弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由について。
 原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の確定したところによれ
ば、上告人の被用者で、漁船第五幸栄丸の船長兼漁撈長である訴外Dは、秋田県沖
合の海上で右漁船によつて操業中、自船の漁網を紛失したが、その補充の用にあて
てさらに操業を継続するため、昭和三六年五月三日、部下の船員の協力のもとに、
付近海域で操業中の被上告人所有の第八万盛丸の定置流網の一部八〇反を切り取り
窃取したというのである。
 ところで、船舶法三五条によれば、航海の用に供する船舶については、商行為を
目的としない場合でも、商法第四編の規定が準用され、海上を航行する漁船もその
例外ではないのであるから、このような漁船の船長その他の船員が職務を行なうに
あたり他人に損害を加えた場合における船舶所有者の責任についても、商法六九〇
条が準用されるものと解される。そして、同条は、船長その他の船員の職務の特殊
性に鑑み、民法七一五条に対する特則を定めたものであつて、船舶所有者の責任の
範囲について有限責任を規定する反面で、その帰責事由については船舶所有者の過
失の有無を問わないこととしたものと解すべきである。すなわち、船長その他の船
員がその職務を行なうにあたり故意または過失により他人に加えた損害については、
船舶所有者は、当該船員の選任および監督につき相当の注意を怠つたか否かを問わ
ず、その賠償の責に任ずべきものであつて、民法七一五条の規定はこの場合に適用
がないものと解するのが相当である(大審院大正元年(オ)第一六一号同二年六月
二八日判決・民録一九輯五六〇頁、同昭和三年(オ)第八二六号同年一〇月二三日
判決・民集七巻九三八頁参照)。したがつて、論旨のうち、選任および監督につい
ての無過失をいう部分は、その前提を欠き、主張自体理由がないものというべきで
ある。
 そこで、さらに本件の事実関係が商法六九〇条に該当するか否かを検討するに、
本件漁船を航行させかつ漁撈に従事することがDの本来の職務行為に属することは
明らかであるところ、本件漁網窃取行為は、前示のように、漁撈を継続する目的を
もつてなされたものであつて、同人の職務の執行行為を契機とし、これと密接な関
連を有すると認められる行為であり、漁撈の継続による利益は上告人に帰すべきも
のということができるのであるから、このような事実関係のもとにおいては、右窃
取行為により被上告人の被つた損害は、Dが職務を行なうにあたり加えた損害に該
当するものと解すべきである。
 したがつて、Dの本件不法行為により被上告人の被つた損害につき、上告人は、
商法六九〇条の準用により、船舶所有者として、その責に任ずべきものであるから、
上告人の被上告人に対する損害賠償責任を認めた原判決の結論は、正当として是認
することができる。結局、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができ
ない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    小   川   信   雄

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