弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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          主     文
     被告人を懲役1年4月に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
          理     由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成14年11月18日午後1時30分ころ,神戸市a区b通c丁目
d番e号fビル7階所在の株式会社A書店g駅前店において,同店店長B管理にか
かる書籍2冊(販売価格合計2万9000円相当)を窃取したものである。
(証拠の標目)ー括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号ー
省略
(事実認定の補足説明)
 弁護人は,被告人が判示A書店で代金を支払わないまま書籍2冊(以下,「被害
書籍」という。)を店外に持ち出したことは事実であるが,被告人は,「C」なる
人物が代金を支払ってくれることになっていて同人と待ち合わせをしていたとこ
ろ,被害書籍を購入することとし,同じ建物内にあるDの他の売り場で代金を支払
うつもりで店外に出たにすぎず,被告人には窃盗の犯意はないから,無罪であると
主張し,被告人も弁護人の主張にそう供述をするが,前掲関係各証拠によれば,弁
護人主張の点を含め,判示の犯罪事実を認めるに十分である。
 被告人は,捜査段階から,本件窃盗の犯意を否認し,大要,冒頭記載のような弁
解をするが,その弁解は抽象的にはおよそあり得ないこととまではいえないけれど
も,そもそもホームレス仲間である「C」が格別の理由もなく4万円までであれば
書籍を買ってやると言ったなどというその弁解の内容自体がにわかには信用しがた
いものであるというべきところ,被告人の弁解供述は,誠実さに欠け,かつ曖昧な
ものである上,被告人は所持金が1000円に満たない状態で被害書籍を所掲の手
提げ袋に入れた上これを着ていたロングコート内に隠し持って被害店舗のレジを通
らず店外に出たという犯行の客観的状況(犯行の目撃者であるEの前掲検察官に対
する供述調書中の同人の供述部分の信用性は十分である。)や被告人は「C」なる
人物の実在を主張す
るものの,その人物を探し出そうと努力する気配すら見せないこと等の事実に照ら
すと,被告人の前記弁解は,到底信用できるものではない。
(法令の適用)
 罰    条  刑法235条
 宣告刑  懲役1年4月
 未決勾留  刑法21条(60日算入)
 訴訟費用  刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない。)
(量刑の理由)
 本件は,平成14年1月10日神戸地方裁判所で窃盗未遂罪(自動販売機荒ら
し)により懲役1年6月(3年間刑の執行猶予)に処せられた被告人が,その刑宣
告後約10か月で,執行猶予中の身であるにもかかわらず,格別の理由なく窃盗
(万引)に及んだ事案であるところ,被告人において捜査段階から不自然不合理な
弁解に終始して恥じるところがなかったことを併せ考慮すると,その規範意識の乏
しさは深刻な状態にあるといわざるを得ず,その刑事責任は重いというべきである
が,罪質,被害書籍は被害者に還付され実害がなかったこと,前刑の執行猶予が取
り消され合わせて服役すること等被告人のために酌むべき事情をも十分に考慮し,
主文のとおり量定した。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成15年3月26日
    神戸地方裁判所第11刑事係甲
          裁 判 官  杉 森 研 二

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