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平成16年9月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成16年(ハ)第2054号 清算金請求事件
口頭弁論終結日 平成16年9月6日
判決
主文
1 被告は,原告に対し,金80万0100円及びこれに対する平成14年12月3
日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請 求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は,外国語の指導等を業とする被告との間で,平成14年7月27日,外国
語指導契約を締結し,同月30日に代金合計金135万5025円を納付した原告
が,平成14年11月25日及び同年12月2日の2度にわたり中途解約の申入れ,
あるいはクーリング・オフの意思表示をし,残金80万0100円及びこれに対する解
約した日の翌日である平成14年12月3日から支払済みまで年6パーセントの返
還をもとめたが,被告は,原告との間には,平成14年11月27日に新たな契約を
締結し,清算すべき残代金も新契約に充当しているし,新契約の約款には中途解
約できないことと定められていること及び上記新契約は特定継続的役務提供には
該当しないからクーリング・オフはできない旨主張して支払を拒絶している事案で
ある。
第3 争いのない事実等(証拠により容易に認められる事実を含む。)
1 被告は,外国語の指導等を業とする会社である。
2 原・被告間の平成14年7月27日の契約(以下「本件原契約」とい う。)の内容
は,TOEFL/IELTSコース基礎科,同入門科及びプライベートコースの3コースから
成っており,契約期間6か月,受講代金は合計135万5025円である。
原告は,平成14年7月30日上記受講代金全額を銀行振込みの方法で支払っ
た。
3 平成14年11月25日の解約申入れに至る経緯
原告は,同年9月9日から上記外国語の指導の受講を開始したが,その指導内
容は,原告にとっては,当初の目的であったTOEFL受験対策の契約目的を充足し
ない内容であったため,原告は,平成14年11月25日付の解約通知文書を内容
証明郵便で送った(甲1)。
4その後の経緯
平成14年11月27日,当時の被告代表者A(以下「A」という。)からの連絡に基
づいて原告が被告事務所を訪問し,話合った。その後,被告から新たなプライベー
トレッスンの日程を連絡すると共に語学指導用の新たな英語教材が送付された
(甲2)が,原告としては内容が不十分と思われたことから,平成14年12月2日,
被告に対して改めて解約の申入れをし,英語教材もそのまま返送した(甲3)。  
これに対し,Aは原告に対し,解約に伴う清算手続きをする旨12月 2日の電子
メールで知らせ(甲4),さらに同月3日には必要書類を記入してもらい精算するか
ら印鑑も持参されたい旨知らせてきた(甲5,6)。
第4 争 点
1 本件原契約の中途解約の可否及び清算金の額
(1)被告の主張
被告は,平成14年11月27日原告との間で新たに留学手続きの請負・代行
と留学のための数学対策の契約を締結した(以下「本件新契 約」という。)。本
件原契約の清算金75万7694円は本件新契約に充当された。
本件新契約は,その内容から,特定継続的役務提供には当たらず,かつ,本
件新契約約款には中途解約できない旨の記載があり,原告もこれを認識してい
るもので,解約できないものである。
(2)原告の主張
本件新契約なるものは,受講内容の変更で本件原契約を続行することにした
だけのものである。本件原契約は,外国語の指導を内容とする契約であり,2か
月を超える期間にわたり,かつ,5万円を超える金額の契約であるから,特定商
取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)41条に定める特定継続的役
務提供契約に該当し,平成14年11月25日及び同年12月2日の2度にわたり
中途解約の通知をした。そして,清算金は80万0100円である。
仮に,本件新契約が本件原契約とは別個の新契約であったとしても,その新
契約の内容もまた語学指導を中心とした特定継続的役務提供契約に該当する
ものである。
2 本件原契約及び本件新契約に対しクーリングオフは適用されるか。
(1)原告の主張
本件原契約は,特定商取引法の特定継続的役務提供のうち「語学の教授」
に該当するもので,法定記載事項を具備した契約書面を交付した日から8日
間のクーリング・オフが行使できる。
被告は,本件原契約締結の際,契約書面を作成・交付しておらず,原告が
2度目に解約を申し出た後である平成14年12月3日に至り初めて契約書面
を交付したものであり,原告が同年11月25日に解約を申し出た行為は,ク
ーリング・オフの行使と評価される。そうすると,何ら負担のない無条件解約
として代金全額返還を求めることができるが,これまでの経緯に鑑み請求の
趣旨記載の金額の限度を維持する。また,平成14年11月27日の面談によ
り,本件原契約の内容を変更して契約を続行することとした合意は,当初の
語学指導契約の指導内容をプライベートレッスンを中心として英語による留
学手続きの指導や英語による数学指導などを追加したものであり,これも語
学指導に当たる。これについても特定商取引法に基づくクーリング・オフ及び
中途解約権が保障されなければならないが,上記11月27日の時点で変更
後の契約書面は交付しておらず,作成したのが12月3日で,交付したのが
平成15年1月9日であるから,原告が平成14年12月2日に再度解約を申し
出た行為もクーリング・オフの行使と評価できるものである。
(2)被告の主張
上記1の(1)に同じ。ただし,中途解約の点は除く。 
第5 判 断
1争点(1)について
平成14年11月27日の原・被告間の本件新契約について,A は,留学準備と
数学に対する指導が中心であると述べているが,原告としては,あくまでもテスト
対策と英語力の向上を目的としてしていたことに変わりはないし,英語のレッスン
があと1か月だけであるということであれば変更契約をしなかったものである(原告
本人)。そもそも原告は,本件原契約についてテスト対策と英語力の向上という点
で不安を抱き,同月25日に本件原契約の解約申入れをしているものであるが,A
 の要請に応じて事務所で話し合った結果,「A 氏は,私に謝罪も申したうえで,
講義内容を一新,担任講師も変更し,市販教材を使用した講師は厳重に注意して
講義内容の質の向上を徹底すること,更には留学手続きの指導を含め全面フォロ
ーを確約し,大学院留学のためのTOEFLの指導の徹底,入学に必要な数学関係
の英語の指導も追加して行うことをも約束するので契約を継続してほしい旨懇願し
ました」(甲13)ということ,その後,原告は,12月2日に変更契約の解約を申し入
れ(甲3),これに対し,被告は,「必要書類をご記入頂き,ご清算させて頂きますの
で,一度,お茶ノ水校へお越し下さい。」(甲4)と告げ,さらに,翌3日,「ご印鑑を
持参下さい。」(甲6)と通知していること,被告が,11月27日の面談の際作成交
付したという新規契約依頼書(乙1)には,「無理を承知でお願いしていますが,是
非ともお願い致します。・・・上記新契約への充当及び私の無料レッスンの要望を
強くお願いします。」とあること,12月3日の面談の際,原告は,解約清算しますか
らということで清算手続のために被告事務所に行き,すべて清算のため社内手続
に必要であるからとA に言われて応じたこと(原告本人),及び本件原契約及び
本件新契約の各コピーが原告のもとに郵送されてきたのは翌年1月9日になって
からであること(甲13)等の経緯がある。これらの事実からみて本件新契約は口頭
で成立しているとしても,その内容は本件原契約の受講内容を中心に変更を加え
たもので,本件原契約の一部変更契約というべきものであり,本件原契約とは全く
異なった請負契約類似の契約とみることは困難である。
上記認定のもとに検討するならば,本件新契約は本件原契約と本質を異にする
ものではなく,やはり語学指導を中心とした特定商取引の特定継続的役務提供契
約に該当するものであると言わざるを得ない。さらに,本件新契約の約款として中
途解約できない旨の記載については,特定継続的役務提供者の解約権を不当に
害する不利なものであるから,特定商取引法49条7項の規定に反する無効なもの
と解せられる。
よって,上記変更契約についても将来に向かっての中途解約は有効で,平成1
4年12月2日に中途解約されたものであり,その清算金の額は,留学準備・手続
きBコースの35万3325円及びQUANTITATIVEコースの44万6775円の合計
金80万0100円であるとみるのが相当である。
2 争点(2)について
さらに,本件原契約の契約書は当初作成されておらず,特定商取引法の適用を
受ける同契約が法定期間の8日間という期間に縛られずクーリング・オフが可能で
あるところ,平成14年12月3日に初めて作成され,書面の交付は翌年1月9日で
あること(原告本人),平成14年11月25日の解約申入れをしていること及び重ね
て平成14年12月2日に原告が解約を申し出ていることのいずれもがクーリング・
オフの意思表示と評価できることから,本件原契約は無条件解約されるものであ
る。ただし,原告は,返還額について,この場合でも請求の趣旨記載の限度での
請求に留めているので,その限度においてすべて認められる。その余の主張につ
いては判断するまでもない。
3 以上,いずれの考え方に立っても本件原契約及びその変更契約は解除されたも
のであって,被告は原告に受講料の返還義務があり,原告の請求は理由がある
から,主文のとおり判決する。
東京簡易裁判所民事第4室
裁 判 官  野  中  利  次

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