弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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             主      文
  被告人を懲役1年に処する。
   この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
 理      由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成15年1月15日午前11時10分ころ,神戸市a区b町c丁目
d番地のc所在の神戸市a区福祉部在宅支援課において,生活保護費支給に関する
相談及び助言等の職務に従事していた同課職員A(当時45歳)から,カウンター
越しに,現時点では被告人に生活保護費を支給できないなどと説明されたこと等に
立腹し,前記Aに対し,同所にあった朱肉ケースを同人の至近距離の前記カウンタ
ー上に叩き付ける暴行を,さらに,同人から退席するように求められるや,平手で
同人の左手を1回殴打する暴行を加え,もって,同人の前記職務の執行を妨害した
ものである。
(証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―
省略
(補足説明)
 弁護人は,被告人において平手で被害者の左手を1回殴打したことはない旨主張
し,被告人はこれにそう供述をするところ,前掲関係各証拠によれば,弁護人主張
の点を含め,判示犯罪事実を認めるに十分である。前掲各供述調書中の被害者やそ
の同僚など多数の目撃者の供述の信用性は十分であるのに対し,被告人は捜査段階
においては左手で被害者が持っていた被告人の紙袋あるいはその手を払っただけで
ある旨弁解していたのに,公判供述においては,被害者の左手を握っただけである
旨,格別の理由なくその弁解内容を変遷させるなど,その供述は採用の限りではな
い。弁護人及び被告人の主張は理由がない。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法95条1項に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択
し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年に処し,情状により同法25条1項
を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用は刑
事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 本件は,被告人に対し生活保護の対象とならない旨応対した被害者である生活保
護事務担当の神戸市a区役所吏員に対し,判示の暴行を加えた公務執行妨害の事案
であるが,その動機は,自己中心的であって酌量の余地はなく,加えて,被告人は
不合理な弁解を続けて一部犯罪事実を争ったこと,被告人には暴行,器物損壊の各
罪により平成14年2月20日神戸地方裁判所で宣告を受けた罰金20万円の前科
のほか,多数の粗暴罰金前科があることを併せ考慮すると,被告人の刑事責任は重
いというべきであるが,被告人において反省服罪の態度を示し二度と同様の犯行に
及ばない旨誓約したこと等被告人のために斟酌すべき事情も認められるので,執行
猶予の威嚇力により再犯防止を図ることとし,主文のとおり量定した上,4年間そ
の刑の執行を猶予す
ることとした。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成15年3月26日
神戸地方裁判所第11刑事係甲
裁 判 官   杉 森 研 二

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