弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成16年7月5日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成16年(少コ)第325号(通常訴訟移行)敷金返還等請求事件
口頭弁論終結日 平成16年6月21日
判       決
              主       文
 1 被告は原告に対し,21万1300円及びこれに対する平成16年2月19日から支
払い済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とす
る。
              事実及び理由
第1 請求の趣旨
   被告は,原告に対し,26万1300円及びこれに対する平成16年2月19日(訴状
送達の日の翌日)から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 1 請求原因の要旨
  ・ 原告は,平成15年6月28日,被告との間で次の賃貸借契約(以下「本件契約」
という。)を締結した。
    ① 目的物件 東京都新宿区ab-c-d
        AハイツB号室(以下「本件アパート」という。)
② 賃貸借期間 平成15年7月1日から平成17年6月末日まで
③ 賃  料1か月5万円
④ 共益費 1か月6300円
⑤ 賃料及び共益費は,毎月25日限り翌月分を支払う。
⑥ 預入敷金 10万5000円
⑦ 預入礼金 10万円
⑧ 預入賃料(7月分)5万円
  ⑨ 預入共益費(7月分)6300円(以上の⑥から⑨までの預入金を,以下「本
件預入金」という。)   
・ 原告は,被告に対し,平成15年6月18日,手付金(以下「本件手付」 という。)
として5万円を支払った。
  ・ 原告は,被告に対し,本件契約締結に際し,本件アパートの襖の張替,コンセン
ト修理,カーペットの下の畳の交換及び風呂場の壁修理(以下「本件補修箇所」
という。)の,各補修を求めた。しかし,被告は,本件補修箇所の補修をせず,原
告が,被告に対し,その履行を求めたところ,被告は,畳の交換費用の半分は原
告が負担するように言うなど,本件アパートの貸主としてすべき義務を果たさな
いため,原告は,本件アパートに入居することができなかった。
  ・ 原告は,被告に対し,平成15年6月30日,本件契約につき解除の意思表示をし
た。
  ・ よって,原告は,被告に対し,本件預入金26万1300円の返還を求める。
 2 被告の主張
・ 被告は,本件アパートの襖については,平成15年7月10日ころに張り 替えるこ
とを予定しており,また,畳については交換することにしていた。しかし,その余の
補修箇所があることについては否認する。
・ 原告と被告は,本件契約において,賃借人の都合により本件契約を解約すると
きには,解約日の3か月前に書面により賃貸人に解約届を提出しなけれ ばなら
ず,これに従った解約をしない場合には,賃借人は,賃貸人に対し,賃料と共益
費の合計額の6か月分を保証(以下「本件保証」という。)する旨 の合意(本件
契約条項第4条)がなされており,原告は,これに沿った解約 をしていないの
で,原告主張の本件契約解除の効果は認められない。また,原告は,本件保証
を提供しておらず,したがって,敷金については本件契約 条項第5条により返
還する必要がない。さらに,賃借人が賃貸人に一旦払った礼金や家賃又は共益
費は一切返還しないとする合意(同第30条)がなされているので,被告にこれら
を返還する義務はない。
第3 当裁判所の判断
  1 証拠(原告本人,被告本人)によれば,原告は,本件契約締結前に,本件アパー
トに下見に行った際,本件アパートの中に補修が必要な箇所を見つけたこと,原
告が,襖の張替を希望したところ,被告は梅雨明けにやる旨約束したこと,また,
畳の交換を希望したところ,被告は交換するがその費用の半分を負担するように
言ったことが認定できる。しかし,原告が,被告に対し,明確に,本件補修箇所に
ついて期日を指定して補修を促した事実までは認定できない。むしろ,原告は,被
告から,現状のままで本件アパートに入居してほしい旨言われており,原告が,本
件預入金を支払って貸室賃貸借契約書(乙1,以下「本件契約書」という。)を作成
した後も,現状のままで本件アパートに入居すべきか迷っていたところ,被告か
ら,契約をやめるならやめてもいい旨言われたので,あらためて息子夫婦と相談し
た上で本件契約を解除する決心をしたことが認定できる。
   以上の事実によれば,被告は,本件契約締結に際し,原告が本件アパートに
入居するまでに本件補修箇所を補修すべき義務を負ったとはいえない。
2 被告は事業者として,原告は消費者として本件契約を締結しているところ,本件
契約書4条の,借主が本件契約を解除する場合には,解約日の3か月前に解約
届を提出しなければならず,これに違反した場合には,賃料と共益費の合計額の
6か月分を貸主に保証する旨の約定及び同30条の,借主が貸主に一旦支払った
礼金や家賃又は共益費は一切返還しない旨の約定は,公の秩序に関するもので
はないが,著しく原告の権利を制限し,又は原告の義務を加重する条項であるの
で,消費者契約法10条の趣旨に照らして無効である。
3 原告が,被告に対し,本件手付を支払ったことは当事者間に争いはない。また,
被告が原告に対して交付した計算書・請求書(甲1)及び契約手付金領収書(甲2)
には,本件手付が違約手付の趣旨である旨の記載があるが,本件契約がアパー
トについての一般的な貸室契約であること,本件手付が本件預入金に書式代とし
て3万6750円を加えた合計29万8050円の内金5万円であって,内金の割合と
しては低くはないこと,一旦本件アパートの貸室賃貸借契約が成立すると,本件契
約書4条により,借主からの解約には相当な不利益が伴うので容易には解約申入
れができないこと,上記認定のとおり,被告は,原告に対し,本件契約をやめるな
らやめてもいい旨述べていることから,被告は,原告に対し,解約権を付与したも
のと解されることなど,諸般の事情を総合すると,本件手付は民法557条に定め
る解約手付の性質も有しているものと解すべきである。そして,本件契約の賃貸借
期間は平成15年7月1日から  であるが(乙1),被告には,少なくとも本件アパ
ートの襖の張替え及び畳の交換をすべき義務があるところ,証拠(原告本人,被
告本人)によれば,原告は,いまだ本件アパートに入居しておらず,被告に対し,
遅くとも,被告が,襖の張替えや畳の交換など,本件契約につき貸主としての履行
に着手しない段階である平成15年7月8日には,電話で本件契約の解約申入れ
をしていることが認められる。
4 以上によれば,原告は,被告に対し,平成15年7月8日に,本件手付を放棄して
本件契約を解約したことが認められる。
     東京簡易裁判所民事第5室
          裁 判 官  松  田  雅  人  

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛