弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、控訴人(附帯被控訴人)大和信商株式会社敗訴の部分及び控
訴人(附帯被控訴人)Aに関する部分を取り消す。
     被控訴人(附帯控訴人)らの控訴人(附帯被控訴人)らに対する前項各
請求を棄却する。
     本件附帯控訴を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審を通じ、被控訴人(附帯控訴人)らの負担とす
る。
         事    実
 控訴人(附帯被控訴人、以下、単に控訴人という)らの各訴訟代理人は、それぞ
れ、主文第一、二項同旨の判決を求め、附帯控訴につき「附帯控訴棄却」の判決を
求めた。
 被控訴人(附帯控訴人、以下、単に被控訴人という)らの訴訟代理人は、控訴人
らの控訴につき「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との
判決を求め、附帯控訴として原判決主文第一、四項に仮執行の宣言を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述及び証拠関係は、左記のほかは、原判決事実摘示のと
おりであるから、これを引用する。
 (控訴代理人の陳述)
 原判決添付第一物件目録記載の土地(以下、本件土地という)は、もと、訴外亡
B及びその子である被控訴人Cの共有に属したが、本件土地上には本件建物が存
し、訴外日新食品株式会社(以下、日新食品といら)において昭和二五年一〇月二
八日本件建物の所有権を取得しその旨の保存登記を経由した。そして、Bは同日、
本人並びに被控訴人Cの代理人たる資格を兼ねて、日新食品に対し本件土地につき
本件建物の所有を目的とする地上権を設定した。ところで、日新食品は訴外名古屋
産業株式会社より金融を受け本件建物につき同会社のため同日抵当権を設定したと
ころ、同会社は昭和二六年三月八日本件建物につき競売申立をなし、右競売手続に
おいて控訴人大和信商株式会社(以下、単に控訴会社という)は昭和三二年一二月
一八日本件建物を競落し昭和三三年三月一日その旨の所有権移転登記を経由した
が、本件建物の所有権の取得と同時に、その敷地利用権たる本件土地の地上権をも
併せて承認取得した。このような場合、被控訴人C及び亡Bの相続人たるその余の
被控訴人ら(Bは昭和三六年一月一七日死亡し、本件土地に対する同人の持分は、
被控訴人Cを除くその余の被控訴人らが相続により承継取得した)は、日新食品よ
り控訴会社への本件土地の地上権移転については民法一七七条の所謂「第三者」に
該当しないから、控訴会社は本件地上権を当然に地上権設定者たる被控訴人らに対
抗することができる。
 仮にしからずとしても、地上権設定者たる被控訴人らは建物保護法一条一項に所
謂「第三者」に該当するから、地上権譲受人たる控訴会社において、その譲渡人た
る日新食品より本件建物につき所有権移転登記を経由した場合には、控訴会社は本
件地上権を以て被控訴人らに対抗することができる。
 仮に、しからずとしても、亡Bは、前記の如く昭和二五年一〇月二八日本件地上
権の設定及び本件建物につき抵当権の設定登記がなされた際、本人及び被控訴人C
の代理人たる資格の下に、将来、本件建物に対する抵当権が実行され、本件建物の
所有権及び地上権が第三者に移転した場合でも、右地上権の移転を承認し、何らの
異議を述べない旨日新食品に対し確約した。したがつて、亡B及び被控訴人Cら
は、本件地上権移転の事実を否認する権利を予め放棄したものといわねばならない
から、控訴会社は地上権につき登記を経由しなくても、地上権の移転を以て被控訴
人らに対抗することがてきる。そして。控訴人Aは日新食品から本件建物を賃借し
ていた訴外宝食品工業株式会社から、日新食品の同意の下に本件建物を転借してい
た者であるから、控訴会社が被控訴人らに対し本件地上権を以て対抗し得る以上、
控訴人Aの本件建物の占有は、もとより適法である。
 (被控訴代理人の陳述)
 控訴人は、乙第三号証を以て当審主張事実に添う証拠である旨主張するが、同号
証によりそのように認めることは困難である。すなわち、日新食品は昭和二五年一
〇月二八日本件建物につき所有権保存登記をなし、名古屋産業株式会社に対し債務
額七〇万円の抵当権を設定したが、その際、同会社は後日抵当権の実行により本件
建物を競落した場合、本件土地所有者に対し本件地上権を以て対抗し得ない事態の
発生することを慮り、亡Bに対し乙第三号証の作成を要求し、同人はこれを承諾
し、「今後、本件建物につき第三者名古屋産業株式会社名義に変更の場合でも地上
権を承諾し後日異議を述べない」旨の承諾書(乙第三号証)を作成したのである。
したがつて、同号証は、あくまで名古屋産業株式会社が競落した場合には本件土地
の地上権を承認するにとどまり、それ以外の第三者にまで地上権を認めるものでな
いことは同号証の文理解釈上明白である。されば、不特定の第三者たる控訴会社は
本件土地地上権の取得を以て被控訴人らに対抗することができない。
 (証拠)
 控訴会社訴訟代理人は、当審において乙第三、四号証を提出し、当審証人Dの証
言を援用し、被控訴代理人は乙第三、四号証の各成立は認めると述べた。
         理    由
 本件土地が被控訴人らの共有に属するところ、控訴会社が本件土地のうち原判決
添付図面に掲記の土地五六一・八五平方米(一六九・九六坪)上に本件建物を所有
して右土地を占有し、控訴人Aが本件建物を占有していること、昭和二五年一〇月
二八日、本件土地の当時の共有者たる被控訴人C及び亡Bが日新食品のため本件土
地のうち本件建物敷地部分につき建物所有を目的とする地上権を設定したこと、同
日、日新食品はその所有にかかる本件建物につき所有権保存登記をなしたうえ、名
古屋産業株式会社のため抵当権を設定したこと及び、右抵当権実行の結果控訴会社
は本件建物を競落し、昭和三三年三月一日その旨の所有権移転登記を了したことは
当事者間に争なく、亡Bは昭和三六年一月一七日死亡し、本件土地に対する同人の
共有持分を被控訴人Cを除くその余の被控訴人らが相続によつて承継取得したこと
は、被控訴人らにおいて明らかに争わないのでこれを自白したものと看做すべきで
ある。
 <要旨>ところで、地上権者がその所有する地上建物につき抵当権を設定した場合
には、右地上権も原則として建物抵当権の効力の及ぶ目的物に包含され、し
たがつて、右建物の競落人と地上権者の間においては、特段の事情なき限り右建物
の所有権とともに土地の地上権も競落人に移転するものと解するのが相当であると
ころ、右の如き特段の事情を窺い得ない本件では、控訴会社は本件建物の競落によ
り本件土地の地上権を日新食品から承継取得したものということができる。
 しかるところ、控訴人らは、右地上権を以て被控訴人らに対抗し得る旨主張する
から、以下、この点について案ずるに、建物保護法一条一項によれば、建物所有を
目的とする地上権に基きその土地の上に登記した建物を有するときは、地上権はそ
の登記がなくてもこれを以て第三者に対抗し得るところ、右の「第三者」は、当該
土地所有権の譲渡による新取得者のみを指称するものではなくて、地上権が譲渡さ
れた場合における土地所有者―旧地上権者のため地上権を設定した者―をも包含す
るものと解すべきである。本件において、控訴会社は地上権者として本件土地上に
登記した本件建物を有すること前認定のとおりである以上、該地上権を以て地上権
設定者ないしはその包括承継人たる被控訴人らに対抗し得るものというべく、畢
竟、控訴会社は本件土地のうち本件建物敷地部分の占有につき正権限を有するもの
といわねばならない、(なお、本件土地のうち右敷地以外の部分を控訴人らが占有
していることを肯認するに足る証拠はない)。次に、また、控訴人Aも、本件建物
所有者たる控訴会社にして前叙の如き敷地の占有権限を有する以上、被控訴人らに
対しては本件建物に居住してその敷地を占有する権限あるものということができ
る。しからば、被控訴人らの控訴人らに対する各請求はすべて失当たること明らか
であるから。これを認容した原判決を取り消し、被控訴人らの請求及び本件附帯控
訴は棄却すべきものである。
 よつて、民訴法第三八六条、第三八四条、第九六条、第八九条、第九三条を各適
用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 県宏 裁判官 越川純吉 裁判官 可知鴻平)

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