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平成29年4月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成27年(行ウ)第71号懲戒免職処分取消請求事件
口頭弁論の終結の日平成29年1月11日
判決
主文
1処分行政庁が平成25年12月26日付けで原告に対してした
懲戒免職処分を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実と理由
第1請求
主文と同じ。
第2事案の概要
本件は,被告(兵庫県宝塚市)の消防職員であった原告が,許可を受けずにみず
から営利企業を営んだこと,妻子があるのに独身と偽って女性と交際し,それが発
覚してその女性から損害賠償請求訴訟を提起されたこと,行先について虚偽記載を
した旅行願を提出したことを理由として処分行政庁から懲戒免職処分を受けたため,
処分行政庁の所属する被告に対しその取消しを求める事案である。
1関係法令等の定め
⑴被告における消防職員の服務規律
消防職員に関する任用,給与,分限・懲戒,服務その他身分取扱いに関しては,
消防組織法に定めるものを除くほか,地方公務員法(平成26年法律第34号によ
る改正前のもの。以下「地公法」という)の定めるところによるとされている(消
防組織法16条1項)。
被告では,宝塚市職員服務規程(昭和42年宝塚市訓令第4号。以下「職員服務
規程」という)と宝塚市消防職員の服務等に関する規程(昭和58年宝塚市消防長
訓令第8号。以下「消防服務規程」という)によって消防職員の服務を規律してい
る。
消防職員の営利企業への従事等の制限,所在の明確,旅行願についてのこれらの
関係法令等の定めは別紙①の1のとおりである。
⑵懲戒処分の指針(甲7,乙公47)
一般職に属する地方公務員に対する懲戒処分には戒告,減給,停職,免職の4種
がある(地公法29条1項)。被告は,「宝塚市懲戒処分の指針」(以下「指針」
という)を定め,懲戒処分に付すべき代表的な事案を選び,それぞれにおける標準
的な懲戒処分の種類を掲げている。本件に関係する部分の概要は別紙①の2のとお
りである。
2基本的事実関係(本件訴え提起の年月日は当裁判所に顕著であり,それ以外
の事実は当事者間に争いがないか,カッコ内の証拠と弁論の全趣旨により認める。
引用する書証は,特に枝番号を掲げるもののほかはすべての枝番号を含む)
⑴原告の身分と就労状況(甲1,乙公20,21,38,40,50)
原告は昭和42年11月生まれの男性である。結婚し,子供を2人もうけたが,
平成25年12月に離婚している。
高校卒業直後の昭和61年4月に被告の消防本部の消防職員として採用され,平
成21年4月に係長に昇任し,おもに火災現場で消防署出張所の消防隊を指揮する
小隊長として職務に従事してきた。後記のとおり本件で問題とされている懲戒事由
の調査は平成25年6月に始まっており,その当時はa消防署b出張所警防第2係
長であったが,同年10月1日にa消防署庶務係に配属された。懲戒免職となった
同年12月当時の職名は消防吏員,階級は消防司令である。
⑵cの営業行為(乙公1から13まで)
アc
原告の父親は農業を営んでいるが,原告は平成19年11月以降,父親や知り合
いの農家の生産する農産物等をcの名称でインターネットを通じて販売し,また小
売業者に委託して販売するなどの業務に従事するようになった。
イ株式会社阪食との取引
原告はスーパーマーケット「阪急オアシス」を経営する株式会社阪食と交渉し,
平成24年5月1日から同社に委託してその複数の店舗においてcの商品を販売し
てもらうこととなった。その際,原告とその父親を含む十数名が,商品の生産者と
して阪食に登録した(以下,登録した者を「登録農家」という)。取引が終了した
平成25年6月下旬までの約14か月間において,登録農家の総売上額(販売額か
ら阪食の手数料を差し引いた額)は6616万7500円に上った。このうち原告
を登録農家として販売された商品の売上額は434万4073円であり,父親のそ
れは4012万7026円である。
ウ許可の不存在
原告はcとの関係で営利企業等に従事する許可を処分行政庁から受けておらず,
許可申請書の提出すらしていない。
⑶株式会社dの営業への関与(乙公14から19まで)
ア給水装置工事主任技術者の資格の取得
原告は給水装置工事主任技術者試験に合格し,平成10年2月17日付けで厚生
大臣から免状の交付を受けた。この試験は給水装置工事に関して3年以上の実務の
経験を有する者でなければ受けることができない(水道法25条の6第2項)。
イ株式会社d
株式会社dは水道施設工事の請負,設計施工等を目的として平成12年6月に成
立した宝塚市に本店を置く株式会社である。原告は設立時発行株式のすべてを引き
受けた発起人であり,妻が代表取締役に,両親が取締役に就任したが,原告自身は
役員に就任しなかった。
dは同年9月,兵庫県三田市と被告の各水道事業管理者に対して指定給水装置工
事事業者の指定を申請し,それぞれ指定を受けた。この指定を受けるためには事業
所ごとに給水装置工事主任技術者として選任されることとなる者を置かなければな
らないため(水道法25条の3第1号),給水装置工事主任技術者免状の交付を受
けている原告を選任し,届け出た。
ウ許可の不存在
原告はdとの関係で営利企業等に従事する許可を処分行政庁から受けておらず,
許可申請書の提出すらしていない。
⑷女性との交際とこれをめぐる訴訟(乙公20から22まで,49,50)
ア交際の経緯
原告は平成24年10月初旬,神戸市内で開催された「街コン」(男女の出会い
をとりもつために街ぐるみで行われる大規模な男女懇親会)に参加した。当時44
歳で妻子がいたにもかかわらず,参加者である当時32歳の独身女性(以下「A」
という)に対し,年齢は39歳,妻を3年前に亡くした,子はいない,大阪の消防
署で勤務しているなどとうそをついて親しくなり,同月28日には結婚を前提とす
る交際を申し込み,交際を開始した。その翌日には肉体関係を求め,応じさせた。
同年11月に1泊2日の旅行に出かけた際には「先に子供ができたらすぐに結婚し
よう」などと述べた。
原告と結婚する気になったAは平成25年3月頃,その素姓を知りたくてインタ
ーネットで原告の氏名を検索し,実際は大阪ではなく被告の消防署で勤務している
ことを知った。その後情報収集を続けて原告の自宅住所を突き止め,同年4月1日,
母親とともにその自宅に赴き,原告とその両親の5人で話をした。これにより,交
際を申し込むにあたって原告が述べたことがすべてうそであったことが判明し,原
告とAの関係は破局を迎えた。原告は同月29日,Aに30万円を手渡し,以後両
者が会うことはなかった。
イ被告に対する被害の訴え
Aは平成25年5月27日,母親とともに被告の総務部行政管理室人事課に赴き,
原告から結婚詐欺の被害を受けたと訴え,原告と電話で会話した内容を録音した音
声データを提供した。同月31日と同年7月2日にも同様のデータを提供した。
ウ損害賠償請求訴訟の提起
Aは同年9月,原告に対し不法行為に基づき330万円の損害賠償(慰謝料30
0万円,弁護士費用30万円)を求める訴えを神戸地方裁判所伊丹支部に提起した。
⑸旅行願に記載した行先と異なる行先への旅行(乙公23,24)
原告は平成25年2月21日,3月8日から10日までの3日間,長崎県にある
妻の実家に帰省すると記載した旅行願を当時の所属先であるa消防署の署長へ提出
したが,実際にはその期間中,長崎県には行かず中国の上海に渡航した。
⑹消防本部による調査(乙公12,38から40まで,46)
Aが被告に提供した音声データ(上記⑷イ参照)には原告がcの営業に関与して
いると疑われる会話内容が記録されていた。被告の消防本部はこのデータとAの供
述をもとに原告の非違行為に関する調査を開始し,平成25年6月17日以降,消
防職員からの事情聴取,阪食等に対する聞き取り調査,現地調査等を行った。同月
19日にはこの問題に対処するために「宝塚市消防職員に関する信用失墜行為等に
関する調査会」を設置し,調査を進めた。この結果上記⑵~⑸の事実が判明した。
原告からの事情聴取は同月17日と26日の2回行い,17日の事情聴取の後に
は顚末書を徴求した。
⑺懲戒処分(甲1,4,12,13)
被告の消防職員懲戒審査委員会は平成25年12月19日,原告に対する懲戒に
ついて審議し,懲戒免職とすることを決定した。対象となった非違行為は上記⑵~
⑸に対応するもので,次の①~④(以下「非違行為①」などという)である。非違
行為①・②は地公法38条に,非違行為③は同法33条に,非違行為④は同法32
条,消防服務規程9条,14条に違反するとされた。
①営利企業等に従事する許可を受けずに営利企業であるcを営んだこと
②営利企業等に従事する許可を受けずに営利企業であるdを営んだこと
③妻子があるのに独身と偽ってAと交際し,これが発覚して損害賠償請求訴訟
を提起されたこと
④本来は中国の上海を行先とする旅行願を提出して承認を受けなければならな
いのに長崎を行先とする虚偽の旅行願を提出したこと
これを受け,処分行政庁は同月26日付けで,地公法29条1項1号~3号の規
定により懲戒処分として原告を免職した(以下「本件処分」という)。原告に交付
された懲戒処分事由説明書の記載は別紙②のとおりである。
⑻審査請求と訴えの提起(甲2,3)
原告は平成26年2月17日付けで宝塚市公平委員会に審査請求をした。同委員
会は平成27年5月25日,これを棄却する裁決をし,裁決書の写しは同月27日
に原告に送達された。原告は同年11月26日,本件訴えを提起した。
3おもな争点
非違行為①~④が懲戒事由に該当することは当事者間に争いがないため,おもな
争点は本件処分における裁量権の逸脱・濫用の有無である。
⑴被告の主張
ア個別の非違行為に関する事情
非違行為①について
cは営利企業であり,原告は長期間にわたって実質的代表者としてその経営に関
与し,巨額の取引を行い,みずから利益を得た。農産物の販売にあたって生産地を
偽ること(産地偽装)や生産者の表示を偽ることもあった。判明しているだけで6
名もの同僚職員を関与させ,飲食費の負担,外国旅行を含む旅費の負担,現金の供
与など様々な形で対価を与えていた。
非違行為②について
原告はdの事実上の経営者としてその営業を行った。その取引において原告は,
司法書士に土地の分筆登記を委任しながらその費用等38万円を支払わない,ガソ
リンスタンドで後払いの約束をして給油をさせながらその代金21万9453円を
支払わないなどの不誠実な行為をした。
非違行為③について
原告は妻子のある身でありながら「街コン」に参加し,出会ったAに対し年齢,
勤務先,住所を偽ったうえ独身であるとうそをついて交際し,Aに結婚の期待を持
たせた。やがてうそが発覚することとなったが,これに対し原告はわずか30万円
を手切れ金であるかのごとく手渡し,責任回避を図ろうとした。このような行為に
及んだあげく損害賠償請求訴訟を提起されたことは,それだけでその職の信用を傷
つけ,職員の職全体の不名誉となる。Aが被告に被害を申告したという事実は,こ
の問題が単に原告とAの個人的な問題にとどまらない状況に至っていたことを示し
ている。Aが提供した音声データに記録されていた原告の発言内容は,「おじん,
おばんは殺すしかない,障害者も含めて一掃するしかない」「(大地震が起こった
場合)全部死ぬやつは死んだらええやん」「消火活動は一生懸命するのはばからし
い。公務員は働いたらだめ」などの聞くに堪えないものであった。
非違行為④について
非常事態の発生に即応できるよう常に所在を明らかにしておくことは消防職員の
基本的な義務であるにもかかわらず,原告は外国旅行に行くことを隠蔽する目的で
長崎県を行先とする旅行願を提出したのであり,これは虚偽報告である。
イ非違行為①・②(営利企業への従事等)に関する過去の類似行為
原告は平成5年7月に「父親の手伝い」として営利企業等に従事する許可の申請
をしている。この時は地公法38条1項に抵触しないとして許可は不要とされたも
のの,従事に際しては必要最小限にとどめ節度ある行動を特に望むとの指導を受け
た。平成12年には不動産取引への関与が疑われ,第三者に疑念を抱かれるような
言動は厳に慎むよう注意を受けた。ところが翌平成13年には妻名義で会社を設立
し土木業を営んでいる疑いがもたれ,平成17年には土建屋事務所を設けて金もう
けをしているとの通報があった。
このようにたびたび営利企業への従事等を問題にされ調査や注意を受けてきたに
もかかわらず調査をくぐり抜け,これをやめずにいっそう拡大しているのであり,
相当長期間にわたり地公法38条に抵触する行為を継続していた疑いがきわめて強
い。
ウ日頃の勤務態度
原告の主張する日頃の勤務態度を前提としても本件処分が重すぎるとはいえない。
Aに対する発言内容からすると,原告は,社会公共の秩序を維持
する崇高な使命を帯びる消防職員としての自覚を欠き,むしろこのような自覚とは
かけ離れた認識で日頃の業務に従事していたことを否定できない。
エ非違行為後の態度
非違行為が明らかになった後も真摯に反省するのではなく,到底通用しないこと
が明らかな弁解を平然と繰り返し,責任転嫁や責任回避を図った。
非違行為①については,関係した消防職員に口裏あわせや口止めを強いるなどし
た。非違行為に及んだことを反省するどころか,その違法性を熟知したうえでさら
に事実を隠蔽し,調査を妨害しようとしたのであり,悪質きわまりない。非違行為
④の手続の懈怠については何の反省の態度もみせていない。
オ指針との関係
指針はもともと処分量定を決定するにあたって「参考」にすることを目的として
作成されており,標準的な事例を前提に処分を例示するものである。「基準」や「な
されるべき量定」を定めたものではない。事案によっては標準例に掲げる処分の種
類以外とすることもありうるとされている。
非違行為①・②・④は標準例のうち「休暇の虚偽申請」「勤務態度不良」「虚偽
報告」「兼業の承認等を得る手続きの懈怠」に該当する。非違行為③に該当する項
目は標準例には存在しないが,いわゆる結婚詐欺にあたる。非違行為①・②につい
ては,長期間にわたって複数の営利企業に従事し巨額の利益を得ていたうえ,産地
偽装,名板貸し,債務不履行などもあり,仮に従事する許可の申請をしたとしても
許可を受けることなど到底できない内容であるから「兼業の承認等を得る手続きの
懈怠」では評価しきれない。原告の非違行為は標準例を参考にして処分を決定する
ことができる範囲をはるかに超えており,標準例へのあてはめにより評価すること
は妥当でない。
カ免職が相当であること
非違行為①・②は,ただ多額の利益を得ようとするためだけの行為であり,非違
行為③は,女性の人格を踏みにじる非人道的行為であり,非違行為④は,消防職員
の基本的義務を怠る行為である。一般職員の模範となるべき係長という立場にあっ
たにもかかわらず同僚職員を多数巻き込んで営利企業に従事させており,職務への
影響はきわめて大きい。被告の消防職員が事業を行い多額の利益を得ているという
評判は職場外にも広まっていた。Aに対する発言においても,全精力を営利事業に
そそぐことを公言する一方,消防職員の職務についてあしざまに語っており,被告
の消防職員,ひいては被告の職員一般に対する評価を地に落としめた。過去に許可
を得ることなく営利企業に従事等した事実はその疑いを含めて少なくとも4件以上
あったが,巧みに処分を回避してきた。原告の非違行為は悪質であるばかりか多く
重なっており,単発的で一時的な非違行為とは次元が異なる。上記エのような非違
行為後の態度も処分の加重事由として考慮すべきである。
これほどの悪質な事案は稀有であり,原告の任用を継続すれば被告はきわめて大
きな社会的非難を受けるし,他の職員への悪影響ははかりしれない。原告の非違行
為は公務員に対する信頼を根底から失わせるものであり,免職以外の結論を選択す
ることはできなかった。
キほかの事案との比較
本件は比較すべき事案も見あたらないほどの特異で悪質な事案であるし,類似す
る事案において懲戒免職が相当とされた裁判例もあり,本件処分がほかの事案と比
較して均衡を失するとはいえない。
クまとめ
以上のとおり,原告の非違行為はほかに例をみないほどきわめて悪質であり,懲
戒免職処分以外にとるべき方法はなかった。裁量権の逸脱・濫用はなく,本件処分
は適法である。
⑵原告の主張
ア指針との関係
指針は懲戒における裁量権行使の基準であり,これに反することは認められない。
標準例に掲げられていない非違行為についても懲戒対象事実とはなりうるが,あく
までも標準例を参考とすべきである。停職以下の処分では足りない場合に初めて免
職が肯定される。
非違行為①・②の標準的な処分の種類は戒告または減給であり,非違行為③は直
接には標準例に該当せず,非違行為④については虚偽の旅行願は提出していないか
ら非違行為とまでは認定できないともいえる。したがって標準例から加重するとし
ても,停職とすることはできたとしても免職とすることはできない。
イ個別の非違行為に関する事情
非違行為①について
原告を生産者と表示した農産物が阪食の店舗で販売された事実はない。登録農家
となるためには阪食から生産者番号と呼出コードの付与を受け,商品ラベルを作成
する高額な専用機械を購入する必要があったため,登録農家とならない農家もあり,
原告の父親は自身と原告の生産者番号・呼出コードを使ってそのような農家が生産
した農産物を出荷した。阪食の売上金は原告の口座に送金されたが,これはこれら
の農家に分配されており,原告は利得していない。なお原告が登録農家となったの
は,退職後に農産物を出荷することを考えたからにすぎない。
原告の父親は三田市,宝塚市,神戸市で農園を経営しており,三田市と宝塚市の
農園で生産した農産物を神戸市で経営する農園に運んだうえで出荷することがしば
しばあった。その場合,一括して生産地が神戸市と表記されてしまったが,本来は
兵庫県産という表記で足りる。これは産地偽装ではなく誤表記にすぎないし,上記
のとおり原告の父親がしたことであり原告がしたことではない。
同僚職員に対し非番の日に父親や友人の農作業の手伝いをすることを願い出て,
同僚職員がこれに自発的に応じてくれたことはあったが,現金で報酬を支払ったこ
とはない。
非違行為②について
原告がdの役員の地位についたことはない。また,消防職員としての業務が多忙
であったため,dがした給水装置工事に実質的に関与する暇はなかった。3年以上
の実務経験という給水工事主任技術者の受験資格を満たしたのは,高校在学中の3
年間,父親が経営する会社で給水装置の工事計画立案,工事現場における監督,給
水装置工事の施工等のアルバイトをしていたからである。
dが支払っていない債務は高額とまではいえないし,すでに消滅時効が完成して
いる。
非違行為③について
Aに対し独身であると伝えたのは,当時妻との間で協議離婚の話合いが行われて
いたからであり,交際期間も長期ではない。
Aから提起された損害賠償請求訴訟は本件処分後の平成26年8月に和解により
終了した。和解において原告が謝罪の意を表明し,本件処分を受けて生活が困窮し
ているにもかかわらず200万円という多額の解決金を支払ったこと,Aがこれを
受け入れてそのほかの請求を放棄したことを含め,当該訴訟の最終的な結論は,原
告に対する懲戒処分を行う際に判断要素とすべき重要なことがらである。しかし処
分行政庁はこれらの事情をいっさい斟酌しようとすることなく拙速に本件処分を行
った。
非違行為④について
原告は故意に虚偽の旅行願を提出したのではない。本件で問題となった旅行願に
ついては,その提出後に行先が変更になったという事情があった。このような場合,
所属長に報告して了承を得ればいいと考えていた原告はそのとおりに行動したにす
ぎない。しばしば外国旅行に行っているが,旅行願に不備があるとされたのは今回
だけであり,今回にかぎって虚偽の旅行願を提出する理由はない。
具体的にいうと,長崎県を行先とする旅行願を提出する一方で,原告は上司であ
る所長に対し,格安航空券が入手できれば上海に行く予定であると事前に伝えてお
り,実際に入手した後,行先を上海に変更すると伝えた。このように自己の所在に
ついて上司に伝えるよう努めており,消防服務規程に違反したとしても,実務慣行
を誤解したものであり過失による違反である。そしてその原因は消防署長の指導不
足であったというべきである。
ウそのほかの考慮すべき事項
指針によれば,具体的な処分量定を決定するにあたっては日頃の勤務態度を考慮
することとされている。原告はこれまで署長功績賞,消防長功労賞,優秀職員賞,
医師会からの表彰を受けるなどしており,日頃から真面目に勤務してきた。平成1
9年1月に発生したカラオケボックス店における火災では,原告の指示により女子
中学生4名が軽傷ですんだという功績がある。1年間に42日ほどある有給休暇も
10日ほどしか取得せず,自発的に勤務に励み,人命救助にあたってきた。これら
の良好な勤務態度を斟酌していれば本件処分がされなかった可能性はきわめて高い
し,これらの考慮すべき事項を考慮していないこと自体が指針に反する。
エほかの事案との均衡
非違行為①~④はいずれも地公法違反や民事上の責任が問題となるにすぎない行
為である。ほかの懲戒事案をみると,窃盗,文書偽造,詐欺,傷害,青少年保護育
成条例違反などの刑事上の責任が問題となる事案ですら,減給や短期間の停職にと
どまっている。被告の管財課の副課長が会社を設立して勤務時間中に公用メールで
商談を行い年間約7000万円の収入を得ていた事案や,佐賀広域消防局の消防副
士長がマンションや駐車場の賃貸で年間約7000万円の収入を得ていた事案でも,
停職,減給にとどまっている。これらの事案と比較しても本件処分は均衡を失して
重すぎる。
オAに対する発言内容
原告がAとの会話において行った発言内容自体が信用失墜行為にあたるなどと被
告は主張するが(上記⑴ア,ウ,カ参照),懲戒処分事由説明書に記載はなく非
違行為とされていない。そのような主張は処分理由の差替えに等しく,認められな
い。
カまとめ
以上のとおり本件処分は著しく相当性を欠き,裁量権の範囲を逸脱・濫用したも
のであるから違法である。
第3当裁判所の判断
1認定事実
基本的事実関係に加えて証拠(カッコ内のもののほか甲24,乙公49,50)
と弁論の全趣旨により以下の事実を認める。
⑴過去における原告と営利企業との関わりについての処分行政庁の対応(乙公
34から37まで)
ア平成5年の許可の申請と指導
原告は平成5年7月15日,父親が代表取締役を務めるe株式会社において平成
2年7月頃から業務に従事していたと処分行政庁に報告した。①父親の送迎,②残
業している従業員への弁当等の買出し,③事務所の清掃,④事務所の電話番,⑤事
務用品の買出し等を1回1,2時間程度,週に1,2回行ったが,報酬の支給はな
くガソリン代のみ支給を受けていたという内容である。同時に,今後も父親に協力
していきたいとして,父親が代表取締役を務める同社と有限会社fにおいて同年8
月1日以降業務に従事することについて,営利企業等に従事する許可を申請した。
報酬の支給はないという申告をふまえ,処分行政庁は同月30日,申請のあった業
務内容は地公法38条に抵触しないと判断し,a消防署長に通知した。同署長は同
年9月7日,原告に対し上記通知の内容を伝えるとともに,地公法38条の立法趣
旨を常に遵守し,今後いっそう言動に注意するよう指導した。
イ平成12年の調査と指導
平成12年8月頃,原告が農地法に基づき神戸市甲区にある農地を購入する許可
の申請をしたことに関連して,被告の農政課長は処分行政庁に対し,原告のdへの
関与の有無に関する問い合わせをした。消防本部次長が同月25日,原告から事情
を聴取したところ,原告は,その農地は妻名義で購入することにするとしたうえで,
eはdに,fはg株式会社に,名称変更したと報告した。名称が変更になったので
あれば新たに申請書を提出するようにと次長は指示し,営利企業への従事等につい
て第三者から疑念を抱かれるような言動は厳に慎むよう指導した。原告はこれに応
じると答えたが,結局申請書は提出しないままとなった。
ウ被告への投書に基づく調査
平成13年1月25日,被告に対し,原告は公務員なのに会社を設立し,神戸市
甲区乙に事務所を置いている,こういうことを被告は認めるのかという内容の匿名
の投書があった。調査したところ,原告が妻名義で会社を作って実質的に経営して
おり,自分でも実際に土木作業をしているとの報告がほかの消防職員からあり,ま
た,神戸市甲区乙にdの事務所があり,その駐車場に原告所有の自動車が駐車して
いることが確認された。しかし原告が妻名義でdを設立したとの事実については確
認がとれず,調査は続行となり,対応は先送りされた。
平成17年3月17日,市政に関する市民の意見や要望を聴くため被告が設置し
ている投書箱に,原告が消防署で働きながら会社を設立して金もうけをしている,
こんなことが許されるのか,4年前にも知らせたが放置しているからやめないのだ
ろう,なぜやめさせないのかなどと記載された広聴カードが投函され,翌日には同
じ内容の手紙が処分行政庁に届いた。消防本部次長は同月23日,原告から事情聴
取を行った。原告は,広聴カードに記載されている会社は妻が代表取締役を務める
会社(d)であると思われるが,自分はいっさい報酬を受けておらず,地公法38
条に抵触する行為はしていないと答え,ここでも処分行政庁の対応は先送りされた。
⑵dをめぐる個別の事情(乙公14から19まで)
ア給水装置工事への関与
dが平成20年4月に三田市長の承認を受け,同年7月に完了した給水装置工事
において,原告は主任技術者とされていた。
イ土地分筆登記の委任と費用等の不払い
原告は平成15年12月16日,dの代表取締役を名乗って司法書士に対し神戸
市甲区にある土地の分筆登記手続を委任した。司法書士は平成16年2月6日まで
に委任事務を処理し,その費用と報酬として38万円を請求したが,dは支払わな
かった。
司法書士は平成18年2月,伊丹簡易裁判所の裁判所書記官に対し上記の38万
円について支払督促の申立てをし,裁判所書記官は支払督促を発した。dは督促異
議の申立てをし,訴えの提起があったものとみなされたが,口頭弁論期日に出頭し
なかったため,同裁判所は同年4月19日,請求を全部認容する判決を言い渡した。
dはそれでも上記費用等を支払わないままである。
ウ給油取引と代金不払い
原告は平成20年以前,dの代表取締役を名乗って神戸市甲区にあるガソリンス
タンドを経営する石油店と取引を開始し,この取引に基づき原告とdの従業員がガ
ソリンスタンドを利用した。しかしdは平成21年3月分以降の給油代金を支払わ
ず,店主は原告が来店するたびに支払いを促したが,その後も支払いがないままで
ある。原告が最後に来店した同年8月までの未払額は21万9453円であった。
このガソリンスタンドは平成22年6月に閉店した。
⑶cをめぐる事情(乙4から8まで,乙公1から13まで,25から33まで)
アcの営業の実態と原告の関与
原告は平成19年11月以降,農産物等をcの名称でインターネットを利用して
販売し,あるいは小売業者へ販売の委託をするなどしていた(基本的事実関係⑵ア
参照)。すると平成22年11月頃,大手スーパーである阪食に販売委託をするこ
とができるという話が持ち上がり,原告は規模を広げて阪食と取引することにした。
当初は三井物産ロジスティクスマネジメント株式会社を介しての取引であったが,
平成24年5月からは阪食との直接の取引となった。cの名称で農産物等の取引を
した登録農家は十数軒に上った。
直接の取引を開始するにあたり,原告はcの代表として阪食と契約書を取り交わ
した。取引の仕組みは,cの名の下に集まった登録農家が生産した農産物等を阪食
がその各店舗で販売し,売上金から阪食の手数料を控除した金額が,原告の氏名に
cを冠した名義の銀行口座に振り込まれるというものであった。売上金は登録農家
ごとに管理されており,原告は上記口座に振り込まれた売上金を登録農家に分配し
ていた。
原告やその父親と関係する農家の中には,登録はしたくないが阪食に販売を委託
したいという者もあり,このような農家が生産した農産物等について原告は,cの
名の下に,原告あるいは父親を登録農家として阪食に販売を委託し,阪食から振り
込まれた売上金を分配していた。
イ同僚への仕事の依頼
原告は遅くとも平成21年頃から,部下であるhやiをはじめとする被告の消防
職員に対し,cの商品である農産物の収穫や袋詰め作業等の手伝いを依頼するよう
になった。iは平成21年から平成22年にかけての冬頃,猪肉のパック詰め作業
を手伝い,作業後に余った猪肉を譲り受けた。平成22年2月と平成23年1月の
2回,原告とともに中国へ旅行に行った際は,日頃の農作業の手伝いに対する報酬
として旅費は全額原告が負担した。hについても,国内旅行,中国旅行を共にし,
原告が費用を負担したことがあった。hとiはまた平成25年3月22日,登録農
家の生産したブロッコリーの袋詰め作業を手伝い,原告から報酬としてそれぞれ1
万円を手渡された。
ウ兵庫県農政環境部等による立入検査(乙公12)
近畿農政局神戸地域センターと兵庫県農政環境部農政企画局消費流通課は共同で,
平成25年5月2日と13日の2回,cすなわち原告に対し立入検査を実施した。
阪食の店舗で販売された商品について,①三田市と宝塚市で生産した農産物の生産
地を神戸市と表示した,②登録農家でない農家が生産した農産物を登録農家である
原告の父親が生産したと表示した,という疑いについて調査するためである。原告
は事実関係を認め,同年11月5日付けで「改善報告書」を提出した。
⑷Aが提起した訴えの顚末(甲5,甲公27,乙公20から22まで)
Aが提起した損害賠償請求訴訟(基本的事実関係⑷ウ参照)において原告は,妻
と離婚協議中であったことからAとの再婚を視野に入れて交際していた,Aに手渡
した30万円は交際解消についての慰謝料であるなどと主張して争ったが,平成2
6年8月26日,訴訟上の和解が成立した。その内容は,既婚者であることなどを
隠して交際を続けた結果多大な精神的苦痛を与えたことについて原告は謝罪の意を
表明し,Aはこれを真摯な反省と誠意の表れとして受け入れる,原告は解決金とし
て200万円の支払義務があることを認め,このうち170万円を和解の席上で支
払い,残金についてはAに手渡した30万円を支払いに充当する,Aはそのほかの
請求を放棄するというものである。
なおAとの交際に関しては次の事実があった。第1に,Aは原告と交際していた
当時,独身であり子供もいなかったが,離婚歴があった。第2に,交際にあたって
飲食や宿泊をする際,その費用はほとんど原告が負担していた。
⑸旅行願をめぐる事情(甲公14,乙公23)
原告は平成25年2月初め頃,3月8日から10日までの日程で中国の上海に行
くことができる格安航空券が2月末に発売されることを知り,これを購入して上海
に行くことを計画したが,その時点では確実に入手できるかどうか明らかでなかっ
た。そこで2月21日,3月8日から10日までの期間に不在になることを上司に
知らせるため,長崎県にある妻の実家に帰省するという内容の旅行願を提出し,承
認を受けた(基本的事実関係⑸参照)。その後上海行きの格安航空券を首尾よく入
手できたため,3月初旬頃a消防署を訪れ,行先を上海に変更することを副署長に
報告しようとしたが,不在であったため,庶務係の職員にこれを伝えた。そして上
海を行先とする旅行願を提出しないまま上海に出かけた。
⑹部下に対する証拠隠滅の働きかけ(乙公25から30まで)
アhに対する働きかけ
原告は平成25年6月17日,自分の非違行為に関する調査の一環としてhが消
防本部から事情聴取をされたことを知り,hに電話をかけて何を聞かれたかを確認
した。同月20日にも電話をかけて,提出を求められている顚末書に虚偽の事実を
記載するよう指示した。具体的な指示内容は,一緒に兵庫県北部に旅行した際に原
告が負担したガソリン代をhが負担したことにすること,一緒に中国の大連に旅行
した際に原告が旅費を負担したことのお礼としてhが5000円相当の酒を2本渡
したことにすることなどである。電話をかけたこと自体についても口止めをした。
イiに対する働きかけ
原告は同じく6月17日,iに電話をかけて,原告に関係している職員が消防本
部から事情聴取を受けていることを伝え,「万一事情聴取を受けた場合はとぼけろ」
と指示した。同月19日,iが事情聴取を受けた後にも電話をかけ,「今後も何を
聞かれても知らない,覚えていないを貫け」と指示した。
⑺表彰歴等(甲8,乙公48)
原告は昭和61年4月に採用されてから懲戒免職処分となった平成25年12月
26日まで約27年9か月にわたって勤続した。平成13年1月14日から平成2
4年1月8日までの間に,処分行政庁による消防優秀賞2回,消防功労賞1回を含
む合計8回の表彰を受けた。懲戒処分を受けたことはない。
2懲戒事由該当性
前記のとおり非違行為①~④が懲戒事由に該当することは当事者間に争いがない
が,地公法の各規定に照らしてその当否をここで確認しておく。
⑴非違行為①
被告の主張(別紙②の懲戒処分事由説明書の説明のとおりである。非違行為②~
④に関する被告の主張も同様である)は,原告は任命権者である処分行政庁の許可
を受けることなく,cの名称で農産物の販売等の営業行為を行ったから,地公法3
8条1項に違反し,同法29条1項1号~3号の懲戒事由に該当するというもので
あると解される。
地公法38条1項の要件に照らしてみると,この主張は,営利企業を営むことを
目的とするcという団体の役員を兼ねたというのか,それともみずからcという名
称で営利企業を営んだというのか,必ずしも明らかでない。原告はcの組合長など
と名乗っていたが(乙公2,11),cがいったいいかなる団体であるのかは明ら
かでなく,いわゆる権利能力なき社団の要件(最一小判昭和39年10月15日民
集18巻8号1671頁参照)を満たす事情があるとは認められない。むしろ基本
的事実関係⑵と認定事実⑶によれば,原告自身がcという名称を使用して農産物等
の販売委託を中心とする営業行為を行っていたと認めることができる。したがって
被告の主張は,原告が許可を受けることなくみずから営利企業を営んでいたことを
いうものとして正当というべきであり,これを前提にして,同法29条1項1号~
3号の懲戒事由に該当するという結論も肯定することができる。
⑵非違行為②
被告の主張は,原告は任命権者である処分行政庁の許可を受けることなく,dと
いう株式会社を営んでいたから,地公法38条1項に違反し,同法29条1項1号
~3号の懲戒事由に該当するというものであると解される。
しかし第1に,dには法人格があるから,その事業はいうまでもなくd自身が営
んでいるのであり,これを原告が営むということはありえない。第2に,原告がd
の役員の地位についたことはないから,許可を受けることなくdの役員を兼ねたと
いうこともできない。被告は発起人が株式会社の役員であると理解しているようで
あるが,一般に法人の役員とは,その業務執行に関連する権限を有する者のことを
いうのであり,設立のみに関与する発起人を役員ということはできない。第3に,
原告がdの事業ないし事務に従事していたことは認められるが,それについて報酬
を得ていたという証拠はない。このように,原告についてdとの関係で地公法38
条1項に直接違反する事実があるとみることは困難である。もっとも,基本的事実
関係⑶と認定事実⑴・⑵によれば,原告はdの事実上の代表取締役として行動して
いたと認めることができる。このような行動は,許可を受けることなく株式会社の
役員である代表取締役を兼ねることと実質的に同じであり,その地位を公的な関係
と私的な関係とで使い分け,責任の所在を不明確にしている点でより悪質であると
いいうるから,地公法38条1項の趣旨に反することは明白である。したがって,
許可を受けることなくdの役員を兼ねていたのと同視できるという点で非違行為②
は同項の趣旨に反し,同法29条1項1号~3号の懲戒事由に該当するといえる。
被告の主張はこの趣旨をいうものとして肯定することができる。
⑶非違行為③
被告の主張は,結婚詐欺ともいいうる原告の行為は,信用失墜行為として地公法
33条に違反し,同法29条1項1号・3号の懲戒事由に該当するというものであ
ると解される。
たしかに原告は,結婚を視野に入れた男女の交際という人の一生にも影響を及ぼ
しうる重要な問題についてAをだましてその心情を著しく傷つけたのであるから,
Aの人格権を侵害する不法行為が成立するといえる。しかしこれは公務外の,しか
もまったくの私的なことがらであり,刑罰の対象にもならない。道義的に非難され,
民事上の責任を負うべきものであるとしても,全体の奉仕者として公共の利益のた
めに勤務する公務員としてふさわしくない行為であるとか,公務員関係の秩序を維
持するため制裁を科すべき行為であるとはただちにいいがたく,そもそも懲戒処分
になじみにくい行為である。ただ,そうはいっても,消防服務規程において特に,
「消防職員は,その職の信用を傷つけ,又は職全体の不名誉となる行為のないよう
常に心を清潔にし,身辺の潔白に努めなければならない。」(7条),「消防職員
は,常に身体,服装及び態度を清潔かつ端正にし,品位の保持に努めなければなら
ない。」(8条)と規定されていることを考慮すると(乙3,乙公42),非違行
為③が地公法33条に違反し,同法29条1項1号・3号の懲戒事由に該当するこ
とを否定することまではできない。
⑷非違行為④
被告の主張は,虚偽の旅行願を提出したことは消防服務規程9条,14条に違反
し,地公法29条1項1号~3号の懲戒事由に該当するというものであると解され
る。
しかし認定事実⑸によれば,原告が提出した長崎県を行先とする旅行願が虚偽の
ものであったということはできない。この旅行願を提出した2月21日の時点では
上海行きの格安航空券はまだ入手しておらず,上海に行くことは決まっていなかっ
たからである。もちろん,その後これを入手し,上海に行くことを決めた以上,消
防服務規程14条に従い,上海を行先とする旅行願を処分行政庁に提出して承認を
受けるべきであった。原告が責任を問われるべきはこの不作為であり,これが同規
程9条,14条に違反することはいうまでもない。したがって虚偽の旅行願を提出
したという被告の主張は採用できないが,法令の適用に関するかぎり被告の上記主
張は正当である。
3判断枠組み
地方公務員につき地公法29条1項各号所定の懲戒事由がある場合に,懲戒処分
を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,懲戒権者の裁量
に任されている。懲戒権者は懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,
性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲
戒処分等の処分歴,選択する処分がほかの公務員および社会に与える影響等,諸般
の事情を総合的に考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また懲戒処分をする場合
にいかなる処分をすべきかを,その裁量的判断によって決定することができる。裁
判所がその処分の適否を審査するにあたっては,懲戒権者の裁量権の行使に基づく
処分が社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認め
られる場合にかぎり,違法であると判断すべきである(最一小判平成2年1月18
日民集44巻1号1頁参照)。
本件においては,これに加えて指針との関係が問題となる。指針は,被告におけ
る職員に対する懲戒処分をこれに従って行うべきものとして公表されたものである。
代表的な事例を選び,それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものであ
るとしながらも,懲戒処分の対象となりうる非違行為には様々なものがあること,
情状にも様々なものがあることを前提としたうえで,あらゆる事例に対処できるよ
う,種々の考慮要素を掲げている。すべて職員の懲戒については公正でなければな
らず(地公法27条1項),職員は同法の適用について平等に取り扱われなければ
ならないこと(同法13条)をも考慮すると,指針は被告に所属する行政庁を拘束
するというべきであり,指針を逸脱して懲戒処分が行われた場合,裁量権を逸脱・
濫用するものとして違法になると解すべきである。もちろん上記のとおり結局は
個々の事例ごとに種々の考慮要素を検討する必要があるから,指針を逸脱するか否
かの判断は必ずしも容易とはいえないが,標準例と異なった処分量定をすることが
許されるとしてもそこにはおのずから一定の限度があるから,個々の事例について
逸脱の有無を判断することは可能というべきである。これに対し,行政の内部規則
と位置づけられる指針が裁判所を拘束することはないから,指針を逸脱しないと判
断される場合であってもなお,裁量権の逸脱・濫用があるか否かを判断する必要が
ある。
以上の判断枠組みに従って,処分行政庁の裁量権の逸脱・濫用の有無を検討する。
4指針の定める処分の標準例
指針に基づいて非違行為①~④についての標準的な処分の種類を検討する。
⑴非違行為①・②について
指針によれば,非違行為①・②はいずれも「兼業の承認等を得る手続の懈怠」で
あり(別紙①の2⑵エ),これに対する標準的な処分の種類は減給または戒告であ
る。
被告の主張は必ずしも明確でないが,「勤務態度不良」(同イ),「虚偽報告」
(同ウ)にもあたると主張するようである。しかし原告が勤務時間中に職場を離脱
してcやdの業務に従事していたとは認められないし,cやdに関し事実を捏造し
て虚偽の報告をしていたとも認められない。被告の上記主張を採用することはでき
ない。
⑵非違行為③について
指針には非違行為③にあてはまる標準例は存在しないので,標準例に掲げる取扱
いを参考として判断する。
非違行為③は公務外の行為である。指針において公務外非行関係の標準例に掲げ
られているのはいずれも刑罰を受ける可能性のある行為である。規定されている処
分のうちもっとも軽いものは減給または戒告であり,その対象とされている犯罪行
為は,暴行・けんか,器物損壊,単純賭博,公共の場所等における酩酊による粗野
な言動等である(甲7,乙公47)。これに対し非違行為③は,「結婚詐欺」とい
われるものであるとしても,詐欺罪の構成要件に該当するとはいえず,刑罰の対象
にならない行為であり,上記の各行為よりも類型的に違法性の程度が低いと評価さ
れるから,標準的な処分の種類は減給と戒告のうち軽い方である戒告にとどまると
みるべきである。
⑶非違行為④について
前記のとおり,非違行為④の内容は,旅行願を提出して承認を得るという手続を
怠って外国旅行をしたことである。指針にはこれにあてはまる標準例は存在しない
が,関係するものとして,申告に関わるものである「休暇の虚偽申請」すなわち病
気休暇または特別休暇について虚偽の申請をしたこと(別紙①の2⑵ア)と「虚偽
報告」すなわち事実を捏造して虚偽の報告を行ったこと(同ウ)があり,標準的な
処分の種類はいずれも減給または戒告である。
前記のとおり原告は虚偽の旅行願を提出したわけではなく,非違行為④の実質は
不作為であるから,これを「虚偽報告」とみることはできない。また,病気休暇と
特別休暇は特定の事由がある場合に職員に与えることができる休暇である。年次休
暇とは異なり本来職員に与えられている休暇ではないため,その申請にあたり事実
と異なる内容を申告することの非違の程度は小さくない。これに対し非違行為④に
ついては,外国旅行に関する旅行願は処分行政庁へ提出することになっているため
(消防服務規程14条),行先が事実と異なるだけでなく提出先も誤っていたこと
にはなるが,本来受けることのできない承認を受けるための行為であったとか,本
来されないはずの承認がされたとは認められない。消防職員は非常事態の発生に即
応できるよう常に自己の所在を明らかにしておかなければならないが(同規程9条),
そうであるからといって,非違行為④について,虚偽の申請をして本来与えられな
いはずの休暇を取得することと比較して非違の程度が類型的に重いと評価すること
はできず,むし軽いといえる。以上の事情を考慮すると,非違行為④に対する標準
的な処分の種類は戒告にとどまるというべきである。
5指針からの逸脱の有無
⑴具体的な処分量定について
上記4のとおり,非違行為①・②についての標準的な処分の種類はいずれも減給
または戒告であり,非違行為③・④についての標準的な処分の種類はいずれも戒告
である。そこで,重い非違行為①・②に加えて軽い非違行為③・④が存在すること,
そのほか諸般の事情を考慮して,具体的な処分量定として免職を選択した処分行政
庁の判断が指針を逸脱するものであるかを検討する。
ア原告はcの名称による営業活動を平成19年から平成25年までの約6年間
にわたって行った。dの実質的な代表取締役を兼ねていた期間は明確にはなってい
ないものの,平成12年の会社成立時から平成25年までの約13年間にわたるも
のと推認することができる。これらの業務に従事する以前から営利企業への従事等
の制限に関して個別に調査・指導を受けており,従事するにあたって許可を受ける
必要があること,住民から強い非難を受けうる行為であることを十分認識していた。
それにもかかわらず許可を受けずに長期間にわたり営業行為を続けていたのである
から,行為の態様は悪質である。被告にあてられた投書の内容からすると(認定事
実⑴ウ参照),原告の行為を被告の職員の行為として認識していた住民は現実に存
在したのである。公務員が営利企業を営み,あるいは営利企業の役員を兼ねること
は,全体の奉仕者であり職務専念義務を負うことと相容れない面があり,住民に与
える不信感は小さくない。
非違行為①に関しては,部下に農作業を手伝わせ,報酬を与えている。係長とし
て部下を指導する立場にあったにもかかわらず部下の地公法違反の非違行為を助長
しており,非難の程度は高い。生産地や生産者について事実と異なる表示をしてお
り,これを正当化するだけの事情は認められない。非違行為②について,dは被告
の給水装置工事事業者の指定を受けているため,被告が経営する水道事業に関する
工事を被告の職員が事実上営む会社が施工することになるのであり,被告の公務全
体の公正性も疑われかねない。dには複数の債務不履行の事実もあり,営業態度は
不誠実であったと評価できる。非違行為①・②は消防職員の職に対する信頼を損な
うだけでなく,これを被告が容認しているとして被告に対する信頼も損なうことに
なりかねない行為である。
非違行為①が発覚した後,部下に対して口裏あわせを指示し,口止めをするなど
しており,非違行為後の態度も悪く真摯な反省はみられない。
イ他方で非違行為①に関し,原告を登録農家として販売された商品の売上額(販
売額-阪食の手数料)は約14か月で434万4073円(1か月あたり約31万
円)であり,これがすべて原告の手元に残ったとしても,原価や経費等を考えれば
得た利益がそれほど多額であったとはいいがたい。父親を登録農家として販売され
た商品の売上金(4012万7026円)から原告が利益を得ているということも,
親子という関係からすると考えられなくはないが,証拠がない。さらに,父親を含
めた他の登録農家の売上金(合計約6200万円)の一部を原告が取得していると
も考えられるが,まずはこれらの登録農家に対して相応の金額を分配しなければな
らない以上,それほど多額の金額を取得できたとは認めがたい。したがって非違行
為①により原告が多額の利益を得たという証拠はない。非違行為②についても同じ
である。勤務時間中にcやdの営業活動を行っていたという証拠もない。
非違行為③は,前記のとおり,懲戒処分になじみにくい行為である。Aから提起
された損害賠償請求訴訟も,本件処分の後ではあるが,訴訟上の和解により解決し
ている。非違行為④は内部的な手続違反にすぎず,これにより公務に支障が生じた
という証拠もない。いずれも標準的な処分の種類より処分を重くするほどの事情が
あるとはいえない。
原告は営利企業に従事等していた期間も含め消防職員としての表彰を8回受けて
おり,勤務態度は良好と評価されていたと認められる。Aに対する発言の内容を被
告は問題視するが,まったくの私的な会話の中での発言であり,これをもって勤務
態度が不良であったということはできない。過去に懲戒処分を受けたこともない。
ウ以上のとおり,非違行為①・②は職務専念義務の遂行や職務の公正に対する
信頼を損ないかねない悪質な行為であるが,これにより原告が多額の利益を得たと
も,現実に消防職員としての職務を怠ったとも認められない。職員の懲戒の手続及
び効果に関する条例(昭和29年宝塚市条例第10号)によれば,減給は1日以上
6か月以下の期間,給料とこれに対する地域手当の10分の1以下を減ずるとされ
(3条),その次に重い停職についても期間は1日以上6か月以下とされており(4
条1項),減給の金額や期間,停職の期間によって非違行為に見合う処分をするこ
とができる。そうすると,非違行為が4つあり,このうち重い非違行為①・②は同
種の行為を重ねてしたものであることなど,上記アで検討した事情を考慮したとし
ても,原告について指針上の標準的な処分の種類のうち重い減給から2段階加重し
て,その職を失わせる重大な不利益処分である免職とすることは,指針を逸脱して
いるといわざるをえない。
⑵他の事例との比較について
被告は,消防職員が実質的にテレフォンクラブと同内容の営業であるダイヤルQ
2事業を経営し,懲戒免職処分とされた事案において,その取消請求が棄却された
こと(大阪地判平成11年2月3日労働判例759号28頁)を挙げ,これを根拠
に,本件処分は適法であると主張するが,事業自体が社会的に非難されるものであ
る点でこの事案は非違行為①・②とはまったく異なる。
むしろ非違行為①・②について参考とすべき事案は,被告の管財課の副課長が勤
務時間中に勤務先のパソコンを使って商談をし,平成24年に年間約7000万円
の収入を得ていた事案であり,この職員は停職6か月とされている(甲10)。勤
務時間中に職務を怠り,職場で公務用のパソコンを使用して私的な業務を行い,多
額の収入を得ていた職員ですら,停職にとどめているのであるから,勤務時間外に
職場外で行われ年商もそれほど大きくない非違行為①・②と戒告が相当である非違
行為③・④をした原告を免職とすることは,均衡を失するといわざるをえない。
⑶まとめ
以上のとおり,本件処分は指針を逸脱するものであるから,社会観念上著しく妥
当を欠き,裁量権を逸脱・濫用するものとして違法である。
6結論
原告は懲戒事由に該当する行為を行ったが,それに対する懲戒処分として免職は
重すぎる。本件処分には裁量権の逸脱・濫用の違法があるから取消しを免れない。
神戸地方裁判所第6民事部
裁判長裁判官倉地康弘
裁判官達野ゆき
裁判官若林貴子
別紙①
1消防職員の服務規律
⑴営利企業への従事等の制限
ア地公法38条1項において,職員は,任命権者の許可を受けなければ,営利
を目的とする私企業(以下「営利企業」という)を営むことを目的とする会社その
他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体におい
ては,地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね,もしくはみずから営利企業を営
み,または報酬を得ていかなる事業もしくは事務にも従事してはならないとされて
いる。
イ職員服務規程20条において,職員は,地公法38条1項の規定により営利
企業等に従事する許可を受けようとするときは,従事しようとする業務の名称,場
所,職名,勤務の態様,従事時間,収入金額,その他従事の必要な事由等を記載し
た営利企業等従事許可申請書をあらかじめ任命権者に提出し,許可を受けなければ
ならないとされている。
この規定は,消防服務規程17条において消防職員の服務について準用されてい
る。
⑵所在の明確
消防服務規程9条において,消防職員は,非常事態の発生に即応できるよう常に
自己の所在を明らかにしておかなければならないとされている。
⑶旅行願
消防服務規程14条において,消防職員は,墓参,帰郷,転地療養その他私事に
より外泊を伴う旅行(日帰りは除く)のため,居住地を離れようとするときは,3
日前までにその理由,期間および行先を記載した旅行願を所属長へ提出し,承認を
受けなければならない,ただし,外国旅行に係る旅行願は,処分行政庁へ提出し承
認を受けるものとするとされている。
2指針(宝塚市懲戒処分の指針)
⑴基本事項
具体的な処分量定の決定にあたっては,次の①~⑤等のほか,適宜,日頃の勤務
態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮のうえ判断するものとする。
①非違行為の動機,態様および結果はどのようなものであったか。
②故意または過失の度合いはどのような程度であったか。
③非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか,その職責は非違
行為との関係でどのように評価すべきか。
④他の職員および社会に与える影響はどのようなものであるか。
⑤過去に非違行為を行っているか。
個別の事案の内容によっては標準例に掲げる処分の種類以外とすることもありう
る。たとえば,標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場
合として,次の①~⑤がある。
①非違行為の動機もしくは態様がきわめて悪質であるときまたは非違行為の結
果がきわめて重大であるとき
②非違行為を行った職員が管理または監督の地位にあるなどその職責が特に高
いとき
③非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
④過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあ
るとき
⑤処分の対象となりうる複数の異なる非違行為を行っていたとき
標準例に掲げられていない非違行為についても懲戒処分等の対象となりうる。こ
れらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。
⑵標準例(一般服務関係)
ア休暇の虚偽申請
病気休暇または特別休暇について虚偽の申請をした職員は,減給または戒告とす
る。
イ勤務態度不良
勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り,公務の運営に支障を生じさせた職員は,
減給または戒告とする。
ウ虚偽報告
事実を捏造して虚偽の報告を行った職員は,減給または戒告とする。
エ兼業の承認等を得る手続の懈怠
営利企業の役員等の職を兼ね,もしくはみずから営利企業を営むことの承認を得
る手続または報酬を得て,営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね,その他事業
もしくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り,これらの兼業を行った職員
は,減給または戒告とする。

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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