弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 原告(反訴被告)らの訴えをいずれも却下する。
二 被告(反訴原告)の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを三分し、その一を原告(反訴被告)ら、
その余を被告(反訴原告)の負担とする。
       事   実
(略称)以下において、原告(反訴被告)株式会社国土リアル・エステートを「原
告会社」と、原告(反訴被告)Aを「原告A」と、被告(反訴原告)Bを「被告」
と略称する。
第一 申立て
一 原告ら
1 原告会社以び原告Aの被告に対する別紙取引目録記載の不動産売買に係る各五
〇〇万円の報酬支払債務が存在しないことを確認する。
2 主文二項と同旨。
3 訴訟費用は、本訴反訴を通じて被告の負担とする。
二 被告
1 原告らの請求を棄却する。
2 原告らは、被告に対し、各自五〇〇万円及びこれに対する平成四年九月一七日
から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、本訴反訴を通じて原告らの負担とする。
第二 主張
一 本訴
1 請求原因
(一) 被告は、昭和六三年九月から原告Aの経営する村田住研に雇傭され、右村
田住研が原告会社に法人化された後は平成三年四月まで原告会社に雇傭されていた
者であり、原告Aは、原告会社の代表取締役である。
(二) 被告は、原告両名が被告に対し別紙取引目録記載の不動産売買(以下「本
件不動産売買」という。)に係る五〇〇万円の報酬支払債務を負担すると主張し、
本件反訴において各五〇〇万円の支払を求めている。
(三) しかし、被告が本件反訴で原告両名に対してその履行を求める各金五〇〇
万円の報酬支払債務は、発生していないし、仮に、発生したとしても、原告らは、
平成三年一一月九日、その代理人Cを介して、被告との間で和解契約を締結し、原
告両名が和解金一五〇万円を支払うことを条件に、被告が右五〇〇万円の報酬支払
債権を放棄する旨を約定し、原告両名は、被告に対し右和解金一五〇万円を支払っ
た。
(四) したがって、右報酬支払債務は不存在であるので、その確認を求める。
2 請求原因に対する認否
(一) 請求原因事実(一)(二)は認める。
(二) 同(三)の事実中、被告が一五〇万円を受領したことを認め、その余は否
認する。被告は、右金員の受領より、報酬支払債権を放棄する旨を合意していな
い。
(三) 同(四)は争う。
3 抗弁
(一) 原告会社及び原告Aは、被告に対し、固定給二〇万円に歩合給を加算して
支払うこと、被告が原告会社の従業員として原告会社を仲介人とする不動産売買を
成立させた場合には、原告会社の取得した手数料額の二〇ないし三〇パーセントを
歩合給として支払うことを約定した。
(二) 被告は、原告会社の従業員として、原告会社を仲介人とする本件不動産売
買を成立させたが、原告会社及び原告Aは、右取引についても、被告に対し、特に
高率の歩合給を支払う旨約定した。
(三) 原告会社は、本件不動産売買中、別紙目録一の売買の成立により一三四五
万円の、同二の売買の成立により一二二〇万円の、同三の売買の成立により四二九
万円の計二九九四万円の仲介手数料を取得しているところ、被告は、原告両名に対
し、その二五パーセントに当たる七四八万五〇〇〇円から弁済分を控除した残金五
八七万円の報酬支払債権を有し、本件反訴においてその内金五〇〇万円の支払を求
めるものであるので、原告両名が被告に対し右五〇〇万円の報酬支払債務を負うこ
とは明らかである。
(四) 仮に、原告ら主張の和解契約が締結されたとしても、被告の原告両名に対
する報酬支払債権は賃金債権であり、右和解契約は、賃金債権の一部を放棄させる
ものであるので労働基準法二四条一項本文に違反して無効であり、右放棄は、被告
の自由意思に基づくものではない。また、被告は、右契約により右報酬支払債権ま
で放棄するものとは考えていなかったので、右放棄の意思表示には錯誤がある。
4 抗弁に対する認否
(一) 抗弁事実(一)ないし(三)中、原告を仲介人とする本件不動産売買が成
立したことは認め、その余は否認する。被告に対する給与は、固定給とする約定で
あった。
(二) 同(四)の事実は争う。被告は、原告会社退社後、原告らの影響下に全く
ない状態で自由な意思に基づき、本件和解契約を締結したものであり、右契約によ
る賃金債権の放棄の意思表示も有効である。
二 反訴
1 請求原因
(一) 本件請求原因(一)と同じ。
(二) 本訴抗弁(一)ないし(三)と同じ。
2 請求原因に対する認否
(一) 請求原因(一)の事実は認める。
(二) 同(二)に対する認否は、本訴抗弁(一)ないし(三)に対する認否と同
じ。
3 抗弁
本訴請求原因(三)と同じ。
4 抗弁に対する認否
本訴請求原因(三)に対する認否と同じ。
5 再抗弁
本訴抗弁(四)と同じ。
6 再抗弁に対する認否
本訴抗弁(四)に対する認否と同じ。
第三 証拠(省略)
       理   由
一 本訴について
 原告両名の被告に対する本訴請求は、被告が反訴において原告両名に対してその
履行を求める報酬支払債務の不存在の確認を求めるものであり、右反訴請求によ
り、右債務の履行請求権の存否が既判力をもって確定されることにかんがみれば、
その訴えの利益を欠くものというべきである。したがって、その余の点を判断する
までもなく、右本訴は不適法なものとして却下すべきである。
二 反訴について
1 被告が、昭和六三年九月から原告Aの経営する村田住研に雇傭され、右村田住
研が原告会社に法人化された後は平成三年四月まで原告会社に雇傭されていたこ
と、原告Aが原告会社の代表取締役であること、原告会社を仲介人とする本件不動
産売買が成立したことは、当事者間に争いがない。
2 被告は、被告が原告会社の従業員として本件不動産売買を成立させたものであ
ると主張し、原告両名に対して、歩合給として各五〇〇万円の報酬の支払を請求す
るところ、原告両名は、仮に右報酬支払債権が発生したとしても、被告が、原告両
名の代理人Cとの間で、和解金一五〇万円の支払を受けることを条件に、右報酬支
払債権を含む原告両名に対する全ての債権を放棄する旨を約定し、右和解金一五〇
万円の支払を受けたので、右報酬支払債権は消滅した旨抗弁するので、右抗弁につ
いて判断する。
(一) 成立に争いのない甲第二号証、証人Cの証言によれば、被告は、平成三年
一一月九日、原告らの代理人Cとの間で、和解契約を締結し、原告両名から和解金
一五〇万円の支払を受けることを条件に、右報酬支払債権を含む原告両名に対する
全ての債権を放棄する旨を約定し、同日、右合意に基づき原告両名から右一五〇万
円の支払を受けた事実が認められ(一五〇万円の支払の事実は当事者間に争いがな
い)、右事実によれば、仮に、被告がその主張する報酬支払債権を取得したとして
も、右債権は、右和解契約と和解金の支払により消滅したものというべきである。
(二) 被告は、右和解契約において、被告には右報酬支払債権を放棄する意思は
無く、この点に錯誤がある旨を主張し、被告本人尋問中には右主張にそう供述部分
もある。しかし、被告の右供述部分は、本件和解契約の際に作成された「和解書」
と題する前掲甲第二号証中に、被告が原告Aの不動産会社に勤務していたころの不
動産手数料の件を含めて双方に係る金銭的請求を全て一五〇万円の支払により和解
して解決し、今後双方とも異議申立てをしないことを確約する旨の記載があるこ
と、被告は、異議なく右甲号証に署名し、一五〇万円の交付を受けたこと及び証人
Cの証言に照らして採用できず、他に被告主張の右事実を認めるに足りる証拠はな
い。
(三) 被告は、右和解契約による右報酬支払債権の放棄は、賃金債権の放棄に当
たるので、労働基準法二四条一項に違反し、無効である旨を主張する。しかし、賃
金債権を放棄する意思表示は、それが自由な意思に基づくものであると認めるに足
りる合理的な理由が客観的に存在するときは有効であると解すべきところ(最高裁
昭和四四年(オ)第一〇七三号同四八年一月一九日第二小法廷判決・民集第二七巻
一号二七頁)、証人Cの証言及び被告本人尋問の結果によれば、被告は、原告会社
との間の雇傭関係終了の約七か月後に右和解契約を締結したものである上、当時復
職の意思も全くなく、したがって、原告会社又は原告Aとの間の雇傭関係に基づく
従属的立場にない状態で右契約を締結したものであること、被告は、原告両名に対
する債権放棄の意思表示をする対価として一五〇万円の交付を受けたこと、右契約
締結のための交渉は、被告と原告両名の代理人である右Cとの間でされたものであ
るが、同人の交渉態度も格別威圧的なものではなかったことが認められ、右各事実
及び前記の各証拠を総合すれば、仮に、被告が原告両名に対して賃金債権に当たる
本件報酬支払債権を取得したとしても、被告が、右和解契約において、和解金一五
〇万円の支払を受けることを条件として、その自由な意思に基づいて右債権を放棄
したと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するものというべきであるの
で、被告の右主張も採用することができない。
三 以上によれば、原告両名の本訴請求は不適法であるのでこれを却下し、被告の
反訴請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴
法八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 大竹たかし)
別紙省略

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