弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決を破棄する。
     本件を福岡地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人大島正恒の上告趣意は、判例違反をいうところがあるが、論旨援用の判例
は事案を異にする本件には適切でなく、その余は事実誤認、単なる法令違反の主張
であつて、適法な上告理由に当らない。
 しかしながら、職権をもつて調査するに、第一審判決の確定した事実の要旨は、
被告人は昭和三三年六月頃A鉱業株式会社B鉱業所総務課長代理Cから同会社の事
業遂行上必要な排気坑の設置場所として被告人の所有にかかる福岡県嘉穂郡a町b
字cd番地ノeのうち、田一反三畝一八歩を同会社に対し譲渡してくれるよう懇請
されるや、すでに右農地がその余の不動産とともに被告人が株式会社D銀行との間
に結んだ、掛戻期間三九カ月、掛戻金合計四〇九、五〇〇円等の約定による、相互
掛金債務弁済契約に基づいた借受金三〇〇、〇〇〇円の債務のため抵当権の目的と
なつており、しかも約定通り掛戻金の返済がなされなかつたため同銀行において福
岡地方裁判所飯塚支部に対し残額債権に基づき右抵当権実行による競売申立をなし、
右農地を含めて、不動産競売手続開始決定がなされ、その旨の登記がなされていた
にもかかわらず、右Cに対し右事実を告知せず恰も瑕疵のない農地であるかのよう
に装つて右農地を坪当り金一、〇〇〇円の割合による合計四〇八、〇〇〇円で同会
社に売り渡す旨の承諾をなし、同人をして右農地につき農地法に基づく所定の手続
が完了すれば同会社のため直ちに所有権移転登記がなされる旨誤信させて同会社と
の間に右価格による売買契約を締結し、よつて同年七月二八日頃及び同年八月一一
日頃の二回に亘り福岡県嘉穂郡a町b所在の前記B鉱業所において右Cを通じ右会
社から右売渡代金の内金名下に各一五〇、〇〇〇円宛て合計三〇〇、〇〇〇円の交
付を受けてこれを騙取したというのである。
 しかし、本件記録に徴すれば、右Cが被告人と本件売買契約を締結したのは、右
農地につき被告人から前示競売手続開始の事実を告知されなかつたため、そのよう
な瑕疵のない農地であると誤信した結果によるものであるかどうかについては、疑
問の存するところであつて、むしろ、第一審において適法に取り調べられた「土地
調停申立書」その他の証拠によると、本件買主であつたA鉱業株式会社側において
は、被告人が競売手続の開始により差し押えられていた右農地を、代金四〇八、〇
〇〇円で売却するが、さしあたり、金三〇〇、〇〇〇円あれば、右差押を解除でき
る旨、言明したので、これを信用して右金員を支払つたものであり、右Cにおいて
も、本件競売手続開始の事実自体については、本件売買契約の当時において、すで
に知悉するところであつたとの事実関係の存在を肯定するに難くないのである。
 されば、第一審判決が被告人は前示競売手続開始の事実を右Cに告知しないとい
う欺罔手段により、本件売買契約を締結したうえ、同人から右売渡代金の内金名下
に金三〇〇、〇〇〇円を騙取したものと認定したことは、右金員授受の経緯につき
審理を尽くさず、その結果、重大な事実の誤認を冒したものと疑うに足りる顕著な
事由が存するものと認めるので、右第一審判決並びにこれを是認した原判決を確定
させることは著しく正義に反するものと認める。
 よつて、刑訴四一一条一号三号、四一三条に則り原判決及び第一審判決を破棄し、
本件を第一審裁判所に差し戻すべきものとし、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 米田之雄公判出席
  昭和三九年五月二九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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