弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決を破棄する。
     被告人らを各罰金三万円に処する。
     被告人らにおいて右各罰金を完納することができないときは、金一、〇
〇〇円を一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。
     原審及び第一審における訴訟費用は被告人らの連帯負担とする。
         理    由
 (本件の経過)
 本件公訴事実の要旨は、
 被告人AはB労働組合(以下「B」という。)四国地方本部執行委員長、同Cは
同地方本部書記長、同Dは同地方本部執行委員、業務部長であるところ、B組合員
数百名と共謀して昭和三七年三月三一日午前三時四〇分ころから同日午前五時四〇
分ころまでの間約二時間にわたり松山市a町E駅構内において列車の運行を阻止す
るため、右組合員数百名を指揮し、同駅構内上り二番線路上に機関士Fが乗り込ん
で指示責任者である列車扱い助役Gの発車合図のもとに発車すべく待機中の午前三
時四二分発高松行六D準急行列車(H号)の前方線路上に集合して立ち塞がり、日
本国有鉄道(以下「国鉄」という。)当局の再三の立退要求にも応じないで、右準
急行列車につき右助役の発車合図及び右機関士による発車を不能にし、同列車に引
き続いて同線路上から発車すべき午前四時四〇分発高松行四〇D普通列車につき乗
務員らによる発進を不能にし、さらに、同線路上から発車すべき午前五時二一分発
新居浜行四三四D普通列車につき約二七分間乗務員らによる進発を不能にし、もつ
て威力を用いて国鉄の列車運行の業務を妨害したものである、というのである。
 第一審判決は、被告人らを含むB組合員の目的が列車の乗務員に対し時限ストラ
イキへの協力方を要請することにあつたとしたほかは公訴事実どおりの事実を認定
したうえ、被告人らの行為は威力業務妨害罪に該当するとしつつも、東京中郵事件
判決(最高裁昭和三九年(あ)第二九六号同四一年一〇月二六日大法廷判決・刑集
二〇巻八号九〇一頁)に示されたところに従い、公共企業体等労働関係法(以下「
公労法」という。)一七条一項違反の争議行為であつても労働組合法(以下「労組
法」という。)一条二項の適用があると解すべきであるとしたうえ、被告人らの本
件行為は、刑事制裁を加えなければならないほどの反社会性を有しないので、違法
性を欠くとして、被告人ら全員を無罪とした。
 第一審判決に対し、検察官から控訴があつたところ、原判決は、第一審判決の判
断を是認して控訴を棄却し、本件行為の違法性を否定する根拠となる事情として、
本件争議行為は国鉄当局に対する年度末手当の要求実現を目的としたものであつて
目的において不当ではないこと、それは従来の労使慣行を無視して抜打的に少数組
合と団交を妥結し、その結果を多数組合である国労に押しつけようとした国鉄当局
の態度に起因するものであつて、責任は国鉄側にもあること、被告人らは当初から
前記のような妨害行為を計画していたわけではなく事の成行上そのような行為に及
んだと認められること、その方法も列車乗務員に対する有形力の行使、信号扱所等
の機能に対する妨害行為又は暴力の行使を含むものではなく、特に過激とはいえな
いこと、早朝の閑散時を選んだことなどから実害の程度もさして大きくなく、国民
生活に重大な影響を与えたものとは認められないこと、などを指摘した。
 これに対し、検察官の上告趣意は、憲法二八条の解釈の誤り、最高裁判所、高等
裁判所の判例違反を主張する。
 (当裁判所の判断)
 原判決及び第一審判決は、いずれも東京中郵事件判決に示されたところに従い、
公労法一七条一項違反の争議行為であつても労組法一条二項の適用を受けるものと
解したうえ、被告人らの行為は違法性を欠くものと判断しているのであるが、その
後、当裁判所は、名古屋中郵事件判決(昭和四四年(あ)第二五七一号同五二年五
月四日大法廷判決・刑集一三巻三号一八二頁)において、右判例を変更し、公労法
一七条一項違反の争議行為については労組法一条二項の適用がない旨の新しい見解
を示した。そこで、まず職権により、この新しい見解のもとで右各判決の判断が維
持されるか否かを検討する。
 原判決及びその支持する第一審判決が認定した前記事実は、威力業務妨害罪の構
成要件に該当し、かつ、公労法一七条一項に違反する争議行為であるから、他に特
段の違法性阻却事由が存在しない限り、その刑法上の違法性を肯定すべきものであ
る。そして、原判決が違法性阻却を認めるうえで根拠とした諸事情は、犯情として
考慮しうるにとどまり、右の特段の違法性阻却事由にあたるものとは解されず、他
に法秩序全体の見地からみて本件行為の違法性を否定すべき事由は認められない。し
たがつて、原判決は明らかに法令の解釈適用を誤つたものというほかなく、その違
法は原判決に影響を及ぼしており、これを破棄しなければ著しく正義に反するもの
と認められる。
 (結 論)
 よつて、上告趣意に対して判断するまでもなく原判決及び第一審判決は刑訴法四
一一条一号により破棄すべきものであり、なお、直ちに判決をすることができると
認めて、同法四一三条但書により被告事件についてさらに判決をする。
 原判決の支持する第一審判決が証拠により適法に認定した事実すなわち理由の冒
頭記載の公訴事実と同一の事実(第一審判決掲記の証拠による。)に法令を適用す
ると、被告人らの所為は刑法二三四条、二三三条、六〇条、昭和四七年法律第六一
号による改正前の罰金等臨時措置法三条一項一号、二条一項(刑法六条、一〇条に
よる。)に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内で被告人ら
を各罰金三万円に処し、被告人らにおいて右各罰金を完納することができないとき
は、刑法一八条により金一、〇〇〇円を一日に換算した期間その被告人を労役場に
留置することとし、原審及び第一審における訴訟費用は、刑訴法一八一条一項本文、
一八二条によりこれを被告人らに連帯負担させることとし、裁判官全員一致の意見
で、主文のとおり判決する。
 検察官田中義雄 公判出席
  昭和五三年三月三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    吉   田       豊
            裁判官    本   林       譲
            裁判官    栗   本   一   夫

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