弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主    文
被告人Aを懲役1年6月に,被告人Bを懲役1年に処する。
この裁判確定の日から,被告人Aに対し5年間,被告人Bに対し4年間,それぞれ
その刑の執行を猶予する。
(罪となるべき事実)
被告人Aは,平成13年7月29日施行の参議院議員通常選挙に際し,D党が参
議院名簿登載者として届け出る予定にしていた者,被告人B及び分離前の相被告人
Cは,被告人Aの選挙運動者であるが,
第1 被告人Aは,自己の当選を得る目的で,いまだ同党から参議院名簿への届
出のない同年6月13日ころ,東京都千代田区a町b丁目c番地d号e研究所内に
おいて,前記Cに対し,自己のため,法定外選挙文書を頒布する等の選挙運動をす
ることの報酬等として,現金59万円を供与するとともに,参議院名簿の届出前の
選挙運動をし
第2 被告人A及びBは共謀の上,被告人Aの当選を得る目的で,いまだ同党か
ら参議院名簿の届出のない同年7月4日,前記Cに対し,被告人Aのため,前記第
1事実と同様の報酬等として,同都中央区f町g丁目h番i号E銀行F支店に開設
された上記C管理に係るG会代表C名義の普通預金口座に現金100万円を振込送
金して供与するとともに,参議院名簿の届出前の選挙運動をした。
(法令の適用)
被告人Aについて
1 罰  条
   判示第1の所為のうち
    利益供与の点            公職選挙法221条1項1号
    名簿届出前の選挙運動の点公職選挙法239条1項1号,1
                      29条
   判示第2の所為のうち
    利益供与の点            刑法60条,公職選挙法221条
                      1項1号
    名簿届出前の選挙運動の点刑法60条,公職選挙法239条
                      1項1号,129条
2 科刑上一罪の処理
   判示第1,第2につき         いずれも刑法54条1項前段, 
                      10条(いずれも一罪として重い
                      利益供与の罪の刑で処断)
3 刑種の選択               いずれも懲役刑を選択
4 併合罪の処理              刑法45条前段,47条本文, 
                      10条(犯情の重い判示第2の罪
                      の刑に法定の加重)
5 刑の執行猶予              刑法25条1項
被告人Bについて
1 罰  条
   判示第2の所為のうち
    利益供与の点            刑法60条,公職選挙法221条
                      1項1号
    名簿届出前の選挙運動の点刑法60条,公職選挙法239条
                      1項1号,129条
2 科刑上一罪の処理
                      刑法54条1項前段,10条(一
                      罪として重い利益供与の罪の刑で
                      処断)
3 刑種の選択               懲役刑を選択
4 刑の執行猶予              刑法25条1項
(量刑の理由)
 本件は,平成13年7月29日施行の参議院議員通常選挙に際し,D党が参議院
比例代表選出議員選挙の参議院名簿登載者として届け出ることを予定していた被告
人Aが単独又は被告人Bと共謀の上,2回にわたり,法定外選挙運動文書を頒布す
る等の選挙運動をする報酬等として,選挙運動者であるCに対し合計159万円を
供与するとともに,参議院名簿の届出前の選挙運動をしたという,被告人両名の公
職選挙法違反の事案であるが,これらの犯行が民主主義の根幹をなす国政選挙の公
正を害し,金権政治等の悪弊を助長させ,国民の国政選挙への信頼を害することは
明らかであって,悪質である。
 被告人Aは,国会議員秘書,衆議院選挙の候補者として,これまでにも選挙運動
を行った経験もあり,かつ,今回当選を果たせば,自ら国政を担っていく立場にあ
りながら,国政選挙の公正に十分留意せず,むしろ公正を著しく害する本件各犯行
に及んだものであり,自らの選挙運動を積極的かつ精力的に行っていたCら選挙運
動者の好意を無視しづらい面があったとしても,その選挙運動を中止させることも
できるのも,被告人Aであったことからして,厳しい非難を免れない。また,2回
にわたりCに供与した金額は合計159万円という高額である。そのうえ,被告人
Aは被告人Bをも本件犯行に引き入れていることをも併せ考慮すると,その刑事責
任は重い。
 被告人Bは現職の市議会議員の職にあり,市民のため,地方政治を担っていた者
でありながら,判示第2の犯行に及んだのであり,その犯行は,国政選挙の公正を
害することはもちろん,地方政治への信頼すら損ないかねないものといえ,Cから
当該文書の原稿を見せられ,手直しを求められたり,被告人Aから100万円をC
宛に振り込むよう依頼された際等に違反文書でないかなどの疑問を持っていたので
あるから,C,被告人Aに検討,再考を促すなど犯行を思いとどまらせることは可
能であったのであり,同被告人が被告人Aに自らの選挙の際に協力を受けており,
私的な面での債務整理の手助けをしてもらうなど世話になっていたことから,その
依頼を断りづらい状況にあったとはいえ,被告人Bもまた非難を免れない。しか
も,判示第2の供与金
額は100万円と高額である。以上からすると,被告人Bの責任も軽視できない。
 他方,被告人両名には以下の有利な情状がある。
 被告人Aについては,本件各犯行を反省していること,前科はなく,本件ではじ
めて身柄の拘束を受けたこと,義兄が更生に協力していく旨述べていること,これ
まで僧侶,幼稚園園長等として地域に貢献してきたこと,本件を契機に学校法人の
理事長・園長等の職を辞していることなど酌むべき事情も存する。
 被告人Bについては,本件犯行を反省していること,前科はなく,本件ではじめ
て身柄の拘束を受けたこと,妻が更生に協力していくと述べていることなど酌むべ
き事情も存する。
 以上被告人両名にとって有利・不利一切の事情を総合考慮の上,主文のとおり刑
の量定をした次第である。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑 被告人Aにつき懲役1年6月,被告人Bにつき懲役1年)
平成13年12月18日
  横浜地方裁判所第1刑事部
裁 判 官    前 澤 久美子

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