧力がほぼ同等となり,フィルタ16を通過するガスの流出速度が抑制されて
固体残渣がガス圧によりフィルタ16から押し出されることが防止され,これによ
って固体の燃焼残渣を通過させることなく確実にガスを冷却,濾過することができ
るという作用を有するものである(【0001】【0008】【0011】∼【0
023】【0026】【0027】)と認めることができる。そして,燃焼ガスの
圧力は,縮径された排出口で決定され,燃焼室14と圧力調整空間17との間の圧
力がほぼ同等となるとされていること(【0016】)からすると,ハウジング1
内はガスが充満して高圧となっており,燃焼室と圧力調整空間を隔てるフィルタも
高圧下に置かれ,引用発明2では,フィルタを通過するガスが高圧で圧縮された状
態にあるためにフィルタを通過するガスの流速は相当遅くなり,その結果としてフ
ィルタによる残渣の十分な捕捉が可能となっているものということができる。
なお,本件審決は,「フィルタ16は燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないもの
といえる。そうすると,引用例2には,燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないフィ
ルタ16を用いることにより,フィルタ16を通過するガスの流出速度を抑制し,
固体残渣が押し出されることを防止するという技術思想が開示されているといえ
る。」と説示するところ,上記によると,引用例2には,フィルタ16につき,圧
力損失がどの程度のものであるかについては開示がないために具体的な圧力損失値
は不明であるといわざるを得ないが,燃焼残渣を捕捉するための十分な圧力損失を
有しているはずではあるといえるものの,燃焼室と圧力調整空間の圧力はほぼ同等
とされ,ハウジング1内はガスが充満して高圧となっており,燃焼室と圧力調整空
間を隔てるフィルタも高圧下に置かれ,フィルタを通過するガスが高圧で圧縮され
た状態にあるためにフィルタを通過するガスの流速は相当遅くなり,その結果とし
てフィルタによる残渣の十分な捕捉が可能となっているものということができるの
であるから,結果として,このフィルタ16がガス発生器内において燃焼ガスの圧
力に特段の影響を及ぼすものではないものということができ,本件審決の上記説示
もその趣旨をいうものとして相当であるということができる。
(2)原告の主張について
原告は,引用例2には,その開示されているフィルタ16が「燃焼ガスの圧力に
ほぼ影響を与えないフィルタ」であるとは記載されておらず,また,フィルタ16
はアジド系ガス発生剤の使用を前提としたフィルタであることなどからすると圧力
損失の高いフィルタ(高圧損なフィルタ)であって,「フィルタ16は燃焼ガスの
圧力にほぼ影響を与えないもの」であるとした本件審決には誤りがあると主張する
が,上記のとおり,引用例2におけるフィルタが高圧損であるか否かにかかわらず,
引用例2では,「燃焼ガスの圧力は縮径された排出口で決定され,燃焼室と圧力調
整空間の圧力はほぼ同等」とされ,その結果として,フィルタ16がガス発生器内
において燃焼ガスの圧力に特段の影響を及ぼさないものとなっているのであるから,
その意味において,引用例2のフィルタがガス発生器内において燃焼ガスの圧力に
特段の影響を及ぼすものではないとした本件審決の認定・判断に誤りはなく,原告
の上記主張は採用することができない。
また,原告は,引用例2において,フィルタ16収容部分も燃焼室14に含まれ
るにもかかわらず,本件審決は,燃焼室14がガス発生剤収容部分のみであると決
め付けたと主張するところ,引用例2の【0020】において「この冷却捕集フィ
ルタ16の体積は,燃焼室14全体の体積の約33%を占め」ると記載されており,
フィルタの出口(支持板12との境界部分)まで燃焼室14としていると解される
が,同【0014】において「この支持板12のガス流出孔12の開口面積は,支
持板12の強度に応じて変形を防ぐことができる範囲内で大きい方がガスの流通性
が良く望ましい。」と記載されており,支持板がガス圧に影響を与えることは想定
されておらず,そうすると,圧力調整用空間17とこれに接する支持板の反対側の
燃焼室側の圧力がほぼ同等であることは当然であって,そのようなことをあえて同
【0016】で記載したとは考えられず,同段落における「フィルタ16を通過す
るガスの流質速度が抑制され」るとの記載も併せ考慮すると,同段落の記載は,
「フィルタ16を含む燃焼室14の圧力」と「圧力調整用空間17の圧力」とがほ
ぼ同等であることをいうものと解することができ,フィルタが燃焼ガスの圧力にほ
とんど影響を与えないものということができるのであって,原告の上記主張も採用
することができない。
さらに,原告は,引用例2の【0016】は圧力調整用空間17について説明し
ている部分であるから,同段落における「燃焼ガスの圧力」における「燃焼ガス」
とは圧力調整用空間17に存在する燃焼で発生したガスのことであるにもかかわら
ず,本件審決がこの「燃焼ガスの圧力」を燃焼部(ガス発生剤収容部)の圧力と誤
認していると主張するが,同段落では,この「燃焼ガスの圧力」との語に続き,
「燃焼室14と圧力調整用空間17との間では圧力がほぼ同等となり」と記載され
ているものであることからすると,この「燃焼ガスの圧力」については,圧力調整
用空間17と燃焼室14の双方の圧力について説明しているものと解することがで
き,原告の上記主張は採用することができない。
さらにまた,原告は,燃焼ガスを高圧に制御するための開口部面積は,燃焼部の
断面性よりもはるかに小さい面積でなければならないところ,引用例2の図1や3
をみると,高圧ガスを制御できるほどにまで縮小された径であると読むことができ
ないこと,ガス排出口2にはある程度の太さを有するガス導入管が取り付けられる
ため,ガス排出口2は,それに合わせたある程度の太さを有する径である必要があ
ることから,ハウジング1内全体の燃焼ガスの圧力を決定できるほどガス排出口2
が縮径されていると考えることはできないなどと主張するが,引用例2添付の図面
は発明の内容を説明するためのものであるものの,実際の縮尺に合わせて記載され
ているものとは限られないこと,取り付けられるガス導入管についてもいろいろの
態様のものがあることが考えられ,ガス排出口の大きさを基にする原告の主張も採
用することができない。
(3)小括
したがって,原告の主張に係る取消事由2は,理由がない。
3取消事由3(最適化の手法等による容易想到性の判断の誤り)について
(1)最適化の手法等
ア前記1(2)のとおり,引用発明1は,エアバッグ用ガス発生器及びエアバッ
グ装置において,クーラント・フィルタによって燃焼ガスの冷却と燃焼残渣の捕集
を有するものであるところ,一方,前記2(1)のとおり,引用発明2は,燃焼ガス
の圧力を縮径されたガス排出口で決定することにより,ハウジング内を高圧として,
フィルタを通過するガスの流出速度を抑制し,その結果,フィルタによって確実に
ガスを冷却,燃料残渣を捕集することができるという作用を有するものであって,
引用例2の構成を引用発明1に適用する動機付けが存在するということができる。
イところで,前記1(3)のとおり,ガス発生器の燃焼室の燃焼内圧は,クーラ
ント・フィルタの圧力損失と開口総面積による圧力損失との和によって制御される
ことになるのであるから,ガス燃焼内圧を所望の値に維持するためには,一方の値
が変更された場合には,他方の値も必然的に変更されることになるところ,前記1
(2)のとおり,引用発明1は,ハウジング内の燃焼内圧を専ら開口部総面積によっ
て規制するものであり,また,クーラント・フィルタは燃焼残渣の捕集という目的
を達成し,燃焼室を画成するものであるから,引用発明1において,燃焼室の画成
機能を維持しつつ,燃焼残渣の捕集機能を高めようとして,クーラント・フィルタ
及び開口総面積の各圧力損失を種々調整することは当業者として当然に想定し得る
ものであるということができる。
ウまた,上記のとおり,ガス発生器の燃焼室の燃焼内圧は,クーラント・フィ
ルタの圧力損失と開口総面積による圧力損失との和によって制御されることになる
のであるから,クーラント・フィルタと開口総面積による各圧力損失の変更は関連
して同時に行われるものとなることからすると,引用例2のガス発生器における燃
焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないフィルタにより燃料残渣の捕集を十分に行おう
とする技術思想を引用発明1に適用しようとする際,クーラント・フィルタの圧力
損失を調整・変更することに連動し,開口総面積による圧力損失も調整・変更され
ることになる。
エそうすると,引用例2の構成を引用発明1に適用しようとする際,当業者の
想定事項として「フィルタの圧力損失値の最適化」としての調整・変更を行い,こ
れに連動して同時に「開口総面積による圧力損失値(A/At値)の最適化」とし
ての調整・変更が行われることも当然に考慮されることであって,これにつき,関
連しない別々の項目について2度にわたる最適化がされたというようなものではな
い。
オ以上によると,燃焼残渣の捕集機能を高めるために,ガス発生器内における
燃焼内圧にほぼ影響を与えない引用例2のフィルタに関する構成を引用発明1のク
ーラント・フィルタに適用し,そのクーラント・フィルタの圧力損失を燃焼室の画
成機能を維持する範囲で小さいものとし,これと同時にガス排出口の開口総面積を
小さくすることによりガス排出口の圧力損失を大きくして燃焼内圧を維持するよう
に試みることは当業者にとって容易なことということができる。
(2)本件発明1の作用効果等について
原告は,本件発明の効果は,①300<A/At≦1300の構成により,最大
内圧で破裂する破裂板を使用しないで外気の温度差の影響を受けることなくガス発
生剤の時間内完全燃焼によりガス発生器の安定した作動を示すことができ,また,
②ガス発生器において,300<A/At≦1300を正確に設定することができ
るというものであって,このような効果は,格別であって顕著であるなどと主張す
る。しかしながら,外気の温度差の影響を受けることなく燃焼速度を適切に保つと
いう点につき,本件明細書の【0029】には,「ガス発生剤がハウジング内で燃
焼する場合,その燃焼性能はガス発生剤が置かれた環境に依存する。特に圧力指数
(r=a・Pのnにあたる指数,rは燃焼速度,aはガス発生剤の初期温度にbb
n
依存する定数,Pは内圧を示す)はガス発生剤の燃焼速度に影響を与える因子で,
この値が大きい場合,燃焼時の周辺圧力(ハウジング内圧)が高いほど燃焼速度が
増大する。…非アジド系ガス発生剤では圧力指数が0.4∼0.7とアジド系ガス
発生剤より高いため,燃焼中のハウジング内圧力変化(周辺圧力)の影響を受けて,
燃焼速度の値が大幅に変わり得る。」と記載されており,これによれば,ガス発生
器内の燃焼内圧を適正に制御して燃焼速度を適正に保つことができるとされている
ところ,この燃焼内圧については,A/At値とクーラント・フィルタの圧力損失
によって定まるものであるから,これは,クーラント・フィルタによる圧力制御で
燃焼内圧を所望の値に調整しようとする引用発明1についても認められる効果とい
あって,本件発明1につき格別で顕著な効果があるということができず,また,上
記のとおり,ガス発生器の燃焼室の燃焼内圧がクーラント・フィルタと開口総面積
による各圧力損失の和によって定まるものであって,相違点3ないし5に係る本件
発明1のクーラント・フィルタの圧力損失値とA/At値についても,当業者にお
いて,クーラント・フィルタが燃焼室の画成機能を有する範囲で,両者を適宜調整
することによって設定することができるものと解されることや,本件明細書におい
ては,その実施例とされるものが1つ記載されているのみであることからして,各
別の意義のある数値範囲を示したものとはいい難いことからすると,本件発明1に
つき格別で顕著な効果があるということはできず,原告の上記主張は採用すること
ができない。
(3)小括
したがって,原告の主張に係る取消事由3は,理由がない。
4取消事由4(本件発明2ないし11についての無効判断の誤り)について
上記1ないし3のとおり,本件発明1についての原告の主張に係る取消事由1な
いし3に理由がないことから,取消事由1ないし3と同様の理由によって本件発明
2ないし11に係る特許を無効とした本件審決は取り消されるべきであるとする原
告の主張に係る取消事由4も,理由がないことになる。
5結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求
は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官滝澤孝臣
裁判官本多知成
裁判官浅井憲

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛