弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 控訴人と被控訴人との間の横浜地方裁判所昭和六三年(ヨ)第四六五号解雇予
告無効仮処分申請事件について同裁判所が平成元年五月三〇日に言い渡した仮処分
判決の主文第一項中控訴人に対し一か月につき二四万円を超える金員の仮払を命じ
た部分を取り消す。
3 被控訴人は控訴人に対し、九七九万〇〇六五円及びこれに対する平成四年四月
七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は、第一、二審ともに被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文第一項同旨
第二 事案の概要
 本件事案の概要は、原判決四枚目表三行目末尾の次に行を改めて以下のとおり付
加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」の項に記載のと
おりであるから、ここにこれを引用する。
「また、被控訴人は、仮執行宣言付本案判決により控訴人が取消しを求める金員の
支払部分についても強制執行をなし得る地位にあるので、仮処分の取消しによりこ
の部分について原状回復することは無意味であるから、事情変更による取消しを求
める権利を有しないというべきである。
(控訴人の主張)
 仮処分の執行と本案判決に基づく執行とは、その目的・性格を異にするから、仮
処分判決に基づいて金員が仮払された後に仮執行宣言が付された本案判決がなされ
ても、当然に仮処分の執行が目的を達するとみることはできないし、また、仮処分
の執行が当然に本案判決に基づく執行とみなされるものでもない。したがって、仮
処分債務者は、事情変更による仮処分取消しの申立ての要件が備わっている限り依
然としてその取消しを求めることができると解すべきである。
 なお、控訴人は、仮処分判決に基づく強制執行を受けることを避けるために任意
に被控訴人に対し仮処分判決によって命じられた金員を支払ったので、本件におい
ては仮処分の執行と目すべきものは存在しない。」
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、控訴人の事情変更による仮処分判決の取消しの申立ては理由がな
い(したがって、その取消しを前提として仮払金の返還を求めることもできな
い。)と判断する。その理由は次のとおりである。
1 本件仮処分のような賃金仮払仮処分は、その執行によって被保全権利(賃金請
求権)が実現されたのと同様の状態が事実上達成されることから満足的仮処分の一
種とされているところ、この種仮処分であっても、法律上の紛争により当事者(仮
処分債権者)に生じている現在の危険を除去するため、本案訴訟による解決をみる
までの間、暫定的な状態を仮定的に形成するものであるから、仮定性・暫定性とい
う保全処分に固有の性質が失われているわけではない。したがって、右仮処分の執
行後においても、本案訴訟では、その執行の結果(仮の履行状態)を考慮しない
で、請求の当否について判断すべきこととなるのである。
 しかしながら、本案訴訟において仮処分債権者が勝訴した場合、既に事実上被保
全権利が満足を得たのと同様の状態にあることから、更に本執行を申し立てて権利
の実現を図る必要性もその余地もない。そこで、満足的仮処分の執行後に仮処分債
権者が本案訴訟で勝訴したときには、特に本執行への移行というような観念を入れ
るまでもなく、当然に、本執行が行われたと同一の効果が仮処分執行時に遡って生
ずるものというべきである。そして、これとともに原則として、仮処分自体も、そ
の目的を達して消滅すると解すべきである。
 なお、この理は、満足的仮処分を債務名義として強制執行を申し立てるまでもな
く、債務者が右仮処分に従って金員を支払うなど仮の履行をした場合においても同
様であることはいうまでもない。何故なら、この場合における履行は、実体法上の
法律関係とは別個の訴訟法的法律関係を形成する仮処分に従って行われるものであ
って、債務の消滅を目的として行われる実体法上の弁済とは区別されるのであり、
むしろ仮の履行状態が形成されるという意味では仮処分の執行が行われたのと同視
すべきだからである。
 そして、右の状態に至った場合には、従前仮処分の執行として、あるいは、仮処
分に基づく仮の履行として形成された状態が本執行に基づくものとみなされるの
で、もはや事情変更による仮処分の取消しの申立てを始め、法定の各種保全処分取
消しの申立てをすることは許されないことになる。
2 ところで、満足的仮処分の本案における債権者勝訴の判決が確定した場合に右
のような効果が発生することはいうまでもない。
 問題は、仮処分債権者が本案において仮執行宣言の付された勝訴判決を得たもの
の、未だ確定していない場合であるが、このような場合であっても、仮執行宣言に
より確定前に執行力が付与されて本執行を申し立てることができるのであるから、
本執行への移行の観念を介在させることなく当然に本執行が行われたと同一の効果
が仮処分執行時に遡って生ずることは肯認してよい。ただし、仮執行宣言付判決に
基づく執行は、確定的なものではなく、いわば本案判決自体又は仮執行宣言が取り
消されることを解除条件として許されるにすぎないものであるから、従前の仮処分
自体がその目的を完全に達成したとまではいうことができず、したがって、この時
点で仮処分自体が消滅すると解することはできないのであって、本案訴訟が未確定
の間は仮処分及び本案の両債務名義が併存することになる。
 もっとも、このような場合であっても、仮処分債務者が事情変更による仮処分の
取消しを申し立てることは許されないと解すべきである。何故なら、右取消しの申
立ての制度は、保全処分発令後に被保全権利又は保全の必要性に関する事情が変更
したため、保全処分の仮定性・暫定性にかんがみ、現在においてはこれを存続させ
るのが相当でないと考えられる場合に、債務者を仮処分による負担から開放するこ
とをその趣旨とするものであるところ、仮処分債権者が仮執行宣言付本案判決を得
た場合には、これにより当然に本執行が行われたと同一の効果が生ずることになる
ので、もはや仮処分の仮定性・暫定性に基づく債務者保護の要請は考慮する必要が
なくなっているからである。
3 これを本件についてみるに、前判示の当事者間に争いのない事実によると、仮
処分判決によって命じられた金員は全額仮払済みであるところ、その本案における
仮執行宣言付判決により右仮払金の全部を含む金員の支払請求が認容されたのであ
るから、仮処分判決に基づいて仮払された金員は右仮執行宣言付判決により本執行
に基づくものとみなされるに至ったものである。
 なお、控訴人は、本件においては処分の執行と目すべきものは存在しない旨主張
するけれども、控訴人の被控訴人に対する金員支払が債務の消滅を目的として行わ
れる純然たる実体法上の弁済ではなく、これとは別個の仮処分によって形成された
訴訟法的法律関係の下で仮の履行として行われたものであることは弁論の全趣旨か
ら明らかである。したがって、この金員の仮払もまた仮処分の執行が行われたのと
同視され、仮執行宣言付本案判決により本執行が行われたとみなされるべきもので
あることはいうまでもない。
 そうすると、控訴人はもはや仮処分判決について事情変更による取消しの申立て
をすることは許されず、その取消しを前提として仮払金の返還を求めることもでき
ないといわなければならない。
二 以上の次第で、控訴人の本件申立てを却下した原判決は結論において相当であ
るというべきである。
 よって、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担に
つき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 丹宗朝子 新村正人 齋藤隆)

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