弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 本件抗告の要旨は、
 (一) 強制執行又は仮差押仮処分に対する第三者異議の原因たる権利は、執行
当時既に第三者に帰属していることを要するにかかわらず、相手方が本件建物の所
有権を取得したのは、その主張によれば、抗告人の本件仮処分執行後である昭和二
十五年九月二十五日であるから、相手方の異議は理由なく、従つて本件執行の取消
を命ずべき限りでない。
 (二) 抗告人は、Aからその所有にかかる本件建物を買い受け、その所有権移
転請求権保全の仮登記をなし、ついで同人並びにBを被告としてAに対しては所有
権移転登記手続並びに家屋の引渡を、Bに対しては家屋の引渡を求める訴を東京地
方裁判所に提起し、右引渡請求権保全のため、A並びにBに対しそれぞれ各別に占
有移転禁止の本件仮処分の執行をなしたのである。従つて、抗告人が他日右訴訟に
おいて勝訴の判決を得るならば、これに基いて所有権取得の本登記をなし、仮登記
以後の所有権取得者である相手方に対しその所有権移転登記の抹消と占有の引渡を
求めうべき筋合であるから、この点において、抗告人のなした本件仮処分の効力
は、単なる仮登記の効力と異なり、既に本登記を予想し目的物の引渡請求権を行使
しての保全処分であるから、右執行後所有権を取得した相手方に対しても対抗しう
べく、相手方は、これに対し異議を主張しうべき限りでない。反対に、もし原審の
ように解するならば、抗告人は、相手方がABより本件建物の引渡を受けこれが占
有を維持する限り相手方に対しさらに占有移転禁止の仮処分の執行をなすことをう
るも、しからざる限りこれをなすに由なく、A、Bその他の第三者が占有している
場合、これに対し仮処分の執行をなすも常に相手方により取り消され、抗告人の仮
登記ある所有権に基く引渡請求権は、ついにこれを保全するに由ないこととなるの
である。
 (三) 相手方の本件家屋の所有権取得は、抗告人の仮処分執行を取り消すこと
を以て唯一の目的としてなした相手方とA間の通謀の虚偽表示に基くものであつて
無効である。相手方は、本件家屋に関する諸々の事件について常にAの参謀として
行動し、本件仮処分についても、相手方は、Aと同道してAの代理人金末多志雄弁
護士を訪問し、同弁護士を通じて抗告人代理人稲垣規一弁護士に対しその解放方を
懇請し、昭和二十五年八月二十一日及び二十二日の両度に亘り、右両弁護士並びに
A、相手方の四名会合して協議したるもついに調わなかつたことあり、相手方が善
意の取得者であるとは虚言も甚だしく、さらに本件家屋には抗告人の仮登記の外、
Cから仮差押の登記もなされているのであつて、何を好んでこのような家屋を買い
受ける者のあるべき筈なく、これ等は、相手方の所有権取得の虚偽仮装であること
を物語るものに外ならない。従つて相手方の異議は理由なく、これに基く本件仮の
処分の執行取消申請も理由がない。
 (四) 民事訴訟法第五百四十七条第二項によれば、異議のため主張した事情が
法律上理由ありと見え且つ事実上の点につき疎明のあつた時に限りはじめて受訴裁
判所は執行処分の取消を命ずることができるのである。しかるに本件において、抗
告人は相手方の提起した異議の訴において、反訴又は抗弁として、相手方に対し、
所有権取得登記の抹消を求め、又は家屋の引渡を拒むことは必定であつて、到底相
手方の主張が理由ありと認めることができない。同法に基く処分であつても、単に
執行停止を以て満足する場合には、多少理出ありと見ゆる蓋然性の稀薄な事案であ
つてもこれを認めるのが相当であることがあろうけれども、本件のような執行取消
という取り返しのつかない決定的処分をなすに当つては、これが判定に愼重を期
し、厳密なるべきである。
 よつて、「原決定を取り消す。相手方の申立を棄却する。抗告費用は相手方の負
担とする。」との裁判を求める。
 というにあつて、疎明方法を提出した。
 しかしながら、
 (一) 強制執行又は仮差押に対する第三者異議の原因たる権利が特別の規定の
ない限り執行当時既に第三者に帰属しかつ執行債権者に対する優先的地位を対抗し
うるものでなければならないことは、いわゆる差押の効力即ちこれにより債務者は
差押の対象に関する処分権を失うことのためであつて、仮処分にあつては必ずしも
そうでなく、仮処分債権者がその仮処分を以て第三者に対抗しうる場合、たとえ
ば、不動産の譲渡又は抵当権の設定を禁じた仮処分において登記簿にその禁止を記
入したような場合には、その後において第三者が仮処分の目的物につき所有権その
他目的物の譲渡もしくは引渡を妨げる権利を取得したからといつて、これを原因と
して右<要旨>仮処分に対し異議を主張することはできないけれども、もしその仮処
分を以て第三者に対抗しえない場合には、たとえ第三者がその執行後におい
て目的物の所有権を取得したとしても、その取得を以て仮処分債権者に対抗しうる
ときは、これを原因として異議を主張しうるものと解するを相当とする。これ仮処
分の執行から善意の第三者右保護せんとする趣旨に出たものであつて、このこと
は、いわゆる善意取得について規定した民事訴訟法第六百五十条第一項の趣旨から
もうかがわれるところである。今これを本件についてみるに、抗告人が本件仮処分
の執行をなしたのは昭和二十五年五月二十日であつて、相手方がその目的たる本件
家屋の所有権を取得したとしてその旨の登記を了したのは同年九月二十日(訴状に
九月二十五日とあるは九月二十日の誤記と認める。)であることは、記録編綴の不
動産仮処分調書並びに建物登記簿謄本により明らかであるけれども、右調書によれ
ば、その仮処分の内容は、単に本件家屋に対する債務者の占有を解き執行吏をして
保管せしめ、執行吏は債務者が現状を変更せざることを条件として債務者に使用を
許すことをうる旨のものであつて、執行吏はこれが執行に当り本件家屋は債務者の
占有を解き当該執行吏において保管中であるから何人といえども右執行吏の許可な
くして占拠できない旨を記載した公示書を宅内壁に貼布してこれが表示をなしたに
止まるのであるから、何等第三者対抗要件を具備していないものというの外なく、
従つて右仮処分執行当時の本件家屋の所有者Aは、ひとり本件家屋の所有権を第三
者に譲渡するに支障がないばかりでなく、右譲渡を受けた相手方においても、既に
右につき所有権移転登記を了した以上、その所有権取得を以て抗告人に対抗しうべ
く、他に特別の事由なき限り、これを以て異議の原因となしうべきは当然であつ
て、抗告人がこれよりさき昭和二十五年四月十七日本件家屋につき所有権移転請求
権保全の仮登記をなしていることは前掲登記簿謄本により明らかであるけれども、
まだこれに基く本登記を了していないことは抗告人の自ら争わないところであるか
ら、右仮登記があるからといつて、抗告人は本件仮処分を以て相手方に対抗しうる
ということができず、抗告人の抗告理由(一)は理由がない。
 (二) 抗告人が本件家屋につき所有権移転請求権保全の仮登記をなしているこ
とは(一)においてのべたとおりであるから、抗告人が所論の訴訟において勝訴の
判決を得、これに基いて所有権移転の本登記をなした時は右請求権具現の時にさか
のぼつてその所有権取得を以て相手方に対抗しうべく、従つて相手方に対しその所
有権取得登記の抹消を求めうべきことは、抗告人所論のとおりであるけれども、そ
れがため抗告人が本件仮処分を以て相手方に対抗しうべしとする所論は首肯しがた
い。けだし仮登記は単に順位保全の効力あるのみで本登記とひとしい対抗力はない
からである。本件仮処分の被保全権利が右仮登記ある所有権に基く引渡請求権であ
るからといつて、これを別に解する理はない。もしそれ所論後段に至つては、本件
取消が相手方に対する関係においてなされたことを看過するものであつて、特に説
明するの要なく、抗告人の抗告理由(二)は理由がない。
 (三) 本件訴状によれば、相手方は、本件異議の原因として所有権を主張して
いるのであつて、その主張事実は、登記簿謄本により疎明せられ、かつこれが法律
上異議を理由づけるに足ると認められるので、原審が、原告たる相手方の申立によ
り、異議についての終局判決をするまでの間の暫定的処分として本件仮処分の執行
処分の取消を命じたのは、相当であつて、抗告人は、相手方の右所有権取得は虚偽
仮装の契約に基くものであつて無効であると主張するけれども、これ等はいずれ右
異議の訴訟において詳細審理さるべき問題であつて、抗告人提出の疎明方法により
直ちに反対の疎明ありたるものとして相手方の所有権取得を否定するはいささか早
計であり、又、抗告人が右異議の訴訟において相手方の所有権取得を否認し、反訴
又は抗弁としてその所有権取得登記の抹消を求め又は本件家屋の引渡を拒みうるか
らといつて、直ちに相手方が本件異議のため主張した事情が法律上理由ありと見え
ないとなすことができず、抗告人の抗告理由(三)及び(四)は理由がない。
 以上説明のとおり抗告人の抗告理由は一も理由なく、その他記録を精査するも原
決定取消の事由となすに足る違法の点を発見することができないので、原決定は相
当であつて抗告人の抗告は理由がないものと認め、よつて主文のとおり決定した。
 (裁判長判事 大江保直 判事 梅原松次郎 判事 猪俣幸一)

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